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特開2024-1712自動運転システム、運転整理方法、および運転整理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001712
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】自動運転システム、運転整理方法、および運転整理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231227BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20231227BHJP
   G08G 1/04 20060101ALI20231227BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20231227BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20231227BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/09 C
G08G1/04 A
G08G1/00 D
B60W60/00
B60W30/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100558
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 貴広
(72)【発明者】
【氏名】加藤 聖也
(72)【発明者】
【氏名】布施 康宏
(72)【発明者】
【氏名】近藤 明宏
(72)【発明者】
【氏名】新 吉高
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA15
3D241CD09
3D241CE02
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB15
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL06
5H181MB02
(57)【要約】
【課題】リスクエリアを正確に設定して安全な自動運転を実現することのできる自動運転システム、運転整理方法、および運転整理プログラムを提供する。
【解決手段】業務情報データベース101及びインフラ情報データベース103に記録された計画上あるいは運用上の現場情報からリスク種別を特定し、リスク種別に基づき現場領域のうち所定領域をリスクエリアとして設定するリスクエリア設定部111と、現場領域内を走行する車両2の車両位置情報及びリスクエリア設定部111で設定されたリスクエリアに基づき、車両2の走行ルートを設定する車両ルート設定部117と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現場領域内の業務計画もしくは業務変更に関する業務情報を記録する業務情報データベースと、
前記現場領域内のインフラセンサによるインフラ情報を記録するインフラ情報データベースと、
前記業務情報データベース及び前記インフラ情報データベースに記録された計画上あるいは運用上の現場情報からリスク種別を特定し、前記リスク種別に基づき前記現場領域のうち所定領域をリスクエリアとして設定するリスクエリア設定部と、
前記現場領域内を走行する車両の車両位置情報及び前記リスクエリア設定部で設定された前記リスクエリアに基づき、前記車両の走行ルートを設定する車両ルート設定部と、を備えることを特徴とする自動運転システム。
【請求項2】
請求項1に記載の自動運転システムであって、
前記リスクエリア設定部は、前記現場領域のうち所定エリアごとに前記リスク種別に基づくエリアリスク値を算出し、前記リスク種別及び前記エリアリスク値に基づき特定した所定エリアを前記リスクエリアとして設定することを特徴とする自動運転システム。
【請求項3】
請求項2に記載の自動運転システムであって、
前記リスクエリア設定部は、前記エリアリスク値の増加量が所定の変化量を超える所定エリアを検出エリアとして特定し、前記検出エリア及び前記検出エリアの前記エリアリスク値を構成する前記リスク種別に基づき特定した所定エリアを前記リスクエリアとして設定することを特徴とする自動運転システム。
【請求項4】
請求項2に記載の自動運転システムであって、
前記リスクエリア設定部は、前記リスク種別及び前記エリアリスク値に基づき前記リスクエリアの範囲を設定するリスクエリア範囲設定テーブルを記録したリスクエリア範囲データベースを有し、前記リスクエリア範囲データベースに記録された前記リスクエリア範囲設定テーブルに基づき前記リスクエリアの範囲を設定することを特徴とする自動運転システム。
【請求項5】
請求項2に記載の自動運転システムであって、
前記リスクエリア設定部は、前記リスクエリアとして設定した前記所定エリアの前記エリアリスク値の減少量が所定の変化量を超えた場合、前記リスクエリアを再設定することを特徴とする自動運転システム。
【請求項6】
請求項2に記載の自動運転システムであって、
前記リスクエリア設定部は、前記リスクエリアとして設定した前記所定エリアの前記エリアリスク値の減少量が所定の変化量を超えた場合、前記所定エリアを前記リスクエリアから解除することを特徴とする自動運転システム。
【請求項7】
請求項1に記載の自動運転システムであって、
前記車両ルート設定部は、前記リスクエリア内に存在する車両に対して第1条件に基づき走行ルートを設定し、前記リスクエリア外に存在する車両に対して前記第1条件とは異なる第2条件に基づき走行ルートを設定することを特徴とする自動運転システム。
【請求項8】
請求項7に記載の自動運転システムであって、
前記車両ルート設定部は、前記リスクエリア外から前記リスクエリア内へ進行することが計画されている車両に対して、前記第1条件及び前記第2条件とは異なる第3条件に基づき走行ルートを設定することを特徴とする自動運転システム。
【請求項9】
現場領域内の業務計画もしくは業務変更に関する業務情報を記録する業務情報記録ステップと、
前記現場領域内のインフラセンサによるインフラ情報を記録するインフラ情報記録ステップと、
前記業務情報記録ステップ及び前記インフラ情報記録ステップで記録された計画上あるいは運用上の現場情報からリスク種別を特定し、前記リスク種別に基づき前記現場領域のうち所定領域をリスクエリアとして設定するリスクエリア設定ステップと、
前記現場領域内を走行する車両の車両位置情報及び前記リスクエリア設定ステップで設定された前記リスクエリアに基づき、前記車両の走行ルートを設定する車両ルート設定ステップと、を含むことを特徴とする運転整理方法。
【請求項10】
現場領域内の業務計画もしくは業務変更に関する業務情報を記録する業務情報記録手順と、
前記現場領域内のインフラセンサによるインフラ情報を記録するインフラ情報記録手順と、
前記業務情報記録手順及び前記インフラ情報記録手順で記録された計画上あるいは運用上の現場情報からリスク種別を特定し、前記リスク種別に基づき前記現場領域のうち所定領域をリスクエリアとして設定するリスクエリア設定手順と、
前記現場領域内を走行する車両の車両位置情報及び前記リスクエリア設定手順で設定された前記リスクエリアに基づき、前記車両の走行ルートを設定する車両ルート設定手順と、をコンピューターに実行させるための運転整理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転システム、運転整理方法、および運転整理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
フィールド上に設置されたインフラセンサで検知されるインフラ情報を用いてフィールド内の車両の自動運転を行うインフラ協調型の自動運転システムがある。インフラ協調型自動運転システムは、車両単体のセンサ(車載センサ)を使用する制御方式とは異なり、フィールド上にインフラセンサを設置することにより、車載センサの死角からの飛出し等、車載センサのみでは回避困難であるアクシデント要因に対する安全性を担保することが可能である。インフラセンサからのフィールド情報により、自動運転システムは制御/管理している多くのエリアに関する物体情報(危険情報)を把握することができる。
【0003】
ところで、取得した情報からの危険状態は、危険状態を構成するリスクの種類によって異なる。例えば、事故発生による危険状態は、事故対応などでその周辺エリアにおける危険ポテンシャルが上昇する。そのため、危険状態により広域のエリアを危険エリア(リスクエリアとも称する)に設定する必要がある。また、設定した広域の危険エリアにおいて、特定のエリアのリスク値が減少した場合は、生産性の観点から、リスク値が減少したエリアの危険エリア設定を部分的に解除する必要がある。
【0004】
このようなエリアリスクを考慮した車両制御/運行管理に関する公知技術として特許文献1がある。
【0005】
特許文献1には、課題として「危険状態多発地帯の処理の際に、一の急ブレーキ発生事象であるにも関わらず、発生頻度が高くなり、危険状態多発地帯であると誤って認識されてしまう」ことが記載され、解決手段として「車両の走行情報から、第1の車両において危険状態が発生した第1の時刻と第1の発生場所と、第2の車両において危険状態が発生した第2の時刻と第2の発生場所とを抽出し、抽出した第1の時刻と第2の時刻とが所定の時間幅内であり、かつ、第1の発生場所と第2の発生場所とが所定の距離範囲内であることを検出すると、第1の車両の危険状態の発生と、第2の車両の危険状態の発生とを統合して1つの危険状態の発生としてカウントする、処理を実行させる」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-075791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に所載の従来技術は、急ブレーキなど危険時の安全制御回数を統合して危険エリア拡大を防止するが、急ブレーキ発生事象だけで危険エリアを判定するので判定ミスにより危険エリアを見逃す可能性がある。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、リスクエリアを正確に設定して安全な自動運転を実現することのできる自動運転システム、運転整理方法、および運転整理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る自動運転システムは、現場領域内の業務計画もしくは業務変更に関する業務情報を記録する業務情報データベースと、前記現場領域内のインフラセンサによるインフラ情報を記録するインフラ情報データベースと、前記業務情報データベース及び前記インフラ情報データベースに記録された計画上あるいは運用上の現場情報からリスク種別を特定し、前記リスク種別に基づき前記現場領域のうち所定領域をリスクエリアとして設定するリスクエリア設定部と、前記現場領域内を走行する車両の車両位置情報及び前記リスクエリア設定部で設定された前記リスクエリアに基づき、前記車両の走行ルートを設定する車両ルート設定部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る運転整理方法は、現場領域内の業務計画もしくは業務変更に関する業務情報を記録する業務情報記録ステップと、前記現場領域内のインフラセンサによるインフラ情報を記録するインフラ情報記録ステップと、前記業務情報記録ステップ及び前記インフラ情報記録ステップで記録された計画上あるいは運用上の現場情報からリスク種別を特定し、前記リスク種別に基づき前記現場領域のうち所定領域をリスクエリアとして設定するリスクエリア設定ステップと、前記現場領域内を走行する車両の車両位置情報及び前記リスクエリア設定ステップで設定された前記リスクエリアに基づき、前記車両の走行ルートを設定する車両ルート設定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る運転整理プログラムは、現場領域内の業務計画もしくは業務変更に関する業務情報を記録する業務情報記録手順と、前記現場領域内のインフラセンサによるインフラ情報を記録するインフラ情報記録手順と、前記業務情報記録手順及び前記インフラ情報記録手順で記録された計画上あるいは運用上の現場情報からリスク種別を特定し、前記リスク種別に基づき前記現場領域のうち所定領域をリスクエリアとして設定するリスクエリア設定手順と、前記現場領域内を走行する車両の車両位置情報及び前記リスクエリア設定手順で設定された前記リスクエリアに基づき、前記車両の走行ルートを設定する車両ルート設定手順と、をコンピューターに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、現場情報からリスク種別を特定して現場領域からリスクエリアを設定するため、リスクエリアを正確に設定して安全な自動運転を実現することができる。
【0013】
上記した以外の課題、構成および効果については、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る自動運転システムの概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る自動運転システムの構成図である。
図3】リスク種別DBの説明図である。
図4】リスクエリア範囲DBの説明図である。
図5】エリアリスク値一覧DBの説明図である。
図6】リスクエリア設定部のリスクエリア設定の動作例の説明図である。
図7】リスクエリア設定部のリスクエリア解除(再設定)の動作例の説明図である。
図8】リスクエリア設定部及び車両ルート設定部の動作例(事故発生によるリスクエリア)の説明図である。
図9】リスクエリア設定部及び車両ルート設定部の動作例(センサ死角や機器故障によるリスクエリア)の説明図である。
図10】リスクエリア設定部及び車両ルート設定部の動作例(人や有人車両によるリスクエリア)の説明図である。
図11】情報表示部の表示画面の表示例の説明図である。
図12】管制装置のメインルーチンのフローチャートである。
図13】管制装置のサブルーチン(リスクエリア設定処理)のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る自動運転システム1の概略構成図である。
【0017】
自動運転システム1は、車両(自動運転車両)2と、インフラセンサ3と、管制装置4とを備えている。
【0018】
車両(自動運転車両)2は、管制装置4から走行ルート情報を受け取ることにより、走行エリアである現場領域内を自走する自動運転を行う。なお、車両(自動運転車両)2は、所定の状況下においては車両2に搭載したセンサで取得した情報や地図情報などを用いて現場領域内で自動運転を行ってもよい。また、車両(自動運転車両)2は、車両2に搭載したセンサで取得した情報や地図情報などを用いて検出した車両位置情報を管制装置4に出力してもよい。
【0019】
インフラセンサ(フィールドセンサなどとも称する)3は、現場領域内の物体(対象物)を検知するためのセンサである。インフラセンサ3は、例えば現場領域上に設置されたカメラ、LiDAR、レーダーなどで構成されている。インフラセンサ3は、現場領域内の物体の検知情報(以下、インフラ情報とも称する)を管制装置4に出力する。また、インフラセンサ3は、現場領域内を走行する車両2を検知してその車両位置情報を管制装置4に出力してもよい。
【0020】
管制装置4は、インフラセンサ3の検知情報(インフラ情報)などから現場領域内の車両2の走行ルートを設定し、設定した走行ルートを無線通信により車両2に送信する。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態に係る自動運転システム1の構成図であり、特に管制装置4の内部構成を示している。
【0022】
自動運転システム1の管制装置4は、記憶部として、業務情報データベース(DB)101、リスク種別データベース(DB)102、インフラ情報データベース(DB)103、リスクエリア範囲データベース(DB)105、エリアリスク値一覧データベース(DB)107、車両ルート一覧データベース(DB)109を備え、機能部として、リスクエリア設定部111、車両ルート設定部(リルート設定部とも称する)117、情報表示部119を備えている。リスクエリア設定部111は、エリアリスク値算出部113、リスクエリア検出部115を有する。
【0023】
業務情報DB101は、システムのオペレータから入力あるいは送信された業務計画もしくは業務変更に関する業務情報を保存(記録)する。ここでの業務情報には、現場領域内の道路や機器の保守情報などといった計画上の現場情報が含まれる。
【0024】
インフラ情報DB103は、インフラセンサ3による検知情報(インフラ情報)を保存(記録)する。ここでのインフラ情報には、現場領域内の人や車両(有人車両、自動運転車両など)の有無の情報やセンサ死角の情報などといった運用上の現場情報が含まれる。
【0025】
リスク種別DB102は、リスク種別ごとのリスク点数(リスク値)の情報を保存(記録)する。図3に示すように、リスク種別DB102において、リスク値は、リスク種別ごとに分離して管理されている。
【0026】
リスクエリア範囲DB105は、後述するようにリスク種別及びエリアリスク値に基づきリスクエリアの範囲を設定するリスクエリア範囲設定テーブルを保存(記録)する。リスクエリア範囲設定テーブルは、図4に示すように、後述する検出エリアに含まれるリスク種別と、リスクエリア設定範囲との関係を規定するテーブルである。
【0027】
エリアリスク値一覧DB107は、図5に示すように、現場領域において予め設定された所定エリアごとに算出したエリアリスク値(リスク値合計)や、そのエリアリスク値及びリスク種別に基づき設定したリスクエリアの情報を保存(記録)する(詳細は後で説明)。
【0028】
車両ルート一覧DB109は、後述するようにリスクエリアに基づき設定した車両2ごとの走行ルート(車両ルート)の情報を保存(記録)する。
【0029】
リスクエリア設定部111のエリアリスク値算出部113は、業務情報DB101に保存された業務計画もしくは業務変更に関する業務情報あるいはインフラ情報DB103に保存されたインフラセンサ3の検知情報(インフラ情報)からリスク種別を特定し、システムが管理する全領域(言い換えると、インフラセンサ3の検知領域)のエリアリスク値を算出する。エリアリスク値算出部113は、現場領域内の予め設定された所定エリアごとに、特定したリスク種別に基づいてエリアリスク値を算出する。エリアリスク値算出部113は、リスク種別DB102(図3)を参照し、前記所定エリアごとに、特定したリスク種別のリスク値の合計値によってエリアリスク値を決定する。所定エリアごとに算出されたエリアリスク値は、エリアリスク値を構成するリスク種別とともに、エリアリスク値一覧DB107(図5)に保存される。
【0030】
リスクエリア設定部111のリスクエリア検出部115は、以前(前回またはある時点)に算出したエリアリスク値と現在のエリアリスク値を比較し、一定の変化量が生じた場合には、エリアリスク値を構成するリスク種別により(言い換えると、エリアリスク値を構成するリスク種別との組合せによって)、リスクエリアを設定する。リスク種別との組合せとしては、事故が発生している組合せ、人や有人車両が存在する組合せ、センサ死角が存在する組合せ、機器故障が存在する組合せ、などがある(図4を併せて参照)。
【0031】
詳しくは、リスクエリア検出部115は、以前(前回またはある時点)に算出したエリアリスク値と現在のエリアリスク値を比較し、エリアリスク値の増加量が所定の変化量を超える所定エリアを検出エリアとして特定する。
【0032】
リスクエリア検出部115は、リスクエリア範囲DB105のリスクエリア範囲設定テーブル(図4)を照合し、検出エリアのエリアリスク値を構成するリスク種別がリスクエリア範囲設定テーブルのリスク種別に一致する場合、そのリスクエリア範囲設定テーブルのリスクエリア設定範囲に基づきリスクエリアを設定する。図4に示す例では、検出エリアのリスク種別として「事故」が含まれる場合、広域エリア(検出エリア+隣接2エリアなど)をリスクエリアとして設定する。また、検出エリアのリスク種別として「機器故障」や「センサ死角」が含まれる場合、検出エリア+隣接1エリアをリスクエリアとして設定する。また、検出エリアのリスク種別として「人」や「有人車両」が含まれる場合、検出エリアのみをリスクエリアとして設定する。
【0033】
図6は、リスクエリア設定部111のリスクエリア設定の動作例を示している。図6に示す例では、リスクエリア設定部111がエリアリスク値を算出した結果、エリアBにおいて一定の変化量が生じている(エリアリスク値の増加量が所定の変化量を超える)。そして、エリアBのリスク種別として「機器故障」や「センサ死角」が含まれるなどの理由により、エリアBとともにエリアBに隣接するエリアA、Cがリスクエリアとして設定されている。
【0034】
また、リスクエリア設定部111(のリスクエリア検出部115)は、リスクエリアに設定されたエリアに対するエリアリスク値の変化量に着目し、エリアリスク値が一定の減少量となった際には(言い換えると、リスクエリアとして設定した所定エリアのエリアリスク値の減少量が所定の変化量を超えた場合)、そのエリアをリスクエリアから解除するためのリスクエリア(再)設定を実施する。
【0035】
図7は、リスクエリア設定部111のリスクエリア解除(再設定)の動作例を示している。図7に示す例では、リスクエリア設定部111がエリアリスク値を算出した結果、エリアCにおいて一定の変化量が生じている(エリアリスク値の減少量が所定の変化量を超える)。そして、エリアCがリスクエリアから解除されてリスクエリアが(再)設定されている。
【0036】
リスクエリア設定部111(のリスクエリア検出部115)により設定されたリスクエリアの情報は、エリアリスク値一覧DB107(図5)に保存される。
【0037】
車両ルート設定部117は、現場領域内を走行する車両2の車両位置情報及びエリアリスク値一覧DB107から抽出したリスクエリアの情報に基づき、現場領域内を走行する車両2の走行ルートを再設定(リルート)する。前述のように、車両位置情報は、インフラセンサ3の検知情報(インフラ情報)に基づき検出してもよいし、車両2に搭載したセンサで取得した情報や地図情報などを用いて検出してもよい。
【0038】
車両ルート設定部117は、リスクエリア内に存在する車両、リスクエリア外に存在する車両、リスクエリア外から前記リスクエリア内へ進行することが計画されている車両に対して、異なる条件に基づき走行ルートを設定する。言い換えると、車両ルート設定部117は、リスクエリア内外、リスクエリア外からリスクエリア内に進行する場合で車両2の走行ルートを変更する。
【0039】
上述したように、エリアにおけるリスクの種類によってリスクエリア設定範囲が異なり(リスクエリア設定部111)、かつリスクエリアの内部と外部に存在する車両2のリルート設定方法が異なる(車両ルート設定部117)。図8図10を用いて、リスクの種類(リスク種別)ごとに、車両ルート設定部117のリルート設定方法の具体例を、リスクエリア設定部111のリスクエリア設定方法とともに説明する。
【0040】
(1)事故発生によるリスクエリア
事故発生時は、事故対応のための作業車両や緊急車両が進入するため、広域エリアの危険ポテンシャル(リスク値)が大幅に上昇する。そのため、リスクエリア設定部111は、事故発生箇所(検出エリア)を含む広域エリア(例えば、検出エリア+隣接2エリア、事故処理のための車両走行に用いる全エリア)をリスクエリアに設定する(図4のリスクエリア範囲DB105のリスクエリア範囲設定テーブルを参照)。
【0041】
この場合、車両ルート設定部117は、リスクエリア内部に存在する自動運転車両は、速やかに広域のリスクエリアから退場するリルートを設定する(図8の左図参照)。
【0042】
また、車両ルート設定部117は、リスクエリア外部に存在する自動運転車両は、広域のリスクエリアに進入しないリルートを設定する(図8の右図参照)。
【0043】
(2)センサ死角や機器故障によるリスクエリア
機器故障やセンサ死角発生時は、機器故障対応やセンサ死角除去対応のための作業車両が進入するため、周辺エリアの危険ポテンシャル(リスク値)が上昇する。そのため、リスクエリア設定部111は、危険事象発生箇所(検出エリア)を含む周辺エリア(例えば、検出エリア+隣接1エリア)をリスクエリアに設定する(図4のリスクエリア範囲DB105のリスクエリア範囲設定テーブルを参照)。
【0044】
この場合、車両ルート設定部117は、リスクエリア内部に存在する自動運転車両は、危険事象発生エリアを走行しないリルートを設定する(図9の左図参照)。
【0045】
また、車両ルート設定部117は、リスクエリア外部に存在する自動運転車両は、リスクエリアに進入しないリルートを設定する(図9の右図参照)。
【0046】
(3)人や有人車両によるリスクエリア
人や有人車両が多数存在していても作業車両などの進入は無いため、周辺エリアの危険ポテンシャル(リスク値)は変化しない。そのため、リスクエリア設定部111は、危険事象発生箇所(検出エリア)のみをリスクエリアに設定する(図4のリスクエリア範囲DB105のリスクエリア範囲設定テーブルを参照)。
【0047】
この場合、車両ルート設定部117は、リスクエリア内外を問わず、自動運転車両は、リスクエリアを走行しないリルートを設定する(図10参照)。
【0048】
車両ルート設定部117で設定された走行ルートの情報は、無線通信により車両2に送信される。車両2は、車両ルート設定部117から送信された走行ルートに基づき、現場領域内で自動運転(自動走行)を行うことができる。
【0049】
また、車両ルート設定部117で設定された走行ルートの情報は、車両ルート一覧DB109に保存される。
【0050】
情報表示部119は、例えば図11に示すように、システムのオペレータの机上の表示画面において、エリアリスク値一覧DB107及び車両ルート一覧DB109に保存された情報から、現場領域内の各エリアに対するエリアリスク値、設定したリスクエリア、設定した各車両の走行ルートなどを表示する。システムのオペレータは、机上の表示画面を参照することにより、例えばリスクエリアの把握や、各車両の走行ルートの修正などを実施することができる。
【0051】
図12図13はそれぞれ、管制装置4のメインルーチン、サブルーチン(リスクエリア設定処理)のフローチャートである。
【0052】
図12のステップS200では、センサデータがシステムに登録されたか否かを判定し、センサデータがシステムに登録された場合はステップS201に進む。
【0053】
ステップS201では、業務計画や業務変更データがシステムに登録されたか否かを判定し、業務計画や業務変更データがシステムに登録された場合はステップS202に進む。
【0054】
ステップS202では、ステップS200、S201で登録されたデータを読み出す。
【0055】
ステップS203では、リスクエリア設定部111のエリアリスク値算出部113により、現場領域内のエリアごとのエリアリスク値を算出する。
【0056】
ステップS204では、リスクエリア設定部111のリスクエリア検出部115により、リスクエリア設定処理を実行する。
【0057】
ステップS205では、車両ルート設定部117により、ステップS204で設定されたリスクエリアに基づき車両リルート設定処理を実行する。
【0058】
ステップS206では、情報表示部119により、ステップS203で算出されたエリアリスク値、ステップS204で設定されたリスクエリア、S205で設定された走行ルート(リルート)などを表示する。
【0059】
ステップS204のリスクエリア設定処理において、図13のステップS300では、エリアリスク値データからエリア全域の更新前のエリアリスク値を取得する。
【0060】
ステップS301では、エリア全域の更新前と更新後のエリアリスク値を比較する。
【0061】
ステップS302では、更新前と更新後でエリアリスク値が一定量増加したか(エリアリスク値の増加量が所定の変化量を超えたか)否かを判定する。一定量増加した場合はステップS303に進み、エリアリスク値におけるリスク種別に基づきリスクエリアの範囲を設定して(図4図6)ステップS304に進む。一定量増加していない場合はステップS303をスキップしてステップS304に進む。
【0062】
ステップS304では、更新前と更新後でエリアリスク値が一定量減少したか(リスクエリアとして設定した所定エリアのエリアリスク値の減少量が所定の変化量を超えたか)否かを判定する。一定量減少した場合はステップS305に進み、リスク種別によってリスクエリアの範囲を縮小設定する(図4図7)。一定量減少していない場合はステップS305をスキップしてリスクエリア設定処理を終了する。
【0063】
以上説明したように、本実施形態の自動運転システム1は、現場領域内の業務計画もしくは業務変更に関する業務情報を記録する業務情報データベース101と、前記現場領域内のインフラセンサ3によるインフラ情報を記録するインフラ情報データベース103と、前記業務情報データベース101及び前記インフラ情報データベース103に記録された計画上あるいは運用上の現場情報からリスク種別を特定し、前記リスク種別に基づき前記現場領域のうち所定領域をリスクエリアとして設定するリスクエリア設定部111と、前記現場領域内を走行する車両2の車両位置情報及び前記リスクエリア設定部111で設定された前記リスクエリアに基づき、前記車両2の走行ルートを設定する車両ルート設定部117と、を備える。
【0064】
前記リスクエリア設定部111は、前記現場領域のうち所定エリアごとに前記リスク種別に基づくエリアリスク値を算出し、前記リスク種別及び前記エリアリスク値に基づき特定した所定エリアを前記リスクエリアとして設定する。
【0065】
前記リスクエリア設定部111は、前記エリアリスク値の増加量が所定の変化量を超える所定エリアを検出エリアとして特定し、前記検出エリア及び前記検出エリアの前記エリアリスク値を構成する前記リスク種別に基づき(前記リスク種別との組合せによって)特定した所定エリアを前記リスクエリアとして設定する。
【0066】
前記リスクエリア設定部111は、前記リスク種別及び前記エリアリスク値に基づき前記リスクエリアの範囲を設定するリスクエリア範囲設定テーブルを記録したリスクエリア範囲データベース105を有し、前記リスクエリア範囲データベース105に記録された前記リスクエリア範囲設定テーブルに基づき前記リスクエリアの範囲を設定する。
【0067】
前記リスクエリア設定部111は、前記リスクエリアとして設定した前記所定エリアの前記エリアリスク値の減少量が所定の変化量を超えた場合、前記リスクエリアを再設定する。
【0068】
前記リスクエリア設定部111は、前記リスクエリアとして設定した前記所定エリアの前記エリアリスク値の減少量が所定の変化量を超えた場合、前記所定エリアを(部分的に)前記リスクエリアから解除する。
【0069】
すなわち、本実施形態の自動運転システム1は、計画上あるいは運用上の現場情報からリスク種別を特定し、現場領域内のうちリスク種別に基づきエリアリスク値を算出し(エリアリスク値算出部113)、リスク種別及びエリアリスク値に基づきリスクエリアを検出ないし設定し(リスクエリア検出部115)、リスクエリアに基づき、車両の走行ルートを設定する(車両ルート設定部117)。
【0070】
本実施形態によれば、現場情報からリスク種別を特定して現場領域からリスクエリアを設定するため、リスクエリアを正確に設定して安全な自動運転を実現することができる。
【0071】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形形態が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0072】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0073】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 自動運転システム
2 車両
3 インフラセンサ
4 管制装置
101 業務情報データベース(DB)
102 リスク種別データベース(DB)
103 インフラ情報データベース(DB)
105 リスクエリア範囲データベース(DB)
107 エリアリスク値一覧データベース(DB)
109 車両ルート一覧データベース(DB)
111 リスクエリア設定部
113 エリアリスク値算出部
115 リスクエリア検出部
117 車両ルート設定部
119 情報表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図13