(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171236
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】スイッチ装置及び加飾パネル
(51)【国際特許分類】
H01H 9/02 20060101AFI20241204BHJP
H01H 36/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H01H9/02 E
H01H36/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088204
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若尾 恵一
【テーマコード(参考)】
5G046
5G052
【Fターム(参考)】
5G046AA04
5G046AA07
5G046AB02
5G046AC24
5G046AD02
5G046AE05
5G052AA01
5G052BB10
5G052HA13
(57)【要約】
【課題】静電容量型のセンサやスイッチに設ける金属加飾で酸化変色を抑える。
【解決手段】スイッチ装置は、光を透過する金属層を基材の表面に有する加飾パネルと、前記加飾パネルの裏側に配置されて光を透過する電極と、前記電極の静電容量の変化を検出し、検出した変化に応じた制御を行う制御部と、前記電極の裏側に配置されて光を発する光源と、前記光源と前記加飾パネルとの間に配置され、前記光源からの光を所定の図柄で透過する透過部及び前記光源からの光を遮断する遮光部とを備えるマスク部と、を有し、前記金属層は、インジウムで形成されて各々が独立した複数の島部で形成され、水平投影面積が最小の前記島部は、短手方向の長さが80nm以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過する金属層を基材の表面に有する加飾パネルと、
前記加飾パネルの裏側に配置されて光を透過する電極と、
前記電極の静電容量の変化を検出し、検出した変化に応じた制御を行う制御部と、
前記電極の裏側に配置されて光を発する光源と、
前記光源と前記加飾パネルとの間に配置され、前記光源からの光を所定の図柄で透過する透過部及び前記光源からの光を遮断する遮光部とを備えるマスク部と、
を有し、
前記金属層は、インジウムで形成されて各々が独立した複数の島部で形成され、
水平投影面積が最小の前記島部は、短手方向の長さが80nm以上である
スイッチ装置。
【請求項2】
水平投影面積が最大の前記島部は、長手方向の長さが400nm以下である
請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記島部は、高さが30nm以上50nm以下である
請求項1又は請求項2に記載のスイッチ装置。
【請求項4】
光を透過する金属層を基材の表面に有し、
前記金属層は、インジウムで形成されて各々が独立した複数の島部で形成され、
水平投影面積が最小の前記島部は、短手方向の長さが80nm以上である
加飾パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ装置及び加飾パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量型のセンサに係る発明として、例えば特許文献1、2に開示された発明がある。特許文献1に開示されたスイッチ装置は、模様が印刷されたフィルムが基材上に貼り付けられた加飾パネルと、静電容量型のスイッチを構成する電極が設けられて加飾パネルの裏側に配置された電極シートと、電極シートの裏側に配置されて電極の静電容量を検出する回路を備えた回路基板と、を有している。電極シートは、回路基板に設けられた光源からの光を部分的に透過させて加飾パネルに図柄を浮かびあがらせるマスク層を有しており、光源が消灯しているときにはフィルムの模様が視認され、光源が点灯しているときにはマスク層の図柄が視認される。光源により加飾パネルに映しだされた図柄の部分に触れると、触れた部分の裏側にある電極の静電容量の変化に応じて制御回路が制御を行う。このスイッチ装置は、静電容量型のスイッチであるため、機械スイッチのようにスペースをとることがなく、また、光源が消灯しているときにはフィルムに印刷された模様が視認されるため、印刷により金属や木目などの様々な意匠性を持たせることができる。
【0003】
特許文献2に開示された静電容量型のタッチセンサは、樹脂の基部上に金属膜が形成された絶縁物品の裏側に配置されている。金属膜においてタッチセンサ近傍の位置に指が触れると、タッチセンサが静電容量の変化に応じて信号を出力し、制御部が信号に応じた制御を行う。絶縁物品に形成されている金属膜は、スパッタリングにより形成されたクロム膜であり、金属光沢の意匠性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4218660号公報
【特許文献2】特許第5741903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のスイッチ装置では、基材に貼り付けるフィルムの模様を金属の色にすることにより加飾を金属調にすることができる。しかしながら、フィルムの貼り付けや保護層の形成が必要であり、製造に手間がかかる。特許文献2のタッチセンサでは、金属膜がクロムで形成されているが、酸化すると変色が大きく、時間が経過すると金属膜が形成されたときの金属光沢とは異なる意匠性となってしまう。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、静電容量型のセンサやスイッチに設ける金属加飾で酸化変色を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るスイッチ装置は、光を透過する金属層を基材の表面に有する加飾パネルと、前記加飾パネルの裏側に配置されて光を透過する電極と、前記電極の静電容量の変化を検出し、検出した変化に応じた制御を行う制御部と、前記電極の裏側に配置されて光を発する光源と、前記光源と前記加飾パネルとの間に配置され、前記光源からの光を所定の図柄で透過する透過部及び前記光源からの光を遮断する遮光部とを備えるマスク部と、を有し、前記金属層は、インジウムで形成されて各々が独立した複数の島部で形成され、水平投影面積が最小の前記島部は、短手方向の長さが80nm以上である。
【0008】
本発明に係るスイッチ装置は、水平投影面積が最大の前記島部は、長手方向の長さが400nm以下である構成であってもよい。
【0009】
また、本発明に係るスイッチ装置においては、前記島部は、高さが30nm以上50nm以下である構成であってもよい。
【0010】
本発明に係る加飾パネルは、光を透過する金属層を基材の表面に有し、前記金属層は、インジウムで形成されて各々が独立した複数の島部で形成され、水平投影面積が最小の前記島部は、短手方向の長さが80nm以上である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、静電容量型のセンサやスイッチに設ける金属加飾で酸化変色を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態に係るスイッチ装置の分解斜視図である。
【
図2】
図2は、静電容量を検出する回路の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、金属層の膜厚と透過率との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、金属層の膜厚と明度との関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、島部を透過する光を模式的に示した図である。
【
図8】
図8は、島部を透過する光を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0014】
[実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係るスイッチ装置1の分解斜視図である。スイッチ装置1は、自動車に設けられた電装品を操作するためのスイッチである。スイッチ装置1は、自動車の車内に設置されるものであり、例えばドアトリム、ダッシュボード、センタークラスター、リアコンソール、又はスイッチベースなどに設置される。
【0015】
図1に示すようにスイッチ装置1は、加飾パネル10、マスク部材20、電極シート30、保持部材40、及び回路基板50を備えている。なお、説明の便宜上、スイッチ装置1の加飾パネル10側を表側と称し、回路基板50側を裏側と称する。スイッチ装置1は、加飾パネル10の裏側にマスク部材20を有し、マスク部材20の裏側に電極シート30を有し、電極シート30の裏側に保持部材40を有し、保持部材40の裏側に回路基板50を有しており、加飾パネル10が車内に面する。
【0016】
加飾パネル10は、基材11と金属層12で構成されている。基材11は、例えば透明なポリカーボネート樹脂であり、平板の形状に形成されている。基材11は、回路基板50が備える光源51a~51fから裏面に到達した光を透過する。なお、基材11は、曲面の板状の形状であってもよい。金属層12は、スパッタリングにより基材11の表面に形成されたインジウムの層である。金属層12は、光を透過する透光性を有しており、光源51a~51fが消灯しているときには全面が光沢のある金属として視認される。
【0017】
マスク部材20は、光源51a~51fから裏面に到達した光を部分的に透過させて加飾パネル10に図柄を浮かび上がらせるための部材である。
図1に示す、1、2、3などの数字の図柄22a~22cやアルファベットの文字の図柄22d、矢印の図柄22e、22fなどが、光源51a~51fからの光を透過する部分である。図柄22a~22fは、マスク部材20の裏側にある電極32a~32fに対応して設けられている。
【0018】
電極シート30は、可撓性、透光性、及び絶縁性を有するシートであり、電極32a~32fを表側に有している。電極32a~32fは、導電性を有し、透明で光を透過する酸化インジウムスズで形成されている。
【0019】
保持部材40は、電極シート30を保持するものであり、表側に電極シート30が固定され、裏側に回路基板50が固定される。保持部材40は、合成樹脂を矩形の板状に形成したものであり、回路基板50と電極シート30との間の距離を所定の距離に保つ。保持部材40は、表側から裏側に貫通し、裏側にある光源51a~51fからの光が通過する孔41a~41fが形成されている。光源51a~51fが発した光は、孔41a~41fを通過して電極32a~32fを透過する。また、光源51a~51fが発した光のうち、孔41a~41f以外の部分に到達した光は、保持部材40により遮られて電極シート30に到達しないようになっている。
【0020】
回路基板50は、表側に光源51a~51fが配置されている。光源51a~51fは、例えばLED(Light Emitting Diode)である。なお、回路基板50の表側に設けられる光源は、LEDからの光を導光板により拡散する面発光の光源であってもよい。光源51a~51fは、例えば自動車のアクセサリー電源がオンの状態やイグニッションオンの状態のときに点灯する。また、回路基板50は、光源51a~51fを点灯させる回路や、電極32a~32fの静電容量を検出する検出回路を有している。なお、光源51a~51fは、同じLEDであるため、以降の説明において各々を区別する必要がない場合には光源51と称して説明を行う。
【0021】
図2は、電極32a~32fの静電容量を検出する検出回路100の構成を示すブロック図である。検出回路100は、インダクタL、検出部120a~120f、及びコントロール部110を備えている。インダクタLは、電極32a~32f毎に設けられており、電極32a~32fの各々は、インダクタLを介して対応する検出部120a~120fに接続されている。検出部120a~120fは、インダクタLを介して接続されている電極の静電容量を検出し、検出した静電容量が閾値を超えた場合、オン信号をコントロール部110へ出力する。コントロール部110は、検出部120a~120fに接続されており、検出部120a~120fが出力したオン信号に応じて電装品の制御を行う。
【0022】
加飾パネル10において指が触れた位置の裏側に電極32a~32fがある場合、指が触れた位置の裏側にある電極と指との間に静電容量が発生する。指が触れた位置の裏側にある電極に接続されている検出部は、検出している静電容量が指の加飾パネル10への接触により増加して閾値を超えた場合、オン信号をコントロール部110に送る。コントロール部110は、オン信号を出力した検出部を特定し、特定した検出部に対応した電装品を制御する。このように、検出部120a~120fとコントロール部110は、電極の静電容量の変化を検出して動作し、自動車に搭載された電装品の動作を制御する制御部として機能する。また電極32a~32fの各々は、電装品を動作させるためのスイッチとして機能する。なお、検出部120a~120fは、一つの集積回路上に構成することができる。また、検出回路100では、インダクタLを設けることにより、所定の周波数以上のノイズをカットすることができる。
【0023】
図3は、スイッチ装置1の断面図である。電極シート30は、電極32a~32fと、樹脂材料で形成された可撓性、透光性、及び絶縁性を有するシート状の絶縁層31とを有する。電極シート30においては、電極32a~32fが絶縁層31の表側に配置されている。
【0024】
マスク部材20は、ベースシート21、遮光層22、及び印刷層23で構成されている。ベースシート21は、例えば光を透過するポリエチレンテレフタレートなどの樹脂材料で形成されている。ベースシート21の表側には、光源51から裏側に到達した光の透過を遮断する遮光層22が設けられている。遮光部の一例である遮光層22は、樹脂材料で形成されている。遮光層22は、例えば黒色に着色されており、光源51から裏側へ到達した光を遮断する。遮光層22の表側には、印刷層23が設けられている。印刷層23は、樹脂材料で形成されており、遮光層22と同色に着色されている。遮光層22及び印刷層23には、図柄22a~22fに対応して切り抜かれた切り抜き部24が設けられている。切り抜き部24は、本発明に係る透過部の一例である。光源51が点灯している場合、光源51から遮光層22に到達した光のうち、切り抜き部24以外の部分に到達した光は遮断され、切り抜き部24に到達した光は切り抜き部24を透過して加飾パネル14の裏面を照らし、加飾パネル10においては、切り抜き部24の形状に合わせた図柄が映し出される。
【0025】
加飾パネル10は、基材11と金属層12で構成されている。金属層12は、スパッタリングにより形成されて島構造となっており、インジウムで形成されている。
図4に、金属層12の島構造の模式図を示す。
【0026】
島構造とは、
図4に示したように、インジウムの凝集物が島の形状に形成された島部12Aが隣り合う島部12Aと離れて独立して面上に複数形成された構造である。島構造である金属層12は、例えば特開2021-121490号公報に開示されている方法で形成することが可能である。島部12Aは、スパッタリングにおける各種条件を調整することにより、高さHと、島部12Aを真上から見たときの面積である水平投影面積の大小を制御することができる。
【0027】
図5は、金属層12の膜厚と加飾パネル10における光の透過率との関係を示すグラフである。また、
図6は、金属層12の膜厚とL
*A
*B
*色空間の明度(L
*)との関係を示すグラフである。
図5に示すように、金属層12の膜厚が50nmを超えると光の透過率が低くなるため、光源51から加飾パネル10に到達した光が透過しにくくなり、図柄22a~22fを視認しにくくなる。このため、金属層12の膜厚、即ち、島部12Aの高さHは、図柄22a~22fを視認できるように50nm以下であるのが好ましい。一方、金属層12の膜厚が30nm未満となると透過率が高くなり、金属層12より裏側の色が視認されてしまうこととなる。また、
図6に示すように、金属層12の膜厚が30nm未満となると明度が低くなることで光沢のある金属としての意匠性が損なわれる。このため、金属層12の膜厚は、光沢のある金属として視認されるために30nm以上であるのが好ましい。
【0028】
図7は、島部12Aの表側から入射して基材11を透過する光を矢印で模式的に示した図である。
図7(a)は、島部12Aが酸化する前の状態を示し、
図7(b)は、島部12Aが酸化した状態を示している。
図7(a)に示すように、島部12Aが酸化する前の状態では、島部12Aに到達した光は島部12Aを透過せず、表側から島部12A同士の隙間に到達した光は、基材11に入射する。島部12Aに到達した光が島部12Aで反射されることにより、金属層12が光沢のある金属として視認される。
【0029】
インジウムで形成された島部12Aが空気中の酸素により酸化されると、
図7(b)に示すように島部12Aの表面が酸化して酸化インジウムの酸化膜12Bが形成される。酸化インジウムは、可視光を透過するため、
図7(b)に示すように表側から酸化膜12Bに到達した光は一部が基材11に入射する。このため、
図7(a)に示す酸化前の状態と比較すると、島部12Aで反射する光が減り、基材11に入射する光が増えることとなる。
【0030】
ここで島部12Aの水平投影面積が狭いと、島部12Aの表面積の合計が大きくなり、島部12Aが酸化したときに酸化膜12Bの面積が増えて島部12Aで反射する光が減るため、酸化前の状態から明度が下がり、光沢のある金属として視認されなくなるおそれがある。
【0031】
図8は、
図7に示す島部12Aより水平投影面積が広い島部12Aの表側から入射して基材11を透過する光を矢印で模式的に示した図である。
図8(a)は、島部12Aが酸化する前の状態を示し、
図8(b)は、島部12Aが酸化した状態を示している。
図8(a)に示すように、島部12Aが酸化する前の状態では、
図7(a)のときより島部12Aの水平投影面積を広くすることにより、表側から基材11へ透過する光が少なくなっている。また、
図7(a)のときより島部12Aの水平投影面積を広くすることにより、金属層12において島部12Aの表面積の合計が小さくなる。これにより、
図7(b)のときより酸化膜12Bの面積が減り、島部12Aで反射する光が
図7(b)のときより多いため、酸化前からの明度の減少が少なく、光沢のある金属として視認される。
【0032】
なお、島部12Aは、表側から見たときに不規則な形状であり、水平投影面積にばらつきがある。本発明においては、島部12Aが酸化しても金属層12が光沢のある金属として視認されるように、水平投影面積が最小である島部12Aは、水平投影面の短手方向の長さが80nm以上であるのが好ましい。また、島部12Aの水平投影面の面積を広くしすぎると裏側から表側へ透過する光源51からの光の透過率が下がり、図柄22a~22fを視認しにくくなるため、水平投影面積が最大である島部12Aは、水平投影面の長手方向の長さが400nm以下であるのが好ましい。なお、島部12Aの膜厚及び水平投影面積については、スパッタリングにより金属層12を形成するときの各種条件を調整することにより制御することができる。
【0033】
次に本発明に係る加飾パネルについて、使用環境を想定した環境試験の結果を説明する。本願発明の発明者は、環境試験に際し、使用環境を想定して光及び熱に対しての耐性を判定するために、膜厚、最小島部の短手方向長さ、最大島部の長手方向長さを替えて実施例1~4及び比較例1、2を作成し、これらの環境試験を行った。実施例1~4及び比較例1、2の加飾パネルは、基材11の表側をスパッタリング用のアンダーコートで塗装し、アンダーコートの表側にインジウムの金属層12をスパッタリングで形成し、さらに金属層12の表側にスパッタリング用のトップコートを塗装した構成とした。なお、アンダーコートは、藤倉化成株式会社のアクリル樹脂塗料(VB3350U)を使用し、トップコートは、藤倉化成株式会社のアクリル樹脂塗料(VT3276U-K6)を使用した。実施例1~4と比較例1、2の膜厚、最小島部の短手方向長さ、最大島部の長手方向長さは、表1に示す値である。
【0034】
【0035】
環境試験では、まず、実施例1~4と比較例1、2を約23℃にて2日間放置した。次に2日間放置した実施例1~4と比較例1、2の表側を測色機により測定し、L*a*b*色空間のL*、a*、b*を測定して初期データとした。測色機は、コニカミノルタ株式会社の分光測色計CM-512m3Aを用いた。次に実施例1~4と比較例1、2を温度が83℃の環境下におき、照射強度を150W/m2とし、照射量を300MJとして光の照射を行った後、測色機により実施例1~4と比較例1、2の表側のL*、a*、b*を測定して試験後データとした。
【0036】
実施例1~4及び比較例1、2の耐性の判定は、初期データと試験後データとの色差であるΔE*を用いて行った。なお、ΔE*は以下の式で算出される。
ΔE*=((ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2)1/2
上記の式においては、ΔL*=初期データのL*-試験後データのL*であり、Δa*=初期データのa*-試験後データのa*であり、Δb*=初期データのb*-試験後データのb*である。
【0037】
この環境試験においては、実施例1~4と比較例1、2は、83℃の環境下に置かれることで熱により島部12Aの表面が酸化して透明な酸化膜12Bとなる。酸化膜12Bが形成されると、島部12Aで酸化前より光の反射が少なくなり、酸化膜12Bが多くなるにつれて光の透過が増えてΔE*が大きくなる。特にΔE*が5.0以上の場合、目視でも変色の度合いが大きくなり、光沢のある金属として視認されなくなる。
【0038】
表1に示すように、金属層12の膜厚(島部12Aの高さ)が30nm~50nmの範囲内であり、最小島部の短手方向長さが80nm以上であり、最大島部の長手方向長さが400nm以下である実施例1~4は、ΔE*が5.0未満であるため、初期からの変色が少なく、光沢のある金属として視認された。
【0039】
一方、金属層12の膜厚が30nm以下であり、最小島部の短手方向長さが80nm未満である比較例1については、ΔE*が5.0以上となって初期からの変色が大きく、金属の光沢が視認できなかった。なお、膜厚が60nmであり、最大島部の長手方向長さが400nmを超える比較例2については、ΔE*が5.0未満となって初期からの変色が小さく、金属の光沢を視認できたものの、裏側からの光の透過率が実施例1~4より低いものとなった。
【0040】
以上説明したように本発明によれば、インジウムで金属層12を形成することにより、特許文献2の発明と比較すると、光沢のある金属としての加飾を得ることができる。また、金属層12について、膜厚を30nm~50nmの範囲内とすることにより、光源51からの光を透過し、表面に図柄を表示させることができる。また、島部12Aの水平投影面積について、最小島部の短手方向の長さを80nm以上とし、最大島部の長手方向の長さを400nm以下とすることにより、酸化による変色を抑え、金属層12が酸化しても光沢のある金属としての加飾を保つことができる。また、本発明によれば、金属層12が導電性を有するため、加飾パネル10の裏側に静電容量方式のセンサやスイッチを実現することができ、自動車内においてセンサやスイッチを様々な位置に設けることができる。さらに、金属層12が島構造であって不連続な層であり、連続層である構成と比較すると導電性が低いため、例えば、図柄22aの位置に指が触れたときに、図柄22bの位置での静電容量の変化が抑えられ、図柄22bに対応した電装品を動作させるといった誤動作を抑えることができる。また、本発明によれば、金属層12は、スパッタリングの各種条件を調整することより、隣り合う島部12A同士が離れた島構造となるため、スパッタリングで膜を形成した後に熱処理で網目状クラックを形成する特許文献2の発明と比較して、少ない工程で不連続な金属層を形成することができる。
【0041】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。上述した各実施形態及び各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0042】
上述した実施形態においては、島部12Aはインジウムで形成されているが、例えば錫で形成されていてもよい。
【0043】
上述した加飾パネル10は、自動車への設置に限定されるものではなく、例えば家電機器や電子機器に設置されてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 スイッチ装置
10 加飾パネル
11 基材
12 金属層
12A 島部
12B 酸化膜
20 マスク部材
22 遮光層
22a~22f 図柄
30 電極シート
32a~32f 電極
40 保持部材
50 回路基板
51、51a~51f 光源
100 検出回路
110 コントロール部
120a~120f 検出部