IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社バッファローの特許一覧

特開2024-171222通知システム、通知方法、ルータ装置、情報処理装置、制御方法、及び制御プログラム
<>
  • 特開-通知システム、通知方法、ルータ装置、情報処理装置、制御方法、及び制御プログラム 図1
  • 特開-通知システム、通知方法、ルータ装置、情報処理装置、制御方法、及び制御プログラム 図2
  • 特開-通知システム、通知方法、ルータ装置、情報処理装置、制御方法、及び制御プログラム 図3
  • 特開-通知システム、通知方法、ルータ装置、情報処理装置、制御方法、及び制御プログラム 図4
  • 特開-通知システム、通知方法、ルータ装置、情報処理装置、制御方法、及び制御プログラム 図5
  • 特開-通知システム、通知方法、ルータ装置、情報処理装置、制御方法、及び制御プログラム 図6
  • 特開-通知システム、通知方法、ルータ装置、情報処理装置、制御方法、及び制御プログラム 図7
  • 特開-通知システム、通知方法、ルータ装置、情報処理装置、制御方法、及び制御プログラム 図8
  • 特開-通知システム、通知方法、ルータ装置、情報処理装置、制御方法、及び制御プログラム 図9
  • 特開-通知システム、通知方法、ルータ装置、情報処理装置、制御方法、及び制御プログラム 図10
  • 特開-通知システム、通知方法、ルータ装置、情報処理装置、制御方法、及び制御プログラム 図11
  • 特開-通知システム、通知方法、ルータ装置、情報処理装置、制御方法、及び制御プログラム 図12
  • 特開-通知システム、通知方法、ルータ装置、情報処理装置、制御方法、及び制御プログラム 図13
  • 特開-通知システム、通知方法、ルータ装置、情報処理装置、制御方法、及び制御プログラム 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171222
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】通知システム、通知方法、ルータ装置、情報処理装置、制御方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 41/0681 20220101AFI20241204BHJP
   H04L 43/0805 20220101ALI20241204BHJP
   H04L 41/0686 20220101ALI20241204BHJP
【FI】
H04L41/0681
H04L43/0805
H04L41/0686
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088184
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】390040187
【氏名又は名称】株式会社バッファロー
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 識介
(72)【発明者】
【氏名】大沼 誠一
(72)【発明者】
【氏名】木下 肇
(72)【発明者】
【氏名】小柳 智
(72)【発明者】
【氏名】菅 一矢
(72)【発明者】
【氏名】新村 英起
(72)【発明者】
【氏名】吉村 紘一
(57)【要約】
【課題】インターネット接続の不具合の要因がローカルネットワーク内にあることを検出することが可能な通知システム、通知方法、ルータ装置、情報処理装置、制御方法、及び制御プログラムを提供すること。
【解決手段】通知システム1は無線LANルータ10とサーバ30とを備える。無線LANルータ10は、ローカルエリアネットワーク内の通信端末のMACアドレスと、通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報を記憶し、識別情報と、ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を送信する。サーバ30は、無線LANルータ10から識別情報と遷移情報とを受信し、遷移情報により特定される遷移回数に基づいて、識別情報に関する通知を行う。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報を記憶し、前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を送信するルータ装置と、
前記ルータ装置から前記識別情報と前記遷移情報とを受信し、前記遷移情報により特定される前記遷移回数に基づいて、前記識別情報に関する通知を行う情報処理装置と、
を含む通知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の通知システムであって、
前記識別情報は物理アドレスである、
通知システム。
【請求項3】
請求項2に記載の通知システムであって、
前記対応情報は、前記通信端末の論理アドレスと、前記物理アドレスと、前記ステータスと、の対応情報であり、
前記ルータ装置は前記対応情報に基づいてパケット通信を行う、
通知システム。
【請求項4】
請求項1に記載の通知システムであって、
前記遷移情報は、所定期間内の前記遷移回数を特定可能な情報である、
通知システム。
【請求項5】
請求項1に記載の通知システムであって、
前記情報処理装置は、前記ルータ装置の管理者の情報端末を介して前記通知を行う、
通知システム。
【請求項6】
請求項1に記載の通知システムであって、
前記通知は、前記ネットワーク内の異常発生の通知を含む、
通知システム。
【請求項7】
請求項1に記載の通知システムであって、
前記通知は、前記通信端末の異常発生の通知を含む、
通知システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の通知システムであって、
前記通知は、前記ネットワーク内の異常の発生原因の候補の通知を含む、
通知システム。
【請求項9】
ルータ装置が、
ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報を記憶し、
前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を送信し、
情報処理装置が、
前記識別情報と前記遷移情報とを受信し、
前記遷移情報により特定される前記遷移回数に基づいて、前記識別情報に関する通知を行う、
通知方法。
【請求項10】
ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報を記憶する記憶部と、
前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を送信する送信部と、
を備えるルータ装置。
【請求項11】
ルータ装置の制御方法であって、
前記ルータ装置のプロセッサが、
ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報をメモリに記憶し、
前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を送信する、
制御方法。
【請求項12】
ルータ装置の制御プログラムであって、
前記ルータ装置のプロセッサに、
ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報をメモリに記憶し、
前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を送信する、
処理を実行させるための制御プログラム。
【請求項13】
ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報を記憶するルータ装置から、前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を受信する受信部と、
前記遷移情報により特定される前記遷移回数に基づいて、前記識別情報に関する通知を行う通知部と、
を備える情報処理装置。
【請求項14】
情報処理装置の制御方法であって、
前記情報処理装置のプロセッサが、
ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報を記憶するルータ装置から、前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を受信し、
前記遷移情報により特定される前記遷移回数に基づいて、前記識別情報に関する通知を行う、
制御方法。
【請求項15】
情報処理装置の制御プログラムであって、
前記情報処理装置のプロセッサに、
ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報を記憶するルータ装置から、前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を受信し、
前記遷移情報により特定される前記遷移回数に基づいて、前記識別情報に関する通知を行う、
処理を実行させるための制御プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通知システム、通知方法、ルータ装置、情報処理装置、制御方法、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ARP(Address Resolution Protocol)及びARPリプライを常時監視し、IP(Internet Protocol)アドレスの重複等を検知するネットワーク監視システムが知られている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/036110号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、スマートフォンやノート型パーソナルコンピュータなど様々なデバイスがネットワークにつながり、アプリなどインターネットと通信して動作するものが当たり前になりつつある。そんな中、インターネットへの接続が不安定であるというユーザからの不満が多くなっている。インターネットの接続が不安定な要因は、プロバイダ側だけでなく宅内のネットワーク環境によるものである場合もある。しかしながら、ユーザは、まとめてプロバイダへ問い合わせることが多い。このため、要因の特定が必要などプロバイダの負担が増大している。
【0005】
特許文献1に記載のネットワーク監視システムは、IPデバイスが接続されたIPネットワークと、非IPデバイスと、の双方を監視しているが、宅内のネットワーク環境を監視することは想定していない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、インターネット接続の不具合の要因がローカルネットワーク内にあることを検出することが可能な通知システム、通知方法、ルータ装置、情報処理装置、制御方法、及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の通信システムは、ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報を記憶し、前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を送信するルータ装置と、
前記ルータ装置から前記識別情報と前記遷移情報とを受信し、前記遷移情報により特定される前記遷移回数に基づいて、前記識別情報に関する通知を行う情報処理装置と、
を含むものである。
【0008】
本発明の通知方法は、
ルータ装置が、
ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報を記憶し、
前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を送信し、
情報処理装置が、
前記識別情報と前記遷移情報とを受信し、
前記遷移情報により特定される前記遷移回数に基づいて、前記識別情報に関する通知を行うものである。
【0009】
本発明のルータ装置は、ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報を記憶する記憶部と、
前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を送信する送信部と、
を備えるものである。
【0010】
本発明の制御方法は、ルータ装置の制御方法であって、
前記ルータ装置のプロセッサが、
ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報をメモリに記憶し、
前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を送信するものである。
【0011】
本発明の制御プログラムは、ルータ装置の制御プログラムであって、
前記ルータ装置のプロセッサに、
ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報をメモリに記憶し、
前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を送信する、
処理を実行させるためのものである。
【0012】
本発明の情報処理装置は、ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報を記憶するルータ装置から、前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を受信する受信部と、
前記遷移情報により特定される前記遷移回数に基づいて、前記識別情報に関する通知を行う通知部と、
を備えるものである。
【0013】
本発明の制御方法は、情報処理装置の制御方法であって、
前記情報処理装置のプロセッサが、
ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報を記憶するルータ装置から、前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を受信し、
前記遷移情報により特定される前記遷移回数に基づいて、前記識別情報に関する通知を行うものである。
【0014】
本発明の制御プログラムは、情報処理装置の制御プログラムであって、
前記情報処理装置のプロセッサに、
ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報を記憶するルータ装置から、前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を受信し、
前記遷移情報により特定される前記遷移回数に基づいて、前記識別情報に関する通知を行う、
処理を実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インターネット接続の不具合の要因がローカルネットワーク内にあることを検出することが可能な通知システム、通知方法、ルータ装置、情報処理装置、制御方法、及び制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のルータ装置及び情報処理装置が適用される通知システム1の一例を示す図である。
図2】無線LANルータ10の構成の一例を示す図である。
図3】サーバ30の構成の一例を示す図である。
図4】無線LANルータ10が管理する通信端末の状態遷移の一例を示す図である。
図5】無線LANルータ10が管理する通信端末21,24を示す図である。
図6】無線LANルータ10によるARPリクエストのブロードキャストの一例を示す図である。
図7】無線LANルータ10によるARPリプライの受信の一例を示す図である。
図8】「REACHABLE」状態に遷移した後、IPアドレス「192.168.0.2」宛てのデータ送信が無い状態の一例を示す図である。
図9】IPアドレス「192.168.0.2」へデータを送信することができず「FAILED」状態に遷移した状態の一例を示す図である。
図10】MACアドレスと通信不能状態への遷移回数とを表す状態遷移テーブルの一例を示す図である。
図11】サーバ30に蓄積される状態遷移テーブルの情報の一例を示す図である。
図12】サーバ30による異常検知情報の通知の一例を示す図である。
図13】無線LANルータ10のプロセッサ11による処理の一例を示すフローチャートである。
図14】サーバ30のプロセッサ31による処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
(実施形態)
<本発明のルータ装置及び情報処理装置が適用される通知システム>
図1は、本発明のルータ装置及び情報処理装置が適用される通知システムの一例を示す図である。図1に示す通知システム1は、例えば、無線LANルータ10と、通信端末21,24と、サーバ30と、を含む。
【0019】
無線LAN(Local Area Network)ルータ10は、本発明の「ルータ装置」の一例である。無線LANルータ10は、無線LANルータ10に接続した情報端末(例えば通信端末21,24)とネットワーク2との通信を中継するルータ機能を有する。また、無線LANルータ10は、無線LANアクセスポイントとしての機能を有する。また、無線LANルータ10は、さらにスイッチングハブ等の機能を有していてもよい。ネットワーク2は、例えばインターネットなどのWAN(Wide Area Network)であり、接続方式を判別した後に接続可能となる。
【0020】
通信端末21,24は、無線LANルータ10が形成する無線LANに接続することにより、無線LANルータ10との間で無線通信を行うことが可能な情報端末である。図1に示す例では、通信端末21はノート型パーソナルコンピュータであり、通信端末24はスマートフォンである。
【0021】
サーバ30は、本発明の「情報処理装置」の一例である。サーバ30は、ネットワーク2への接続が可能である。サーバ30は、例えばネットワーク2に接続されたルータ(例えば無線LANルータ10)から無線LANに接続する通信端末21,24等に関する情報を収集するためのサーバである。通信端末に関する情報には、例えば無線LAN内の通信端末の識別情報、通信端末の通信に関するステータスの遷移情報等が含まれる。サーバ30は、例えば無線LANルータ10のメーカーが管理するサーバである。サーバ30は、物理的サーバであってもよいし、クラウド上の仮想サーバであってもよい。また、サーバ30は、無線LANルータ10に接続可能な情報端末(パーソナルコンピュータ(PC),スマートフォン等)であってもよい。
【0022】
<無線LANルータ10の構成>
図2は、無線LANルータ10の構成の一例を示す図である。無線LANルータ10は、プロセッサ11と、メインメモリ12と、補助メモリ13と、無線LAN通信I/F14と、WAN通信I/F15と、有線LAN通信I/F16と、を備える。
【0023】
プロセッサ11は、信号処理を行う回路であり、例えば無線LANルータ10の全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)である。なお、プロセッサ11は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やDSP(Digital Signal Processor)などの他のデジタル回路により実現されてもよい。また、プロセッサ11は、複数のデジタル回路を組み合わせて実現されてもよい。
【0024】
メインメモリ12は、例えばRAM(Random Access Memory)である。メインメモリ12は、プロセッサ11のワークエリアとして使用される。補助メモリ13は、例えば磁気ディスク、光ディスク、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリである。補助メモリ13には、無線LANルータ10を動作させる各種のプログラムが記憶されている。補助メモリ13に記憶されたプログラムは、メインメモリ12にロードされてプロセッサ11によって実行される。
【0025】
また、補助メモリ13には、ネットワーク内の通信端末の識別情報と、通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報が記憶されている。補助メモリ13は、本発明の「記憶部」の一例である。「ネットワーク」とは、無線LANルータ10が形成する有線・無線のローカルエリアネットワークのことである。「識別情報」とは、物理アドレス(MAC(Media Access Control)アドレス)のことである。「対応情報」とは、例えばARP(Address Resolution Protocol)テーブルのことである。ARPテーブルには、例えば通信端末の論理アドレスと、物理アドレスと、通信に関するステータスと、の対応関係を示す情報が含まれる。「論理アドレス」とは、IP(Internet Protocol)アドレスのことである。
【0026】
無線LAN通信I/F14は、無線通信端末との間で無線通信を行う通信インターフェースである。無線LAN通信I/F14は、2.4GHzのバンド(周波数帯)、5GHzのバンド、及び6GHzのバンドを使用して無線通信を行う。無線LANルータ10は、無線LAN通信I/F14を用いて、無線通信端末(例えば、通信端末24,25等)との間で、複数のバンドでの同時接続(例えばMLO:Multi-Link Operation)が可能である。
【0027】
WAN通信I/F15は、インターネット等のWAN(Wide Area Network)に接続し、WANを介して他の通信装置との通信を行う。有線LAN通信I/F16は、LANに接続し、LANを介して他の通信装置(例えば、通信端末21,22,23等)との通信を行う。
【0028】
例えば、無線LANルータ10は、無線LAN通信I/F14により通信端末24,25等と通信を行い、WAN通信I/F15によりWAN側の通信装置と通信を行うことで、通信端末24,25等とWAN側の通信装置との間のデータ通信を中継する。また、無線LANルータ10は、有線LAN通信I/F16によりLAN側の通信端末21,22,23等と通信を行い、WAN通信I/F15によりWAN側の通信装置と通信を行うことで、LAN側の通信端末21,22,23等とWAN側の通信装置との間のデータ通信を中継する。
【0029】
また、無線LANルータ10は、ARPテーブルに記憶された対応情報に基づいてパケット通信を行う。例えば、無線LANルータ10は、通信端末の通信に関するステータスが通信可能状態から通信不能状態へ遷移した回数を検知し、その遷移回数を特定可能な遷移情報と、識別情報と、をサーバ30へ送信する。「遷移回数を特定可能な遷移情報」とは、例えばステータスが通信可能状態から通信不能状態へ遷移した遷移回数であってもよいし、ステータスの遷移履歴であってもよい。遷移情報は、所定期間内の遷移回数を特定可能な情報である。「所定期間」とは、例えば1日である。無線LANルータ10は、例えば1日1回、遷移情報をサーバ30へ送信する。プロセッサ11及び無線LAN通信I/F14とWAN通信I/F15と有線LAN通信I/F16は、本発明の「送信部」の一例である。
【0030】
<サーバ30の構成>
図3は、サーバ30の構成の一例を示す図である。図3に示すように、サーバ30は、プロセッサ31と、メインメモリ32と、補助メモリ33と、WAN通信I/F34と、を備える。
【0031】
プロセッサ31は、信号処理を行う回路であり、例えばサーバ30の全体の制御を司るCPUである。なお、プロセッサ31は、FPGAやDSPなどの他のデジタル回路により実現されてもよい。また、プロセッサ31は、複数のデジタル回路を組み合わせて実現されてもよい。
【0032】
メインメモリ32は、例えばRAMである。メインメモリ32は、プロセッサ31のワークエリアとして使用される。補助メモリ33は、例えば磁気ディスク、光ディスク、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリである。補助メモリ33には、サーバ30を動作させる各種のプログラムが記憶されている。補助メモリ33に記憶されたプログラムは、メインメモリ32にロードされてプロセッサ31によって実行される。また、補助メモリ33には、無線LANルータ10から受信した通信端末の識別情報と、通信端末の通信に関するステータスの遷移回数を特定可能な遷移情報と、が記憶されている。
【0033】
WAN通信I/F34は、インターネット等のWANに接続し、WANを介して他の通信装置との通信を行う。
【0034】
サーバ30は、例えば通信端末の識別情報と、通信端末の通信に関するステータスの遷移回数を特定可能な遷移情報と、を無線LANルータ10から受信する。また、サーバ30は、例えば遷移情報により特定されるステータスの遷移回数に基づいて、通信端末の識別情報に関する通知を行う。通信端末の識別情報の通知には、例えばローカルエリアネットワーク内の異常発生の通知、通信端末の異常発生の通知、ローカルエリアネットワーク内の異常の発生原因の候補の通知等が含まれる。異常の発生原因の候補には、例えば該当の通信端末が有線ならケーブルやコネクタの不具合等が含まれ、該当する通信端末が無線なら電波干渉等が含まれる。
【0035】
サーバ30は、通信端末の識別情報に関する情報を無線LANルータ10の管理者へ送信する。サーバ30は、通信端末の識別情報に関する情報を、無線LANルータ10の管理者の情報端末を介して通知する。無線LANルータ10の管理者には、例えば無線LANルータ10のユーザ、無線LANルータ10の管理会社(例えば、ISP(Internet Service Provider))が含まれる。プロセッサ31及びWAN通信I/F34は、本発明の「受信部」の一例である。また、プロセッサ31及びWAN通信I/F34は、本発明の「通知部」の一例である。
【0036】
<無線LANルータ10が管理する通信端末の状態遷移>
図4は、無線LANルータ10が管理する通信端末の状態遷移の一例を示す図である。無線LANルータ10は、ARPの状態遷移を監視することにより通信端末の異常を検知する。無線LANルータ10は、管理する通信端末ごとにARPの状態遷移を監視して異常を検知する。
【0037】
まず、例えば、宛先がIPアドレスA(例えば、機器A)であるデータを無線LANルータ10が受信したとする。また、このとき無線LANルータ10のARPテーブル中にはIPアドレスAに対応するMACアドレスが存在せず、IPアドレスAの機器Aの状態が「NONE」状態S01であったとする。この場合、無線LANルータ10は、ARPテーブルにIPアドレスAについての対応行を追加(確保)する。また、無線LANルータ10は、機器AのMACアドレスを問い合わせるためのARPリクエストをブロードキャストで送信する。これにより、無線LANルータ10から見た、IPアドレスAの機器Aの状態が「INCOMPLETE」状態S02に移行する。
【0038】
次に、機器AのMACアドレスを問い合わせる上記ARPリクエストに対して、ARPリプライ(MACアドレス)が確認できると、無線LANルータ10から見た、IPアドレスAの機器Aの状態が「REACHABLE」状態S03に移行する。このARPリプライで確認できたMACアドレスは、無線LANルータ10が次に送信すべき機器の宛先を示すMACアドレスである。したがって、ARPリプライで確認できたMACアドレスが必ずしも最終的な目的地である機器AのMACアドレスになるとは限らない。無線LANルータ10は、ARPリプライで確認したMACアドレスを、ARPテーブルのIPアドレスAに対応するMACアドレスとして記憶する。
【0039】
一方、機器AのMACアドレスを問い合わせるARPリクエストに対して、ARPリプライ(MACアドレス)が確認できない場合、無線LANルータ10は、無線LANルータ10が管理する通信端末の中に機器Aが含まれていないと判定する。この場合、無線LANルータ10から見た、IPアドレスAの機器Aの状態は「FAILED」状態S08に移行する。無線LANルータ10は、ARPテーブルにおけるIPアドレスAの対応行を削除する。
【0040】
次に、無線LANルータ10は、ARPリプライで確認できたMACアドレスに基づいて、IPアドレスA(機器A)を宛先とするデータを送信する。データの送信に対して、IPアドレスA(機器A)からデータの到着を確認できている間は、無線LANルータ10から見た、IPアドレスAの機器Aの状態が「REACHABLE」状態S03に維持される。データの到着の確認は、TCP(Transmission Control Protocol)であればACK(acknowledgement)となる。ただし、UDP(User Datagram Protocol)など確認できないプロトコルもある。
【0041】
一方、ARPリプライでMACアドレスが確認できても、IPアドレスA(機器A)への送信するデータがない状態がReachable time(例えば、30秒)続いた場合には、無線LANルータ10から見た、IPアドレスAの機器Aの状態が「STALE」状態S04に移行する。その後、IPアドレスA(機器A)へのデータ送信のない状態が継続している間は、「STALE」状態S04が維持される。なお、Reachable timeは、デフォルトで例えば15~45秒の範囲であってよい。
【0042】
次に、「STALE」状態S04において、IPアドレスA(機器A)へ送信するデータを無線LANルータ10が受信したとする。無線LANルータ10は、ARPテーブルに記憶しているIPアドレスAに対応するMACアドレスを用いて、IPアドレスA(機器A)へデータを送信する。これにより、無線LANルータ10から見た、IPアドレスAの機器Aの状態が「DELAY」状態S05に移行する。
【0043】
次に、「DELAY」状態S05において、無線LANルータ10は、delay_first_probe_time(デフォルト5秒)までデータが到着するのを待つ。delay_first_probe_timeが経過するまでに、IPアドレスA(機器A)へのデータの到着を確認できた場合、ARPテーブルに記憶されているIPアドレスAに対応したMACアドレスが有効であると判定して、無線LANルータ10から見た、IPアドレスAの機器Aの状態が「REACHABLE」状態S03に戻る。
【0044】
一方、delay_first_probe_timeが経過するまで、IPアドレスA(機器A)へのデータの到着を確認できなかった場合、ARPテーブルのIPアドレスAに対応するMACアドレスが有効ではないと判定して、無線LANルータ10から見た、IPアドレスAの機器Aの状態が「PROBE」状態S06に移行する。
【0045】
次に、「PROBE」状態S06において、無線LANルータ10は、機器AのIPアドレスAを問い合わせるARPリクエストを機器Aへユニキャストで送信する。このARPリクエストに対して、ARPリプライ(MACアドレス)が確認できた場合、無線LANルータ10から見た、IPアドレスAの機器Aの状態が「REACHABLE」状態S03に戻る。無線LANルータ10は、ARPリプライで確認したMACアドレスを、ARPテーブルのIPアドレスAに対応するMACアドレスとしてリフレッシュする。一方、このARPリクエストに対して、ARPリプライ(MACアドレス)が確認できない場合、無線LANルータ10から見た、IPアドレスAの機器Aの状態が「UNREACHABLE」状態S07に移行する。
【0046】
次に、「UNREACHABLE」状態S07において、無線LANルータ10は、機器AのIPアドレスAを問い合わせるARPリクエストをブロードキャスト又はマルチキャストで送信する。このARPリクエストに対して、ARPリプライ(MACアドレス)が確認できた場合、無線LANルータ10から見た、IPアドレスAの機器Aの状態が「REACHABLE」状態S03に戻る。無線LANルータ10は、ARPリプライで確認したMACアドレスを、ARPテーブルのIPアドレスAに対応するMACアドレスとしてリフレッシュする。
【0047】
一方、このARPリクエストに対して、ARPリプライ(MACアドレス)が確認できない場合、無線LANルータ10から見た、IPアドレスAの機器Aの状態が「FAILED」状態S08に移行する。無線LANルータ10は、IPアドレスA(機器A)の状態が一旦「REACHABLE」状態S03に移行し、その後に「FAILED」状態S08へ移行した回数を、IPアドレスA(機器A)の遷移情報としてカウントする。
【0048】
無線LANルータ10は、ARPテーブルにおけるIPアドレスAの対応行を削除する。これにより、無線LANルータ10から見た、IPアドレスAの機器Aの状態が「NONE」状態S01に戻る。
【0049】
また、一方、「NONE」状態S01において、無線LANルータ10が、機器Aから送信されたARPリクエストを受信したとする。この場合、無線LANルータ10は、そのARPリクエストに送信元(機器A)のIPアドレスとMACアドレスとが存在していれば、そのIPアドレスとMACアドレスとの組み合わせをARPテーブルに追加する。この場合、機器Aの状態が「STALE」状態S04に移行する。
【0050】
なお、上記ARPリクエストは、設定により複数回、送信されるようにしてもよい。また、上記状態遷移において、「UNREACHABLE」状態S07を省略して、「PROBE」状態S06から「FAILED」状態S08に移行してもよい。また、「FAILED」状態S08を設けずに、単にARPテーブルの対応行を削除して「NONE」状態S01に戻るようにしてもよい。また、本例では、IPv4でARPを用いてARPリクエストをブロードキャストしARPリプレイを受信する場合を説明したが、これに限定されない。例えば、IPv6を使用してもよく、その場合には、Neighbor Discovery for IPv6を用いる。
【0051】
<無線LANルータ10が管理する通信端末の状態遷移の具体例>
次に、図5から図9を参照して、無線LANルータ10が管理する通信端末の状態遷移の具体例について説明する。
【0052】
図5は、無線LANルータ10が管理する通信端末21,24を示す図である。図5に示すように、無線LANルータ10には2つの通信端末21,24が接続されているとする。これは、図1のように無線LANルータ10に通信端末21(PC)及び通信端末24(スマートフォン)が接続されているローカルエリアネットワークの一例を示す。この図5に示す状態において、無線LANルータ10における通信端末21,24の状態は、図4で説明した状態遷移における「NONE」状態S01に相当する。
【0053】
図6は、無線LANルータ10によるARPリクエストのブロードキャストの一例を示す図である。図5に示す「NONE」状態S01において、無線LANルータ10が例えばIPアドレス「192.168.0.2」を宛先とするデータを受信したとする。ところが、無線LANルータ10は、受信したデータを送信すべき次の機器の宛先(MACアドレス)が分からないとする。無線LANルータ10は、補助メモリ13に記憶されているARPテーブル40にIPアドレス「192.168.0.2」の対応行を追加する。
【0054】
なお、この場合、次に機器の宛先が分かっていないのでMACアドレスは空の状態となる。また、通信端末21の状態は、「INCOMPLETE」となる。これは、図4で説明した状態遷移における「INCOMPLETE」状態S02に相当する。無線LANルータ10は、IPアドレス「192.168.0.2」に対応するMACアドレスの問い合わせを行うARPリクエストを送信する。本例のローカルエリアネットワークでは、無線LANルータ10に2つの通信端末21,24が接続されているので、ARPリクエストが通信端末21,24へ送信される。
【0055】
図7は、無線LANルータ10によるARPリプライの受信の一例を示す図である。図6で送信したARPリクエストに対して、IPアドレス「192.168.0.2」を割り当てられている通信端末21が、通信端末21のMACアドレス「bb:bb:bb:bb:bb:bb」を知らせるために、無線LANルータ10に向けてARPリプライを送信する。
【0056】
無線LANルータ10は、IPアドレス「192.168.0.2」に対応するMACアドレス「bb:bb:bb:bb:bb:bb」を受信すると、ARPテーブル40のIPアドレス「192.168.0.2」に対応させてMACアドレス「bb:bb:bb:bb:bb:bb」を記録する。また、無線LANルータ10は、通信端末21の状態が「REACHABLE」であることをARPテーブル40に記録する。この状態は、図4の状態遷移における「REACHABLE」状態S03に相当する。
【0057】
本例のように、通信端末21が無線LANルータ10に直接的に接続されている場合には、無線LANルータ10が送信する次の機器の宛先が通信端末21となるため、ARPテーブル40のIPアドレス「192.168.0.2」に対応するMACアドレスが通信端末21のMACアドレス「bb:bb:bb:bb:bb:bb」になる。
【0058】
図8は、「REACHABLE」状態に遷移した後、IPアドレス「192.168.0.2」宛てのデータ送信が無い状態の一例を示す図である。図4で説明したように、IPアドレス「192.168.0.2」に対応するMACアドレス「bb:bb:bb:bb:bb:bb」が確認できても、IPアドレス「192.168.0.2」へのデータ送信のない状態がReachable time続いた場合には、IPアドレス「192.168.0.2」の通信端末21の状態は、「STALE」となる。これは、図4の状態遷移における「STALE」状態S04に相当する。無線LANルータ10は、通信端末21の状態が「STALE」状態であることをARPテーブル40に記録する。
【0059】
図9は、IPアドレス「192.168.0.2」へデータを送信することができず「FAILED」状態に遷移した状態の一例を示す図である。図4で説明したように、「STALE」状態になった後、IPアドレス「192.168.0.2」の通信端末21へ送信するデータを受信して、ARPテーブル40のMACアドレスを用いてIPアドレス「192.168.0.2」の通信端末21へデータを送信すると通信端末21の状態が「DELAY」状態に移行する。
【0060】
また、「DELAY」状態において、delay_first_probe_timeが経過するまでIPアドレス「192.168.0.2」の通信端末21へのデータの到着を確認できないと、通信端末21の状態が「PROBE」状態に移行する。また、「PROBE」状態において、IPアドレス「192.168.0.2」を問い合わせるARPリクエストを通信端末21へユニキャストで送信し、ARPリプライが確認できないと、通信端末21の状態が「UNREACHABLE」状態に移行する。さらに、「UNREACHABLE」状態において、IPアドレス「192.168.0.2」を問い合わせるARPリクエストをブロードキャストで送信し、ARPリプライが確認できないと、通信端末21の状態が「FAILED」状態に移行する。
【0061】
この場合、例えば図9に示すように、無線LANルータ10と通信端末21との間で障害45が発生しており、IPアドレス「192.168.0.2」の通信端末21へのデータの到着を確認できない、あるいはARPリクエストに対するARPリプライを確認できないと想定することができる。無線LANルータ10と通信端末21との間で発生している障害45としては、例えば無線LANが他電波等で一時的に妨害されるなどで接続・切断を繰り返している状況、有線LANがコネクタ不良等で接続・切断を繰り返している状況等が想定できる。
【0062】
無線LANルータ10は、通信端末21の状態が「FAILED」状態であることをARPテーブル40に記録する。また、無線LANルータ10は、ARPテーブル40におけるIPアドレス「192.168.0.2」の対応行を削除する。これにより、通信端末21の状態が、図5で示した「NONE」状態に戻る。
【0063】
<通信不能状態への遷移回数を表す状態遷移テーブル>
図10は、MACアドレスと通信不能状態への遷移回数とを表す状態遷移テーブルの一例を示す図である。無線LANルータ10は、管理する通信端末ごとにARPの状態遷移を監視することにより状態遷移テーブル50を生成する。図10に示すように、通信不能状態への遷移回数とは、通信可能状態から通信不能状態に遷移した回数のことである。通信不能状態とは、例えば、データが送信されたことを確認できない不達状態であり、かつその後のARPリクエストに対するARPリプライが得られない状態のことである。
【0064】
本例の状態遷移テーブル50では、MACアドレス「bb:bb:bb:bb:bb:bb」における2023/04/02の通信可能状態から通信不能状態への遷移回数が1回と記録されている。MACアドレス「aa:aa:aa:aa:aa:aa」においては通信可能状態から通信不能状態への遷移が発生していない。また、状態遷移テーブル50では、2日分(04/01と04/02)の遷移回数が記録されている。無線LANルータ10は、生成した状態遷移テーブル50の情報をサーバ30へ送信する。
【0065】
なお、通信不能状態とは、例えば図4に示す状態遷移において、「FAILED」になった状態であるとしてもよいし、「PROBE」や「UNREACHABLE」になった状態であるとしてもよい。また、通信不能状態とは、例えば「UNREACHABLE」状態や「FAILED」状態が無い場合に、ARPテーブル40の対応行を削除して記憶していたMACアドレスを無効にした状態であるとしてもよい。また、状態遷移テーブル50に記録する遷移回数は2日分に限定されず、例えば1日ごとの遷移回数を記録してもよいし、1週間分の遷移回数を記録してもよい。
【0066】
また、無線LANルータ10は、サーバ30へ送信する情報として、通信可能状態から通信不能状態へ遷移した遷移回数の情報に代えて、例えばステータスの遷移履歴をそのまま送信してもよい。すなわち、無線LANルータ10は、通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報をサーバ30へ送信する。
【0067】
<サーバ30に蓄積される状態遷移テーブルの情報>
図11は、サーバ30に蓄積される状態遷移テーブルの情報の一例を示す図である。状態遷移テーブルの情報は、サーバ30が無線LANルータ10から受信する遷移情報である。遷移情報は、例えば日次のFAILED遷移回数の情報である。サーバ30は、日次のFAILED遷移回数を補助メモリ33に蓄積する。本例の場合、2023/04/01から2023/04/27までの日次のFAILED遷移回数が蓄積されている。図11に示すように、蓄積された日次のFAILED遷移回数において、2023/04/27のFAILED遷移回数が急激に増加している。サーバ30は、FAILED遷移回数の状況、例えば04/27のような急激に増加する状況に基づいて通信端末における異常の発生を判断する。
【0068】
<サーバ30による異常検知情報の通知>
図12は、サーバ30による異常検知情報の通知の一例を示す図である。図12に示すように、サーバ30は、無線LANルータ10から「MACアドレス」と「通信可能状態から通信不能状態への遷移回数(遷移情報)」とを、例えば1日1回受信する。「MACアドレス」と「通信可能状態から通信不能状態への遷移回数(遷移情報)」は、無線LANルータ10がローカルエリアネットワーク内の通信端末においてARPの状態遷移を監視することにより検知した通信端末の異常を示す情報であり、状態遷移テーブル50に記憶されている情報である。
【0069】
サーバ30は、受信した「MACアドレス」と「遷移情報」とを補助メモリ33に蓄積するとともに、「遷移情報」によって特定される通信可能状態から通信不能状態への遷移回数に基づき異常の有無を判断する。サーバ30は、遷移回数に基づいて異常を検知したとき、無線LANルータ10の管理者情報端末60を介して、「MACアドレス」に関する通知情報を無線LANルータ10の管理者Wに通知する。
【0070】
管理者情報端末60は、例えば通信端末21~25(図1図2参照)であってもよいし、管理メーカー(例えばISP)の端末であってもよい。管理者Wは、無線LANルータ10の管理メーカー(例えばISP)であってもよいし、無線LANルータ10のユーザであってもよい。
【0071】
通知情報は、例えば無線LANルータ10のネットワーク環境に不具合がある可能性が高い旨を通知する情報である。通知情報には、例えば異常の発生原因まで判別した情報を含めてもよい。例えば、サーバ30は、該当の通信端末の通信方式が有線ならケーブルやコネクタの不具合を異常の発生原因の候補として通知する。また、サーバ30は、該当の通信端末の通信方式が無線なら電波干渉を異常の発生原因の候補として通知する。また、サーバ30は、1つのローカルエリアネットワーク内の全ての通信端末で異常が発生しているか、又は1つのローカルエリアネットワーク内の一部の通信端末で異常が発生しているかなどの情報に基づいて、異常の発生原因を判別してもよい。
【0072】
また、本例ではサーバ30が通知情報を通知しているが、これに限定されない。例えば無線LANルータ10が通知を行ってもよいし、無線LANルータ10に接続可能な情報端末(PC、スマートフォン等)が通知を行ってもよい。
【0073】
<無線LANルータ10のプロセッサ11による処理>
図13は、無線LANルータ10のプロセッサ11による処理の一例を示すフローチャートである。無線LANルータ10のプロセッサ11は、管理する通信端末ごとに本処理を実行する。また、プロセッサ11は、ARPの状態遷移を監視してARPテーブルを管理しながら本処理を実行する。
【0074】
まず、プロセッサ11は、通信端末の状態に通信可能状態から通信不能状態への遷移があったか否かを判定する(ステップS11)。通信不能状態とは、上述したように例えば図4において「REACHABLE」から「FAILED」に遷移した状態である。通信可能状態から通信不能状態への遷移がない場合(ステップS11:No)には、プロセッサ11は、ステップS11の処理を繰り返す。
【0075】
ステップS11において通信可能状態から通信不能状態への遷移があった場合(ステップS11:Yes)には、プロセッサ11は、ARPテーブルにおいてMACアドレスに対する遷移回数をインクリメントする(ステップS12)。
【0076】
次に、プロセッサ11は、ARPテーブルの情報を、無線LANルータ10を管理する例えばサーバ30へ送信するタイミングであるか否かを判定する(ステップS13)。ARPテーブルの情報は、上述したように例えば1日1回送信する。送信タイミングではないと判定した場合(ステップS13:No)、プロセッサ11は、ステップS11に戻り各処理を繰り返す。
【0077】
ステップS13において送信タイミングであると判定した場合(ステップS13:Yes)には、プロセッサ11は、ARPテーブルにおけるMACアドレスと遷移情報を対応付けてサーバ30へ送信する(ステップS14)。プロセッサ11は、サーバ30へ情報を送信した後、ステップS11へ戻って本処理を繰り返す。
【0078】
<サーバ30のプロセッサ31による処理>
図14は、サーバ30のプロセッサ31による処理の一例を示すフローチャートである。サーバ30のプロセッサ31は、接続されているルータごとに本処理を実行する。
【0079】
まず、プロセッサ31は、MACアドレスと遷移情報をルータから受信したか否かを判定する(ステップS21)。プロセッサ31は、上述したようにMACアドレスと遷移情報を例えば無線LANルータ10から受信する。MACアドレスと遷移情報は、無線LANルータ10が管理する例えば通信端末21,24等に関する情報である。
【0080】
ステップS21においてMACアドレスと遷移情報を受信していない場合(ステップS21:No)には、プロセッサ31は、ステップS21の処理を繰り返す。ステップS21においてMACアドレスと遷移情報を受信した場合(ステップS21:Yes)には、プロセッサ31は、受信したMACアドレスと遷移情報を補助メモリ33に蓄積する(ステップS22)。
【0081】
次に、プロセッサ31は、蓄積したMACアドレスと遷移情報に基づいて、異常の有無の検知処理を行う(ステップS23)。異常の有無の検知処理は、例えばLOF法(Local Outlier Factor)などの外れ値検知アルゴリズムにより行ってもよいし、閾値判定により行ってもよい。
【0082】
次に、プロセッサ31は、ステップS23の検知処理において、異常を検知したか否かを判定する(ステップS24)。異常を検知していない場合(ステップS24:No)には、プロセッサ31は、ステップS21に戻り各処理を繰り返す。
【0083】
ステップS24において異常を検知した場合(ステップS24:Yes)には、プロセッサ31は、管理者情報端末60を介して管理者へ異常を通知する(ステップS25)。管理者への異常の通知は、無線LANルータ10が形成するローカルエリアネットワーク内の全ての通信端末のそれぞれについての異常の通知であってもよいし、全ての通信端末をまとめての異常の通知であってもよい。プロセッサ31は、管理者へ異常を通知した後、ステップS21へ戻って本処理を繰り返す。
【0084】
以上に説明したように本実施形態の通知システム1は、無線LANルータ10とサーバ30と含む。そして、無線LANルータ10は、無線LANルータ10が形成するローカルエリアネットワーク内の通信端末21,24のMACアドレス(識別情報)と、通信端末21,24の通信に関するステータスと、の対応情報をARPテーブル40記憶し、MACアドレスと、ステータスにおける「REACHABLE」状態(通信可能状態)から「FAILED」状態(通信不能状態)への遷移回数を特定可能な遷移情報と、をサーバ30へ送信する。また、サーバ30は、無線LANルータ10からMACアドレスと遷移情報とを受信し、遷移情報により特定される「FAILED」状態への遷移回数に基づいて、MACアドレスに関する異常を検知する。この構成によれば、無線LANルータ10は、無線LANルータ10が管理する通信端末21,24等に生じた「REACHABLE」状態から「FAILED」状態への遷移回数を検知することができ、そのMACアドレスと遷移情報をサーバ30へ送信することができる。そして、サーバ30は、無線LANルータ10から受信したMACアドレスと遷移情報に基づいて、ネットワーク2における接続不安定の要因が、無線LANルータ10が形成するローカルネットワーク内にあることを検知することができる。
【0085】
また、通知システム1は、サーバ30が「FAILED」状態への遷移回数に基づいて検知したMACアドレスに関する異常の情報を、無線LANルータ10の管理者に通知する。この構成によれば、ネットワーク2における接続不安定の要因がローカルネットワーク内にあることを、無線LANルータ10の管理者である例えばISP又はユーザに、予めサーバ30から通知することができる。これにより、ユーザからのネットワーク2の不具合に関する問い合わせに対して、その要因をISP側で容易に特定することが可能になり、ユーザの問い合わせに対する適切なサポート情報を提供することができる。また、サーバ30からの通知に基づいて、ユーザ側で不具合を改善可能な場合もあり、問い合わせのために費やすユーザの時間を抑制することが可能である。
【0086】
(制御プログラムについて)
前述した実施形態で説明した通知システムの通知方法及びルータ装置又は情報処理装置の制御方法は、予め用意された制御プログラムをコンピュータで実行することにより実現できる。本制御プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録され、記憶媒体から読み出されることによって実行される。また、本制御プログラムは、フラッシュメモリ等の非一過性の記憶媒体に記憶された形で提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介して提供されてもよい。本制御プログラムを実行するコンピュータは、通知システム、ルータ装置、及び情報処理装置に含まれるものであってもよいし、通知システム、ルータ装置、及び情報処理装置と通信可能なスマートフォン、タブレット端末、又はパーソナルコンピュータ等の電子機器に含まれるものでもあってもよいし、これら通知システム、ルータ装置、情報処理装置、及び電子機器と通信可能なサーバ装置に含まれるものであってもよい。
【0087】
以上のように本明細書には以下の事項が開示されている。
【0088】
開示された通知システムは、ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報を記憶し、前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を送信するルータ装置と、前記ルータ装置から前記識別情報と前記遷移情報とを受信し、前記遷移情報により特定される前記遷移回数に基づいて、前記識別情報に関する通知を行う情報処理装置と、を含むものである。
【0089】
開示された通知システムは、前記識別情報は物理アドレスであるものである。
【0090】
開示された通知システムは、前記対応情報が、前記通信端末の論理アドレスと、前記物理アドレスと、前記ステータスと、の対応情報であり、前記ルータ装置は前記対応情報に基づいてパケット通信を行うものである。
【0091】
開示された通知システムは、前記遷移情報が、所定期間内の前記遷移回数を特定可能な情報であるものである。
【0092】
開示された通知システムは、前記情報処理装置が、前記ルータ装置の管理者の情報端末を介して前記通知を行うものである。
【0093】
開示された通知システムは、前記通知が、前記ネットワーク内の異常発生の通知を含むものである。
【0094】
開示された通知システムは、前記通知が、前記通信端末の異常発生の通知を含むものである。
【0095】
開示された通知システムは、前記通知が、前記ネットワーク内の異常の発生原因の候補の通知を含むものである。
【0096】
開示された通知方法は、ルータ装置が、ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報を記憶し、前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を送信し、情報処理装置が、前記識別情報と前記遷移情報とを受信し、前記遷移情報により特定される前記遷移回数に基づいて、前記識別情報に関する通知を行うものである。
【0097】
開示されたルータ装置は、ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報を記憶する記憶部と、前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を送信する送信部と、を備えるものである。
【0098】
開示された制御方法は、ルータ装置の制御方法であって、前記ルータ装置のプロセッサが、ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報をメモリに記憶し、前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を送信するものである。
【0099】
開示された制御プログラムは、ルータ装置の制御プログラムであって、前記ルータ装置のプロセッサに、ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報をメモリに記憶し、前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を送信する、処理を実行させるためのものである。
【0100】
開示された情報処理装置は、ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報を記憶するルータ装置から、前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を受信する受信部と、前記遷移情報により特定される前記遷移回数に基づいて、前記識別情報に関する通知を行う通知部と、を備えるものである。
【0101】
開示された制御方法は、情報処理装置の制御方法であって、前記情報処理装置のプロセッサが、ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報を記憶するルータ装置から、前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を受信し、前記遷移情報により特定される前記遷移回数に基づいて、前記識別情報に関する通知を行うものである。
【0102】
開示された制御プログラムは、情報処理装置の制御プログラムであって、前記情報処理装置のプロセッサに、ネットワーク内の通信端末の識別情報と、前記通信端末の通信に関するステータスと、の対応情報を記憶するルータ装置から、前記識別情報と、前記ステータスにおける通信可能状態から通信不能状態への遷移回数を特定可能な遷移情報と、を受信し、前記遷移情報により特定される前記遷移回数に基づいて、前記識別情報に関する通知を行う、処理を実行させるためのものである。
【符号の説明】
【0103】
1 通知システム
2 ネットワーク
10 無線LANルータ
11,31 プロセッサ
12,32 メインメモリ
13,33 補助メモリ
14 無線LAN通信I/F
15,34 WAN通信I/F
16 有線LAN通信I/F
21~25 通信端末
30 サーバ
40 ARPテーブル
45 障害
50 状態遷移テーブル
60 管理者情報端末
S01~S08 状態

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14