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特開2024-171202ライニング治具およびこれを用いた排水管の改修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171202
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ライニング治具およびこれを用いた排水管の改修方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/28 20060101AFI20241204BHJP
   F16L 55/18 20060101ALI20241204BHJP
   E03C 1/122 20060101ALI20241204BHJP
   E03C 1/12 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B29C63/28
F16L55/18 B
E03C1/122 Z
E03C1/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088158
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】500543801
【氏名又は名称】株式会社マルナカ
(74)【代理人】
【識別番号】110001623
【氏名又は名称】弁理士法人真菱国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中尾 慧理夫
(72)【発明者】
【氏名】三木 潤
(72)【発明者】
【氏名】矢田 大樹
【テーマコード(参考)】
2D061
4F211
【Fターム(参考)】
2D061AA04
2D061AB10
2D061AC05
2D061AD01
2D061DE01
2D061DE27
4F211AA15
4F211AA24
4F211AA39
4F211AD16
4F211AG08
4F211AH46
4F211AR02
4F211AR07
4F211SA13
4F211SC03
4F211SD04
4F211SJ22
4F211SP18
4F211SP25
(57)【要約】
【課題】ライニング材における皺や浮きの発生を極力防止することができるライニング治具等を提供する
【解決手段】ライニング材11Aを直管部分10Aの内面に付着させる直管ライニング治具20Aであって、エアーの供給口23を有すると共に内部にエアー室24を構成した硬質で且つストレート形状の治具本体21と、エアー室24に連通する隙間空間25を存して治具本体21の外周部を覆い、エアーにより直管部分10Aの内面と略相補的形状に膨張する膨張膜体22と、を備え、膨張膜体22は、両端部において治具本体21との間で気密を保持する2個所の環状シール部41と、2個所の環状シール部41間に構成した直管部分に対応する長さの直部膨張部42と、を有している。
【選択図】 図3



【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化材に樹脂を含侵させたライニング材を、配管の直管部分の内面に付着させるライニング治具であって、
一方の端部にエアーの供給口を有すると共に内部に前記供給口に連なるエアー室を構成した硬質で且つストレート形状の治具本体と、
前記エアー室に連通する隙間空間を存して前記治具本体の外周部を覆い、前記エアー室を介して前記供給口から供給されたエアーにより前記直管部分の内面と略相補的形状に膨張する膨張膜体と、を備え、
前記膨張膜体は、両端部において前記治具本体との間で気密を保持する2個所の環状シール部と、2個所の前記環状シール部間に構成した前記直管部分に対応する長さの膨張部と、を有していることを特徴とするライニング治具。
【請求項2】
繊維強化材に樹脂を含侵させたライニング材を、配管の曲管部分の内面に付着させるライニング治具であって、
一方の端部にエアーの供給口を有すると共に内部に前記供給口に連なるエアー室を構成した可撓性で且つ湾曲形状の治具本体と、
前記エアー室に連通する隙間空間を存して前記治具本体の外周部を覆い、前記エアー室を介して前記供給口から供給されたエアーにより前記曲管部分の内面と略相補的形状に膨張する膨張膜体と、を備え、
前記膨張膜体は、両端部において前記治具本体との間で気密を保持する2個所の環状シール部と、2個所の前記環状シール部間に構成した前記曲管部分に対応する長さの膨張部と、を有していることを特徴とするライニング治具。
【請求項3】
前記ライニング材を付着させるための、前記膨張膜体の径方向の膨張幅が10mm前後であることを特徴とする請求項1または2に記載のライニング治具。
【請求項4】
前記各環状シール部は、前記膨張膜体の端部を紐状体により前記治具本体の外周部に縛り付けて構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のライニング治具。
【請求項5】
前記治具本体の外周部には、前記紐状体の縛り付け位置に対応して環状の浅溝が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のライニング治具。
【請求項6】
前記膨張膜体は、前記各環状シール部で折り返して重ね合わせた一対の折返し部を有していることを特徴とする請求項4に記載のライニング治具。
【請求項7】
前記供給口は、逆止弁付きの雌カプラで構成され、
前記逆止弁は、前記雌カプラに対しエアー供給源側の雄カプラを接続することで開弁し接続を解除すことで閉弁することを特徴とする請求項1または2に記載のライニング治具。
【請求項8】
請求項1に記載のライニング治具を用い、既設の排水管の直管部分にライニングを行う排水管の改修方法であって、
前記ライニング材を前記直管部分の内面に添設する添設工程と、
前記ライニング材の表面に、剥離のための離型膜体を貼り付ける貼付け工程と、
前記直管部分に前記ライニング治具を挿入・セットする挿入工程と、
前記ライニング治具にエアーを供給し、前記膨張膜体により前記ライニング材を押さえるようにして前記直管部分の内面に付着させる押圧工程と、
前記ライニング材中の樹脂を硬化させる硬化養生工程と、
エアーを抜いた後、前記直管部分から前記ライニング治具および前記離型膜体を取り去る撤去工程と、を備えたことを特徴とする排水管の改修方法。
【請求項9】
前記挿入工程において前記ライニング治具は、前記膨張部の端部が前記直管部分の端からはみ出して挿入・セットされ、
前記挿入工程と前記押圧工程との間において、はみ出した前記膨張部の端部を囲繞すると共に前記直管部分と同径に形成されたショートパイプを、前記直管部分と同軸上にセットするパイプセット工程を、更に備えたことを特徴とする請求項8に記載の排水管の改修方法。
【請求項10】
請求項2に記載のライニング治具を用い、既設の排水管の曲管部分にライニングを行う排水管の改修方法であって、
前記ライニング材を前記曲管部分の内面に添設する添設工程と、
前記ライニング材の表面に、剥離のための離型膜体を貼り付ける貼付け工程と、
前記曲管部分に前記ライニング治具を挿入・セットする挿入工程と、
前記ライニング治具にエアーを供給し、前記膨張膜体により前記ライニング材を押さえるようにして前記曲管部分の内面に付着させる押圧工程と、
前記ライニング材中の樹脂を硬化させる硬化養生工程と、
エアーを抜いた後、前記曲管部分から前記ライニング治具および前記離型膜体を取り去る撤去工程と、を備えたことを特徴とする排水管の改修方法。
【請求項11】
前記挿入工程において前記ライニング治具は、前記膨張部の端部が前記曲管部分の端からはみ出して挿入・セットされ、
前記挿入工程と前記押圧工程との間において、はみ出した前記膨張部の端部を囲繞すると共に前記曲管部分と同径に形成されたショートパイプを、前記曲管部分と同軸上にセットするパイプセット工程を、更に備えたことを特徴とする請求項10に記載の排水管の改修方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設配管の直管部分や曲管部分にライニングを行うためのライニング治具およびこれを用いた排水管の改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のライニング治具および排水管の改修方法として、トラップ(椀トラップ)廻りや排水立て管廻りの既設配管にライニングを行う押圧チューブおよび排水管の生産方法が知られている(特許文献1参照)。
この場合、トラップの内筒の内周面およびこれに連なる立ての配管に、布に樹脂を含侵させた補強部材をライニングする直管部分用の押圧チューブと、排水立て管と排水枝管との合流部分に補強部材をライニングする曲管部分用の押圧チューブと、が用意されている
直管部分用の押圧チューブは、内部にガス流路を有する塩化ビニル製の支持部材と、両端部を支持部材の両端部に気密に溶着されると共に内部にガス用の密閉空間を構成した合成ゴム製の膨張部材本体と、密閉空間内に配設したヒーターと、を備えている。支持部材の一方の端部には、ガス供給源に接続されるガス供給管が取り付けられている。また、ガス供給部となる支持部材の本体部分には、そのガス流路と膨張部材本体の密閉空間とを連通する複数のガス供給孔が形成されている。この押圧チューブでは、支持部材を介して密閉空間内に空気等のガスを供給することで、ラグビーボール型に膨張する。
トラップ廻りの直管部分にライニングを行う場合には、先ずこの直管部分に布に樹脂を含侵させた補強部材を貼り付けると共に、ポリエチレン製の薄膜を貼り付ける。次に、この部分に押圧チューブを挿入し、位置決めの後ガスを供給する。ガスが供給されると、膨張部材本体が膨張し直管部分に対し薄膜を挟んで補強部材を径方向の外側に押圧する。そして、この押圧状態を維持しながら、ヒーターを点灯し樹脂を硬化させるようにする。
一方、曲管部分用の押圧チューブは、ゴム等で袋状に形成した膨張部材と、密閉空間を形成するように膨張部材の上端部を固定(閉塞)した固定キャップと、固定キャップを貫通するように設けられ、密閉空間内にガスを供給するための気体供給孔付きの気体供給チューブと、密閉空間内に配設したヒーターと、を備えている。この押圧チューブでは、気体供給チューブを介して密閉空間内にガスを供給することで、先細りの袋状に膨張する。
排水立て管廻りの曲管部分にライニングを行う場合には、先ずこの曲管部分に布に樹脂を含侵させた補強部材を貼り付けると共に、ポリエチレン製の薄膜を貼り付ける。次に、この部分に押圧チューブを挿入し、位置決めの後ガスを供給する。ガスが供給されると、膨張部材が膨張し曲管部分に対し薄膜を挟んで補強部材を径方向の外側に押圧する。そして、この押圧状態を維持しながら、ヒーターを点灯し樹脂を硬化させるようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3797989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のライニング技術において、直管部分用の押圧チューブでは、膨張する押圧チューブが、補強部材(ライニング材)および薄膜をストレート形状の内周面に押圧することになる。この場合、直管部分の内周面形状が円筒状であるのに対し、押圧チューブがラグビーボール型に膨張する形態を有している。このため、押圧チューブの膨張過程、すなわち押圧チューブが直管部分の内周面に接触してから押圧するまでの間において、接触部分が移動し或いは押圧が不均一になることがあった。このため、補強部材(ライニング材)に皺や浮きが生じ、或いは押圧チューブがバーストするおそれがあった。
同様に、曲管部分用の押圧チューブでも、直管部分の内周面形状と押圧チューブの膨張時の外観形状が異なるため、補強部材(ライニング材)に皺や浮きが生じ、或いは押圧チューブがバーストするおそれがあった。
補強部材(ライニング材)に皺や浮きが生ずると、ライニング材により縮径した排水管の内周面に流れを乱す障害物が生ずることになり、排水詰まりの原因となる。
【0005】
本発明は、ライニング材における皺や浮きの発生を極力防止することができるライニング治具およびこれを用いた排水管の改修方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のライニング治具は、繊維強化材に樹脂を含侵させたライニング材を、配管の直管部分の内面に付着させるライニング治具であって、一方の端部にエアーの供給口を有すると共に内部に供給口に連なるエアー室を構成した硬質で且つストレート形状の治具本体と、エアー室に連通する隙間空間を存して治具本体の外周部を覆い、エアー室を介して供給口から供給されたエアーにより直管部分の内面と略相補的形状に膨張する膨張膜体と、を備え、膨張膜体は、両端部において治具本体との間で気密を保持する2個所の環状シール部と、2個所の環状シール部間に構成した直管部分に対応する長さの膨張部と、を有していることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、供給口からエアーを供給すると、エアーはエアー室を経て治具本体と膨張膜体との間の隙間空間に流れ、膨張膜体の膨張部を膨張させる。膨張部は、直管部分の内面と略相補的形状に膨張し、ライニング材を直管部分の内面に押圧する。この場合、膨張部が直管部分の内面と略相補的形状に膨張するため、直管部分の内面に対しライニング材を押圧する膨張部の押圧力は、全域において均一且つ同時に作用する。したがって、ライニング材における皺や浮きの発生を極力防止することができる。
【0008】
本発明の他のライニング治具は、繊維強化材に樹脂を含侵させたライニング材を、配管の曲管部分の内面に付着させるライニング治具であって、一方の端部にエアーの供給口を有すると共に内部に供給口に連なるエアー室を構成した可撓性で且つ湾曲形状の治具本体と、エアー室に連通する隙間空間を存して治具本体の外周部を覆い、エアー室を介して供給口から供給されたエアーにより曲管部分の内面と略相補的形状に膨張する膨張膜体と、を備え、膨張膜体は、両端部において治具本体との間で気密を保持する2個所の環状シール部と、2個所の環状シール部間に構成した曲管部分に対応する長さの膨張部と、を有していることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、供給口からエアーを供給すると、エアーはエアー室を経て治具本体と膨張膜体との間の隙間空間に流れ、膨張膜体の膨張部を膨張させる。膨張部は、曲管部分の内面と略相補的形状に膨張し、ライニング材を曲管部分の内面に押圧する。この場合、膨張部が曲管部分の内面と略相補的形状に膨張するため、曲管部分の内面に対しライニング材を押圧する膨張部の押圧力は、全域において均一且つ同時に作用する。したがって、ライニング材における皺や浮きの発生を極力防止することができる。
【0010】
これらの場合、ライニング材を付着させるための、膨張膜体の径方向の膨張幅が10mm前後であることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、ライニング材を手張りした直管部分或いは曲管部分にライニング治具を挿入するときに、膨張膜体がライニング材の端に引っかかる等の支障が生ずることがなく、且つ膨張膜体の膨張幅を極力狭くすることができる。これにより、作業性を損なうことがなく、ライニング材を安定して均一に押圧することができる。
【0012】
また、各環状シール部は、膨張膜体の端部を紐状体により治具本体の外周部に縛り付けて構成されていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、膨張膜体の一部を治具本体の外周部に縛り付けるだけで、膨張部の両端部のシール部分を構成すること、言いかえれば所望の形状に膨張する膨張膜体を容易に構成することができ、ライニング治具を低コストで簡単に製作することができる。
【0014】
この場合、治具本体の外周部には、紐状体の縛り付け位置に対応して環状の浅溝が形成されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、紐状体の縛り付け位置が明確になって、縛り付け作業を効率良く行うことができる。また、縛り付けによるシール性の向上を図ることができる。
【0016】
また、膨張膜体は、各環状シール部で折り返して重ね合わせた一対の折返し部を有していることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、一対の折返し部が膨張部の両外端部と重なるため、この両外端部は膨張が抑制されることとなる。このため、膨張してゆく膨張部は、延在方向の中間部から直管部分の内面や曲管部分に内面に接触しこれを押圧する。これにより、ライニング材にかみ込んだエアーは、膨張部の両外端部に向かって押し出され(送り出され)、ライニング材に浮きが生ずるのを有効に防止することができる。
【0018】
一方、供給口は、逆止弁付きの雌カプラで構成され、逆止弁は、雌カプラに対しエアー供給源側の雄カプラを接続することで開弁し接続を解除することで閉弁することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、エアーの供給により膨張膜体を膨張させライニング材を押さえた状態で、治具本体の雌カプラからエアー供給源側の雄カプラを外す(接続解除する)と、逆止弁が機能してエアーの供給状態が維持される。すなわち、雄カプラの接続を解いても、ライニング材の押圧状態は自動的に維持され、樹脂の硬化を待つ状態に移行することができる。これにより、ライニング作業が複数個所にわたる場合、そのライニング作業を効率良く且つ円滑に進めることができる。
【0020】
本発明の排水管の改修方法は、請求項1のライニング治具を用い、既設の排水管の直管部分にライニングを行う排水管の改修方法であって、ライニング材を直管部分の内面に添設する添設工程と、ライニング材の表面に、剥離のための離型膜体を貼り付ける貼付け工程と、直管部分にライニング治具を挿入・セットする挿入工程と、ライニング治具にエアーを供給し、膨張膜体によりライニング材を押さえるようにして直管部分の内面に付着させる押圧工程と、ライニング材中の樹脂を硬化させる硬化養生工程と、エアーを抜いた後、直管部分からライニング治具および前記離型膜体を取り去る撤去工程と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、押圧工程において、エアーを供給すると膨張部が直管部分の内面と略相補的形状に膨張する。このため、直管部分の内面に対しライニング材を押圧する膨張部の押圧力は、全域において均一且つ同時に作用することとなる。したがって、ライニング材における皺や浮きの発生を極力防止することができる。
【0022】
この場合、挿入工程においてライニング治具は、膨張部の端部が直管部分の端からはみ出して挿入・セットされ、挿入工程と押圧工程との間において、はみ出した膨張部の端部を囲繞すると共に直管部分と同径に形成されたショートパイプを、直管部分と同軸上にセットするパイプセット工程を、更に備えることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、ライニング治具を、膨張部の端部が直管部分の端からはみ出して挿入・セットすると共に、この部分を囲繞するようにショートパイプをセットするようにしているため、直管部分の端におけるライニング材を良好な仕上げ状態とすることができる。また、膨張膜体の膨張形態を、端部を含めてストレート形状とすることができ、不均一な膨張に基づく膨張膜体のバーストを有効に防止することができる。
【0024】
本発明の他の排水管の改修方法は、請求項2のライニング治具を用い、既設の排水管の曲管部分にライニングを行う排水管の改修方法であって、ライニング材を曲管部分の内面に添設する添設工程と、ライニング材の表面に、剥離のための離型膜体を貼り付ける貼付け工程と、曲管部分にライニング治具を挿入・セットする挿入工程と、ライニング治具にエアーを供給し、膨張膜体によりライニング材を押さえるようにして曲管部分の内面に付着させる押圧工程と、ライニング材中の樹脂を硬化させる硬化養生工程と、エアーを抜いた後、曲管部分からライニング治具および離型膜体を取り去る撤去工程と、を備えたことを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、押圧工程において、エアーを供給すると膨張部が曲管部分の内面と略相補的形状に膨張する。このため、曲管部分の内面に対しライニング材を押圧する膨張部の押圧力は、全域において均一且つ同時に作用することとなる。したがって、ライニング材における皺や浮きの発生を極力防止することができる。
【0026】
この場合、挿入工程においてライニング治具は、膨張部の端部が曲管部分の端からはみ出して挿入・セットされ、挿入工程と押圧工程との間において、はみ出した膨張部の端部を囲繞すると共に曲管部分と同径に形成されたショートパイプを、曲管部分と同軸上にセットするパイプセット工程を、更に備えることが好ましい。
【0027】
この構成によれば、ライニング治具を、膨張部の端部が曲管部分の端からはみ出して挿入・セットすると共に、この部分を囲繞するようにショートパイプをセットするようにしているため、曲管部分の端におけるライニング材を良好な仕上げ状態とすることができる。また、膨張膜体の膨張形態を、端部を含めて湾曲形状とすることができ、不均一な膨張に基づく膨張膜体のバーストを有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態の排水管の改修方法に係る既設排水管の系統図である。
図2】実施形態に係る直管ライニング治具の膨張膜体を取り除いた状態の側面図である。
図3】実施形態に係る直管ライニング治具の右半部を部分断面とした状態の側面図である。
図4】実施形態に係る曲管ライニング治具の膨張膜体を取り除いた状態の側面図である。
図5】実施形態に係る曲管ライニング治具の右半部を部分断面とした状態の側面図である。
図6】実施形態に係る排水管(直管)の改修方法における研磨工程を表した図である。
図7】実施形態に係る排水管(直管)の改修方法における添設工程を表した図である。
図8】実施形態に係る排水管(直管)の改修方法における貼付け・セット工程を表した図である。
図9】実施形態に係る排水管(直管)の改修方法における挿入工程を表した図である。
図10】実施形態に係る排水管(直管)の改修方法における押圧工程を表した図である。
図11】実施形態に係る排水管(直管)の改修方法における撤去工程を表した図である。
図12】実施形態に係る排水管(曲管)の改修方法における挿入工程を表した図である。
図13】実施形態に係る排水管(曲管)の改修方法における押圧工程を表した図である。
図14】実施形態に係る排水管(曲管)の改修方法における撤去工程を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るライニング治具およびこれを用いた排水管の改修方法について説明する。古い集合住宅では排水管の改修工事(やり替え)が行われるが、既設排水管において、ハツリ工事を必要とするスラブ貫通部分やコンクリート埋込み部分の配管では、その前後を切断して残置し、この部分のみ再利用することが行われる。残置される排水管は、直管部分、曲管部分を問わず数十センチのもとなるが、再利用に供すべくライニングを施して更生する。
【0030】
本実施形態のライニング治具および排水管の改修方法は、この残置された数十センチの排水管にライニングを行うためのものである。既設の排水立て管の改修を例に説明を進めるが、ライニング治具には、直管部分のライニングに用いるもの(以下、「直管ライニング治具」という。)と、曲管部分のライニングに用いるもの(以下、「曲管ライニング治具」という。)と、が用意されている。
【0031】
図1は、集合住宅における既設排水管の系統図である。同図に示すように、排水立て管1は、各階のスラブSを貫通して配管されており、複数の排水直管2を複数のT字管3(合流継手)で連結して構成されている。排水立て管1の下端部は、エルボ4を介して排水を屋外に導く排水横主管5に接続されている。排水立て管1に介在されたT字管3の枝側は、各種衛生器具(台所流し、浴室、洗面器、洗濯機等)からの排水を排水立て管1に導く排水枝管6に接続されている。各種衛生器具からの排水は、排水枝管6を介して排水立て管1に流れ、排水立て管1からエルボ4および排水横主管5を経て屋外(排水マス)に排水される。
【0032】
この排水立て管1では、各階のスラブSを貫通している直管部分10Aと、コンクリートCに埋め込まれているエルボ4の曲管部分10Bを残置配管とし、ライニングによる改修を実施するようにしている。具体的には、スラブ貫通部分では、配管をスラブ上十数センチおよびスラブ下十数センチの位置で切断し、スラブSに残した数十センチの直管部分10Aにライニングを行う。同様に、コンクリート埋込み部分では、配管をコンクリートCの端から前後それぞれ十数センチの位置で切断し、コンクリートCに残した数十センチの曲管部分10Bにライニングを行う。
【0033】
そして、直管部分10Aのライニングには直管ライニング治具20Aを用い、曲管部分10Bのライニングには曲管ライニング治具20Bを用いるようにしている。
なお、直管部分10Aおよび曲管部分10Bのライニングによる更生が完了したら、特殊継手を用いて新しい配管(直管)を接続することで、排水立て管1の改修が為される。
【0034】
ライニングの主体を為すライニング材11A,11Bは、繊維強化材に樹脂を含侵させたものである。直管部分10A用のライニング材11Aは、ストレートの円筒状に形成され、直管部分10Aの内面と相補的形状を有している。また、曲管部分10B用のライニング材11Bは、湾曲の円筒状に形成され、曲管部分10Bの内面と相補的形状を有している。繊維強化材は、例えばポリエステル繊維を編み込んだものが用いられ、樹脂は、例えば2液タイプのエポキシ樹脂(接着剤)が用いられる。
【0035】
なお、ライニング材11A,11Bと直管ライニング治具20A或いは曲管ライニング治具20Bとの間には、剥離のための離型膜体12A,12Bを介在させるが(詳細は後述する)、この離型膜体12A,12Bは、例えばポリエチレンを筒状(ストレートまたは湾曲)に成型したものが用いられる。これにより、ライニング材11A,11Bに直管ライニング治具20Aや曲管ライニング治具20Bが接着されてしまうことがなく、ライニング材11A,11Bが硬化した後、これら治具を容易に取り外し得るようになっている。
【0036】
以下、排水管の改修方法として、直管部分10Aの改修方法および曲管部分10Bの改修方法について説明するが、その前にこれら改修方法に用いる、直管ライニング治具20Aおよび曲管ライニング治具20Bについて順を追って説明する。
【0037】
[直管ライニング治具]
図2は、膨張膜体を取り除いた直管ライニング治具20Aの側面図、図3は、右半部を部分断面とした直管ライニング治具20Aの側面図である。
両図に示すように、直管ライニング治具20Aは、上端部にエアーの供給口23を有すると共に内部にエアー室24を構成した硬質且つストレート形状の治具本体21と、エアー室24に連通する隙間空間25を存して治具本体21の外周部を覆う膨張膜体22と、を備えている。
【0038】
治具本体21は、雌カプラで構成された供給口23と、塩化ビニル製の本体主要部31とを有している。雌カプラには、逆止弁(図示せず)が組み込まれており、エアー供給源側のエアーチューブ27に設けた雄カプラ28が着脱(接続)されるようになっている(図10参照)。エアーを供給すべく雄カプラ28を雌カプラ(供給口23)に接続すると、逆止弁が開弁し、雌カプラから雄カプラ28を接続解除する(引き抜く)と、逆止弁が閉弁する。本実施形態では、エアーを供給して直管ライニング治具20Aを膨張させライニング材11Aの硬化(樹脂の硬化)を待つが、エアーチューブ27(雄カプラ28)を外してもこの膨張を維持できるようになっている。
【0039】
本体主要部31は、塩化ビニル管における直管および各種継手を組み合わせて、有底円筒状に形成されている。そして、本体主要部31の内部全域には、供給口23に連なるエアー室24が構成されている。本体主要部31は、供給口23が接合されたネジ接合部32と、ネジ接合部32に連なる上接合部33と、上接合部33に連なる胴部34と、胴部34に連なる下接合部35とを有しており、これら部材の内側にエアー室24が構成されている。
【0040】
胴部34は、塩化ビニル管における直管の管材で構成されており、直管部分10Aの長さに対応させるべく、胴部34の長さが調整(切断調整)されるようになっている。また、胴部34には、エアー室24と上記の隙間空間25とを連通する複数の連通孔36が形成されている。供給口23から供給されたエアーは、エアー室24に流れ、このエアー室24から複数の連通孔36を介して隙間空間25に流入する。そして、この隙間空間25に流入したエアーにより、膨張膜体22が膨張する。
【0041】
上接合部33には、上下2個所に環状の浅溝33aが形成されている。詳細は後述するが、下側の浅溝33aは、膨張膜体22における上側の環状シール部41の一部を構成している。同様に、下接合部35には、上下2個所に環状の浅溝35aが形成されている。この場合も、下側の浅溝35aは、膨張膜体22における下側の環状シール部41の一部を構成している。
【0042】
膨張膜体22は、円筒状のゴム(ゴムチューブ)で形成されている。膨張膜体22は、上下両端部において治具本体21との間で気密を保持する2個所の環状シール部41と、2個所の環状シール部41間に構成した直管部分10Aに対応する長さの直部膨張部42(膨張部)と、を有している。また、膨張膜体22は、各環状シール部41の部分で折り返して重ね合わせた上下一対の折返し部43を有している。
【0043】
上側の環状シール部41は、膨張膜体22の上端部を紐状体45により上接合部33の浅溝33aの部分に縛り付けて構成されている。同様に、下側の環状シール部41は、膨張膜体22の下端部を紐状体45により下接合部35の浅溝35aの部分に縛り付けて構成されている。そして、紐状体45で縛り付けられた膨張膜体22の上下両端部が、折り返されて一対の折返し部43を構成している。
【0044】
上述のように、直部膨張部42は、直管部分10Aに対応する長さとなっているが、具体的には、直管部分10Aの長さに対し直部膨張部42は僅かに長く形成されている(図10参照)。これにより、ライニング材11Aの切断端部が適切に押圧され、各端部における皺やエアーの噛み込み(浮き)等が防止される。また、一対の折返し部43により、直部膨張部42の両外端部は膨張が抑制される。すなわち、膨張する直部膨張部42は、上下中間部からライニング材11Aに接してゆく。このため、ライニング材11Aに噛み込んだエアーは、直部膨張部42の両外端部に向かって押し出され(送り出され)、ライニング材11Aの浮き等が防止される。
【0045】
直部膨張部42は、隙間空間25に供給されたエアーにより、直管部分10Aの内面と略相補的形状に膨張する。その場合の膨張幅、すなわちライニング材11Aを付着させるための、膨張膜体22(直部膨張部42)の径方向の膨張幅が10mm前後となっている(図10参照)。これにより、直管ライニング治具20Aを挿入するときに、膨張膜体22がライニング材11Aの端に引っかかる等の支障が生ずることがなく、且つ膨張膜体22の膨張幅を極力狭くすることができ、ライニング材11Aを安定して均一に押圧することができる。
【0046】
このように、直管ライニング治具20Aでは、エアーを供給すると、膨張膜体22の直部膨張部42が直管部分10Aの内面と略相補的形状に膨張し、ライニング材11Aを直管部分10Aに押圧する。このため、直管部分10Aの内面に対しライニング材11Aを押圧する直部膨張部42の押圧力は、全域において均一且つ同時に作用する。したがって、直管部分10Aのライニング材11Aにおける皺や浮き発生を極力防止することができる。
【0047】
[曲管ライニング治具]
図4は、膨張膜体を取り除いた曲管ライニング治具20Bの側面図、図5は、右半部を部分断面とした曲管ライニング治具20Bの側面図である。
両図に示すように、曲管ライニング治具20Bは、一方の端部にエアーの供給口53を有すると共に内部にエアー室54を構成した可撓性で且つ湾曲形状の治具本体51と、エアー室54に連通する隙間空間55を存して治具本体51の外周部を覆う膨張膜体52と、を備えている。
【0048】
治具本体51は、雌カプラで構成された供給口53と、軟質プラスチック製の本体主要部61とを有している。雌カプラには、逆止弁(図示せず)が組み込まれており、エアー供給源側のエアーチューブ57に設けた雄カプラ58が着脱(接続)されるようになっている(図12参照)。エアーを供給すべく雄カプラ58を雌カプラ(供給口53)に接続すると、逆止弁が開弁し、雌カプラから雄カプラ58を接続解除する(引き抜く)と、逆止弁が閉弁する。本実施形態では、エアーを供給して曲管ライニング治具20Bを膨張させライニング材11Bの硬化(樹脂の硬化)を待つが、エアーチューブ57(雄カプラ58)を外してもこの膨張を維持できるようになっている。
【0049】
本体主要部61は、軟質プラスチックの管材における直管および各種継手を組み合わせて、湾曲した有底円筒状に形成されている。そして、本体主要部61の内部全域には、供給口53に連なるエアー室54が構成されている。本体主要部61は、供給口53が接合されたネジ接合部62と、ネジ接合部62に連なる元接合部63と、元接合部63に連なる湾曲胴部64と、湾曲胴部64に連なる先接合部65とを有しており、これら部材の内側にエアー室54が構成されている。
【0050】
湾曲胴部64は、フレキシブルな管材の直管に曲げ癖をつけて構成されており、曲管部分10Bの長さや曲率に対応させるべく、湾曲胴部64の長さや曲率が調整(切断調整および曲げ癖調整)されるようになっている。また、湾曲胴部64には、エアー室54と上記の隙間空間55とを連通する複数の連通孔66が形成されている。供給口53から供給されたエアーは、エアー室54に流れ、このエアー室54から複数の連通孔66を介して隙間空間55に流入する。そして、この隙間空間55に流入したエアーにより、膨張膜体52が膨張する。
【0051】
元接合部63には、2個所に環状の浅溝63aが形成されている。詳細は後述するが、下側の浅溝63aは、膨張膜体52における一方(元側)の環状シール部71の一部を構成している。同様に、先接合部65には、2個所に環状の浅溝65aが形成されている。この場合も、先側の浅溝65aは、膨張膜体52における他方(先側)の環状シール部71の一部を構成している。
【0052】
膨張膜体52は、湾曲円筒状のゴム(ゴムチューブ)で形成されている。膨張膜体52は、その両端部において治具本体51との間で気密を保持する2個所の環状シール部71と、2個所の環状シール部71間に構成した曲管部分10Bに対応する長さの曲部膨張部72(膨張部)と、を有している。また、膨張膜体52は、各環状シール部71の部分で折り返して重ね合わせた上下一対の折返し部73を有している。
【0053】
元側の環状シール部71は、膨張膜体52の端部を紐状体75により元接合部63の浅溝63aの部分に縛り付けて構成されている。同様に、先側の環状シール部71は、膨張膜体52の端部を紐状体75により先接合部65の浅溝65aの部分に縛り付けて構成されている。そして、紐状体75で縛り付けられた膨張膜体52の両端部が、折り返されて一対の折返し部73を構成している。
【0054】
上述のように、曲部膨張部72は、曲管部分10Bに対応する長さおよび曲率となっているが、具体的には、曲管部分10Bの長さに対し曲部膨張部72は僅かに長く形成されている(図12参照)。これにより、ライニング材11Bの切断端部が適切に押圧され、各端部における皺やエアーの噛み込み(浮き)等が防止される。また、一対の折返し部73により、曲部膨張部72の両外端部は膨張が抑制される。すなわち、膨張する曲部膨張部72は、軸方向の中間部からライニング材11Bに接してゆく。このため、ライニング材11Bに噛み込んだエアーは、曲部膨張部72の両外端部に向かって押し出され(送り出され)、ライニング材11Bの浮き等が防止される。
【0055】
曲部膨張部72は、隙間空間55に供給されたエアーにより、曲管部分10Bの内面と略相補的形状に膨張する。その場合の膨張幅、すなわちライニング材11Bを付着させるための、膨張膜体52(曲部膨張部72)の径方向の膨張幅が10mm前後となっている(図12参照)。これにより、曲管ライニング治具20Bを挿入するときに、膨張膜体52がライニング材11Bの端に引っかかり難く、且つ膨張膜体52の膨張幅を極力狭くすることができ、ライニング材11Bを安定して均一に押圧することができる。
【0056】
このように、曲管ライニング治具20Bでは、エアーを供給すると、膨張膜体52の曲部膨張部72が曲管部分10Bの内面と略相補的形状に膨張し、ライニング材11Bを曲管部分10Bに押圧する。このいため、曲管部分10Bの内面に対しライニング材11Bを押圧する曲部膨張部72の押圧力は、全域において均一且つ同時に作用する。したがって、曲管部分10Bのライニング材11Bにおける皺や浮き発生を極力防止することができる。
【0057】
次に、図6乃至図11を参照して、直管ライニング治具20Aを用いて為される排水管の改修方法について、また図12乃至図14を参照して、曲管ライニング治具20Bを用いて為される排水管の改修方法について説明する。この場合の排水管は、スラブSに残置した直管部分10AおよびコンクリートCに残置した曲管部分10Bであり、直管部分10Aに対しては直管ライニング治具20Aを用い、曲管部分10Bに対して曲管ライニング治具20Bを用いる。
【0058】
[排水管(直管部分)の改修方法]
図6乃至図11に示すように、この改修方法では、直管部分10Aをカバーする円筒状のライニング材11Aが用いられる。また、ライニング材11Aと直管ライニング治具20Aとの間には円筒状の離型膜体12Aが介在される。加えて、はみ出した直部膨張部42の上下各端部を囲繞するように、直管部分10Aの上側および下側に塩化ビニル製の一対のショートパイプ15がセットされる。
【0059】
直管部分10Aにおける排水口の改修方法は、直管部分10Aの内面の錆・こぶを除去する研磨工程(図6参照)と、ライニング材11Aを直管部分10Aの内面に添設する添設工程(図7参照)と、ライニング材11Aの表面に離型膜体12Aを貼り付けると共に一対のショートパイプ15をセットする貼付け・セット工程(図8参照)と、直管部分10Aに直管ライニング治具20Aを挿入・セットする挿入工程(図9参照)と、直管ライニング治具20Aにエアーを供給して膨張膜体22を膨張させる押圧工程(図10参照)と、ライニング材11A中の樹脂を硬化させる硬化・養生工程と、エアーを抜いた後、直管ライニング治具20Aや離型膜体12A等を取り去る撤去工程(図11参照)と、を備えている。
【0060】
研磨工程では、鎖付きの研磨用ビット81をセットした電動ドリルにより、直管部分10Aの内面の錆・こぶ等を除去すべく研磨を行う(図6参照)。また、研磨に並行して吸引等により粉塵を除去し、直管部分10Aの内面を清掃する。これにより、直管部分10Aの内面は地肌がむき出しの状態となる。
【0061】
添設工程は、予め繊維強化材に樹脂を含侵させる工程(前工程)と、繊維強化材に樹脂を含侵させたライニング材11Aを、手作業により直管部分10Aの内面に添設する工程(後工程:図7参照)とを含んでいる。前工程では、透明なポイエステルの袋の中に円筒状の繊維強化材を入れ、その繊維強化材に2液を混合した樹脂を流し込む。次に、袋の上からハンドローラーを用いて繊維強化材をしごくようにし、繊維強化材に樹脂を均一に含侵させるようにする(同時に気泡を除去する)。
【0062】
後工程では、袋から取り出したライニング材11Aを、直管部分10Aに挿入しその内面に添設する。この場合、ライニング材11Aの両端部が直管部分10Aから僅かにはみ出すように添設することが好ましい。
【0063】
貼付け・セット工程は、ライニング材11Aの表面に筒状の離型膜体12Aを貼り付ける工程(貼付け工程)と、直管部分10Aの上下両端にそれぞれショートパイプ15をセットする工程(パイプセット工程)とを含んでいる(図8参照)。この場合の各ショートパイプ15は、直管部分10Aと同径(内径が同径)の塩化ビニルのパイプ片で構成されており、直管部分10Aと同軸上にセットする。なお、ショートパイプ15は、ビニールテープ等を用い仮止めの形で直管部分10Aの両端にセットすることが好ましい。
【0064】
挿入工程では、ライニング材11Aと離型膜体12Aとがセットされた直管部分10Aに、上方から直管ライニング治具20Aを挿入してゆく(図9参照)。この場合、直管部分10Aに対し直管ライニング治具20Aを差し通す形、すなわち、直管ライニング治具20A(直部膨張部42)の両端部が直管部分10Aからはみ出す形でセットする。言うまでもないが、このはみ出した部分にショートパイプ15が位置することとなる。挿入・セットが完了したら、直管ライニング治具20Aの供給口23にエアーチューブ27を接続しておく。
【0065】
押圧工程では、エアー供給源側の元バルブを開いて、直管ライニング治具20Aにエアーを供給する(図10参照)。これにより、膨張膜体22(直部膨張部42)は、直管部分10Aの内面と略相補的形状に膨張し、ライニング材11Aを押さえるようにして直管部分10Aの内面に付着させる。この場合、直部膨張部42の膨張は、直管部分10Aとこれに続く上下一対のショートパイプ15とが受け止めることになり、ライニング材11Aの両端部に皺等が生じないようになっている。併せて、直部膨張部42(直管部分10Aからはみ出した部分)のバーストも防止される。エアーの供給が終了したら(膨張状態維持)、直管ライニング治具20Aの供給口23に接続しておいたエアーチューブ27を外し、硬化・養生工程に移行する。
【0066】
硬化・養生工程では、加温しながらライニング材11Aの硬化を待つ。本実施形態では、温風を送風する(布団乾燥機を転用)ようにしており、ライニング材11A(の樹脂)は略3時間で硬化する。ライニング材11Aが硬化したら、撤去工程に移行する。
【0067】
撤去工程では、先ず直管ライニング治具20Aのエアーを抜いてこれを引き抜くようにして撤去する。次に、一対のショートパイプ15を取り外すと共に、離型膜体12Aを引きはがすようにして撤去する(図11参照)。
【0068】
なお、硬化したライニング材11Aの両端部にバリ等の凹凸が生じた場合は、この部分を表面仕上げ研磨とすると共に、樹脂を刷毛塗して仕上げることが好ましい(仕上げ工程)。
【0069】
このように、排水管の改修方法では、押圧工程において、エアーを供給すると直部膨張部42が直管部分10Aと略相補的形状に膨張する。このため、直管部分10Aに対しライニング材11Aを押圧する直部膨張部42の押圧力は、全域において均一且つ同時に作用する。したがって、ライニング材11Aにおける皺や浮きの発生を極力防止することができる。
【0070】
[排水管(曲管部分)の改修方法]
図12乃至図14示すように、この改修方法でも、上記の改修方法と同様に、曲管部分10Bをカバーする湾曲円筒状のライニング材11Bが用いられる。また、ライニング材11Bと曲管ライニング治具20Bとの間には湾曲円筒状の離型膜体12Bが介在される。加えて、はみ出した曲部膨張部72の各端部を囲繞するように、曲管部分10Bの両端に接するように塩化ビニル製の一対のショートパイプ15がセットされる。
【0071】
曲管部分10Bにおける排水口の改修方法は、曲管部分10Bの内面の錆・こぶを除去する研磨工程と、ライニング材11Bを曲管部分10Bの内面に添設する添設工程と、ライニング材11Bの表面に離型膜体12Bを貼り付けると共に一対のショートパイプ15をセットする貼付け・セット工程と、曲管部分10Bに曲管ライニング治具20Bを挿入・セットする挿入工程(図12参照)と、曲管ライニング治具20Bにエアーを供給して膨張膜体52を膨張させる押圧工程(図13参照)と、ライニング材11B中の樹脂を硬化させる硬化・養生工程と、エアーを抜いた後、曲管ライニング治具20Bや離型膜体12B等を取り去る撤去工程(図14参照)と、を備えている。
【0072】
この場合、曲管部分10Bのライニングと直管部分10Aのライニングとは、基本的に略同じ作業工程となる。よって、ここでは挿入工程、押圧工程および撤去工程について説明し、他の工程の説明は省略する。
【0073】
挿入工程では、ライニング材11Bと離型膜体12Bとがセットされた曲管部分10Bに、上方から曲管ライニング治具20Bを挿入してゆく(図12参照)。この挿入作業では、曲管ライニング治具20Bの可撓性を生かして、曲管ライニング治具20Bに撓みを持たせながら挿入する。この場合も、曲管部分10Bに対し曲管ライニング治具20Bを差し通す形、すなわち、曲管ライニング治具20B(曲部膨張部72)の両端部が曲管部分10Bからはみ出す形でセットする。言うまでもないが、このはみ出した部分にショートパイプ15が位置することとなる。挿入・セットが完了したら、曲管ライニング治具20Bの供給口53にエアーチューブ57を接続しておく。
【0074】
押圧工程では、エアー供給源側の元バルブを開いて、曲管ライニング治具20Bにエアーを供給する(図13参照)。これにより、膨張膜体52(曲部膨張部72)は、曲管部分10Bの内面と略相補的形状に膨張し、ライニング材11Bを押さえるようにして曲管部分10Bの内面に付着させる。この場合、曲部膨張部72の膨張は、曲管部分10Bとこれに続く一対のショートパイプ15とが受け止めることになり、ライニング材11Bの両端部に皺等が生じないようになっている。併せて、曲部膨張部72(曲管部分10Bからはみ出した部分)のバーストも防止される。エアーの供給が終了したら(膨張状態維持)、曲管ライニング治具20Bの供給口53に接続しておいたエアーチューブ57を外し、硬化・養生工程に移行する。
【0075】
撤去工程では、先ず曲管ライニング治具20Bのエアーを抜いてこれを引き抜くようにして撤去する。次に、一対のショートパイプ15を取り外すと共に、離型膜体12Bを引きはがすようにして撤去する(図14参照)。
【0076】
このように、排水管の改修方法では、押圧工程において、エアーを供給すると曲部膨張部72が曲管部分10Bと略相補的形状に膨張する。このため、曲管部分10Bに対しライニング材11Bを押圧する曲部膨張部72の押圧力は、全域において均一且つ同時に作用する。したがって、ライニング材11Bにおける皺や浮きの発生を極力防止することができる。
【符号の説明】
【0077】
10A…直管部分、10B…曲管部分、11A…ライニング材、11B…ライニング材、12A…離型膜体、12B…離型膜体、15…ショートパイプ、20A…曲管ライニング治具、20B…曲管ライニング治具、21…治具本体、22…膨張膜体、23…供給口、24…エアー室、25…隙間空間、31…本体主要部、33a…浅溝、35a…浅溝、41…環状シール部、42…直管膨張部、43…折返し管、45…紐状体、51…治具本体、52…膨張膜体、53…供給口、54…エアー室、55…隙間空間、61…本体主要部、63a…浅溝、65a…浅溝、71…環状シール部、72…曲管膨張部、73…折返し管、75…紐状体、C…コンクリート、S…スラブ、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14