IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171198
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】磁気センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/02 20060101AFI20241204BHJP
   G01R 33/09 20060101ALI20241204BHJP
   G01D 5/14 20060101ALI20241204BHJP
   H10N 50/20 20230101ALI20241204BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20241204BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20241204BHJP
   G02B 7/08 20210101ALI20241204BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20241204BHJP
【FI】
G01R33/02 W
G01R33/09
G01D5/14 F
H10N50/20
G03B5/00 J
G02B7/04 E
G02B7/08 Z
G03B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088152
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(74)【代理人】
【識別番号】100127177
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 貴子
(72)【発明者】
【氏名】小林 尚史
【テーマコード(参考)】
2F077
2G017
2H044
2K005
5F092
【Fターム(参考)】
2F077AA21
2F077JJ09
2F077TT11
2F077UU26
2G017AA02
2G017AA03
2G017AA10
2G017AC01
2G017AC07
2G017AD55
2G017AD63
2G017AD65
2G017BA09
2H044BE10
2H044BE18
2H044DB02
2H044DE06
2K005CA23
2K005CA40
2K005CA53
5F092AA20
5F092AB01
5F092AC11
5F092BB16
5F092BB21
5F092BB29
5F092BB41
5F092FA09
(57)【要約】
【課題】強いZ磁場が印加された場合であっても検知磁場範囲が低下しにくい磁気センサを提供することを目的とする。
【解決手段】磁気検出素子を有する磁界検出部と、第1方向において前記磁界検出部を挟むように位置する第1磁気シールド及び第2磁気シールドと、前記第1方向と直交する第2方向において、前記磁界検出部の側方に位置する第3磁気シールドと、を有する、磁気センサ。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気検出素子を有する磁界検出部と、
第1方向において前記磁界検出部を挟むように位置する第1磁気シールド及び第2磁気シールドと、
前記第1方向と直交する第2方向において、前記磁界検出部の側方に位置する第3磁気シールドと、を有する、
磁気センサ。
【請求項2】
磁気検出素子を有する磁界検出部と、
第1方向において前記磁界検出部を挟むように位置する第1磁気シールド及び第2磁気シールドと、
前記第1方向の磁束を収束し、前記磁界検出部に印加される磁束を減少する第3磁気シールドと、を有する、
磁気センサ。
【請求項3】
前記第3磁気シールドの一部又は全部が、前記第1磁気シールドと前記第2磁気シールドとの間に位置する、
請求項1又は2に記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記第3磁気シールドが、前記第1方向と直交する前記第2方向において扁平な形状を有する、
請求項1又は2に記載の磁気センサ。
【請求項5】
前記磁界検出部を複数有し、
前記第3磁気シールドが、前記複数の磁界検出部毎に形成される、
請求項1又は2に記載の磁気センサ。
【請求項6】
前記第1方向の磁界成分を前記第1方向に直交する第2方向の磁界成分に変換して、前記磁界検出部に印加する磁界変換部をさらに有する、
請求項1又は2に記載の磁気センサ。
【請求項7】
前記磁界変換部の位置が、前記第1方向と直行する方向から見たときに、前記第3磁気シールドの位置と重なる、
請求項6に記載の磁気センサ。
【請求項8】
前記磁気検出素子が、前記第1方向に直交する前記第2方向に対して、傾斜して位置する、
請求項1又は2に記載の磁気センサ。
【請求項9】
前記磁界検出部を複数有し、
前記複数の磁界検出部が、ブリッジ回路で接続されている、
請求項1又は2に記載の磁気センサ。
【請求項10】
前記磁界検出部の位置が、前記第1方向と直行する方向から見たときに、前記第3磁気シールドの位置と重なる、
請求項1又は2に記載の磁気センサ。
【請求項11】
前記磁界検出部の位置が、前記第1方向と直行する方向から見たときに、前記第3磁気シールドの前記第1方向の中心位置と重なる、
請求項10に記載の磁気センサ。
【請求項12】
前記第3磁気シールドが、前記第1磁気シールド及び前記第2磁気シールドの一方又は両方と接する、
請求項1又は2に記載の磁気センサ。
【請求項13】
前記第3磁気シールドが、前記第1磁気シールド及び前記第2磁気シールドの一方又は両方と離間する、
請求項1又は2に記載の磁気センサ。
【請求項14】
前記第3磁気シールドが、前記第1方向に直交する前記第2方向において、前記磁界検出部を囲う、
請求項1又は2に記載の磁気センサ。
【請求項15】
請求項1又は2に記載の磁気センサを備えたオートフォーカス機構及び/又は光学式手振れ補正機構を含む、
カメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の用途において、物理量(例えば、移動体の回転移動や直線的移動による位置や移動量(変化量)等)を検出するための物理量検出装置(位置検出装置)が用いられている。この物理量検出装置としては、外部磁場の変化を検出可能な磁気センサと、磁気センサに対する相対的な位置を変化させ得る磁界発生部(例えば磁石)とを備えるものが知られており、外部磁場の変化に応じたセンサ信号が磁気センサから出力される。
【0003】
磁気センサとしては、被検出磁界を検出する磁気センサ素子が基板上に設けられているものが知られており、かかる磁気センサ素子としては、外部磁場の変化に応じて抵抗が変化する磁気抵抗効果素子(GMR素子、TMR素子等)等が用いられている。
【0004】
上記磁気抵抗効果素子は、外部磁場に応じて磁化方向を変化させ得るフリー層と、磁化方向が固定されている磁化固定層と、フリー層及び磁化固定層の間に介在する非磁性層とを少なくとも有する積層構造により構成される。このような構造を有する磁気抵抗効果素子においては、フリー層の磁化方向と磁化固定層の磁化方向との角度により当該磁気抵抗効果素子の抵抗値が定まる。そして、外部磁場に応じてフリー層の磁化方向が変化し、それによるフリー層及び磁化固定層の磁化方向の角度が変化することで、磁気抵抗効果素子の抵抗値が変化する。この抵抗値の変化により、外部磁場の変化に応じたセンサ信号が出力される。基板上に設けられている磁気抵抗効果素子は、基板の面に平行な方向の磁界に対して感度を有するように構成される場合が多い。
【0005】
一方で、磁気センサにおいては、基板上に設けられている磁気抵抗効果素子によって、基板の面に垂直な方向の磁界を検出するような要求もある。例えば、特許文献1には、基板の面方向に沿った外部磁界を遮蔽する磁気シールドと、磁界検出部と、基板面に対する垂直方向の磁界成分を基板の面方向の磁界成分に変換し磁界検出部に印加する磁界変換部と、を有する磁気センサが開示されている。
【0006】
なお、特許文献2には、垂直に配向した磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)などの磁気デバイスに対して、垂直及び面方向の外部磁場からの干渉を最小限とするための磁気シールドが開示されている。しかしながら、特許文献2に記載されるような技術はMRAMに対する外部磁界の干渉を遮蔽するための技術であり、外部磁界を検出する磁気センサに用いる磁気シールド技術とは根本的に異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-123321号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2023/0014296号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年では、光学式手ブレ補正(OIS)などのカメラモジュールにおいて、レンズの大型化などを背景に、強い駆動力が必要とされている。そのため、モジュールの駆動磁石から発生する磁場がより強力になってきている。そうした環境では検知磁場強度もより強力となり、使用される磁気センサにおいては、より広い磁場検知範囲が求められる。
【0009】
しかしながら、基板の面に垂直な方向の磁場が強い場合には、基板の面に垂直な方向の磁界を検出する磁気センサ(以下、「Z軸磁気センサ」ともいう。)の磁場検知範囲が低下するという問題が生じる。これは、Z軸磁気センサに対して、強い基板の面に垂直な方向の磁場(以下、「Z磁場」ともいう。)が印加された場合、例えばTMR素子のフリー層磁化がZ方向に回転し始めることで出力が低下してしまうこと等に由来する。このようなフリー層磁化の回転は、Z磁場の検知範囲を広げる上での障害となる。
【0010】
特に、基板の面方向に沿った外部磁界を遮蔽する磁気シールドがTMR素子の上下に配置される場合、Z方向の磁束がその磁気シールドにより収束され、TMR素子により強いZ磁場が印加される。その結果、検知磁場範囲がさらに低下しやすくなるという問題がある。
【0011】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、強いZ磁場が印加された場合であっても検知磁場範囲が低下しにくい磁気センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様に係る磁気センサは、磁気検出素子を有する磁界検出部と、第1方向において前記磁界検出部を挟むように位置する第1磁気シールド及び第2磁気シールドと、前記第1方向と直交する第2方向において、前記磁界検出部の側方に位置する第3磁気シールドと、を有する。
【0013】
また、本開示の一態様に係る磁気センサは、磁気検出素子を有する磁界検出部と、第1方向において前記磁界検出部を挟むように位置する第1磁気シールド及び第2磁気シールドと、前記第1方向の磁束を収束し、前記磁界検出部に印加される磁束を減少する第3磁気シールドと、を有する。
【0014】
本開示の一態様に係る磁気センサにおいて、前記第3磁気シールドの一部又は全部が、前記第1磁気シールドと前記第2磁気シールドとの間に位置してもよい。また、第3磁気シールドは、前記第1方向と直交する前記第2方向において扁平な形状を有してもよい。
【0015】
本開示の一態様に係る磁気センサは、前記磁界検出部を複数有し、前記第3磁気シールドが、複数の前記磁界検出部毎に形成されてもよい。
【0016】
本開示の一態様に係る磁気センサは、前記第1方向の磁界成分を前記第1方向に直交する第2方向の磁界成分に変換して、前記磁界検出部に印加する磁界変換部をさらに有してもよい。
【0017】
本開示の一態様に係る磁気センサは、第1方向と直行する方向から見たときに、前記磁界変換部の位置が、前記第3磁気シールドの位置と重ってもよい。また、第1方向と直行する方向から見たときに、前記磁界検出部の位置は、前記第3磁気シールドの位置と重なってもよく、第1方向において、前記磁界検出部の位置が、前記第3磁気シールドの中心位置と重なってもよい。
【0018】
本開示の一態様に係る磁気センサにおいて、磁気検出素子は、前記第1方向に直交する前記第2方向に対して、傾斜して位置してもよい。
【0019】
本開示の一態様に係る磁気センサは、前記磁界検出部を複数有し、複数の前記磁界検出部が、ブリッジ回路で接続されていてもよい。
【0020】
本開示の一態様に係る磁気センサは、前記第3磁気シールドが、前記第1磁気シールド及び前記第2磁気シールドの一方又は両方と接していてもよいし、前記第3磁気シールドが、前記第1磁気シールド及び前記第2磁気シールドの一方又は両方と離間していてもよい。
【0021】
本開示の一態様に係る磁気センサは、前記第3磁気シールドが、前記第1方向に直交する前記第2方向において、前記磁界検出部を囲っていてもよい。
【0022】
本開示の一態様に係るカメラモジュールは、上記磁気センサを備えたオートフォーカス機構及び/又は光学式手振れ補正機構を含む。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、強いZ磁場が印加された場合であっても検知磁場範囲が低下しにくい磁気センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A図1Aは、本実施形態に係る磁気センサの概略構成を示す斜視図である。
図1B図1Bは、図1Aにおける磁気センサの平面図である。
図2A図2Aは、第1磁気シールド及び第2磁気シールドによるZ方向の磁束の収束を示す概略図である。
図2B図2Bは、第3磁気シールドが磁路を形成し、磁界検出部に印加される第1磁界成分を低減する態様を示す概略図である。
図2C図2Cは、Z方向磁場500mTを印加したときのZ磁場シミュレーションを示す図である。
図3A図3Aは、本実施形態に係る磁気センサの概略構成を示す斜視図である。
図3B図3Bは、本実施形態に係る磁気センサの概略構成を示す側面図である。
図3C図3Cは、本実施形態に係る磁気センサの概略構成を示す側面図である。
図3D図3Dは、本実施形態に係る磁気センサの概略構成を示す側面図である。
図3E図3Eは、本実施形態に係る磁気センサの概略構成を示す側面図である。
図3F図3Fは、本実施形態に係る磁気センサの概略構成を示す側面図である。
図3G図3Gは、本実施形態に係る磁気センサの概略構成を示す側面図である。
図3H図3Hは、本実施形態に係る磁気センサの概略構成を示す側面図である。
図3I図3Iは、図3Hにおける範囲Sの部分拡大図である。
図3J図3Jは、磁気抵抗効果素子の抵抗Rの算出式を示す概略図である。
図3K図3Kは、磁気抵抗効果素子の抵抗Rの算出式を示す概略図である。
図4A図4Aは、本実施形態に係る磁気センサの概略構成を示す平面図である。
図4B図4Bは、本実施形態に係る磁気センサの概略構成を示す平面図である。
図4C図4Cは、本実施形態に係る磁気センサの概略構成を示す平面図である。
図4D図4Dは、本実施形態に係る磁気センサの概略構成を示す平面図である。
図5図5は、磁気コンパスとして構成された磁気センサの一例を示す平面図である。
図6A図6Aは、カメラモジュールのオートフォーカス機構及び光学式手振れ補正機構の一部として用いられた磁気センサの一例を示す斜視図である。
図6B図6Bは、図6Aに示されたカメラモジュールの内部構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある場合がある。
【0026】
必要に応じて、「X方向」、「Y方向」、「Z方向」、「XY面方向」を規定している。ここで、「XY面方向」は、磁気センサが構成される基板の面方向であり、本開示の一実施形態における第1磁気シールド又は第2磁気シールドの面方向でもある。「X方向」及び「Y方向」は、XY面内における互いに直交する方向である。さらに、「Z方向」は、磁気センサが構成される基板の厚さ方向であり、XY面方向に対して垂直な方向でもある。
【0027】
なお、本開示における「第1方向」はZ方向であってよく、「第2方向」はXY面の任意方向であってよい。
【0028】
形状及び/又は幾何学的条件を意味する用語及び/又は数値は、厳密な意味に縛られる必要はなく、同様の機能を期待してもよい程度の範囲を含むものと解釈してもよい。例えば、「平行」及び/又は「直交」等が上記の用語に該当する。また、「長さの値」及び/又は「角度の値」等が上記の数値に該当する。
【0029】
ある構成が他の構成の「上に」、「下に」、「上側に」、「下側に」、「上方に」、又は「下方に」あると表現する場合には、ある構成が他の構成に直接的に接している態様と、ある構成と他の構成との間に別の構成が含まれている態様が含まれてもよい。ある構成と他の構成との間に別の構成が含まれている態様とは、言い換えると、ある構成が他の構成に間接的に接していると表現してもよい。また、「上」、「上側」、又は「上方」という表現は、「下」、「下側」、又は「下方」という表現と交換可能である。言い換えると、上下方向が逆転してもよい。また、左右においても同様である。
【0030】
同一部分及び/又は同様な機能を有する部分に、同一の符号又は類似の符号を付す際に、繰り返しの記載は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は、実際の比率とは異なる場合がある。また、実施形態の構成の一部が、図面から省略される場合がある。
【0031】
矛盾の生じない範囲で、実施形態の一つ以上の形態と変形例の一つ以上の形態とを組み合わせてもよい。また、矛盾の生じない範囲で、実施形態の一つ以上の形態同士を組み合わせてもよい。また、矛盾の生じない範囲で、変形例の一つ以上の形態同士を組み合わせてもよい。
【0032】
製造方法などの方法に関して複数の工程を開示する場合に、開示されている工程の間に、開示されていないその他の工程が実施されてもよい。また、矛盾の生じない範囲で、工程の順序は、限定されない。
【0033】
図1Aは、本開示の一実施形態に係る磁気センサ100の概略構成を示す斜視図である。また、図1Bは、図1Aにおける磁気センサ100の第1磁気シールド131側からの平面図を示す。図1Bにおいては、第1磁気シールド131は表現していない。
【0034】
図1A及び図1Bに示すように、磁気センサ100は、磁界変換部110と、磁界検出部120と、磁気シールド130と、を有する。図1Aに示すように、磁気シールド130は、磁界検出部120のZ方向の上下に位置する第1磁気シールド131及び第2磁気シールド132と、磁界検出部120のX方向の左右に位置する第3磁気シールド133を有する。以下、各構成について詳説する。
【0035】
磁界変換部110は、Z方向の磁界成分(以下、「第1磁界成分H1」ともいう)をXY面の任意方向の磁界成分(以下、「第2磁界成分H2」ともいう)に変換し、磁界検出部120に対して第2磁界成分H2を印加する。これにより、磁界検出部120は、第1磁界成分H1の変化に応じた信号を出力することができる。
【0036】
磁界変換部110と磁界検出部120の位置関係は、特に制限されないが、磁界検出部120は磁界変換部110からの出力磁界が印加され得る位置に設けられてよい。また、一つの磁界検出部120に対して一つの磁界変換部110が設けられていてもよいし、複数の磁界検出部120に対して一つの磁界変換部110が設けられていてもよい。
【0037】
磁界変換部110は、軟磁性体により構成される一又は複数のヨーク111により構成されてもよい。図1A及び図1Bには、ヨーク111をY方向に延伸した直方体形状として示すが、ヨーク111の形状は、磁界検出部120に対して第2磁界成分H2を印加することのできる形状であれば特に制限されない。
【0038】
ヨーク111を構成する材料としては、特に制限されないが、例えば、パーマロイ(NiFe)などの軟磁性材料が挙げられる。
【0039】
磁界検出部120は、第2磁界成分H2に応じた信号を出力する。ここで、第2磁界成分H2は、第1磁界成分H1が磁界変換部110によって変換されたものである。また、後述する第1磁気シールド131及び第2磁気シールド132により、磁界検出部120がXY面方向の外部磁場から遮蔽される。そのため、磁界検出部120が出力する信号は、第1磁界成分H1の変化に応じた信号となる。
【0040】
磁界検出部120は、一又は複数の磁気検出素子121を有してもよい。磁気検出素子としては、磁場を検出する機能を有する素子であればよく、例えば、トンネル磁気抵抗効果素子(TMR素子)、巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)、異方性磁気抵抗素子(AMR素子)、ホール素子、その他種の磁気検出素子が挙げられる。このなかでも、TMR素子は、他種のMR素子と比べて接合面積が小さくセンサチップを小型化でき、MR比が大きくセンサチップの出力を大きくできるため、磁気検出素子121に特に好適である。
【0041】
図1A及び図1Bに示すように、磁界検出部120における磁気検出素子121の個数や配置は例示であってこれに限定されるものではない。例えば、磁界検出部120は、1つの磁気検出素子121を有してもよいし、マトリクス状に配置された複数の磁気検出素子121が直列に電気的に接続された素子列を有してもよい。図1A及び図1Bにおいては、磁界検出部120として複数の磁気検出素子121が直列に電気的に接続された素子列の態様を示す。
【0042】
また、磁気センサ100は、複数の磁界検出部120を有してもよい。例えば、磁気センサ100は4つの磁界検出部120を有し、4つの磁界検出部120は、互いにブリッジ接続してなるホイートストンブリッジ回路などのブリッジ回路を構成してもよい。また、磁気センサ100が複数の磁界検出部120が1組となった磁界検出部群を4組有し、4組の磁界検出部群が、互いにブリッジ接続してなるホイートストンブリッジ回路を構成してもよい。なお、磁界検出部群では、複数の磁界検出部120が、直列に接続されてもよいし、並列に接続されてもよい。
【0043】
例えば、図1Bでは、磁気センサ100が、4つの第1磁界検出部群R1、第2磁界検出部群R2、第3磁界検出部群R3及び第4磁界検出部群R4を有する態様を例示する。図1Bに示すホイートストンブリッジ回路は、電源ポートVと、グランドポートGと、第1出力ポートE1と、第2出力ポートE2と、電源ポートV及び第1出力ポートE1の間に設けられている第1磁界検出部R1と、第1出力ポートE1及びグランドポートGの間に設けられている第2磁界検出部R2と、電源ポートV及び第2出力ポートE2の間に設けられている第3磁界検出部R3と、第2出力ポートE2及びグランドポートGの間に設けられている第4磁界検出部R4とを含む。電源ポートVには、定電流源が接続されることで所定の大きさの電源電圧(定電流)が印加され、グランドポートGはグランドに接続される。電源ポートVに供給される定電流は、図示しないドライバICにより所定の電流値に制御されている。なお、電源ポートVには定電圧が印加されてもよい。
【0044】
図1Bに示すブリッジ構成では、出力を得るためにヨークによって曲げられた磁場の方向と磁化固定層の方向の組み合わせを以下のようにしてもよい。例えば、第2磁気シールド132側から第1磁気シールド131側へ向かうZ方向の磁場が印加されたときは、各磁界検出部群の抵抗は以下のように変化する。第1磁界検出部群R1は、フリー層磁化が磁化固定層磁化と反平行となる方向に変化し、抵抗が上昇する。第2磁界検出部群R2は、フリー層磁化が磁化固定層磁化と平行となる方向に変化し、抵抗が減少する。第3磁界検出部群R3は、フリー層磁化が磁化固定層磁化と平行となる方向に変化し、抵抗が減少する。第4磁界検出部群R4は、フリー層磁化が磁化固定層磁化と反平行となる方向に変化し、抵抗が上昇する。この時のフリー層磁化と磁化固定層磁化との相対角度の大きさは、印加されたZ磁場の強度によって変化するため、結果的に、Z磁場の大きさを磁界検出部群の抵抗変化によるホイートストンブリッジ回路における差動電位(E1-E2)という形で得ることができる。
【0045】
磁界検出部120は、図1A及び図1Bに示すように、XY面方向に対して平行に位置してもよいし、図3Hに示すように、XY面方向に対して傾斜して位置してもよい。磁界検出部120がXY面方向に対して平行に位置する場合には、XY面方向に対して傾斜して位置する場合に比較して、製造効率がより向上する傾向にある。また、磁界検出部120がXY面方向に対して傾斜して位置する場合には、磁界変換部110は必須の構成としなくともよい。
【0046】
より具体的には、図3Iに示すように、図3Hにおける範囲Sの部分拡大図では、角度θ傾斜して位置する磁界検出部120は、Z方向の磁界成分Bzを、Bzsinθとして検知することができる。そのため、角度θ傾斜して位置する磁界検出部120に対しては、磁界変換部110を用いて、Z方向の磁界成分をXY面の任意方向の磁界成分に変換する必要がない。
【0047】
また、このように、磁界変換部110を設けない構成とすることで、磁界変換部110を設ける場合と比較して、相対的に均一な磁場を印加できる。例えば、Z方向の磁界成分は、ヨーク111によってXY面の任意方向の磁界成分に変換される。このとき、磁界検出部120に印加されるXY面の任意方向の磁界成分の強度は、ヨーク111からのXY面方向の距離に応じて変化する。そのため、磁界検出部120にはXY面方向において不均一な面内磁場が印加される。より具体的には、例えばヨーク111の端部近傍では面内に変換された磁場成分が大きく、一方でヨーク111の端部から外側に離れるほど面内磁場成分は減少する。そのため、ヨーク111の端部に近い磁界検出部120の端部と、ヨーク111の端部から遠い磁界検出部120の端部を比較すると、前者は大きい面内磁場を受け、後者は相対的に弱い面内磁場を受ける。これに対し、磁界検出部120がXY面方向に対して傾斜して配置し、磁界変換部110を設けない構成とすることで、このようなヨーク111からの距離による面内磁場の不均一性の問題を回避でき、面内磁場の不均一性による磁界検出部120の抵抗変化の線形性の影響を回避することができる。
【0048】
第1磁気シールド131と第2磁気シールド132は、Z方向に沿ってみたときに、磁界検出部120を間に挟むように位置する。すなわち、第1磁気シールド131と第2磁気シールド132は、Z方向において磁界検出部120と重なっている。これにより、XY面方向の磁束は第1磁気シールド131と第2磁気シールド132により収束され、磁界検出部120がXY面方向の外部磁場から遮蔽される。そのため、磁界検出部120には、Z方向の磁場が効果的に印加される。
【0049】
なお、本実施形態における磁気センサ100が有する効果を奏する態様であれば、第1磁気シールド131と第2磁気シールド132は、Z方向において、磁界検出部120の一部に重なっていてもよいし、磁界検出部120の全部に重なっていてもよい。また、第1磁気シールド131は、Z方向において、第2磁気シールド132の一部に重なっていてもよいし、第2磁気シールド132の全部に重なっていてもよい。
【0050】
第1磁気シールド131及び第2磁気シールド132のXY面方向の形状としては、特に制限されないが、例えば、正方形状、4つの角の角度が89~91°の四角形状、4つの角が丸められた角丸長方形状、長方形の4つの角が面取りされた形状(八角形状)、楕円状を含む長円形状、長方形の対向する2つの短辺を円弧状にした形状、台形、平行四辺形、菱形等の形状が挙げられる。なお、第1磁気シールド131と第2磁気シールド132が四角形状を有する場合において、2組の対向する2辺のうちの少なくとも1組の対向する2辺は平行であってもよいし、2組の対向する2辺が非平行であってもよい。第1磁気シールド131及び第2磁気シールド132のXY面方向の形状は、同一であっても異なっていてもよい。
【0051】
また、第1磁気シールド131及び第2磁気シールド132は、図1A及び図1Bに示すように1つの磁気シールドにより構成される態様であってもよいし、XY面方向において複数の磁気シールドが並列した態様であってもよい。
【0052】
上述のとおり、第1磁気シールド131及び第2磁気シールド132により、磁界検出部120に対するXY面方向の磁場が遮蔽されるが、その一方で、第1磁気シールド131及び第2磁気シールド132はZ方向の磁束を収束する。そのため、図2Aに示すように、第1磁気シールド131と第2磁気シールド132の間に位置する磁界検出部120にはより強いZ方向の磁場が印加されることとなる。
【0053】
上述したように、図3J及び図3Kを用いて、第1磁界成分H1が大きくなるにつれてTMRのZ方向の磁場の検知磁場範囲が低下するメカニズムについてより具体的に説明する。一般にTMRの抵抗Rは、フリー層の磁化角度θfreeと磁化固定層の磁化角度θpinの差、及び、TMRのコンダクタンスGとコンダクタンス変動の振幅dGを用いて表すことができる。図3Jでは、簡単のため磁化角度θpinが0である場合を示す。本実施形態においては、磁界変換部110により、Z方向の第1磁界成分H1の一部が、XY面の任意方向の第2磁界成分H2に変換されて磁界検出部120に印加される。第2磁界成分H2のみが印加された場合には、フリー層の磁化が面内に回転し磁化角度θfreeが変化する。この時の抵抗Rの計算式を図3Jに示す。
【0054】
これに対して、Z方向の磁場が強くなる、すなわち第1磁界成分H1が大きくなるにつれて、フリー層の磁化は、図3Kに示すように、第2磁界成分H2により面内に回転すると同時に、第1磁界成分H1によってXY面に対して磁界角度Φfreeだけ回転する。これにより、図3Kに示すように、第1磁界成分H1が小さいとき、すなわちΦfreeがゼロに近いときには、Cos(Φfree)はほぼ1であり、抵抗Rの変動にほとんど寄与しない。しかしながら、第1磁界成分H1が大きくなるにつれて、磁界角度Φfreeが90度に近づき、その結果としてCos(Φfree)はゼロに近づく。これにより、抵抗Rの変動幅が小さくなり、結果として、Z方向の磁場の検知磁場範囲の低下をもたらす。
【0055】
そのため、本開示の一実施形態に係る磁気センサ100においては、図2Bに示すように、第3磁気シールド133を用いる。これにより、第3磁気シールド133が、磁路を形成し、磁界検出部120に印加される第1磁界成分H1を低減することができる。その結果、Z方向の磁場が強い場合でも、フリー層の磁化が面直方向に回転することによって引き起こされる出力低下を抑制することができ、検知磁場範囲の向上を図ることができる。なお、図2Bにおいては、磁界変換部110及び磁界検出部120を省略して示している。
【0056】
続いて、第3磁気シールド133について詳説する。第3磁気シールド133は、磁界検出部120のXY面方向の側方に位置する。すなわち、第3磁気シールド133は、Z方向において磁界検出部120と重なっていない。この第3磁気シールド133は、第1磁気シールド131と第2磁気シールド132の間におけるZ方向の磁束を収束し、Z方向の磁路を形成する。そのため、磁界検出部120に印加される第1磁界成分H1の一部は、第3磁気シールド133によって収束され、磁界検出部120に印加される第1磁界成分H1の磁場強度が減少する。これにより、検知磁場範囲の低下が抑制され、Z方向の検知磁場範囲の広い磁気センサ100を実現できる。
【0057】
図2Cに、Z方向磁場を印加したときのZ磁場シミュレーションを示す。図2Cの縦軸は、外部Z磁場Bz_extに対する、測定位置におけるZ方向磁場Bzの比率を示す。図2Cに示すように、第1磁気シールド131、第2磁気シールド132、及び第3磁気シールド133を組み合わせて用いたModel 1は、第1磁気シールド131、第2磁気シールド132、及び第3磁気シールド133のいずれかを欠くModel 2~4と比較して、Z方向の磁路形成が安定化し、優れたZ方向の検知磁場範囲の低下抑制効果が得られる。
【0058】
さらに、図2Cに示すように、第1磁気シールド131、第2磁気シールド132、及び第3磁気シールド133を組み合わせて用いるModel 1は、例えば、第1磁気シールド131及び第2磁気シールド132の一方又は両方が存在しないModel 2,4などに比べて、XY面方向の任意の位置においてより均一なZ方向の磁場強度が得られる。そのため、磁界検出部120のXY面方向の配置位置の違いによる感度の変動を低減できる。これにより、製造プロセスにおいて、磁気検出素子121のXY面方向の設置位置がずれたとしても、当該ずれによる感度変動を抑えることができる。また、図1Bに示すように、複数の磁気検出素子121を広く配置される場合において、磁気検出素子121の配置位置の違いによる感度変動も抑えられる。
【0059】
第1磁気シールド131、第2磁気シールド132、及び第3磁気シールド133は、一体化されてもよいし、一体化されなくとも磁気的に結合されたものでもよい。
【0060】
第1磁気シールド131、第2磁気シールド132、及び第3磁気シールド133の構成材料としては、特に制限されないが、例えば、パーマロイ(NiFe)などの軟磁性材料が挙げられる。
【0061】
続いて、第3磁気シールド133の態様についてさらに説明する。図3A図3Hに、Z方向における第3磁気シールド133の態様を示す。図3A図3Hは、磁気センサ100の概略構成を示す側面図である。また、図4A図4Dに、XY面方向に平行な断面における第3磁気シールド133の態様を示す。図4A図4Dは、磁気センサ100の第1磁気シールド131側からの平面図を示す。なお、図4A図4Dにおいては、第1磁気シールド131は表現していない。
【0062】
図3Aに示すように、第3磁気シールド133の全部が、第1磁気シールド131と第2磁気シールド132との間に位置してもよい。また、図3Bに示すように、第3磁気シールド133の一部が、第1磁気シールド131と第2磁気シールド132との間に位置してもよい。言い換えれば、第3磁気シールド133の一部は、第1磁気シールド131と第2磁気シールド132との間に位置しなくてもよい。
【0063】
図3Cに示すように、本実施形態における磁気センサ100が有する効果を奏する態様であれば、第3磁気シールド133が、第1磁気シールド131と第2磁気シールド132との間に位置しなくてもよい。図3Cにおいては、第3磁気シールド133が第1磁気シールド131及び第2磁気シールド132とX方向に離間しているが、第3磁気シールド133は第1磁気シールド131及び第2磁気シールド132と接していてもよい。
【0064】
図3A図3Cのなかでも、図3Cに示すように、第3磁気シールド133の全部が、第1磁気シールド131と第2磁気シールド132との間に位置しない場合には、第3磁気シールド133が、XY面内磁場に対してヨークの様に作用して、第1磁気シールド131と第2磁気シールド132のXY磁場に対する飽和が促進される傾向にある。一方で、図3Aに示すように、第3磁気シールド133の全部が、第1磁気シールド131と第2磁気シールド132との間に位置する場合には、第1磁気シールド131と第2磁気シールド132のXY磁場に対する飽和が促進されにくい傾向にある。また、第3磁気シールド133もXY磁場に対して飽和しにくい傾向にある。
【0065】
図3Dに示すように、第3磁気シールド133は、第1磁気シールド131と第2磁気シールド132との間に位置し、かつ、第1磁気シールド131に接していてもよい。また、図3Eに示すように、第3磁気シールド133は、第1磁気シールド131と第2磁気シールド132との間に位置し、かつ、第2磁気シールド132に接していてもよい。さらに、図3Fに示すように、第3磁気シールド133は、第1磁気シールド131と第2磁気シールド132との間に位置し、かつ、第1磁気シールド131と第2磁気シールド132の両方に接していてもよい。
【0066】
あるいは、図3Aに示すように、第3磁気シールド133は、第1磁気シールド131と第2磁気シールド132との間に位置し、かつ、第1磁気シールド131と第2磁気シールド132の両方と離間していてもよい。
【0067】
第3磁気シールド133は、図3Aに示すように、XY面方向に扁平な形状を有してもよい。XY面方向に扁平な形状を有する場合、Z方向において、第3磁気シールド133のZ方向の長さは、XY面方向の長さよりも短い。これにより、Z方向が形状磁気異方性の困難軸となるため、第3磁気シールド133のZ方向の磁化が飽和しにくい。そのため、磁界検出部120に印加される第1磁界成分H1の磁場強度がより強い磁場まで効果的に減少する傾向にある。
【0068】
Z方向において、第3磁気シールド133の位置h1は、図3Aに示すように、磁界変換部110の位置h2と重なってもよいし、図3Eに示すように、重なってなくてもよい。このなかで、第3磁気シールド133のZ方向の位置h1は磁界変換部110のZ方向の位置h2と重なっていることが好ましい。これにより、第3磁気シールド133によるXY面方向の磁界成分が磁界変換部110に印加されにくくなる。そのため、磁界検出部120の検出精度がより向上する傾向にある。なお、第3磁気シールド133のZ方向の位置h1は、第3磁気シールド133における、第1磁気シールド131側の面133aと第2磁気シールド132側の面133bで挟まれる部分である。また、磁界変換部110のZ方向の位置h2は、磁界変換部110における、第1磁気シールド131側の面110aと第2磁気シールド132側の面110bで挟まれる部分である。位置h1と位置h2とが重なるとは、面133a及び面133bの少なくとも一方が、面110a及び面110bの間に位置することを意味する。
【0069】
Z方向において、第3磁気シールド133の位置h1は、図3Aに示すように、磁界検出部120の位置h3と重なってもよいし、図3Dに示すように、重なってなくてもよい。このなかで、第3磁気シールド133のZ方向の位置h1は、Z方向と直交する方向から見たときに、磁界検出部120のZ方向の位置h3と重なることが好ましい。なかでも、図3Aに示すように、Z方向において、第3磁気シールド133のZ方向の中心位置h1’が、Z方向と直交する方向から見たときに、磁界検出部120のZ方向の位置h3と重なることが好ましい。これにより、Z磁場が印加された際に第3磁気シールド133によりXY面方向に変換された磁界成分が磁界検出部120により印加されにくくなる。そのため、磁界検出部120の検出精度がより向上する傾向にある。なお、磁界検出部120のZ方向の位置h3は、磁界検出部120における、第1磁気シールド131側の面120aと第2磁気シールド132側の面120bで挟まれる部分である。中心位置h1’が位置h3と重なるとは、中心位置h1’における面133cが、面120a及び面120bの間に位置することを意味する。
【0070】
第3磁気シールド133は、図3A図3Fに示すように、第1磁気シールド131と第2磁気シールド132の縁に位置する態様のほか、図3Gに示すように、第1磁気シールド131と第2磁気シールド132の縁よりも奥、例えば中央に位置してもよい。
【0071】
図4Aに示すように、第3磁気シールド133は、第1磁気シールド131及び第2磁気シールド132のすべての縁を囲うように位置してもよい。言い換えると、第3磁気シールド133は、磁界検出部120を囲うように位置してもよい。また、図4Bに示すように、第3磁気シールド133は、第1磁気シールド131及び第2磁気シールド132の一部の縁を囲うように位置してもよい。言い換えると、第3磁気シールド133は、磁界検出部120を部分的に囲うように位置してもよい。
【0072】
図4Cに示すように、第3磁気シールド133は、第1磁気シールド131及び第2磁気シールド132の縁に形成される必要はなく、縁よりも奥、例えば中央に位置してもよい。
【0073】
図4Dに示すように、第3磁気シールド133は、本実施形態における磁気センサ100が有する効果を奏する態様であれば、第3磁気シールド133の全部が、第1磁気シールド131と第2磁気シールド132との間に位置しなくてもよい。図4Dにおいては、第3磁気シールド133が第1磁気シールド131及び第2磁気シールド132とX方向に離間しているが、第3磁気シールド133は第1磁気シールド131及び第2磁気シールド132と接していてもよい。
【0074】
磁気センサ100が磁界検出部120を複数有するときは、第3磁気シールド133は磁界検出部120毎に位置してもよい。また、第1磁気シールド131及び第2磁気シールド132がXY面方向において複数の磁気シールドが並列した態様である場合には、第3磁気シールド133は、複数の第1磁気シールド131及び第2磁気シールド132の組み合わせ毎に位置してもよい。
【0075】
次に、磁気センサ100の製造方法について簡単に説明する。磁気検出素子121を形成する工程では、まず、後に複数の磁気検出素子121となる複数の初期磁気検出素子を形成する。複数の初期磁気検出素子の各々は、後に磁化固定層となる初期磁化固定層と、フリー層と、ギャップ層と、反強磁性層とを含んでいる。
【0076】
次に、レーザ光と、所定の方向の外部磁界とを用いて、初期磁化固定層の磁化の方向を、所定の方向に固定する。これにより、初期磁化固定層は磁化固定層52になり、初期磁気検出素子は磁気検出素子121となる。
【0077】
次いで、このようにして磁気検出素子121が形成された磁気センサチップを、支持基板に接着剤等で固定する。そして、磁気センサチップを覆うように支持基板面上に樹脂層を形成する。次いで、樹脂層の電極の位置にビアのための貫通孔を開口し、支持基板と磁気センサチップとを電気的に接続して磁気センサ100を得てもよい。
【0078】
本開示の磁気センサ100は、カメラモジュールのオートフォーカス機構や光学式手振れ補正機構の一部として用いてもよい。
【0079】
図5は、地磁気の角度に対応した検出値を生成する磁気コンパスとして構成された磁気センサ100の一例を示す図である。図5に示すように、磁気センサ100は、三つのセンサチップ3(第1~第3センサチップ31,32,33)を備え、外部磁界の互いに直交する三方向の成分を第1~第3センサチップ31,32,33がそれぞれ検出するように構成されている。
【0080】
図6Aは、カメラモジュール200のオートフォーカス機構及び光学式手振れ補正機構の一部として用いられた磁気センサ100の一例を示す斜視図である。図6Bは、図6Aに示されたカメラモジュール200の内部構造を示す側面図である。カメラモジュール200のオートフォーカス機構及び光学式手振れ補正機構は、レンズ220を移動させる駆動装置230を備え、複数の磁気センサ100が検出したレンズ220の位置情報に基づいて駆動装置230を制御する。
【0081】
詳しく述べると、オートフォーカス機構は、イメージセンサやオートフォーカスセンサ等によって被写体に焦点が合った状態を検出し、レンズをイメージセンサに対してZ方向に移動させる。光学式手振れ補正機構は、ジャイロセンサ等によって手振れを検出し、レンズをイメージセンサに対してU方向及び/又はV方向に移動させる。
【0082】
図6Aに示されたカメラモジュール200は、CMOS等のイメージセンサ210、イメージセンサ210に対して位置合わせされるレンズ220、イメージセンサ210に対してU方向及びV方向に移動可能な第1保持部材241、第1保持部材241に対してZ方向に移動可能な第2保持部材242、第1保持部材241及び第2保持部材242を支持する弾性変形可能な複数のワイヤ244、第1保持部材241及び第2保持部材242を移動させる駆動装置230、それらを収容する筐体250等を備えている。
【0083】
カメラモジュール200のオートフォーカス機構及び光学式手振れ補正機構は、駆動装置230、複数の磁気センサ100に加え、駆動装置230を制御するプロセッサ、被写体に焦点が合った状態を検出するオートフォーカスセンサ、手振れを検出するジャイロセンサ等を備えている。図示しないプロセッサ、オートフォーカスセンサ、ジャイロセンサ等は、筐体の外部に配置されている。
【0084】
レンズ220は、筒状に形成された第2保持部材242の内部に固定されている。第2保持部材242は、箱状に形成された第1保持部材241にレンズ220ごと収容されている。第2保持部材242には、少なくとも一つの磁気センサ100が第2保持部材242の位置情報を検出するために、少なくとも一つの第2磁石243が固定されている。
【0085】
駆動装置230は、複数の第1コイル231、複数の第2コイル232、複数の第1磁石233等を備えている。筐体250には、複数の第1コイル231が固定されている。第2保持部材242には、複数の第2コイル232が固定されている。第1保持部材241には、複数の第1磁石233が固定されている。複数の第1コイル231の各々は、対応する第1磁石233に対向している。複数の第2コイル232の各々は、対応する第1磁石233に対向している。
【0086】
オートフォーカス機構の場合、プロセッサからの指令で任意の第2コイル232に電流が流れると、第1磁石233から発生する磁界と第2コイル232から発生する磁界との相互作用によって、第2コイル232に固定されている第2保持部材242が、Z方向に移動する。少なくとも一つの磁気センサ100は、第2保持部材242に固定された少なくとも一つの第2磁石243から発生する磁界と第1保持部材241に固定された第1磁石233から発生する磁界とが合成された合成磁界に基づいて検出信号を生成し、プロセッサに送信する。プロセッサは、検出信号からZ方向におけるレンズ220の位置情報を検出し、被写体に焦点が合うように駆動装置230を制御する。
【0087】
光学式手振れ補正機構の場合、プロセッサからの指令で任意の第1コイル231に電流が流れると、第1磁石233から発生する磁界と第1コイル231から発生する磁界との相互作用により、第1磁石233に固定されている第1保持部材241がU方向及び/又はV方向に移動する。複数の磁気センサ100の各々は、対応する第1磁石233の位置に基づいて 検出信号を生成し、プロセッサに送信する。プロセッサは、検出信号からU方向及びV方向におけるレンズ220の位置情報を検出し、手振れを補正するように駆動装置230を制御する。
【0088】
以上説明した実施形態は、本開示の理解を容易にするためのものであり、本開示を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0089】
例えば、本実施形態における磁気センサはXY面内における位置変化やZ方向における位置変化をZ方向の磁場の変化から検知する用途に用いてもよい。当該磁気センサを備えるアプリケーションとしては、例えば、ロボットの関節機構等に用いられるアクチュエータ、ノートパソコンの開閉検知機構、ジョイスティック、ブラシレスモータ、磁気エンコーダ等の電子機器が挙げられる。
【符号の説明】
【0090】
3…センサチップ、30…磁気検出素子、31…第1センサチップ、32…第2センサチップ、33…第3センサチップ、52…磁化固定層、100…磁気センサ、110…磁界変換部、111…ヨーク、120…磁界検出部、121…磁気検出素子、130…磁気シールド、131…第1磁気シールド、132…第2磁気シールド、133…第3磁気シールド、200…カメラモジュール、210…イメージセンサ、220…レンズ、230…駆動装置、231…第1コイル、232…第2コイル、233…第1磁石、241…第1保持部材、242…第2保持部材、243…第2磁石、244…ワイヤ、250…筐体、300…磁石。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B