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特開2024-171232細胞培養計画作成装置及び細胞培養システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171232
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】細胞培養計画作成装置及び細胞培養システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
C12M1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088197
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 義也
(72)【発明者】
【氏名】中島 千智
(72)【発明者】
【氏名】橋本 拓真
(72)【発明者】
【氏名】八瀬 哲志
(72)【発明者】
【氏名】北島 博史
(72)【発明者】
【氏名】栗栖 崇紀
(72)【発明者】
【氏名】栗田 真嗣
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029BB11
4B029HA09
4B029HA10
(57)【要約】
【課題】例えば後続の実験のために所定量の細胞が必要とされるような場合において、必要とされる量の細胞を培養するための計画を作成する。
【解決手段】細胞培養計画作成装置40において、入力部142が、細胞の培養終了時期及び培養終了時期における目標細胞量の入力を受け付け、計画作成部144が、培養終了時期において目標細胞量が得られるように順次実行される1以上の継代処理についての第1実行指定と、それぞれの継代処理に続いて実行される培養処理についての第2実行指定とを含む細胞培養計画であって、第1実行指定が、継代処理の種類を特定する情報及び継代処理を実行する時期を特定する情報を含む細胞培養計画を作成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の培養終了時期及び前記培養終了時期における目標細胞量の入力を受け付ける入力部と、
前記培養終了時期において前記目標細胞量が得られるように順次実行される1以上の継代処理についての第1実行指定と、それぞれの前記継代処理に続いて実行される培養処理についての第2実行指定とを含む細胞培養計画であって、前記第1実行指定が、前記継代処理の種類を特定する情報及び前記継代処理を実行する時期を特定する情報を含む前記細胞培養計画を作成する計画作成部と、
を含む細胞培養計画作成装置。
【請求項2】
前記細胞培養計画は、さらに、最初の前記継代処理に先行して実行される、前記細胞の解凍処理についての第3実行指定、及び解凍された前記細胞の初期培養処理についての第4実行指定を含み、
前記第3実行指定は、前記解凍処理を実行する時期を特定する情報を含む、
請求項1に記載の細胞培養計画作成装置。
【請求項3】
前記第1実行指定において特定される前記継代処理の種類は、維持継代処理に属する継代処理の種類、及び拡大継代処理に属する継代処理の種類の少なくとも一方を含む、請求項1又は請求項2に記載の細胞培養計画作成装置。
【請求項4】
前記計画作成部は、前記第1実行指定において、前記維持継代処理に属する継代処理の種類及び前記拡大継代処理に属する継代処理の種類の両方を特定する場合は、前記維持継代処理に属する継代処理を実行する時期よりも前記拡大継代処理に属する継代処理を実行する時期の方が遅くなるように、それぞれの前記継代処理を実行する時期を特定する、請求項3に記載の細胞培養計画作成装置。
【請求項5】
前記計画作成部は、さらに、作成した前記細胞培養計画を、前記継代処理を表す第1図形及び前記培養処理を表す第2図形を、前記継代処理及び前記培養処理のそれぞれが実行される順序に従い第1方向に並べて表示器に表示させるための信号として出力する、請求項1又は請求項2に記載の細胞培養計画作成装置。
【請求項6】
前記第2図形は、前記第1方向における時間の経過に従って前記第1方向と直交する第2方向に大きくなる図形である、請求項5に記載の細胞培養計画作成装置。
【請求項7】
細胞の培養終了時期及び前記培養終了時期における目標細胞量の入力を受け付ける入力部と、前記培養終了時期において前記目標細胞量が得られるように順次実行される1以上の継代処理についての第1実行指定と、それぞれの前記継代処理に続いて実行される培養処理についての第2実行指定とを含む細胞培養計画であって、前記第1実行指定が、前記継代処理の種類を特定する情報及び前記継代処理を実行する時期を特定する情報を含む前記細胞培養計画を作成する計画作成部と、を含む細胞培養計画作成装置と、
床上を移動するための機構及び物体を把持するための機構を備えたモバイルマニピュレータ、及びワークベンチに対して固定されており前記ワークベンチ上の物体を把持するための機構を備えたワークベンチロボットを含み、前記細胞培養計画に従い細胞培養実験を実行するロボットシステムと、
を含む細胞培養システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、細胞培養計画作成装置及び細胞培養システムに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞を対象としたアッセイのような実験を行うためには、実験に必要な量の細胞を培養して準備する必要がある。
【0003】
細胞培養の分野における作業計画に関連して、被採取者から採取した細胞を培養し、分離、成長させ幹細胞を形成し、培養細胞又は培養組織を得る細胞培養システムが提案されている。このシステムは、培養細胞を使用する日から培養細胞又は培養組織を出荷する出荷予定日を設定すると、標準培養スケジュールに基づいて、培養完了時期、継代の実施時期、成長因子の投入時期、培養開始時期、分離作業時期、受入検査時期、受入時期の順に各項目について自動的に演算し、該各項目のスケジュールを特定する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-290147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシステムでは、患者から採取した細胞を培養して当該患者に移植する組織を作成することに向けた作業計画を作成するものであり、そこでは癌化等の細胞の異常を監視することや移植組織としての品質を確認することに注意が払われている。しかし、特許文献1には、培養後の細胞量についての言及はなく、必要な量の細胞を培養するための計画を作成することに関する示唆は得られない。
【0006】
本開示は、例えば後続の実験のために所定量の細胞が必要とされるような場合において、必要とされる量の細胞を培養するための計画を作成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示に係る細胞培養計画作成装置は、細胞の培養終了時期及び前記培養終了時期における目標細胞量の入力を受け付ける入力部と、前記培養終了時期において前記目標細胞量が得られるように順次実行される1以上の継代処理についての第1実行指定と、それぞれの前記継代処理に続いて実行される培養処理についての第2実行指定とを含む細胞培養計画であって、前記第1実行指定が、前記継代処理の種類を特定する情報及び前記継代処理を実行する時期を特定する情報を含む前記細胞培養計画を作成する計画作成部と、を含む。
【0008】
また、本開示に係る細胞培養システムは、細胞の培養終了時期及び前記培養終了時期における目標細胞量の入力を受け付ける入力部と、前記培養終了時期において前記目標細胞量が得られるように順次実行される1以上の継代処理についての第1実行指定と、それぞれの前記継代処理に続いて実行される培養処理についての第2実行指定とを含む細胞培養計画であって、前記第1実行指定が、前記継代処理の種類を特定する情報及び前記継代処理を実行する時期を特定する情報を含む前記細胞培養計画を作成する計画作成部と、を含む細胞培養計画作成装置と、床上を移動するための機構及び物体を把持するための機構を備えたモバイルマニピュレータ、及びワークベンチに対して固定されており前記ワークベンチ上の物体を把持するための機構を備えたワークベンチロボットを含み、前記細胞培養計画に従い細胞培養実験を実行するロボットシステムと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る細胞培養計画作成装置及び細胞培養システムによれば、例えば後続の実験のために所定量の細胞が必要とされるような場合において、必要とされる量の細胞を培養するための計画を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】細胞培養計画装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る細胞培養計画装置の機能構成の例を示すブロック図である。
図3】細胞DBの一例を示す図である。
図4】プロトコルデータの一例を示す図である。
図5】第1実施形態に係る細胞培養計画作成処理の流れを示すフローチャートである。
図6】第1事例の細胞培養計画の概略の一例を示す図である。
図7】第1事例の細胞培養計画の表示例を示す図である。
図8】第2図形の他の例を示す図である。
図9】第2事例の細胞培養計画の概略の一例を示す図である。
図10】第2事例の細胞培養計画の表示例を示す図である。
図11】第3事例の細胞培養計画の概略の一例を示す図である。
図12】第3事例の細胞培養計画の表示例を示す図である。
図13】細胞培養システムが稼働する実験環境の一例を示す概略平面図である。
図14】第2実施形態に係る細胞培養システムの概略構成を示すブロック図である。
図15】モバイルマニピュレータの外観斜視図である。
図16】ワークベンチロボットの外観斜視図である。
図17】第2実施形態に係る作業指示装置の機能構成の例を示すブロック図である。
図18】解凍処理の実験定義データの一例を示す図である。
図19】維持継代処理の実験定義データの一例を示す図である。
図20】拡大継代処理の実験定義データの一例を示す図である。
図21】後続実験データの一例を示す図である。
図22】第2実施形態に係る作業指示処理の流れを示すフローチャートである。
図23】統括コントローラによる制御処理の流れを示すフローチャートである。
図24】継代処理の流れを示すフローチャートである。
図25】第2容器への細胞の播種を説明するための図である。
図26】第3実施形態に係る細胞培養システムの概略構成を示すブロック図である。
図27】第3実施形態に係る細胞培養計画装置の機能構成の例を示すブロック図である。
図28】第3実施形態に係る作業指示装置の機能構成の例を示すブロック図である。
図29】第3実施形態に係る細胞培養計画作成処理の流れを示すフローチャートである。
図30】コントローラの構成の他の例を説明するための図である。
図31】コントローラの構成の他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一又は等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法及び比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る細胞培養計画作成装置40のハードウェア構成を示すブロック図である。図1に示すように、細胞培養計画作成装置40は、CPU(Central Processing Unit)41、メモリ42、記憶装置43、入力装置44、出力装置45、記憶媒体読取装置46、及び通信I/F(Interface)47を有する。各構成は、バス48を介して相互に通信可能に接続されている。
【0013】
記憶装置43には、後述する細胞培養計画作成処理を実行するためのプログラムが記憶されている。CPU41は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各構成を制御したりする。すなわち、CPU41は、記憶装置43からプログラムを読み出し、メモリ42を作業領域としてプログラムを実行する。CPU41は、記憶装置43に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。
【0014】
メモリ42は、RAM(Random Access Memory)により構成され、作業領域として一時的にプログラム及びデータを記憶する。記憶装置43は、ROM(Read Only Memory)、及びHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを記憶する。
【0015】
入力装置44は、例えば、キーボードやマウス等の、各種の入力を行うための装置である。出力装置45は、例えば、ディスプレイやプリンタ等の、各種の情報を出力するための装置である。出力装置45として、タッチパネルディスプレイを採用することにより、入力装置44として機能させてもよい。
【0016】
記憶媒体読取装置46は、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、ブルーレイディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の各種記憶媒体に記憶されたデータの読み込みや、記憶媒体に対するデータの書き込み等を行う。通信I/F47は、他の機器と通信するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0017】
次に、細胞培養計画作成装置40の機能構成について説明する。図2は、細胞培養計画作成装置40の機能構成の例を示すブロック図である。図2に示すように、細胞培養計画作成装置40は、細胞DB50、プロトコルDB52、及び表示器54の各々と接続されている。細胞DB50及びプロトコルDB52の各々は、細胞培養計画作成装置40の内部の記憶領域に記憶されてもよいし、細胞培養計画作成装置40とは独立した記憶装置内又はネットワークを経由してアクセス可能な外部の記憶装置内に記憶されてもよい。また、表示器54は、入力装置44の一例であるディスプレイであってもよいし、細胞培養計画作成装置40とは独立して設けられてもよい。
【0018】
細胞DB50は、細胞の増殖速度、及び細胞培養計画においてその細胞に適用される処理を特定する情報が記憶されたデータベースである。図3に、細胞DB50の一例を示す。図3の例では、細胞DB50には、細胞の識別情報である細胞IDと、増殖速度と、処理毎のプロトコルID(詳細は後述)とが記憶されている。
【0019】
図3の例では、細胞IDの記述形式は「CEL-aaa-bb」である。CELは細胞IDであることを表す文字列、aaaは細胞の種類を表す数字、bbは入手経路、変異種等を区別するための数字である。
【0020】
増殖速度は、培養後細胞量を算出するための情報である。細胞量は、例えば、無名数又はセル数で表される細胞数、細胞を含む液体の量を仮定した場合の細胞濃度(例えばセル数/ml)、1つの容器内の細胞数を仮定した場合の容器数等としてよい。本実施形態では、細胞量を「単位」で表す。1単位に相当する細胞数は、維持継代処理(詳細は後述)の際に播種する細胞数を目安にして、ユーザが任意に定義してよい。例えば、1単位=5000個(セル数)等と定義してもよい。
【0021】
処理毎のプロトコルIDとは、細胞に対する各処理に適用されるプロトコルデータ(詳細は後述)の識別情報である。図3の例では、解凍処理、維持継代処理、及び拡大継代処理(詳細は後述)の各処理についてプロトコルIDが記憶されている。図3の例では、プロトコルIDの記述形式は「PRT-kk-ll」である。PRTはプロトコルIDであることを表す文字列である。kkはプロトコルが対応する処理の種類を表す数字であり、例えば、01は解凍処理、02は維持継代処理、03は拡大継代処理等である。llは同種プロトコル内の識別番号である。
【0022】
図3に示すように、同じ細胞IDの細胞に対する同じ種類の処理に、複数のプロトコルIDが対応付けられてもよい。例えば、後述する細胞培養計画の第1事例~第3事例においては、細胞ID「CEL-012-04」の拡大継代処理について、事例毎に拡大継代処理の内容が異なっている。これは、この細胞IDについて少なくとも3種類の拡大継代処理のプロトコルIDが細胞DB50に記憶されており、この中から事例毎に異なる拡大継代処理のプロトコルIDが選択された結果である。
【0023】
プロトコルDB52は、細胞培養計画作成装置40で作成される細胞培養計画に含まれる各種処理の種類に応じた複数のプロトコルデータを記憶したデータベースである。プロトコルデータは、図4に示すように、プロトコルID、処理の種類、対象細胞、処理手順等がテキスト形式で記述されたデータである。なお、図4は、維持継代処理のプロトコルデータの一例である。実際のプロトコルデータでは、試薬や培地の種類、量、播種する容器の種類等も指定される。複数の容器に播種する拡大継代処理のプロトコルデータの場合は、播種する容器の数の情報も含む。
【0024】
また、図2に示すように、細胞培養計画作成装置40は、機能構成として、入力部142と、計画作成部144とを含む。各機能構成は、CPU41が記憶装置43に記憶された細胞培養計画作成プログラムを読み出し、メモリ42に展開して実行することにより実現される。
【0025】
入力部142は、処理対象の細胞の細胞ID、細胞の培養終了時期、及び培養終了時期における目標細胞量の入力を受け付ける。
【0026】
計画作成部144は、培養終了時期において目標細胞量が得られるように順次実行される1以上の継代処理についての第1実行指定と、それぞれの継代処理に続いて実行される培養処理についての第2実行指定とを含む細胞培養計画を作成する。計画作成部144は、第1実行指定として、継代処理の種類を特定する情報及び継代処理を実行する時期を特定する情報を含む細胞培養計画を作成する。
【0027】
ここで、継代処理は、容器内で培養されている細胞の一部を、別の容器内で培養を継続することを目的として、当該別の容器に移す処理である。第1実行指定において特定される継代処理の種類は、維持継代処理に属する継代処理の種類、及び拡大継代処理に属する継代処理の種類の少なくとも一方を含む。
【0028】
維持継代処理は、継代処理を繰り返して細胞を生存させ続ける目的に適合する少量の細胞を、当該継代処理の直前まで培養されていた細胞の中から抽出して新たな培地に播く処理である。2回目以降の維持継代処理では、当該継代処理の直前に行われた細胞培養における初期細胞数と同程度の数の細胞を抽出することが多い。拡大継代処理は、実験に使用できる細胞数を増やすことを目的として、維持継代処理の場合よりも多くの(例えば、2倍以上の)細胞を、当該継代処理の直前まで培養されていた細胞の中から抽出して新たな培地に播く処理である。新たな培地の容器としては、当該継代処理の直前までの培養に使用されていた容器と同じ大きさの複数の容器、又はより大きな1つの容器が用いられることが多い。
【0029】
また、1以上の継代処理についての第1実行指定とは、計画作成部144が、順次実行される複数の継代処理についての第1実行指定を含む細胞培養計画を作成できることを前提とする。さらに、1つだけの継代処理についての第1実行指定を含む細胞培養計画を作成することも可能とするものである。例えば、期限なしに維持継代処理を繰り返して生存させていた細胞に対し、アッセイ前処理のような実験を急遽行うことになった場合に、拡大継代処理を1回だけ行って必要量の細胞をなるべく短期間で培養できる計画を作成する場合等である。
【0030】
具体的には、計画作成部144は、継代処理の種類を特定する情報として、細胞DB50に記憶されたプロトコルIDを特定する。細胞DB50に、拡大継代処理に対して複数のプロトコルIDが記憶されている場合には、計画作成部144は、目標細胞量を実現可能な拡大継代処理のプロトコルを示すプロトコルIDを特定する。この際、計画作成部144は、各プロトコルの内容については、プロトコルDB52を参照する。
【0031】
また、計画作成部144は、継代処理を実行する時期として、継代処理を開始する時期、継代処理の終了期限の時期等を特定する。継代処理の終了期限の時期は、実際に処理が終了するのは期限より少し前であることが想定される。また、計画作成部144は、継代処理を実行する時期を間接的に特定することができる、継代処理の直前の培養処理を終了する時期又は継代処理の直後の培養処理を開始する時期を、継代処理を実行する時期として特定してもよい。なお、時期の表現は、日時の他、基準となる日時との間の相対時間(例えば、基準となる日時からの経過時間)でもよい。
【0032】
計画作成部144は、第1実行指定において、維持継代処理に属する継代処理の種類及び拡大継代処理に属する継代処理の種類の両方を特定してもよい。この場合、計画作成部144は、維持継代処理に属する継代処理を実行する時期よりも拡大継代処理に属する継代処理を実行する時期の方が遅くなるように、それぞれの継代処理を実行する時期を特定する。
【0033】
さらに、計画作成部144は、最初の継代処理に先行して実行される、細胞の解凍処理及び解凍された細胞の初期培養処理についての第3実行指定を含む細胞培養計画を作成してもよい。第3実行指定は、解凍処理を実行する時期を特定する情報を含む。なお、解凍処理の種類を特定する情報(プロトコルID)は、多くの細胞の種類に対して共通化できる可能性があるため、個別に指定することを必須としない。ただし、解凍処理についての第3実行指定に、解凍処理の種類を特定する情報を含めてもよい。
【0034】
また、計画作成部144は、作成した細胞培養計画について、継代処理を表す第1図形及び培養処理を表す第2図形を、継代処理及び培養処理のそれぞれが実行される順序に従い第1方向に並べて表示器54に表示させるための信号を出力する。計画作成部144は、第2図形を、第1方向における時間の経過に従って第1方向と直交する第2方向に大きくなる図形としてもよい。第2図形は、特に培養の開始時期と終了時期とにおける第2方向の長さがそれぞれの時期の細胞量に概略対応するようにすれば、細胞量の増加の状況が直感的に分かり易くなる。
【0035】
次に、第1実施形態に係る細胞培養計画作成装置40の作用について説明する。図5は、細胞培養計画作成装置40のCPU41により実行される細胞培養計画作成処理の流れを示すフローチャートである。
【0036】
ステップS10で、入力部142が、処理対象の細胞の細胞ID、培養終了時期、及び目標細胞量の入力を受け付け、計画作成部144へ受け渡す。
【0037】
次に、ステップS12で、計画作成部144が、培養終了時期と培養開始時期との差から、培養計画の全体期間を算出する。培養開始時期は、例えば、現在時刻、別途指定された処理開始時期等としてよい。
【0038】
次に、ステップS14で、計画作成部144が、目標細胞量を得ることができる拡大継代処理及びそれに続く培養処理の計画を作成する。具体的には、計画作成部144は、細胞DB50及びプロトコルDB52を参照して、拡大継代処理の種類及びそれに続く培養処理の種類を特定する。拡大継代処理の種類を特定する情報は、プロトコルIDである。拡大継代処理のプロトコルデータは、播種する容器の種類及び数の情報を含むものとする。また、容器の種類が特定されると容器の大きさも特定されるものとする。すなわち、容器の形状類型や材質だけでなく、容器の大きさも容器の種類を異ならせる要素である。計画作成部144は、目標細胞量を得るために必要であれば、拡大継代処理及び培養処理を複数回行うように計画する。また、計画作成部144は、拡大継代処理の種類及び培養処理の種類の組み合わせを、予め用意された組み合わせパターン集の中から選んでもよいし、都度計算によって作り出してもよい。
【0039】
次に、ステップS16で、計画作成部144が、培養開始時期と最初の拡大継代処理の間の期間において、解凍処理及び初期培養処理と、適宜回数の維持継代処理及びそれに続く培養処理とを行うように計画する。すでに継続的に継代処理が繰り返されている細胞を対象にする場合は、解凍処理及び初期培養処理は不要である。
【0040】
次に、ステップS18で、計画作成部144が、作成した細胞培養計画を表示器54に表示し、ユーザによる承認又は修正を求める。計画作成部144は、ユーザによる修正指示を受け付けた場合には、修正指示に従い細胞培養計画を修正する。計画作成部144は、ユーザによる承認を受け付けると、細胞培養計画を確定し、細胞培養計画作成処理は終了する。
【0041】
ここで、第1実施形態に係る細胞培養計画作成装置40による細胞培養計画の作成に関する事例として、以下の第1事例~第3事例について説明する。まず、各事例に共通の事項について説明する。
【0042】
以下の各事例における継代処理では、直前の培養後の細胞量の1/2以内を播種に用いることにする。すなわち、最大継代利用率を0.5とする。そうすると、培養後の細胞量が予定したほど増えていない場合があったとしてもその後の処理を行うことができる。したがって、細胞量1単位を播種する維持継代処理は、直前の培養処理における培養後細胞量が2単位を超えたところで実行してよいが、拡大継代処理への移行を急がない場合には、培養後細胞量が例えば4単位を超えるのを待って実行してもよい。この場合、維持継代処理回数を削減できるため、その分、ワークベンチのような実験設備を他の実験のために利用することができる。後述の第1事例及び第3事例では、培養後細胞量が4単位を超えるのを待って維持継代処理をするように計画している。最大継代利用率は、0.5に限らず、適宜の値をユーザが指定できるようにしてもよい。
【0043】
また、以下の各事例では、最終回の培養後における他の実験のための細胞利用率を最大継代利用率と同じ0.5とした。したがって、最終回の培養後の利用可能細胞量を8単位とする場合、培養後細胞量は16単位以上が必要である。最終回の培養後の細胞利用率は、ユーザが別の値を指定できるようにしてもよい。
【0044】
また、以下の各事例では、維持継代処理における1容器当たりの播種細胞量を1単位としたが、ユーザが別の値を指定できるようにしてもよい。
【0045】
(第1事例)
第1例では、全体期間を15日間、目標細胞量を8単位とする。
【0046】
培養後細胞量は次の式により求められる。
培養後細胞量=培養前細胞量×μ
ここで、μは増殖速度、tは培養期間である。例えば、μ=1.6、培養前細胞量=1単位の場合、培養期間毎の培養後細胞量は以下のようになる。
【0047】
【表1】
【0048】
なお、上記の例では、増殖速度μとして1日当たりの倍数を用いたが、1時間当たりの倍数を用い、培養期間を1日単位ではなく1時間単位で決めるようにしてもよい。その場合、夜間など人の勤務がない時間帯、手薄になる時間帯等に継代処理を行う場合もあるが、継代処理をロボットシステムにより全自動で行う場合(第2及び第3実施形態参照)には問題ない。
【0049】
1つの容器から細胞を抽出して2つの容器に1単位ずつ播種する拡大継代処理と、播種された1単位の細胞を3日間で4.1単位に増殖させる培養処理との組み合わせを2段階繰り返す。これにより、16.4単位の培養後細胞を得、その中から8単位の利用可能細胞を得る計画とする。この拡大継代処理と培養処理とに6日間を要する。
【0050】
残りの9日間で、まず解凍処理とその後の3日間の初期培養処理を行い、その後、維持継代処理とその後の3日間の培養処理との組み合わせを2回行う計画とする。もし残り期間が9日間以外であれば、残りの期間に合うように、維持継代処理とその後の培養処理との組み合わせの回数や培養期間を適宜調整すればよい。
【0051】
図6に、第1事例の細胞培養計画の概略の一例を示す。図6の例では、継代処理の計画が、播種容器サイズ、播種容器数、1容器当たりの播種細胞量、合計播種細胞量、及び継代種類により特定されている。また、継代処理に続く培養処理の計画が、培養期間、培養後細胞量、及び利用可能細胞量により特定されている。また、培養期間の合計である合計期間(全体期間と同一)も特定されている。細胞培養計画には、図6の情報に加え、処理対象の細胞の細胞ID、計画作成部144が特定した各処理についてのプロトコルID、及び培養終了時期も含まれる。培養開始時期又は培養終了時期と、各培養処理の培養期間とに基づいて、各継代処理の開始時期が特定される。
【0052】
図6の例では、作成された計画中で容器サイズを示したが、これに代えて又は追加して、プロトコルデータにおいて指定される容器の種類を示してもよい。ここでは、表示上の分かり易さを重視して、容器サイズを示している。なお、容器サイズは、1つの容器で培養後に1単位抽出できるように培養する場合は「小」(2単位程度まで増殖してもコンフルエントにならない大きさ)、1つの容器で培養後に2単位抽出できるように培養する場合は「中」(4単位程度まで増殖してもコンフルエントにならない大きさ)、1つの容器で培養後に3単位抽出できるように培養する場合は「大」(6単位程度まで増殖してもコンフルエントにならない大きさ)という考え方で選択されている。
【0053】
図7に、第1事例の細胞培養計画の表示例を示す。網掛の図形は継代処理を表す第1図形、横向きの台形の図形は培養処理を表す第2図形である。また、横方向が第1方向、縦方向が第2方向の一例である。第1方向は、時間経過に対応しており、各処理に対応する図形が処理順(左から右へ時系列)に並ぶと共に、各処理に対応する図形の横幅は、その処理に要する期間に対応している。また、第2方向は、細胞量の増減を表している。以下の図10及び図12においても同様である。なお、図7の例では、培養処理を示す第2図形は、細胞量が線型的に増加することを表す図形となっているが、図8に示すように、指数関数を模した曲線により、細胞量が指数関数的に増加することを表すようにしてもよい。
【0054】
(第2事例)
細胞の解凍後は、細胞の死亡率が高くなる等、細胞の状態が不安定である場合があるため、数回の維持継代処理と培養処理とを行うことにより細胞の状態を安定させることが好ましい。しかし、短期間で必要な細胞量まで増殖させることの方を優先させたい場合もある。第2事例は、全体期間の短縮を優先させた例である。目標細胞量は第1事例の場合と同じく8単位であるが、全体期間は第1事例の場合より短く10日間とする。図9に、第2事例の細胞培養計画の概略の一例、図10に、第2事例の細胞培養計画の表示例を示す。
【0055】
1つの容器から細胞を抽出して3つの容器に1単位ずつ播種する拡大継代処理と、播種された1単位の細胞を4日間で6.6単位に増殖させる培養処理との組み合わせを1回行う。これにより、19.8単位の培養後細胞を得、その中から9単位の利用可能細胞を得る計画とする。なお、目標細胞量は8単位であるため、それ以上の9単位の細胞量が得られても問題ない。この拡大継代処理と培養処理とに4日間を要する。
【0056】
残りの6日間で、まず解凍処理とその後の初期培養処理を行い、その後、維持継代処理と培養処理との組み合わせを1回行う計画とする。残り期間が6日間と短いため、第1事例の場合と比較して、初期培養処理を3日間から2日間に短縮し、維持継代処理とその後の培養処理も2回から1回に削減している。ただし、拡大継代処理を行う時点での利用可能細胞量として3単位を得るために、維持継代処理後の培養処理の期間は3日間ではなく4日間としている。
【0057】
仮に、目標細胞量8単位を最短期間で得ることができる細胞培養計画が第2事例であるとした場合、全体期間が10日間未満であれば、細胞培養計画作成装置40はより多くの凍結細胞を解凍処理して同時に培養される細胞量を多くする計画を提案してもよい。
【0058】
(第3事例)
第3事例は、第1事例と同様に、全体期間15日間、目標細胞量8単位とし、第1事例の拡大継代処理を、1つの容器に2単位播種する処理に置き替えた計画である。図11に、第3事例の細胞培養計画の概略の一例、図12に、第2事例の細胞培養計画の表示例を示す。
【0059】
第1事例では容器サイズは全て「小」で実施できたが、第3事例の拡大継代処理後においては、サイズ「大」の容器を使用する必要がある。このように、同じ細胞量を得るための細胞培養計画であっても、複数の異なる計画を作成できる場合があり、実際にどの計画を採用するかはユーザが諸般の事情を考慮して選択してよい。また、例えば、なるべくサイズ「小」の容器を用いる、のようなユーザからの事前の要望を受け付けておいて、要望に合う計画を提示するようにしてもよい。
【0060】
以上、第1実施形態に係る細胞培養計画作成装置によれば、例えば後続の実験のために所定量の細胞が必要とされるような場合において、必要とされる量の細胞を培養するための計画を作成することができる。
【0061】
<第2実施形態>
第2実施形態では、細胞培養計画作成装置で作成された細胞培養計画に従って、ロボットシステムにより細胞培養の処理を実行する場合について説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の部分については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0062】
第2実施形態に係る細胞培養システムは、研究員が利用する実験環境と同等の環境において、細胞を扱う実験を自動化するシステムを想定している。なお、本実施形態における「実験」は、細胞等の対象に対する操作又は処理の結果を知ることを目的とするものに限らず、対象に対する操作又は処理をするだけで、その結果は調べない場合を含む。例えば、細胞の解凍処理、継代処理、培養処理等のことも実験とよぶ。
【0063】
研究員が利用する実験環境の典型例としては、実験作業の多くの部分を行うワークベンチが設置されると共に、細胞観察装置、細胞計測装置、遠心分離機等が、ワークベンチから離れた場所に設置されている環境が挙げられる。研究員が実験作業を行う場合、研究員は、実験作業をワークベンチで行う一方、実験作業の途中で必要に応じて、ワークベンチと細胞観察装置、細胞計測装置、又は遠心分離機との間を、試料容器を持って歩いて移動して、それらの装置を使用する。
【0064】
本実施形態に係る細胞培養システムは、上記の、研究員が利用する実験環境の典型例と同様の環境において稼働する。図13は、本実施形態に係る細胞培養システムが稼働する実験環境の一例を示す概略平面図である。図13の例では、上述した細胞観察装置、細胞計測装置、遠心分離機、ワークベンチに加え、薬品棚、インキュベータ、冷蔵庫、消耗品棚、充電ステーション、流し、椅子等の実験設備が実験環境に含まれている。なお、図13における顕微鏡は、上述した細胞観察装置及び細胞計測装置の一例である。
【0065】
図14に示すように、第2実施形態に係る細胞培養システム200は、細胞培養計画作成装置40と、ロボットシステム210とを含む。
【0066】
細胞培養計画作成装置40は、第1実施形態の細胞培養計画作成装置40と同様である。第2実施形態においても、細胞培養計画作成装置40は、細胞DB50、プロトコルDB52、及び表示器54の各々と接続されている。
【0067】
ロボットシステム210は、モバイルマニピュレータ10と、ワークベンチロボット20と、統括コントローラ30と、作業指示装置260とを含む。作業指示装置260は、実験定義DB256、プロトコルDB52、及び保管場所DB258の各々と接続されている。プロトコルDB52は、細胞培養計画作成装置40と共用である。なお、図14の例では、モバイルマニピュレータ10が2台、ワークベンチロボット20が2台の例を示しているが、これに限定されない。モバイルマニピュレータ10及びワークベンチロボット20は、それぞれ1台でもよいし、3台以上であってもよい。
【0068】
モバイルマニピュレータ10は、ローカルコントローラ21と、床上を移動するための移動機構と、物体を把持するための把持機構とを備える。図15に、モバイルマニピュレータ10の外観斜視図を示す。図15に示すように、モバイルマニピュレータ10は、台車12と、ロボットアーム13とを備える。
【0069】
台車12は、移動機構の一例であり、ローカルコントローラ11による制御で駆動される2つの駆動輪12Aを有する。さらに、台車12は、図15で手前側の底面に方向の自在に変わるキャスターを有する。2つの駆動輪12Aは互いに独立に駆動されるため、台車12は、研究員と同様に床上を自由に移動することができる。移動機構は、2つの独立駆動輪に限らず、床上を移動することができる任意の機構であってよく、旋回を含む移動の態様についての制約が少ない機構であることが好ましい。ロボットアーム13は、把持機構の一例であり、台車12上に搭載されている。ロボットアーム13は、アーム13Aと、アーム13Aの先端に取り付けられたハンド13Bとを有する。アーム13Aは、3次元空間において、ハンド13Bの位置及び姿勢を、例えば6自由度で変位させるための構成を備えた垂直多関節型のアームとしてよい。ハンド13Bは、容器等を把持可能な、例えば2指のロボットハンドである。なお、図15では、モバイルマニピュレータ10は、1つのロボットアーム13を備える例を示しているが、ロボットアーム13を2本備えた双腕としてもよい。
【0070】
モバイルマニピュレータ10は、アーム13Aのハンド13Bに近い箇所に図示しないビジョンセンサを有する。ビジョンセンサは、モバイルマニピュレータ10周辺の物体、及びハンド13Bで把持する容器等の把持対象物を認識するためのセンサである。ビジョンセンサは、カメラ及び画像処理装置を含んで構成され、カメラにより撮影した画像を画像処理装置で画像処理することにより、周辺の物体及び把持対象物を認識する。これによりモバイルマニピュレータ10の自律的な移動が可能となる。なお、周辺の物体及び把持対象物を認識するためのセンサはビジョンセンサに限定されず、周辺の各点の3次元位置を計測可能なレーザレーダ等を用いてもよい。また、周辺の物体を認識するためのセンサは、台車12に搭載されてもよい。
【0071】
ローカルコントローラ11は、統括コントローラ30の指示を実現できるように、モバイルマニピュレータ10の各モータの動作を制御する。具体的には、ローカルコントローラ11は、ビジョンセンサから出力される認識結果、統括コントローラ30からの指示等に基づいて、モバイルマニピュレータ10の動作を制御する。より具体的には、ローカルコントローラ11は、ハンド13Bで容器等の把持対象物を把持し、把持した把持対象物をワークベンチ等の所定位置へ搬送するように、モバイルマニピュレータ10の動作を制御する。
【0072】
ワークベンチロボット20は、ワークベンチに対して固定されており、ローカルコントローラ21と、ワークベンチ上の物体を把持するための把持機構とを備える。ワークベンチロボット20による把持対象物は、容器の他に、容器内の細胞等の吸引、及び容器内への細胞等の吐出を行うためのアスピレータ、電動ピペッター、電動マイクロピペット等を含む。図16に、ワークベンチロボット20の外観斜視図を示す。図16に示すように、ワークベンチロボット20は、2本のロボットアーム22と、ビジョンセンサ23とを備える。
【0073】
ロボットアーム22は、把持機構の一例であり、アーム22Aと、アーム22Aの先端に取り付けられたハンド22Bとを有する。アーム22Aは、3次元空間において、ハンド22Bの位置及び姿勢を、例えば6自由度で変位させるための構成を備えた垂直多関節型のアームとしてよい。ハンド22Bは、容器等を把持可能な、例えば、各指が関節を有する3指のロボットハンドである。
【0074】
図16の下部に、ハンド22Bを拡大した概略図を示す。この概略図では、ハンド22Bの各指の関節の図示を省略すると共に、各指の形状及び配置を簡略化して図示している。ハンド22Bは、第1指22B1を含む指の第1グループと、第2指22B2及び第3指22B3を含む指の第2グループとを備え、第1グループと第2グループとは互いに対向して間に物体を把持できる構造である。人の指との対応としては、第1指22B1は親指、第2指22B2は人差し指、第3指22B3は中指の働きをする。なお、ハンド22Bは、4指以上のロボットハンドでもよい。すなわち、第1グループは第1指22B1以外の指を含んでもよく、第2グループは第2指22B2及び第3指22B3以外の指を含んでもよい。また、ハンド22Bの各指は、途中に2つの関節を有することが好ましい。これにより、物体の外形を包むような安定した把持が可能となり、また、実験器具のボタンを押す等の細かな操作も容易になる。
【0075】
以下では、2本のロボットアーム22のハンド22Bについて、左手と右手とを区別して説明する場合には、左手をハンド22BL、右手をハンド22BRと表記する。ハンド22Bの指についても同様に、左手のハンド22BLの指を第1指22B1L、第2指22B2L、第3指22B3L、右手のハンド22BRの指を第1指22B1R、第2指22B2R、第3指22B3Rと表記する。
【0076】
ビジョンセンサ23は、パンチルト台に搭載されており、ワークベンチ上に配置された容器等の把持対象物を認識するためのセンサである。
【0077】
ローカルコントローラ21は、統括コントローラ30の指示を実現できるように、ワークベンチロボット20の各モータの動作を制御する。具体的には、ローカルコントローラ21は、ビジョンセンサ23から出力される認識結果、統括コントローラ30からの指示等に基づいて、ワークベンチロボット20の動作を制御する。より具体的には、ローカルコントローラ21は、2本のロボットアーム22が協調して細胞を扱う実験処理を実行するように、ワークベンチロボット20の動作を制御する。例えば、ローカルコントローラ21は、一方のロボットアーム22のハンド22Bで容器を把持し、他方のロボットアーム22のハンド22Bでピペットを把持して、容器内の液体を吸引する等の処理を実行するように、ワークベンチロボット20の動作を制御する。
【0078】
なお、図16では、ワークベンチロボット20が直接ワークベンチに固定されている例を示しているが、ワークベンチロボット20は、ワークベンチとの相対位置関係が固定されていればよく、例えば、床、壁、天井等に固定されていてもよい。
【0079】
統括コントローラ30は、作業指示装置260からの作業指示に基づいて、モバイルマニピュレータ10のローカルコントローラ11、及びワークベンチロボット20のローカルコントローラ21と連携して、モバイルマニピュレータ10及びワークベンチロボット20の各々の動作を制御する。具体的には、統括コントローラ30は、モバイルマニピュレータ10及びワークベンチロボット20に、ワークベンチと他の実験設備との間における、細胞を収めた容器の搬送及び設置を含む実験を実行させる。
【0080】
モバイルマニピュレータ10による把持動作、実験設備に対する操作は、ローカルコントローラ11が、予めティーチングされた動作計画を、ビジョンセンサから出力される認識結果に基づいてモバイルマニピュレータ10に実行させることにより実現される。ワークベンチロボット20による把持動作、実験設備に対する操作についても同様である。
【0081】
また、モバイルマニピュレータ10の移動は、ローカルコントローラ11が、予め保持する実験環境のレイアウト図に基づいて、統括コントローラ30から指示された実験設備の位置へモバイルマニピュレータ10を移動させることにより実現される。なお、ローカルコントローラ11は、ビジョンセンサから出力される認識結果に基づいて、障害物を回避しながら目的の位置へ移動するように、モバイルマニピュレータ10を移動させる。
【0082】
なお、統括コントローラ30、モバイルマニピュレータ10のローカルコントローラ11、ワークベンチロボット20のローカルコントローラ21、及び作業指示装置260のハードウェア構成は、図1に示す細胞培養計画作成装置40のハードウェア構成と概ね同様であるため、説明を省略する。
【0083】
次に、作業指示装置260の機能構成について説明する。図17は、作業指示装置260の機能構成の例を示すブロック図である。図17に示すように、作業指示装置260は、機能構成として、実験定義データ作成部262と、指示作成部264と、後続実験データ作成部266とを含む。各機能構成は、CPUが記憶装置に記憶された作業指示プログラムを読み出し、メモリに展開して実行することにより実現される。
【0084】
実験定義データ作成部262は、細胞培養計画作成装置40から、準備搬送情報及び細胞培養計画を取得する。準備搬送情報は、実験の対象とする細胞を保管場所から取り出すために必要な情報である。例えば、細胞培養計画が解凍処理から始まる場合、準備搬送情報には、解凍処理の対象となる容器の識別情報である容器ID、容器の保管場所の識別情報である容器保管場所ID等が含まれる。また例えば、細胞が既にインキュベータ内で培養されている場合は、準備搬送情報には、最初の継代処理の対象とする容器の容器ID、容器保管場所ID等が含まれる。準備搬送情報は、ユーザから入力される情報を細胞培養計画作成装置40の入力部142が受け付けるようにすればよい。
【0085】
細胞培養計画には、第1実施形態で説明したように、継代処理についての第1実行指定、及び培養処理についての第2実行指定が含まれる。また、必要に応じて、解凍処理についての第3実行指定が含まれる。第1実行指定には、継代処理の種類を特定する情報(プロトコルID)、及び継代処理を実行する時期を特定する情報(開始日時等)が含まれる。また、細胞培養計画には、処理対象の細胞の細胞ID及び細胞ID枝番が含まれる。
【0086】
実験定義データ作成部262は、取得した情報に基づいて、例えば、図18図20に示すような実験定義データを作成する。図18は、解凍処理の実験定義データ、図19は、維持継代処理の実験定義データ、図20は、拡大継代処理の実験定義データである。
【0087】
具体的には、実験定義データ作成部262は、各処理(実験)に対して、実験の識別番号である実験IDを付与すると共に、準備搬送情報及び細胞培養計画に含まれる情報に基づいて、実験定義データの各項目の情報を作成する。各IDは、予め定めたルールに基づき自動で付与してもよいし、手動による各IDの入力又は修正を受け付けてもよい。
【0088】
細胞ID枝番の記述形式は「-n-o-p-・・・」である。細胞を多数の容器に分割した内の何番目の容器の細胞であるかを、拡大継代処理において複数の容器に細胞を分割する都度、n、o、p、・・・の順に追加することで、細胞ID枝番を更新する。図18の例では、n=14であることを表しており、これは、解凍処理の対象の細胞が、凍結前に細胞を多数の容器に分割した内の14番目の容器の細胞であることを示している。
【0089】
実験前の継代済み回数の記述形式は「m」である。mは維持継代、拡大継代を問わず継代処理をするとインクリメントされる。図18では、解凍処理後の継代済み回数を示しているが、凍結前に継代処理を行った場合にその継代処理の回数を含めてもよい。
【0090】
また、容器IDの記述形式は「CTN-cc-dd-eeeee」である。CTNは容器IDであることを表す文字列、ccは容器の種類の大分類を表す数字であり、例えば、01はコニカルチューブ、02は角型フラスコ等である。ddは容器の種類の小分類を表す数字であり、例えば、容器の製品型番と紐付けられた数字等である。eeeeは容器の個体番号である。容器IDは、バーコードのような光学読み取り可能なコード、RFID(radio frequency identification)タグなどを容器に付しておき、これを読み取ることにより取得してもよい。また、容器IDを特定した容器の位置を追跡して、容器の現在位置から容器IDを取得するようにしてもよい。
【0091】
容器保管場所IDの記述形式は「PLA-ff-gg-hh-ii-jj」である。PLAは容器保管場所IDであることを表す文字列、ffは保管場所の種類を表す数字であり、例えば、01は冷蔵庫、02はインキュベータ、03は保管棚、04はテーブル等である。ggは同種の保管場所を識別する番号であり、例えば、03は3号機(ffが01冷蔵庫であれば冷蔵庫の3号機)等である。hhは容器ラックが置かれる保管場所内の区域を表す数字、容器ラックを用いない場合は容器が置かれる保管場所内の区域を表す数字であり、例えば、棚の番号である。iiは容器ラックが置かれる区域内の位置を表す数字、容器ラックを用いない場合は容器が置かれる区域内の位置を表す数字であり、例えば、棚の上の位置を表す数字である。jjは容器ラック内の容器の位置を表す数字であり、容器ラックを用いない場合は、例えば、00である。
【0092】
保管場所DB258には、容器保管場所IDと保管場所の位置とを対応付けた保管場所データが記憶される。保管場所の位置は、保管場所である冷蔵庫、インキュベータ、保管棚、テーブルのような設備の位置と、設備内における位置との組み合わせで表される。設備の位置は、例えば、設備が置かれた部屋に設定された座標によって表される。設備内における位置は、例えば、各設備内に設定された座標によって表される。保管場所DB258の物理的所在は、上述の実験定義DB256が記憶されるのと同じ記憶装置内でもよいし、別の記憶装置内でもよい。例えば、統括コントローラ30内の記憶装置に記憶されていてもよい。統括コントローラ30内に保管場所DB258がない場合、統括コントローラ30は、作業指示装置260を経由して保管場所DBから保管場所データを取得してもよいし、作業指示装置260を経由することなく、例えば、無線通信を介して保管場所DB258の記憶場所から直接保管場所データを取得してもよい。
【0093】
実験後の容器ID及び実験後の容器保管場所IDは、細胞培養計画に含まれていてもよいし、別途ユーザからの入力を受け付けるようにしてもよいし、予め定めたルールで特定するようにしてもよい。また、図18図20では、実験後の培養時間を71時間としているが、これは、培養期間の3日間(72時間)のうち、継代処理に要する時間を1時間と見積もって、培養時間は71時間としているものである。
【0094】
指示作成部264は、モバイルマニピュレータ10の動作を制御するコントローラに対する準備搬送指示、及びワークベンチロボット20の動作を制御するコントローラに対するワークベンチ実験指示等の作業指示を作成する。ここにいう「コントローラ」は、作業指示装置260から作業指示が与えられるコントローラのことであるから、図14の実施形態においては統括コントローラ30が該当する。モバイルマニピュレータ10の動作は、統括コントローラ30及びローカルコントローラ11により階層的に制御されるので、統括コントローラ30もモバイルマニピュレータ10の動作を制御するコントローラに該当する。また、ワークベンチロボット20の動作は、統括コントローラ30及びローカルコントローラ21により階層的に制御されるので、統括コントローラ30もワークベンチロボット20の動作を制御するコントローラに該当する。
【0095】
準備搬送指示は、準備搬送情報に基づいて作成する、実験の対象とする細胞を第1保管場所から取り出してワークベンチに搬送するための作業指示である。例えば、準備搬送指示は、モバイルマニピュレータ10の移動に関する指示、及びモバイルマニピュレータ10の操作に関する指示を含む。モバイルマニピュレータ10の移動に関する指示は、例えば、移動先の位置の情報を含む。モバイルマニピュレータ10の操作に関する指示は、例えば、対象物を把持するための情報、把持した対象物を載置するための情報を含む。対象物を把持するための情報は、例えば、把持の対象物が容器である場合の、容器を特定する情報、容器の場所を特定する情報を含む。対象物を載置するための情報は、例えば、対象物を載置するワークベンチ上の位置の情報を含む。
【0096】
ワークベンチ実験指示は、ワークベンチ実験特定情報に基づいて作成する、搬送された細胞に対する実験を実行するための作業指示である。
【0097】
また、指示作成部264は、作業指示として、モバイルマニピュレータ10の動作を制御するコントローラに対する保管搬送指示を作成してもよい。保管搬送指示は、保管搬送情報に基づいて作成する、ワークベンチにおける実験が行われた後の細胞を第2保管場所に搬送するための指示である。ここにいう「コントローラ」は、作業指示装置260から保管搬送指示が与えられるコントローラのことであるから、図14の実施形態においては統括コントローラ30が該当する。モバイルマニピュレータ10の動作は、統括コントローラ30及びローカルコントローラ11により階層的に制御されるので、統括コントローラ30もモバイルマニピュレータ10の動作を制御するコントローラに該当する。
【0098】
後続実験データ作成部266は、後続実験において利用するための、細胞を収納した容器を特定するデータ又は細胞を収納した容器を保管する第2保管場所を特定するデータを含む後続実験のためのデータ(以下、「後続実験データ」という)を作成する。図21に、後続実験データの一例を示す。
【0099】
後続実験データには、細胞を収納した容器を特定するデータ、及び細胞を収納した容器を保管する第2保管場所を特定するデータの両方を含めてもよいし、何れか一方のデータを含めてもよい。第2保管場所のデータを含めない場合には、容器を特定するデータから第2保管場所を特定できるような管理する。例えば、容器を第2保管場所に受け入れた時点で、別途用意された保管場所を管理するシステムに、どの保管場所にどの容器を受け入れたかを登録してもよい。これにより、後続実験を行う際に、容器を特定する情報から、その容器の保管場所を検索することができる。
【0100】
また、実験後の細胞を収納した容器は、モバイルマニピュレータ10によって搬送せず、ワークベンチロボット20の手が届く範囲の第2保管場所に置いて後続実験に供してもよい。この場合、同じワークベンチで後続実験を行うのであれば、後続実験においてモバイルマニピュレータ10による準備搬送を行う必要はない。
【0101】
次に、第2実施形態に係る細胞培養システム200の作用について説明する。
【0102】
細胞培養計画作成装置40が、図5に示す細胞培養計画作成処理を実行すると共に、搬送準備情報を受け付ける。そして、細胞培養計画作成装置40が、搬送準備情報及び細胞培養計画を作業指示装置260へ送信する。
【0103】
作業指示装置260は、図22に示す作業指示処理を実行する。
【0104】
ステップS20で、実験定義データ作成部262が、細胞培養計画作成装置40から送信された搬送準備情報及び細胞培養計画を取得し、取得した搬送準備情報及び細胞培養計画に基づいて、各処理の実験定義データを作成し、実験定義DB256に記憶する。
【0105】
次に、ステップS22で、指示作成部264が、実験定義DB256に記憶された実験定義データに含まれるプロトコルIDで特定されるプロトコルデータをプロトコルDB52から取得し、プロトコルデータに基づいて、各処理の作業指示を作成する。指示作成部264は、実験定義データに含まれる開始日時にあわせて、作成した作業指示を統括コントローラ30に送信することにより、統括コントローラ30に対し、実験の実行を指示する。
【0106】
次に、ステップS24で、後続実験データ作成部266が、実験定義データに基づいて、後続実験データを作成する。具体的には、後続実験データ作成部266が、実験定義データに含まれる細胞IDを後続実験データに引き継ぐ。また、後続実験データ作成部266が、実験定義データに含まれる実験後の細胞ID枝番、実験後の容器ID、及び実験後の容器保管場所IDを、実験前の細胞ID枝番、実験前の容器ID、及び実験前の容器保管場所IDとする後続実験データを作成する。そして、後続実験データ作成部266が、作成した後続実験データを実験定義DB256に記憶し、作業指示処理は終了する。
【0107】
作業指示を受け取った統括コントローラ30は、作業指示に基づいて、モバイルマニピュレータ10及びワークベンチロボット20を制御するための動作指令を作成し、ローカルコントローラ11及びローカルコントローラ21を介して、モバイルマニピュレータ10及びワークベンチロボット20を制御する。
【0108】
継代処理の場合を例に、統括コントローラ30による制御処理について説明する。図23は、統括コントローラ30のCPUにより実行される制御処理の流れを示すフローチャートである。以下では、接着培養の例について説明する。
【0109】
ステップS100で、統括コントローラ30が、モバイルマニピュレータ10に、継代処理の準備処理として、培養中の細胞を収めた第1容器を、第1インキュベータから取り出させ、ワークベンチの上まで搬送させる。第1容器は、例えば、角型フラスコ等である。
【0110】
具体的には、統括コントローラ30が、モバイルマニピュレータ10のローカルコントローラ11に準備処理を指示する。準備処理の指示を受けたローカルコントローラ11の制御により、モバイルマニピュレータ10が、第1インキュベータの位置まで移動し、第1インキュベータの扉を開け、ハンド13Bで第1容器を把持する。そして、モバイルマニピュレータ10が、第1容器を把持した状態でワークベンチまで移動し、ワークベンチ上に第1容器を配置する。
【0111】
次に、ステップS200で、統括コントローラ30が、モバイルマニピュレータ10及びワークベンチロボット20に、継代処理を実行させる。ここで、図24を参照して、継代処理について説明する。
【0112】
ステップS202で、統括コントローラ30が、ワークベンチロボット20のローカルコントローラ21に、第1容器からの培地の除去を指示する。指示を受けたローカルコントローラ21は、例えば、ハンド22BLで第1容器を把持し、ハンド22BRでアスピレータを把持し、アスピレータを操作して、第1容器内の培地を吸引除去するように、ワークベンチロボット20を制御する。
【0113】
次に、ステップS204で、統括コントローラ30が、ワークベンチロボット20のローカルコントローラ21に、第1容器への細胞分散酵素液の添加を指示する。細胞分散酵素液は、細胞分散試薬の一例であり、例えば、トリプシンである。指示を受けたローカルコントローラ21は、例えば、ハンド22BRで電動ピペッターを把持し、電動ピペッターを操作して、第1容器内に細胞分散酵素液を添加するように、ワークベンチロボット20を制御する。電動ピペッターの操作は、例えば、ハンド22BRのいずれかの指(例えば、第2指22B2R又は第3指22B3R)で吐出ボタンを押下することである。
【0114】
次に、ステップS206で、統括コントローラ30が、モバイルマニピュレータ10のローカルコントローラ11に、第1容器を細胞観察装置まで搬送させるよう指示する。指示を受けたローカルコントローラ11は、ワークベンチ上の、細胞分散酵素液が添加された第1容器を、例えば、コンピュータ制御により観察対象物の拡大画像取得及び画像分析を行う光学顕微鏡等の細胞観察装置へ搬送し、細胞観察装置の所定位置に配置するように、モバイルマニピュレータ10を制御する。細胞観察装置としては、第1容器の透明な壁面を通して細胞を観察することができるだけの対物距離の長い装置が用いられる。
【0115】
次に、ステップS208で、統括コントローラ30が、細胞観察装置による観察結果に基づいて、継代処理が続行可能か否かを判定する。例えば、統括コントローラ30は、細胞観察装置から、観察結果として第1容器内の細胞の画像又は画像分析結果を取得し、細胞が容器壁から十分に剥離して浮遊状態となっている場合に、継代処理を続行可能であると判定する。なお、細胞観察装置による細胞の剥離度合いの観察は、細胞観察装置又は統括コントローラ30における画像処理を用いて自動で行われてもよいし、人手を介入させて行われてもよい。継代処理が続行可能な場合には、ステップS210へ移行し、続行不可の場合には、ステップS226へ移行する。なお、ステップS226へ移行する代わりに、数分間待ってから再度細胞観察装置による観察を試みてもよい。時間の経過と共に細胞の容器壁からの剥離が進行することが期待できる場合があるからである。
【0116】
ステップS210では、統括コントローラ30が、モバイルマニピュレータ10のローカルコントローラ11に、第1容器をワークベンチの上まで搬送させるよう指示する。指示を受けたローカルコントローラ11は、細胞観察装置から第1容器を取り出して把持し、ワークベンチまで搬送して、ワークベンチ上に配置させるように、モバイルマニピュレータ10を制御する。以上説明したステップS206からステップS210までは、細胞観察装置で確認するまでもなく、細胞の容器壁からの剥離が十分にできていると推定できる場合には省略してもよい。例えば、同種の細胞を同様の条件で培養し、同様の条件で細胞の容器壁からの剥離に成功してきた実績がある場合である。
【0117】
次に、ステップS212で、統括コントローラ30が、ワークベンチロボット20のローカルコントローラ21に、第1容器に酵素反応停止液及び新しい培地の少なくとも一方である添加物を添加させるよう指示する。指示を受けたローカルコントローラ21は、例えば、ハンド22BLに第1容器を把持させ、ハンド22BRに電動ピペッターを把持させ、第1容器内に添加物を添加するように、ワークベンチロボット20を制御する。以下では、細胞と添加物との混合物が収められた第1容器、又はその第1容器の内容物が移された第3容器を遠心分離用容器という。
【0118】
なお、細胞と添加物との混合物を第3容器に移す場合、統括コントローラ30が、ワークベンチロボット20のローカルコントローラ21に、その旨を指示する。指示を受けたローカルコントローラ21は、例えば、電動ピペッターを操作して、混合物を第1容器から吸引するように、ワークベンチロボット20を制御する。ここでの電動ピペッターの操作は、例えば、ハンド22BRのいずれかの指(例えば、第2指22B2R又は第3指22B3R)で吸引ボタンを押下することである。そして、ローカルコントローラ21は、ハンド22BLで、例えば、コニカルチューブ等の遠心分離用容器に持ち替えるように、ワークベンチロボット20を制御する。さらに、ローカルコントローラ21は、電動ピペッターを操作して、吸引した混合物を遠心分離用容器に移し替えるように、ワークベンチロボット20を制御する。ここでの電動ピペッターの操作は、例えば、ハンド22BRのいずれかの指(例えば、第2指22B2R又は第3指22B3R)で吐出ボタンを押下することである。
【0119】
なお、第1容器をそのまま遠心分離用容器とする場合は、第1容器は角型フラスコではなく、当初よりコニカルチューブを使用する。
【0120】
次に、ステップS214で、統括コントローラ30が、モバイルマニピュレータ10のローカルコントローラ11に、遠心分離用容器を遠心分離機まで搬送させるよう指示する。指示を受けたローカルコントローラ11は、ワークベンチ上の遠心分離用容器を遠心分離機へ搬送し、遠心分離機の所定位置(例えば、回転部)に設置するように、モバイルマニピュレータ10を制御する。その際、遠心分離機の仕様上必要であれば、ローカルコントローラ11は、遠心分離用容器が設置されるべき部材を遠心分離機内から取り出してから当該部材に遠心分離用容器を設置し、その後当該部材を遠心分離機内に戻すように、モバイルマニピュレータ10を制御する。さらに、ローカルコントローラ11は、遠心分離機のスタートボタンを押下させ、遠心分離機の運転を開始させるように、モバイルマニピュレータ10を制御してもよい。なお、遠心分離機の運転開始操作は、統括コントローラ30が遠心分離機に制御信号を送信して行ってもよい。
【0121】
次に、ステップS216で、統括コントローラ30が、モバイルマニピュレータ10のローカルコントローラ11に、遠心分離用容器をワークベンチの上まで搬送させるよう指示する。指示を受けたローカルコントローラ11は、遠心分離機から遠心分離用容器を回収して把持し、ワークベンチまで搬送して、ワークベンチ上に配置させるように、モバイルマニピュレータ10を制御する。
【0122】
次に、ステップS218で、統括コントローラ30が、ワークベンチロボット20のローカルコントローラ21に、遠心分離用容器から細胞の一部を抽出し、試料ホルダに載置するよう指示する。試料ホルダは、細胞計測装置の仕様に合わせたものが用いられる。例えば、細胞計測装置が光学顕微鏡の場合には、試料ホルダはスライドガラスである。スライドガラスには試料を入れるくぼみがあってもよい。細胞計測装置の仕様によっては、試料ホルダとして何らかの容器が用いられる場合もある。
【0123】
指示を受けたローカルコントローラ21は、例えば、電動マイクロピペットを操作して、遠心分離用容器から細胞の一部を吸引するように、ワークベンチロボット20を制御する。そして、ローカルコントローラ21は、電動マイクロピペットを操作して、吸引した細胞を、例えば、細胞カウント用プレート等の試料ホルダのくぼみに吐出するように、ワークベンチロボット20を制御する。統括コントローラ30は、細胞計測の前に、計測対象の細胞を染色する処理をワークベンチロボット20に実行させてもよい。
【0124】
なお、電動マイクロピペットは、少量の細胞を吸引及び吐出可能な機器である。電動マイクロピペットの吸引及び吐出のオン及びオフの制御は、USBケーブル等を介した有線電子制御とし、ワークベンチロボット20のハンド22Bによるオン及びオフの操作は行わないようにしてもよい。
【0125】
次に、ステップS220で、統括コントローラ30が、モバイルマニピュレータ10のローカルコントローラ11に、試料ホルダを、細胞の数又は濃度を計測する細胞計測装置まで搬送させるよう指示する。指示を受けたローカルコントローラ11は、ワークベンチ上の試料ホルダを、例えばコンピュータ制御により観察対象物の拡大画像取得及び画像分析を行う光学顕微鏡等の細胞計測装置へ搬送し、細胞計測装置の設置部に設置するように、モバイルマニピュレータ10を制御する。なお、ここでの「設置部」は、試料ホルダがそこに設置されれば、その後は細胞計測装置による計測が可能となる設置部位を指す。設置部に設置された試料ホルダが細胞計測装置の機能により計測場所まで移動させられてもよく、設置部に設置されたまま計測可能である必要はない。
【0126】
次に、ステップS222で、統括コントローラ30が、細胞計測装置による計測結果に基づいて、継代処理が続行可能か否かを判定する。例えば、統括コントローラ30は、細胞計測装置から、計測結果として、試料ホルダ内の細胞の数又は濃度を取得し、細胞の数又は濃度が予め定めた閾値以上の場合に、継代処理を続行可能であると判定する。なお、細胞計測装置による細胞の数又は濃度の計測は、画像処理を用いて自動で行われてもよいし、人手を介入させて行われてもよい。継代処理が続行可能な場合には、ステップS224へ移行し、続行不可の場合には、ステップS226へ移行する。
【0127】
ステップS224では、統括コントローラ30が、ワークベンチロボット20のローカルコントローラ21に、1又は複数の第2容器への細胞の播種を指示する。なお、第2容器は、第1容器と同様のものでもよい。拡大継代の場合には、第2容器は、容器数1のまま容器のサイズを大きくする場合と、容器の数を増やす場合とがある。複数のウェル(くぼみ)が設けられた容器については、それぞれのウェルを第2容器とみなす。
【0128】
指示を受けたローカルコントローラ21は、例えば、図25の上図に示すように、電動マイクロピペットを操作して、遠心分離用容器から、第2容器に播種する量の細胞(培地も含む)を吸引するように、ワークベンチロボット20を制御する。そして、ローカルコントローラ21は、図25の下図に示すように、電動マイクロピペットを操作して、吸引した細胞を、例えば、角型フラスコ等の第2容器に吐出するように、ワークベンチロボット20を制御する。ローカルコントローラ21は、この制御を、第2容器の数だけ繰り返す。また、必要に応じて、電動ピペッターを用いて、第2容器に培地を補充するようにしてもよい。
【0129】
ステップS226では、統括コントローラ30が、継代処理が続行不可であることを出力装置45から出力し、継代処理及び制御処理を終了する。その際、続行不可である理由を示す情報を出力に含めてもよい。そうすることにより、出力を受ける人又は上位システムが継代処理の状況を把握して適切に対処することが容易になる。なお、第1インキュベータ内の次の第1容器を継代処理の対象として、制御処理を継続するようにしてもよい。この場合、ステップS226の後、制御処理のステップS100に戻るようにすればよい。
【0130】
次に、ステップS300で、統括コントローラ30が、モバイルマニピュレータ10に、継代処理の片付け処理として、継代処理後の細胞が収められた第2容器を第2インキュベータに収納させる。第2インキュベータは、第1インキュベータと同一であってもよい。
【0131】
具体的には、統括コントローラ30が、モバイルマニピュレータ10のローカルコントローラ11に片付け処理を指示する。片付け処理の指示を受けたローカルコントローラ11の制御により、モバイルマニピュレータ10が、ワークベンチ上の第2容器を把持し、第2インキュベータの位置まで移動し、第2インキュベータの扉を開け、第2インキュベータ内に第2容器を収納する。そして、制御処理は終了する。
【0132】
以上説明したように、第2実施形態に係る細胞培養システムによれば、細胞培養計画作成装置で作成された、必要とされる量の細胞を培養するための計画に基づいて、ロボットシステムにより細胞の培養を自動化することができる。
【0133】
<第3実施形態>
第3実施形態も第2実施形態と同様に、細胞培養計画作成装置で作成された細胞培養計画に従って、ロボットシステムにより細胞培養の処理を実行する場合について説明する。なお、第3実施形態において、第1及び第2実施形態と同様の部分については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0134】
図26に示すように、第3実施形態に係る細胞培養システム300は、細胞培養計画作成装置340と、ロボットシステム310とを含む。
【0135】
細胞培養計画作成装置340は、細胞DB50、プロトコルDB52、実験定義DB256、及び表示器54の各々と接続されている。
【0136】
ロボットシステム310は、モバイルマニピュレータ10と、ワークベンチロボット20と、統括コントローラ30と、作業指示装置360とを含む。作業指示装置360は、プロトコルDB52、実験定義DB256、及び保管場所DB258の各々と接続されている。プロトコルDB52及び実験定義DB256は、細胞培養計画作成装置340と共用である。
【0137】
図27に示すように、細胞培養計画作成装置340は、機能構成として、入力部142と、計画作成部144と、実験定義データ作成部346とを含む。各機能構成は、CPU41が記憶装置43に記憶された細胞培養計画作成プログラムを読み出し、メモリ42に展開して実行することにより実現される。
【0138】
実験定義データ作成部346は、第2実施形態における作業指示装置260の実験定義データ作成部262と同様に、計画作成部144で作成された細胞培養計画に基づいて、各処理の実験定義データを作成し、実験定義DB256に記憶する。
【0139】
図28は、作業指示装置360の機能構成の例を示すブロック図である。図28に示すように、作業指示装置360は、機能構成として、実験定義データアクセス部362と、指示作成部264と、後続実験データ作成部266とを含む。各機能構成は、CPUが記憶装置に記憶された作業指示プログラムを読み出し、メモリに展開して実行することにより実現される。
【0140】
実験定義データアクセス部362は、実験定義DB256にアクセスし、実験定義DB256に記憶された各処理の実験定義データを取得して、指示作成部264へ受け渡す。実験定義DB256の物理的所在は、作業指示装置360がアクセスできる限り、任意である。例えば、作業指示装置360内の記憶装置43に記憶されてもよいし、作業指示装置360に接続された外部記憶装置に記憶されてもよいし、ネットワーク経由でアクセスできるサーバーに記憶されてもよい。作業指示装置360が外部の装置に対して、例えば実験IDのような実験を特定するキーとなるデータにより特定の実験定義データを指定して要求し、その要求に応答して指定した実験定義データが送られてくるような間接的なアクセス形態でもよい。
【0141】
次に、第3実施形態に係る細胞培養システム300の作用について説明する。図29は、細胞培養計画作成装置340のCPU41により実行される細胞培養計画作成処理の流れを示すフローチャートである。
【0142】
第1実施形態に係る細胞培養計画作成処理(図5)と同様のステップS10~S18を経て、次のステップS310で、実験定義データ作成部346が、各処理の実験定義データを作成し、実験定義B256に記憶する。次に、ステップS312で、実験定義データ作成部346が、作業指示装置360が、実験定義DB256にアクセス可能となるように設定する。次に、ステップS314で、実験定義データ作成部346が、作業指示装置360に、実験定義データの作成及び実験定義DB256への記憶が完了したことを通知し、細胞培養計画作成処理は終了する。
【0143】
作業指示装置360は、図22に示す作業指示処理を実行する。なお、第3実施形態では、ステップS20において、実験定義データを作成することに替えて、実験定義データアクセス部362が、実験定義DB256にアクセスして各処理の実験定義データを取得し、指示作成部264へ受け渡す。
【0144】
以上説明したように、第3実施形態に係る細胞培養システムによれば、細胞培養計画作成装置で作成された、必要とされる量の細胞を培養するための計画に基づいて、ロボットシステムにより細胞の培養を自動化することができる。
【0145】
なお、第3実施形態において、細胞培養計画作成装置の実験定義データ作成部が作成する実験定義データは、実験定義データの全てを含まず、実験定義データの不足部分を作業指示装置が補完するようにしてもよい。例えば、細胞培養計画作成装置が最初の準備搬送情報(容器ID、保管場所ID)は含むが、その後の準備搬送情報を含まない実験定義データを作成し、作業指示装置がその後の準備搬送情報を追加して実験定義データを完成させてもよい。
【0146】
また、第2実施形態及び第3実施形態において、細胞培養計画作成装置と作業指示装置とは、同じコンピュータ内の機能部分として構成してもよい。さらに、統括コントローラも同じコンピュータ内の機能部分として構成してもよい。
【0147】
また、第2実施形態及び第3実施形態では、図14に示すように、コントローラの一例として、モバイルマニピュレータ10及びワークベンチロボット20とは独立した統括コントローラ30を用いる場合について説明したが、これに限定されない。例えば、図30(A)に示すように、いずれかのワークベンチロボット20が統括コントローラ30を搭載するようにしてもよいし、図30(B)に示すように、いずれかのモバイルマニピュレータ10が統括コントローラ30を搭載するようにしてもよい。この場合、作業指示装置は、統括コントローラ30と無線通信を行えばよい。
【0148】
また、図31(A)及び(B)に示すように、コントローラを、複数の分散コントローラ70で構成するようにしてもよい。この場合、分散コントローラ70同士で通信して、モバイルマニピュレータ10及びワークベンチロボット20の各々が互いに連携して動作するように制御する。この場合、作業指示装置は、各分散コントローラ70と無線通信を行えばよい。
【0149】
なお、モバイルマニピュレータ10及びワークベンチロボット20の各々にローカルコントローラ11、21を設けず、統括コントローラ30又は分散コントローラ70がモバイルマニピュレータ10及びワークベンチロボット20の各々の各モータの動作を制御してもよい。
【0150】
また、上記実施形態では、実験定義DBを実験ID毎にデータレコードを形成するデータ構造のデータベースの例で説明したが、これに限定されない。例えば、リレーショナルデータベースのような形態で、指定された実験を行うために必要なデータの抽出ができるようなデータベースが形成されていれば、実験定義データのデータ構造は問わない。
【0151】
また、細胞培養計画作成装置が作成する細胞培養計画は、第2実施形態及び第3実施形態のように、ロボットシステムに細胞培養を自動実行させる用途に限定されない。例えば、作成された細胞培養計画に基づいて、人が細胞培養を実行する用途もある。また、作成された細胞培養計画に従う細胞培養を実際に実行する目的に限らず、計画の試作を繰り返しながらより良い計画を探索する目的のためにも使用できる。
【0152】
また、上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行したロボットシステム処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、ロボットシステム処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0153】
また、上記各実施形態では、プログラムが記憶装置に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、ブルーレイディスク、USBメモリ等の記憶媒体に記憶された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0154】
以下に、本開示に関する付記項を記載する。
【0155】
(付記項1)
細胞の培養終了時期及び前記培養終了時期における目標細胞量の入力を受け付ける入力部(142)と、
前記培養終了時期において前記目標細胞量が得られるように順次実行される1以上の継代処理についての第1実行指定と、それぞれの前記継代処理に続いて実行される培養処理についての第2実行指定とを含む細胞培養計画であって、前記第1実行指定が、前記継代処理の種類を特定する情報及び前記継代処理を実行する時期を特定する情報を含む前記細胞培養計画を作成する計画作成部(144)と、
を含む細胞培養計画作成装置(40、340)。
【0156】
(付記項2)
前記細胞培養計画は、さらに、最初の前記継代処理に先行して実行される、前記細胞の解凍処理についての第3実行指定、及び解凍された前記細胞の初期培養処理についての第4実行指定を含み、
前記第3実行指定は、前記解凍処理を実行する時期を特定する情報を含む、
付記項1に記載の細胞培養計画作成装置。
【0157】
(付記項3)
前記第1実行指定において特定される前記継代処理の種類は、維持継代処理に属する継代処理の種類、及び拡大継代処理に属する継代処理の種類の少なくとも一方を含む、付記項1又は付記項2に記載の細胞培養計画作成装置。
【0158】
(付記項4)
前記計画作成部は、前記第1実行指定において、前記維持継代処理に属する継代処理の種類及び前記拡大継代処理に属する継代処理の種類の両方を特定する場合は、前記維持継代処理に属する継代処理を実行する時期よりも前記拡大継代処理に属する継代処理を実行する時期の方が遅くなるように、それぞれの前記継代処理を実行する時期を特定する、付記項3に記載の細胞培養計画作成装置。
【0159】
(付記項5)
前記計画作成部は、さらに、作成した前記細胞培養計画を、前記継代処理を表す第1図形及び前記培養処理を表す第2図形を、前記継代処理及び前記培養処理のそれぞれが実行される順序に従い第1方向に並べて表示器に表示させるための信号として出力する、付記項1~付記項4のいずれか1項に記載の細胞培養計画作成装置。
【0160】
(付記項6)
前記第2図形は、前記第1方向における時間の経過に従って前記第1方向と直交する第2方向に大きくなる図形である、付記項5に記載の細胞培養計画作成装置。
【0161】
(付記項7)
付記項1~付記項6のいずれか1項に記載の細胞培養計画作成装置(40、340)と、
床上を移動するための機構及び物体を把持するための機構を備えたモバイルマニピュレータ、及びワークベンチに対して固定されており前記ワークベンチ上の物体を把持するための機構を備えたワークベンチロボットを含み、前記細胞培養計画に従い細胞培養実験を実行するロボットシステム(210、310)と、
を含む細胞培養システム(200、300)。
【符号の説明】
【0162】
200、300 細胞培養システム
210、310 ロボットシステム
10 モバイルマニピュレータ
11 ローカルコントローラ
12 台車
12A 駆動輪
13 ロボットアーム
13A アーム
13B ハンド
20 ワークベンチロボット
21 ローカルコントローラ
22 ロボットアーム
22A アーム
22B、22BL、22BR ハンド
22B1、22B1L、22B1R 第1指
22B2、22B2L、22B2R 第2指
22B3、22B3L、22B3R 第3指
23 ビジョンセンサ
30 統括コントローラ
40、340 細胞培養計画作成装置
41 CPU
42 メモリ
43 記憶装置
44 入力装置
45 出力装置
46 記憶媒体読取装置
47 通信I/F
48 バス
142 入力部
144 計画作成部
346 実験定義データ作成部
50 細胞DB
52 プロトコルDB
54 表示器
256 実験定義DB
258 保管場所DB
260、360 作業指示装置
262 実験定義データ作成部
264 指示作成部
266 後続実験データ作成部
362 実験定義データアクセス部
70 分散コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
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図22
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図26
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