(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171200
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】防災システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20241204BHJP
G08B 29/02 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
G08B17/00 B
G08B29/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088156
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】弘中 康雄
【テーマコード(参考)】
5C087
5G405
【Fターム(参考)】
5C087AA02
5C087AA03
5C087BB06
5C087BB74
5C087CC02
5C087CC04
5C087CC07
5C087CC22
5C087DD04
5C087DD20
5C087EE07
5C087EE14
5C087FF01
5C087FF04
5C087GG09
5C087GG18
5C087GG66
5C087GG84
5G405AA06
5G405BA01
5G405CA14
5G405CA60
(57)【要約】
【課題】防災システムにおいて、発生回数が所定の条件を満たす場合に異常として検出する構成では検出されない端末の異常を認識できるようにする。
【解決手段】防災システム1は、回線NWを介して端末20(n)(n=1~N)と通信する火災受信機10を含む。端末20(n)は、状態を確認する状態確認信号を火災受信機10から受信した場合に応答信号を返信する。火災受信機10は、状態確認信号を送信しても端末20(n)が無応答である場合に、無応答の履歴を記憶する記憶部と、無応答の履歴を出力する出力部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防災制御盤からの状態を確認する問い合わせに対して端末機器が無応答である度に、前記無応答の履歴を記憶する記憶部と、
前記無応答の履歴を出力する出力部と、
を備える防災システム。
【請求項2】
前記記憶部は、前記端末機器が前記無応答の状態から回復すると、前記回復の履歴を記憶し、
前記出力部は、更に前記回復の履歴を出力する、
請求項1に記載の防災システム。
【請求項3】
前記履歴を用いて前記無応答の原因を推定する推定部を更に備え、
前記出力部は、更に前記推定された無応答の原因を出力する、
請求項1又は2に記載の防災システム。
【請求項4】
前記推定部は、前記履歴から得られる前記無応答の継続状況、前記無応答である前記端末機器の数、前記無応答の繰り返し状況、及び前記無応答の発生時間の傾向のうち少なくとも一つによって異なる前記原因を推定する、
請求項3に記載の防災システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、防災システム、に関する。
【背景技術】
【0002】
端末機器の計測値の時系列データを表示する技術が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
火災受信機等の防災制御盤の中には、定期的に端末機器の状態監視を行うものがある。この種の防災制御盤は、端末機器に状態を確認する信号を定期的に送信し、この信号に対して端末機器から応答がない場合にはリトライ処理を実施する。端末機器から所定回数連続して応答がない場合、この種の防災制御盤は、端末機器の異常を検出して出力する。しかし、この種の防災制御盤を用いて構成された防災システムでは、無応答が所定回数連続して発生するまでは異常が検出されないため、リトライ処理により回復するような異常、例えば突発的な誘導ノイズによる瞬時的な通信エラー等が発生しても、それを認識できず、早期に対処することができない。
【0005】
本開示は、発生回数が所定の条件を満たす場合に異常として検出する構成では検出されない端末機器の異常を認識できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本開示の第1の態様に係る防災システムは、防災制御盤からの状態を確認する問い合わせに対して端末機器が無応答である度に、前記無応答の履歴を記憶する記憶部と、前記無応答の履歴を出力する出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、発生回数が所定の条件を満たす場合に異常として検出する構成では検出されない端末機器の異常を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態による防災システム1の構成例を示す図である。
【
図2】防災システム1に含まれる火災受信機10の構成例を示す図である。
【
図3】状態確認動作の流れを示すフローチャートである。
【
図4】原因推定動作の流れを示すフローチャートである。
【
図5】無応答の履歴及び回復の履歴を表示する画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<A.実施形態>
以下に述べる実施形態には技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本開示の実施形態は、以下に述べる形態に限られるものではない。
【0010】
<A-1.構成>
図1は、本開示の一実施形態による防災システム1の構成例を示す図である。防災システム1は、例えば家屋、店舗又は公共施設等の監視領域における火災の発生に応じて警報を行う火災受信機10を含む。火災受信機10は、本開示における防災制御盤の一例である。
【0011】
図1に示されるように、火災受信機10には、回線NW(1)及び回線NW(1)から分枝する回線NW(2)を介して端末20(n)が接続される。nは1以上且つN以下の任意の整数であり、Nは1以上の整数である。
図1に示す例では、Nは9である。火災受信機10は、端末20(n)から火災信号を受信すると、警報を出力する。以下では、端末20(1)~端末20(N)の各々を区別する必要がない場合には、端末20(1)~端末20(N)は端末20と称される。同様に、回線NW(1)及びNW(2)の各々を区別する必要がない場合には、回線NW(1)及びNW(2)は回線NWと称される。
【0012】
端末20は、煙、熱、または炎から放出される紫外線や赤外線により火災を感知して火災信号を火災受信機10へ送信する火災感知器である。本実施形態における端末20は、火災感知器であるが、火災の発生を認識した人によるボタンの押下等を契機として火災信号を火災受信機10へ送信する発信機であってもよい。なお、端末20は、火災感知器又は発信機には限定されず、音響装置、非常電話機、表示灯、延焼を防止するための防火シャッタ或いは防火戸を火災発生時に閉鎖する装置、火災発生時に空調ダクトの開口部を閉鎖する防火ダンパ、又は火災発生時に煙を屋外に排気する排煙装置であってもよい。端末20は本開示における端末機器の一例である。
【0013】
図2は、火災受信機10の構成例を示す図である。
図2に示されるように、火災受信機10は、通信部110、表示部120、操作部130、音出力部140、制御部150、及び記憶部160を有する。通信部110、表示部120、操作部130、音出力部140、及び記憶部160の各々と制御部150とは、データ授受を仲介するバスにより相互に接続されている。
【0014】
通信部110は、回線NWに接続されている。通信部110は、制御部150による制御の下、端末20と通信する。表示部120は、例えば液晶ディスプレイ又はLEDである。表示部120は、制御部150による制御の下、各種情報を表示する。操作部130は、操作ボタン等の操作子を1又は複数含む。操作部130は、操作子が押下されると、押下された操作子を示す信号を制御部150に出力する。音出力部140は、例えばスピーカである。音出力部140は、制御部150から与えられる音信号に応じた音を出力する。
【0015】
制御部150は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のコンピュータである。記憶部160は、例えばRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリと、フラッシュROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリとを含む。不揮発性メモリには、制御部150を火災受信機10の制御中枢として機能させる制御プログラムが予め記憶されている。記憶部160の揮発性メモリは、制御プログラムを実行する際のワークエリアとして制御部150によって利用される。
【0016】
制御部150は、火災受信機10の電源(
図2では図示略)の投入を契機として制御プログラムを不揮発性メモリから揮発性メモリへ読み出し、当該制御プログラムの実行を開始する。制御プログラムに従って作動している制御部150は、状態確認部150a、表示制御部150b、及び推定部150cとして機能する。つまり、
図2に示される状態確認部150a、表示制御部150b、及び推定部150cは、CPU等のコンピュータをプログラム等のソフトウェアに従って作動させることにより実現されるソフトウェアモジュールである。
【0017】
状態確認部150aは、状態を問い合わせる状態確認信号を用いたポーリング・セレクティング処理により、端末20(n)(n=1~N)の各々の状態を常時確認する。端末20は、状態確認信号を受信すると応答信号を返信する。状態確認部150aは応答信号の受信の有無により、状態確認信号の送信先の端末20が正常であるか否を判定する。より詳細に説明すると、状態確認部150aは、まず、端末20(1)へ状態確認信号を送信し、端末20(1)から応答信号が得られた場合には正常と判定する一方、応答信号が得られない場合には無応答の履歴を記憶部160に書き込む。即ち、本実施形態では、無応答が発生する度に、無応答の履歴が記憶される。異常が確定する前の無応答の状態を認識できるようにするためである。端末20(1)についての状態確認が完了すると、次に、状態確認部150aは、端末20(2)についての状態を確認する。以降、状態確認部150aは、端末20(3)、端末20(4)・・・と順次状態の確認を行い、端末20(N)についての状態確認が完了すると、端末20(1)以降の状態確認を上記の順に繰り返し実行する。
【0018】
上記状態確認において、ある端末20について前回の状態確認では無応答であったものの、今回の状態確認では、応答信号が得られたとする。この場合、状態確認部150aは、回復の履歴を記憶部160に書き込む。また、状態確認部150aは、所定回数連続して応答信号が得られない場合は異常と判定する。突発的な誘導ノイズ等の影響により、瞬時的な通信エラーが発生する場合があるため、継続的な無応答でなければ、異常とはみなさないことが好ましいからである。
【0019】
表示制御部150bは、操作部130に対するユーザの操作に応じて、無応答の履歴及び回復の履歴を表示部120に表示させる。表示制御部150bは、無応答の履歴及び回復の履歴を出力する出力部の一例である。推定部150cは、操作部130に対するユーザの操作に応じて、無応答の履歴及び回復の履歴に基づいて、無応答の原因を推定する。
以上が火災受信機10の構成である。
【0020】
<A-2:状態確認動作>
また、制御プログラムに従って作動している制御部150は、本開示の特徴を顕著に示す状態確認動作を実行する。
図3は、この状態確認動作の流れを示すフローチャートである。
図3における送信処理SA100では、制御部150は、状態確認部150aとして機能する。送信処理SA100では、制御部150は、端末20(k)に状態確認信号を送信する。なお、kは、N個の端末20の各々を管理するための変数であり、
図3に示す状態確認動作の開始時点では、kには初期値として1が設定されている。以下では、送信処理SA100において状態確認信号の送信先となった端末20、即ち端末20(k)は対象端末と称される。
【0021】
第1判定処理SA110では、制御部150は、状態確認部150aとして機能する。第1判定処理SA110では、制御部150は、対象端末からの応答信号の受信の有無を判定する。状態確認信号の送信から所定時間が経過するまでに応答信号を受信した場合、第1判定処理SA110の判定結果は”Yes”となり、所定時間内に応答信号を受信しなかった場合、第1判定処理SA110の判定結果は”No”となる。第1判定処理SA110の判定結果が”No”である場合、制御部150は、第1カウントアップ処理SA120を実行する。これに対して、第1判定処理SA110の判定結果が”Yes”である場合、制御部150は、第3判定処理SA160を実行する。
【0022】
第1判定処理SA110の判定結果が”No”である場合に実行される第1カウントアップ処理SA120では、制御部150は、状態確認部150aとして機能する。第1カウントアップ処理SA120では、制御部150は、対象端末についての無応答の発生回数を示す変数X(k)に1を加算する。なお、変数X(n)(n=1~N)の各々には、
図3に示す状態確認動作の開始時点では、初期値として0が設定されている。
【0023】
第1カウントアップ処理SA120に後続する異常記録処理SA130では、制御部150は、状態確認部150aとして機能する。異常記録処理SA130では、制御部150は、無応答の履歴を記憶部160に記憶させる。本実施形態における無応答の履歴は、無応答の発生時刻、無応答が確認された端末20に関する情報(当該端末20に割り当てられたアドレス、設置場所(例えば、A棟4階1区画等の棟階区番)を表す情報、設置場所を補足する付加情報(例えば、4階男子トイレ等)、及び無応答発生回数)を対応付けたテーブルである。無応答発生回数には、変数X(k)の値がセットされる。
【0024】
異常記録処理SA130に後続する第2判定処理SA140では、制御部150は、変数X(k)が閾値Xthに達したか否かを判定する。閾値Xthは、2以上の任意の整数であり、本実施形態では、閾値Xthは3である。変数X(k)が閾値Xthに達した場合、即ち変数X(k)=閾値Xthとなった場合、第2判定処理SA140の判定結果は”Yes”となる。第2判定処理SA140の判定結果が”Yes”である場合、制御部150は、端末無応答処理SA150を実行した後に第4判定処理SA200を実行する。端末無応答処理SA150では、制御部150は、表示制御部150bとして機能する。端末無応答処理SA150では、制御部150は、プッシュで表示部120に対象端末との通信異常を表示する。なお、制御部150は、端末無応答処理SA150において音出力部140により警報音を出力してもよい。
【0025】
変数X(k)が閾値Xth未満である場合、即ち変数X(k)<閾値Xthである場合、第2判定処理SA140の判定結果は”No”となる。第2判定処理SA140の判定結果が”No”である場合、制御部150は、端末無応答処理SA150を実行することなく、第4判定処理SA200を実行する。
【0026】
第1判定処理SA110の判定結果が”Yes”である場合に実行される第3判定処理SA160では、制御部150は、状態確認部150aとして機能する。第3判定処理SA160では、制御部150は、対象端末である端末20(k)について前回の状態確認時に無応答であったか否かを、変数X(k)を参照して判定する。具体的には、変数X(k)が1以上である場合、第3判定処理SA160の判定結果は“Yes”となり、変数X(k)が0であれば場合、第3判定処理SA160の判定結果は“No”となる。
【0027】
第3判定処理SA160の判定結果が“Yes”になるのは、対象端末について前回の状態確認時に無応答であり、且つ今回の状態確認において応答が得られた場合、即ち対象端末との通信が回復した場合である。第3判定処理SA160の判定結果が“Yes”である場合、制御部150は、回復記録処理SA170、応答回復処理SA180、及び第1リセット処理SA190を実行した後に、第4判定処理SA200を実行する。
【0028】
回復記録処理SA170では、制御部150は、状態確認部150aとして機能する。回復記録処理SA170では、制御部150は、回復の履歴を記憶部160に記憶させる。回復の履歴は、端末20のアドレスに対応付けて、回復時刻(無応答の後、初めて応答信号が得られた時刻)、及び無応答継続時間(無応答の発生時刻から応答信号が得られた時刻までの時間)を格納するテーブルである。応答回復処理SA180では、制御部150は、表示制御部150bとして機能する。応答回復処理SA180では、制御部150は、プッシュで表示部120に通信回復を表示する。第1リセット処理SA190では、制御部150は、状態確認部150aとして機能する。第1リセット処理SA190では、制御部150は、変数X(k)を0にリセットする。
【0029】
第3判定処理SA160の判定結果が“No”である場合、制御部150は、回復記録処理SA170、応答回復処理SA180、及び第1リセット処理SA190を実行することなく、第4判定処理SA200を実行する。
【0030】
第4判定処理SA200では、制御部150は、kがNに達したか否かを判定する。k<Nである場合、第4判定処理SA200の判定結果は“No”となり、k=Nである場合、第4判定処理SA200の判定結果は“Yes”となる。第4判定処理SA200の判定結果が“No”である場合、制御部150は、第2カウントアップ処理SA210を実行した後に送信処理SA100以降の処理を再度実行する。第4判定処理SA200の判定結果が“Yes”である場合、制御部150は、第2リセット処理SA220を実行した後に送信処理SA100以降の処理を再度実行する。
【0031】
第2カウントアップ処理SA210では、制御部150は、変数kに1を加算する。第2リセット処理SA220では、制御部150は、変数kを1にリセットする。
【0032】
以上に説明した動作が実行されるので、本実施形態によれば、無応答がXth回連続した場合、対象端末との通信異常が確定し、ユーザの操作を介さずに異常が表示される。一方、無応答の履歴には、異常が確定していないもの、即ち無応答の発生回数が1以上、且つXth-1回以下のものが含まれるため、ユーザの操作(メニューにおける無応答確認ボタンの押下等)に応じて無応答の履歴が表示される。異常が確定していないものまでユーザの操作を介さずに表示すると、煩わしいためである。
【0033】
<A-3:原因推定動作>
また、制御プログラムに従って作動している制御部150は、表示部120に表示させたメニュー画面における無応答確認ボタンの押下等を契機として、本開示の特徴を顕著に示す原因推定動作を実行する。原因推定動作は、無応答の原因を推定する動作であり、防災システム1が納入されてから引き渡しまでの期間に行われてもよいし、防災システム1の運用開始後の点検時に行われてもよい。
【0034】
図4は、原因推定動作の流れを示すフローチャートである。読込処理SB100では、制御部150は、表示制御部150bとして機能する。読込処理SB100では、制御部150は、記憶部160から無応答の履歴及び回復の履歴を読み込む。読込処理SB100に後続する履歴表示処理SB110では、制御部150は、表示制御部150bとして機能する。履歴表示処理SB110では、制御部150は、表示部120に無応答の履歴及び回復の履歴を表示する。
【0035】
無応答の履歴及び回復の履歴を表示する画面(
図5参照)には、無応答の履歴毎に推定要因の確認ボタンが設けられる。この確認ボタンの押下を契機として、制御部150は、推定処理SB120を実行し、本原因推定動作を終了する。推定処理SB120では、制御部150は、推定部150c及び表示制御部150bとして機能する。推定処理SB120では、制御部150は、無応答の原因を推定する。具体的には、制御部150は、
図4に示されるように、以下の観点P1、観点P2、観点P3、及び観点P4の夫々の観点から無応答の原因を推定する。そして、制御部150は、推定した要因を表示部120に表示する。
【0036】
観点P1は、無応答が継続している端末20があるか否かという観点である(無応答の継続状況に関する観点)。観点P2は、複数の端末20について無応答が発生しているか否かという観点である(無応答である端末20の数に関する観点)。観点P3は、無応答が繰り返し発生しているか否かという観点である(無応答の繰り返し状況に関する観点)。観点P4は、無応答の発生時間に規則性はあるか否かという観点である(無応答の発生時間の傾向に関する観点)。
【0037】
より詳細に説明すると、推定部150cは、無応答の継続状況、即ち無応答が継続している端末20があるか否か(観点P1)について判定する。推定部150cは、無応答の発生の後に回復時刻が記憶されていない端末20があれば、当該端末20について無応答が継続していると判定する。無応答が継続しているということは、継続的な要因による通信障害と考えられ、無応答が継続していなければ、一時的な要因による通信障害と考えられる。無応答が継続している場合、推定部150cは、複数の端末20について無応答が継続しているか否か(観点P2)について判定する。無応答が継続していない場合、推定部150cは、無応答が繰り返し発生しているか否か(観点P3)について判定する。
【0038】
無応答が継続している場合、推定部150cは、同様に無応答が継続している他の端末20が複数存在するか否か(観点P2)について、無応答の履歴及び回復の履歴を参照して判定する。複数の端末20について無応答継続時間が重なる場合には、同様の端末20が複数存在すると判定する。複数の端末20について無応答が継続しているならば、推定部150cは、無応答の要因として、電路に影響を与える等の広範囲に影響を与える要因(
図4における要因A1)を推定する。この要因A1には、例えば電路断線又は短絡、端末20(又は中継器)への電源供給断、及び継続的な誘導ノイズ(強電ケーブルの影響など)が含まれる。単一の端末20について無応答が継続しているならば、推定部150cは、無応答の要因として、その端末20だけに影響を与える要因(
図4における要因A2)を推定する。この要因A2には、例えば端末20の脱落及び端末20の機器故障が含まれる。
【0039】
無応答が継続していない場合、推定部150cは、無応答が発生した端末20について無応答の繰り返し状況、即ち所定期間内に無応答が所定回数以上発生しているか否か(換言すれば無応答に再現性があるか否か:即ち観点P3)について、無応答の履歴及び回復の履歴を参照して判定する。再現性がない場合、推定部150cは、無応答の要因として、突発的な要因(
図4における要因A6)を推定する。この要因A6には、例えば突発的な誘導ノイズが含まれる。再現性がある場合、推定部150cは、無応答の発生時間に規則性はあるか否か(観点P4)について判定する。
【0040】
無応答が発生した端末20について例えば毎朝の7時に無応答が発生している等、発生時間に規則性がある場合、推定部150cは、特定の時間帯に動作する他の機器の影響(例えば強電ラインが動くときに発生する誘導ノイズの影響等;
図4における要因A3)を無応答の要因として推定する。この要因A3には、特定の時間帯に動作する他の機器から発生する誘導ノイズが含まれる。発生時間に規則性がない場合、推定部150cは、複数の端末20について発生時間に規則性がない無応答が発生しているか否か(観点P2)ついて判定する。複数の端末20について発生時間に規則性のない無応答が発生している場合、推定部150cは、無応答の要因として、不規則に発生する誘電ノイズ等、広範囲に影響を与える要因(
図4における要因A4)を推定する。この要因A4には、例えば電路異常(絶縁不良、電路抵抗大、電路静電容量大など)、端末20への供給電圧の低下、及び不規則に発生する誘導ノイズが含まれる。単一の端末20について発生時間に規則性のない無応答が発生している場合、推定部150cは、無応答の要因として、当該端末20の故障等、当該端末20だけに影響を与える要因(
図4における要因A5)を推定する。この要因A5には、例えば端末20の故障、及び電路異常(電路抵抗大、電路静電容量大など)が含まれる。
【0041】
図5は、無応答の履歴及び回復の履歴を表示する画面例を示す図である。原因推定動作が終了すると、この画面には、推定部150cにより推定された無応答の要因が表示される。
図5に示される例では要因A2が表示されている。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、無応答の連続回数がXth回に至る前に回復した場合でも、無応答の履歴が記憶され、ユーザの操作に応じて表示されるため、ユーザは軽微な異常についても認識することができる。また、無応答の原因が推定され、推定結果が表示されるため、推定された原因に基づいて効率的に対処することができる。これにより、異常が確定して表面化する前に、異常が発生する可能性が高い端末20、回線NW、エリアなどを予め調査し、適切な対処を行うことができる。特に、システムの納入後、引き渡しまでの期間にこのような調査及び適切な対処を行っておけば、運用開始後の不具合の発生を減らすことができる。
【0043】
<B.変形例>
上記実施形態は、以下のように変形されてもよい。
(1)表示制御部150bは、推定した原因の優先度によって表示を異ならせてもよい。例えば、要因A1と要因A2は現在も継続しているため、優先度が高い。要因A6は、突発的なものなので優先度が低い。要因A3、要因A4及び要因A5の各々の優先度は中程度である。表示制御部150bは、要因A1と要因A2には、赤枠を付与して表示し、要因A3~要因A5については黄枠で付与して表示し、要因A6には緑枠を付与して表示してもよい。
【0044】
(2)原因を推定する要素には、同様の機器が複数存在の場合においてそれらの機器が近傍又は同一系統であるか否かが含まれてもよい。近傍であれば、その場所に起因する原因があると推定できる。同一系統であれば、その系統に起因する原因があると推定できる。
【0045】
(3)無応答の履歴、回復の履歴、及び推定した原因は、火災受信機10の表示部120に表示されるだけでなく、USBメモリなどの外部メモリに記憶されてもよいし、火災受信機10から外部装置に送信されてもよい。
【0046】
(4)本開示の適用対象は、火災を検知するシステムには限定されず、消火設備、防火・防排煙設備、ガス漏れ火災警報設備等の他の防災システムであってもよい。他の防災システムに適用された場合、火災受信機に代えて、消火設備の制御盤、防火・防排煙設備の制御盤、ガス漏れ火災警報設備の制御盤が用いられてもよい。
【0047】
(5)上記実施形態における状態確認部150a、表示制御部150b、及び推定部150cはソフトウェアモジュールであったが、状態確認部150a、表示制御部150b、及び推定部150cのうちの任意の一つ、任意の二つ、又は全部がASIC等のハードウェアモジュールであってもよい。状態確認部150a、表示制御部150b、及び推定部150cのうちの少なくも一つがハードウェアモジュールであっても、上記実施形態と同一の効果が奏される。
【0048】
(6)無応答の履歴及び回復の履歴を記憶する記憶部、無応答の履歴及び回復の履歴を出力する出力部、及び推定部150cのうちの任意の一つ、任意の二つ又は全部は、防災システムに含まれ、且つ火災受信機とは異なる機器に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…防災システム、10…火災受信機、110…通信部、120…表示部、130…操作部、140…音出力部、150…制御部、150a…状態確認部、150b…表示制御部、150c…推定部、160…記憶部、20,20(1),20(2),20(N)…端末、NW,NW(1),NW(2)…回線。