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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171227
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】インパクトレンチ
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/02 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
B25B21/02 A
B25B21/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088189
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平林 徳夫
(57)【要約】
【課題】アンビルの強度の低下を抑制すること。
【解決手段】インパクトレンチは、モータと、モータよりも前方に配置され、モータにより前後方向に延びる回転軸を中心に回転されるハンマと、ハンマにより回転方向に打撃されるアンビルと、アンビルを回転可能に支持するアンビルベアリングと、アンビルの内部に配置されるワイヤと、を備える。アンビルは、ソケットが装着される四角柱部と、四角柱部の後端部に接続されアンビルベアリングに支持される円柱部と、を有する。ワイヤの前部は、四角柱部に連結される。ワイヤの後部は、四角柱部の後端部よりも後方のアンビルの保持部に保持される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータよりも前方に配置され、前記モータにより前後方向に延びる回転軸を中心に回転されるハンマと、
前記ハンマにより回転方向に打撃されるアンビルと、
前記アンビルを回転可能に支持するアンビルベアリングと、
前記アンビルの内部に配置されるワイヤと、を備え、
前記アンビルは、ソケットが装着される四角柱部と、前記四角柱部の後端部に接続され前記アンビルベアリングに支持される円柱部と、を有し、
前記ワイヤの前部は、前記四角柱部に連結され、
前記ワイヤの後部は、前記四角柱部の後端部よりも後方の前記アンビルの保持部に保持される、
インパクトレンチ。
【請求項2】
前記アンビルの内部に、前後方向に延びる通路孔と、前記通路孔の後端部に接続され前記通路孔よりも大径の保持孔と、が設けられ、
前記ワイヤの後部に接続される抜け止め部材を備え、
前記保持部は、前記保持孔を含み、
前記ワイヤの後部は、前記抜け止め部材を介して前記保持孔に保持される、
請求項1に記載のインパクトレンチ。
【請求項3】
前記通路孔の後端部と前記保持孔の前端部との境界に、後方を向く境界面が設けられ、
前記抜け止め部材の前端面は、前記境界面に接触する、
請求項2に記載のインパクトレンチ。
【請求項4】
前記回転軸に直交する前記通路孔の内縁の形状及び寸法と、前記回転軸に直交する前記抜け止め部材の外縁の形状及び寸法とは、等しく、
前記抜け止め部材は、前記通路孔を通過して前記保持孔に収容される、
請求項3に記載のインパクトレンチ。
【請求項5】
前記抜け止め部材は、前記通路孔を通過するときの回転方向の角度とは異なる角度で前記保持孔に配置される、
請求項4に記載のインパクトレンチ。
【請求項6】
前記抜け止め部材の外縁の形状は、四角形である、
請求項4に記載のインパクトレンチ。
【請求項7】
前後方向において、前記保持孔の前端部は、前記円柱部の後端部と前端部との間に配置される、
請求項2に記載のインパクトレンチ。
【請求項8】
前後方向において、前記保持孔の前端部は、前記円柱部の中央部よりも後方に配置される、
請求項7に記載のインパクトレンチ。
【請求項9】
前記アンビルの外周面に、前記円柱部の後端部に接続される円周溝が設けられ、
前後方向において、前記円周溝の前端部は、前記保持孔の前端部よりも後方に配置される、
請求項7に記載のインパクトレンチ。
【請求項10】
前後方向において、前記円周溝の後端部は、前記保持孔の後端部よりも前方に配置される、
請求項9に記載のインパクトレンチ。
【請求項11】
前記ハンマを支持するスピンドルを備え、
前記アンビルの内部に、前記保持孔の後端部に接続され前記保持孔よりも大径の凹部が設けられ、
前記スピンドルの前端部に設けられた凸部が前記凹部に挿入され、
前記凹部と前記凸部との境界をシールするOリングを備える、
請求項2に記載のインパクトレンチ。
【請求項12】
前記抜け止め部材は、前記ワイヤが配置されるスライド孔を有し、前記ワイヤと相対移動可能であり、
前記ワイヤの後端部に固定され、前記抜け止め部材が前記ワイヤから後方に抜けることを抑制するストッパ部材を備える、
請求項4に記載のインパクトレンチ。
【請求項13】
前記ワイヤの前部は、ピンを介して前記四角柱部に連結される、
請求項2に記載のインパクトレンチ。
【請求項14】
前記ワイヤは、前後方向に延びるストレート部と、前記ストレート部の前端部に設けられるリング部と、を有し、
前記アンビルは、前記四角柱部の外面と前記通路孔とを結ぶピン孔を有し、
前記ピンは、前記ピン孔及び前記リング部のそれぞれに挿入される、
請求項13に記載のインパクトレンチ。
【請求項15】
前記抜け止め部材は、前記ストレート部が配置されるスライド孔を有し、前記ストレート部と相対移動可能であり、
前記ストレート部の後端部に固定され、前記抜け止め部材が前記ワイヤから後方に抜けることを抑制するストッパ部材を備える、
請求項14に記載のインパクトレンチ。
【請求項16】
前記リング部は、ワイヤ素材の先端部を屈曲させることにより形成され、
前記リング部の一部と前記ストレート部とを固定する圧着部材を備える、
請求項14に記載のインパクトレンチ。
【請求項17】
前記通路孔の内面に、前記リング部の少なくとも一部が配置される位置決め溝が設けられる、
請求項16に記載のインパクトレンチ。
【請求項18】
前後方向において、前記位置決め溝の位置は、前記ピン孔の少なくとも一部の位置と一致する、
請求項17に記載のインパクトレンチ。
【請求項19】
前記位置決め溝は、前記ピン孔の中心軸と前記リング部の中心軸とが一致するように、前記リング部を位置決めする、
請求項18に記載のインパクトレンチ。
【請求項20】
前記ストレート部の一部にスプリング部が設けられる、
請求項14に記載のインパクトレンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、インパクトレンチに関する。
【背景技術】
【0002】
インパクトレンチに係る技術分野において、特許文献1に開示されているような、アンビルの一部分の脱落を防止することを目的とするインパクト工具が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6801571号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術においては、破断し易い薄肉部がアンビル本体部に設けられる。薄肉部の存在によりアンビルの強度が低下する可能性がある。
【0005】
本明細書で開示する技術は、アンビルの強度の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、インパクトレンチを開示する。インパクトレンチは、モータと、モータよりも前方に配置され、モータにより前後方向に延びる回転軸を中心に回転されるハンマと、ハンマにより回転方向に打撃されるアンビルと、アンビルを回転可能に支持するアンビルベアリングと、アンビルの内部に配置されるワイヤと、を備えてもよい。アンビルは、ソケットが装着される四角柱部と、四角柱部の後端部に接続されアンビルベアリングに支持される円柱部と、を有してもよい。ワイヤの前部は、四角柱部に連結されてもよい。ワイヤの後部は、四角柱部よりも後方のアンビルの保持部に保持されてもよい。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成によれば、アンビルの強度の低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るインパクトレンチを示す前方からの斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るインパクトレンチを示す側面図である。
図3図3は、実施形態に係るインパクトレンチを示す縦断面図である。
図4図4は、実施形態に係るインパクトレンチの上部を示す縦断面図である。
図5図5は、実施形態に係るインパクトレンチの上部を示す横断面図である。
図6図6は、実施形態に係るインパクトレンチの上部の前部を示す断面図である。
図7図7は、実施形態に係る分離抑制機構を示す縦断面図である。
図8図8は、実施形態に係る分離抑制機構を示す横断面図である。
図9図9は、実施形態に係る分離抑制機構を後方から見た図である。
図10図10は、実施形態に係る分離抑制機構を前方から見た図である。
図11図11は、実施形態に係る分離抑制機構を示す分解斜視図である。
図12図12は、実施形態に係る分離抑制機構を示す側面図である。
図13図13は、別の実施形態に係る分離抑制機構を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクトレンチは、モータと、モータよりも前方に配置され、モータにより前後方向に延びる回転軸を中心に回転されるハンマと、ハンマにより回転方向に打撃されるアンビルと、アンビルを回転可能に支持するアンビルベアリングと、アンビルの内部に配置されるワイヤと、を備えてもよい。アンビルは、ソケットが装着される四角柱部と、四角柱部の後端部に接続されアンビルベアリングに支持される円柱部と、を有してもよい。ワイヤの前部は、四角柱部に連結されてもよい。ワイヤの後部は、四角柱部の後端部よりも後方のアンビルの保持部に保持されてもよい。
【0010】
上記の構成では、ワイヤの前部が四角柱部に連結され、ワイヤの後部が四角柱部の後端部よりも後方の保持部に保持されるので、四角柱部の後端部と円柱部の前端部との境界が破断しても、ワイヤにより、アンビルの前部の脱落が防止される。一般に、インパクトレンチのアンビルにおいては、四角柱部の後端部と円柱部の前端部との境界で破断する可能性が高い。ワイヤがアンビルの内部に配置されているので、アンビルに薄肉部を設けなくても、四角柱部の後端部と円柱部の前端部との境界が破断した場合に、アンビルの前部の脱落が防止される。アンビルに薄肉部を設けなくてもよいので、アンビルの強度の低下が抑制される。
【0011】
1つ又はそれ以上の実施形態において、アンビルの内部に、前後方向に延びる通路孔と、通路孔の後端部に接続され通路孔よりも大径の保持孔と、が設けられてもよい。インパクトレンチは、ワイヤの後部に接続される抜け止め部材を備えてもよい。保持部は、保持孔を含んでもよい。ワイヤの後部は、抜け止め部材を介して保持孔に保持されてもよい。
【0012】
上記の構成では、ワイヤの後部は、抜け止め部材を介して保持孔に保持される。
【0013】
1つ又はそれ以上の実施形態において、通路孔の後端部と保持孔の前端部との境界に、後方を向く境界面が設けられてもよい。抜け止め部材の前端面は、境界面に接触してもよい。
【0014】
上記の構成では、抜け止め部材の前端面が境界面に接触するので、抜け止め部材及びワイヤがアンビルに対して前方に移動することが抑制される。
【0015】
1つ又はそれ以上の実施形態において、回転軸に直交する通路孔の内縁の形状及び寸法と、回転軸に直交する抜け止め部材の外縁の形状及び寸法とは、等しくてもよい。抜け止め部材は、通路孔を通過して保持孔に収容されてもよい。
【0016】
上記の構成では、回転軸に直交する通路孔の内縁の形状と抜け止め部材の外縁の形状とは、実質的に等しい。回転軸に直交する通路孔の内縁の寸法と抜け止め部材の外縁の寸法とは、実質的に等しい。抜け止め部材は、通路孔の前端部の開口から通路孔に軽圧入される。抜け止め部材は、通路孔に軽圧入された状態で、通路孔を後方に向かって通過した後、保持孔に収容される。
【0017】
1つ又はそれ以上の実施形態において、抜け止め部材は、通路孔を通過するときの回転方向の角度とは異なる角度で保持孔に配置されてもよい。
【0018】
上記の構成では、通路孔に軽圧入された状態で通路孔を後方に向かって通過した抜け止め部材は、保持孔に収容された後、回転方向の角度を変更される。これにより、抜け止め部材の前端面と境界面とが接触する。
【0019】
1つ又はそれ以上の実施形態において、抜け止め部材の外縁の形状は、四角形でもよい。
【0020】
上記の構成では、通路孔の内縁の形状及び抜け止め部材の外縁の形状のそれぞれが四角形なので、保持孔に収容された抜け止め部材の外縁と通路孔の内縁とが一致する確率が低くなる。そのため、保持孔に収容されている抜け止め部材が通路孔に進入することが抑制される。なお、抜け止め部材の外縁の形状は、三角形でもよいし、五角形以上の任意の多角形でもよいし、楕円形でもよい。抜け止め部材の外縁の形状は、円形以外の形状であれば任意である。
【0021】
1つ又はそれ以上の実施形態において、前後方向において、保持孔の前端部は、円柱部の後端部と前端部との間に配置されてもよい。
【0022】
上記の構成では、通路孔の前後方向の長さが過度に長くなることが抑制される。
【0023】
1つ又はそれ以上の実施形態において、前後方向において、保持孔の前端部は、円柱部の中央部よりも後方に配置されてもよい。
【0024】
上記の構成では、通路孔の前後方向の長さが過度に短くなることが抑制される。
【0025】
1つ又はそれ以上の実施形態において、アンビルの外周面に、円柱部の後端部に接続される円周溝が設けられてもよい。前後方向において、円周溝の前端部は、保持孔の前端部よりも後方に配置されてもよい。
【0026】
上記の構成では、通路孔の前後方向の長さが過度に長くなることが抑制される。
【0027】
1つ又はそれ以上の実施形態において、前後方向において、円周溝の後端部は、保持孔の後端部よりも前方に配置されてもよい。
【0028】
上記の構成では、円周溝の前後方向の長さが過度に長くなることが抑制される。
【0029】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクトレンチは、ハンマを支持するスピンドルを備えてもよい。アンビルの内部に、保持孔の後端部に接続され保持孔よりも大径の凹部が設けられてもよい。スピンドルの前端部に設けられた凸部が凹部に挿入されてもよい。インパクトレンチは、凹部と凸部との境界をシールするOリングを備えてもよい。
【0030】
上記の構成では、スピンドルの周囲の潤滑剤が、アンビルを介してインパクトレンチの外側に漏出することが抑制される。
【0031】
1つ又はそれ以上の実施形態において、抜け止め部材は、ワイヤが配置されるスライド孔を有してもよい。抜け止め部材は、ワイヤと相対移動可能でもよい。インパクトレンチは、ワイヤの後端部に固定され、抜け止め部材がワイヤから後方に抜けることを抑制するストッパ部材を備えてもよい。
【0032】
上記の構成では、ワイヤに対して抜け止め部材が相対移動可能なので、抜け止め部材を通路孔に軽圧入するときの作業性の低下が抑制される。また、ワイヤに対して抜け止め部材が相対移動可能なので、抜け止め部材のストッパ部材が組み立て易くなる。また、四角形状である抜け止め部材が通路孔を抜けたときに回転(スライド)可能なので、抜け止めとして効果的になる。
【0033】
1つ又はそれ以上の実施形態において、ワイヤの前部は、ピンを介して四角柱部に連結されてもよい。
【0034】
上記の構成では、ピンを介してワイヤの前部と四角柱部とが連結されるので、ワイヤの前部を四角柱部に連結するときの作業性の低下が抑制される。
【0035】
1つ又はそれ以上の実施形態において、ワイヤは、前後方向に延びるストレート部と、ストレート部の前端部に設けられるリング部と、を有してもよい。アンビルは、四角柱部の外面と通路孔とを結ぶピン孔を有してもよい。ピンは、ピン孔及びリング部のそれぞれに挿入されてもよい。
【0036】
上記の構成では、ピンがピン孔及びリング部のそれぞれに挿入されることにより、ワイヤの前部と四角柱部とが作業性良く連結される。
【0037】
1つ又はそれ以上の実施形態において、抜け止め部材は、ストレート部が配置されるスライド孔を有してもよい。抜け止め部材は、ストレート部と相対移動可能でもよい。インパクトレンチは、ストレート部の後端部に固定され、抜け止め部材がワイヤから後方に抜けることを抑制するストッパ部材を備えてもよい。
【0038】
上記の構成では、ストレート部に対して抜け止め部材が相対移動可能なので、抜け止め部材を通路孔に軽圧入するときの作業性の低下が抑制される。
【0039】
1つ又はそれ以上の実施形態において、リング部は、ワイヤ素材の先端部を屈曲させることにより形成されてもよい。インパクトレンチは、リング部の一部とストレート部とを固定する圧着部材を備えてもよい。
【0040】
上記の構成では、1本のワイヤ素材からリング部とストレート部とを有するワイヤが形成される。
【0041】
1つ又はそれ以上の実施形態において、通路孔の内面に、リング部の少なくとも一部が配置される位置決め溝が設けられてもよい。
【0042】
上記の構成では、リング部とアンビルとが位置決めされる。
【0043】
1つ又はそれ以上の実施形態において、前後方向において、位置決め溝の位置は、ピン孔の少なくとも一部の位置と一致してもよい。
【0044】
上記の構成では、リング部とピン孔とが位置決めされる。
【0045】
1つ又はそれ以上の実施形態において、位置決め溝は、ピン孔の中心軸とリング部の中心軸とが一致するように、リング部を位置決めしてもよい。
【0046】
上記の構成では、ピンをピン孔及びリング部のそれぞれに挿入し易くなる。
【0047】
1つ又はそれ以上の実施形態において、ストレート部の一部にスプリング部が設けられてもよい。
【0048】
上記の構成では、四角柱部の後端部と円柱部の前端部との境界が破断した場合に、ワイヤに過度な張力が掛かることが抑制される。
【0049】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。実施形態においては、左、右、前、後、上、及び下の用語を用いて各部の位置関係について説明する。これらの用語は、インパクトレンチの中心を基準とした相対位置又は方向を示す。
【0050】
[インパクト工具]
図1は、実施形態に係るインパクトレンチ1を示す前方からの斜視図である。図2は、実施形態に係るインパクトレンチ1を示す側面図である。図3は、実施形態に係るインパクトレンチ1を示す縦断面図である。図4は、実施形態に係るインパクトレンチ1の上部を示す縦断面図である。図5は、実施形態に係るインパクトレンチ1の上部を示す横断面図である。
【0051】
実施形態において、インパクトレンチ1は、動力源として電動のモータ6を有する電動工具である。モータ6の回転軸AXに平行な方向を適宜、軸方向、と称し、回転軸AXの周囲を周回する方向を適宜、周方向又は回転方向、と称し、回転軸AXの放射方向を適宜、径方向、と称する。また、径方向において、回転軸AXに近い位置又は接近する方向を適宜、径方向内側又は内周側、と称し、回転軸AXから遠い位置又は離隔する方向を適宜、径方向外側又は外周側、と称する。実施形態において、回転軸AXは、前後方向に延びる。軸方向一方側は、前側(前方)であり、軸方向他方側は、後側(後方)である。
【0052】
インパクトレンチ1は、ハウジング2と、リヤカバー3と、ハンマケース4と、ベアリングボックス24と、モータ6と、減速機構7と、スピンドル8と、打撃機構9と、アンビル10と、ファン12と、バッテリ装着部13と、トリガレバー14と、正逆転切換レバー15と、操作表示部16と、ライト17と、コントローラ18と、分離抑制機構60とを備える。
【0053】
ハウジング2は、合成樹脂製である。実施形態において、ハウジング2は、ナイロン製である。ハウジング2は、左ハウジング2Lと、左ハウジング2Lの右方に配置される右ハウジング2Rとを含む。左ハウジング2Lと右ハウジング2Rとは、複数のねじ2Sにより固定される。ハウジング2は、一対の半割れハウジングにより構成される。
【0054】
ハウジング2は、モータ収容部21と、グリップ部22と、バッテリ保持部23とを有する。
【0055】
モータ収容部21は、筒状である。モータ収容部21は、モータ6、及びベアリングボックス24の後部を収容する。モータ収容部21にねじボス部2Hが設けられる。
【0056】
グリップ部22は、モータ収容部21から下方に突出する。トリガレバー14は、グリップ部22の上部に設けられる。グリップ部22は、作業者に握られる。
【0057】
バッテリ保持部23は、グリップ部22の下端部に接続される。前後方向及び左右方向のそれぞれにおいて、バッテリ保持部23の外形の寸法は、グリップ部22の外形の寸法よりも大きい。
【0058】
リヤカバー3は、合成樹脂製である。リヤカバー3は、モータ収容部21の後方に配置される。リヤカバー3は、モータ収容部21の後端部の開口を覆うように配置される。リヤカバー3は、不図示のねじによりモータ収容部21の後端部に固定される。
【0059】
リヤカバー3は、吸気口19を有する。モータ収容部21は、排気口20を有する。ハウジング2の外部空間の空気は、吸気口19を介してハウジング2の内部空間に流入する。ハウジング2の内部空間の空気は、排気口20を介してハウジング2の外部空間に流出する。
【0060】
ベアリングボックス24は、減速機構7を収容する。ハンマケース4は、スピンドル8を収容する。ハンマケース4は、打撃機構9を収容する。ハンマケース4は、アンビル10の一部を収容する。ハンマケース4は、金属製である。実施形態において、ハンマケース4は、アルミニウム製である。ハンマケース4は、筒状である。ハンマケース4の表面の一部は、カバー400により覆われる。
【0061】
ハンマケース4は、後側筒部4Aと、前側筒部4Bと、環状部4Cと、ねじボス部4Hとを含む。前側筒部4Bは、後側筒部4Aよりも前方に配置される。後側筒部4Aの外径は、前側筒部4Bの外径よりも大きい。後側筒部4Aの内径は、前側筒部4Bの内径よりも大きい。環状部4Cは、後側筒部4Aの前端部と前側筒部4Bの後端部とを繋ぐように配置される。
【0062】
ハンマケース4の後部とモータ収容部21の前部とは、ベアリングボックス24を介して固定される。ハンマケース4とモータ収容部21とは、ねじ5により固定される。ねじ5は、ねじボス部2Hの後方からねじボス部2Hに設けられている開口に挿入された後、ねじボス部4Hに設けられているねじ孔に挿入される。ねじボス部2H及びねじボス部4Hのそれぞれは、周方向に4つ設けられる。ねじ5は、周方向に4本設けられる。
【0063】
ベアリングボックス24は、後側筒部4Aの後部に固定される。減速機構7は、ベアリングボックス24の内側に配置される。ハンマケース4は、左ハウジング2Lと右ハウジング2Rとに挟まれる。ベアリングボックス24の後部は、モータ収容部21に収容される。ベアリングボックス24は、モータ収容部21及びハンマケース4のそれぞれに固定される。
【0064】
モータ6は、インパクトレンチ1の動力源である。モータ6は、回転力を発生する。モータ6は、電動モータである。モータ6は、インナロータ型のブラシレスモータである。モータ6は、ステータ26と、ロータ27とを有する。ステータ26は、モータ収容部21に支持される。ロータ27の少なくとも一部は、ステータ26の内側に配置される。ロータ27は、ステータ26に対して回転する。ロータ27は、前後方向に延伸する回転軸AXを中心に回転する。
【0065】
ステータ26は、ステータコア28と、前インシュレータ29と、後インシュレータ30と、コイル31とを有する。
【0066】
ステータコア28は、ロータ27よりも径方向外側に配置される。ステータコア28は、積層された複数の鋼板を含む。鋼板は、鉄を主成分とする金属製の板である。ステータコア28は、筒状である。ステータコア28は、コイル31を支持する複数のティースを有する。
【0067】
前インシュレータ29は、ステータコア28の前部に設けられる。後インシュレータ30は、ステータコア28の後部に設けられる。前インシュレータ29及び後インシュレータ30のそれぞれは、合成樹脂製の電気絶縁部材である。前インシュレータ29は、ティースの表面の一部を覆うように配置される。後インシュレータ30は、ティースの表面の一部を覆うように配置される。
【0068】
コイル31は、前インシュレータ29及び後インシュレータ30を介してステータコア28に装着される。コイル31は、複数配置される。コイル31は、前インシュレータ29及び後インシュレータ30を介してステータコア28のティースの周囲に配置される。コイル31とステータコア28とは、前インシュレータ29及び後インシュレータ30により電気的に絶縁される。複数のコイル31は、バスバー38を介して接続される。
【0069】
ロータ27は、回転軸AXを中心に回転する。ロータ27は、ロータコア32と、ロータシャフト33と、ロータ磁石34とを有する。
【0070】
ロータコア32は、鋼製である。ロータコア32は、筒状である。ロータシャフト33は、ロータコア32の内側に配置される。ロータコア32とロータシャフト33とは、固定される。ロータシャフト33の前部は、ロータコア32の前端面から前方に突出する。ロータシャフト33の後部は、ロータコア32の後端面から後方に突出する。
【0071】
ロータ磁石34は、ロータコア32に固定される。ロータ磁石34は、ロータコア32の内部に配置される。
【0072】
後インシュレータ30にセンサ基板37が取り付けられる。センサ基板37は、円環状の回路基板と、回路基板に支持される磁気センサとを有する。センサ基板37の少なくとも一部は、ロータ磁石34に対向する。磁気センサは、ロータ磁石34の位置を検出することにより、ロータ27の回転方向の位置を検出する。
【0073】
ロータシャフト33の後部は、ロータベアリング39に回転可能に支持される。ロータベアリング39の前部は、ロータベアリング40に回転可能に支持される。ロータベアリング39は、リヤカバー3に保持される。ロータベアリング40は、ベアリングボックス24に保持される。ロータシャフト33の前端部は、ベアリングボックス24の開口を介してベアリングボックス24の内部空間に配置される。
【0074】
ロータシャフト33の前端部にピニオンギヤ41が形成される。ピニオンギヤ41は、減速機構7の少なくとも一部に連結される。ロータシャフト33は、ピニオンギヤ41を介して減速機構7に連結される。
【0075】
減速機構7は、モータ6の回転力をスピンドル8及びアンビル10に伝達する。減速機構7は、ベアリングボックス24に収容される。減速機構7は、複数のギヤを有する。減速機構7は、モータ6よりも前方に配置される。減速機構7は、ロータシャフト33とスピンドル8とを連結する。減速機構7のギヤは、ロータ27により駆動される。減速機構7は、ロータ27の回転をスピンドル8に伝達する。減速機構7は、ロータシャフト33の回転速度よりも低い回転速度でスピンドル8を回転させる。減速機構7は、遊星歯車機構を含む。
【0076】
減速機構7は、ピニオンギヤ41の周囲に配置される複数のプラネタリギヤ42と、複数のプラネタリギヤ42の周囲に配置されるインターナルギヤ43とを有する。ピニオンギヤ41、プラネタリギヤ42、及びインターナルギヤ43のそれぞれは、ベアリングボックス24に収容される。複数のプラネタリギヤ42のそれぞれは、ピニオンギヤ41に噛み合う。プラネタリギヤ42は、ピン42Pを介してスピンドル8に回転可能に支持される。スピンドル8は、プラネタリギヤ42により回転される。インターナルギヤ43は、プラネタリギヤ42に噛み合う内歯を有する。インターナルギヤ43は、ベアリングボックス24に固定される。インターナルギヤ43は、ベアリングボックス24に対して常に回転不可能である。
【0077】
モータ6の駆動によりロータシャフト33が回転すると、ピニオンギヤ41が回転し、プラネタリギヤ42がピニオンギヤ41の周囲を公転する。プラネタリギヤ42は、インターナルギヤ43の内歯に噛み合いながら公転する。プラネタリギヤ42の公転により、ピン42Pを介してプラネタリギヤ42に接続されているスピンドル8は、ロータシャフト33の回転速度よりも低い回転速度で回転する。
【0078】
スピンドル8は、モータ6の回転力により回転する。スピンドル8は、モータ6の少なくとも一部よりも前方に配置される。スピンドル8は、ステータ26よりも前方に配置される。スピンドル8の少なくとも一部は、ロータ27よりも前方に配置される。スピンドル8の少なくとも一部は、減速機構7の前方に配置される。スピンドル8は、ロータ27により回転される。スピンドル8は、減速機構7により伝達されたロータ27の回転力により回転する。
【0079】
スピンドル8は、フランジ部8Aと、フランジ部8Aから前方に突出するスピンドルシャフト部8Bとを有する。プラネタリギヤ42は、ピン42Pを介してフランジ部8Aに回転可能に支持される。スピンドル8の回転軸とモータ6の回転軸AXとは一致する。スピンドル8は、回転軸AXを中心に回転する。
【0080】
スピンドル8は、スピンドルベアリング44に回転可能に支持される。スピンドルベアリング44は、ベアリングボックス24に保持される。スピンドル8は、フランジ部8Aの後部から後方に突出する円環部8Cを有する。スピンドルベアリング44は、円環部8Cの周囲に配置される。実施形態において、スピンドルベアリング44の外輪がベアリングボックス24に保持され、円環部8Cがスピンドルベアリング44の内輪に保持される。
【0081】
打撃機構9は、モータ6により駆動される。モータ6の回転力は、減速機構7及びスピンドル8を介して打撃機構9に伝達される。打撃機構9は、モータ6により回転するスピンドル8の回転力に基づいて、アンビル10を回転方向に打撃する。打撃機構9は、ハンマ47と、ボール48と、コイルスプリング49とを有する。ハンマ47を含む打撃機構9は、ハンマケース4に収容される。
【0082】
ハンマ47は、モータ6よりも前方に配置される。ハンマ47は、減速機構7よりも前方に配置される。ハンマ47は、後側筒部4Aに収容される。ハンマ47は、スピンドルシャフト部8Bの周囲に配置される。ハンマ47は、スピンドルシャフト部8Bに支持される。ボール48は、スピンドルシャフト部8Bとハンマ47との間に配置される。コイルスプリング49は、フランジ部8A及びハンマ47のそれぞれに支持される。
【0083】
ハンマ47は、環状のボディ部47Dと、ボディ部47Dの外周部から後側に突出する外筒部47Eと、ボディ部47Dの内周部から後側に突出する内筒部47Gと、ハンマ溝47Aと、ハンマ突起部47Bとを有する。ボディ部47Dは、スピンドルシャフト部8Bの周囲に配置される。ボディ部47Dは、環状である。外筒部47E及び内筒部47Gのそれぞれは、ボディ部47Dから後側に突出する。ボディ部47Dの後面と外筒部47Eの内周面と内筒部47Gの外周面とにより凹部47Cが規定される。凹部47Cは、ハンマ47の後端部から前方に窪むように設けられる。凹部47Cは、リング状である。ハンマ突起部47Bは、ボディ部47Dから前側に突出する。ハンマ突起部47Bは、2つ設けられる。外筒部47Eが設けられるので、回転方向におけるハンマ47の慣性力が大きくなる。
【0084】
ハンマ47は、モータ6により回転される。モータ6の回転力は、減速機構7及びスピンドル8を介してハンマ47に伝達される。ハンマ47は、モータ6により回転するスピンドル8の回転力に基づいて、スピンドル8と一緒に回転可能である。ハンマ47の回転軸とスピンドル8の回転軸とモータ6の回転軸AXとは一致する。ハンマ47は、回転軸AXを中心に回転する。
【0085】
ボール48は、鉄鋼のような金属製である。ボール48は、スピンドルシャフト部8Bとハンマ47との間に配置される。スピンドル8は、ボール48の少なくとも一部が配置されるスピンドル溝8Dを有する。スピンドル溝8Dは、スピンドルシャフト部8Bの外周面の一部に設けられる。ハンマ47は、ボール48の少なくとも一部が配置されるハンマ溝47Aを有する。ハンマ溝47Aは、内筒部47Gの内面の一部に設けられる。ボール48は、スピンドル溝8Dとハンマ溝47Aとの間に配置される。ボール48は、スピンドル溝8Dの内側及びハンマ溝47Aの内側のそれぞれを転がることができる。ハンマ47は、ボール48に伴って移動可能である。スピンドル8とハンマ47とは、スピンドル溝8D及びハンマ溝47Aにより規定される可動範囲において、軸方向及び回転方向のそれぞれに相対移動することができる。
【0086】
コイルスプリング49は、ハンマ47を前方に移動させる弾性力を発生する。コイルスプリング49は、フランジ部8Aとハンマ47との間に配置される。ハンマ47の後面にリング状の凹部47Cが設けられる。凹部47Cは、ハンマ47の後面から前方に窪む。凹部47Cの内側にワッシャ45が設けられる。ワッシャ45は、ボール11を介してボディ部47Dに支持される。ボール11は、ボディ部47Dの後面に設けられたボール溝47Hに配置される。コイルスプリング49の後端部は、フランジ部8Aに支持される。コイルスプリング49の前端部は、凹部47Cの内側に配置され、ワッシャ45に支持される。
【0087】
アンビル10は、モータ6の回転力により作動するインパクトレンチ1の出力部である。アンビル10は、モータ6の回転力により回転する。アンビル10の少なくとも一部は、ハンマ47よりも前方に配置される。
【0088】
アンビル10は、ロッド状のアンビルシャフト部10Cと、アンビル突起部10Dとを有する。回転軸AXに直交するアンビルシャフト部10Cの前部の四角柱部10Eの外形は、実質的に四角形である。先端工具であるソケット50は、アンビルシャフト部10Cの前部に装着される。アンビルシャフト部10Cの前部にはスナップリング51が設けられる。
【0089】
アンビル10の後端部に凹部10Bが設けられる。スピンドルシャフト部8Bの前端部に凸部8Eが設けられる。スピンドルシャフト部8Bの前端部の凸部8Eは、アンビル10の後端部に設けられた凹部10Bに挿入される。凸部8Eの外周面と凹部10Bの内周面との間にOリング35が設けられる。Oリング35は、凸部8Eの外周面と凹部10Bの内周面との境界をシールする。Oリング35により、スピンドル8の周囲の潤滑剤が、ハンマケース4の外側に漏出することが抑制される。
【0090】
アンビル突起部10Dは、アンビル10の後端部に設けられる。アンビル突起部10Dは、アンビルシャフト部10Cの後端部から径方向外側に突出する。
【0091】
アンビル10は、アンビルベアリング46に回転可能に支持される。アンビル10の回転軸とハンマ47の回転軸とスピンドル8の回転軸とモータ6の回転軸AXとは一致する。アンビル10は、回転軸AXを中心に回転する。アンビルベアリング46は、前側筒部4Bの内側に配置される。アンビルベアリング46は、ハンマケース4の前側筒部4Bに保持される。前側筒部4Bは、アンビルシャフト部10Cの周囲に配置される。アンビルベアリング46は、アンビルシャフト部10Cを回転可能に支持する。実施形態において、アンビルベアリング46は、外側スリーブ46Aと、外側スリーブ46Aよりも内周側に配置される内側スリーブ46Bとを含む。外側スリーブ46Aの前端部は、内側スリーブ46Bの前端部よりも前方に配置される。内側スリーブ46Bの前方にシール部材36が配置される。シール部材36は、外側スリーブ46Aの前部の内側に配置される。シール部材36は、外側スリーブ46Aの内周面とアンビルシャフト部10Cの外周面との境界をシールする。
【0092】
ハンマ突起部47Bは、アンビル突起部10Dに接触可能である。ハンマ突起部47Bとアンビル突起部10Dとが接触している状態で、モータ6が駆動することにより、アンビル10は、ハンマ47及びスピンドル8と一緒に回転する。
【0093】
アンビル10は、ハンマ47により回転方向に打撃される。例えばねじ締め作業において、アンビル10に作用する負荷が高くなると、モータ6が発生する動力だけではアンビル10を回転させることができなくなる状況が発生する場合がある。モータ6が発生する動力だけではアンビル10を回転させることができなくなると、アンビル10及びハンマ47の回転が停止する。スピンドル8とハンマ47とは、ボール48を介して軸方向及び周方向のそれぞれに相対移動可能である。ハンマ47の回転が停止しても、スピンドル8の回転は、モータ6が発生する動力により継続される。ハンマ47の回転が停止している状態で、スピンドル8が回転すると、ボール48がスピンドル溝8D及びハンマ溝47Aのそれぞれにガイドされながら後方に移動する。ハンマ47は、ボール48から力を受け、ボール48に伴って後方に移動する。すなわち、ハンマ47は、アンビル10の回転が停止された状態で、スピンドル8が回転することにより、後方に移動する。ハンマ47が後方に移動することにより、ハンマ突起部47Bとアンビル突起部10Dとの接触が解除される。
【0094】
コイルスプリング49は、ハンマ47を前方に移動させる弾性力を発生する。後方に移動したハンマ47は、コイルスプリング49の弾性力により、前方に移動する。ハンマ47は、前方に移動するとき、ボール48から回転方向の力を受ける。すなわち、ハンマ47は、回転しながら前方に移動する。ハンマ47が回転しながら前方に移動すると、ハンマ突起部47Bは、回転しながらアンビル突起部10Dに接触する。これにより、アンビル突起部10Dは、ハンマ突起部47Bにより回転方向に打撃される。アンビル10には、モータ6の動力とハンマ47の慣性力との両方が作用する。したがって、アンビル10は、高いトルクで回転軸AXを中心に回転することができる。
【0095】
ファン12は、モータ6の回転力により回転する。ファン12は、モータ6のステータ26よりも前方に配置される。ファン12は、モータ6を冷却するための気流を生成する。ファン12は、ロータ27の少なくとも一部に固定される。ファン12は、ブッシュ12Aを介してロータシャフト33の前部に固定される。ファン12は、ステータ26とロータベアリング40との間に配置される。ファン12は、ロータ27の回転により回転する。ロータシャフト33が回転することにより、ファン12は、ロータシャフト33と一緒に回転する。ファン12が回転することにより、ハウジング2の外部空間の空気が、吸気口19を介してハウジング2の内部空間に流入する。ハウジング2の内部空間に流入した空気は、ハウジング2の内部空間を流通することにより、モータ6を冷却する。ハウジング2の内部空間を流通した空気は、ファン12が回転することにより、排気口20を介してハウジング2の外部空間に流出する。
【0096】
バッテリ装着部13は、バッテリ保持部23の下部に配置される。バッテリパック25がバッテリ装着部13に装着される。バッテリパック25は、バッテリ装着部13に着脱可能である。バッテリパック25は、インパクトレンチ1の電源として機能する。バッテリパック25は、二次電池を含む。実施形態において、バッテリパック25は、充電式のリチウムイオン電池を含む。バッテリ装着部13に装着されることにより、バッテリパック25は、インパクトレンチ1に電力を供給することができる。モータ6及びライト17のそれぞれは、バッテリパック25から供給される電力に基づいて駆動する。
【0097】
トリガレバー14は、グリップ部22に設けられる。トリガレバー14は、モータ6を起動するために作業者に操作される。トリガレバー14が操作されることにより、モータ6の駆動と停止とが切り換えられる。
【0098】
正逆転切換レバー15は、グリップ部22の上部に設けられる。正逆転切換レバー15は、作業者に操作される。正逆転切換レバー15が操作されることにより、モータ6の回転方向が正転方向及び逆転方向の一方から他方に切り換えられる。モータ6の回転方向が切り換えられることにより、スピンドル8の回転方向が切り換えられる。
【0099】
操作表示部16に複数の操作ボタン16Aと、複数の発光部16Bとを有する。作業者により操作ボタン16Aが操作されることにより、モータ6の動作モードが切り換えられる。操作表示部16は、バッテリ保持部23に設けられる。操作表示部16は、グリップ部22よりも前方側において、バッテリ保持部23の上面に設けられる。
【0100】
ライト17は、照明光を射出する。ライト17は、アンビル10及びアンビル10の周辺を照明光で照明する。ライト17は、アンビル10の前方を照明光で照明する。また、ライト17は、アンビル10に装着されたソケット50及びソケット50の周辺を照明光で照明する。ライト17は、トリガレバー14の上方に配置される。
【0101】
コントローラ18は、モータ6を制御する制御信号を出力する。コントローラ18は、複数の電子部品が実装された基板を含む。基板に実装される電子部品として、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ、ROM(Read Only Memory)又はストレージのような不揮発性メモリ、RAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリ、トランジスタ、及び抵抗が例示される。コントローラ18は、バッテリ保持部23に収容される。
【0102】
[分離抑制機構]
図6は、実施形態に係るインパクトレンチ1の上部の前部を示す断面図である。図7は、実施形態に係る分離抑制機構60を示す縦断面図である。図8は、実施形態に係る分離抑制機構60を示す横断面図である。図9は、実施形態に係る分離抑制機構60を後方から見た図である。図10は、実施形態に係る分離抑制機構60を前方から見た図である。図11は、実施形態に係る分離抑制機構60を示す分解斜視図である。図12は、実施形態に係る分離抑制機構60を示す側面図である。
【0103】
分離抑制機構60は、アンビル10の少なくとも一部が破断した場合に、破断部分よりも前方のアンビル10の前部が脱落することを防止する。アンビルシャフト部10Cは、ソケット50が装着される四角柱部10Eと、アンビルベアリング46に支持される円柱部10Fとを有する。円柱部10Fの前端部は、四角柱部10Eの後端部に接続される。また、アンビルシャフト部10Cの外周面に円周溝10Jが設けられる。円周溝10Jは、回転軸AXを囲むように形成される。円周溝10Jは、円柱部10Fの後端部に接続される。円周溝10Jの外側に潤滑剤が収容される。
【0104】
ソケット50は、ボルトの頭部又はナットが配置される操作孔50Aと、四角柱部10Eの周囲に配置される接続孔50Bとを有する。四角柱部10Eが接続孔50Bに挿入されることにより、ソケット50がアンビル10に装着される。
【0105】
一般に、インパクトレンチ1のアンビル10においては、四角柱部10Eの後端部と円柱部10Fの前端部との境界で破断する可能性が高い。分離抑制機構60は、四角柱部10Eの後端部と円柱部10Fの前端部との境界が破断した場合に、四角柱部10Eの後端部と円柱部10Fの前端部との境界よりも前方のアンビルシャフト部10Cの前部が脱落することを防止する。
【0106】
分離抑制機構60は、アンビル10の内部に配置されるワイヤ61を有する。ワイヤ61の前部は、四角柱部10Eに連結される。ワイヤ61の後部は、四角柱部10Eの後端部よりも後方のアンビル10の保持部に保持される。
【0107】
アンビル10の内部に、前後方向に延びる通路孔10Gと、通路孔10Gの後端部に接続される保持孔10Aと、保持孔10Aの後端部に接続される凹部10Bとが設けられる。通路孔10Gの前端部に開口が設けられる。通路孔10Gの前端部の開口は、アンビルシャフト部10Cの前端面に設けられる。保持孔10Aの前端部は、通路孔10Gの後端部に接続される。保持孔10Aは、通路孔10Gよりも大径である。すなわち、保持孔10Aの内径は、通路孔10Gの内径よりも大きい。凹部10Bの前端部は、保持孔10Aの後端部に接続される。凹部10Bは、保持孔10Aよりも大径である。すなわち、凹部10Bの内径は、保持孔10Aの内径よりも大きい。通路孔10Gの中心軸と、保持孔10Aの中心軸と、凹部10Bの中心軸とは、一致する。
【0108】
図9に示すように、回転軸AXに直交する断面において、通路孔10Gの内縁の形状は、四角形状である。回転軸AXに直交する断面において、保持孔10Aの内縁の形状は、円形状である。回転軸AXに直交する断面において、凹部10Bの内縁の形状は、円形状である。
【0109】
実施形態において、ワイヤ61の後部を保持する保持部は、保持孔10Aである。ワイヤ61の後部は、保持孔10Aに保持される。実施形態において、分離抑制機構60は、ワイヤ61の後部に接続される抜け止め部材62を有する。ワイヤ61の後部は、抜け止め部材62を介して保持孔10Aに保持される。
【0110】
ワイヤ61の前部が四角柱部10Eに連結され、ワイヤ61の後部が四角柱部10Eの後端部よりも後方の保持孔10Aに保持されるので、四角柱部10Eの後端部と円柱部10Fの前端部との境界が破断しても、ワイヤ61により、アンビル10の前部の脱落が防止される。ワイヤ61がアンビル10の内部に配置されているので、アンビル10に薄肉部を設けなくても、四角柱部10Eの後端部と円柱部10Fの前端部との境界が破断した場合に、アンビル10の前部の脱落が防止される。アンビル10に薄肉部を設けなくてもよいので、アンビル10の強度の低下が抑制される。
【0111】
実施形態において、通路孔10Gの後端部と保持孔10Aの前端部との境界に、後方を向く境界面10Hが設けられる。抜け止め部材62の前端面は、境界面10Hに接触する。抜け止め部材62の前端面が境界面10Hに接触するので、抜け止め部材62及びワイヤ61がアンビル10に対して前方に移動することが抑制される。
【0112】
実施形態において、抜け止め部材62は、ワイヤ61が配置されるスライド孔62Aを有する。抜け止め部材62は、ワイヤ61と相対移動可能である。分離抑制機構60は、ワイヤ61の後端部に固定されるストッパ部材63を有する。抜け止め部材62は、抜け止め部材62の後端面から前方に窪む凹部を有する。ストッパ部材63は、抜け止め部材62の凹部に収容可能である。ストッパ部材63により、抜け止め部材62がワイヤ61から後方に抜けることが抑制される。
【0113】
ワイヤ61の前部は、ピン65を介して四角柱部10Eに連結される。実施形態において、ワイヤ61は、前後方向に延びるストレート部61Aと、ストレート部61Aの前端部に設けられるリング部61Bと、を有する。ワイヤ61は、1本のワイヤ素材の一部を屈曲させることにより形成される。リング部61Bは、ワイヤ素材の先端部を屈曲させることにより形成される。分離抑制機構60は、リング部61Bの一部とストレート部61Aとを固定する圧着部材64を有する。ワイヤ素材の先端部が屈曲された後、ワイヤ素材の先端部とワイヤ素材の一部とが圧着部材64により固定されることにより、リング部61Bとストレート部61Aとを有するワイヤ61が形成される。ストレート部61Aが抜け止め部材62のスライド孔62Aに配置される。抜け止め部材62は、ストレート部61Aと相対移動可能である。ストッパ部材63は、ストレート部61Aの後端部に固定され、抜け止め部材62がストレート部61Aから後方に抜けることを抑制する。
【0114】
アンビル10は、四角柱部10Eの外面と通路孔10Gとを結ぶピン孔10Kを有する。また、ソケット50は、ソケット50の後部の外面と接続孔50Bとを結ぶピン孔50Cを有する。ピン65は、ピン孔50C、ピン孔10K、及びリング部61Bのそれぞれに挿入される。ピン65が、ピン孔50C、ピン孔10K、及びリング部61Bのそれぞれに挿入されることにより、ソケット50と四角柱部10Eとワイヤ61の前部とが連結される。
【0115】
リング部61Bは、通路孔10Gに配置される。実施形態において、通路孔10Gの内面に、リング部61Bの少なくとも一部が配置される位置決め溝10Lが設けられる。位置決め溝10Lにより、リング部61Bとアンビル10とが位置決めされる。
【0116】
実施形態において、前後方向において、位置決め溝10Lの位置は、ピン孔10Kの少なくとも一部の位置と一致する。これにより、リング部61Bとピン孔10Kとが位置決めされる。
【0117】
実施形態において、位置決め溝10Lは、ピン孔10Kの中心軸とリング部61Bの中心軸とが一致するように、リング部61Bを位置決めする。すなわち、位置決め溝10Lは、ピン孔10Kとリング部61Bの中央の孔とが一致するように、リング部61Bを位置決めする。これにより、ピン65をピン孔10K及びリング部61Bのそれぞれに挿入し易くなる。
【0118】
前後方向において、保持孔10Aの前端部は、円柱部10Fの後端部と前端部との間に配置される。前後方向において、保持孔10Aの前端部は、円柱部10Fの中央部よりも後方に配置される。
【0119】
前後方向において、円周溝10Jの前端部は、保持孔10Aの前端部よりも後方に配置される。前後方向において、円周溝10Jの後端部は、保持孔10Aの後端部よりも前方に配置される。
【0120】
スピンドル8の前端部に設けられた凸部8Eが凹部10Bに挿入される。凹部10Bと凸部8Eとの境界をシールするOリング35が設けられる。Oリング35により、スピンドル8の周囲の潤滑剤が、アンビル10を介してインパクトレンチ1の外側に漏出することが抑制される。
【0121】
実施形態において、回転軸AXに直交する通路孔10Gの内縁の形状と、回転軸AXに直交する抜け止め部材62の外縁の形状とは、実質的に等しい。回転軸AXに直交する通路孔10Gの内縁の寸法と、回転軸AXに直交する抜け止め部材62の外縁の寸法とは、実質的に等しい。なお、詳細には、抜け止め部材62が通路孔10Gに軽圧入できるように、回転軸AXに直交する通路孔10Gの内縁の寸法は、回転軸AXに直交する抜け止め部材62の外縁の寸法よりも僅かに大きい。
【0122】
実施形態において、通路孔10Gの内縁の形状及び抜け止め部材62の外縁の形状のそれぞれは、四角形でもよい。
【0123】
ワイヤ61、抜け止め部材62、ストッパ部材63、及び圧着部材64を含む分離抑制機構60は、通路孔10Gの前端部の開口から通路孔10Gに挿入される。抜け止め部材62は、通路孔10Gの前端部の開口から通路孔10Gに挿入された後、通路孔10Gを通過して、保持孔10Aに収容される。
【0124】
実施形態においては、回転軸AXに直交する通路孔10Gの内縁の形状と抜け止め部材62の外縁の形状とが実質的に等しく、回転軸AXに直交する通路孔10Gの内縁の寸法と抜け止め部材62の外縁の寸法とが実質的に等しいので、抜け止め部材62は、通路孔10Gの前端部の開口から通路孔10Gに軽圧入される。抜け止め部材62は、通路孔10Gに軽圧入された状態で、通路孔10Gを後方に向かって通過した後、保持孔10Aに収容される。
【0125】
通路孔10Gに軽圧入された状態で通路孔10Gを後方に向かって通過した抜け止め部材62は、保持孔10Aに到達した後、回転方向の角度を変更される。すなわち、抜け止め部材62が保持孔10Aに到達した後、分離抑制機構60が回転軸AXを中心に回転される。抜け止め部材62が通路孔10Gを通過するときの回転方向の角度とは異なる角度で保持孔10Aに配置されることにより、抜け止め部材62の前端面と境界面10Hとが接触する。
【0126】
抜け止め部材62が保持孔10Aに収容された後、抜け止め部材62の外縁と通路孔10Gの内縁とが一致する確率は低い。そのため、保持孔10Aに収容されている抜け止め部材62が通路孔10Gに進入することが抑制される。すなわち、抜け止め部材62の全端面と境界面10Hとが接触する状態が維持される。
【0127】
抜け止め部材62が保持孔10Aに到達することにより、リング部61Bが通路孔10Gに配置される。リング部61Bの少なくとも一部は、通路孔10Gの内面に設けられている位置決め溝10Lに配置される。リング部61Bの少なくとも一部が位置決め溝10Lに配置されることにより、リング部61Bとアンビル10とが位置決めされる。リング部61Bとアンビル10とが位置決めされた後、ピン65は、ピン孔50C、ピン孔10K、及びリング部61Bのそれぞれに挿入される。ピン65が、ピン孔50C、ピン孔10K、及びリング部61Bのそれぞれに挿入されることにより、ソケット50と四角柱部10Eとワイヤ61の前部とが連結される。
【0128】
[効果]
以上説明したように、実施形態において、インパクトレンチ1は、モータ6と、モータ6よりも前方に配置され、モータ6により前後方向に延びる回転軸AXを中心に回転されるハンマ47と、ハンマ47により回転方向に打撃されるアンビル10と、アンビル10を回転可能に支持するアンビルベアリング46と、アンビル10の内部に配置されるワイヤ61と、を備えてもよい。アンビル10は、ソケット50が装着される四角柱部10Eと、四角柱部10Eの後端部に接続されアンビルベアリング46に支持される円柱部10Fと、を有してもよい。ワイヤ61の前部は、四角柱部10Eに連結されてもよい。ワイヤ61の後部は、四角柱部10Eの後端部よりも後方のアンビル10の保持部である保持孔10Aに保持されてもよい。
【0129】
上記の構成では、ワイヤ61の前部が四角柱部10Eに連結され、ワイヤ61の後部が四角柱部10Eの後端部よりも後方の保持部である保持孔10Aに保持されるので、四角柱部10Eの後端部と円柱部10Fの前端部との境界が破断しても、ワイヤ61により、アンビル10の前部の脱落が防止される。一般に、インパクトレンチ1のアンビル10においては、四角柱部10Eの後端部と円柱部10Fの前端部との境界で破断する可能性が高い。ワイヤ61がアンビル10の内部に配置されているので、アンビル10に薄肉部を設けなくても、四角柱部10Eの後端部と円柱部10Fの前端部との境界が破断した場合に、アンビル10の前部の脱落が防止される。アンビル10に薄肉部を設けなくてもよいので、アンビル10の強度の低下が抑制される。
【0130】
実施形態において、アンビル10の内部に、前後方向に延びる通路孔10Gと、通路孔10Gの後端部に接続され通路孔10Gよりも大径の保持孔10Aと、が設けられてもよい。インパクトレンチ1は、ワイヤ61の後部に接続される抜け止め部材62を備えてもよい。ワイヤ61の後部は、抜け止め部材62を介して保持孔10Aに保持されてもよい。
【0131】
上記の構成では、ワイヤ61の後部は、抜け止め部材62を介して保持孔10Aに保持される。
【0132】
実施形態において、通路孔10Gの後端部と保持孔10Aの前端部との境界に、後方を向く境界面10Hが設けられてもよい。抜け止め部材62の前端面は、境界面10Hに接触してもよい。
【0133】
上記の構成では、抜け止め部材62の前端面が境界面10Hに接触するので、抜け止め部材62及びワイヤ61がアンビル10に対して前方に移動することが抑制される。
【0134】
実施形態において、回転軸AXに直交する通路孔10Gの内縁の形状及び寸法と、回転軸AXに直交する抜け止め部材62の外縁の形状及び寸法とは、等しくてもよい。抜け止め部材62は、通路孔10Gを通過して保持孔10Aに収容されてもよい。
【0135】
上記の構成では、回転軸AXに直交する通路孔10Gの内縁の形状と抜け止め部材62の外縁の形状とは、実質的に等しい。回転軸AXに直交する通路孔10Gの内縁の寸法と抜け止め部材62の外縁の寸法とは、実質的に等しい。抜け止め部材62は、通路孔10Gの前端部の開口から通路孔10Gに軽圧入される。抜け止め部材62は、通路孔10Gに軽圧入された状態で、通路孔10Gを後方に向かって通過した後、保持孔10Aに収容される。
【0136】
実施形態において、抜け止め部材62は、通路孔10Gを通過するときの回転方向の角度とは異なる角度で保持孔10Aに配置されてもよい。
【0137】
上記の構成では、通路孔10Gに軽圧入された状態で通路孔10Gを後方に向かって通過した抜け止め部材62は、保持孔10Aに収容された後、回転方向の角度を変更される。これにより、抜け止め部材62の前端面と境界面10Hとが接触する。
【0138】
実施形態において、抜け止め部材62の外縁の形状は、四角形でもよい。
【0139】
上記の構成では、通路孔10Gの内縁の形状及び抜け止め部材62の外縁の形状のそれぞれが四角形なので、保持孔10Aに収容された抜け止め部材62の外縁と通路孔10Gの内縁とが一致する確率が低くなる。そのため、保持孔10Aに収容されている抜け止め部材62が通路孔10Gに進入することが抑制される。なお、抜け止め部材62の外縁の形状は、三角形でもよいし、五角形以上の任意の多角形でもよいし、楕円形でもよい。抜け止め部材62の外縁の形状は、円形以外の形状であれば任意である。
【0140】
実施形態において、前後方向において、保持孔10Aの前端部は、円柱部10Fの後端部と前端部との間に配置されてもよい。
【0141】
上記の構成では、通路孔10Gの前後方向の長さが過度に長くなることが抑制される。
【0142】
実施形態において、前後方向において、保持孔10Aの前端部は、円柱部10Fの中央部よりも後方に配置されてもよい。
【0143】
上記の構成では、通路孔10Gの前後方向の長さが過度に短くなることが抑制される。
【0144】
実施形態において、アンビル10の外周面に、円柱部10Fの後端部に接続される円周溝10Jが設けられてもよい。前後方向において、円周溝10Jの前端部は、保持孔10Aの前端部よりも後方に配置されてもよい。
【0145】
上記の構成では、通路孔10Gの前後方向の長さが過度に長くなることが抑制される。
【0146】
実施形態において、前後方向において、円周溝10Jの後端部は、保持孔10Aの後端部よりも前方に配置されてもよい。
【0147】
上記の構成では、円周溝10Jの前後方向の長さが過度に長くなることが抑制される。
【0148】
実施形態において、インパクトレンチ1は、ハンマ47を支持するスピンドル8を備えてもよい。アンビル10の内部に、保持孔10Aの後端部に接続され保持孔10Aよりも大径の凹部10Bが設けられてもよい。スピンドル8の前端部に設けられた凸部8Eが凹部10Bに挿入されてもよい。インパクトレンチ1は、凹部10Bと凸部8Eとの境界をシールするOリング35を備えてもよい。
【0149】
上記の構成では、スピンドル8の周囲の潤滑剤が、アンビル10を介してインパクトレンチ1の外側に漏出することが抑制される。
【0150】
実施形態において、抜け止め部材62は、ワイヤ61が配置されるスライド孔62Aを有してもよい。抜け止め部材62は、ワイヤ61と相対移動可能でもよい。インパクトレンチ1は、ワイヤ61の後端部に固定され、抜け止め部材62がワイヤ61から後方に抜けることを抑制するストッパ部材63を備えてもよい。
【0151】
上記の構成では、ワイヤ61に対して抜け止め部材62が相対移動可能なので、抜け止め部材62を通路孔10Gに軽圧入するときの作業性の低下が抑制される。また、ワイヤ61に対して抜け止め部材62が相対移動可能なので、抜け止め部材62のストッパ部材63が組み立て易くなる。また、四角形状である抜け止め部材62が通路孔10Gを抜けたときに回転(スライド)可能なので、抜け止めとして効果的になる。
【0152】
実施形態において、ワイヤ61の前部は、ピン65を介して四角柱部10Eに連結されてもよい。
【0153】
上記の構成では、ピン65を介してワイヤ61の前部と四角柱部10Eとが連結されるので、ワイヤ61の前部を四角柱部10Eに連結するときの作業性の低下が抑制される。
【0154】
実施形態において、ワイヤ61は、前後方向に延びるストレート部61Aと、ストレート部61Aの前端部に設けられるリング部61Bと、を有してもよい。アンビル10は、四角柱部10Eの外面と通路孔10Gとを結ぶピン孔10Kを有してもよい。ピン65は、ピン孔10K及びリング部61Bのそれぞれに挿入されてもよい。
【0155】
上記の構成では、ピン65がピン孔10K及びリング部61Bのそれぞれに挿入されることにより、ワイヤ61の前部と四角柱部10Eとが作業性良く連結される。
【0156】
実施形態において、抜け止め部材62は、ストレート部61Aが配置されるスライド孔62Aを有してもよい。抜け止め部材62は、ストレート部61Aと相対移動可能でもよい。インパクトレンチ1は、ストレート部61Aの後端部に固定され、抜け止め部材62がワイヤ61から後方に抜けることを抑制するストッパ部材63を備えてもよい。
【0157】
上記の構成では、ストレート部61Aに対して抜け止め部材62が相対移動可能なので、抜け止め部材62を通路孔10Gに軽圧入するときの作業性の低下が抑制される。
【0158】
実施形態において、リング部61Bは、ワイヤ素材の先端部を屈曲させることにより形成されてもよい。インパクトレンチ1は、リング部61Bの一部とストレート部61Aとを固定する圧着部材64を備えてもよい。
【0159】
上記の構成では、1本のワイヤ素材からリング部61Bとストレート部61Aとを有するワイヤ61が形成される。
【0160】
実施形態において、通路孔10Gの内面に、リング部61Bの少なくとも一部が配置される位置決め溝10Lが設けられてもよい。
【0161】
上記の構成では、リング部61Bとアンビル10とが位置決めされる。
【0162】
実施形態において、前後方向において、位置決め溝10Lの位置は、ピン孔10Kの少なくとも一部の位置と一致してもよい。
【0163】
上記の構成では、リング部61Bとピン孔10Kとが位置決めされる。
【0164】
実施形態において、位置決め溝10Lは、ピン孔10Kの中心軸とリング部61Bの中心軸とが一致するように、リング部61Bを位置決めしてもよい。
【0165】
上記の構成では、ピン65をピン孔10K及びリング部61Bのそれぞれに挿入し易くなる。
【0166】
[別の実施形態]
図13は、別の実施形態に係る分離抑制機構600を示す斜視図である。図13に示すように、分離抑制機構600は、ストレート部61A及びリング部61Bを有するワイヤ61と、リング部61Bの一部とストレート部61Aとを固定する圧着部材64とを有する。図13に示す例において、ストレート部61Aの一部にスプリング部61Cが設けられる。スプリング部61Cは、ストレート部61Aの一部をコイル状に巻くことにより形成される。
【0167】
図13に示す例においては、四角柱部10Eの後端部と円柱部10Fの前端部との境界が破断した場合に、ワイヤ61に掛かる張力がスプリング部61Cの弾性変形により吸収される。これにより、ワイヤ61に過度な張力が掛かることが抑制される。
【0168】
上述の実施形態において、インパクトレンチ1の電源は、バッテリパック25でなくてもよく、商用電源(交流電源)でもよい。
【符号の説明】
【0169】
1…インパクトレンチ、2…ハウジング、2H…ねじボス部、2L…左ハウジング、2R…右ハウジング、2S…ねじ、3…リヤカバー、4…ハンマケース、4A…後側筒部、4B…前側筒部、4C…環状部、4H…ねじボス部、5…ねじ、6…モータ、7…減速機構、8…スピンドル、8A…フランジ部、8B…スピンドルシャフト部、8C…円環部、8D…スピンドル溝、8E…凸部、9…打撃機構、10…アンビル(出力部)、10A…保持孔、10B…凹部、10C…アンビルシャフト部、10D…アンビル突起部、10E…四角柱部、10F…円柱部、10G…通路孔、10H…境界面、10J…円周溝、10K…ピン孔、10L…位置決め溝、11…ボール、12…ファン、12A…ブッシュ、13…バッテリ装着部、14…トリガレバー、15…正逆転切換レバー、16…操作表示部、16A…操作ボタン、16B…発光部、17…ライト、18…コントローラ、19…吸気口、20…排気口、21…モータ収容部、22…グリップ部、23…バッテリ保持部、24…ベアリングボックス、25…バッテリパック、26…ステータ、27…ロータ、28…ステータコア、29…前インシュレータ、30…後インシュレータ、31…コイル、32…ロータコア、33…ロータシャフト、34…ロータ磁石、35…Oリング、36…シール部材、37…センサ基板、38…バスバー、39…ロータベアリング、40…ロータベアリング、41…ピニオンギヤ、42…プラネタリギヤ、42P…ピン、43…インターナルギヤ、44…スピンドルベアリング、45…ワッシャ、46…アンビルベアリング、46A…外側スリーブ、46B…内側スリーブ、47…ハンマ、47A…ハンマ溝、47B…ハンマ突起部、47C…凹部、47D…ボディ部、47E…外筒部、47G…内筒部、47H…ボール溝、48…ボール、49…コイルスプリング、50…ソケット、50A…操作孔、50B…接続孔、50C…ピン孔、51…スナップリング、60…分離抑制機構、61…ワイヤ、61A…ストレート部、61B…リング部、61C…スプリング部、62…抜け止め部材、62A…スライド孔、63…ストッパ部材、64…圧着部材、65…ピン、400…カバー、600…分離抑制機構、AX…回転軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13