(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171216
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】インペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金、及び無電解硫黄無添加Niベース鍍金処理方法
(51)【国際特許分類】
C23C 18/34 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
C23C18/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088176
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】598166249
【氏名又は名称】株式会社カワイ
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(72)【発明者】
【氏名】有村 泰治
(72)【発明者】
【氏名】岡本 洋
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 晴紀
【テーマコード(参考)】
4K022
【Fターム(参考)】
4K022AA02
4K022AA48
4K022BA14
4K022DA01
4K022DB03
4K022DB05
4K022DB06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】硫黄成分を含まない鍍金液にて形成された鍍金であっても、鍍金膜厚硬度(ビッカース硬度)が、650~950HV、鍍金密着強度が1kgf/mm
2~5kgf/mm
2を得ることができる自動車の内燃機関に使用される過給機のインペラに対して行われるNiをベースとした無電解硫黄無添加Niベース鍍金、及びNiをベースとした無電解硫黄無添加Niベース鍍金処理方法を提供すること。
【解決手段】使用する鍍金液は、濃度0.01g/L以上、10g/L以下のニッケルイオンと、濃度0.1g/L以上、10g/L以下のジアルキルアミンボランと、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、トリエタノールアミン、及びEDTAよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の錯化剤を含むことを特徴とするインペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の内燃機関に使用される過給機のインペラに対して行われるインペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金であって、
ニッケル(Ni)97.0~99.7重量%、リン(P)0.3~2.7重量%含有していることを特徴とするインペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金。
【請求項2】
前記インペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金を作製するために使用する鍍金液は、
濃度0.01g/L以上、10g/L以下のニッケルイオンと、
濃度0.1g/L以上、10g/L以下のジアルキルアミンボランと、
クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、トリエタノールアミン、及びEDTAよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の錯化剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のインペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金。
【請求項3】
自動車の内燃機関に使用される過給機のインペラに対して行われるニッケル(Ni)をベースとした無電解硫黄無添加Niベース鍍金処理方法であって、
ニッケル(Ni)97.0~99.7重量%、リン(P)0.3~2.7重量%となる鍍金層を形成するように調整された鍍金液を作製する鍍金液調整工程と、
前記鍍金液を、ヒータ部を備えた鍍金槽に供給する鍍金液供給工程と、
前記鍍金槽に被鍍金物を含侵させる浸漬工程を備えており、
前記浸漬工程においては、前記鍍金液の温度が200℃~350℃になるように熱処理がなされており、熱源である前記ヒータ部に向けて、1.0~300L/minの液流量になるように前記鍍金液を流しつつ、被鍍金物を前記鍍金液の中で0.1~5.0m/minの速度で揺動することを特徴とするインペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金処理方法。
【請求項4】
前記インペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金処理方法に使用する鍍金液は、
濃度0.01g/L以上、10g/L以下のニッケルイオンと、
濃度0.1g/L以上、10g/L以下のジアルキルアミンボランと、
クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、トリエタノールアミン、及びEDTAよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の錯化剤を含むことを特徴とする請求項3に記載のインペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に使われる過給機のインペラに対して行われるニッケル(Ni)をベースとした無電解硫黄無添加Niベース鍍金に関する。
【背景技術】
【0002】
過給機とは、内燃機関において、エンジンの排気量を増やすことなく、空気を強制的に吸入することで、燃焼効率を向上させるための装置である。ターボチャージャーとスーパーチャージャーの2種類が知られている。インペラとは、流体機械の一種で、回転する円盤状の羽根車のことを指す。インペラは、流体を回転させたり、圧力を上げたりする等の作用があり、主にポンプやタービンなどの流体機械に使用される。
【0003】
インペラは液体に接触する部分であり、液体中に含まれる化学物質や塩分、酸素等の影響を受けるため、腐食が発生し易い。メッキによって表面を覆うことで、腐食による劣化を防ぎ、耐食性を向上させることができる。インペラは高速で回転するため、摩擦による熱が発生し易いし、衝撃や摩耗によって表面が傷つき易くなる。メッキによって表面硬度を向上させることで、傷や摩耗を防止し、耐久性を向上させることができる。要するに、インペラに鍍金を施すことで、耐食性や摩擦抵抗、表面硬度の向上を図り、製品の性能や耐久性を向上させることができる。
【0004】
ニッケル鍍金液の主成分は、ニッケル塩であり、一般的なニッケル塩として硫酸ニッケル等が使用されているが、硫酸ニッケルに含まれる硫黄成分は、インペラの耐食性を低下させると言われている。出願人らは(硫黄成分を含まない)鍍金液であれば、インペラの表面の酸化や腐食に対する耐食性が向上すると考え、鋭意開発を進めた結果、硫黄成分を含まない鍍金液を開発することで耐食性に優れたインペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金、及び無電解硫黄無添加Niベース鍍金処理方法を開発するに至った。
【0005】
特許文献1には、「主成分をアルミニウムとする母材と、前記母材の表面を覆う耐エロージョン被膜部と、を備えるタービンインペラ(特許文献1:請求項1)。「前記耐エロージョン被膜部は、ニッケル及びリンを含むめっき層である請求項1に記載のタービンインペラ(特許文献2:請求項2)」。「タービンインペラは、主成分をアルミニウムとする母材と、母材の表面を覆う耐エロージョン被膜部と、を備える。これにより、回転するタービンインペラに液滴が流入しても、母材より先に耐エロージョン被膜部に液滴があたるので、エロージョンによって母材が損傷することが抑制される。(特許文献1:要約)」タービンインペラ(特許文献1:発明の名称)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に係るタービンインペラ(特許文献1:発明の名称)は、「耐エロージョン被膜部は、ニッケル及びリンを含むめっき層であってもよい。これにより、耐エロージョン被膜部の硬度を母材の硬度より高めることができる。硬度を高めた耐エロージョン被膜部によれば、エロージョンによるタービンインペラの損傷を抑制することができる(特許文献1:0010段落)」との記載より、耐エロージョン被膜部(めっき層と思われる)を、「母材の硬度は、ビッカース硬さHV100以上且つHV160以下でもよい。耐エロージョン被膜部の硬度は、ビッカース硬さHV500以上でもよい(特許文献1:0011段落)。」より、ビッカース硬度が、200HV程度(大きくても、せいぜい500HV程度のめっき層を得ることができる。しかしながら、500HVを大きく超えて、650~950HVの硬度を得ることは出来ないものと思われる。
【0008】
本発明の目的は、硫黄成分を含まない鍍金液にて皮膜形成された鍍金であっても、鍍金膜厚硬度(ビッカース硬度)が、650~950HV,かつ、鍍金密着強度が1kgf/mm2~5kgf/mm2を得ることができる自動車の内燃機関に使用される過給機のインペラに対して行われるNiをベースとした無電解硫黄無添加Niベース鍍金、及び自動車の内燃機関に使用される過給機のインペラに対して行われるNiをベースとした無電解硫黄無添加Niベース鍍金処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、自動車の内燃機関に使用される過給機のインペラに対して行われるインペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金であって、ニッケル(Ni)97.0~99.7重量%、リン(P)0.3~2.7重量%含有していることを特徴とするインペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記インペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金を作製するために使用する鍍金液は、濃度0.01g/L以上、10g/L以下のニッケルイオンと、濃度0.1g/L以上、10g/L以下のジアルキルアミンボランと、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、トリエタノールアミン、及びEDTAよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の錯化剤を含むインペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に記載された発明は、自動車の内燃機関に使用される過給機のインペラに対して行われるニッケル(Ni)をベースとした無電解硫黄無添加Niベース鍍金処理方法であって、ニッケル(Ni)97.0~99.7重量%、リン(P)0.3~2.7重量%となる鍍金層を形成するように調整された鍍金液を作製する鍍金液調整工程と、前記鍍金液を、ヒータ部を備えた鍍金槽に供給する鍍金液供給工程と、前記鍍金槽に被鍍金物を含侵させる浸漬工程を備えており、前記浸漬工程においては、前記鍍金液の温度が200℃~350℃になるように熱処理がなされており、熱源である前記ヒータ部に向けて、1.0~300L/minの液流量になるように前記鍍金液を流しつつ、被鍍金物を前記鍍金液の中で0.1~5.0m/minの速度で揺動するインペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金処理方法であることを特徴とするものである。尚、本明細書において揺動とは、主に上下方向に(被鍍金物を)揺れ動かすことであるが、上下方向以外の全ての方向を含む概念であり、要するに(被鍍金物を)三次元空間である鍍金槽中に漂わせる動きのことである。
【0012】
請求項4に記載した発明は、請求項3に記載された発明において、前記インペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金処理方法に使用する鍍金液は、濃度0.01g/L以上、10g/L以下のニッケルイオンと、濃度0.1g/L以上、10g/L以下のジアルキルアミンボランと、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、トリエタノールアミン、及びEDTAよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の錯化剤を含むインペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金処理方法であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るインペラ用無電解Niベースめっき、及び無電解Niベース鍍金処理方法により、硫黄成分を含まない鍍金液にて形成された鍍金であっても、鍍金膜厚硬度(ビッカース硬度)が、650~950HV,かつ、鍍金密着強度が1kgf/mm2~5kgf/mm2を得ることができる自動車の内燃機関に使用される過給機のインペラに対して行われるNiをベースとしたNiベース無電解硫黄無添加鍍金、及び自動車の内燃機関に使用される過給機のインペラに対して行われるNiをベースとした無電解硫黄無添加Niベース鍍金処理方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るインペラ用無電解Niベース鍍金の鍍金処理方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<インペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金>
以下、本発明に係るインペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金について、詳細に説明する。本発明は、自動車の内燃機関に使用される過給機のインペラに対して行われるNiをベースとした無電解Niベース鍍金である。ニッケル(Ni)97.0~99.7重量%、リン(P)0.3~2.7重量%含有していることを特徴とする。更なる特徴として硫黄成分を含まないことが挙げられる。
【0016】
硫黄成分を含まないようにするために鍍金液に工夫がなされている。具体的には、インペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金を作成するために使用する鍍金液は、濃度0.01g/L以上、10g/L以下のニッケルイオンと、濃度0.1g/L以上、10g/L以下のジアルキルアミンボランと、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、トリエタノールアミン、及びEDTAよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の錯化剤を含んでいる。
【0017】
<インペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金処理方法>
図1は、インペラ用無電解Niベース鍍金の鍍金処理方法を説明するための図である。本発明に係るインペラ用無電解Niベース鍍金の鍍金処理方法は、
図1に記載したように、表面処理工程→鍍金液調整工程→鍍金液供給工程→浸漬工程(鍍金層の形成)→仕上げ工程を備えている。以下に、各工程について記載する。
【0018】
表面処理工程:鍍金する前に、インペラ表面を綺麗に洗浄し、油や汚れを除去するための前処理を行う。これにより、鍍金層とインペラ表面の密着性が向上し、鍍金の品質が向上する。具体的には、被メッキ材であるインペラ表面をアルカリ洗浄、酸洗浄、中和洗浄等の洗浄を行い、汚れや油脂を取り除く。
【0019】
鍍金液調整工程:無電解メッキに使用する鍍金液を調整する。鍍金液は、金属イオンを含む溶液であり、金属を表面に堆積させるために必要な条件(温度、PH値、濃度等)を調整することになる。鍍金の組成に含まれるニッケル、リンの各成分に応じた鍍金液を調整する。鍍金液には、硫黄成分を含む、硫酸ニッケル、硫酸銅等は配合されておらず、濃度0.01g/L以上、10g/L以下のニッケルイオンと、濃度0.1g/L以上、10g/L以下のジアルキルアミンボランと、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、トリエタノールアミン、及びEDTAよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の錯化剤が含まれている。
【0020】
鍍金液供給工程:鍍金液調整工程にて、ニッケル(Ni)97.0~99.7重量%、リン(P)0.3~2.7重量%の鍍金層を形成するように調整された鍍金液を、ヒータ部を備えた鍍金槽に供給する。鍍金槽の材質は樹脂、又は樹脂にてコーティングされている。例えば、樹脂でコーティングされたステンレス鋼であっても良い。鍍金槽には、鍍金液を熱処理(液温調整)するための熱源となるヒータが設置されている。熱源となるヒータの材質は、樹脂、又は樹脂でコーティングされている。例えば、樹脂でコーティングされたステンレス鋼であっても良い。
【0021】
浸漬工程(鍍金層の形成):鍍金液の調整工程にて、ニッケル(Ni)97.0~99.7重量%、リン(P)0.3~2.7重量%の鍍金層が(インペラ表面に)形成されるように調整された鍍金液を、鍍金槽に入れ、鍍金液内にインペラを(陽極にして)浸漬する。金属イオンが金属表面に堆積すると、金属膜が形成される。形成される鍍金層の厚さは、浸漬時間や鍍金液の温度・濃度等によって調整される。尚、インペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金の鍍金処理方法において、鍍金液の温度は、200℃~350℃である。
【0022】
浸漬工程においては、熱源であるヒータ部に対して、1.0~300L/minの液流量(好ましくは、100~200L/minの液流量)になるように鍍金液を(鍍金槽内で)循環させつつ(流しつつ)、被鍍金物であるインペラを鍍金液の中で0.1~5.0m/minの速度(好ましくは2~3m/minの速度)で揺動し続ける。要するに、被鍍金物であるインペラを三次元空間である鍍金槽中に漂わせ続ける。
【0023】
仕上げ工程:鍍金後、鍍膜を洗浄し、必要に応じて乾燥等の後処理を行う。これにより、鍍金層の密着性や耐蝕性が向上し、鍍金の品質が向上する。浸漬工程が終了したら、メッキ層表面に付着したメッキ液や不純物を取り除くための後処理を行う。具体的には、水洗い、乾燥、油膜処理等を行う。インペラ用無電解Niベース鍍金の鍍金処理方法により形成された鍍金層は、ビッカース硬度、鍍金密着強度により鍍金層の品質が評価される。
【0024】
<ビッカース硬度測定(JIS Z 2244)>
ビッカース硬度は、物質の表面にダイヤモンド錐を押し付け、その印を観察することで測定される。具体的には、試験片の表面にダイヤモンド錐を垂直に押し付け、一定時間力を加えた後、ダイヤモンド錐が作った印の対角線の長さを測定し、この対角線の長さを基に計算した値がビッカース硬度値となる。
【0025】
<鍍金密着強度測定(JIS H 8504)>
金属鍍金の密着強度は、鍍金層と基材の間の接着力を評価することによって測定される。一般的な密着強度測定方法としてクロスカット法が知られている。クロスカット法は、鍍金層(皮膜)に対し、十字に切り込みを入れて、その切り口周辺の鍍金層(皮膜)の剥離程度を評価する方法である。JIS規格では、試験片に対して一定の間隔で交差する直線を切り込んで、交差点から鍍金層(皮膜)を剥離させる。その後、剥離した鍍金層(皮膜)の程度を観察して評価する。その他にも引張り法、シースルーテスト法、ピンプルテスト法等が知られている。
【0026】
<インペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金、及びインペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金処理方法の効果>
本発明により、硫黄成分を含まない鍍金液にて塗膜形成された鍍金であっても、鍍金膜厚硬度(ビッカース硬度)が、650~950HV,かつ、鍍金密着強度が1kgf/mm2~5kgf/mm2を得ることができる自動車の内燃機関に使用される過給機のインペラに対して行われるNiをベースとした無電解硫黄無添加Niベース鍍金、及び自動車の内燃機関に使用される過給機のインペラに対して行われるNiをベースとした無電解硫黄無添加Niベース鍍金処理方法を提供することができるようになった。
【0027】
本発明に係るインペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金は、硫黄を含まない鍍金液を使用する。硫黄を含まない鍍金液を使用することで、耐食性が高く、耐久性に優れた製品を作ることができるし、金属の表面に均一に鍍金することができ、美しい仕上がりを実現することができる。更に、製品の製造コストを低く抑えることができる上、環境に対する影響が少ないため、環境保護に配慮した製品を作ることができるし、人体に対する影響が少ないため、健康への影響が少ない製品を作ることができる。
【0028】
<インペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金、及び無電解硫黄無添加Niベース鍍金処理方法の変更例>
本発明に係るンペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金、及び無電解硫黄無添加Niベース鍍金処理方法は、上記した各実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、表面処理工程→鍍金液調整工程→鍍金液供給工程→浸漬工程(鍍金層の形成)→仕上げ工程の工程等を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で必要に応じて適宜変更することができる。
【実施例0029】
ニッケルイオン源として、ニッケルクロム酸、ニッケルニトレート、リン酸源として、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウムを(所望の組成を備えた鍍金層を得るための)所定の配合量で配合し、還元剤として、ヒドラジン、ホルムアルデヒド(またはその誘導体)、グリコール、ボロヒドライド、ホウ酸、ヒポホスフィトまたはトリスアミノメタンを配合し、その他に媒介剤(無電解メッキにおいては、電流が流れないため、金属イオンを表面に還元するための媒介剤が必要となる。媒介剤には、ポリビニルアルコール、シリカ、セルロース、ポリアミド、ポリエステル等がある)、複合剤、PH調整剤等を配合して、(結果物としての)鍍金層が、ニッケル(Ni)97.0~99.7重量%、リン(P)0.3~2.7重量%となるような鍍金液を作製する。
【0030】
インペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金の鍍金について、本発明に係るインペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金の鍍金処理方法によりインペラ表面に鍍金層を作成し、その鍍金層に対し、ビッカース硬度(JIS Z 2244)、鍍金密着強度(JIS H 8504)により品質評価を行った(結果を表1に記載する)。
【0031】
本発明に係るンペラ用無電解硫黄無添加Niベース鍍金、及び無電解硫黄無添加Niベース鍍金処理方法は、上記の如く優れた効果を奏するものであるのでニッケル(Ni)をベースとした無電解硫黄無添加Niベース鍍金として好適に用いることができる。