(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171251
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】卵表面検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/85 20060101AFI20241204BHJP
G01N 33/08 20060101ALI20241204BHJP
A01K 43/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
G01N21/85 A
G01N33/08
A01K43/00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088223
(22)【出願日】2023-05-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】521082008
【氏名又は名称】株式会社日本選別化工
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾野 彰則
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA01
2G051AB07
2G051BA20
2G051CA03
2G051EA16
2G051EB01
2G051EC10
(57)【要約】
【課題】卵を撮像した画像データから殻の凹凸を評価できる卵表面検査装置を提供する。
【解決手段】本発明の卵表面検査装置は、卵を2本のローラで支持した状態で搬送するコンベアと、コンベア上の卵に白色光を照射するLED光源及びコンベアの上方に設置され、搬送中の卵を撮像するカラーカメラを備えた撮像手段と、撮像した卵の画像に対し四角形サイズの検査画像を定め、検査画像のフルカラー画像をグレースケール画像に変換した後、グレースケール画像の中の検査ラインに対して、各画素のグレースケール値を殻表面の凹凸と見なして近似曲線を算出し、近似曲線に対する山と谷から粗さの標準偏差(m)を算出し、標準偏差(m)に基づいて殻の合否を判定する画像判定手段と、を備えている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵を2本のローラで支持した状態で搬送するコンベアと、
前記コンベア上の卵に白色光を照射するLED光源及び前記コンベアの上方に設置され、搬送中の卵を撮像するカラーカメラを備えた撮像手段と、
撮像した卵の画像に対し四角形サイズの検査画像を定め、前記検査画像のフルカラー画像をグレースケール画像に変換した後、前記グレースケール画像の中の検査ラインに対して、各画素のグレースケール値を殻表面の凹凸と見なして近似曲線を算出し、前記近似曲線に対する山と谷から粗さの標準偏差(m)を算出し、前記標準偏差(m)に基づいて殻の合否を判定する画像判定手段と、を備えていることを特徴とする卵表面検査装置。
【請求項2】
前記標準偏差(m)をあらかじめ求めた正常な卵の標準偏差(σ)で割った値(m/σ)が、所定の閾値(T)より大きいか小さいかで、殻の合否を判定することを特徴とする請求項1に記載の卵表面検査装置。
【請求項3】
前記近似曲線が、xを変数とする4次関数で近似されることを特徴とする請求項1に記載の卵表面検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殻の凹凸を評価できる卵表面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鶏卵の表面に、塊状に小さなぶつぶつができることがある。卵の中身には問題ないが、見栄えがよくないので分けることが望ましいとされる。特許文献1には、カラーCCDカメラ、照明部、搬送ローラ、画像処理装置及び画像の判定部を備え、卵の殻の汚れを検査する汚卵検査装置が示される。しかしながら、卵の殻の凹凸は、他の部分と同じ白色であり細かいので、画像での判定が難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、卵表面を撮像した画像データから殻の凹凸を評価できる卵表面検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による卵表面検査装置は、卵を2本のローラで支持した状態で搬送するコンベアと、前記コンベア上の卵に白色光を照射するLED光源及び前記コンベアの上方に設置され、搬送中の卵を撮像するカラーカメラを備えた撮像手段と、撮像した卵の画像に対し四角形サイズの検査画像を定め、前記検査画像のフルカラー画像をグレースケール画像に変換した後、前記グレースケール画像の中の検査ラインに対して、各画素のグレースケール値を殻表面の凹凸と見なして近似曲線を算出し、前記近似曲線に対する山と谷から粗さの標準偏差(m)を算出し、前記標準偏差(m)に基づいて殻の合否を判定する画像判定手段と、を備えていることを特徴とする。
【0006】
前記標準偏差(m)をあらかじめ求めた正常な卵の標準偏差(σ)で割った値(m/σ)が、所定の閾値(T)より大きいか小さいかで、殻の合否を判定することを特徴とする。
【0007】
前記近似曲線が、xを変数とする4次関数で近似されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明による卵表面検査装置によれば、卵のフルカラー画像をグレースケール画像に変換し、グレースケール画像の中の検査ラインに対して、各画素のグレースケール値を殻表面の凹凸と見なし、粗さの標準偏差を算出したので、標準偏差による数値を使用いた判定ができる。卵の表面に影があるかの判定より、判定が正確にできる。
【0009】
標準偏差(m)をあらかじめ求めた正常な卵の標準偏差(σ)で割った判定値(m/σ)を算出し、判定値があらかじめ定めた閾値(T)より大きいか小さいかで殻の合否を判定するので、より正確な安定した合否判定ができる。
【0010】
近似曲線は、xを変数とする4次関数で近似したので、卵の表面の曲線に近い形状に近似できる。直線近似よりも正確な標準偏差が算定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】卵を検査する卵表面検査装置の平面図である。
【
図5】カラーの画素からグレースケールの画素への変換例を示す図である。
【
図6】グレースケールに変換された検査画像を示す図である。
【
図8】
図7で近似曲線からの偏差を正規化したグラフである。
【
図9】卵表面検査装置の処理フローチャートである。
【
図10】グレースケール画像を疑似カラーで可視化する例である。
【
図11】疑似カラーで可視化した検査画像の例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明による卵表面検査装置を詳しく説明する。
【実施例0013】
図1は、卵を検査する卵表面検査装置100の平面図である。卵表面検査装置100は、コンベア7と、コンベア7の上に設置される撮像手段20と、画像判定手段30と、を備える。画像判定手段30は、プロセッサとメモリと磁気ディスクを備えたコンピュータを使用できる。コンベア7は1レーンで、卵1を2本のローラ8で支持した状態で搬送方向に所定の速度で搬送する。本実施例では、卵1は鶏卵の生卵である。鶏卵の場合、殻の厚さは約0.3mmである。殻の凹凸は0.1~0.3mm程度である。
【0014】
図2は、
図1の撮像手段20の詳細な構成図である。撮像手段20は、卵1に白色光を照射するLED光源4と、搬送中の卵1を撮像するカラーカメラ5を備える。カラーカメラ5は、細かい凹凸を判定するのでエリアカメラよりは、ラインスキャンカメラが良い。卵表面の検査では、卵の色を判定することなどが想定され、他への応用ができることからカラーカメラを用いた。
図2に示すように、LED光源4からの出射光14は、ハーフミラー10で折り返して、卵1への照射光15となる。卵1からの反射光16は、ハーフミラー10を通過して、カメラ5への入射光17となる。ラインセンサカメラの場合、卵1はコンベア7により搬送方向に移動しており、1ラインずつ撮像する。卵1に向かう照射光15とカメラ5へ向かう入射光17が同軸上にある構成となっている。この場合、卵1の外側(外周側)に位置する側面は、反射光が真上に向かわないので、上面に比べてやや暗く撮像される。
【0015】
図3は、卵1の検査画像11の説明図である。カラーカメラ5は、撮像範囲19に卵1全体が入るように撮像する。灰色部分は背景21である。卵1の外周側に位置する側面はやや暗く写るので、卵上部の明るい四角形サイズ部分を検査画像11とした。卵1の殻は、どこも同じような凹凸の傾向を示すので、卵1の全周はチェックする必要がない。卵1は、上面の検査画像11を検査するだけで良く、殻の全体的な状況が判定できる。
【0016】
図4は、フルカラーの検査画像11を示す図である。検査画像11は、フルカラー画像からなり、n×m画素から構成されているとする。nとmを1000画素とし、1000画素で20mmの長さを撮像した場合、1画素は約0.02mmのサイズとなる。カラーの画素2は、R、G、Bの3バイトからなり、RとGとBは、それぞれ0~255の諧調を表現できる。ここで諧調は色の濃さや明るさを示す数値である。
【0017】
図5は、カラーの画素2からグレースケールの画素3への変換例を示す図である。
図5では、代表的なカラー色の変換例を5つ示している。カラーの画素2が(R、G、B)=(255、255、255)は白色で、グレースケールの画素3に変換した場合、白色のGs=255となる。黄色を示す(R、G、B)=(255、255、0)は、灰色のGs=170となる。赤色を示す(R、G、B)=(255、0、0)は、灰色のGs=85となる。青色を示す(R、G、B)=(0、0、255)は、灰色のGs=85となる。カラーで黒色を示す(R、G、B)=(0、0、0)は、グレースケールでは、黒色のGs=0となる。カラーの画素2から、グレースケールの画素3への変換には、上記のように(R+G+B)/3の変換式を使用した。これに限らず、重み付けをした変換式を使用してもよい。
【0018】
図6は、グレースケールに変換された検査画像11を示す図である。グレースケールの画素3は、1画素が0~255の諧調で表現できる。検査画像11のX座標kの位置(A-Aで示す)に検査ライン6を定める。検査ライン6の各画素をp
1~p
nとする。nは、例として1000とした。
【0019】
図7は、検査ライン6のグラフを示す図である。検査ライン6の各画素p
1~p
1000をプロットすると、例として波線で示すようなジグザグ波形となる。右下がりになっているのは、
図3に示すように、検査画像11を卵1の中央よりやや下側に設定したので、検査画像11の下側の明るさが低下していることを示す。グレースケールの画素の各数値は、殻表面の凹凸を反映した明るさになっている。検査ライン6の画素p
1~p
1000の各数値の近似曲線は、太線で示すように求めることができる。近似曲線は、y=a1X
4+a2X
3+a3X
2+a1X
1+a5とした。a1~a5の係数を各画素の数値を基に求めると、a1が1.303e
-9、a2が-1.127e
-6、a3が0.000211、a4が-0.0505、a5が204.8を算出できた。Xが0の時はYが204.8なので、純粋な白(255)からは少し下がった値を示している。
【0020】
図8は、
図7で近似曲線9からの偏差を水平な直線に変換したグラフである。検査ライン6の画素p
1~p
1000の各数値が、近似曲線9からどれくらい離れているかをプロットした。近似曲線9は水平としている。このグラフは、金属の表面粗さの評価と同じで、凹凸を表す山と谷の数値から、標準偏差(m)を算出することができる。また、正常な卵の標準偏差(σ)をあらかじめ求めておき、判定値(m/σ)を算出し、判定値(m/σ)が閾値(T)より大きいか小さいかによって、卵の殻の凹凸に関する合否を判定する。
【0021】
標準偏差(m)の算出は、下記の式1で行なうことができる。mは、i番目の山の高さ(又は谷の深さ)を二乗した値を求め、それらの全個数分の和を取り、nで割り、ルートを取って求める。なお、検査ライン6は1本に限るものではなく、複数の検査ライン6で合否を判定しても良い。
【0022】
【0023】
図9は、卵表面検査装置100の処理フローチャートである。S1は、カメラで搬送中の卵の表面を撮像してフルカラー画像を得る段階である。S2は、撮像した画像から検査画像を切り出す段階である。検査画像のサイズはm×n(横がm画素、縦がn画素)とする。S3は、検査画像の各画素(RGB)をグレースケール化し、グレースケールの検査画像を作成する段階である。S4は、検査画像の中に検査ラインを定める。S5は、検査ラインの各画素の値に対し、近似曲線を算定する段階である。S6は、近似曲線からの偏差を正規化して、山の高さと谷の深さのグラフにする段階である。S7は、標準偏差(m)を算定する段階である。S8は、標準偏差(m)を、正常な卵の殻の標準偏差(σ)で割り、判定値(m/σ)を求め、判定値(m/σ)が閾値(T)より大きいか小さいかで、殻の合否を判定する。判定値(m/σ)が閾値(T)より大きい卵は、コンベアの上方に設けた挟み具で挟み上げて、別のコンベアに流すことができる。
【0024】
図10は、グレースケール画像を疑似カラーで可視化する例である。灰色は濃度が変化しても分かりにくい。そこで、255の諧調の数値を7レベルに分けて、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の7色の疑似カラーを割り当てる。例えば、赤をグレースケールの217~255に割り当てたので、殻の凸部で白く反射する箇所は赤く表示されるので、検査画像をモニターに表示することで、作業者の確認が容易にできる。殻の凹部で暗い灰色の箇所は、青~藍に表示されるので、作業者の確認が容易にできる。
【0025】
図11は、
図10に準じた疑似カラーで可視化した検査画像11の例である。検査画像11は、
図8のグレースケール画像を使用した。(a)に示すように、NG卵の場合、殻の表面に赤い塊部分があることがわかる。一方、(b)に示すように、OK卵の場合、赤の部分はなく、黄の部分が多い。
【0026】
グレースケール画像を疑似カラー化して、検査画像11の赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の画素の数を数える。赤の画素数が多い場合や藍の画素数が多い場合は、殻に凹凸があるとして、OK卵とNG卵の区別に活用することもできる。