(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171228
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】感熱記録体
(51)【国際特許分類】
B41M 5/40 20060101AFI20241204BHJP
B41M 5/41 20060101ALI20241204BHJP
B41M 5/42 20060101ALI20241204BHJP
D21H 19/84 20060101ALI20241204BHJP
D21H 19/20 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B41M5/40 220
B41M5/41 200
B41M5/42 210
B41M5/42 220
D21H19/84
D21H19/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088190
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000205306
【氏名又は名称】大阪シーリング印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】小堂 祐子
(72)【発明者】
【氏名】播摩 英伸
(72)【発明者】
【氏名】郷地 有治
【テーマコード(参考)】
2H026
4L055
【Fターム(参考)】
2H026AA07
2H026DD01
2H026DD48
2H026DD58
2H026EE03
2H026FF01
2H026FF11
2H026FF15
2H026FF17
4L055AJ01
4L055BE08
4L055EA08
4L055EA14
4L055EA19
4L055EA32
4L055EA34
4L055GA12
(57)【要約】
【課題】透明度及び耐カール性に優れた感熱記録体を提供する。
【解決手段】本発明の感熱記録体は、基材上に、バックコート層が積層された感熱記録体であり、上記基材は高密度紙であり、上記基材と上記バックコート層とを両端面とする積層体の不透明度は18%以下であり、上記バックコート層の水接触角は83°以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、バックコート層が積層された感熱記録体であり、
前記基材は高密度紙であり、
前記基材と前記バックコート層とを両端面とする積層体の不透明度は18%以下であり、
前記バックコート層の水接触角は83°以上である、感熱記録体。
【請求項2】
前記基材の密度は、0.90g/cm3以上である、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記基材の不透明度は20%以下である、請求項1または2に記載の感熱記録体。
【請求項4】
前記バックコート層の不透明度は30%以下である、請求項1または2に記載の感熱記録体。
【請求項5】
前記バックコート層は、アクリル樹脂及び/又はスチレンアクリル樹脂を含有する、請求項1または2に記載の感熱記録体。
【請求項6】
前記アクリル樹脂及び/又は前記スチレンアクリル樹脂の含有割合は、前記バックコート層の固形分質量100質量%に対して50質量%以上である、請求項5に記載の感熱記録体。
【請求項7】
前記バックコート層の塗布量(乾燥質量)は、0.5g/m2~5.0g/m2である、請求項1または2に記載の感熱記録体。
【請求項8】
前記感熱記録体は、前記バックコート層と、前記基材と、アンカー層と、感熱記録層と、中間層と、トップコート層と、をこの順に備える、請求項1または2に記載の感熱記録体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録体に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱記録体は、サーマルヘッド等の加熱によって化学反応により発色し、記録画像が得られるものであり、ファクシミリや自動券売機、科学計測機の記録用媒体としてだけではなく、小売店等のPOSシステムの感熱記録ラベル、レシート用紙等として広範な用途に使用されている。
【0003】
上述のように感熱記録体は広範に利用されている。このため、感熱記録体には様々な性能が求められる。例えば、感熱記録体の製造時や、水に晒される等の過酷な環境下での使用時においても、感熱記録体がカールしづらい性能、すなわち優れた耐カール性が求められる。
【0004】
耐カール性に優れる感熱記録体は、基材の裏面に種々のバックコート層を設けたものが多い。このような感熱記録体としては、例えば特許文献1~3に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-181205号公報
【特許文献2】特開平9-193550号公報
【特許文献3】特開2012-218350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~3の感熱記録体は、いずれも普通紙、合成紙、合成樹脂フィルム等を基材としており、それ以外の基材、例えば透明度の高い高密度紙を基材に用いたときの耐カール性に関する開示はなく、当該性能は不明であった。
【0007】
ところで、一般的な白色不透明の普通紙は、紙を形成している繊維の間に微細な空隙を有しており、この空隙の空気と繊維との屈折率の違いによって光が散乱し、紙は白色で不透明に見える。一方、高密度紙(例えばトレーシングペーパー等)は原料のパルプに対して高度な叩解処理を施し、繊維の間の空隙をより少なくしているため、透明度が高いという性質を有する。しかしながら、高度な叩解処理を施すことによってパルプの繊維長は短くなり、耐カール性が低下しやすくなるため、高密度紙の高い透明度と、優れた耐カール性を両立させることはいまだ困難であった。
【0008】
従って本発明の目的は、透明度及び耐カール性に優れた感熱記録体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の基材及びバックコート層によれば、透明度及び耐カール性に優れる感熱記録体を作製可能であることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、基材上に、バックコート層が積層された感熱記録体であり、上記基材は高密度紙であり、上記基材と上記バックコート層とを両端面とする積層体の不透明度は18%以下であり、上記バックコート層の水接触角は83°以上である、感熱記録体を提供する。
【0011】
上記基材の密度は、0.90g/cm3以上であることが好ましい。
【0012】
上記基材の不透明度は20%以下であることが好ましい。
【0013】
上記バックコート層の不透明度は30%以下であることが好ましい。
【0014】
上記バックコート層は、アクリル樹脂及び/又はスチレンアクリル樹脂を含有することが好ましい。
【0015】
上記アクリル樹脂及び/又は上記スチレンアクリル樹脂の含有割合は、上記バックコート層の固形分質量100質量%に対して50質量%以上であることが好ましい。
【0016】
上記バックコート層の塗布量(乾燥質量)は、0.5g/m2~5.0g/m2であることが好ましい。
【0017】
上記感熱記録体は、上記バックコート層と、上記基材と、アンカー層と、感熱記録層と、中間層と、トップコート層と、をこの順に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、透明度及び耐カール性に優れる感熱記録体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の感熱記録体の一実施形態を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[感熱記録体]
本発明の感熱記録体は、基材上にバックコート層を備える感熱記録体であり、上記基材は、高密度紙である。また、上記基材と上記バックコート層の積層体としての不透明度は18%以下であり、上記バックコート層の水接触角は83°以上である。
【0021】
以下、本発明の感熱記録体の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明するが、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明の感熱記録体の一実施形態を示す模式的な断面図である。
【0023】
本実施形態の感熱記録体1は、
図1に示すように、バックコート層3と、基材2と、アンカー層4と、感熱記録層5と、中間層6と、及びトップコート層7とが、この順で積層された積層構造を有する。なお、本明細書において、保護層8は、最も外側の表面層として形成されたトップコート層7と、このトップコート層7と感熱記録層5との間に形成された中間層6と、を備えている。
【0024】
(基材)
本実施形態において、基材2は、感熱記録体1の支持体として機能する。また、基材2は高密度紙である。より具体的には、例えば、トレーシングペーパー、グラシン紙等が挙げられる。基材2の厚さは、特に限定されないが、例えば、5μm~150μmであり、好ましくは5μm~100μmであり、より好ましくは5μm~75μmである。厚さが上記範囲であれば、支持体としての強度及び塗工性及び透明度に優れるため好ましい。
【0025】
上記基材2の密度は、特に限定されないが、例えば、0.85g/cm3~2.0g/cm3であり、0.90g/cm3~2.0g/cm3がより好ましい。さらに、0.95g/cm3~2.0g/cm3でもよく、1.0g/cm3~2.0g/cm3であってもよい。上記のような密度の範囲であれば、透明度に優れるため好ましい。
【0026】
上記基材2の不透明度は、特に限定されないが、例えば、30%以下であり、20%以下がより好ましい。上記のような不透明度の範囲であれば、透明度に優れるため好ましい。
【0027】
(バックコート層)
本実施形態において、バックコート層3は、感熱記録体1の耐カール性を向上させる機能を有する。また、感熱記録体1が感熱記録層5を備える場合、バックコート層3は、基材2に対して感熱記録層5が形成される面とは反対側(非印字面側)に形成される。
【0028】
本実施形態において、バックコート層3の水接触角は83°以上である。また、85°以上がより好ましく、90°以上がさらに好ましく、95°以上が特に好ましい。上記水接触角は、感熱記録体1のバックコート層3において、基材2が積層されている面とは反対側の表面(3a)で測定することにより得られる。
【0029】
上記水接触角の測定では、少なくとも上記バックコート層3のみがあれば測定可能であり、その他の層は省略することができる。水接触角の測定は、例えば、有限会社マツボー製の携帯式接触角計(商品名「PG-Xplus」)を用いて行うことができる。なお、本明細書において、上記の水接触角は1秒後の動的接触角のことをいう。また、実施例にて後述する方法によって測定することができる。
【0030】
上記水接触角が83°以上であると、感熱記録体1としての耐カール性が優れたものとなる。
【0031】
本実施形態において、バックコート層3の水接触角と、感熱記録体1の耐カール性には相関が見られる。すなわち、バックコート層3の水接触角が大きいほど、その感熱記録体1の耐カール性が優れる傾向が見られる。詳細な作用機序は不明だが、バックコート層の水接触角が高いという状態は、バックコート層の濡れ性が低いという状態と同義である。そして、そのようなバックコート層であれば、水はより弾かれることとなり、パルプ繊維間に水が入り込みづらくなるため、基材の伸縮は起こりづらくなり、その結果、感熱記録体のカールがより抑制されると考えられる。また、バックコート層として形成した際の表面自由エネルギーや表面形状といった種々の要素の相互作用によって水接触角が変化し、ひいては感熱記録体1としての耐カール性に影響を及ぼすものと推察される。
【0032】
本実施形態において、上記基材2と上記バックコート層3とを両端面とする積層体(
図1では2、3からなる積層体)の不透明度は18%以下である。また、15%以下がより好ましく、13%以上がさらに好ましく、12%以下が特に好ましい。上記不透明度は、実施例で後述する測定方法により得られる。上記不透明度が18%以下であると、感熱記録体1として形成したときに、透明度がより優れたものとなり得る。
【0033】
本実施形態において、上記バックコート層の不透明度は、特に限定されないが、例えば、30%以下である。また、20%以下でもよく、10%以下でもよい。上記不透明度は、実施例で後述する測定方法により得られる。このような範囲であると、感熱記録体1として形成したときに、透明度がより優れたものとなり得る。
【0034】
上記バックコート層3を形成する材料としては、特に限定されず、公知の樹脂を用いることができる。例えば、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、コアシェル型アクリル樹脂、スチレンブタジエン共重合体(SBR)樹脂、ポリビニルアルコール等が挙げられる。中でも、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂を用いた場合、水接触角が大きくなり、耐カール性が優れる傾向にあるため好ましい。これらの樹脂は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。さらに必要に応じて、その他の成分を含有してもよい。
【0035】
上記コアシェル型アクリル樹脂としては、例えば、バリアスター(三井化学社製)の名称で市販されている樹脂等を挙げることができる。
【0036】
また、コアシェル型アクリル樹脂の架橋剤として、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を使用することができる。
【0037】
本実施形態において、上記樹脂の含有割合は、バックコート層3の固形分質量を100質量%としたときに、例えば50質量%以上であり、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましい。また、100質量%であってもよい。このような範囲であれば、感熱記録体1の透明度及び耐カール性がより優れたものとなり得る。
【0038】
なお、本明細書において「固形分質量」とは、塗液やその原料に含まれる水等の溶媒(揮発成分)を除いた不揮発性分(固形分)の質量をいうものとする。
【0039】
本実施形態において、バックコート層3に含まれ得る上記その他の成分の含有割合は、バックコート層3の固形分質量を100質量%としたときに、例えば50質量%以下であり、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、10質量%以下が特に好ましい。また、0質量%であってもよい。このような範囲であれば、感熱記録体1の透明度及び耐カール性がより優れたものとなり得る。
【0040】
本実施形態におけるバックコート層3の塗布量(乾燥質量)は特に限定されるものではないが、例えば0.5g/m2~5.0g/m2であり、好ましくは0.8g/m2~3.0g/m2であり、より好ましくは1.0g/m2~2.0g/m2である。
【0041】
本実施形態におけるバックコート層3の厚みは特に限定されるものではないが、例えば0.1μm~20μmであり、好ましくは1μm~5μmである。
【0042】
本実施形態におけるバックコート層3の塗布量、及び厚みが上記の範囲にある場合、感熱記録体1の透明度及び耐カール性がより優れたものとなる。
【0043】
(アンカー層)
本実施形態において、アンカー層4は、基材2と感熱記録層5との密着性を高めるものである。アンカー層4を形成する材料は特に限定されず、結着剤のみを塗工することができる。また、その他の成分を添加してもよく、例えば、顔料等を添加することも必要に応じて可能である。さらに、アンカー層を必要としない場合は設け無くてもよい。
【0044】
本実施形態におけるアンカー層4に含まれる結着剤は特に限定されず、例えば、変性スチレンブタジエンラテックス、変性スチレン・アクリル系樹脂、アクリル-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリル-ブタジエン-スチレン共重合体、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0045】
また、上記以外の結着剤として、ポリビニルアルコール、デンプン及びその誘導体、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド-アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド-アクリル酸エステル-メタクリル酸三元共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子を用いてもよい。また、これらの結着剤は、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0046】
本実施形態におけるアンカー層4に含まれる充填剤は特に限定されず、例えば、中空粒子、焼成カオリン、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、シリカゲル、活性白土、タルク、クレー、カオリナイト、ケイソウ土、ホワイトカーボン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ポリスチレン樹脂粒子、尿素-ホルマリン樹脂粒子、ポリオレフィン樹脂粒子等を挙げることができる。また、これらの充填剤は、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0047】
本実施形態におけるアンカー層4の塗布量(乾燥質量)は特に限定されるものではないが、例えば0.5g/m2~10.0g/m2であり、好ましくは2.0g/m2~10.0g/m2であり、より好ましくは4.0g/m2~8.0g/m2である。
【0048】
本実施形態におけるアンカー層4の厚みは特に限定されるものではないが、例えば1μm~20μmであり、好ましくは2μm~10μmである。
【0049】
本実施形態におけるアンカー層4の塗布量、及び厚みが上記の範囲にある場合、基材2と感熱記録層5との密着性がより向上する。
【0050】
(感熱記録層)
本実施形態において、感熱記録層5を形成する材料としては、特に限定されないが、加熱により発色する発色剤、顕色剤、充填剤、結着剤、及び滑剤等を用いることができる。さらに必要に応じて、その他の成分を含有してもよい。
【0051】
感熱記録体1の透明度を向上させるために、各材料は、粒子径の細かいものを使用するのが好ましい。このような粒子径の細かい材料であれば、粒子の乱反射が抑制される。
【0052】
具体的には、発色剤であるロイコ染料としては、3-(N-イソブチル-N-エチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-イソペンチル-N-エチル)アミノ-6-メチル-7-o-クロロアニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-p-トルイジノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソペンチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エトキシプロピル-N-エチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-シクロヘキシル-N-メチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-n-プロピル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-p-トルイジノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-8-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-ブロモフルオラン、3-ジブチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジメチルアミノ-5-メチル-7-メチルフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、クリスタルバイオレットラクトン等を用いることができる。これらの発色剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0053】
上記発色剤の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば0.05μm~1.0μmであり、好ましくは0.07μm~0.5μmである。
【0054】
本明細書において、平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法により測定される測定50%平均粒子径をいう。レーザー回折・散乱法による平均粒子径の測定は、例えば、マイクロトラック・ベル社製の商品名「MT3300EX-II」を用いて行うことができる。以下、「平均粒子径」とは、上記方法により測定される測定50%平均粒子径をいう。
【0055】
上記の顕色剤としては、例えば、1,1-ビス(p-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(p-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2’-メチレンビス(4-クロロフェノール)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-n-プロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-イソプロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-メチルジフェニルスルホン、4-ヒドロキシフェニル-4'-ベンジルオキシフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4′-アリルオキシジフェニルスルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ポリ(4-ヒドロキシ安息香酸)、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、2,4-ビス(フェニルスルホニル)フェノール、α-{4-[(4-ヒドロキシフェニル)スルホニル]フェニル}-ω-ヒドロキシポリ(重合度n=1~7)(オキシエチレンオキシエチレンオキシ-p-フェニレンスルホニル-p-フェニレン)2,2-ビス[(4-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレア]ジフェニルスルホン、3,5-ビス(α-メチルベンジル)サリチル酸、ビス[4-(n-オクチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸亜鉛]、4,4’-ビス(p-トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、4-ヒドロキシベンゼンスルホンアニリド、2’-(3-フェニルウレイド)ベンゼンスルホンアニリド、N-(2-ヒドロキシフェニル)-2-[(4-ヒドロキシフェニル)チオ]アセトアミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)-2-[(4-ヒドロキシフェニル)チオ]アセトアミド、4-[[4-[4-[4-[[4-(1-メチルエトキシ)フェニル]スルホニルフェノキシ]ブトキシ]フェニル]スルホニル]フェノール、4-tert-ブチルフェノール・ホルムアルデヒド重縮合物、N-(p-トルエンスルホニル)N'-(3-p-トルエンスルホニルオキシフェニル)ウレア、1-フェニル-3-(4-メチルフェニルスルホニル)ウレア等を用いることができる。これらの顕色剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0056】
上記顕色剤の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば0.05μm~1.0μmであり、好ましくは0.07μm~0.5μmである。
【0057】
上記充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、シリカゲル、活性白土、タルク、クレー、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、ホワイトカーボン、酸化亜鉛、酸化珪素、コロイダルシリカ、ポリスチレン樹脂粒子、尿素-ホルマリン樹脂粒子、ポリオレフィン樹脂粒子等を用いることができる。これらの充填剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0058】
上記充填剤の平均粒子径は、特に限定されないが、1.0μm以下が好ましい。
【0059】
上記結着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプン、カゼイン、ゼラチン、ポリアミド、ポリアクリルアミド、変性ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン-無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、メチルビニル-無水マレイン酸共重合体、イソプロピレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、アクリル酸エステル、アクリルニトリル、メチルビニルエーテル等を用いることができる。これらの結着剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0060】
上記増感剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸アミド、ステアリン酸アニリド、メチロールステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、1-ベンジルオキシナフタレン、2-ベンジルオキシナフタレン、2,6-ジイソプロピルナフタレン、1,2-ジフェノキシエタン、1,2-ジフェノキシメチルベンゼン、1,2-ビス(3,4-ジメチルフェノル)エタン、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ビス(4-メチルフェノキシ)エタン、シュウ酸ジ(p-クロロベンジル)、シュウ酸ジ(p-メチルベンジル)、シュウ酸ジベンジル、p-ベンジルビフェニル、m-ターフェニル、ジフェニルスルホン、p-ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、テレフタル酸ジベンジル、p-トルエンスルホンアミド等を用いることができる。これらの増感剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0061】
上記滑剤としては、例えば、パラフィンワックス、オレイン酸等の脂肪酸類、ポリエチレンワックス等のポリオレフィンワックス類、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類、カルナバワックス等のエステルワックス類、シリコンオイル、鯨油等の油類を用いることができる。これらの滑剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0062】
上記滑剤の平均粒子径は、特に限定されないが、0.5μm以下が好ましい。
【0063】
感熱記録体1の透明度を向上させるためには、感熱記録層5にパラフィンワックスを含有させることが特に有効であることが知られている。このパラフィンワックスは、感熱記録層5の発色温度未満、好ましくは80℃未満、より好ましくは、50℃未満の低融点のパラフィンワックスであることが好ましい。
【0064】
上記低融点のパラフィンワックスの平均粒子径は、上記のように0.5μm以下が好ましい。上記パラフィンワックスの含有量は、感熱記録層5の塗布量(乾燥質量)として、例えば、0.1g/m2~1.0g/m2が好ましい。
【0065】
このように低融点のパラフィンワックスを含有させることによって、感熱記録層5の形成用の塗液を、アンカー層4上に塗工し、塗液が乾燥する際に、低融点のパラフィンワックスが溶融し、感熱記録層5を構成する粒子の表面の凹凸等の隙間に入り込んで、隙間を埋める。これによって、感熱記録層5において、粒子の表面の乱反射が抑制されるため、感熱記録体1の透明度が向上し得る。
【0066】
本実施形態における感熱記録層5の塗布量(乾燥質量)は特に限定されるものではないが、例えば0.5g/m2~10.0g/m2であり、好ましくは2.0g/m2~10.0g/m2であり、より好ましくは4.0g/m2~8.0g/m2である。
【0067】
本実施形態における感熱記録層5の厚みは特に限定されるものではないが、例えば1μm~20μmであり、好ましくは2μm~10μmである。
【0068】
(保護層)
本実施形態の保護層8は、トップコート層7と中間層6とを備えている。
【0069】
本実施形態において、中間層6は、水や油に対するバリア性を有しており、感熱記録層5の耐水性や耐薬品性等を向上させる機能を有する。トップコート層7は、サーマルヘッドに対する感熱記録層5のマッチング性を向上させる機能を有しており、感熱記録層5における発色が適切に行われるようにし得る。
【0070】
(中間層)
中間層6は、主に、樹脂によって形成されている。この中間層6の樹脂としては、例えば、アクリル樹脂のエマルション、水溶性部分を有する樹脂、SBR樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。さらに必要に応じて、その他の成分を含有してもよい。
【0071】
感熱記録体1の透明度を向上させるためには、中間層6の樹脂は、水溶性部分を有する樹脂、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール(PVA)を用いることができる。あるいは、疎水性のコア粒子を、水溶性のシェルポリマーでコーティングしたコアシェル構造の樹脂、例えば、コアシェル型アクリル樹脂等が好ましい。
【0072】
水溶性のポリビニルアルコールやコアシェル型アクリル樹脂は、成膜性が良好である。また、感熱記録層5上に、中間層形成用の塗液を塗工して乾燥する際に、水溶性部分を有する樹脂が、感熱記録層5へ染み込んで平滑な中間層6が形成される。これにより、感熱記録層5での乱反射が抑制されて感熱記録層5の透明度が向上する。
【0073】
本実施形態において、中間層6は、コアシェル型アクリル樹脂を使用すると共に、架橋剤として、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を使用してもよい。このような架橋剤を使用することで、感熱記録体を形成した時の透明度がより優れたものとなる。
【0074】
本実施形態における中間層6の塗布量(乾燥質量)は特に限定されるものではないが、例えば0.5g/m2~5.0g/m2であり、好ましくは0.8g/m2~3.0g/m2であり、より好ましくは1.0g/m2~2.0g/m2である。
【0075】
本実施形態における中間層6の厚みは特に限定されるものではないが、例えば1μm~20μmであり、好ましくは2μm~10μmである。
【0076】
(トップコート層)
トップコート層7は、結着剤中に充填剤、滑剤、架橋剤等が使用できる。さらに必要に応じて、その他の成分を含有してもよい。
【0077】
結着剤である樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、等が挙げられる。滑剤としては、例えば、ポリエチレン、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。これらの滑剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0078】
架橋剤としては、例えば、炭酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0079】
充填剤としては、コロイダルシリカ、炭酸カルシウム、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)等が挙げられる。これらの充填剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0080】
これら充填剤の平均粒子径は、1.0μm以下が好ましい。透明度を向上させるためには、充填剤として、平均粒子径の小さいコロイダルシリカが好ましい。
【0081】
本実施形態におけるトップコート層7の塗布量(乾燥質量)は特に限定されるものではないが、例えば0.5g/m2~5.0g/m2であり、好ましくは0.8g/m2~3.0g/m2であり、より好ましくは1.0g/m2~2.0g/m2である。
【0082】
本実施形態におけるトップコート層7の厚みは特に限定されるものではないが、例えば0.8μm~20μmであり、好ましくは1μm~10μmである。
【0083】
本実施形態では、バックコート層3、基材2、アンカー層4、感熱記録層5、中間層6、及びトップコート層7をこの順に形成しているが、本発明の他の実施形態として、アンカー層4、感熱記録層5、中間層6、及びトップコート層7の少なくともいずれか一種類の層を省略してもよい。また、一種類以上の異なる層を追加で形成してもよい。
【0084】
上記実施形態の感熱記録体1は、上記構成を有することにより、透明度、及び耐カール性に優れる。
【0085】
上記実施形態の感熱記録体は、実施例に記載の方法及び条件で耐カール性評価をした場合、水への浸漬後の横巾は、例えば20mm以上であり、25mm以上が好ましく、30mm以上がより好ましく、35mm以上がさらに好ましい。
【0086】
[感熱記録体の製造方法]
本発明の感熱記録体の製造方法は特に限定されるものではない。例えば、各層に含まれる成分を水等の溶媒中に分散させた塗液を公知乃至慣用の方法によって各層ごとに調製し、それらを公知乃至慣用の方法によって塗工、乾燥させることで製造することができる。
【0087】
上記塗液は各成分を全て同じ溶媒中にあらかじめ分散させて調製してもよい。また、お互いに反応する発色剤と顕色剤とを、別々の分散液として調製してから両者を混合し、塗液としてもよい。その際、その他の成分は発色剤を含む分散液と、顕色剤を含む分散液とのどちらに添加してもよいし、両者に添加してもよい。上記塗液を調製する方法は特に限定されず、例えば、超音波処理、あるいはボールミル、ビーズミル、サンドミル、高圧ホモジナイザー等を用いた解砕処理等が挙げられる。これらの方法は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0088】
上記塗液を塗工する方法は特に限定されず、例えば、エアーナイフコーティング、バリバーブレードコーティング、ピュアーブレードコーティング、ロッドブレードコーティング、ショートドウェルコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング等が挙げられる。これらの方法は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0089】
本実施形態では、各層を例えばカーテンコータ等によって多層同時塗工してもよいし、個別に順次形成してもよい。また、一部の層を同時塗工し、一部の層を個別に順次形成してもよい。
【実施例0090】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。
【0091】
バックコート層、基材、アンカー層、感熱記録層、中間層、及びトップコート層をこの順に積層した感熱記録体を以下の工程によって作製し、後述の各試験に用いて評価した。
(実施例1~3、比較例1~5)
(感熱記録体の作製)
【0092】
<バックコート層>
表1に示す種類の樹脂溶液をバックコート層用塗液とし、基材(高密度紙、密度:0.95g/cm3、不透明度:18%)上に塗布し、これを乾燥させて、乾燥時の塗布量が1.5g/m2のバックコート層を形成した。なお、表1のいずれの配合においても、固形分の濃度が18.5質量%になるように調製した。
【0093】
<アンカー層>
アンカー層には、スチレンアクリル樹脂を使用した。
【0094】
上記スチレンアクリル樹脂を、上記基材のバックコート層が形成された面とは反対側の面上に、塗工量が、乾燥質量で6.5g/m2となるように塗工した後、乾燥してアンカー層を形成した。
【0095】
<感熱記録層>
感熱記録層には、顕色剤として、平均粒子径が0.15μmの3,3’-ジアリル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンを使用し、充填剤として、平均粒子径が0.4μmのカオリンを使用し、結着剤(バインダ)として、ガラス転移温度Tgが「-3℃」のSBRを使用し、滑剤として、融点が46℃で平均粒子径が0.2μmのパラフィンを使用し、染料として、平均粒子径が0.15μmの2-アニリン-3メチル-6-(N-メチル-P-トルイジノ)フルオランを使用した。
【0096】
乾燥時における質量比率で、顕色剤、カオリン、SBR、パラフィン、染料を、それぞれ25質量部、10質量部、20質量部、4質量部、12質量部とし、全体で71質量部とした。
【0097】
上記の配合の感熱記録層用塗液を調製し、上記アンカー層上に、塗工量が、乾燥質量で4.5g/m2となるように塗工した後、乾燥して感熱記録層を形成した。
【0098】
<中間層>
中間層には、結着剤として、コアシェル型アクリル樹脂を使用した中間層用塗液を、その塗工量が、乾燥質量で2.0g/m2となるように、上記感熱記録層上に塗工し、乾燥させることにより形成した。
【0099】
<トップコート層>
トップコート層には、滑剤として、平均粒子径が0.12μmのポリエチレン(PE)及び平均粒子径が5.5μmのステアリン酸亜鉛(St-Zn)を使用し、結着剤(バインダ)として、アクリル樹脂を使用し、架橋剤として、炭酸ジルコニウムを使用し、充填剤として、平均粒子径が数nmのコロイダルシリカ及び平均粒子径が数十nmのコロイダルシリカを使用した。
【0100】
乾燥時における質量比率で、ポリエチレン(PE)、ステアリン酸亜鉛(St-Zn)、アクリル樹脂、炭酸ジルコニウム、平均粒子径が数nmのコロイダルシリカ、平均粒子径が数十nmのコロイダルシリカを、それぞれ10質量部、5質量部、50質量部、5質量部、15質量部、30質量部とし、全体で115質量部とした。
【0101】
上記の配合のトップコート層用塗液を調製し、上記中間層上に、塗工量が、乾燥質量で1.5g/m2となるように塗工した後、乾燥してトップコート層を形成した。
【0102】
以上の方法により、実施例1~3、及び比較例1~5の感熱記録体を作製した。
【0103】
(不透明度評価)
不透明度評価では、各実施例及び各比較例において、基材上にバックコート層のみを形成した積層体をフォトボルト方式反射濃度計(有限会社東京電色製、商品名:TC-6DS/A)を用いて、JIS P 8149:2000に準じて不透明度の測定を行った。
【0104】
また、各実施例及び各比較例でバックコート層に用いた表1に記載の各樹脂のみからなる層(厚さ250μm)を形成し、上記と同様の方法で測定した。
【0105】
上記の不透明度の測定結果を表1に示す。ここで、不透明度の値が大きいほど、より不透明であることを意味するため、不透明度の値が小さいほど、透明度がより優れると評価した。なお、実施例で基材として用いた高密度紙の不透明度(18%)は、上記と同様の方法で測定したときの値である。また、表1では、基材上にバックコート層のみを形成したときの不透明度を「塗工後の不透明度」とし、樹脂のみからなる層の不透明度を「樹脂層の不透明度」とした。
【0106】
(接触角評価)
接触角評価では、各実施例及び各比較例において、基材上にバックコート層のみを形成した積層体のうち、バックコート層の面の水接触角を、携帯式接触角計(株式会社マツボー製、商品名:PG-Xplus)を用いて測定した。なお、本実施例においては、バックコート層の表面に純水の液滴(4.0μL)を滴下し、滴下1秒後における接触角を動的測定滴下モードの設定で測定した。
【0107】
上記の水接触角の測定結果を表1に示す。ここで、水接触角の値が大きいほど、バックコート層の面が、水の液滴をより弾いていることを意味する。
【0108】
(耐カール性評価)
耐カール性評価では、各実施例及び各比較例で作製した各感熱記録体を、縦30mm×横40mmに切り出して試験片とした。水を入れた底の平らなポリカップ容器に、上記試験片を10秒間浸漬させた後、試験片を取り出し、試験片の横巾(mm)を測定し、浸漬後の横巾から耐カール性を評価した。
【0109】
上記の耐カール性の測定結果を表1に示す。ここで、浸漬後の横巾の値が小さいほど、浸漬後の感熱記録体はよりカールしていることを意味する。すなわち、浸漬後の横巾の値が、浸漬前の横巾の値(40mm)に近いほど、浸漬後の感熱記録体は元の形状を維持できていることを意味するため、耐カール性がより優れると評価した。
【0110】
【0111】
表1から以下のことが確認できた。
【0112】
水接触角と浸漬後の横巾には相関が見られた。すなわち水接触角が大きいほど、浸漬後の横巾は40mmに近いため、その感熱記録体の耐カール性は優れるという傾向があった。
【0113】
ここで驚くべきことに、一般に疎水性樹脂であるSBRを用いた比較例2、4や、一般的に成膜性に優れることから耐カール性を向上させる効果があるとされているコアシェル型アクリル樹脂を用いた比較例1では、水接触角が比較的小さく、耐カール性に劣っていた。一方で、比較的、親水的なアクリルモノマーを含有するスチレンアクリル樹脂や、アクリル樹脂を用いた実施例1~3では、水接触角が大きく、耐カール性に非常に優れていた。また、スチレンアクリル樹脂の中でも、比較例3、5のように、水接触角が比較的小さくなるようなものを用いた場合は耐カール性が低下する傾向が見られた。
【0114】
なお、本明細書では記載を省略するが、基材として、高密度紙ではなく一般的な上質紙(密度約0.8g/cm3)を用いた場合、いずれの各実施例及び各比較例で用いた表1に記載の樹脂をバックコート層に用いても耐カール性は優れていた。このことからも、高密度紙を用いたときの耐カール性の向上が非常に困難であることがわかる。
【0115】
不透明度に関しては、各実施例及び各比較例のいずれにおいても、不透明度の値が小さく、透明度は優れていた。
【0116】
以上から、本実施形態では、優れた透明度及び耐カール性を両立することができていることがわかる。
【0117】
以上のまとめとして、本発明の構成及びそのバリエーションを以下に付記する。
[付記1]基材上に、バックコート層が積層された感熱記録体であり、
前記基材は高密度紙であり、
前記基材と前記バックコート層とを両端面とする積層体の不透明度は18%以下であり、
前記バックコート層の水接触角は83°以上である、感熱記録体。
[付記2]前記基材の密度は、0.90g/cm3以上である、付記1に記載の感熱記録体。
[付記3]前記基材の不透明度は20%以下である、付記1または2に記載の感熱記録体。
[付記4]前記バックコート層の不透明度は30%以下である、付記1から3のいずれか1つに記載の感熱記録体。
[付記5]前記バックコート層は、アクリル樹脂及び/又はスチレンアクリル樹脂を含有する、付記1から4のいずれか1つに記載の感熱記録体。
[付記6]前記アクリル樹脂及び/又は前記スチレンアクリル樹脂の含有割合は、前記バックコート層の固形分質量100質量%に対して50質量%以上である、付記5に記載の感熱記録体。
[付記7]前記バックコート層の塗布量(乾燥質量)は、0.5g/m2~5.0g/m2である、付記1から6のいずれか1つに記載の感熱記録体。
[付記8]前記感熱記録体は、前記バックコート層と、前記基材と、アンカー層と、感熱記録層と、中間層と、トップコート層と、をこの順に備える、付記1から7のいずれか1つに記載の感熱記録体。
本発明の感熱記録体は、透明度及び耐カール性に優れるため、例えば、封筒の宛名の窓部分といった用途にも好適に使用することができる。すなわち、優れた透明度によって、高い視認性を達成することができる。さらに、優れた耐カール性によって、雨や湿気に晒されてもカールしづらいため、外観が波打つことなく、高い美観をも達成することができる。また、優れた耐カール性により、製造時の取り扱い性の点においても有利である。