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特開2024-171194物体検知装置、物体検知方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171194
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】物体検知装置、物体検知方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/28 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
G01S13/28
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088143
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】中島 良介
(72)【発明者】
【氏名】真坂 元貴
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB08
5J070AB10
5J070AC02
5J070AC06
5J070AH31
5J070AH35
(57)【要約】
【課題】物体検知装置において、効率よく高精度な距離および速度推定が可能な技術を提供する。
【解決手段】物体検知装置は、当該目標物体に送信し、反射されたデジタル符号変調させた複数の送信パルス信号を受信し、受信信号を生成する送受信部と、受信信号に対し信号処理を施し、目標物体を検出する演算部と、を備え、演算部は、目標物体の複数の速度候補それぞれを用いて、受信信号のドップラシフトを補正するドップラシフト補正を行い、ドップラシフト補正後の受信信号に対しパルス圧縮を行い、速度候補毎の第一出力信号を生成するパルスドップラフィルタバンク処理部と、速度アンビギュイティを折り返し方向の隣接ビンに配置するよう第一出力信号を変形し、第二出力信号を生成する配列形状変更処理部と、第二出力信号から目標物体を検出する目標検出処理部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自装置に対して相対運動する目標物体にデジタル符号変調させた複数の送信パルス信号を送信するとともに、当該目標物体で反射された前記複数の送信パルス信号を受信し、受信信号を生成する送受信部と、
前記受信信号に対し信号処理を施し、前記目標物体を検出する演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記目標物体の複数の速度候補それぞれを用いて、前記受信信号のドップラシフトを補正するドップラシフト補正を行い、ドップラシフト補正後の前記受信信号に対しパルス圧縮を行い、前記速度候補毎の第一出力信号を生成するパルスドップラフィルタバンク処理部と、
速度アンビギュイティを折り返し方向の隣接ビンに配置するよう前記第一出力信号を変形し、第二出力信号を生成する配列形状変更処理部と、
前記第二出力信号から前記目標物体を検出する目標検出処理部と、を備える物体検知装置。
【請求項2】
請求項1記載の物体検知装置であって、
前記パルスドップラフィルタバンク処理部は、前記受信信号のヒット毎に前記ドップラシフト補正および前記パルス圧縮を行った後、積分し、前記第一出力信号を生成する、物体検知装置。
【請求項3】
請求項1記載の物体検知装置であって、
前記配列形状変更処理部は、
前記速度候補それぞれによるグローバルドップラ周波数を、パルス繰り返し周波数(PRF)で除算した際の商である折り返し数と余りであるローカルドップラ周波数とに分解することにより、前記第一出力信号を変形する物体検知装置。
【請求項4】
請求項3記載の物体検知装置であって、
前記目標検出処理部は、予め定めた閾値以上の信号値を有する前記第二出力信号の、前記ローカルドップラ周波数および前記繰り返し数方向の次元から、前記目標物体の速度を算出する、物体検知装置。
【請求項5】
請求項1記載の物体検知装置であって、
前記第一出力信号および前記第二出力信号は、各送信パルス信号に対応する送信信号が送信された時刻からの経過時間であるファストタイム方向の次元を有する信号であり、
前記目標検出処理部は、予め定めた閾値以上の信号値を有する前記第二出力信号の、前記ファストタイム方向の次元の信号から前記目標物体の距離を算出する、物体検知装置。
【請求項6】
請求項1記載の物体検知装置であって、
前記送信パルス信号を重畳する搬送波は、電波である物体検知装置。
【請求項7】
物体検知装置のコンピュータによって実行される物体検知方法であって、
目標物体の複数の速度候補それぞれを用いて、受信信号のドップラシフトを補正するドップラシフト補正を行い、ドップラシフト補正後の前記受信信号に対しパルス圧縮を行い、前記速度候補毎の第一出力信号を生成するパルスドップラフィルタバンク処理ステップと、
速度アンビギュイティを折り返し方向の隣接ビンに配置するよう前記速度候補を変形し、第二出力信号を生成する配列形状変更処理ステップと、
前記第二出力信号から前記目標物体を検出する目標検出処理ステップと、を備え、
前記目標物体は、前記物体検知装置に対して相対運動し、
前記受信信号は、当該目標物体に送信したデジタル符号変調させた複数の送信パルス信号が、当該目標物体で反射された信号から生成される、物体検知方法。
【請求項8】
物体検知装置のコンピュータに、
前記物体検知装置に対して相対運動する目標物体の複数の速度候補それぞれを用いて、当該目標物体に送信したデジタル符号変調させた複数の送信パルス信号が、当該目標物体で反射された信号から生成される受信信号のドップラシフトを補正するドップラシフト補正を行い、ドップラシフト補正後の前記受信信号に対しパルス圧縮を行い、前記速度候補毎の第一出力信号を生成するパルスドップラフィルタバンク処理手順と、
速度アンビギュイティを折り返し方向の隣接ビンに配置するよう前記速度候補を変形し、第二出力信号を生成する配列形状変更処理手順と、
前記第二出力信号から前記目標物体を検出する目標検出処理手順と、を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検知装置、物体検知方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁波等を用いて目標物体を検知する物体検知装置がある。このうち、電波を用いるものをレーダ装置と呼ぶ。一般に、レーダ装置は、空間に電波を発射して、目標物体で反射した反射信号を受信することで目標の存在を探知し、その位置、運動状況などを観測する。発射する電波は、一定の幅を持つ矩形波(パルス)であり、以下、電波パルスと呼ぶ。
【0003】
電波パルスを照射するレーダ装置において、目標の速度を推定する方法には、主に以下の2つの方式がある。
(1)ドップラ周波数を利用する方式(第一方式)
(2)アップチャープとダウンチャープとの測距差を利用する方式(第二方式)
【0004】
第一方式は、ドップラ周波数と、既知である送信周波数および光速とから、目標物体の速度を得る方式である。ドップラ周波数は、複数の電波パルスを照射し、目標物体で反射した複数の電波パルスを受信し、受信した複数の電波パルスを、レンジビン毎にヒット方向にフーリエ変換することで算出する。第一方式の長所は精度が高いことである。しかし、電波パルスの照射の時間間隔であるパルス繰り返し周期(PRI:Pulse Repetition Interval)が長い場合、各ヒット間の位相回転量にアンビギュイティが生じ、それに起因して推定速度にもアンビギュイティが生じることが短所である。
【0005】
第二方式は、周波数が高くなる方向に線形に周波数変調させるアップチャープの電波パルスを用いて得た測距結果と、周波数が低くなる方向に線形に周波数変調させるダウンチャープの電波パルスを用いて得た測距結果との差を用いて目標物体の速度を得る方式である。線形周波数変調を用いて測距する場合、ドップラシフトの影響により測距結果が真値からずれる。このとき、ずれる向きはアップチャープとダウンチャープとで逆になることが知られている。これを利用し、アップチャープの測距結果とダウンチャープの測距結果との差分を目標の速度に換算する。第二方式の長所は推定速度にアンビギュイティがないことである。ただし、第二方式は、測距結果の差分を算出する前に、アップチャープとダウンチャープの測距結果を、目標物体毎に対応付けを行う必要がある。しかしながら、近接する複数の目標物体が存在する場合、対応付けを誤りやすく、その結果、測距精度および速度推定精度が劣化しやすいことが短所である。
【0006】
これらを踏まえ、アンビギュイティがなく、かつ、精度が高い速度推定方式が、例えば特許文献1において開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-83867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以下の分析は、本発明によって与えられたものである。
【0009】
特許文献1に開示の方式では、上記第一方式と第二方式とを融合させることで、それぞれの長所を残したまま、それぞれの短所のみを改善する。しかしながら、この方式では、アップチャープとダウンチャープのそれぞれで目標物体を2度探知する必要がある。ヒット数がNで一度のみ目標を探知する方式と比較すると、観測時間を同一とした条件においては、アップチャープとダウンチャープのそれぞれはN/2ヒットで目標を探知する必要があるため、探知能力が劣化する。一方、探知能力を同一とした条件においては、アップチャープとダウンチャープのそれぞれはNヒットで目標を探知する必要があるため、2倍の観測時間が必要となり、レーダの時間リソースを2倍消費する。
【0010】
このように、電波パルスを用いるレーダ装置(パルスレーダ装置)等の物体検知装置において、探知能力を劣化させたり、レーダの消費リソースを増やしたりすることなく、距離および速度のアンビギュイティなしに、精度の高い距離推定(測距)および速度推定が望まれている。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、物体検知装置において、効率よく高精度な距離および速度推定が可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第一の視点によれば、
自装置に対して相対運動する目標物体にデジタル符号変調させた複数の送信パルス信号を送信するとともに、当該目標物体で反射された前記複数の送信パルス信号を受信し、受信信号を生成する送受信部と、
前記受信信号に対し信号処理を施し、前記目標物体を検出する演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記目標物体の複数の速度候補それぞれを用いて、前記受信信号のドップラシフトを補正するドップラシフト補正を行い、ドップラシフト補正後の前記受信信号に対しパルス圧縮を行い、前記速度候補毎の第一出力信号を生成するパルスドップラフィルタバンク処理部と、
速度アンビギュイティを折り返し方向の隣接ビンに配置するよう前記第一出力信号を変形し、第二出力信号を生成する配列形状変更処理部と、
前記第二出力信号から前記目標物体を検出する目標検出処理部と、を備える物体検知装置が提供される。
【0013】
本発明の第二の視点によれば、
物体検知装置のコンピュータによって実行される物体検知方法であって、
目標物体の複数の速度候補それぞれを用いて、受信信号のドップラシフトを補正するドップラシフト補正を行い、ドップラシフト補正後の前記受信信号に対しパルス圧縮を行い、前記速度候補毎の第一出力信号を生成するパルスドップラフィルタバンク処理ステップと、
速度アンビギュイティを折り返し方向の隣接ビンに配置するよう前記速度候補を変形し、第二出力信号を生成する配列形状変更処理ステップと、
前記第二出力信号から前記目標物体を検出する目標検出処理ステップと、を備え、
前記目標物体は、前記物体検知装置に対して相対運動し、
前記受信信号は、当該目標物体に送信したデジタル符号変調させた複数の送信パルス信号が、当該目標物体で反射された信号から生成される、物体検知方法が提供される。
【0014】
本発明の第三の視点によれば、
物体検知装置のコンピュータに、
前記物体検知装置に対して相対運動する目標物体の複数の速度候補それぞれを用いて、当該目標物体に送信したデジタル符号変調させた複数の送信パルス信号が、当該目標物体で反射された信号から生成される受信信号のドップラシフトを補正するドップラシフト補正を行い、ドップラシフト補正後の前記受信信号に対しパルス圧縮を行い、前記速度候補毎の第一出力信号を生成するパルスドップラフィルタバンク処理手順と、
速度アンビギュイティを折り返し方向の隣接ビンに配置するよう前記速度候補を変形し、第二出力信号を生成する配列形状変更処理手順と、
前記第二出力信号から前記目標物体を検出する目標検出処理手順と、を実行させるためのプログラムが提供される。
【0015】
なお、これらのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録することができる。記憶媒体は、半導体メモリ、ハードディスク、磁気記録媒体、光記録媒体等の非トランジェント(non-transient)なものとすることができる。本発明は、コンピュータプログラム製品として具現することも可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、本発明により、物体検知装置において、効率よく高精度な距離および速度推定ができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は、本発明の一実施形態のレーダ装置の構成の一例を示すブロック図であり、(b)は、本発明の一実施形態の演算部の機能構成の一例を示す機能ブロック図であり、(c)は、本発明の一実施形態の演算部のハードウェア構成の一例を示すハードウェア構成図である。
図2】本発明の一実施形態のパルスドップラフィルタバンク処理部の構成の一例を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態のパルスドップラフィルタモジュールの構成の一例を示すブロック図である。
図4】(a)は、本発明の一実施形態のパルスドップラフィルタバンク処理後受信信号のイメージ例を説明するための説明図であり、(b)は、本発明の一実施形態の配列形状変更処理後の信号のイメージ例を説明するための説明図である。
図5】本発明の一実施形態の目標検出処理部の構成の一例を示すブロック図である。
図6】本発明の一実施形態の物体検知処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態と呼ぶ。)の概要について図面を参照して説明する。なお、図面の参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではない。また、以降の説明で参照する図面等のブロック間の接続線は、双方向および単方向の双方を含む。一方向矢印については、主たる信号(データ)の流れを模式的に示すものであり、双方向性を排除するものではない。
【0019】
また、図中の各ブロックの入出力の接続点には、ポートやインタフェースがあるが図示を省略する。また、以下の説明において、「Aおよび/またはB」は、AまたはB、もしくは、AおよびBという意味で用いる。
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
本実施形態の物体検知装置は、所定の方向に複数の送信信号を送信し、当該複数の送信信号が目標物体において反射された複数の反射信号を受信する。各送信信号は、ベースバンド信号が重畳された搬送波を、所定幅の矩形関数で切り取ったパルス信号である。
【0022】
以下、本実施形態では、搬送波が電波である場合、すなわち、物体検知装置が、レーダ装置である場合を例にあげて本実施形態を説明する。
【0023】
図1は、本実施形態のレーダ装置100の機能ブロック図である。レーダ装置100は、電波によって目標物体900の存在を探知し、測距および速度推定する。本図に示すように、レーダ装置100は、電波の送受信を行う送受信装置(送受信部)200と、送受信部が生成する受信信号に基づいて目標物体900の位置と速度の推定を行う演算部300を備える。
【0024】
送受信部200は、電波の送信を行う送信装置(送信部)210と、目標物体900からの反射電波から受信信号を生成する受信装置(受信部)220と、を備える。
【0025】
送信部210は、デジタル符号変調をさせた複数の電波パルス(送信パルス信号)を所定の方向に送信信号として送信する。本実施形態では、送信部210は、例えば、自装置であるレーダ装置100に対し、相対運動する目標物体900に対し、送信パルス信号を送信する。
【0026】
一般のレーダ装置では、変調に、例えば、チャープ等の線形周波数変調を用いることが多い。このとき、エコーの持続時間を短くすることで、S/N比と距離分解能とを改善するため、パルス圧縮という技術が用いられる。パルス圧縮により圧縮される時間位置は、次の式(1)で表される。本式において、右辺の第2項は、ドップラシフトに起因する測距誤差を意味する。
【数1】
・・・(1)
ただし、t:送信パルスが圧縮される時間位置
:送信パルスが反射されたときの目標物体の距離相当時間
V:目標物体のレーダ方向速度
:レーダの送信周波数(搬送波の周波数)
PW:送信パルスのパルス幅
τ:送信パルスの圧縮後パルス幅
c:光速
なお、Vは、目標物体900がレーダ装置100から遠ざかる方向を+としている。式(1)の第1項と第2項との間の演算子の±については、アップチャープの場合は+となり、ダウンチャープの場合は-となる。
【0027】
線形周波数変調を施した送信パルス信号によって測距する場合、上述のように、ドップラシフトに起因する測距誤差が発生する可能性がある。そこで、本実施形態では、ドップラシフトに起因する測距誤差が発生しないことが知られている波形の1つである、デジタル符号変調波形を用いる。
【0028】
デジタル符号変調に用いる符号系列は、距離方向のアンビギュイティ発生を回避するために、バーカ符号またはM系列等のランダム符号である。なお、距離サイドローブを低減するため、送信パルスごとに異なる符号系列を用いてもよい。変調方式としては、周波数変調、位相変調またはその組み合わせを用いる。
【0029】
受信部220は、目標物体900からの反射信号(反射パルス)を受信し、復調し、受信信号を生成する。復調では、例えば、バンドパスフィルタ等で不要な周波数成分を除外しながら周波数を変換し、ベースバンド信号を取り出す。そして、取り出したベースバンド信号を、受信信号(受信パルス)とする。
【0030】
[演算部]
演算部300は、受信信号に対して信号処理を施し、目標物体900を検出する。このため、演算部300は、図1(b)に示すように、パルスドップラフィルタバンク処理部310と、配列形状変更処理部320と、目標検出処理部330と、を備える。
【0031】
[パルスドップラフィルタバンク処理部]
パルスドップラフィルタバンク処理部310は、目標物体900の速度を複数仮定して、それぞれの速度を用いて受信信号のドップラシフトを補正する。そして、補正後の受信信号に対し、パルス圧縮処理を行う。
【0032】
上述したように、本実施形態では、搬送波にデジタル符号変調を施す。デジタル符号変調によれば、上述のように、ドップラシフトに起因する測距誤差が発生しない。一方、デジタル符号変調により得られるデジタル符号変調波形は、ドップラ損失が大きい。ドップラ損失とは、ドップラシフトによるパルス圧縮の損失である。デジタル符号変調波形では、少量のドップラシフトが発生しているだけでパルス圧縮後にピークレベルが大幅に低下する。
【0033】
本実施形態では、この性質を逆に利用する。すなわち、本実施形態のパルスドップラフィルタバンク処理部310では、目標物体900の速度として、複数の速度候補を用意する。そして、それぞれの速度候補を用いてドップラシフト補正を行う。補正対象がデジタル符号変調により得られる受信信号であるため、真の速度に近い速度でドップラシフト補正を行った場合のみ、ピークレベルが低下することなく大きなパルス圧縮利得が得られる。このため、精度の良い速度推定値が得られる。
【0034】
パルスドップラフィルタバンク処理部310は、全ヒットの受信信号(全受信パルス)に対して、それぞれ、仮定した複数の速度候補を用いて多段のパルスドップラフィルタ処理を実施する。以下、ヒット数をN(Nは1以上の整数)、仮定する速度候補の数をL(Lは1以上の整数)とする。
【0035】
各段のパルスドップラフィルタ処理は、図2に示すように、仮定する速度候補の数L個のパルスドップラフィルタモジュール310mにて実施される。各パルスドップラフィルタモジュール310mは、N個の受信信号と1つの速度とを入力とし、パルスドップラフィルタバンク処理を行う。このため、パルスドップラフィルタバンク処理部310の出力であるPDF処理後受信信号は、パルスドップラフィルタモジュール310mの数、すなわち、L個の速度候補毎に得られる。
【0036】
なお、仮定する速度候補は、予め定め、演算部300に記憶する。このとき、仮定する速度候補の間隔は、小さくするほど速度の推定精度が改善する。しかし、その分、用意するパルスドップラフィルタモジュール310mの数が増え、計算規模は増大する。また、仮定する速候補度の最大値と最小値は、目標物体900の想定する速度の最大値と最小値とから予め決定する。
【0037】
ここで、パルスドップラフィルタモジュール310mの詳細について説明する。各パルスドップラフィルタモジュール310mは、全ヒット(1~Nヒット)の受信信号と1つの速度とを入力とし、ドップラシフト補正、レンジウォーク補正、パルス圧縮(マッチドフィルタ)およびコヒーレント積分を実施し、信号対雑音比を改善した信号を、それぞれ、出力する。本実施形態のパルスドップラフィルタモジュール310mの構成のブロック図の一例を、図3に示す。
【0038】
本図に示すように、本実施形態のパルスドップラフィルタモジュール310mは、ドップラシフト補正部311と、レンジ高速フーリエ変換(FFT)部312と、レンジウォーク補正部313と、マッチドフィルタ部314と、コヒーレント積分部315と、レンジ逆高速フーリエ変換(IFFT)部316と、を備える。また、ドップラシフト補正部311と、レンジ高速フーリエ変換(FFT)部312と、レンジウォーク補正部313と、マッチドフィルタ部314とは、受信信号毎に、すなわち、受信信号のヒット数(N個)、用意される。
【0039】
ドップラシフト補正部311は、ドップラシフト補正項を算出し、受信信号の、ドップラシフトを補正する。
【0040】
ドップラシフト補正項は、受信信号における目標ドップラ周波数のオフセットをキャンセルする項である。ドップラシフト補正項は、ファストタイムの関数である。なお、ファストタイムは、各ヒットの送信パルスの送信時刻からの経過時間である。すなわち、目標物体900までの距離を時間に変換したものである。このドップラシフト補正項は、スロータイムにはよらない。そのため、スロータイム方向には同じ値を使用すればよい。なお、スロータイムは、1ヒット目の送信パルスの送信時刻から各ヒットの送信パルスの送信時刻までの経過時間である。
【0041】
ドップラシフト補正項Dsctは、以下の式(2)で表される。
【数2】

…(2)
ただし、j:虚数
fdglb:グローバルドップラ周波数
:ファストタイム
ここで、グローバルドップラ周波数fdglbは、以下の式(3)で表される。
【数3】
…(3)
ただし、v:当該パルスドップラフィルタモジュール310mに入力された目標物体900の速度候補(速度1~速度Lのいずれか)
【0042】
ドップラシフト補正部311は、ファストタイムtの関数である受信信号に対し、上記式(2)で表されるドップラシフト補正項を乗算することにより、ドップラシフトを補正する。
【0043】
レンジウォーク補正部313は、レンジウォーク補正項を算出し、ドップラシフト補正後の受信信号の、レンジウォークおよびヒット間の位相変化を補正する。レンジウォークは、目標物体900の移動速度が大きい場合、パルス積分処理の間に目標物体900が複数のレンジビンをまたいで移動することである。
【0044】
レンジウォーク補正項Rwctは、PRI(Pulse Repetition Interval)間の目標物体900の移動をキャンセルする項であり、以下の式(4)で表される。
【数4】
…(4)
ただし、f:ファストタイム周波数
=0、PRI、2PRI、・・・、(N-1)PRI;スロータイム
【0045】
マッチドフィルタ部314は、レンジウォーク補正後の受信信号に対し、パルス圧縮(マッチドフィルタ)処理を実行する。パルス圧縮(マッチドフィルタ)は、信号対雑音比の最大化およびパルス幅の圧縮を目的とした処理である。周波数領域において、送信信号のベースバンド波形の複素共役と、レンジウォーク補正後の波形とを乗算する。なお、本実施形態におけるパルス圧縮(マッチドフィルタ)処理は、周波数領域における乗算にて実施しているが、時間(距離)領域における畳み込みにて実施してもよい。
【0046】
コヒーレント積分部315は、各マッチドフィルタ部314の処理結果に対し、コヒーレント積分を実行する。コヒーレント積分は、スロータイム方向に単純加算する処理である。すなわち、各ヒットの、マッチドフィルタ部314の処理結果を加算する。
【0047】
レンジFFT部312は、信号に対しレンジ(距離)方向にFFT(レンジFFT)を施す。これにより、当該信号は周波数領域の信号に変換される。また、レンジIFFT部316は、信号に対し、レンジ(距離)方向にIFFT(レンジ逆FFT)を施す。これにより、当該信号は時間領域の信号に変換される。本実施形態のパルスドップラフィルタモジュール310mは、処理の間に、信号(データ)に対し、その後の処理に応じて、適宜、FFTおよびIFFTを行い、周波数領域、時間領域で変換する。
【0048】
なお、パルスドップラフィルタバンク処理部310の各部による処理により、PDF処理後受信信号は、パルスドップラフィルタモジュール310mに入力された速度候補v(速度1~速度L)と、ファストタイムtとの2つを引数とする関数で表される。すなわち、PDF処理後受信信号は、速度候補方向とファストタイム方向との2つの次元を有する2次元配列データである。
【0049】
[配列形状変更処理部]
配列形状変更処理部320は、2次元配列データとして表されるPDF処理後受信信号を、3次元配列データに変更する。ここでは、ドップラ周波数が、ドップラ周波数視野(-PRF/2~PRF/2)を超えることにより発生する周波数の折り返し、すなわち、アンビギュイティを取り除き、真のドップラ応答を抽出する。なお、パルス繰り返し周波数PRF(Pulse Repetition Frequency)は、パルス繰り返し周期PRIの逆数である。
【0050】
2次元配列データで表されるPDF処理後受信信号について、ファストタイムtをある値に固定したときの速度候補方向の変化のイメージを、図4(a)に示す。本図に示す通り、所定のファストタイムtのPDF処理後受信信号は、速度候補方向に強いアンビギィティをもつ。各速度候補vを、上記式(3)を用いてグローバルドップラ周波数fdglbにそれぞれ換算した場合、アンビギュイティの間隔は、パルス繰り返し周波数PRFとなる。このデータに対しピークサーチによる目標物体900の検出を行うと、アンビギュイティを誤検出してしまう。
【0051】
そこで、配列形状変更処理部320は、まず、各速度候補vを、上記式(3)を用いて、それぞれ、グローバルドップラ周波数fdglbに換算する。そして、グローバルドップラ周波数fdglbを以下の式(5)のように、ローカルドップラ周波数fdlclと折り返し数nwrpとに分解する。
【数5】
…(5)
ここで、fdlcl(-PRF/2~PRF/2):ローカルドップラ周波数
wrp:折り返し数(整数)
グローバルドップラ周波数fdglbをパルス繰り返し周波数PRFで除算したときの商が折り返し数、余りがローカルドップラ周波数である。
【0052】
この結果を用い、配列形状変更処理部320は、PDF処理後受信信号を、ローカルドップラ周波数fdlclと折り返し数nwrpとファストタイムtとの3次元配列データに変形する。そして、変形後のデータを、配列処理後受信信号(第二出力信号)として目標検出処理部330に出力する。
【0053】
速度候補方向を、ローカルドップラ周波数方向と折り返し数方向とに分解することで、速度候補方向のPRF間隔のアンビギュイティは、図4(b)に示す通り、折り返し数方向の隣接ビンに配置される。すなわち、PRIが長い場合に生じる速度アンビギュイティのビンをメインローブの一部として統合する。これにより、後段の目標検出処理部330においてアンビギュイティの誤検出を避けることができる。
【0054】
[目標検出処理部]
目標検出処理部330は、配列処理後受信信号から目標物体900を検出する。本実施形態では、配列処理後受信信号に対し、ピークサーチ等の所定の信号処理を施し、閾値以上のレンジビンを特定し、当該レンジビンのファストタイムを用いて目標物体900までの距離を算出する。また、当該レンジビンのローカルドップラ周波数および折り返し数を用いて、目標物体900の速度を算出する。
【0055】
この目標検出処理部330の構成のブロック図の一例を図5に示す。本図に示すように目標検出処理部330は、電力化部331と、3Dピークサーチ部332と、閾値処理部333と、プロット抽出部334と、を備える。
【0056】
電力化部331は、配列処理後受信信号の同相成分(I;In Phase)と直交成分(Q;Quadrature Phase)とを、以下の式(6)に従って合成し、電力Pに変換する。
【数6】
…(6)
【0057】
3Dピークサーチ部332は、3次元配列データである配列処理後受信信号の各次元に対し、最大値フィルタを用いてピークサーチを行う。最大値フィルタとは、あらかじめ相関レンジビン数をパラメータとして設定しておき、着目したレンジビンの前後相関レンジビン数の範囲の最大値を出力するフィルタである。ピークサーチを行う対象のデータに対し、最大値フィルタをかけた後のデータとかける前のデータを比較し、値が一致したレンジビンのみを抽出することで、ピークデータを抽出する。このとき、相関レンジビン数は、メインローブ形状やサイドローブ形状を考慮し、誤検出がないように設定する。
【0058】
閾値処理部333は、3Dピークサーチ部332で抽出したビンの中で、あらかじめ設定した閾値(検出閾値:図4(a)参照)を超えたレンジビンのみを抽出する。
【0059】
プロット抽出部334は、抽出された全てのレンジビンから、以下の式(7)および式(8)により、目標物体900の距離の推定値および速度の推定値を算出する。そして、算出したこれらの推定値を出力する。具体的には、抽出されたビンに対し、式(7)を用いて、ファストタイムtを距離に換算する。また、式(8)を用いて、ローカルドップラ周波数fdlclと折り返し数nwrpとを速度に換算する。
【数7】
…(7)
【数8】
…(8)
ここで、Rest:目標物体の距離の推定値
est:目標物体の速度の推定値
【0060】
[物体検知処理]
本実施形態のレーダ装置100の演算部300による物体検知処理の流れを説明する。図6は、本実施形態の演算部300による物体検知処理の処理フローである。本処理は、演算部300が、受信部220から受信信号を受信する毎に実施される。
【0061】
まず、パルスドップラフィルタバンク処理部310は、上述のパルスドップラフィルタバンク処理を行う(ステップS1101)。ここでは、まず、目標物体900の速度候補vを複数用意する(速度1~速度L)。各速度候補vを用いて、ヒット毎の受信信号に対し、ドップラシフト補正およびレンジウォーク補正を行う。そして、補正後の受信信号に対し、パルス圧縮(マッチドフィルタ)処理を行う。その後、各ヒットの受信信号を加算する。その結果、ファストタイムtと速度候補vとをパラメータとする関数で表されるPDF処理後受信信号を得、配列形状変更処理部320に出力される。
【0062】
次に、配列形状変更処理部320が、PDF処理後受信信号の引数を分解する配列形状変更処理を行う(ステップS1102)。ここでは、各速度候補vによるグローバルドップラ周波数fdglbを、折り返し数nwrpとローカルドップラ周波数fdlclとに分解する。分解後の受信信号は、配列処理後受信信号として目標検出処理部330に出力される。
【0063】
そして、目標検出処理部330が、目標物体900の距離と速度とを特定する物体検知処理を行う(ステップS1103)。ここでは、上述のように、配列処理後受信信号を電力に変換し、ピークサーチを行い、ピークデータを抽出し、ピークデータが閾値を超えたビンのみを抽出し、距離と速度とを推定する。
【0064】
[ハードウェア構成]
なお、本実施形態のレーダ装置100の演算部300は、例えば、各処理専用の集積回路(IC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、システムオンチップ(SOC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などで実装されてもよい。また、いわゆる、汎用の情報処理装置(コンピュータ)により実現されてもよい。
【0065】
演算部300は、汎用の情報処理装置で実現される場合、図1(c)に示すように、例えば、内部バスにより相互に接続される、CPU(Central Processing Unit)391と、主記憶装置(メモリ)392と、補助記憶装置393と、入出力I/F394と、拡張I/F395と、を備える。
【0066】
CPU391は、例えば、補助記憶装置393に記憶されたプログラムを主記憶装置392にロードして実行することにより、上記各機能を実現するとともに、演算部300全体を統括的に制御する。なお、CPU391の代わりにMPU(Micro Processing Unit)等の1以上のプロセッサを用いてもよい。
【0067】
主記憶装置392は、RAM(Random Access Memory)等のメモリである。主記憶装置392は、演算部300が実行するプログラム等を、CPU391が処理する際のワーク領域である。
【0068】
補助記憶装置393は、例えば、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等である。補助記憶装置393は、演算部300が実行する各種プログラムを記憶する。なお、補助記憶装置393は、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性メモリカード、DVD等の記憶媒体を備えてもよい。
【0069】
なお、補助記憶装置393に記憶されたプログラムは、非一時的なコンピュータ可読記録媒体(non-transitory computer-readable storage medium)に記録されたプログラム製品として提供することができる。補助記憶装置393は、非一時的なコンピュータ可読記録媒体に記録された各種プログラムを中長期的に記憶することに利用することが可能である。
【0070】
入出力I/F394は、有線または無線による信号、データの入出力のインタフェースである。本実施形態の演算部300は、この入出力I/F394を介して受信部220から受信信号を受信する。また、演算結果として、目標物体900の距離および/または速度を外部装置に出力してもよい。
【0071】
拡張I/F395は、表示装置、入力装置等を接続するインタフェースである。表示装置は、例えば、液晶モニタ等である。入力装置は、例えば、キーボードやマウス等のユーザ操作を受け付ける装置である。本実施形態では、例えば、複数の速度候補を、入力装置を介して受け付けてもよい。複数の速度候補は、予め補助記憶装置393に格納されていてもよい。
【0072】
本実施形態の演算部300の上記各機能は、それぞれ、補助記憶装置393に記憶されたプログラムを、CPU391が、主記憶装置392にロードして実行することにより実現される。
【0073】
また、演算部300が処理に用いるデータは、補助記憶装置393に予め記憶されてもよい。また、処理の途中に生成されるデータは、主記憶装置392または補助記憶装置393に記憶される。
【0074】
なお、演算部300のハードウェア構成は、これに限定されない。図示しないハードウェアを含んでもよい。
【0075】
また、本実施形態の演算部300の上記各機能を実現するプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録することができる。記憶媒体は、半導体メモリ、ハードディスク、磁気記録媒体、光記録媒体等の非トランジェント(non-transient)なものとすることができる。本発明は、コンピュータプログラム製品として具現することも可能である。
【0076】
以上説明したように、本実施形態のレーダ装置100によれば、送信信号(電波パルス)にデジタル符号変調を用いる。これにより、ドップラシフトに起因する距離のアンビギュイティは発生しない。すなわち、測距誤差がなく、高い距離計測を実現できる。
【0077】
また、デジタル符号変調によれば、ドップラシフトによるパルス圧縮の損失が大きい。本実施形態では、パルスドップラフィルタバンク処理部310により、目標物体900の速度候補vを複数仮定し、それぞれの速度候補vによるドップラシフトを補正する。真の速度に近い速度候補vによる補正では、ドップラシフトが略補正されるため、パルス圧縮による損失が略生じない。このため、高い信号値が得られる。一方、真の速度とは異なる速度候補vによれば、ドップラシフトを補正しきれず、パルス圧縮の損失が大きく出る。よって、得られる信号値が小さい。
【0078】
また、一般に、パルス繰り返し周期PRIは、レーダが想定する最大探知距離まで電波が往復する時間より大きいものに設定される。本実施形態のレーダ装置100によれば、配列形状変更処理により、速度アンビギュイティのビンをメインローブの一部として統合する。これにより、PRIが長い場合、すなわち遠方の目標物体の検知時に、一般に生じる速度アンビギュイティを回避することができる。
【0079】
さらに、本実施形態のレーダ装置によれば、1回の目標物体900の探知で上記を実現する。したがって、複数回の処理を要せず、効率よく高精度な検知を実現できる。すなわち、探知能力を劣化させたり、レーダ装置100のリソースの消費を増大させたりすることがない。
【0080】
従って、本実施形態によれば、効率よく高精度な距離および速度推定ができる。
【0081】
<変形例1>
なお、上記実施形態では、PDF処理後受信信号に対し、配列形状変更処理を行い、得られた配列処理後受信信号に信号処理を施し、所定の条件を満たすレンジビンを抽出し、目標物体900の距離および速度を推定しているが、速度の推定については、これに限定されない。
【0082】
例えば、各速度候補のPDF処理後受信信号のうち、最も信号値の高いPDF処理後受信信号を得た、速度候補を、目標物体900の速度としてもよい。この場合、配列形状変更処理は、行わなくてもよい。
【0083】
<変形例2>
なお、上記実施形態では、搬送波が電波であるレーダ装置100を例にあげて説明したが、搬送波は電波に限定されない。例えば、光波等であってもよい。物体検知装置は、搬送波が光波の場合、ライダー(LADAR:Laser Detection and Ranging)装置と呼ばれる。
【0084】
なお、上述の説明で用いたフローチャートでは、複数の工程(処理)が順番に記載されているが、各工程の実行順序は、その記載の順番に制限されない。例えば、各処理を並行して実行する等、図示される工程の順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。
【0085】
また、補助記憶装置393に記憶されたプログラムは、非一時的なコンピュータ可読記録媒体(non-transitory computer-readable storage medium)に記録されたプログラム製品として提供することができる。これらは、非一時的なコンピュータ可読記録媒体に記録された各種プログラムを中長期的に記憶することに利用することが可能である。
【0086】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の基本的技術思想を逸脱しない範囲で、更なる変形・置換・調整を加えることができる。例えば、各図面に示したネットワーク構成、各要素の構成は、本発明の理解を助けるための一例であり、これらの図面に示した構成に限定されるものではない。
【0087】
最後に、本発明の好ましい形態を要約する。
(付記1)
自装置に対して相対運動する目標物体にデジタル符号変調させた複数の送信パルス信号を送信するとともに、当該目標物体で反射された前記複数の送信パルス信号を受信し、受信信号を生成する送受信部と、
前記受信信号に対し信号処理を施し、前記目標物体を検出する演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記目標物体の複数の速度候補それぞれを用いて、前記受信信号のドップラシフトを補正するドップラシフト補正を行い、ドップラシフト補正後の前記受信信号に対しパルス圧縮を行い、前記速度候補毎の第一出力信号を生成するパルスドップラフィルタバンク処理部と、
速度アンビギュイティを折り返し方向の隣接ビンに配置するよう前記第一出力信号を変形し、第二出力信号を生成する配列形状変更処理部と、
前記第二出力信号から前記目標物体を検出する目標検出処理部と、を備える物体検知装置。
(付記2)
付記1記載の物体検知装置において、
前記パルスドップラフィルタバンク処理部は、前記受信信号のヒット毎に前記ドップラシフト補正および前記パルス圧縮を行った後、積分し、前記第一出力信号を生成することが望ましい。
(付記3)
付記1または2記載の物体検知装置において、
前記配列形状変更処理部は、
前記速度候補それぞれによるグローバルドップラ周波数を、パルス繰り返し周波数(PRF)で除算した際の商である折り返し数と余りであるローカルドップラ周波数とに分解することにより、前記第一出力信号を変形することが望ましい。
(付記4)
付記3に記載の物体検知装置において、
前記目標検出処理部は、予め定めた閾値以上の信号値を有する前記第二出力信号の、前記ローカルドップラ周波数および前記繰り返し数方向の次元から、前記目標物体の速度を算出することが望ましい。
(付記5)
付記1から4のいずれかに記載の物体検知装置において、
前記第一出力信号および前記第二出力信号は、各送信パルス信号に対応する送信信号が送信された時刻からの経過時間であるファストタイム方向の次元を有する信号であり、
前記目標検出処理部は、予め定めた閾値以上の信号値を有する前記第二出力信号の、前記ファストタイム方向の次元の信号から前記目標物体の距離を算出することが望ましい。
(付記6)
付記1から5のいずれかに記載の物体検知装置において、
前記送信パルス信号を重畳する搬送波は、電波であることが望ましい。
(付記7)
物体検知装置のコンピュータによって実行される物体検知方法であって、
目標物体の複数の速度候補それぞれを用いて、受信信号のドップラシフトを補正するドップラシフト補正を行い、ドップラシフト補正後の前記受信信号に対しパルス圧縮を行い、前記速度候補毎の第一出力信号を生成するパルスドップラフィルタバンク処理ステップと、
速度アンビギュイティを折り返し方向の隣接ビンに配置するよう前記速度候補を変形し、第二出力信号を生成する配列形状変更処理ステップと、
前記第二出力信号から前記目標物体を検出する目標検出処理ステップと、を備え、
前記目標物体は、前記物体検知装置に対して相対運動し、
前記受信信号は、当該目標物体に送信したデジタル符号変調させた複数の送信パルス信号が、当該目標物体で反射された信号から生成される、物体検知方法。
(付記8)
物体検知装置のコンピュータに、
前記物体検知装置に対して相対運動する目標物体の複数の速度候補それぞれを用いて、当該目標物体に送信したデジタル符号変調させた複数の送信パルス信号が、当該目標物体で反射された信号から生成される受信信号のドップラシフトを補正するドップラシフト補正を行い、ドップラシフト補正後の前記受信信号に対しパルス圧縮を行い、前記速度候補毎の第一出力信号を生成するパルスドップラフィルタバンク処理手順と、
速度アンビギュイティを折り返し方向の隣接ビンに配置するよう前記速度候補を変形し、第二出力信号を生成する配列形状変更処理手順と、
前記第二出力信号から前記目標物体を検出する目標検出処理手順と、を実行させるプログラム。
なお、付記7-8の各形態は、付記1と同様に、付記2-6の形態に展開することが可能である。
【0088】
なお、上記の特許文献等の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし変形例の変更・調整が可能である。また、本発明の開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし変形例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0089】
100:レーダ装置、
200:送受信部、210:送信部、220:受信部、
300:演算部、
310:パルスドップラフィルタバンク処理部、310m:パルスドップラフィルタモジュール、311:ドップラシフト補正部、312:レンジFFT部、313:レンジウォーク補正部、314:マッチドフィルタ部、315:コヒーレント積分部、316:レンジIFFT部、
320:配列形状変更処理部、
330:目標検出処理部、331:電力化部、332:3Dピークサーチ部、333:閾値処理部、334:プロット抽出部、
391:CPU、392:主記憶装置、393:補助記憶装置、394:入出力I/F、395:拡張I/F、
900:目標物体、
Dsct:ドップラシフト補正項、PRI:パルス繰り返し周期、Rwct:レンジウォーク補正項、fdglb:グローバルドップラ周波数、fdlcl:ローカルドップラ周波数、nwrp:折り返し数、t:ファストタイム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-07-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自装置に対して相対運動する目標物体にデジタル符号変調させた複数の送信パルス信号を送信するとともに、当該目標物体で反射された前記複数の送信パルス信号を受信し、受信信号を生成する送受信部と、
前記受信信号に対し信号処理を施し、前記目標物体を検出する演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記目標物体の複数の速度候補それぞれを用いて、前記受信信号のドップラシフトを補正するドップラシフト補正を行い、ドップラシフト補正後の前記受信信号に対しパルス圧縮を行い、前記速度候補毎の第一出力信号を生成するパルスドップラフィルタバンク処理部と、
速度アンビギュイティを折り返し方向の隣接ビンに配置するよう前記第一出力信号を変形し、第二出力信号を生成する配列形状変更処理部と、
前記第二出力信号から前記目標物体を検出する目標検出処理部と、を備え
前記送受信部は、前記複数の送信パルス信号に対し、送信パルス毎に異なる符号系列を用いて前記デジタル符号変調し、
前記デジタル符号変調の変調方式には、周波数変調および位相変調の少なくとも一方が用いられ、
前記パルスドップラフィルタバンク処理部は、前記受信信号のヒット毎に前記ドップラシフト補正および前記パルス圧縮の処理を行った後、各ヒットの処理結果を加算し、前記第一出力信号を生成する物体検知装置。
【請求項2】
請求項1記載の物体検知装置であって、
前記配列形状変更処理部は、
前記速度候補それぞれによるグローバルドップラ周波数を、パルス繰り返し周波数(PRF)で除算した際の商である折り返し数と余りであるローカルドップラ周波数とに分解することにより、前記第一出力信号を変形する物体検知装置。
【請求項3】
請求項記載の物体検知装置であって、
前記目標検出処理部は、予め定めた閾値以上の信号値を有する前記第二出力信号の、前記ローカルドップラ周波数および前記折り返し数方向の次元から、前記目標物体の速度を算出する、物体検知装置。
【請求項4】
請求項1記載の物体検知装置であって、
前記第一出力信号および前記第二出力信号は、各送信パルス信号に対応する送信信号が送信された時刻からの経過時間であるファストタイム方向の次元を有する信号であり、
前記目標検出処理部は、予め定めた閾値以上の信号値を有する前記第二出力信号の、前記ファストタイム方向の次元の信号から前記目標物体の距離を算出する、物体検知装置。
【請求項5】
請求項1記載の物体検知装置であって、
前記送信パルス信号を重畳する搬送波は、電波である物体検知装置。
【請求項6】
物体検知装置のコンピュータによって実行される物体検知方法であって、
目標物体の複数の速度候補それぞれを用いて、受信信号のドップラシフトを補正するドップラシフト補正を当該受信信号のヒット毎に行い、ドップラシフト補正後の前記受信信号に対しパルス圧縮を行い、前記ドップラシフト補正および前記パルス圧縮の処理を行った後、各ヒットの処理結果を加算し、前記速度候補毎の第一出力信号を生成するパルスドップラフィルタバンク処理ステップと、
速度アンビギュイティを折り返し方向の隣接ビンに配置するよう前記速度候補を変形し、第二出力信号を生成する配列形状変更処理ステップと、
前記第二出力信号から前記目標物体を検出する目標検出処理ステップと、を備え、
前記目標物体は、前記物体検知装置に対して相対運動し、
前記受信信号は、当該目標物体に送信した複数の送信パルス信号が、当該目標物体で反射された信号から生成され
前記複数の送信パルス信号は、送信パルス毎に異なる符号系列を用いてデジタル符号変調され、
前記デジタル符号変調の変調方式には、周波数変調および位相変調の少なくとも一方が用いられる、物体検知方法。
【請求項7】
物体検知装置のコンピュータに、
標物体の複数の速度候補それぞれを用いて、受信信号のドップラシフトを補正するドップラシフト補正を当該受信信号のヒット毎に行い、ドップラシフト補正後の前記受信信号に対しパルス圧縮を行い、前記ドップラシフト補正および前記パルス圧縮の処理を行った後、各ヒットの処理結果を加算し、前記速度候補毎の第一出力信号を生成するパルスドップラフィルタバンク処理手順と、
速度アンビギュイティを折り返し方向の隣接ビンに配置するよう前記速度候補を変形し、第二出力信号を生成する配列形状変更処理手順と、
前記第二出力信号から前記目標物体を検出する目標検出処理手順と、を実行させるためのプログラムであって、
前記目標物体は、前記物体検知装置に対して相対運動し、
前記受信信号は、当該目標物体に送信した複数の送信パルス信号が、当該目標物体で反射された信号から生成され、
前記複数の送信パルス信号は、送信パルス毎に異なる符号系列を用いてデジタル符号変調され、
前記デジタル符号変調の変調方式には、周波数変調および位相変調の少なくとも一方が用いられるプログラム
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明の第一の視点によれば、
自装置に対して相対運動する目標物体にデジタル符号変調させた複数の送信パルス信号を送信するとともに、当該目標物体で反射された前記複数の送信パルス信号を受信し、受信信号を生成する送受信部と、
前記受信信号に対し信号処理を施し、前記目標物体を検出する演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記目標物体の複数の速度候補それぞれを用いて、前記受信信号のドップラシフトを補正するドップラシフト補正を行い、ドップラシフト補正後の前記受信信号に対しパルス圧縮を行い、前記速度候補毎の第一出力信号を生成するパルスドップラフィルタバンク処理部と、
速度アンビギュイティを折り返し方向の隣接ビンに配置するよう前記第一出力信号を変形し、第二出力信号を生成する配列形状変更処理部と、
前記第二出力信号から前記目標物体を検出する目標検出処理部と、を備え
前記送受信部は、前記複数の送信パルス信号に対し、送信パルス毎に異なる符号系列を用いて前記デジタル符号変調し、
前記デジタル符号変調の変調方式には、周波数変調および位相変調の少なくとも一方が用いられ、
前記パルスドップラフィルタバンク処理部は、前記受信信号のヒット毎に前記ドップラシフト補正および前記パルス圧縮の処理を行った後、各ヒットの処理結果を加算し、前記第一出力信号を生成する物体検知装置が提供される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明の第二の視点によれば、
物体検知装置のコンピュータによって実行される物体検知方法であって、
目標物体の複数の速度候補それぞれを用いて、受信信号のドップラシフトを補正するドップラシフト補正を当該受信信号のヒット毎に行い、ドップラシフト補正後の前記受信信号に対しパルス圧縮を行い、前記ドップラシフト補正および前記パルス圧縮の処理を行った後、各ヒットの処理結果を加算し、前記速度候補毎の第一出力信号を生成するパルスドップラフィルタバンク処理ステップと、
速度アンビギュイティを折り返し方向の隣接ビンに配置するよう前記速度候補を変形し、第二出力信号を生成する配列形状変更処理ステップと、
前記第二出力信号から前記目標物体を検出する目標検出処理ステップと、を備え、
前記目標物体は、前記物体検知装置に対して相対運動し、
前記受信信号は、当該目標物体に送信した複数の送信パルス信号が、当該目標物体で反射された信号から生成され
前記複数の送信パルス信号は、送信パルス毎に異なる符号系列を用いてデジタル符号変調され、
前記デジタル符号変調の変調方式には、周波数変調および位相変調の少なくとも一方が用いられる、物体検知方法が提供される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
本発明の第三の視点によれば、
物体検知装置のコンピュータに、
標物体の複数の速度候補それぞれを用いて、受信信号のドップラシフトを補正するドップラシフト補正を当該受信信号のヒット毎に行い、ドップラシフト補正後の前記受信信号に対しパルス圧縮を行い、前記ドップラシフト補正および前記パルス圧縮の処理を行った後、各ヒットの処理結果を加算し、前記速度候補毎の第一出力信号を生成するパルスドップラフィルタバンク処理手順と、
速度アンビギュイティを折り返し方向の隣接ビンに配置するよう前記速度候補を変形し、第二出力信号を生成する配列形状変更処理手順と、
前記第二出力信号から前記目標物体を検出する目標検出処理手順と、を実行させるためのプログラムであって、
前記目標物体は、前記物体検知装置に対して相対運動し、
前記受信信号は、当該目標物体に送信した複数の送信パルス信号が、当該目標物体で反射された信号から生成され、
前記複数の送信パルス信号は、送信パルス毎に異なる符号系列を用いてデジタル符号変調され、
前記デジタル符号変調の変調方式には、周波数変調および位相変調の少なくとも一方が用いられるプログラムが提供される。
【手続補正書】
【提出日】2024-11-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自装置に対して相対運動する目標物体にデジタル符号変調させた複数の送信パルス信号を送信するとともに、当該目標物体で反射された前記複数の送信パルス信号を受信し、受信信号を生成する送受信部と、
前記受信信号に対し信号処理を施し、前記目標物体を検出する演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記目標物体の複数の速度候補それぞれを用いて、前記受信信号のドップラシフトを補正するドップラシフト補正を行い、前記ドップラシフト補正後の前記受信信号に対し、レンジウォーク補正およびパルス圧縮を行い、前記速度候補毎の第一出力信号を生成するパルスドップラフィルタバンク処理部と、
速度アンビギュイティを折り返し方向の隣接ビンに配置するよう前記第一出力信号を変形し、第二出力信号を生成する配列形状変更処理部と、
前記第二出力信号から前記目標物体を検出する目標検出処理部と、を備え、
前記送受信部は、前記複数の送信パルス信号に対し、送信パルス毎に異なる符号系列を用いて前記デジタル符号変調し、
前記デジタル符号変調の変調方式には、周波数変調および位相変調の少なくとも一方が用いられ、
前記パルスドップラフィルタバンク処理部は、前記受信信号のヒット毎に並列に前記ドップラシフト補正、前記レンジウォーク補正、および前記パルス圧縮の処理を行った後、各ヒットの処理結果を加算し、前記第一出力信号を生成し、
前記ドップラシフト補正は、前記受信信号における目標ドップラ周波数のオフセットをキャンセルするドップラシフト補正項を算出して、前記受信信号のドップラシフトを補正する補正であり、
前記レンジウォーク補正は、PRI(Pulse Repetition Interval)間の前記目標物体の移動をキャンセルするレンジウォーク補正項を算出して、前記ドップラシフト補正後の前記受信信号のレンジウォークおよび前記PRI間の位相変化を補正する補正である、物体検知装置。
【請求項2】
請求項1記載の物体検知装置であって、
前記配列形状変更処理部は、
前記速度候補それぞれによるグローバルドップラ周波数を、パルス繰り返し周波数(PRF)で除算した際の商である折り返し数と余りであるローカルドップラ周波数とに分解することにより、前記第一出力信号を変形する物体検知装置。
【請求項3】
請求項2記載の物体検知装置であって、
前記目標検出処理部は、予め定めた閾値以上の信号値を有する前記第二出力信号の、前記ローカルドップラ周波数および前記折り返し数方向の次元から、前記目標物体の速度を算出する、物体検知装置。
【請求項4】
請求項1記載の物体検知装置であって、
前記第一出力信号および前記第二出力信号は、各送信パルス信号に対応する送信信号が送信された時刻からの経過時間であるファストタイム方向の次元を有する信号であり、
前記目標検出処理部は、予め定めた閾値以上の信号値を有する前記第二出力信号の、前記ファストタイム方向の次元の信号から前記目標物体の距離を算出する、物体検知装置。
【請求項5】
請求項1記載の物体検知装置であって、
前記送信パルス信号を重畳する搬送波は、電波である物体検知装置。
【請求項6】
物体検知装置のコンピュータによって実行される物体検知方法であって、
目標物体の複数の速度候補それぞれを用いて、受信信号のヒット毎に並列に、当該受信信号のドップラシフトを補正するドップラシフト補正を行い前記ドップラシフト補正後の前記受信信号に対し、レンジウォーク補正およびパルス圧縮を行い、前記ドップラシフト補正、前記レンジウォーク補正、および前記パルス圧縮の処理を行った後、各ヒットの処理結果を加算し、前記速度候補毎の第一出力信号を生成するパルスドップラフィルタバンク処理ステップと、
速度アンビギュイティを折り返し方向の隣接ビンに配置するよう前記速度候補を変形し、第二出力信号を生成する配列形状変更処理ステップと、
前記第二出力信号から前記目標物体を検出する目標検出処理ステップと、を備え、
前記目標物体は、前記物体検知装置に対して相対運動し、
前記受信信号は、当該目標物体に送信した複数の送信パルス信号が、当該目標物体で反射された信号から生成され、
前記複数の送信パルス信号は、送信パルス毎に異なる符号系列を用いてデジタル符号変調され、
前記デジタル符号変調の変調方式には、周波数変調および位相変調の少なくとも一方が用いられ
前記ドップラシフト補正は、前記受信信号における目標ドップラ周波数のオフセットをキャンセルするドップラシフト補正項を算出して、前記受信信号のドップラシフトを補正する補正であり、
前記レンジウォーク補正は、PRI(Pulse Repetition Interval)間の前記目標物体の移動をキャンセルするレンジウォーク補正項を算出して、前記ドップラシフト補正後の前記受信信号のレンジウォークおよび前記PRI間の位相変化を補正する補正である、物体検知方法。
【請求項7】
物体検知装置のコンピュータに、
目標物体の複数の速度候補それぞれを用いて、受信信号のヒット毎に並列に、当該受信信号のドップラシフトを補正するドップラシフト補正を行い前記ドップラシフト補正後の前記受信信号に対し、レンジウォーク補正およびパルス圧縮を行い、前記ドップラシフト補正、前記レンジウォーク補正、および前記パルス圧縮の処理を行った後、各ヒットの処理結果を加算し、前記速度候補毎の第一出力信号を生成するパルスドップラフィルタバンク処理手順と、
速度アンビギュイティを折り返し方向の隣接ビンに配置するよう前記速度候補を変形し、第二出力信号を生成する配列形状変更処理手順と、
前記第二出力信号から前記目標物体を検出する目標検出処理手順と、を実行させるためのプログラムであって、
前記目標物体は、前記物体検知装置に対して相対運動し、
前記受信信号は、当該目標物体に送信した複数の送信パルス信号が、当該目標物体で反射された信号から生成され、
前記複数の送信パルス信号は、送信パルス毎に異なる符号系列を用いてデジタル符号変調され、
前記デジタル符号変調の変調方式には、周波数変調および位相変調の少なくとも一方が用いられ
前記ドップラシフト補正は、前記受信信号における目標ドップラ周波数のオフセットをキャンセルするドップラシフト補正項を算出して、前記受信信号のドップラシフトを補正する補正であり、
前記レンジウォーク補正は、PRI(Pulse Repetition Interval)間の前記目標物体の移動をキャンセルするレンジウォーク補正項を算出して、前記ドップラシフト補正後の前記受信信号のレンジウォークおよび前記PRI間の位相変化を補正する補正であるプログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明の第一の視点によれば、
自装置に対して相対運動する目標物体にデジタル符号変調させた複数の送信パルス信号を送信するとともに、当該目標物体で反射された前記複数の送信パルス信号を受信し、受信信号を生成する送受信部と、
前記受信信号に対し信号処理を施し、前記目標物体を検出する演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記目標物体の複数の速度候補それぞれを用いて、前記受信信号のドップラシフトを補正するドップラシフト補正を行い、前記ドップラシフト補正後の前記受信信号に対し、レンジウォーク補正およびパルス圧縮を行い、前記速度候補毎の第一出力信号を生成するパルスドップラフィルタバンク処理部と、
速度アンビギュイティを折り返し方向の隣接ビンに配置するよう前記第一出力信号を変形し、第二出力信号を生成する配列形状変更処理部と、
前記第二出力信号から前記目標物体を検出する目標検出処理部と、を備え、
前記送受信部は、前記複数の送信パルス信号に対し、送信パルス毎に異なる符号系列を用いて前記デジタル符号変調し、
前記デジタル符号変調の変調方式には、周波数変調および位相変調の少なくとも一方が用いられ、
前記パルスドップラフィルタバンク処理部は、前記受信信号のヒット毎に並列に前記ドップラシフト補正、前記レンジウォーク補正、および前記パルス圧縮の処理を行った後、各ヒットの処理結果を加算し、前記第一出力信号を生成し、
前記ドップラシフト補正は、前記受信信号における目標ドップラ周波数のオフセットをキャンセルするドップラシフト補正項を算出して、前記受信信号のドップラシフトを補正する補正であり、
前記レンジウォーク補正は、PRI(Pulse Repetition Interval)間の前記目標物体の移動をキャンセルするレンジウォーク補正項を算出して、前記ドップラシフト補正後の前記受信信号のレンジウォークおよび前記PRI間の位相変化を補正する補正である、物体検知装置が提供される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明の第二の視点によれば、
物体検知装置のコンピュータによって実行される物体検知方法であって、
目標物体の複数の速度候補それぞれを用いて、受信信号のヒット毎に並列に、当該受信信号のドップラシフトを補正するドップラシフト補正を行い前記ドップラシフト補正後の前記受信信号に対し、レンジウォーク補正およびパルス圧縮を行い、前記ドップラシフト補正、前記レンジウォーク補正、および前記パルス圧縮の処理を行った後、各ヒットの処理結果を加算し、前記速度候補毎の第一出力信号を生成するパルスドップラフィルタバンク処理ステップと、
速度アンビギュイティを折り返し方向の隣接ビンに配置するよう前記速度候補を変形し、第二出力信号を生成する配列形状変更処理ステップと、
前記第二出力信号から前記目標物体を検出する目標検出処理ステップと、を備え、
前記目標物体は、前記物体検知装置に対して相対運動し、
前記受信信号は、当該目標物体に送信した複数の送信パルス信号が、当該目標物体で反射された信号から生成され、
前記複数の送信パルス信号は、送信パルス毎に異なる符号系列を用いてデジタル符号変調され、
前記デジタル符号変調の変調方式には、周波数変調および位相変調の少なくとも一方が用いられ
前記ドップラシフト補正は、前記受信信号における目標ドップラ周波数のオフセットをキャンセルするドップラシフト補正項を算出して、前記受信信号のドップラシフトを補正する補正であり、
前記レンジウォーク補正は、PRI(Pulse Repetition Interval)間の前記目標物体の移動をキャンセルするレンジウォーク補正項を算出して、前記ドップラシフト補正後の前記受信信号のレンジウォークおよび前記PRI間の位相変化を補正する補正である、物体検知方法が提供される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
本発明の第三の視点によれば、
物体検知装置のコンピュータに、
目標物体の複数の速度候補それぞれを用いて、受信信号のヒット毎に並列に、当該受信信号のドップラシフトを補正するドップラシフト補正を行い前記ドップラシフト補正後の前記受信信号に対し、レンジウォーク補正およびパルス圧縮を行い、前記ドップラシフト補正、前記レンジウォーク補正、および前記パルス圧縮の処理を行った後、各ヒットの処理結果を加算し、前記速度候補毎の第一出力信号を生成するパルスドップラフィルタバンク処理手順と、
速度アンビギュイティを折り返し方向の隣接ビンに配置するよう前記速度候補を変形し、第二出力信号を生成する配列形状変更処理手順と、
前記第二出力信号から前記目標物体を検出する目標検出処理手順と、を実行させるためのプログラムであって、
前記目標物体は、前記物体検知装置に対して相対運動し、
前記受信信号は、当該目標物体に送信した複数の送信パルス信号が、当該目標物体で反射された信号から生成され、
前記複数の送信パルス信号は、送信パルス毎に異なる符号系列を用いてデジタル符号変調され、
前記デジタル符号変調の変調方式には、周波数変調および位相変調の少なくとも一方が用いられ
前記ドップラシフト補正は、前記受信信号における目標ドップラ周波数のオフセットをキャンセルするドップラシフト補正項を算出して、前記受信信号のドップラシフトを補正する補正であり、
前記レンジウォーク補正は、PRI(Pulse Repetition Interval)間の前記目標物体の移動をキャンセルするレンジウォーク補正項を算出して、前記ドップラシフト補正後の前記受信信号のレンジウォークおよび前記PRI間の位相変化を補正する補正であるプログラムが提供される。