(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017120
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】吹付け材料及び吹付け工法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/08 20060101AFI20240201BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20240201BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20240201BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20240201BHJP
C04B 22/10 20060101ALI20240201BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C04B28/08
C04B18/14 A
C04B22/06 Z
C04B22/08 Z
C04B22/10
C04B22/08 A
C04B22/14 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119558
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】三島 俊一
(72)【発明者】
【氏名】室川 貴光
(72)【発明者】
【氏名】水野 博貴
(72)【発明者】
【氏名】相澤 一裕
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MA00
4G112MB02
4G112MB06
4G112MB13
4G112PA29
4G112PB03
4G112PB05
4G112PB06
4G112PB08
4G112PB10
4G112PD01
(57)【要約】
【課題】吹付け後の初期強度を確保しながらも、セメントを実質的に含有しないことを可能とした吹付け材料及び吹付け工法を提供する。
【解決手段】スラグと、消石灰と、カルシウムアルミネートとを混合してなり、実質的にセメントを含有しない、吹付け材料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラグと、消石灰と、カルシウムアルミネートとを混合してなり、実質的にセメントを含有しない、吹付け材料。
【請求項2】
前記スラグ及び前記消石灰を含有するA材と、前記カルシウムアルミネートを含有するB材との2材型である、請求項1に記載の吹付け材料。
【請求項3】
前記スラグ、前記消石灰及び前記カルシウムアルミネートを含有する1材型である、請求項1に記載の吹付け材料。
【請求項4】
さらに、アルカリ金属炭酸塩、ケイ酸アルカリ及びミョウバン類の少なくとも1つを含有する、請求項1に記載の吹付け材料。
【請求項5】
前記消石灰は、副生消石灰である、請求項1に記載の吹付け材料。
【請求項6】
前記スラグと前記消石灰との質量比率は、98:2~10:90である、請求項1に記載の吹付け材料。
【請求項7】
請求項1に記載の吹付け材料を使用する、吹付け工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、道路、鉄道、導水路等のトンネル、及び石油やLNG備蓄施設や放射性廃棄物処分場等の地下空洞建設における露出した地山に吹付けることで、短時間で支保できる吹付け材料、それを用いて吹付ける吹付け工法に関する。
【背景技術】
【0002】
吹付け材料として、セメント、カルシウムアルミネート、及び石膏を併用した吹付け材料が提案されている(例えば、特許文献1~4参照)。これらの提案においては、短時間で強度発現性を示すために、吹付け材料にはセメントを含有させている。
しかしながら、吹付け材料に含有させるセメントは、製造過程において、多量の炭酸ガス(CO2)を排出することが知られている。地球環境保護のために炭酸ガスの排出を低下させて、環境負荷を低減させることが求められている現状においては、多量の炭酸ガスを排出するセメントの使用を控えることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-001203号公報
【特許文献2】特開2007-297227号公報
【特許文献3】特開平09-169557号公報
【特許文献4】再特表WO01/060760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記課題を鑑みて、本発明は、吹付け後の初期強度を確保しながらも、セメントを実質的に含有しないことを可能とした吹付け材料及び吹付け工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の材料を使用することにより、吹付け後の初期強度を確保しながらも、セメントを実質的に含有しないことを可能とし、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]スラグと、消石灰と、カルシウムアルミネートとを混合してなり、セメントを実質的に含有しない、吹付け材料。
[2]前記スラグ及び前記消石灰を含有するA材と、前記カルシウムアルミネートを含有するB材との2材型である、[1]に記載の吹付け材料。
[3]前記スラグ、前記消石灰及び前記カルシウムアルミネートを含有する1材型である、[1]又は[2]に記載の吹付け材料。
[4]さらに、アルカリ金属炭酸塩、ケイ酸アルカリ及びミョウバン類の少なくとも1つを含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の吹付け材料。
[5]前記消石灰は、副生消石灰である、[1]~[4]のいずれかに記載の吹付け材料。
[6]前記スラグと前記消石灰との質量比率は、98:2~10:90である、[1]~[5]のいずれかに記載の吹付け材料。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の吹付け材料を使用する、吹付け工法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、吹付け後の初期強度を確保しながらも、セメントを実質的に含有しないことを可能とした吹付け材料及び吹付け工法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明における部や%は、特に断らない限り質量基準で示す。
また、本発明の吹付け材料とは、骨材を含まない材料をいう場合があり、骨材を含む材料をいう場合もある。
【0008】
[吹付け材料]
本発明の吹付け材料は、スラグと、消石灰と、カルシウムアルミネートとを混合してなり、セメントを実質的に含有しない。
また、本発明の吹付け材料は、さらに、アルカリ金属炭酸塩、ケイ酸アルカリ及びミョウバン類の少なくとも1つを含有してもよい。
【0009】
(スラグ)
本発明で使用するスラグは、消石灰と併せて含有することで、初期凝結及び強度発現性を発揮する。
本発明の吹付け材料に含有するスラグは、特に限定されるものではないが、例えば、高炉スラグ(高炉徐冷スラグ、高炉水砕スラグ)、製鋼スラグ(転炉スラグ、電気炉スラグ)等が挙げられる。これらは、一種又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのうち、初期凝結及び強度発現性を良好に発揮し、環境負荷を低減させる観点から、高炉スラグを使用することが好ましい。本発明の吹付け材料に使用する高炉スラグとしては、例えば、CaO41~44%、Al2O313~16%、及びSiO232~36%などからなるものであることが好ましい。
【0010】
スラグのブレーン値は、2,500~10,000cm2/gが好ましく、3,500~8,500cm2/gがより好ましく、5,000~7,000cm2/gがさらに好ましい。上記下限値以上であることで、吹付け材料の優れた初期強度発現性が得られる。また、上記上限値以下であることで、吹付け材料の粘性を抑制し、圧送性を良好とすることができる。
【0011】
スラグの含有量は、吹付け材料中に30kg/m3以上であることが好ましく、80kg/m3以上であることがより好ましく、140kg/m3以上であることがさらに好ましい。スラグが吹付け材料中に140kg/m3以上であることで、吹付け材料の初期凝結及び強度発現性を発揮することができる。
【0012】
(消石灰)
本発明で使用する消石灰(Ca(OH)2)は、スラグと併せて含有することで、初期凝結及び強度発現性を促進する。
本発明の吹付け材料に含有する消石灰は特に限定されるものではなく、市販の製品や生コンプラント等の排水処理から副産する汚泥ケーキなど消石灰分を含むものが使用可能であるが、熱処理時の非エネルギー由来のCO2排出量の削減の点からも、副生消石灰であることが好ましい。
【0013】
副生消石灰としては、カルシウムカーバイド法によるアセチレンガスの製造工程で副生される副生消石灰(アセチレンガス製造方法の違いで、湿式品と乾式品がある)、カルシウムカーバイド電気炉の湿式集塵工程で捕獲されるダスト中に含まれる副生消石灰といったアセチレン副生消石灰等が挙げられる。副生消石灰は、例えば、水酸化カルシウムが65~95%(好ましくは、70~90%)で、その他に、炭酸カルシウムを1~10%、酸化鉄を0.1~6.0%(好ましくは、0.1~3.0%)含む。これらの割合は蛍光X線測定、及び示差熱重量分析(TG-DTA)で求まる質量減量分(Ca(OH)2:405℃~515℃付近、CaCO3:650℃~765℃付近)にて確認することができる。なお、レーザー回折・散乱法で測定する体積平均粒子径は、50~100μm程度である。
さらに、JIS K 0068「化学製品の水分測定方法」中、乾燥減量法で測定される水分率は、10%以下であることが好ましい。また、CaS、A12S3、及びCaC2・CaSなどイオウ化合物を含んでもよいが、2%以下であることが好ましい。
【0014】
消石灰の含有量は、吹付け材料中に5kg/m3以上であることが好ましく、80kg/m3以上であることがより好ましく、140kg/m3以上であることがさらに好ましい。消石灰が吹付け材料中に140kg/m3以上であることで、吹付け材料の初期凝結及び強度発現性を促進することができる。
【0015】
スラグと消石灰との吹付け材料中における質量比率は、98:2~10:90であることが好ましく、75:25~25:75であることがより好ましく、60:40~40:60であることがさらに好ましい。スラグと消石灰との吹付け材料中における質量比率が上記範囲内であることで、吹付け材料の初期凝結及び強度発現性を良好に発揮することができる。
【0016】
水と粉体(スラグ+消石灰)との吹付け材料中における質量比率は、30:70~70:30であることが好ましく、35:65~65:35であることがより好ましく、40:60~60:40であることがさらに好ましい。水と粉体(スラグ+消石灰)との吹付け材料中における質量比率が上記範囲内であることで、吹付け材料の初期凝結及び強度発現性を良好に発揮することができる。
【0017】
(カルシウムアルミネート)
本発明で使用するカルシウムアルミネートは、吹付け材料の初期凝結を促進させる急結成分である。
カルシウムアルミネートのCaO/Al2O3モル比は、特に限定はされないが、1.7~3.0であることが好ましく、2.3~2.8であることがより好ましく、2.4~2.7であることがさらに好ましい。カルシウムアルミネートのCaO/Al2O3モル比が上記下限値以上であることで、吹付け材料の初期凝結を促進させることができ、上記上限値以下であることで、付着強度を維持することができる。
なお、カルシウムアルミネートのCaO/Al2O3モル比は、例えば蛍光X線分析により求めることができる。
【0018】
カルシウムアルミネートのブレーン値は4,500cm2/g以上であり5,000~8,000cm2/gであることが好ましく、5,500~7,500cm2/gであることがより好ましい。ブレーン値は4,500cm2/g以上であることで、初期強度発現性を向上させることができる。
なお、本明細書においてブレーン値とは、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に記載された比表面積試験に基づいて測定されたものである。
【0019】
カルシウムアルミネートは、化学組成としてCaO及びAl2O3を主成分とし、水硬性を示す化合物である。カルシウムアルミネートとしては、CaO及び/又はAl2O3の一部が、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄、アルカリ金属ハロゲン化合物、アルカリ土類金属ハロゲン化合物、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ土類金属硫酸塩などの物質と置換した化合物、あるいは、上記の成分が少量固溶した化合物であってもよい。
【0020】
カルシウムアルミネートの含有量は、スラグと消石灰からなる粉体100部に対して、2部以上であることが好ましく、3部以上であることがより好ましく、4部以上であることがさらに好ましい。カルシウムアルミネートがスラグと消石灰からなる粉体100部に対して、2部以上であることで、吹付け材料の付着強度を維持することができる。カルシウムアルミネートは、スラグと消石灰からなる粉体100部に対して、20部以下であることが好ましい。
【0021】
(セメント)
本発明の吹付け材料は、セメントを実質的に含有しない。ここで、「セメントを実質的に含有しない」とは、セメントの含有量が吹付け材料中に20%以下であることをいう。吹付け材料にセメントを含有する場合は、環境負荷低減性を向上させる観点から、吹付け材料中に、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましく、0%であることがよりさらに好ましい。
ここでいうセメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、またはシリカを混合した各種混合セメント、また、白色セメント、微粉セメントや石灰石粉末等や高炉徐冷スラグ微粉末を混合したフィラーセメント、廃棄物利用型セメント、いわゆるエコセメント等が挙げられる。
【0022】
(アルカリ金属炭酸塩)
本発明の吹付け材料は、さらに、アルカリ金属炭酸塩を含有することが好ましい。本発明で使用するアルカリ金属炭酸塩は、初期凝結を促す目的で使用し、強度発現性を促進するために有効である。アルカリ金属炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、及び重炭酸ナトリウムなどが挙げられ、これらの一種又は二種以上が使用可能である。
【0023】
アルカリ金属炭酸塩の含有量は、スラグと消石灰からなる粉体100部に対して、0.2~3.0部であることが好ましく、0.5~2.0部であることがより好ましく、0.7~1.5部であることがさらに好ましい。アルカリ金属炭酸塩の含有量が上記範囲内であることで、初期凝結を良好に促すことができ、強度発現性を促進することができる。
【0024】
(ケイ酸アルカリ)
本発明の吹付け材料は、さらに、ケイ酸アルカリを含有することが好ましい。本発明で使用するケイ酸アルカリは、初期凝結を促す目的で使用し、強度発現性を促進するために有効である。ケイ酸アルカリとしては、例えば、メ、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム等が挙げられ、これらの一種又は二種以上が使用可能である。
【0025】
ケイ酸アルカリの含有量は、スラグと消石灰からなる粉体100部に対して、0.1~1.5部であることが好ましく、0.2~1.2部であることがより好ましく、0.3~1.0部であることがさらに好ましい。アルカリ金属炭酸塩の含有量が上記範囲内であることで、初期凝結を良好に促すことができ、強度発現性を促進することができる。
【0026】
(ミョウバン類)
本発明の吹付け材料は、さらに、ミョウバン類を含有することが好ましい。本発明のミョウバン類は、初期凝結を促す目的で使用し、強度発現性を促進するために有効である。ミョウバン類としては、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、さらに、カリウムミョウバン石、アルミニウムミョウバン石、鉄ミョウバン石等のミョウバン石が挙げられ、これらは通常結晶水を有しているがこれらを50~600℃で加熱した焼成物も使用できる。
【0027】
ミョウバン類の含有量は、スラグと消石灰からなる粉体100部に対して、0.2~3.0部であることが好ましく、0.5~2.0部であることがより好ましく、0.7~1.5部であることがさらに好ましい。ミョウバン類の含有量が上記範囲内であることで、初期凝結を良好に促すことができ、強度発現性を促進することができる。
【0028】
ミョウバン類のブレーン値は、1,000~8,000cm2/gであることが好ましく、2,000~6,000cm2/gであることがより好ましい。ミョウバン類のブレーン値が上記範囲内であることで、急結性状や長期強度発現性を担保することができ、良好な初期強度発現性を得られやすくすることができる。
【0029】
(アルカリ金属硫酸塩)
本発明の吹付け材料は、さらに、アルカリ金属硫酸塩を含有してもよい。本発明で使用するアルカリ金属硫酸塩は、初期凝結を促す目的で使用し、強度発現性を促進するために有効である。アルカリ金属硫酸塩としては、例えば、硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0030】
アルカリ金属硫酸塩の含有量は、スラグと消石灰からなる粉体100部に対して、0.4~10.0部であることが好ましく、1.0~7.0部であることがより好ましく、1.4~5.0部であることがさらに好ましい。アルカリ金属硫酸塩の含有量が上記範囲内であることで、初期凝結を良好に促すことができ、強度発現性を促進することができる。
【0031】
(添加剤)
本発明の吹付け材料には、既述の成分以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で種々の添加剤、例えば、さらに、減水剤、空気連行剤、ポリマーエマルジョン、増粘剤、収縮低減剤、防錆剤、防凍剤、粘土鉱物、シリカフュームなどを含有させることができる。
【0032】
(骨材)
本発明の吹付け材料には、実際的には細骨材及び粗骨材等の骨材をさらに混合してもよい。本発明で使用する骨材は、特に限定されるものではなく、吸水率が低くて、骨材強度が高いものが好ましい。骨材の最大寸法は、吹付けできれば特に限定されるものではない。細骨材としては、川砂、山砂、海砂、石灰砂、及び珪砂などが使用可能である。粗骨材としては、川砂利、山砂利、及び石灰砂利などが使用可能であり、砕砂、砕石も使用可能である。
ここで、吹付けコンクリートとは、モルタル、コンクリート等を指す。
【0033】
本発明における吹付け材料は、吹付け作業の前段階においてスラグと消石灰からなる粉体とカルシウムアルミネートとを用意し、用意したものモルタル及びコンクリート等に投入して吹付けるものであれば、特に制限されるものではない。
本発明の吹付け材料は、スラグ及び消石灰を含有するA材と、カルシウムアルミネートを含有するB材との2材型とすることができる。吹付け材料が2材型である場合は、吹付け作業の前段階に、あらかじめ規定量のスラグ及び消石灰からなるA材(粉体)とカルシウムアルミネートを含有するB材とをそれそれ混合すればよい。
また、本発明の吹付け材料は、スラグ、消石灰及びカルシウムアルミネートを含有する1材型とすることができる。吹付け材料が1材型である場合は、吹付け作業の前段階に、あらかじめ規定量のスラグ、消石灰及びカルシウムアルミネートを混合すればよい。
本発明の吹付け材料は、上記の添加剤及び骨材等のその他成分を含有させる場合、2材型及び1材型のいずれであっても混合するときに別途、その他成分を添加するとよい。
【0034】
混合装置としては、既存のいかなる装置も使用可能であり、例えば、2軸ミキサ、傾動ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、及びナウタミキサなどの使用が可能である。
【0035】
[吹付け工法]
本発明の吹付け工法は、本発明の吹付け材料を使用して吹付け処理を施す方法である。吹付け工法としては、要求される物性、経済性、施工性に応じて乾式吹付け、又は湿式吹付けが選択される。本発明の吹付け工法では、乾式吹付法及び湿式吹付法のいずれも採用できる。
1材型の乾式吹付け工法としては、スラグ、消石灰及びカルシウムアルミネートを含有する吹付け材料と、必要に応じて骨材とを混合して乾式状態で空気圧送し、途中で、例えばY字管の一方から水を添加して、湿潤状態で吹付ける方法がある。また、2材型の乾式吹付け工法としては、スラグ及び消石灰を含有するA材と、必要に応じて骨材とを混合して乾式状態で空気圧送し、途中カルシウムアルミネートを含有するB材、及び水の順に添加し、湿潤状態で吹付ける方法等が挙げられる。
2材型の湿式吹付け工法としては、スラグ及び消石灰を含有するA材と、必要に応じて骨材と、水とを添加して混練し、混練したものを湿潤状態で圧送し、途中で、例えばY字管の一方からカルシウムアルミネートを含有するB材を添加して吹付ける方法等が挙げられる。
【0036】
吹付け工法においては、従来使用の吹付け設備等が使用できる。通常、吹付け圧力は3~6kg/cm2、吹付け速度は4~30m3/hである。
【0037】
吹付け設備は、吹付けが十分に行われれば特に限定されるものではなく、例えば、吹付けコンクリートの圧送にはアリバー社商品名「アリバ285」、シンテック社「MKW-25SMT」、PET社「G4ポンプ」、及びスクイズポンプ、プランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプ、スクリューポンプ、及びギヤポンプなどが使用可能である。カルシウムアルミネートなどの急結成分の圧送には、例えば、ちよだ製作所「ナトムクリート」などが使用可能である。
【実施例0038】
以下、実験例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
[実験例1]
スラグと消石灰からなる粉体(A材)の単位粉体量を400kg/m3(スラグ200kg/m3、消石灰200kg/m3)とした表1に示す配合から粉体急結剤を除いた材料でベースコンクリートを調製し、表2に示す配合の粉体急結剤(B材)を混合して凝結試験と吹付け試験を行った。凝結試験はプロクター貫入抵抗試験により凝結が開始される始発時間、凝結が終了する終結時間を測定し、吹付け試験では跳ね返り(リバウンド率)を測定した。なお、凝結試験は5mmのふるいにより粗骨材を取り除いた後に粉体急結剤を所定量混合して実施した。凝結時間、跳ね返り率、硬化状態を観察した結果を表3に示す。
【0040】
<使用材料>
・スラグ:高炉スラグの粉砕分級品、ブレーン値6,000cm2/g
・消石灰:副生消石灰
・細骨材:新潟県糸魚川市姫川水系砂、最大寸法5mm以下、密度2.62
・粗骨材:新潟県糸魚川市産6号砕石、最大寸法15mm以下、密度2.64
・水:上水道水
・減水剤:市販品、高性能減水剤
【0041】
【0042】
粉体急結剤は、粉体急結剤中のカルシウムアルミネート、アルカリ金属炭酸塩、ケイ酸アルカリ、ミョウバン類、及びアルカリ金属硫酸塩の割合を表2に示す配合とした。調製したベースコンクリートに粉体急結剤を混合して吹付け材料を調製した。
なお、使用した各材料は下記のとおりである。
【0043】
<使用材料>
・カルシウムアルミネート(CA):CaO/Al2O3モル比が2.5に相当する熱処理物を急冷したガラス化率90%、ブレーン値5,900cm2/g、酸化物換算で3質量部のSiO2を含有
・アルカリ金属炭酸塩:市販品、炭酸ナトリウム
・ケイ酸アルカリ:市販品、ケイ酸ナトリウム
・ミョウバン類:市販品、焼きミョウバン、ブレーン値4,000cm2/g
・アルカリ金属硫酸塩:市販品、硫酸ナトリウム、
【0044】
【0045】
<測定方法>
・凝結試験:土木学会基準JSCE-D 102-2013「吹付けコンクリート(モルタル)用急結剤品質規格(案)、付属書3(規定)急結剤を添加したモルタルの貫入抵抗による凝結時間測定方法」に準拠して測定した。
・跳ね返り(リバウンド率):吹付け材料を10m3/hの圧送速度で10分間、鉄板でアーチ状に作製した高さ4.4m、幅5.5mの模擬トンネルに吹付けた。その後、(リバウンド率)=(模擬トンネルに付着せずに落下した吹付け材料の量)/(模擬トンネルに吹付けた吹付け材料の量)×100(%)で算出した。
・硬化状態:凝結試験において、ベースコンクリートに粉体急結剤を混合して20分経過した後の状態を視覚及び触覚で判断し、完全に硬化しているものを「A」と評価し、全体的に硬化しているものの一部に硬化の弱い部分が見られるものを「B」と評価し、全体に硬化が弱いものを「C」と評価し、さらに硬化が弱いものを「D」と評価した。
【0046】
【0047】
表3の結果より、スラグと消石灰からなる粉体(A材)にカルシウムアルミネート(CA)が配合された粉体急結剤(B材)を混合させた配合1-1、1-3~1-6は、凝結時間、跳ね返り率、硬化状態の結果は良好であった。
なお、セメントを用いた一般配合の吹付け材料の跳ね返り率を同条件で測定したところ20%であり、配合1-1、1-3~1-6の吹付け材料の跳ね返り率はそれ以下であるのでセメントを用いた一般配合と同等以上の付着性を有することがわかった。一方、カルシウムアルミネート(CA)を含まない配合1-2の吹付け材料の跳ね返り率は、セメントを用いた一般配合より芳しくなかった。
【0048】
[実験例2]スラグと消石灰からなる粉体(A材)の単位粉体量を400部とした表4に示す配合から粉体急結剤を除いた材料でベースコンクリートを調製し、表2に示した配合1-1、配合1-2の粉体急結剤(B材)を混合して凝結試験と吹付け試験を行った。跳ね返り率、凝結時間の測定は実施例1と同じとし、更に圧縮強度を測定した。凝結時間、跳ね返り率、硬化状態、圧縮強度値を測定した結果を表5に示す。
【0049】
<使用材料>
・スラグ:高炉スラグの粉砕分級品、ブレーン値6,000cm2/g
・消石灰:副生消石灰
・細骨材:新潟県糸魚川市姫川水系砂、最大寸法5mm以下、密度2.62
・粗骨材:新潟県糸魚川市産6号砕石、最大寸法15mm以下、密度2.64
・水:上水道水
・減水剤:市販品、高性能減水剤
【0050】
【0051】
<測定方法>
・凝結試験:上記と同様。
・跳ね返り(リバウンド率):上記と同様。
・硬化状態:上記と同様。
・強度発現性評価:凝結試験と同様にベースコンクリートから5mmのふるいにより粗骨材を取り除いた後に粉体急結剤を所定量混合し圧縮強度測定した。試験体は4×4×16cmの3連型枠で作成し材齢毎に圧縮強度値を測定した。材齢1日、28日とした。
【0052】
【0053】
表5の結果より、スラグと消石灰からなる粉体(A材)にカルシウムアルミネート(CA)が配合された粉体急結剤(B材)を混合させた配合2-2~2-4、配合2-6~2-7は、凝結時間、跳ね返り率、硬化状態の結果が良好であり、かつ、材齢1日、28日における圧縮強度値が良好で強度発現性は十分であることから吹付け材料に好適である。消石灰を含まない配合2-1は、凝結付着の結果はよいが、1日以降である材齢28日の強度が低い性質であったため、トンネル等の重要な支保部材となる吹付け材料には適さない。また、カルシウムアルミネート(CA)を含まない配合2-5は、凝結付着の結果が不良であり、吹付けコンクリートには適さない。また、粉体結合剤を添加していない配合2-8~2-10は、凝結時間、跳ね返り率、硬化状態の結果が不良であり、吹付け材料に適さない。