(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171211
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】タイヤ成形用金型
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20241204BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20241204BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20241204BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088170
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100213436
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 直俊
(72)【発明者】
【氏名】石原 泰之
【テーマコード(参考)】
4F202
4F203
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AB03
4F202AH20
4F202AR11
4F202CA21
4F202CB01
4F202CU03
4F202CX06
4F203AA45
4F203AB03
4F203AH20
4F203DA11
4F203DB01
4F203DC01
4F203DL10
(57)【要約】
【課題】各セグメントを開くタイミングをずらすことができる簡単な構造のタイヤ成形用金型を提供する。
【解決手段】タイヤ成形用金型100は、周方向に並ぶ複数のセグメント4に分割された円環状のトレッド成形部3と、トレッド成形部3の径方向の外側に配置されたセグメント駆動部7と、を備え、セグメント駆動部7は、セグメント4を閉位置に保持する保持位置と、セグメント4を開位置へ移動させる解放位置との間で、トレッド成形部3の軸方向に沿って移動自在であり、セグメント4は、周方向における側面にセグメント駆動部7と係合する、周方向に窪んだカム溝部5を有し、カム溝部5は、セグメント駆動部7が保持位置から解放位置に移動する際に、セグメント駆動部7と係合し、セグメント駆動部7は、カム溝部5を介してセグメント4を開位置へ移動させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に並ぶ複数のセグメントに分割された円環状のトレッド成形部と、
前記トレッド成形部の径方向の外側に配置されたセグメント駆動部と、を備え、
前記セグメント駆動部は、前記セグメントを閉位置に保持する保持位置と、前記セグメントを開位置へ移動させる解放位置との間で、前記トレッド成形部の軸方向に沿って移動自在であり、
前記セグメントは、前記周方向における側面に前記セグメント駆動部と係合する、前記周方向に窪んだカム溝部を有し、
前記カム溝部は、前記セグメント駆動部が前記保持位置から解放位置に移動する際に、前記セグメント駆動部と係合し、
前記セグメント駆動部は、前記カム溝部を介して前記セグメントを開位置へ移動させるタイヤ成形用金型。
【請求項2】
前記トレッド成形部は、複数の前記セグメントとして、第一群の前記セグメントと、第二群の前記セグメントとを有し、
前記第二群の前記セグメントは、前記第一群の前記セグメントが前記セグメント駆動部と係合した後に、前記セグメント駆動部と係合する請求項1に記載のタイヤ成形用金型。
【請求項3】
前記第二群の前記セグメントの前記カム溝部は、前記第一群の前記セグメントの前記カム溝部よりも、前記径方向の幅が広い請求項2に記載のタイヤ成形用金型。
【請求項4】
前記セグメント駆動部は、前記カム溝部と係合する接触子を有し、
前記接触子は、前記カム溝部における、前記トレッド成形部の径方向における外側の溝内面に沿って、前記カム溝部に対して相対移動する請求項1から3の何れか一項に記載のタイヤ成形用金型。
【請求項5】
前記接触子は、前記カム溝部の内面に沿って回転する回転体を有する請求項4に記載のタイヤ成形用金型。
【請求項6】
前記セグメントの上端部が前記径方向における内側に移動するのを規制する規制部を更に備えた請求項1から3の何れか一項に記載のタイヤ成形用金型。
【請求項7】
前記セグメントの上端部が前記径方向における内側に移動するのを規制する規制部を更に備えた請求項5に記載のタイヤ成形用金型。
【請求項8】
前記セグメントは、上端部に、前記規制部と係合する被規制部を有し、
前記規制部は、前記トレッド成形部の周方向に沿って延在する丸棒状であり、
前記被規制部は、少なくとも一部が前記径方向における内側を向く面となり、前記規制部の側面に沿う円弧状の表面を有する請求項6に記載のタイヤ成形用金型。
【請求項9】
前記セグメントは、上端部に、前記規制部と係合する被規制部を有し、
前記規制部は、前記トレッド成形部の周方向に沿って延在する丸棒状であり、
前記被規制部は、少なくとも一部が前記径方向における内側を向く面となり、前記規制部の側面に沿う円弧状の表面を有する請求項7に記載のタイヤ成形用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タイヤ金型のセグメント駆動装置が開示されている。このタイヤ金型のセグメント駆動装置は、タイヤ金型のコンテナを構成するセグメント駆動部とセグメントとを互いに係合し、前記セグメント駆動部の上下動に伴う案内作用により、周方向に分割した複数個のセグメントを径方向へ移動させて内周面に設けたトレッド型部を開閉する。このタイヤ金型のセグメント駆動装置では、複数個のセグメントを種類が異なる第1セグメントと第2セグメントの2つのグループに分け、これら第1セグメントと第2セグメントとを昇降しない状態で下金型側に交互に配置すると共に、第1セグメント及び第2セグメントに関連して駆動用シリンダを設け、駆動用シリンダにより第1セグメントを第2セグメントよりも先行して移動させる。駆動用シリンダは、第1セグメント及び第2セグメントのそれぞれに対応して設けられ、第1セグメント及び第2セグメントが個々に移動できるように構成されている。このタイヤ金型のセグメント駆動装置では、第1及び第2セグメントを連続的又は断続的に径方向へ別々に移動させながら、第1セグメントを第2セグメントよりも常に先行してトレッド型の閉位置に到達させているため、各セグメント間に生タイヤが挟み込まれず、大きなフラッシングの発生を防ぐことが可能となり、タイヤ金型の寿命を延長できる。
【0003】
特許文献2には、タイヤ加硫装置が開示されている。このタイヤ加硫装置は、タイヤ周方向に沿ってリング状に配置されてタイヤを成形する複数の分割モールド(セグメントの一例)と、分割モールドのタイヤ幅方向の一端部に連結された回転支持部を中心に、分割モールドをタイヤ半径方向の外側と内側に向かって回転可能に支持する支持部材と、分割モールドを少なくとも回転により移動させて、タイヤを成形する成形位置とタイヤから離間する離間位置とに分割モールドを配置する移動機構と、を備えている。このタイヤ加硫装置では、タイミングをずらして複数の分割モールドを移動させてもよいとされている。特許文献2には、一例として、9個の分割モールドを3段階で成形位置から離間位置に移動させる場合が例示されており、3個の分割モールドを順に離間位置に移動させて、全ての分割モールドを離間位置に配置する場合が開示されている。このタイヤ加硫装置では、タイミングをずらして複数の分割モールドを移動させることで、タイヤに作用する力がより軽減されると開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-334740号公報
【特許文献2】特開2018-202787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術にあっては、各セグメントを開くタイミングをずらすようにする場合、各セグメントのそれぞれに対応する駆動用シリンダや、セグメント毎にタイヤ半径方向の外側と内側に向かって回転可能に支持する支持部材が必要であり、タイヤ成形用金型の構造が複雑となる問題があった。また、このように金型の構造が複雑になるが故、各セグメントを開くタイミングのずれの調整も簡単ではなかった。そのため各セグメントを開くタイミングをずらすことができる簡単な構造のタイヤ成形用金型の提供が望まれる。
【0006】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、各セグメントを開くタイミングをずらすことができる簡単な構造のタイヤ成形用金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係るタイヤ成形用金型は、
周方向に並ぶ複数のセグメントに分割された円環状のトレッド成形部と、
前記トレッド成形部の径方向の外側に配置されたセグメント駆動部と、を備え、
前記セグメント駆動部は、前記セグメントを閉位置に保持する保持位置と、前記セグメントを開位置へ移動させる解放位置との間で、前記トレッド成形部の軸方向に沿って移動自在であり、
前記セグメントは、前記周方向における側面に前記セグメント駆動部と係合する、前記周方向に窪んだカム溝部を有し、
前記カム溝部は、前記セグメント駆動部が前記保持位置から解放位置に移動する際に、前記セグメント駆動部と係合し、
前記セグメント駆動部は、前記カム溝部を介して前記セグメントを開位置へ移動させる。
【0008】
本発明に係るタイヤ成形用金型は、
前記トレッド成形部は、複数の前記セグメントとして、第一群の前記セグメントと、第二群の前記セグメントとを有し、
前記第二群の前記セグメントは、前記第一群の前記セグメントが前記セグメント駆動部と係合した後に、前記セグメント駆動部と係合してもよい。
【0009】
本発明に係るタイヤ成形用金型は、
前記第二群の前記セグメントの前記カム溝部は、前記第一群の前記セグメントの前記カム溝部よりも、前記径方向の幅が広くてもよい。
【0010】
本発明に係るタイヤ成形用金型は、
前記セグメント駆動部は、前記カム溝部と係合する接触子を有し、
前記接触子は、前記カム溝部における、前記トレッド成形部の径方向における外側の溝内面に沿って、前記カム溝部に対して相対移動してもよい。
【0011】
本発明に係るタイヤ成形用金型は、
前記接触子は、前記カム溝部の内面に沿って回転する回転体を有してもよい。
【0012】
本発明に係るタイヤ成形用金型は、
前記セグメントの上端部が前記径方向における内側に移動するのを規制する規制部を更に備えてもよい。
【0013】
本発明に係るタイヤ成形用金型は、
前記セグメントは、上端部に、前記規制部と係合する被規制部を有し、
前記規制部は、前記トレッド成形部の周方向に沿って延在する丸棒状であり、
前記被規制部は、少なくとも一部が前記径方向における内側を向く面となり、前記規制部の側面に沿う円弧状の表面を有してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、各セグメントを開くタイミングをずらすことができる簡単な構造のタイヤ成形用金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】タイヤ成形用金型の正面視での断面図である。
【
図2】トレッド成形部の平面視での断面を示す図である。
【
図3】セグメントが閉位置にある場合のタイヤ成形用金型の要部の詳細構造を拡大して示す正面視での断面図である。
【
図4】リングが上昇してセグメントが開き始めた時のタイヤ成形用金型の要部の詳細構造を拡大して示す正面視での断面図である。
【
図5】
図4の状態から更にリングが上昇してセグメントが開いていく状態を示すタイヤ成形用金型の要部の断面図である。
【
図6】
図5の状態から更にリングが上昇してセグメントが開いていく状態を示すタイヤ成形用金型の要部の断面図である。
【
図7】
図6の状態から更にリングが上昇してセグメントが開いていく状態を示すタイヤ成形用金型の要部の断面図である。
【
図8】
図7の状態から更にリングが上昇してセグメントが上方に吊下げられている状態を示すタイヤ成形用金型の要部の断面図である。
【
図9】第二群のセグメント及びそのカム溝部の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面に基づいて、本発明の実施形態に係るタイヤ成形用金型について説明する。
【0017】
図1には、本実施形態に係るタイヤ成形用金型100(以下、金型100と称する場合がある)の、正面視における断面図を示している。
【0018】
金型100は、未加硫(加硫前)の合成ゴムを主体として形成された生タイヤを、加硫しつつ所定の形状に成形してタイヤ200を製造するために用いられるものである。
【0019】
金型100は、周方向に並ぶ複数のセグメント4に分割された円環状のトレッド成形部3と、トレッド成形部3の径方向の外側に配置されたセグメント駆動部7と、を備えている。セグメント駆動部7は、セグメント4を閉位置に保持する保持位置(
図3参照)と、セグメント4を開位置へ移動させる解放位置(
図4から
図8参照)との間で、トレッド成形部3の軸方向に沿って移動自在である。セグメント4は、周方向における側面にセグメント駆動部7と係合する、周方向に窪んだカム溝部5を有する。カム溝部5は、セグメント駆動部7が保持位置から解放位置に移動する際に、セグメント駆動部7と係合し、セグメント駆動部7は、カム溝部5を介してセグメント4を開位置へ移動させる。
【0020】
金型100は、簡単な構造であるが、各セグメント4を開くタイミングをずらすことができる。
【0021】
以下、金型100について詳述する。
【0022】
金型100は、
図1に示すように、セグメント4を有するトレッド成形部3、カム溝部5及びセグメント駆動部7(以下、リング7と称する)に加えて、更に、下側コンテナ1、上側コンテナ2、セグメント4の移動を規制する規制部14を備えている。上述のごとく、トレッド成形部3は、円環状に形成されている。
【0023】
以下では、トレッド成形部3の軸心Gに沿う方向を軸方向と称する。また、トレッド成形部3の周方向及びこれと同じ方向は、単に周方向と称する。また、トレッド成形部3の径方向及びこれと同じ方向は、単に径方向と称し、径方向における外側を単に外側又は径方向の外側、内側を単に内側又は径方向の内側と称する場合がある。軸方向における、下側コンテナ1から見て上側コンテナ2を向く向きを上側、上方又は上と称し、上側コンテナ2から見て下側コンテナ1の側を向く向きを下側、下方又は下と称する。なお、本実施形態において、正面視とは、径方向に沿ってみた場合の視点のことである。
【0024】
下側コンテナ1は、金型100の座部である。下側コンテナ1には、上側コンテナ2及びトレッド成形部3が載置される。下側コンテナ1は、板部10と、板部10の上面に載置された下側サイドウォール成形部11とを有する。
【0025】
上側コンテナ2は、板部20と、板部20の下面に固定された上側サイドウォール成形部21とを有する。上側コンテナ2は、昇降機(不図示)によって昇降されてよい。上側コンテナ2は、軸方向に沿って、下側コンテナ1に対して相対的に上下に昇降可能とされている。
【0026】
下側サイドウォール成形部11と上側サイドウォール成形部21とは、タイヤ200の側面部(サイドウォール)を形成する金型である。下側サイドウォール成形部11と上側サイドウォール成形部21とは、トレッド成形部3と同軸心の円環状に形成されている。下側サイドウォール成形部11の上面と、上側サイドウォール成形部21の下面とが、タイヤ200の側面を成形する意匠面である。
【0027】
トレッド成形部3は、タイヤ200のトレッド面を形成する金型を含むユニットである。トレッド成形部3の内側面がタイヤ200のトレッド面を形成する意匠面である。トレッド成形部3は、下側コンテナ1の板部10の上面上に直接載置されている。
【0028】
図2には、トレッド成形部3の平面視(上面視)での断面を示している。トレッド成形部3は、円周方向に並ぶ複数のセグメント4を有する。
【0029】
トレッド成形部3は、例えば周方向に5から90個のセグメント4に分割されてよい。セグメント4は、下側コンテナ1の板部10の上面上に直接載置されている。本実施形態のトレッド成形部3は、円周方向の長さが互いに同一の8個のセグメント4に分割された構成とされている。セグメント4の内側面が、トレッド成形部3の意匠面である。以下では、セグメント4の内側面を、セグメント4の意匠面と称する場合がある。
【0030】
セグメント4は、セグメント4の意匠面が周方向で隣接するセグメント4の意匠面と連続的に連なる閉位置と、セグメント4の意匠面が隣接するセグメント4の意匠面と不連続になる開位置とに移動可能である。換言すると、セグメント4の開位置は、セグメント4の閉位置よりも外側の位置である。セグメント4は、開位置と閉位置との間を径方向に沿って移動可能とされている。
【0031】
図3から
図8には、金型100の要部である、金型100の周方向におけるセグメント4の近傍を周方向に沿って見た図(断面図)を示している。
図3は、セグメント4が閉位置である場合を、
図4から
図8は、セグメント4が開位置である場合を示している。詳述すると、
図4はセグメント4が開き始めた時(離型の初期)の状態を示している、
図5から
図8は、
図4に示す状態から更にセグメント4が開いていく状態をこの順に示している。
【0032】
セグメント4は、
図3から
図8に示すように、内側の面がタイヤ200(
図1参照)のトレッド面を形成する意匠面となっている分割金型40と、分割金型40を支持するホルダ41と、ホルダ41の周方向における側部に配置され、周方向に窪んだカム溝部5と、を有する。分割金型40及びホルダ41は、リング7の内側且つ下側に配置される。
【0033】
分割金型40は、
図3などに示すように、意匠面に、タイヤのトレッドの溝を形成する突起やサイプを形成する突起を有する。分割金型40の意匠面の突起は、所望トレッドの形状やサイプの形状にあわせて任意の形状で設けてよい。分割金型40の周方向における端部は隣接する分割金型40の端部に沿った形状とされている。
【0034】
ホルダ41は、分割金型40の外側に隣接して配置され、分割金型40の外側部を支持している。ホルダ41の内側部は、例えば、軸方向の両端部よりも軸方向の内側部が外側に向けて凹む凹面状に形成されており、分割金型40が、その外側部をその凹部に嵌め込まれてホルダ41に支持されている。ホルダ41の上端部と下端部の内側面はそれぞれ、上側サイドウォール成形部21と下側サイドウォール成形部11の外側面に対向している。ホルダ41は、下側コンテナ1の板部10の上面上に載置された状態で開位置と閉位置とを移動する。
【0035】
ホルダ41における、下端部における径方向の内側部には、ホルダ41の下端面が内側に向かうにつれて板部10から離間する下部傾斜面41aを形成されてよい。
【0036】
リング7は、
図3から
図8に示すように、トレッド成形部3の外側且つ上側に配置されている。リング7は、トレッド成形部3のセグメント4を閉位置に保持する保持位置(
図3参照)と、セグメント4を開位置へ移動させる解放位置(
図4から
図8参照)との間で移動自在となっている。本実施形態において、保持位置はリング7が最も下降した位置である。また、解放位置は、リング7が保持位置よりも上昇した位置である。リング7は、昇降機(不図示)によって昇降されてよい。
【0037】
リング7は、内側を向き、上方に向けて徐々に直径が小さくなるように傾斜するリング内側傾斜面76が形成されたリング内周部75を有する。
【0038】
リング7は、セグメント4のそれぞれと係合している。リング内周部75には、カム溝部5と係合する接触子60を有するアーム6が設けられている。リング7は、下降することによりリング内側傾斜面76でセグメント4を付勢して閉位置に移動させる。リング7は、上昇することにより、カム溝部5と係合して外側にけん引し、セグメント4を開位置に移動させる。このリング7とセグメント4との動作については後述する。
【0039】
アーム6は、リング7における、リング内周部75から、径方向における内側に延出している。アーム6は、リング7における下端部に配置されるとよい。
【0040】
接触子60は、アーム6の、径方向における内側の先端部に配置されている。本実施形態において、接触子60は、回転軸が周方向に沿う回転体である。接触子60は、周方向に沿ってみた場合、断面が円形状に形成されてよい。例えば、接触子60は、回転軸となる中心軸が周方向に沿う円柱状に形成されてよい。接触子60は、アーム6の先端部において、後述するカム溝部5の溝内に向けて、すなわち、ホルダ41に向けて、周方向に沿って延出してよい。
【0041】
カム溝部5は、ホルダ41の周方向における一方の側部又は両方の側部に配置されてよい。カム溝部5は、軸方向に沿って延在している。カム溝部5の下部は、上部よりも径方向に幅広とされており、カム溝部5の上方から下方にかけて、径方向の外側に向けて径方向における幅が広がるように形成されている。
【0042】
本実施形態において、カム溝部5の上端部には、径方向における幅が一定の縦溝部51が形成されている。カム溝部5における、縦溝部51よりも下部は、カム溝部5の上方から下方にかけて、径方向の外側に向けて径方向における幅が広がる傾斜溝部50とされている。
【0043】
カム溝部5における、外側の溝内面、すなわち、傾斜溝部50における径方向の外側の溝側面は、軸方向における下方から上方に向けて、径方向における内側に傾斜した傾斜面50aとされている。また、カム溝部5における径方向の内側の溝側面は、周方向における中央部分が径方向に対して垂直となる平面であって、軸方向に平行な平面とされてよい。
【0044】
金型100における、リング7の昇降に伴うセグメント4の動作は以下のようである。
【0045】
金型100では、リング7が下降することで、リング内側傾斜面76がセグメント4のホルダ41の外側面を付勢する。これにより、リング7は、閉位置に向けて、セグメント4を径方向における内側に移動させる。
【0046】
詳述すると、リング7が上昇しきっている状態では、
図8に示すように、セグメント4はリング7にけん引されて宙吊りの状態であってよい。この場合、リング7は、アーム6の接触子60を、セグメント4のカム溝部5における、縦溝部51に係止させて、セグメント4をけん引してよい。
【0047】
リング7が更に下降すると、
図7に示すように、セグメント4が下側コンテナ1の板部10上に載置された状態となる。更にリング7が下降すると、
図6に示すように、リング内側傾斜面76がセグメント4のホルダ41の外側面を径方向における内側に向けて付勢し始める。更なるリング7の下降に伴って、セグメント4は、
図5に示すように径方向における内側に向けて付勢されて移動して
図3に示す閉位置に到達する。この状態で、
図1に示すように、金型100は、タイヤ200の成形や加硫を行える。
【0048】
タイヤ200の成形などを終えると、金型100は開かれる。金型100はリング7が上昇することで、開かれる。なお、金型100が開く、とは、セグメント4が径方向における外側に移動してトレッド成形部3が開くことである。本実施形態では、セグメント4が外側に移動することを、セグメント4が開く、などと称している。
【0049】
金型100でセグメント4が開く動作を説明する。金型100では、
図3に示すようにリング7が保持位置に在る状態から、リング7が上昇することで、アーム6の接触子60がセグメント4のホルダ41に形成されたカム溝部5に係合し、これにより、リング7がアーム6を介してセグメント4を外側に向けてけん引する。すなわち、カム溝部5は、リング7が保持位置から解放位置に移動する際に、アーム6及び接触子60を介してリング7と係合し、外側に向けてけん引される。これにより、リング7は、セグメント4を閉位置から外側に移動させる。
【0050】
詳述すると、リング7が上昇を始めると、
図4に示すように、リング7のアーム6の接触子60が、セグメント4のカム溝部5における、傾斜溝部50の傾斜面50aに当接し、更に、傾斜面50aを介してセグメント4を外側にけん引する。接触子60は、リング7の上昇に伴って、セグメント4及びそのカム溝部5に対して、傾斜面50aに沿って斜め上方に相対移動する。
【0051】
リング7が上昇し始めた初期にあっては、接触子60は、傾斜面50aの下端部に当接し、セグメント4の下端部を外側にけん引する状態となる。本実施形態では、ホルダ41における、下端部に下部傾斜面41aを形成されているため、リング7が上昇し始めた初期にセグメント4が開く際、セグメント4の上端部が下端部よりも内側に位置するようにセグメント4が傾斜した状態となる。詳述すると、リング7が上昇し始めた初期にセグメント4が開く際、セグメント4は、その下端部が上端部よりも先に外側に移動することで、下部傾斜面41aを板部10に当接させるようにして傾斜する。これにより、セグメント4の分割金型40がタイヤ200のトレッド面から離型する際の、タイヤ200のトレッド面に加わる離型抵抗を低減し、セグメント4を開く際の動力を軽減させることができる。また、タイヤ200のトレッド面に加わる離型抵抗を低減することで、離型時におけるタイヤ200のトレッド面の変形を抑制し、タイヤ200の初期性能向上を実現することができる。また、離型時における分割金型40の疲労や摩耗を軽減することができる。
【0052】
リング7が上昇し始めた初期にセグメント4が上記のように傾斜しやすいように、セグメント4の上端部が径方向における内側に移動するのを規制する規制部24を、例えば上側コンテナ2に設けてもよい。規制部24は、例えば、ホルダ41の上端部を外側に向けて支持可能な位置に配置するとよい。具体的には、セグメント4が閉状態である場合に、ホルダ41の上端部の内側に当接する位置に配置するとよい。
図3などでは、規制部24が、上側コンテナ2の板部20の下面部に、板部20の下面よりも突出するように配置されている場合を例示している。
【0053】
規制部24は、一例として、周方向に沿って延在する丸棒状としてよい。規制部24を上側コンテナ2に設ける場合、ホルダ41の上端部には、規制部24と係合する被規制部42を形成するとよい。被規制部42は、例えば、少なくとも一部が内側を向く面となり、規制部24の側面に沿う円弧状の表面を有する形状とされるとよい。これにより、セグメント4が傾斜する際に、セグメント4の上端部は、被規制部42の位置で規制部24に支持されて、セグメント4の下端部が外側に移動するようにして傾斜しやすくなる。規制部24が丸棒状であり、被規制部42を、規制部24の側面に沿う円弧状の表面を有するものとすることで、セグメント4が被規制部42の位置で規制部24に支持されて傾斜する場合に、セグメント4が滑らかに傾斜するようになる。
【0054】
さて、接触子60は、
図5、
図6に示すように、リング7の更なる上昇に伴って、傾斜面50aに沿って更に上方に相対移動する。この際、セグメント4は、接触子60の傾斜面50aに対する相対移動に伴って、更に外側にけん引される。接触子60が上述のごとく、その回転軸が周方向に沿う回転体であると、接触子60は、傾斜面50aに沿って回転しながら滑らかに相対移動可能となる。これにより、セグメント4は、外側に向けて滑らかにけん引される。
【0055】
セグメント4が外側に向けてけん引されている状態にあっては、規制部24が、ホルダ41の上面を下方に向けて支持しているとよい。これにより、分割金型40がタイヤ200のトレッド面から離型した後のセグメント4の傾斜を抑制してセグメント4が外側に向けて滑らかにけん引されるようになる。本実施形態では、ホルダ41の上端部における、被規制部42よりも内側部分の上面は、周方向及び径方向に沿う平面状とされている。
【0056】
図7に示すように、リング7が更に上昇して、接触子60が縦溝部51まで相対移動すると、接触子60はセグメント4及びそのカム溝部5に対して、縦溝部51に沿って上方に相対移動するようになる。この状態に達した時、セグメント4の外側への移動は終了する。
図8に示すように、その後更にリング7を上昇させて、セグメント4を吊り上げてもよい。
【0057】
セグメント4が開かれる際、それぞれのセグメント4は、径方向に沿って放射状に広がる。トレッド成形部3がより多数(本実施形態では、一例として8個)のセグメント4に分割されることで、セグメント4の分割金型40がタイヤ200のトレッド面から離型する際の、タイヤ200のトレッド面に加わる離型抵抗を低減し、セグメント4を開く際の動力を軽減させることができる。また、タイヤ200のトレッド面に加わる離型抵抗を低減することで、離型時におけるタイヤ200のトレッド面の変形を抑制し、タイヤ200の初期性能向上を実現することができる。また、離型時における分割金型40の疲労や摩耗を軽減することができる。
【0058】
さて、金型100では、トレッド成形部3が、複数のセグメント4として、リング7が上昇を開始した際に、先に開く第一群のセグメント4(例えば、
図3に示すセグメント4)と、第一群のセグメント4の後に開く第二群のセグメント4(例えば、
図9に示すセグメント4)とを有するものであってよい。すなわち、第一群のセグメント4の分割金型40が離型した後に、第二群のセグメント4の分割金型40が離型するようにしてよい。これにより、セグメント4の分割金型40がタイヤ200のトレッド面から離型する際の、タイヤ200のトレッド面に加わる離型抵抗を低減し、セグメント4を開く際の動力を軽減させることができる。また、タイヤ200のトレッド面に加わる離型抵抗を低減することで、離型時におけるタイヤ200のトレッド面の変形を抑制し、タイヤ200の初期性能向上を実現することができる。
【0059】
リング7が上昇する際において、第二群のセグメント4は、第一群のセグメント4がリング7と係合した後に、リング7と係合するものとしてよい。具体的には、例えば
図9に示すように、第二群のセグメント4のカム溝部5の傾斜溝部50を、第一群のセグメント4のカム溝部5の傾斜溝部50よりも、径方向において幅広にし、且つ、第二群のセグメント4の傾斜溝部50の傾斜面50aは、第一群のセグメント4の傾斜溝部50の傾斜面50a(例えば
図3参照)よりも、外側に位置させてよい。すなわち、カム溝部5の傾斜溝部50の幅を、少なくとも2段階の異なるものとしてよい。これにより、リング7が上昇を開始した際に、第一群のセグメント4のカム溝部5とリング7の接触子60とが係合し(
図4参照)、その後、第二群のセグメント4のカム溝部5とリング7の接触子60とが係合するようになる。すなわち、リング7が上昇を開始した際に、第一群のセグメント4が開き(
図4参照)、その後、第二群のセグメント4が開くといった具合に、各セグメント4が開くタイミングを2段階にずらすことができる。
【0060】
このように、金型100では、カム溝部5の形状(例えば、幅)を変更するという簡単な構造で、各セグメント4を開くタイミングをずらすことができるのである。
【0061】
以上のようにして、各セグメントを開くタイミングをずらすことができる簡単な構造のタイヤ成形用金型を提供することができる。
【0062】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、カム溝部5の幅を変更することで、リング7が上昇を開始した際に、先に開く第一群のセグメント4と、第一群のセグメント4の後に開く第二群のセグメント4とを有するものとして各セグメント4が開くタイミングを2段階にずらす場合を説明した。しかし、各セグメント4が開くタイミングは、2段階に異なる場合に限られない。例えば、カム溝部5の幅を3段階以上に異ならせて、各セグメント4が開くタイミングを3段階以上にずらしてもよい。
【0063】
(2)上記実施形態では、カム溝部5の幅を変更することで、リング7が上昇を開始した際に、先に開く第一群のセグメント4と、第一群のセグメント4の後に開く第二群のセグメント4とを有するものとして各セグメント4が開くタイミングを2段階にずらす場合を説明した。しかし、各セグメント4が開くタイミングは、第一群のセグメント4におけるカム溝部5の傾斜面50aの傾斜角度と、第二群のセグメント4におけるカム溝部5の傾斜面50aの傾斜角度とを異ならせることでずらしてもよい。金型100では、セグメント4ごとにカム溝部5の形状を変更して各セグメント4が開くタイミングをずらしてよい。
【0064】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、タイヤ成形用金型に適用できる。
【符号の説明】
【0066】
1 :下側コンテナ
10 :板部
100 :金型(タイヤ成形用金型)
11 :下側サイドウォール成形部
14 :規制部
2 :上側コンテナ
20 :板部
200 :タイヤ
21 :上側サイドウォール成形部
24 :規制部
3 :トレッド成形部
4 :セグメント
40 :分割金型
41 :ホルダ
41a :下部傾斜面
42 :規制部
5 :カム溝部
50 :傾斜溝部
50a :傾斜面
51 :縦溝部
6 :アーム
60 :接触子
7 :リング(セグメント駆動部)
75 :リング内周部
76 :リング内側傾斜面
G :軸心