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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171213
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】散水システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/42 20110101AFI20241204BHJP
   F28F 25/02 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
F24F1/42
F28F25/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088172
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】原田 真宏
(72)【発明者】
【氏名】村上 伸太郎
【テーマコード(参考)】
3L054
【Fターム(参考)】
3L054BA06
(57)【要約】
【課題】スケールの発生を抑制することが可能な散水システムを提供する。
【解決手段】蒸留水を製造することが可能な蒸留水製造装置30と、前記蒸留水製造装置30により製造された蒸留水を、空調装置の室外機Uに散水することが可能な散水装置20と、を具備した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸留水を製造することが可能な蒸留水製造装置と、
前記蒸留水製造装置により製造された蒸留水を、空調装置の室外機に散水することが可能な散水装置と、
を具備する、
散水システム。
【請求項2】
前記蒸留水製造装置は、
流通する水と、前記室外機と、の間で熱交換可能な熱交換部を具備する、
請求項1に記載の散水システム。
【請求項3】
前記蒸留水製造装置は、
前記熱交換部を通過した水を貯留する第一貯留部と、
前記第一貯留部の水を蒸留する蒸留部と、
前記蒸留部で蒸留された蒸留水を回収する回収部と、
を具備する、
請求項2に記載の散水システム。
【請求項4】
前記熱交換部、前記第一貯留部、前記蒸留部及び前記回収部のうち少なくとも1つは、
前記室外機の上部に設けられる、
請求項3に記載の散水システム。
【請求項5】
前記蒸留水製造装置により製造された蒸留水、及び、雨水を貯留可能な第二貯留部をさらに具備し、
前記散水装置は、
前記第二貯留部に貯留された水を散水可能である、
請求項4に記載の散水システム。
【請求項6】
前記第二貯留部を介さずに、前記熱交換部及び前記第一貯留部の間で水を循環可能な循環経路をさらに具備する、
請求項5に記載の散水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置の室外機へ散水を行う散水システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調装置の室外機へ散水を行うことで、空調装置の省エネ化を図ることが可能な散水システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、スケール成分を含む水道水などの第1水を室外機に対して散布する第1散布と、純水製造装置に通されてスケール成分が除去された第2水を室外機に対して散布する第2散布と、を実行可能な散水装置が開示されている。特許文献1に記載の技術では、休止期間を挟んで第1散布を複数回実行し、この休止期間に第2散布を行うように、散水が制御されている。このように第1水の散布と第2水の散布を交互に行うことで、スケール成分を含む第1水の使用量を抑制し、これによってスケールの発生を抑制することができる。
【0004】
しかしながら特許文献1に記載の技術では、第1水の散布と第2水の散布を交互に行ったとしても、スケール成分を含む第1水を使用しているため、依然としてスケールが発生することが想定される。このため、スケールの発生を効果的に抑制する技術が依然として求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6690067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、スケールの発生を抑制することが可能な散水システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、蒸留水を製造することが可能な蒸留水製造装置と、前記蒸留水製造装置により製造された蒸留水を、空調装置の室外機に散水することが可能な散水装置と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記蒸留水製造装置は、流通する水と、前記室外機と、の間で熱交換可能な熱交換部を具備するものである。
【0010】
請求項3においては、前記蒸留水製造装置は、前記熱交換部を通過した水を貯留する第一貯留部と、前記第一貯留部の水を蒸留する蒸留部と、前記蒸留部で蒸留された蒸留水を回収する回収部と、を具備するものである。
【0011】
請求項4においては、前記熱交換部、前記第一貯留部、前記蒸留部及び前記回収部のうち少なくとも1つは、前記室外機の上部に設けられるものである。
【0012】
請求項5においては、前記蒸留水製造装置により製造された蒸留水、及び、雨水を貯留可能な第二貯留部をさらに具備し、前記散水装置は、前記第二貯留部に貯留された水を散水可能であるものである。
【0013】
請求項6においては、前記第二貯留部を介さずに、前記熱交換部及び前記第一貯留部の間で水を循環可能な循環経路をさらに具備するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
本発明においては、スケールの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第一実施形態に係る散水システムの全体的な構成を示した模式図。
図2】冷却・加熱部の平面模式図。
図3】冬季における散水システムの動作を示した模式図。
図4】散水システムにおける水の流通経路を切り替えるための制御フローの一例を示した図。
図5】第二実施形態に係る散水システムの全体的な構成を示した模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、図1を用いて、本発明の一実施形態に係る散水システム1の構成について説明する。
【0018】
散水システム1は、住宅等に設けられる空調装置の室外機Uに対して散水を行い、室外機Uを冷却することで空調装置の省エネ化を図るものである。散水システム1は、主として雨水タンク10、散水装置20、蒸留水製造装置30、第一三方弁40、第二三方弁50、各部の間で水を流通させるための複数の管路、及び、制御部70を具備する。
【0019】
雨水タンク10は、雨水や、後述する蒸留水製造装置30により製造された蒸留水を貯留することが可能なものである。雨水タンク10は、例えば円柱状、かつ、中空状の容器により構成される。雨水タンク10には、例えば雨水を集めることが可能な漏斗や雨どい等(不図示)が接続される。雨が降ると、当該漏斗等により集められた雨水が雨水タンク10へと案内され、雨水タンク10に貯留される。雨水タンク10には、雨水タンク10に貯留された水の量を検出可能な貯水量センサ11が設けられる。
【0020】
散水装置20は、水を室外機Uに散水するものである。散水装置20は、主としてノズル21及び電磁弁22を具備する。
【0021】
ノズル21は、水を噴出する噴出口である。ノズル21としては、各種のノズル(一流体ノズル、二流体ノズル等)を用いることができる。ノズル21は、管路61、第一三方弁40及び管路62を介して雨水タンク10から供給される水を噴出することができる。ノズル21は、適宜の支持部材を介して支持される。ノズル21は室外機Uの上部に対して散水できるような位置及び向きで配置される。なお図1では一例として、1つの室外機Uに対して1つのノズル21を設けた例を示しているが、ノズル21の個数は限定するものではなく、例えば1つの室外機Uに対して複数設けることも可能である。
【0022】
電磁弁22は、雨水タンク10からノズル21へと供給される水の流通の可否を切り替える開閉弁である。電磁弁22は、管路62の中途部(例えば、ノズル21の近傍)に配置される。
【0023】
蒸留水製造装置30は、上水から蒸留水を製造するものである。蒸留水製造装置30は、主として冷却・加熱部31、貯留部32、吸収部33、蒸留部34及び回収部35を具備する。
【0024】
図1及び図2に示す冷却・加熱部31は、内部を流通する水と室外機Uとの間で熱交換を行うことで、室外機Uの冷却又は加熱を行うものである。冷却・加熱部31は、薄い板状の筐体31aに配管31bを収容することで形成される。冷却・加熱部31(筐体31a)は、平面視において室外機Uと略同一形状(例えば、矩形状)に形成される。配管31bは、平面視において、筐体31aの略全域に亘るように形成される。本実施形態では、配管31bは、筐体31a内の一端部から他端部までを何度も往復するように形成される。これによって、配管31bの全長が長くなり、室外機Uとの熱交換が行い易くなるように構成されている。冷却・加熱部31は、室外機Uの上面に固定される。
【0025】
配管31bの一端(蒸留側端部)は、管路65、第二三方弁50及び管路64を介して、上水の供給源(上水道)に接続されると共に、管路65、第二三方弁50、管路63、第一三方弁40及び管路61を介して、雨水タンク10に接続される。配管31bの他端(下流側端部)は、管路66を介して後述する貯留部32に接続される。
【0026】
貯留部32は、冷却・加熱部31を通過した水を貯留するものである。貯留部32は、上方が開放された直方体の箱状に形成される。貯留部32は、平面視において冷却・加熱部31(筐体31a)と略同一形状(矩形状)に形成される。貯留部32は、冷却・加熱部31の上面に固定される。
【0027】
吸収部33は、貯留部32に貯留された水を吸収するものである。吸収部33は、例えば水を吸収可能なスポンジ等の多孔質材料により形成される。吸収部33は、平面視において貯留部32と略同一形状(矩形状)に形成される。吸収部33は、貯留部32の上部に設けられる。吸収部33の下面は、貯留部32に貯留された水と接するように配置される。これによって吸収部33は、貯留部32に貯留された水を吸い上げることができる。
【0028】
蒸留部34は、吸収部33で吸い上げられた水を蒸留するものである。蒸留部34は、所定の方向に傾斜した天面34aを有し、底面が開放された中空の箱状に形成される。蒸留部34の天面34aは、太陽光を透過可能な透明状の素材(例えば、ガラス等)により形成される。蒸留部34は、吸収部33を上方から覆うように配置される。
【0029】
このように、本実施形態では、冷却・加熱部31、貯留部32、吸収部33及び蒸留部34が、室外機Uの上部に設けられている。
【0030】
蒸留部34において、天面34aを介して照射される太陽光によって、吸収部33により吸い上げられた水の蒸発が促される。蒸発した水は、天面34aの下面において再び液体へと凝縮し、傾斜した天面34aを伝って天面34aの下部(後述する回収部35)へと流れる。このように、貯留部32に貯留された水を蒸留することによって、ミネラル分(スケールの元になる成分)を分離させ、ミネラル分を含まない蒸留水を回収することができる。
【0031】
回収部35は、蒸留部34で蒸留された水(蒸留水)を回収するものである。回収部35は、水を収容可能な適宜の形状(例えば、箱状)に形成される。回収部35は、傾斜した状態で配置された天面34aの下端部に設けられる。これによって、天面34aの下面を伝って流れる水(蒸留水)を、回収部35に回収することができる。回収部35で回収された水は、管路67を介して雨水タンク10へと供給され、雨水タンク10に貯留される。
【0032】
第一三方弁40は、管路を流通する水の流通方向を切り替えるものである。第一三方弁40は、雨水タンク10に接続された管路61、散水装置20に接続された管路62、及び、後述する第二三方弁50に接続された管路63にそれぞれ接続される。第一三方弁40は、内部の弁体が操作されることで、管路61から管路62への水の流通を許可すると共に、管路63への水の流通を遮断する状態(図1参照)と、管路61から管路63への水の流通を許可すると共に、管路62への水の流通を遮断する状態(図3参照)と、を切り替えることができる。
【0033】
第二三方弁50は、管路を流通する水の流通方向を切り替えるものである。第二三方弁50は、第一三方弁40に接続された管路63、上水の供給源(上水道)に接続された管路64、及び、冷却・加熱部31に接続された管路65にそれぞれ接続される。第二三方弁50は、内部の弁体が操作されることで、管路64から管路65への水の流通を許可すると共に、管路63からの水の流通を遮断する状態(図1参照)と、管路63から管路65への水の流通を許可すると共に、管路64からの水の流通を遮断する状態(図3参照)と、を切り替えることができる。また、管路64には、上水の供給源から第二三方弁50側への上水の流通の可否を切り替える上水弁64aが設けられる。
【0034】
なお、各管路には、必要に応じて水を流通させるためのポンプ(不図示)が適宜設けられる。
【0035】
制御部70は、散水システム1の各部の動作を制御するものである。制御部70は、主としてCPU等の演算処理装置、RAMやROM等の記憶装置等により構成される。制御部70の記憶装置には、散水システム1の各部の動作を制御するために必要な情報や各種プログラムが記憶されている。
【0036】
制御部70は、貯水量センサ11と電気的に接続され、貯水量センサ11による検出結果に関する情報を取得することができる。また制御部70は、第一三方弁40及び第二三方弁50と電気的に接続され、第一三方弁40及び第二三方弁50の動作を制御することができる。また制御部70は、上水弁64aと電気的に接続され、上水弁64aの動作(開閉)を制御することができる。また制御部70は、電磁弁22と電気的に接続され、電磁弁22の動作(開閉)を制御することにより、任意のタイミングで散水装置20を作動させて室外機Uへの散水を行うことができる。また制御部70は、各管路に設けられたポンプの動作を制御することにより、任意のタイミングで管路内に水を流通させることができる。
【0037】
以上のように構成された散水システム1において、季節に応じて水の流通経路を切り替えると共に、散水装置20による散水等を行うことで、空調装置の省エネ化等を図ることができる。以下では、夏季及び冬季における散水システム1の動作について説明する。
【0038】
図1に示すように、空調装置の冷房運転が行われると想定される夏季には、散水装置20から室外機Uへと散水が行われる。これによって室外機Uを冷却し、冷房運転時の冷媒の冷却を促進することができ、空調装置の省エネ化を図ることができる。またこの際、ミネラル分を含まない雨水、又は、蒸留水製造装置30により製造された蒸留水を用いて散水が行われるため、スケールの発生を抑制することができる。
【0039】
具体的には、夏季には、第一三方弁40及び第二三方弁50が適宜制御され、管路63における水の流通が遮断される。この状態において、制御部70は、電磁弁22の動作を制御して、雨水タンク10に貯留された水を室外機Uへと散水する。これによって室外機Uを冷却し、空調装置の省エネ化を図ることができる。またミネラル分を含まない雨水を利用することにより、スケールが発生するのを抑制することができる。
【0040】
ここで、夏季における電磁弁22の動作のタイミング(散水のタイミング)は、任意に設定することができる。例えば、空調装置が作動したことを検出して、空調装置の作動に応じたタイミングで散水を行うことで、水の無駄な消費を抑制することができる。また空調装置の作動の検出方法は特に限定するものではなく、例えば、空調装置(室内機)からの制御信号、室外機Uの振動、排気の風速、排気温度等に応じて空調装置の作動を検出することができる。
【0041】
また夏季において、散水や蒸発等により雨水タンク10の貯水量が減った場合には、上水弁64aが開かれ、上水が散水システム1へと供給される。当該上水は、管路64、第二三方弁50及び管路65を介して冷却・加熱部31へと供給される。この際、散水装置20による散水だけでなく、冷却・加熱部31を流通する上水によっても室外機Uが冷却されるため、効果的に空調装置の省エネ化を図ることができる。またこれに伴って、冷却・加熱部31を流通する上水の温度が上昇するため、後述する蒸留部34における上水の蒸留を効率的に行うことができる。
【0042】
冷却・加熱部31を流通した上水は、貯留部32に貯留された後、吸収部33によって吸い上げられる。吸収部33によって吸い上げられた上水は、蒸留部34の天面34aを透過した太陽光によって温められ、蒸発する。蒸発した上水は、天面34aの下面において再び液体へと凝縮し、回収部35によって回収される。このように、蒸留水製造装置30では、上水の蒸留が行われる。蒸留された上水(蒸留水)は、管路67を介して雨水タンク10へと供給され、雨水と共に雨水タンク10に貯留される。雨水タンク10に貯留された水(雨水及び上水(蒸留水))は、散水装置20による散水に用いられる。
【0043】
このように本実施形態では、雨水だけでは水量が不足する場合に、上水を利用して散水を行うことができる。本実施形態では、雨水のみを用いて散水を行うわけではないため、雨水を集めるために大きな設備(過剰に大きな雨水タンク10や漏斗等)を設置する必要がないため、散水システム1の小型化を図ることができる。また、上水は蒸留水製造装置30によって蒸留され、ミネラル分が除去された後に室外機Uへと散水されるため、室外機Uにスケールが発生するのを抑制することができる。
【0044】
一方、図3に示すように、空調装置の暖房運転が行われると想定される冬季には、散水装置20による散水が行われることはない。また冬季には、冷却・加熱部31及び貯留部32の間で、太陽熱で暖められた水(温水)の循環が行われる。これによって、室外機Uを加熱し、暖房運転時の冷媒の加熱を促進することができ、空調装置の省エネ化を図ることができる。また温水の循環を行うことで、管路の凍結を防止することができる。
【0045】
具体的には、冬季には、第一三方弁40及び第二三方弁50が適宜制御され、管路62及び管路64における水の流通が遮断される。この状態において、貯留部32に貯留された水は吸収部33によって吸い上げられ、蒸留部34において太陽光により温められて蒸留される。蒸留された温水(蒸留水)は、管路67を介して雨水タンク10へと供給される。制御部70は、雨水タンク10に貯留された温水を、管路61、第一三方弁40、管路63、第二三方弁50及び管路65を介して冷却・加熱部31へと供給する。冷却・加熱部31へと供給された温水によって室外機Uを加熱することができるため、暖房運転中の空調装置の省エネ化を図ることができる。またこのように温水を循環させることで、冬季の管路の凍結を防止することができる。
【0046】
なお、冬季における水の循環のタイミングは、任意に設定することができる。例えば、空調装置が作動したことを検出して、空調装置の作動に応じたタイミングで温水の循環を行うことができる。また、管路の凍結の観点から、外気温が所定値以下になったことを検出して、温水の循環を行うこともできる。また、常時温水の循環を行うこともできる。
【0047】
以下では、図4を用いて、季節(夏季及び冬季)に応じた散水システム1の水の流通経路の切り替え方法について具体的に説明する。制御部70は、図4に示す制御フローを繰り返し実行することで、散水システム1の水の流通経路を季節に応じて適宜切り替えることができる。
【0048】
ステップS101において、制御部70は、現在が冬季であるか否か判定する。本実施形態では、現在が11月~3月である場合に、冬季であると判定する。なお、この冬季の判定基準は一例であり、任意に変更することが可能である。制御部70は、現在が11月~3月であると判定した場合、ステップS102に移行する。一方、制御部70は、現在が11月~3月ではないと判定した場合、ステップS103に移行する。
【0049】
ステップS102において、制御部70は、第一三方弁40及び第二三方弁50を、冬季用の状態に切り替える。具体的には、制御部70は、第一三方弁40及び第二三方弁50を適宜制御し、管路62及び管路64における水の流通を遮断する(図3参照)。この状態で、前述のように適宜温水の循環を行うことで、室外機Uを加熱したり、管路の凍結を防止したりすることができる。制御部70は、第一三方弁40及び第二三方弁50を、冬季用に切り替えた後、本制御フローを終了する。
【0050】
ステップS103において、制御部70は、現在が夏季であるか否か判定する。本実施形態では、現在が6月~9月である場合に、夏季であると判定する。なお、この夏季の判定基準は一例であり、任意に変更することが可能である。制御部70は、現在が6月~9月であると判定した場合、ステップS104に移行する。一方、制御部70は、現在が6月~9月ではないと判定した場合、本制御フローを終了する。
【0051】
なお、本実施形態では、夏季でも冬季でもない場合、散水装置20による散水や散水システム1内の水の循環を行わないものとする。
【0052】
ステップS104において、制御部70は、第一三方弁40及び第二三方弁50を、夏季用の状態に切り替える。具体的には、制御部70は、第一三方弁40及び第二三方弁50を適宜制御し、管路63における水の流通を遮断する(図1参照)。この状態で、前述のように散水装置20による散水を行うことで、室外機Uを冷却することができる。制御部70は、第一三方弁40及び第二三方弁50を、夏季用に切り替えた後、ステップS105に移行する。
【0053】
ステップS105において、制御部70は、雨水タンク10の貯水量が所定値以下か否かを判定する。本実施形態では、制御部70は、雨水タンク10の貯水量が満タン(最大容量)の2/3以下か否かを判定する。制御部70は、雨水タンク10の貯水量が満タンの2/3以下であると判定した場合、ステップS106に移行する。一方、制御部70は、雨水タンク10の貯水量が満タンの2/3以下ではないと判定した場合、本制御フローを終了する。
【0054】
ステップS106において、制御部70は、上水弁64aを開く。これによって、前述のように上水が散水システム1へと供給され、蒸留された後に雨水タンク10に貯留される。これによって、雨水タンク10の貯水量が減少した場合に蒸留した上水を供給し、雨水タンク10の貯水量を増加させることができる。制御部70は、ステップS106の処理を行った後、ステップS107に移行する。
【0055】
ステップS107において、制御部70は、雨水タンク10の貯水量が満タン(最大容量)であるか否かを判定する。制御部70は、雨水タンク10の貯水量が満タンであると判定した場合、ステップS108に移行する。一方、制御部70は、雨水タンク10の貯水量が満タンではないと判定した場合、ステップS107の処理を繰り返す。すなわち制御部70は、雨水タンク10の貯水量が満タンになるまで待機する。
【0056】
ステップS108において、制御部70は、上水弁64aを閉じる。制御部70は、ステップS108の処理を行った後、本制御フローを終了する。
【0057】
以下では、図5に示す変形例(第二実施形態)に係る散水システム2について説明する。
【0058】
第二実施形態に係る散水システム2が、第一実施形態に係る散水システム1(図3参照)と異なる点は、冬季において冷却・加熱部31及び貯留部32の間で水(温水)の循環を行う際に、雨水タンク10を経由することなく循環を行う点である。
【0059】
以下では、第二実施形態に係る散水システム2の構成のうち、第一実施形態に係る散水システム1(図3参照)との相違点について具体的に説明する。なお、第二実施形態に係る散水システム2の構成のうち、第一実施形態に係る散水システム1と同様の構成には、同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0060】
第二実施形態に係る散水システム2は、管路61と貯留部32とを接続する管路81が設けられる。管路81と管路61との接続部分には、第三三方弁82が設けられる。これによって、管路81は、管路61の中途部から分岐するように、当該管路61に接続される。また、管路61の中途部(第三三方弁82と第一三方弁40との間)には、水を循環させるためのポンプ83が設けられる。
【0061】
このように構成された散水システム2において、冬季には、冷却・加熱部31及び貯留部32の間で、太陽熱で暖められた水(温水)の循環が行われる。具体的には、冬季には、第一三方弁40及び第二三方弁50が適宜制御され、管路62及び管路64における水の流通が遮断される。また第三三方弁82が適宜制御され、雨水タンク10から第三三方弁82への水の流通が遮断される。この状態において、貯留部32に貯留された水は、蒸留部34に照射された光によって温められる。ポンプ83が駆動することで、貯留部32において温められた水(温水)は、管路81、第三三方弁82、ポンプ83、第一三方弁40、管路63、第二三方弁50、管路65を順に流通し、冷却・加熱部31へと供給される。冷却・加熱部31へと供給された温水によって室外機Uを加熱することができるため、暖房運転中の空調装置の省エネ化を図ることができる。またこのように温水を循環させることで、冬季の管路の凍結を防止することができる。
【0062】
また、第二実施形態に係る散水システム2では、第一実施形態に係る散水システム1(図3参照)とは異なり、雨水タンク10を介することなく温水の循環が行われる。このため、温水が雨水タンク10に一旦貯留されることによって温水の温度が低下するのを防止することができ、ひいては室外機Uを効率的に加熱することができる。
【0063】
なお、第二実施形態に係る散水システム2でも、蒸留水製造装置30における蒸留が行われるため、循環する水の量が減少することが想定される。この場合、第三三方弁82を適宜切り替えて、蒸留されて雨水タンク10に貯留された水を、循環用の水に追加してもよい。
【0064】
また、上述の第一実施形態及び第二実施形態では、冬季において、散水システム1・2内に水を循環させる例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、水の循環を行うのではなく、管路の凍結を防止するために、散水システム1・2内の水を全て排出(水抜き)してもよい。
【0065】
以上の如く、本実施形態に係る散水システム1は、
蒸留水を製造することが可能な蒸留水製造装置30と、
前記蒸留水製造装置30により製造された蒸留水を、空調装置の室外機Uに散水することが可能な散水装置20と、
を具備するものである。
このように構成することにより、スケールの発生を抑制することができる。すなわち、スケール成分が除去された蒸留水を用いて空調装置を冷却することができるため、スケールの発生を抑制することができる。
【0066】
また、前記蒸留水製造装置30は、
流通する水と、前記室外機Uと、の間で熱交換可能な冷却・加熱部31(熱交換部)を具備するものである。
このように構成することにより、内部を流通する水で室外機Uを冷却、又は、加熱することができる。例えば夏季には、室外機Uよりも冷たい水で室外機Uを冷却することで、空調装置の省エネ化を図ることができる。また冬季には、室外機Uよりも温かい水で室外機Uを加熱することで、空調装置の省エネ化を図ることができる。
【0067】
また、前記蒸留水製造装置30は、
前記冷却・加熱部31を通過した水を貯留する貯留部32(第一貯留部)と、
前記貯留部32の水を蒸留する蒸留部34と、
前記蒸留部34で蒸留された蒸留水を回収する回収部35と、
を具備するものである。
このように構成することにより、蒸留水製造装置30を簡単な構成とすることができる。
【0068】
また、前記冷却・加熱部31、前記貯留部32、前記蒸留部34及び前記回収部35のうち少なくとも1つは、
前記室外機Uの上部に設けられるものである。
このように構成することにより、室外機Uに照射される太陽光を冷却・加熱部31等によって遮断することができるため、室外機Uの温度上昇を抑制することができ、ひいては空調装置の省エネ化を図ることができる。
【0069】
また、散水システム1は、
前記蒸留水製造装置30により製造された蒸留水、及び、雨水を貯留可能な雨水タンク10(第二貯留部)をさらに具備し、
前記散水装置20は、
前記雨水タンク10に貯留された水を散水可能なものである。
このように構成することにより、スケールの発生を抑制することができる。すなわち、スケール成分が除去された蒸留水、及び、スケール成分を含まない雨水を用いて空調装置を冷却することができるため、スケールの発生を抑制することができる。また、雨水に加えて蒸留水を利用することで、雨水を貯留するための設備の小型化を図ることができる。
【0070】
また、散水システム2は、
前記雨水タンク10(第二貯留部)を介さずに、前記冷却・加熱部31(熱交換部)及び前記貯留部32(第一貯留部)の間で水を循環可能な循環経路(管路81、管路61、管路63、管路65及び管路66)を具備するものである。
このように構成することにより、雨水タンク10を介さずに冷却・加熱部31と貯留部32との間で水を循環させることができるため、雨水タンク10で水の温度が低下するのを抑制することができる。これによって、例えば冬季において、室外機Uを効率的に加熱することができる。
【0071】
なお、本実施形態に係る冷却・加熱部31は、本発明に係る熱交換部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る貯留部32は、本発明に係る第一貯留部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る雨水タンク10は、本発明に係る第二貯留部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る管路81、管路61、管路63、管路65及び管路66は、本発明に係る循環経路の実施の一形態である。
【0072】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0073】
例えば、散水システム1・2は、少なくとも水を蒸留し、蒸留された水を用いて散水を行うものであれば、具体的な構成は特に限定するものではない。
【0074】
また、上記実施形態に係る散水システム1・2に関する情報を適宜取得(検出)して、当該情報に基づいて散水装置20を制御するように構成することも可能である。例えば、散水システム1・2内に内部時計を設けると共に、適宜のセンサを用いて各時間における回収部35での蒸留水の回収量、蒸留部34内の温度、蒸留部34の天面34aの温度等を検出し、これらを比較することで、天候(晴れ、曇り、雨等)を判断し、雨と判断した場合には室外機Uへの散水を停止するなど、種々の情報に基づいて散水装置20を制御するように構成することが可能である。
【0075】
また上記実施形態は、主に住宅に設けられた室外機Uに対して散水システム1・2を適用した場合を想定して説明を行ったが、本発明はこれに限るものではなく、その他種々の施設(商業施設等)に設けられた室外機Uに対しても適用することが可能である。
【0076】
また、散水システム1・2により散水が行われる室外機Uの台数は特に限定するものではなく、任意の台数(1台、又は複数台)の室外機Uに対して散水を行うことが可能である。
【0077】
また、上記実施形態において説明した流通経路の切り替え方法(図4)の内容は一例であり、具体的な処理内容は任意に変更することが可能である。例えば、具体的な処理に用いる値(閾値等)や、処理の順序等を変更することも可能である。
【0078】
一例として、上記実施形態では、雨水タンク10の貯水量の閾値として、満タンの2/3(ステップS105)、及び、満タン(ステップS107)を用いているが、これらの閾値は任意に変更することが可能である。
【0079】
また、上記実施形態では、制御部70が季節(夏季、冬季)を判断し、水の流通経路を切り替える例(図4)を説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば人による判断に基づいて(手動で)、流通経路を切り替えるように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 散水システム
10 雨水タンク
20 散水装置
30 蒸留水製造装置
31 冷却・加熱部
32 貯留部
34 蒸留部
35 回収部
図1
図2
図3
図4
図5