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特開2024-171231読取装置、読取方法、および読取プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171231
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】読取装置、読取方法、および読取プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06V 30/146 20220101AFI20241204BHJP
   H04N 5/222 20060101ALI20241204BHJP
   H04N 23/61 20230101ALI20241204BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20241204BHJP
   G06V 30/14 20220101ALI20241204BHJP
   G06V 30/194 20220101ALI20241204BHJP
【FI】
G06V30/146
H04N5/222 100
H04N23/61
H04N23/60 300
G06V30/14 340A
G06V30/194
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088195
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】593204650
【氏名又は名称】東西化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】北村 駿
【テーマコード(参考)】
5B029
5B064
5C122
【Fターム(参考)】
5B029AA06
5B029BB02
5B029BB17
5B029CC27
5B029EE04
5B029EE05
5B029EE15
5B064AA03
5B064AB07
5B064AB13
5B064BA01
5B064CA07
5B064DA27
5C122DA12
5C122FH11
5C122FH14
5C122GC14
5C122GC52
5C122GD01
(57)【要約】
【課題】撮影装置とセグメント式表示器との相対位置関係にかかわらず高い読取精度を実現する。
【解決手段】セグメント式表示器Dの表示値を読み取る読取装置1であって、セグメント式表示器Dの周囲に配置される目印4と、セグメント式表示器Dおよび目印4を含む画像データを取得する撮影装置2と、少なくとも一つの演算装置と、を備え、演算装置が、画像データ中の目印4に基づいて当該画像データを補正する補正機能と、補正機能によって補正された画像データに基づいてセグメント式表示器Dの表示値を特定する特定機能と、を実現可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セグメント式表示器の表示値を読み取る読取装置であって、
前記セグメント式表示器の周囲に配置される目印と、前記セグメント式表示器および前記目印を含む画像データを取得する撮影装置と、少なくとも一つの演算装置と、を備え、
前記演算装置が、
前記画像データ中の前記目印に基づいて当該画像データを補正する補正機能と、
前記補正機能によって補正された前記画像データに基づいて前記セグメント式表示器の表示値を特定する特定機能と、を実現可能である読取装置。
【請求項2】
前記目印がARマーカーである請求項1に記載の読取装置。
【請求項3】
前記撮影装置を支持するとともに、前記撮影装置と前記セグメント式表示器との相対位置関係を規制する支持部材をさらに備える請求項1に記載の読取装置。
【請求項4】
前記目印を照明する照明装置をさらに備える請求項1に記載の読取装置。
【請求項5】
前記撮影装置および前記演算装置がネットワークに接続可能であり、前記演算装置が前記ネットワークを介して前記撮影装置から前記画像データを取得する請求項1に記載の読取装置。
【請求項6】
前記特定機能において、セグメント式表示器を含む画像データが入力されると当該セグメント式表示器の表示値を出力するように構成された学習済みモデルを用いて、前記セグメント式表示器の表示値を特定する請求項1に記載の読取装置。
【請求項7】
前記演算装置が、前記画像データと、当該画像データを用いた前記特定機能において特定された前記セグメント式表示器の表示値と、を併せて出力する出力機能をさらに実現可能である請求項1~6のいずれか一項に記載の読取装置。
【請求項8】
セグメント式表示器の表示値を読み取る読取方法であって、
前記セグメント式表示器と、当該セグメント式表示器の周囲に配置される目印と、を含む画像データを取得する撮影工程と、
前記画像データ中の前記目印に基づいて当該画像データを補正する補正工程と、
前記補正工程において補正された前記画像データに基づいて前記セグメント式表示器の表示値を特定する特定工程と、を含む読取方法。
【請求項9】
セグメント式表示器の表示値を読み取る読取プログラムであって、
前記セグメント式表示器と、当該セグメント式表示器の周囲に配置される目印と、を含む画像データ中の前記目印に基づいて当該画像データを補正する補正機能と、
前記補正機能において補正された前記画像データに基づいて前記セグメント式表示器の表示値を特定する特定機能と、をコンピュータに実現させる読取プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取装置、読取方法、および読取プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種の設備の制御盤等において各種の数値等を表示する表示器として、セグメント式表示器が広く使用されている。当該設備の運転を管理する際には、制御盤等のセグメント式表示器に表示される数値を読み取る必要がある。この数値の読み取りについて、自動化が検討されている。
【0003】
たとえば特開2019-144703号公報(特許文献1)には、所定のマスクを用いることで読取精度を向上した読取システムが開示されている。また、特開2018-156169号公報(特許文献2)には、各セグメントに対応する文字認識対象部品間を連結する連結処理を用いて精度を向上した文字認識装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-144703号公報
【特許文献2】特開2018-156169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の自動読み取り技術において、撮影された画像からセグメント式表示器の数値の読み取りに適した画像を生成する補正処理が、精度の向上のために重要である。特許文献1に記載の発明は入力画像からセグメントディスプレイが撮影された部分の候補となる候補画像を抽出する抽出部を備えるが、その精度の向上には演算処理能力の向上を要し限度があった。また、特許文献2ではセグメントディスプレイが撮影された部分の抽出について考慮されていない。これらの事情により、特許文献1および特許文献2の技術では、たとえば撮影装置とセグメント式表示器との相対位置関係が変更されたときに、数値の読み取りに適した画像を生成することが難しく、これによって読取精度が低下するおそれがあった。
【0006】
そこで、撮影装置とセグメント式表示器との相対位置関係にかかわらず高い読取精度を実現できる読取装置、読取方法、および読取プログラムが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る読取装置は、セグメント式表示器の表示値を読み取る読取装置であって、前記セグメント式表示器の周囲に配置される目印と、前記セグメント式表示器および前記目印を含む画像データを取得する撮影装置と、少なくとも一つの演算装置と、を備え、前記演算装置が、前記画像データ中の前記目印に基づいて当該画像データを補正する補正機能と、前記補正機能によって補正された前記画像データに基づいて前記セグメント式表示器の表示値を特定する特定機能と、を実現可能であることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る読取方法は、セグメント式表示器の表示値を読み取る読取方法であって、前記セグメント式表示器と、当該セグメント式表示器の周囲に配置される目印と、を含む画像データを取得する撮影工程と、前記画像データ中の前記目印に基づいて当該画像データを補正する補正工程と、前記補正工程において補正された前記画像データに基づいて前記セグメント式表示器の表示値を特定する特定工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る読取プログラムは、セグメント式表示器の表示値を読み取る読取プログラムであって、前記セグメント式表示器と、当該セグメント式表示器の周囲に配置される目印と、を含む画像データ中の前記目印に基づいて当該画像データを補正する補正機能と、前記補正機能において補正された前記画像データに基づいて前記セグメント式表示器の表示値を特定する特定機能と、をコンピュータに実現させることを特徴とする。
【0010】
これらの構成によれば、目印を手がかりとして画像データを補正するため、撮影装置とセグメント式表示器との相対位置関係にかかわらず数値の読み取りに適した画像を生成しやすい。また、目印を手がかりとするため、補正のための演算処理の増大を防ぎやすい。これによって、読取精度を向上しやすい。
【0011】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0012】
本発明に係る読取装置は、一態様として、前記目印がARマーカーであることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、画像データ中の目印(ARマーカー)に対応する部分を個々に識別できるので、セグメント式表示器の位置を特定しやすい。
【0014】
本発明に係る読取装置は、一態様として、前記撮影装置を支持するとともに、前記撮影装置と前記セグメント式表示器との相対位置関係を規制する支持部材をさらに備えることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、撮影装置とセグメント式表示器との相対位置関係が規制されるので、読取精度を高めやすい。
【0016】
本発明に係る読取装置は、一態様として、前記目印を照明する照明装置をさらに備えることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、セグメント式表示器の設置場所が暗所である場合であっても目印を明瞭に撮影できるので、読取精度を高めやすい。
【0018】
本発明に係る読取装置は、一態様として、前記撮影装置および前記演算装置がネットワークに接続可能であり、前記演算装置が前記ネットワークを介して前記撮影装置から前記画像データを取得することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、セグメント式表示器と異なる場所に演算装置を設置できるので、演算装置の寸法や消費電力などが制約を受けにくい。そのため、高い演算能力を有する演算装置を用いやすい。
【0020】
本発明に係る読取装置は、一態様として、前記特定機能において、セグメント式表示器を含む画像データが入力されると当該セグメント式表示器の表示値を出力するように構成された学習済みモデルを用いて、前記セグメント式表示器の表示値を特定することが好ましい。
【0021】
この構成によれば、読取精度を高めやすい。
【0022】
本発明に係る読取装置は、一態様として、前記演算装置が、前記画像データと、当該画像データを用いた前記特定機能において特定された前記セグメント式表示器の表示値と、を併せて出力する出力機能をさらに実現可能であることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、読取結果の妥当性を検証しやすい。
【0024】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態に係る読取装置の構成および設置状態を示す図である。
図2】実施形態に係る撮影装置の周辺における各構成要素の位置関係を示す図である。
図3】実施形態に係る撮影装置が取得した画像データ(一次画像データ)の一例を示す図である。
図4】実施形態に係る演算装置が補正した画像データ(二次画像データ)の一例を示す図である。
図5】実施形態に係る演算装置が出力した画像データ(表示画像データ)の一例を示す図である。
図6】変形例に係る読取装置の構成および設置状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る読取装置、読取方法、および読取プログラムの実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る読取装置、読取方法、および読取プログラムを、四桁の数字を表示する7セグメント式表示器D(セグメント式表示器の一例である。以下、単に表示器Dと称する。)の表示値を読み取る読取装置1、これを用いる読取方法、および読取装置1に使用される読取プログラム、に適用した例について説明する。
【0027】
本実施形態において読み取り対象とする表示器Dは、制御盤の盤面Pに設けられている。表示器Dは、盤面Pに接続されている計器の指示値や装置の制御値などを表示するものである。なお、本実施形態では三つの表示器D(D1、D2、D3)が設けられている場合を例として説明する。
【0028】
〔読取装置の構成〕
本実施形態に係る読取装置1は、撮影装置2と、支持部材3と、ARマーカー4(目印の一例である。)と、照明装置5と、演算装置6と、を備える(図1図2)。これらの構成要素のうち、撮影装置2、支持部材3、およびARマーカー4は、読み取り対象とする表示器Dと同じ室内に設置されており、演算装置6は他の場所に設置されている。撮影装置2と演算装置6とは、インターネットN(ネットワークの一例である。)を経由して通信可能に構成されている。
【0029】
撮影装置2は、表示器DおよびARマーカー4を撮影してこれらを含む画像データを取得する装置である。撮影装置2として、画像データを撮影および主力できる公知の装置を使用できる。したがって撮影装置2は、レンズ、撮影素子、画像プロセッサ、内蔵メモリ、通信モジュール等の、この種の撮影装置の構成要素として公知の部材を有する。撮影装置2が取得した画像データは、インターネットNを経由して演算装置6に転送される。
【0030】
撮影装置2が赤外光を検出可能であると、暗所において表示器DおよびARマーカー4を撮影しやすい点で好ましい。赤外光を検出可能な撮影装置2は、公知の赤外線カメラや、公知の可視光カメラの赤外線カットフィルタを除去または機能停止したもの、などとして実装されうる。
【0031】
支持部材3は、撮影装置2を支持するとともに、撮影装置2と表示器Dとの相対位置関係を規制する部材である。支持部材3は、撮影装置2を支持する支持枠31と、支持枠31から延びる四本の脚部32と、それぞれの脚部32の先端に装着されている磁石33と、を有する(図2)。
【0032】
本実施形態において、表示器Dは制御盤に設置されており、制御盤の盤面Pは鉄製である。そのため、磁石33の磁力によって、支持部材3を盤面Pに固定できる。このとき、盤面Pと支持枠31に支持される撮影装置2との距離が脚部32の長さによって規制される。これによって、撮影装置2と盤面Pに設けられた表示器Dとの相対位置関係が規制される。
【0033】
ARマーカー4(41~48)は、盤面Pの表示器Dの周囲に配置される。ARマーカー4は、後述する補正機能において演算装置6が画像データを補正する際の手がかりとしての役割を果たすものであり、たとえば表示器Dを囲む長方形の各頂点に一つずつ設けられる。本実施形態では、表示器D1を囲む長方形の頂点にARマーカー41、42、45、46が、表示器D2を囲む長方形の頂点にARマーカー42、43、46、47が、表示器D3を囲む長方形の頂点にARマーカー43、44、47、48が、配置されている。この例のように、一部または全部のARマーカー4が、複数の表示器Dに共通していてもよい。
【0034】
個々のARマーカー4の態様は、所定の図形や模様などでありうる。本実施形態では個々のARマーカー4として、5×5の25ピクセルの各々に白または黒の画素が配置されたものを用いている。それぞれのARマーカー4における白および黒の画素の配置は互いに異なり、それぞれのARマーカー4は当該配置によって特定される識別情報に関連づけられている。なお、個々のARマーカー4は白および黒の画素の配置によって特定されるので、ARマーカー4の大きさは全てのARマーカー4について同一でなくてもよい。この種のARマーカーは、たとえば画像処理ライブラリOpenCVを利用して生成されうる。なお、上記の態様のARマーカーにおいて画素数は限定されない。
【0035】
ARマーカー4を配置する方法は、ARマーカー4と表示器Dとの相対位置関係が固定される限りにおいて限定されない。すなわちARマーカー4は、貼付、係止、描写、塗装、磁着、吸着、投影などの方法によって、盤面Pに配置されうる。
【0036】
照明装置5は、ARマーカー4を照明する照明装置である。照明装置5として公知の照明装置を使用することができ、したがって照明装置5は、LED、豆電球、蛍光灯などでありうる。照明装置5が照射する光は撮影装置2が検出可能な光であればよく、したがって可視光、赤外光、紫外光などから撮影装置2の仕様に基づいて決定される。撮影装置2が赤外光を検出可能である場合は、赤外光を照射する照明装置5を用いると、暗所においてARマーカー4を撮影しやすい点で好ましい。照明装置5は撮影装置2と一体に構成されており、撮影装置2がその撮影範囲に表示器Dを含む姿勢で設置されるときに、照明装置5はその照射範囲にARマーカー4を含む。
【0037】
演算装置6は、後述する諸機能に係る演算処理を行う装置であり、公知のコンピュータであってよく、好ましくはサーバ型コンピュータでありうる。したがって演算装置6は、CPUなどの演算デバイス、液晶ディスプレイなどの出力デバイス、キーボードなどの入力デバイス、通信モジュールなどの通信デバイス、ハードディスクドライブなどの記憶デバイス、などの、コンピュータとして一般的な構成要素を含みうる。本実施形態では、演算装置6がインターネットNに接続されており、演算装置6はインターネットNを介して撮影装置2から画像データを取得する。なお、演算装置6には、本実施形態に係る読取プログラムがインストールされている。
【0038】
〔読取方法〕
本実施形態に係る読取方法は、撮影工程、補正工程、特定工程、および出力工程を含む。このうち、撮影工程は撮影装置2を用いて実行され、補正工程、特定工程、および出力工程は演算装置6の機能によって実行される。
【0039】
(1)撮影工程
撮影工程は、表示器Dを含む画像データを取得する工程である。以下、撮影装置2が取得した画像データを一次画像データG1と称する。
【0040】
本実施形態に係る読取方法は、一次画像データG1に基づいて表示器Dの表示値を特定するものであるから、一次画像データG1に表示器Dが含まれていることが必須である。また、後述するように特定工程では人工知能を用いる画像認識技術によって表示値の特定を行うため、入力データである一次画像データG1の取得条件をできる限り一定とする(一次画像データG1の再現性を高める)ことが、読み取りの精度を向上するために好ましい。以上の事情から、本実施形態に係る読取方法の複数回の実施において、撮影装置2と表示器Dとの相対位置関係ができる限り一定であることが好ましい。本実施形態では、支持部材3を用いて撮影装置2と表示器Dとの相対位置関係を規制するので、一次画像データG1の再現性を高めやすい。
【0041】
一次画像データG1の一例を図3に示す。一次画像データG1は三つの表示器D(D1、D2、D3)を含む。この例のように、一つの一次画像データG1に複数の表示器Dが含まれていてもよい。また、一次画像データG1は、それぞれの表示器Dの周囲に配置されたARマーカー4(41~48)も含む。
【0042】
なお、撮影を行うときに照明装置5による照明を行ってもよい。照明を行うと、表示器Dが設置されている室内の明度が低い場合であっても、明瞭な画像データを得ることができる。特に、撮影装置2が赤外光を検出できるものであり、照明装置5が赤外光を照射するものであると、表示器Dの設置場所が暗い場合であってもARマーカー4を撮影しやすい。
【0043】
撮影装置2が取得した一次画像データG1は、インターネットNを介して演算装置6に転送される。一次画像データG1は、演算装置6の記憶デバイスに格納される。
【0044】
(2)補正工程(補正機能)
本実施形態に係る読取方法の補正工程(演算装置6の補正機能)において、一次画像データG1におけるARマーカー4に基づいて一次画像データG1が補正される。以下、演算装置6によって補正された画像データを二次画像データG2と称する。より詳細には、補正工程によって、三つの表示器D1、D2、D3のそれぞれに対応する三つの二次画像データG2が得られる。
【0045】
演算装置6は、まず、一次画像データG1におけるARマーカー4(41~48)の位置および個体を特定する。具体的には、一次画像データG1に表れているそれぞれのARマーカー4を認識してその位置を特定するとともに、個々のARマーカー4における白および黒の画素の配置基づいて各ARマーカー4の識別情報を特定する。
【0046】
次に、それぞれのARマーカー4(41~48)に基づいて、二次画像データG2として取り出す範囲を特定する。たとえば、表示器D1に対応する四つのARマーカー41、42、45、46の識別情報があらかじめ設定されており、演算装置6は、一次画像データG1のうちこれらの識別情報に対応する四つのARマーカー4によって画定される範囲を、表示器D1の表示値を特定するための二次画像データG2として抽出する。
【0047】
最後に、いわゆる台形補正の手法による補正が実行されて、二次画像データG2が得られる。たとえば表示器D1の表示値を特定するための二次画像データG2は、一次画像データG1において四つのARマーカー41、42、45、46によって画定される範囲を、盤面Pに実際に配置されている四つのARマーカー41、42、45、46を頂点とする長方形の相似形となるように変形することによって得られる(図4)。なお、表示器D3の各表示値を特定するための二次画像データG2も同様の手順で得られる。
【0048】
ただし、補正工程において必ずしも台形補正等の補正が行われなければならないわけではない。本実施形態では、撮影装置2が表示器D2の正面に配置された状態で撮影工程が実施されるので、一次画像データG1において、表示器D1、D3に比して表示器D2は歪みが小さい態様で現れる。そのため、表示器D2の各表示値を特定するための二次画像データG2として、一次画像データG1において四つのARマーカー42、43、46、47によって画定される範囲を単に切り出したものを得てもよい。このような比較的単純な処理によって二次画像データG2が得られる場合も、本発明における「補正」の範疇にある。
【0049】
また、三つの二次画像データG2は、それぞれグレースケール化される。この種の色調補正も本発明における「補正」の範疇にある。
【0050】
演算装置6が生成した三つの二次画像データG2は、演算装置6の記憶デバイスに格納される。
【0051】
(3)特定工程(特定機能)
本実施形態に係る読取方法の特定工程(演算装置6の特定機能)において、二次画像データG2に基づいて表示器Dの表示値が特定される。本実施形態における特定工程では、人工知能を用いる画像認識技術を用いる。なお、補正工程で生成された三つの二次画像データG2のそれぞれについて特定工程が実施される。
【0052】
本実施形態に係る読取方法の実施に先立って、セグメント式表示器を含む画像データが入力されると当該セグメント式表示器の表示値を出力するように構成された学習済みモデルが構築される。かかる学習済みモデルは、たとえば、セグメント式表示器を含む画像データと、当該画像データに含まれるセグメント式表示器の表示値と、の複数の組を教師データとして用いる教師あり学習によって生成される。
【0053】
教師データとして用いられる画像データにおけるセグメント式表示器は、本実施形態に係る読取方法において表示値を読み取る対象とする表示器Dと同一であってもよいし、異なっていてもよい。たとえば、一桁の数字を表示する7セグメント式表示器(表示器Dと異なるものである。)と、これを撮影して画像データを取得する撮影装置と、を用いて画像データを生成できる。この場合、7セグメント式表示器の表示内容(0から9までのいずれかの数字、または無表示)、7セグメント式表示器の表示の明るさ、周囲の明るさ等を変更した種々の条件下で画像データを取得して、教師データとして用いられる画像データ群を生成できる。
【0054】
また、このような装置を用いて得た各画像データに対して、変形(縮尺の変更、歪み加工、回転など)や画像処理(ぼかし、色調変更、解像度変更など)といった編集を加えた画像データを生成し、これを教師データとして用いられる画像データ群に加えてもよい。特に、補正工程において色調補正等が行われる場合は、同様の補正が加えられた画像データを教師データとして用いることが好ましい。本実施形態では、補正工程においてグレースケール化が行われることに対応して、グレースケール化された画像データを教師データとして用いている。
【0055】
学習済みモデルの生成は、Tensolflow(登録商標)やKerasなどの公知の機械学習ライブラリを、単独で、または組み合わせて用いて、行うことができる。この際に使用されるアルゴリズムは、特に限定されない。たとえば、サポートベクタマシン(回帰、分類)、決定木、ランダムフォレスト、勾配ブースティング、ロジスティック回帰、ニューラルネットワーク(単純パーセプトロン、多層パーセプトロン)、ガウス過程回帰、ベイジアンネットワーク、k近傍法、ラッソ回帰、重回帰分析、リッジ回帰、エラスティックネット、部分的最小二乗回帰、などが例示されるが、これらに限定されない。
【0056】
特定工程の実行時には、まず、二次画像データG2において表示器Dの各桁の数字に対応する部分が特定される。本実施形態では表示器Dが四桁の数字を表示するものであるので、四つの部分が特定される。
【0057】
次に、特定された四つの部分のそれぞれについて、学習済みモデルを用いて数値が特定される。二次画像データG2の各桁に対応する部分が学習済みモデルに入力されると、当該部分に表示されている数値が出力される。学習済みモデルによって出力される四つの数字を組み合わせることによって、二次画像データG2における表示器Dの表示値(四桁の数値)が特定される。
【0058】
演算装置6が特定した表示値は、演算装置6の記憶デバイスに格納される。
【0059】
(4)出力工程(出力機能)
本実施形態に係る読取方法の出力工程(演算装置6の出力機能)において、一次画像データG1と、特定工程において特定された表示器Dの表示値と、が併せて出力される。具体的には、一次画像データG1における表示器D1、D2、D3のそれぞれの近傍に、特定工程において特定された表示値を重ねて表示した表示画像データG3が生成される(図5)。表示画像データG3は、演算装置6の出力デバイスや演算装置6にアクセスしたスマートフォン等の端末装置(不図示)などに出力(表示)され、使用者がこれを見ることができる。表示画像データG3において、表示器D1、D2、D3とその表示値が併せて表示されるので、使用者は、表示器D1、D2、D3の各表示値を目視で容易に認識するとともに、その妥当性を検証できる。
【0060】
演算装置6が出力した表示画像データG3は、演算装置6の記憶デバイスに格納される。
【0061】
〔変形例〕
次に、上記の実施形態について、演算装置の構成に係る変形例を説明する。変形例の説明において、上記の実施形態と同様の構成については同じ符号を用いて記載し、説明を省略または簡略化する。
【0062】
変形例に係る読取装置1Aは、演算装置7としてエッジコンピュータ71およびサーバコンピュータ72を備える(図6)。エッジコンピュータ71はインターネットNを介さずに撮影装置2と接続されている。この接続は、有線接続であってもよいし、無線接続(無線LAN、Bluetooth(登録商標)など)であってもよい。エッジコンピュータ71とサーバコンピュータ72とは、インターネットNを介して接続されている。
【0063】
読取装置1Aの機能は上記の実施形態と同様であり、演算装置7は補正機能、特定機能、および出力機能を実現可能である。これらの機能は、演算装置7のうちのエッジコンピュータ71によって実現される。エッジコンピュータ71は、特定機能において特定した表示器Dの表示値(数値データ)を、インターネットNを介してサーバコンピュータ72に送信する。上記の実施形態ではインターネットNを介して一次画像データG1が転送されるが、変形例では表示値(数値データ)のみがサーバコンピュータ72に転送されるので、変形例では上記の実施形態に比べて通信量を抑制できる。なお、この場合は、サーバコンピュータ72にアクセスしたスマートフォン等の端末装置(不図示)などに対して表示値のみが出力される。
【0064】
なお、変形例において、演算装置7の諸機能をエッジコンピュータ71とサーバコンピュータ72とでどのように分担するかは任意である。たとえば、補正機能をエッジコンピュータ71によって実現し、インターネットNを介して二次画像データG2をサーバコンピュータ72に送信し、サーバコンピュータ72において特定機能および出力機能を実現できるようにしてもよい。このように、読取装置が複数の演算装置を備える場合、複数の演算装置間における機能の分担は任意である。また、この場合において、一つまたは複数の機能を複数の演算装置が実現可能であってもよい。たとえば上記の変形例において、エッジコンピュータ71およびサーバコンピュータ72の双方が補正機能を実現可能であれば、演算負荷や通信負荷などの状況に応じて補正機能を実現するコンピュータを切り替えることができる。
【0065】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る読取装置、読取方法、および読取プログラムのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0066】
上記の実施形態では、読取装置1が支持部材3を備える構成を例として説明した。しかし本発明において、支持部材の有無は任意である。
【0067】
上記の実施形態では、読取装置1がARマーカー4(41~48)を備える構成を例として説明した。しかし本発明において、目印の態様はARマーカーに限定されない。
【0068】
上記の実施形態では、読取装置1が照明装置5を備える構成を例として説明した。しかし本発明において、照明装置の有無は任意である。
【0069】
上記の実施形態では、特定機能において学習済みモデルが用いられる構成を例として説明した。しかし本発明に係る特定機能において、セグメント式表示器の表示値を特定する方法は任意である。
【0070】
上記の実施形態では、演算装置6が出力機能を実現可能である構成を例として説明した。しかし本発明において、出力機能の実現可否は任意である。
【0071】
上記の実施形態では、四桁の数字を表示する7セグメント式表示器Dを読み取り対象とする読取装置1を例として説明した。しかし本発明において読み取り対象とするセグメント式表示器の桁数およびセグメント数は限定されない。
【0072】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、たとえば制御盤等に用いられるセグメント式表示器の読み取りに利用できる。
【符号の説明】
【0074】
1 :読取装置
2 :撮影装置
3 :支持部材
31 :支持枠
32 :脚部
33 :磁石
4 :ARマーカー
5 :照明装置
6 :演算装置
G1 :一次画像データ
G2 :二次画像データ
G3 :表示画像データ
P :盤面
N :インターネット
1A :読取装置(変形例)
7 :演算装置(変形例)
71 :エッジコンピュータ(変形例)
72 :サーバコンピュータ(変形例)
D :7セグメント式表示器(表示器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6