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特開2024-171257吸込ノズル及び吸込ノズルを備えた掃除機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171257
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】吸込ノズル及び吸込ノズルを備えた掃除機
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/02 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
A47L9/02 A
A47L9/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088234
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100157808
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 耕平
(72)【発明者】
【氏名】赤瀬 美樹
(72)【発明者】
【氏名】大高 弘之
【テーマコード(参考)】
3B061
【Fターム(参考)】
3B061AA09
(57)【要約】
【課題】複数のばね間における力のバランスに依ることなく吸込ケースの基本位置を設定することができる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示の吸込ノズルは、塵埃が吸い込まれるように開口した吸込空間を形成している吸込ケースを有しており、吸込ケースは、床面に沿って前後方向に回動可能になっている。吸込ノズルは、吸込ケースを基本位置に位置決めするために、弾性規制片と押出片とを有している。弾性規制片は、第1腕部及び第2腕部を有している。押出片は、吸込ケースに設けられており、弾性規制片を弾性変形させる力を第1腕部又は第2腕部に与えることにより角変位することができる。しかし、この力を下回る力では、押出片の角変位は、第1腕部又は第2腕部によって規制され、吸込ケースは、基本位置に位置決めされる。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵埃が流れる吸引管に接続されるノズル本体と、
塵埃が吸い込まれるように開口した吸込空間を形成しているとともに、床面に沿って前方又は後方に回動可能に前記ノズル本体に接続された吸込ケースと、
前記吸込ケースに外力が作用していない状態で前記吸込ケースが前記ノズル本体に対して左方向又は右方向に突出する基本位置に前記吸込ケースを位置決めする位置決め機構と、を備え、
前記位置決め機構は、
前記吸込ケースの回動に伴って角変位するように前記吸込ケースに設けられた押出片と、
前記吸込ケースが前記基本位置から第1回動方向に回動するときに前記押出片に接触して前記押出片の角変位を規制するように設けられた第1腕部と、前記吸込ケースが前記基本位置から前記第1回動方向とは反対の第2回動方向に回動するときに前記押出片に接触して前記押出片の角変位を規制するように設けられた第2腕部と、前記第1腕部と前記第2腕部とに繋がった弾性変形可能な弾性接続部と、を有している弾性規制片と、
前記第1腕部及び前記第2腕部のうち一方の腕部が前記吸込ケースの回動軸回りに角変位することを許容するように前記一方の腕部と係合しているとともに、前記一方の腕部が前記回動軸回りに角変位しているときに、前記第1腕部及び前記第2腕部のうち他方の腕部が前記回動軸回りに回動することを規制することにより前記弾性接続部を弾性変形させて前記弾性接続部に復元力を蓄えさせる変形促進部と、を有しており、
前記吸込ケースは、前記押出片が前記一方の腕部を押し出すと回動し、前記一方の腕部が前記押出片を押し戻すように前記弾性接続部が弾性変形した状態から復元すると前記基本位置に戻る、吸込ノズル。
【請求項2】
前記吸込ケースが前記基本位置にあるとき、前記第1腕部及び前記第2腕部は、前記押出片に接触している、請求項1に記載の吸込ノズル。
【請求項3】
前記弾性規制片は、前記弾性接続部がコイル状に形成されたトーションばねを含んでいる、請求項1又は2に記載の吸込ノズル。
【請求項4】
前記位置決め機構は、前記弾性接続部に挿入されるように前記吸込ケースから突出して、前記弾性接続部を所定の位置で位置決めする位置決め部を有している、請求項3に記載の吸込ノズル。
【請求項5】
前記弾性接続部は、前記吸込ケースが前記基本位置にあるときに前記一方の腕部を前記変形促進部に圧接させるように弾性変形している、請求項1又は2に記載の吸込ノズル。
【請求項6】
前記変形促進部は、前記押出片が前記他方の腕部を押し出したときに前記他方の腕部が前記回動軸回りに角変位して、前記変形促進部から離間することを許容するとともに、前記他方の腕部が前記回動軸回りに角変位しているときに、前記一方の腕部が前記回動軸回りに回動することを規制することにより前記弾性接続部を弾性変形させて前記弾性接続部に復元力を蓄えさせるように構成されている、請求項1又は2に記載の吸込ノズル。
【請求項7】
前記変形促進部は、前記吸込ケースが前記基本位置にあるときに前記第1腕部及び前記第2腕部と係合するように前記回動軸回りの周方向において互いに離間した位置に設けられた第1係合端面及び第2係合端面を有しており、
前記第1係合端面は、前記押出片が前記第2腕部を前記第2係合端面から離す方向に押し出しているときに前記第1腕部との係合状態を維持するように構成されており、
前記第2係合端面は、前記押出片が前記第1腕部を前記第1係合端面から離す方向に押し出しているときに前記第1腕部との係合状態を維持するように構成されている、請求項1又は2に記載の吸込ノズル。
【請求項8】
前記弾性規制片は、前記弾性接続部が弾性変形しておらず、且つ、前記第2腕部が前記第2係合端面に係合した状態で、前記第1腕部が前記第1係合端面から離れた離間位置で前記回動軸の軸方向における前記変形促進部の端面上に位置するように構成されており、
前記変形促進部の前記端面は、前記第1腕部が前記変形促進部の前記端面に押し付けられながら前記離間位置から前記第1係合端面側にスライドするにつれて、前記回動軸の軸方向における前記第1腕部の弾性的な曲げ変形量が大きくなるように形成されており、
前記第2係合端面は、前記第1腕部が前記変形促進部の前記端面上をスライドしている間において前記第2腕部との係合状態を維持するように構成されており、
前記第1腕部は、前記変形促進部の前記端面を越えて角変位されると復元して前記第1係合端面と係合するように構成されている、請求項7に記載の吸込ノズル。
【請求項9】
前記回動軸の軸方向における前記変形促進部の前記端面は、前記第1腕部が前記変形促進部の前記端面に押し付けられながら前記離間位置から前記第1係合端面側にスライドするにつれて、前記回動軸の軸方向における前記第1腕部の弾性的な曲げ変形量が大きくなるように、前記離間位置から前記第1係合端面にかけて傾斜している、請求項8に記載の吸込ノズル。
【請求項10】
前記ノズル本体は、前記第1腕部が前記離間位置から前記変形促進部の前記端面上をスライドしているときに前記弾性規制片が前記回動軸の軸方向に変位することを防止するように構成されている、請求項8に記載の吸込ノズル。
【請求項11】
塵埃を吸引する吸引力を発生する吸引源と、
前記吸引源の吸引力によって吸い込まれた塵埃が流れる吸引管と、
請求項1又は2に記載の吸込ノズルと、を備えている、掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面に沿って回動可能な吸込ケースを有している吸込ノズルと、この吸込ノズルを備えた掃除機と、に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、図16に示す掃除機300が開示されている。この掃除機300は、塵埃を吸引する吸引力を発生する吸引源311を内蔵した掃除機本体310と、掃除機本体310から延設された吸引管320と、吸引管320の先端に取り付けられて床面上を移動する吸込ノズル330と、を備えている。吸込ノズル330は、床面上の幅広い領域から塵埃を除去するために、図17に示すように、吸引管320よりも幅広になっている。
【0003】
使用者が吸込ノズル330を幅狭の空間に差し込むことを許容するために、特許文献1の吸込ノズル330は、幅方向に狭くなるように変形可能に構成されている。
【0004】
すなわち、吸込ノズル330は、左右に並んで配置された吸込ケース331,332と、これらの吸込ケース331,332を床面に沿って回動可能に保持するノズル本体333と、を有している。吸込ケース331,332は、吸引源311の吸引力により塵埃が吸い込まれるように下方に開口した吸込空間334を形成している。また、ノズル本体333は、図18に示すように、吸引管320の先端に接続されており、吸引管320の流路と吸込空間334とを連通する連通空間335を形成している。
【0005】
吸込ケース331,332の回動を許容しつつ吸込ケース331,332をノズル本体333に接続することを可能にするために、吸込ケース331,332の上面からは、筒状のケース軸部336が突出している。また、ノズル本体333の下面からは、ケース軸部336が挿入されるノズル軸受部337が突出している。ケース軸部336は、ノズル軸受部337に挿入され、ノズル軸受部337内で回転可能になっている。
【0006】
吸込ケース331,332に外力が作用していないとき、吸込ケース331,332は、図19(a)に示す基本位置にある。吸込ケース331,332に後向きの外力が作用すると、吸込ケース331,332は、基本位置から図19(b)に示す位置に回動する。逆に、吸込ケース331,332に前向きの外力が作用すると、吸込ケース331,332は、基本位置から図19(c)に示す位置に回動する。
【0007】
吸込ケース331,332に作用する外力がなくなったときに吸込ケース331,332を基本位置に戻すために、図20に示すように、4つのコイルバネ341~344が設けられている。コイルバネ341,342の一端部は、吸込ケース331側に接続されている一方で、これらのコイルバネ341,342の他端部は、ノズル本体333側に接続されている。また、コイルバネ343,344の一端部は、吸込ケース332側に接続されている一方で、これらのコイルバネ343,344の他端部は、ノズル本体333側に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013-128617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
コイルバネ341,342は、吸込ケース331が基本位置にあるときに、力のバランスがとれるように構成されている。また、コイルバネ343,344は、吸込ケース332が基本位置にあるときに、力のバランスがとれるように構成されている。しかし、この力のバランスが崩れれば、吸込ケース331,332に外力が作用していない状態で吸込ケース331,332がとりうる基本位置は、図19(a)に示す位置から前方又は後方に回動した位置になる。
【0010】
本開示は、複数のばね間における力のバランスに依ることなく吸込ケースの基本位置を設定することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示における吸込ノズルは、塵埃が流れる吸引管に接続されるノズル本体と、塵埃が吸い込まれるように開口した吸込空間を形成しているとともに、床面に沿って前方又は後方に回動可能にノズル本体に接続された吸込ケースと、吸込ケースに外力が作用していない状態で吸込ケースがノズル本体に対して左方向又は右方向に突出する基本位置に吸込ケースを位置決めする位置決め機構と、を備えている。位置決め機構は、吸込ケースの回動に伴って角変位するように吸込ケースに設けられた押出片と、吸込ケースが基本位置から第1回動方向に回動するときに押出片に接触して押出片の角変位を規制するように設けられた第1腕部と、吸込ケースが基本位置から第1回動方向とは反対の第2回動方向に回動するときに押出片に接触して押出片の角変位を規制するように設けられた第2腕部と、第1腕部と第2腕部とに繋がった弾性変形可能な弾性接続部と、を有している弾性規制片と、第1腕部及び第2腕部のうち一方の腕部が吸込ケースの回動軸回りに角変位することを許容するように一方の腕部と係合しているとともに、一方の腕部が回動軸回りに角変位しているときに、第1腕部及び第2腕部のうち他方の腕部が回動軸回りに回動することを規制することにより弾性接続部を弾性変形させて弾性接続部に復元力を蓄えさせる変形促進部と、を有している。吸込ケースは、押出片が一方の腕部を押し出すと回動し、一方の腕部が押出片を押し戻すように弾性接続部が弾性変形した状態から復元すると基本位置に戻る。
【0012】
本開示における掃除機は、塵埃を吸引する吸引力を発生する吸引源と、吸引源の吸引力によって吸い込まれた塵埃が流れる吸引管と、上述の吸込ノズルと、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
上述の技術は、複数のばね間における力のバランスに依ることなく吸込ケースの基本位置を設定することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】掃除機の断面図
図2】掃除機の吸込ノズルの断面図
図3】吸込ノズルの平面図
図4】吸込ノズルの展開斜視図
図5】吸込ノズルの展開斜視図
図6】吸込ノズルのノズル本体のベース部の斜視図
図7】吸込ノズルの軸受ユニットの斜視図
図8】吸込ノズルの底面図
図9】吸込ノズルの取付部材の斜視図
図10】吸込ノズルの一部の平面図
図11】後向きの外力を受けたときの吸込ノズルの一部の平面図
図12】前向きの外力を受けたときの吸込ノズルの一部の平面図
図13】吸込ノズルの弾性規制片の斜視図
図14】吸込ノズルの一部の平面図
図15】他の弾性規制片の斜視図
図16】従来の掃除機の側面図
図17】従来の掃除機の吸込ノズルの斜視図
図18】従来の吸込ノズルの断面図
図19】従来の吸込ノズルの底面図
図20】従来の吸込ノズルの断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、掃除機の実施形態を詳細に説明するが、当業者の理解を容易にするために、例えば、既によく知られた事項の詳細説明、又は、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0016】
図1は、スティック型の掃除機100の概略的な断面図である。図1を参照して、掃除機100を説明する。
【0017】
(掃除機の全体的な構造)
掃除機100は、上下方向に長い掃除機本体110と、掃除機本体110から上方に延設された握持部179と、を備えている。掃除機本体110は、円筒状の筐体111と、筐体111に内蔵された吸引源116と、を有している。握持部179は、筐体111の上端112から延設された棒状の部分であり、使用者によって握持可能な太さを有している。握持部179の外周面には、使用者によって操作される操作部178が設けられている。使用者が操作部178を操作することにより、吸引源116は、作動したり、停止したりする。吸引源116は、塵埃を床面から吸引する吸引力を発生するように構成されており、例えば、上向きの吸引気流を発生させる回転羽根と、回転羽根を回転駆動するモータと、によって構成され得る。
【0018】
吸引源116の下側には、フィルタ部115が配置されており、フィルタ部115の更に下側では、吸引管113が上下方向に延設されている。吸引源116が作動すると、塵埃は、上向きの吸引気流に乗って吸引管113を流れる。フィルタ部115は、空気(吸引気流)の通過を許容する一方で、この空気に含まれる塵埃を捕捉するように構成されている。このため、塵埃は、フィルタ部115と吸引管113の上端との間の空間に溜められる。
【0019】
この空間に溜まった塵埃が吸引源116の停止時に吸引管113内に落下することを防止するために、吸引管113の上端には、逆止弁114が取り付けられている。逆止弁114は、吸引源116の吸引力により上向きに回動するように構成されており、吸引源116が作動しているときに、吸引管113の上端の開口を開放する開位置に変位し、吸引源116が停止しているときに、吸引管113の上端を閉じる。
【0020】
吸引管113の下端部は、吸込ノズル130に接続可能に構成されており、図2に示すように、略円形の縦断面を有している。吸引管113の下端部を、以下の説明では、「接続端118」と称する。接続端118は、左右方向に延びる円筒形状を有している。
【0021】
吸込ノズル130は、図2及び図3に示すように、接続端118に接続されたノズル本体131と、ノズル本体131に左右一対に取り付けられた吸込ケース132,133と、を有している。図3に示す吸込ケース132,133は、ノズル本体131に対して左右に突出しており、以下の説明では、図3に示す吸込ケース132,133の位置を「基本位置」と称する。図3の矢印で示すように、吸込ケース132,133は、ノズル本体131との接続部回りに床面に沿って前後方向に回動可能である。
【0022】
ノズル本体131は、図4に示すベース部160、カバー部材170、流路形成片180と、図5に示す軸受ユニット150と、を有している。
【0023】
ベース部160は、吸引管113の接続端118を回動可能に支持するために設けられており、流路119の下端を区画するベース板162と、左右に互いに離間した位置においてベース板162の上面から立設された側壁163,164と、を備えている。側壁163,164は、ベース板162上で前後方向に延設されており、側壁163,164の後側部分には、略半円弧状の切欠部181,182が形成されている。吸引管113の接続端118の両端部は、これらの切欠部181,182上に載置され、切欠部181,182によって回転可能に支持される。
【0024】
側壁163,164において、切欠部181,182よりも前側の部分は、吸引管113の流路に連通する流路119を形成している。すなわち、側壁163,164は、流路119の左右を区画している。また、ベース板162において、側壁163,164の間にある部分は、流路119の下部を区画している。
【0025】
流路形成片180は、図4に示すように、側壁163,164の前側部分上で固定される流路板183と、流路板183の後端に接続された弧状板部184と、を有している。流路板183は、流路119の上部を区画するために設けられており、側壁163,164の前側部分に固定される。弧状板部184は、図2に示すように、吸引管113の接続端118に被せられ、側壁163,164の切欠部181,182とともに吸引管113の接続端118を保持する。
【0026】
カバー部材170は、下向きに開口した略矩形箱状に形成されており、ベース部160を全体的に覆うように取り付けられる。カバー部材170の後側部分には、カバー部材170の後端から前方に凹設された切欠部171が形成されている。切欠部171によって規定された空間は、吸引管113を前後方向に傾動させるために利用される。
【0027】
ベース部160は、ベース板162より前側において、軸受ユニット150を収容するための空間を形成している。詳細には、ベース部160は、図6に示すように、ベース板162の前端から立設された立設壁168と、立設壁168の上部から前方に突出した押さえ部161と、を有している。立設壁168及び押さえ部161は、下向きに開口した空間を形成しており、この空間内に軸受ユニット150が収容される。
【0028】
立設壁168には、略矩形状の流出口169が形成されている。流出口169の左端からは、側壁163が後方に延設されている。また、流出口169の右端からは、側壁164が後方に延設されている。流出口169は、軸受ユニット150が収容される空間を流路119に連通させるために設けられている。
【0029】
押さえ部161は、軸受ユニット150が収容される空間の上側、前側、左側及び右側を区画するように構成されている。押さえ部161の前端近くには、貫通穴165が形成されている。また、貫通穴158の後側において、左右一対の貫通穴166,167が形成されている。これらの貫通穴165~167は、軸受ユニット150を押さえ部161及び立設壁168によって囲まれた空間内で固定するために形成されている。
【0030】
軸受ユニット150は、左右一対のケース軸受部151,152と、これらのケース軸受部151,152を互いに接続する接続部153と、を有している。ケース軸受部151,152は、接続部153によって一体化されている。
【0031】
接続部153には、図7に示すように、後向きに開口した流出口159が形成されており、この流出口159は、軸受ユニット150が押さえ部161内に配置されたときに、押さえ部161の流出口169に対向する。この流出口159は、流出口169を介して、軸受ユニット150の内部空間を流路119に連通させるために設けられている。
【0032】
接続部153の前側部分には、図5に示すように、接続部153(軸受ユニット150)をベース部160に固定するために利用される貫通穴158が形成されている。軸受ユニット150は、貫通穴158がベース部160の押さえ部161の貫通穴165と略同軸になる位置で押さえ部161に取り付けられる。
【0033】
ケース軸受部151,152は、互いに左右対称になっており、以下の説明では、ケース軸受部151の構造を説明し、ケース軸受部152の構造の説明を省略する。
【0034】
ケース軸受部151は、下方に開口した内部空間を形成している略円筒形状を有している。この内部空間には、吸込ケース132,133の一部が収容される。ケース軸受部151の周壁には、開口部154が形成されている。この開口部154は、流出口159,169を介して、ケース軸受部151の内部空間を流路119に連通させるために設けられている。
【0035】
ケース軸受部151の上端部155は、平面視において、リング状になっており、ケース軸受部151の上端部155の中央には、貫通穴156が形成されている。軸受ユニット150は、この貫通穴156が押さえ部161の貫通穴166と略同軸になった状態で押さえ部161に取り付けられる。この状態では、右側のケース軸受部152の上端部155の貫通穴156は、押さえ部161の貫通穴167と略同軸になる。ケース軸受部151,152の貫通穴156は、ケース軸受部151,152及び吸込ケース132,133を押さえ部161に取り付けられるために利用される。
【0036】
吸込ケース132,133は、互いに左右対称になっており、以下の説明では、左側の吸込ケース132の構造を説明し、右側の吸込ケース133の構造の説明を省略する。
【0037】
吸込ケース132は、図8に示すように下向きに開口した吸込空間134を形成しているケース本体123と、図5に示すようにケース本体123の上面から上向きに突出した略円筒状のケース軸部135と、を有している。ケース本体123の吸込空間134は、ケース本体123の先端(左端)に向けて徐々に狭まるように形成されている。
【0038】
ケース軸部135は、ケース本体123の基端部(右端部)において上向きに突出し、ケース軸受部151に挿入される。ケース軸部135がケース軸受部151に挿入されることにより、上下方向に延びる回動軸が規定される。吸込ケース132が図3に示す基本位置にあるとき、ケース本体123は、ノズル本体131に対して左向きに突出しているが、この位置から回動軸回りに床面に沿って前方又は後方に回動することができる。
【0039】
ケース軸部135の内部空間は、ケース本体123の吸込空間134と連通している。ケース軸部135の周壁には、図5に示すように、開口部136が形成されており、この開口部136は、吸込ケース132が基本位置にあるときに、ケース軸受部151の開口部154と重なる。したがって、吸込空間134は、ケース軸部135の内部空間、開口部136,154及び流出口159,169を介して、流路119に連通する。このため、吸引源116が作動すると、床面上の塵埃は、吸引源116の吸引力により吸込空間134に吸い込まれる。
【0040】
なお、ケース軸部135の周壁は、ケース本体123が基本位置から前方又は後方に回動すると、ケース軸受部151の開口部154を部分的に塞いでもよい。しかし、ケース軸部135の周壁は、ケース本体123が基本位置から前方及び後方に90°回動した状態においてケース軸受部151の開口部154を完全に塞がないように形成されることが好ましい。
【0041】
ケース軸部135の上端部137は、平面視において、リング状になっており、ケース軸部135の上端部137の中央には、貫通穴138が形成されている。この貫通穴138は、ケース軸部135がケース軸受部151に挿入されると、ケース軸受部151の貫通穴156に上下に重なる。
【0042】
吸込ケース132,133及び軸受ユニット150は、図9に示す取付部材190によって押さえ部161に取り付けられる。
【0043】
取付部材190は、左右方向に長い挟持板194を有している。左右方向における挟持板194の中央からは、中央支持部205が前方に延設されており、中央支持部205の前端からは前柱191が立設されている。挟持板194の左端部の前端からは、支持脚206が立設されており、支持脚206の上端には、円板状のばね座板198が設けられている。また、挟持板194の右端部の前端からは、支持脚207が立設されており、支持脚207の上端には、円板状のばね座板199が設けられている。ばね座板198,199の略中央からは、柱状の位置決め部192,193が立設されている。位置決め部192,193は、挟持板194の前側且つ前柱191の左斜め後ろ及び右斜め後ろに位置している。
【0044】
挟持板194は、図8に示すように、吸込ケース132,133の基端部の下側に位置し、押さえ部161を伴って、吸込ケース132,133と軸受ユニット150とを上下に挟むように構成されている。
【0045】
前柱191は、軸受ユニット150の貫通穴158に挿通可能に形成されており、前柱191の上端には、図9に示すように、ネジ穴195が穿設されている。このネジ穴195には、押さえ部161の貫通穴165に挿通されたネジが螺合される。この状態において、支持脚206は、吸込ケース132のケース軸部135内に挿入されて、支持脚206の上端のばね座板198の中央部分は、ケース軸受部151の貫通穴156内に露出する。また、支持脚207は、吸込ケース133のケース軸部135内に挿入されて、支持脚207の上端のばね座板199の中央部分は、ケース軸受部152の貫通穴156内に露出する。
【0046】
この状態では、位置決め部192,193は、押さえ部161の貫通穴166,167と略同軸になっている。位置決め部192,193の上端には、ネジ穴196,197が形成されており、これらのネジ穴196,197は、押さえ部161の貫通穴166,167に対向する。取付部材190のネジ穴195~197にネジを螺合することにより、取付部材190は、押さえ部161に固定される。また、この状態で、吸込ケース132,133及び軸受ユニット150は、押さえ部161及び挟持板194によって上下に挟まれる。なお、位置決め部192,193は、押さえ部161に対する固定だけでなく、吸込ケース132,133を図3に示す基本位置に位置決めするための位置決め機構140の一部としても利用される。位置決め機構140の構造については、別途詳述する。
【0047】
ばね座板198上には、ばね座板198の上面から上向きに突出したリング部201が設けられている。位置決め部192は、リング部201の略中心において、ばね座板198から立設されている。位置決め部192の基端部の外径は、リング部201の内径よりも小さくなっているので、位置決め部192の基端部とリング部201との間には、環状溝203が形成される。リング部201の外径は、ケース軸受部151の貫通穴156の内径よりも小さくなっており、リング部201は、貫通穴156内に現れる。ばね座板199上にも、リング部202が設けられており、位置決め部193の基端部とリング部202との間には、環状溝204が形成されている。
【0048】
(位置決め機構)
吸込ノズル130は、図10に示すように、左側の吸込ケース132を基本位置に位置決めするための位置決め機構140と、右側の吸込ケース133を基本位置に位置決めするための位置決め機構140と、を有している。これらの位置決め機構140は、左右対称の構造を有しているので、左側の吸込ケース132用の位置決め機構140を以下に説明し、右側の吸込ケース133用の位置決め機構140の説明を省略する。なお、図10に示す吸込ケース132,133は、基本位置にある。
【0049】
位置決め機構140は、上述の位置決め部192と、吸込ケース132を基本位置に弾性的に位置決めする弾性規制片141と、を有している。位置決め部192は、弾性規制片141をばね座板198上で位置決めするために用いられる。また、位置決め機構140は、互いに協働して弾性規制片141に弾性変形を生じさせる押出片139及び変形促進部120を更に有している。押出片139は、ケース軸部135に設けられており、変形促進部120は、ケース軸部に設けられている。具体的には、押出片139は、図5に示すように、ケース軸部135の上端部137から突出しており、変形促進部120は、ケース軸受部151の上端部155から突出している。弾性規制片141が押出片139及び変形促進部120によって弾性変形されると、吸込ケース132の回動が許容される。
【0050】
本実施形態では、弾性規制片141は、図13に示すように、トーションばねによって構成されており、第1腕部143と、第2腕部144と、第1腕部143及び第2腕部144に繋がったコイル状の弾性接続部142と、を有している。
【0051】
弾性接続部142には、位置決め部192が挿通され、弾性接続部142の軸が上下方向に向く姿勢でばね座板198上に設置されている。このとき、弾性接続部142の下端は、ばね座板198上に形成された環状溝203に嵌め込まれている。第1腕部143は、図13に示すように、弾性接続部142の下端から突出している一方で、第2腕部144は、弾性接続部142の上端から突出している。このため、第1腕部143は、第2腕部144よりも低い位置にある。また、第1腕部143及び第2腕部144は、回動軸回りの周方向において互いに離間した位置において弾性接続部142から突出している。
【0052】
変形促進部120は、図5に示すように、回動軸の左側で、ケース軸受部151の上端部155から上向きに突出している。詳細には、変形促進部120は、貫通穴156の周縁に沿う突出部分であり、平面視において略半円弧状になっている。
【0053】
変形促進部120は、図5及び図10に示すように、回動軸回りの周方向において互いに離間した位置でケース軸受部151の上端部155から立設された第1係合端面145及び第2係合端面146を有している。吸込ケース132が基本位置にあるときには、第1係合端面145に、第1腕部143の先端部分が当接され、第2係合端面146に、第2腕部144の先端部分が当接される。
【0054】
押出片139は、回動軸の左側且つ変形促進部120の右側で、ケース軸受部151の上端部155の貫通穴156を通じて、ケース軸部135の上端部137から上向きに突出している。回動軸回りの周方向における押出片139の両端部は、第1腕部143及び第2腕部144に接触している。
【0055】
押出片139は、回動軸回りの吸込ケース132の回動に伴って、回動軸回りに角変位しながら、第1腕部143又は第2腕部144を押し出す部分である。しかし、第1腕部143又は第2腕部144に対する押出片139の押出力が弾性接続部142を弾性変形させるほど大きくなければ、押出片139の角変位は、第1腕部143又は第2腕部144によって規制される。このため、第1腕部143又は第2腕部144に対する押出片139の押出力が弾性接続部142を弾性変形させるほど大きくなければ、吸込ケース132は、基本位置に位置決めされる。すなわち、吸込ケース132は、図10に示すように軸受ユニット150に対して左方に突出した位置に保持される。
【0056】
一方、弾性接続部142を弾性変形させるほど強い力で押出片139が第1腕部143を押し出すと、第1腕部143は、図11に示すように、第1係合端面145から離れる方向に角変位することができる。この状態では、吸込ケース132は、回動軸回りに後方(第1回動方向)に回動することができる。なお、このとき、第2係合端面146は、第2腕部144との係合状態が保たれるように形成されており、第1腕部143が第1係合端面145から離れる方向に角変位するにつれて、弾性接続部142は、復元力を蓄えつつ弾性変形する。そして、第1腕部143に対する押出片139の押圧力がなくなると、弾性接続部142が復元し、第1腕部143は、第1係合端面145に当接する位置に戻ることができる。
【0057】
逆に、押出片139が強い力で第2腕部144を押し出すと、第2腕部144は、図12に示すように、第2係合端面146から離れる方向に角変位することができる。この状態では、吸込ケース132は、回動軸回りに前方(第2回動方向)に回動することができる。なお、このとき、第1係合端面145は、第1腕部143との係合状態が保たれるように形成されており、第2腕部144が第2係合端面146から離れる方向に角変位するにつれて、弾性接続部142は、弾性変形する。そして、第2腕部144に対する押出片139の押圧力がなくなると、弾性接続部142が復元し、第2腕部144は、第2係合端面146に当接する位置に戻ることができる。
【0058】
変形促進部120の上端面(回動軸の軸方向における端面)は、図7に示すように、回動軸回りの周方向に第1係合端面145から延設された傾斜面147を有している。この傾斜面147は、第1係合端面145から離れるにつれて徐々に低くなるように傾斜しており、第1係合端面145とは反対側の傾斜面147の端部209には段差が形成されている。傾斜面147の長さは、弾性接続部142が弾性変形していない状態で第2腕部144が第2係合端面146に係合しているときに、第1腕部143が傾斜面147上に位置するように設定されている。傾斜面147は、弾性接続部142が弾性変形した状態での弾性規制片141の取付を容易にするために設けられている。
【0059】
(弾性規制片の取付)
弾性規制片141は、以下の理由から、弾性接続部142がある程度弾性変形した状態で変形促進部120に取り付けられることが好ましい。
【0060】
弾性接続部142の弾性変形及び復元が繰り返されることにより、弾性接続部142が塑性変形することが想定される。この塑性変形の前に第1腕部143及び第2腕部144が第1係合端面145及び第2係合端面146に接触していても、塑性変形後には、第1腕部143及び第2腕部144は、第1係合端面145及び第2係合端面146から離れ得る。この状態では、弾性規制片141は、回動軸回りに角変位し得、吸込ケース132を基本位置に位置決めする機能が劣化し得る。
【0061】
このような事態を避けるために、弾性接続部142がある程度弾性変形した状態で変形促進部120に取り付けられることが好ましい。すなわち、弾性接続部142は、押出片139が第1腕部143及び第2腕部144に押出力を付加していないときに、第1腕部143及び第2腕部144を図10の矢印の方向に付勢するようにある程度弾性変形していることが好ましい。この状態では、第1腕部143及び第2腕部144は、第1係合端面145及び第2係合端面146に圧接される。この場合、弾性接続部142の塑性変形により、第1係合端面145及び第2係合端面146に対する第1腕部143及び第2腕部144の圧接力は低下し得る。しかし、第1腕部143及び第2腕部144は、第1係合端面145及び第2係合端面146に当接する位置に保たれる。このため、弾性接続部142がある程度塑性変形しても、吸込ケース132に対する位置決め機能の劣化は防止される。
【0062】
上述の如く、弾性接続部142を弾性変形した状態で変形促進部120に取り付けるために、作業者は、図10の矢印で示す方向とは反対向きに力を付与するように第1腕部143及び第2腕部144を摘まんで弾性接続部142を弾性変形させてもよい。そして、作業者は、位置決め部192が弾性接続部142に挿入されるように弾性接続部142を降下させ、その後、第1腕部143及び第2腕部144から指を離してもよい。この結果、第1腕部143及び第2腕部144は、弾性接続部142の復元力により、第1係合端面145及び第2係合端面146に向けて変位し、これらと係合し得る。しかし、このような取付作業では、使用者が第1腕部143及び第2腕部144を摘まんでいるときに、弾性規制片141の弾発力により、弾性規制片141が使用者の手から弾け飛ぶことが想定される。このような事態を避けるため、位置決め機構140は、傾斜面147及び押出片139を利用した弾性規制片141の取付が可能になるように構成されている。左側の弾性規制片141の取付方法が図14を参照して以下に説明されるが、右側の弾性規制片141も同様の取付方法により取付可能である。
【0063】
作業者は、図14に示すように、弾性接続部142に位置決め部192を挿入する。このとき、弾性接続部142は、弾性変形しておらず、第2腕部144は、第2係合端面146から時計回りの方向に離間した位置にある。第1腕部143は、第1係合端面145とは反対側における傾斜面147の端部209(図7を参照)上に位置している。変形促進部120において、端部209は、比較的低くなっているので、弾性規制片141は、ばね座板198から大きく浮き上がった状態にはならない。この状態において、第1腕部143及び第2腕部144は、押出片139に接触している。
【0064】
その後、使用者が弾性規制片141を上側から手で押さえながら、押出片139を反時計回りに回転すると、第1腕部143が押出片139によって押され、弾性規制片141の弾性接続部142は、位置決め部192回りに回転する(反時計回り)。弾性規制片141がある程度回転すると、第2腕部144は、第2係合端面146に当接する。すなわち、第2腕部144と第2係合端面146とが係合した状態が得られる。
【0065】
第2腕部144が図14に示す位置から第2係合端面146と係合するまでの間、第1腕部143は、第1係合端面145に向けて傾斜面147上をスライドする。しかし、第2腕部144が第2係合端面146に当接した時点では、第1腕部143は、第1係合端面145にはまだ到達しておらず、この第1係合端面145から離れた離間位置で傾斜面147によって支持されている。傾斜面147は、図7に示すように、端部209から第1係合端面145に向けて高くなっているので、第1腕部143は、傾斜面147に押し付けられながら第1係合端面145に向けてスライドしている間、上向きに徐々に弾性的に曲げ変形する。なお、第1腕部143の弾性的な曲げ変形に起因する復元力より、弾性規制片141は、上向きに変位しようとするが、使用者が弾性規制片141を上側から押さえているので、第1腕部143は、傾斜面147上をスライドしている間、復元することはない。
【0066】
使用者が押出片139を更に反時計回りに回転すると、第1腕部143は、第1係合端面145を越える。このとき、第1腕部143は、下向きの復元力により傾斜面147から落下して、第1係合端面145と係合する。この間、第2腕部144は、第2係合端面146との係合状態を維持している。このため、弾性接続部142は、弾性変形した状態に維持される。すなわち、使用者は、弾性接続部142を弾性変形させつつ、第1腕部143及び第2腕部144を第1係合端面145及び第2係合端面146に係合させることができる。
【0067】
このような取付方法では、使用者が第1腕部143及び第2腕部144を摘まんで弾性接続部142を弾性変形させなくてもよい。このため、弾性規制片141の取付作業時に、弾性規制片141の弾発力により、弾性規制片141が作業者の手から弾け飛ぶ事態が回避される。
【0068】
(掃除機の動作)
使用者が握持部179を握持して、握持部179及び掃除機本体110を後方に傾動させると、吸引管113の接続端118は、図2の矢印の方向に回転する。この結果、吸引管113の流路は、ノズル本体131内で形成された流路119と連通する。このとき、使用者が操作部178を操作して、吸引源116を作動させると、吸引源116は、上向きの吸引力を発生させる。この吸引力により、逆止弁114は、上向きに回動して吸引管113の上端を開く。
【0069】
その後、吸引源116の吸引力は、吸引管113の流路、ノズル本体131内の流路119、流出口169,159、開口部154,136及びケース軸部135の内部空間を通じて、吸込ケース132,133の吸込空間134に作用する。なお、吸込空間134は、吸込ケース132の先端に向けて狭まっているので、吸込空間134の先端においてもある程度強い吸引力が作用し得る。吸引源116の吸引力により、床面上の塵埃は、空気とともに吸込空間134に流入する。
【0070】
その後、塵埃は、ケース軸部135の内部空間、開口部136,154、流出口159,169、ノズル本体131内で形成された流路119及び吸引管113の流路を順次通過する。吸引管113の上端を通過した塵埃は、フィルタ部115によって捕捉されて、掃除機本体110内に貯留される。
【0071】
吸込ケース132,133は、基本位置にあるとき、軸受ユニット150に対して左右方向に突出しているので、吸込ノズル130は、最も幅広になっている。この状態で、使用者が吸込ノズル130を前進又は後進させれば、塵埃は、床面上の幅広い領域から除去され得る。
【0072】
吸込ケース132,133は、ケース軸部135を介して、軸受ユニット150に対して前後方向に回動可能に取り付けられている。しかし、ケース軸部135の上端部137から突出した押出片139の周方向における両端部は、弾性規制片141の第1腕部143及び第2腕部144に接触しているので、吸込ケース132,133は、小さな力では回動せず、基本位置に留められる。言い換えると、吸込ケース132,133を後方(第1回動方向)に回動させようとする外力によって、押出片139は、第1腕部143を押し出そうとする。しかし、第1腕部143に対する押出片139の押出力が弾性接続部142を弾性変形させるほど大きくなければ、押出片139の角変位は、第1腕部143によって規制される。また、吸込ケース132,133を前方(第2回動方向)に回動させようとする外力が生じたときの押出片139の押出力が弾性接続部142を弾性変形させるほど大きくなければ、押出片139の角変位は、第2腕部144によって規制される。
【0073】
しかし、使用者が吸込ノズル130を前進させているときに、吸込ケース132の前端が障害物に衝突すれば、この衝突に起因する外力は、吸込ケース132を後方に回動させ得る。この場合、この外力によって、ケース軸部135は、ケース軸受部151内で回動軸回りに回転する(図10において、反時計回り(第1回動方向))。ケース軸部135の反時計回りの回転により、ケース軸部135の上端部137から立設された押出片139は、第1腕部143が第1係合端面145から離れる方向に第1腕部143を押し出す。これにより、押出片139は、第1腕部143を伴って、回動軸回りに角変位することができる。この間、コイル状の弾性接続部142に挿入された位置決め部192により、弾性規制片141全体が変位することが防止されている。また、第1係合端面145とは反対側の第2係合端面146は、第2腕部144との係合状態を維持し、第2腕部144が回動軸回りに角変位することを規制する。このため、弾性接続部142及び第2腕部144が所定の位置に保持されつつ第1腕部143が回動軸回りに角変位する。この結果、吸込ケース132は、回動軸回りに回動することができる。この状態では、第1腕部143の角変位に伴って、弾性接続部142の弾性変形量が増し、弾性接続部142に復元力が蓄えられる。その後、吸込ケース132に作用している外力がなくなると、弾性規制片141は、第1腕部143が第1係合端面145に当接するまで復元する。この結果、押出片139が第1腕部143によって元の位置に押し戻されて、吸込ケース132は、基本位置に戻る。
【0074】
逆に、使用者が吸込ノズル130を後進させているときに、吸込ケース132の後端が障害物に衝突すれば、この衝突に起因する外力は、吸込ケース132を前方に回動させ得る。この場合、この外力によって、ケース軸部135は、ケース軸受部151内で回動軸回りに回転する(図10において、時計回り(第2回動方向))。ケース軸部135の時計回りの回転により、押出片139は、第2腕部144が第2係合端面146から離れる方向に第2腕部144を押し出す。これにより、押出片139は、第2腕部144を伴って、回動軸回りに角変位することができる。この間、コイル状の弾性接続部142に挿入された位置決め部192により、弾性規制片141全体が変位することが防止されている。また、第1係合端面145は、第1腕部143との係合状態を維持している。このため、弾性接続部142及び第1腕部143が所定の位置に保持されつつ第2腕部144が回動軸回りに角変位する。この結果、吸込ケース132は、回動軸回りに回動することができる。この状態では、第2腕部144の角変位に伴って、弾性接続部142の弾性変形量が増す。その後、吸込ケース132に作用している外力がなくなると、弾性規制片141は、第2腕部144が第2係合端面146に当接するまで復元する。この結果、押出片139が第2腕部144によって元の位置に押し戻されて、吸込ケース132は、基本位置に戻る。
【0075】
吸込ケース133も、吸込ケース132と同様に前後方向に回動可能である。このため、吸込ケース133の回動動作については、説明を省略する。
【0076】
上述の実施形態では、吸込ケース132,133は、基本位置にあるとき、ケース軸受部151に対して幅方向に突出しており、吸込ノズル130は、幅広になっている。この状態で、使用者が吸引源116を作動させて吸込ノズル130を前進又は後進させれば、吸引源116の吸引力により、床面上の幅広い領域から塵埃が除去される。
【0077】
使用者が吸込ノズル130を前進又は後進させているとき、吸込ケース132は、床面から抗力(たとえば、床面からの摩擦力)を受け得る。しかし、この抗力が弾性規制片141の弾性接続部142を弾性変形させるほど大きくなければ、吸込ケース132,133は、基本位置に保たれる。したがって、吸込ケース132,133が不必要に回動することはない。
【0078】
一方、使用者が吸込ノズル130を前進させて狭い空間に差し込もうとすると、この狭い空間の周囲にある家具に吸込ケース132が接触し得る。この場合、吸込ケース132は、弾性規制片141の弾性接続部142を弾性変形させるほど大きな後向きの外力を受け得る。この外力によって、吸込ケース132は、回動軸回りに後方に回動し得る。吸込ケース132が後方に回動すれば、吸込ノズル130は、吸込ケース132が基本位置にあるときよりも幅狭になる。このため、使用者は、吸込ノズル130を狭い空間に差し込むことができる。
【0079】
使用者が吸込ノズル130を後進させているときに、吸込ケース132が例えば机の脚に引っ掛かることが想定される。この場合、吸込ケース132は、弾性規制片141の弾性接続部142を弾性変形させるほど大きな前向きの外力を受け得る。この外力によって、吸込ケース132は、回動軸回りに前方に回動し得る。このため、吸込ケース132が机の脚に引っ掛かって吸込ノズル130の後進が妨げられるような事態が回避され得る。使用者が吸込ノズル130を更に後進させると、吸込ケース132は、前方に回動しながら机の脚を通過して、弾性規制片141の弾性接続部142の復元力により基本位置に戻る。
【0080】
吸込ケース132,133がともに基本位置にある場合、吸込ケース132,133の吸込空間134に作用している吸引力は、略等しい大きさになっている。このとき、毛髪などの長い塵埃が吸込ケース132,133を跨ぐように吸込ケース132,133の下側で延設していれば、この長い塵埃の両端が略等しい力で引っ張られ、結果として、掃除機100に吸引されないことが生じ得る。しかし、清掃作業の間、吸込ケース132,133のうち一方のみが回動する状態が生じ得、この状態では、長い塵埃が吸引されないという事態は、以下のように解消され得る。
【0081】
例えば、左側の吸込ケース132のみが回動したときには、吸込ケース132のケース軸部135の周壁がケース軸受部151の開口部154を塞ぐ面積が大きくなり得る。この結果、吸込ケース132の吸込空間134に作用している吸引力が、吸込ケース133の吸込空間134に作用している吸引力よりも小さくなり得る。この状態では、長い塵埃は、比較的高い吸引力が作用している吸込ケース133側に引き寄せられ、吸込ケース133を通じて掃除機100内に吸い込まれ得る。
【0082】
吸込ケース132は、弾性規制片141の第1腕部143及び第2腕部144によって基本位置に位置決めされている。すなわち、単一の弾性規制片141によって、吸込ケース132は、基本位置に位置決めされている。この位置決めは、複数のばね間の力のバランスによるものではないので、複数のばね間の力のバランスの崩れに起因する基本位置の変化は生じない。
【0083】
本実施形態では、弾性規制片141は、弾性接続部142が弾性変形した状態で変形促進部120に取り付けられている。この場合、吸込ケース132の回動が繰り返されて弾性規制片141がある程度塑性変形しても、吸込ケース132が基本位置にあるときに第1腕部143及び第2腕部144が第1係合端面145及び第2係合端面146に圧接された状態が保たれ得る。すなわち、吸込ケース132が外力を受けていないときに第1腕部143及び第2腕部144が第1係合端面145及び第2係合端面146に圧接された状態が得られる。この状態が続く限り、吸込ケース132の基本位置は一定であり、この基本位置の経時的な変化は生じない。なお、弾性接続部142が弾性変形していない状態で弾性規制片141が変形促進部120に取り付けられてもよい。この場合、変形促進部120に傾斜面147が設けられていなくとも、弾性規制片141は、変形促進部120に容易に取り付けられ得る。
【0084】
本実施形態では、弾性規制片141の弾性接続部142には、位置決め部192が差し込まれている。このため、弾性規制片141は、位置決め部192によって位置決めされた状態になっており、吸込ケース132の回動時における弾性規制片141の前後方向又は左右方向における変位が規制される。
【0085】
また、位置決め部192は、ケース軸部135と略同軸に配置されてケース軸部135の上端面から上向きに突出しているので、弾性規制片141の弾性接続部142は、位置決め部192が差し込まれた状態では、ケース軸部135に対して略同軸になっている。仮に、ケース軸部135に対して弾性接続部142が前後方向及び/又は左右方向にずらした位置に配置されれば、ケース軸部135と弾性接続部142とのずれ量の分だけ、位置決め機構140は、前後方向及び/又は左右方向に大きくなり得る。一方、ケース軸部135と弾性接続部142とが略同軸に配置されていれば、このような大型化は抑制される。なお、位置決め機構140の大型化の問題は生じ得るが、弾性規制片141を第1係合端面145及び第2係合端面146に係合させることができれば、ケース軸部135と弾性接続部142とが非同軸に配置されていてもよい。この場合、位置決め部192は、この非同軸の位置で弾性接続部142を位置決めするように構成され得る。
【0086】
上述の取付方法では、弾性規制片141の上向きの変位を防止するために、使用者が弾性規制片141を手で上側から押さえている。代替的に、使用者は、弾性接続部142に位置決め部192を挿入した後であって、押出片139を回転させる前に、押さえ部161を位置決め機構140に被せて、弾性規制片141の上向きの変位を防止してもよい。押さえ部161が位置決め機構140に被せられて、押出片139が押さえ部161によって隠されても、作業者は、吸込ケース132を反時計回りに角変位させることにより、押出片139を同方向に角変位させることができる。
【0087】
特に、変形促進部120の傾斜面147は、第1係合端面145から離れるにつれて低くなっており、第1係合端面145とは反対側の傾斜面147の端部209の高さは、小さくなっている。このため、使用者は、第2腕部144よりも低い位置にある第1腕部143に曲げ変形を生じさせることなく、傾斜面147の端部209に第1腕部143を載置することができる。したがって、使用者が図14に示す位置に弾性規制片141を載置した後に弾性規制片141から手を放しても、弾性規制片141が上方に飛び跳ねることはない。このため、使用者は、弾性規制片141を押さえることなく、押さえ部161を位置決め機構140に被せることができる。
【0088】
使用者が押さえ部161を位置決め機構140に被せた後に、吸込ケース132を図14に示す位置から反時計回りに回動すれば、第1腕部143は、第1係合端面145に向けて傾斜面147上をスライドする。この間、第1腕部143は、上向きに弾性的に曲げ変形して、第1腕部143の復元力は、弾性規制片141を上方に浮き上がらせようとし得る。しかし、弾性規制片141の浮き上がりは、押さえ部161によって妨げられる。このため、第1腕部143は、曲げ変形量を徐々に大きくしながら第1係合端面145に到達する。そして、第1腕部143は、第1係合端面145を越えると、下向きに復元し、第1係合端面145に係合することができる。
【0089】
使用者が吸込ケース132を図14に示す位置から反時計回りに所定の角度だけ回動させると、第2腕部144は、第2係合端面146に当接する。このとき、弾性規制片141の浮き上がり(回動軸の軸方向の変位)は、押さえ部161によって防止されているので、第2腕部144は、第2係合端面146から外れず、第2腕部144と第2係合端面146との係合状態が維持される。第2腕部144が第2係合端面146と当接した後に、使用者が第1腕部143を第1係合端面145と係合させるために、吸込ケース132を更に反時計回りに回動させると、弾性接続部142は、弾性変形する。この弾性接続部142の弾性変形は、第1腕部143が第1係合端面145と係合することにより維持される。このように、使用者は、吸込ケース132を反時計回りに回動させるだけで、第1係合端面145及び第2係合端面146に対する第1腕部143及び第2腕部144の係合状態と、弾性接続部142の弾性変形状態と、を得ることができる。この取付作業において、使用者は、第1腕部143及び第2腕部144を摘まんで弾性接続部142を弾性変形させる必要はなく、弾性規制片141の弾発力により、弾性規制片141が使用者の手から弾け飛ぶような事態が回避される。
【0090】
本実施形態では、吸込ケース132が基本位置にあるとき、第1腕部143及び第2腕部144は、押出片139の両端部に接触しており、第1腕部143と押出片139との間及び第2腕部144と押出片139との間には、空隙は生じていない。このため、吸込ケース132のガタが抑制されている。しかし、吸込ケース132のガタが許容されれば、吸込ケース132が基本位置にあるときにおいて、押出片139は、第1腕部143及び第2腕部144のうち少なくとも一方に接触しない状態になり得るように形成されてもよい。
【0091】
上述の実施形態では、弾性規制片141として、トーションばねが用いられている。代替的に、弾性規制片141は、図15に示すような板ばねにより構成されていてもよい。この場合、弾性接続部142は、湾曲した板状に形成され得る。この場合、位置決め部192は、弾性接続部142を厚さ方向に挟んで位置決めするように構成されていてもよい。
【0092】
上述の実施形態では、変形促進部120は、傾斜面147を有している。代替的に、回動軸の軸方向における変形促進部120の端面は、第1腕部143が第1係合端面145に向けてスライドされるにつれて第1腕部143を上向きに曲げ変形させることができる他の形状を有していてもよい。たとえば、回動軸の軸方向における変形促進部120の端面は、第1腕部143のスライドを妨げない程度の小さな段差が回動軸回りの周方向に連続する階段状に形成されていてもよい。この場合、第1腕部143が変形促進部120の端面の段差を通過するときに、音を生じやすい。この音の発生により、変形促進部120への弾性規制片141の取付不良を以下のように防止することができる。
【0093】
上述の如く、押さえ部161を位置決め機構140に被せた状態で弾性規制片141を変形促進部120に取り付ける場合、使用者は、第1腕部143が第1係合端面145に係合しているか否かを視覚的に確認することはできない。このため、第1腕部143が第1係合端面145に係合する前に、使用者が吸込ケース132から手を離してしまうことが考えられる。この場合、第1腕部143は、弾性接続部142の復元により、変形促進部120の端面を逆向きにスライドするが、このとき、第1腕部143と変形促進部120との間で断続的な音が発生する。この音は、第1腕部143が第1係合端面145に係合した状態では生じないので、音の有無により、使用者は、第1腕部143が第1係合端面145に係合した状態が得られたか否かを把握することができる。
【0094】
上述の実施形態では、吸込ケース132,133は、基本位置から前方及び後方に回動可能になっている。代替的に、吸込ケース132,133は、基本位置から前方にのみ回動可能になっていてもよいし、基本位置から後方にのみ回動可能になっていてもよい。この場合、第1腕部143及び第2腕部144のうち一方の腕部が変形促進部120に固定され得る。
【0095】
上述の実施形態では、吸込ノズル130は、2つの吸込ケース132,133を有している。しかし、吸込ノズル130は、単数の吸込ケースを有していてもよいし、2を超える数の吸込ケースを有していてもよい。
【0096】
上述の実施形態では、掃除機100は、スティック型である。代替的に、掃除機100は、自走式の掃除機(いわゆる、ロボット掃除機)又はキャニスタ型の掃除機であってもよい。
【0097】
(効果等)
上述の実施形態に係る吸込ノズル130及び掃除機100は、以下の特徴を有しているとともに、以下の効果を奏する。
【0098】
上述の実施形態に係る一の局面に係る吸込ノズルは、塵埃が流れる吸引管に接続されるノズル本体と、塵埃が吸い込まれるように開口した吸込空間を形成しているとともに、床面に沿って前方又は後方に回動可能にノズル本体に接続された吸込ケースと、吸込ケースに外力が作用していない状態で吸込ケースがノズル本体に対して左方向又は右方向に突出する基本位置に吸込ケースを位置決めする位置決め機構と、を備えている。位置決め機構は、吸込ケースの回動に伴って角変位するように吸込ケースに設けられた押出片と、吸込ケースが基本位置から第1回動方向に回動するときに押出片に接触して押出片の角変位を規制するように設けられた第1腕部と、吸込ケースが基本位置から第1回動方向とは反対の第2回動方向に回動するときに押出片に接触して押出片の角変位を規制するように設けられた第2腕部と、第1腕部と第2腕部とに繋がった弾性変形可能な弾性接続部と、を有している弾性規制片と、第1腕部及び第2腕部のうち一方の腕部が吸込ケースの回動軸回りに角変位することを許容するように一方の腕部と係合しているとともに、一方の腕部が回動軸回りに角変位しているときに、第1腕部及び第2腕部のうち他方の腕部が回動軸回りに回動することを規制することにより弾性接続部を弾性変形させて弾性接続部に復元力を蓄えさせる変形促進部と、を有している。吸込ケースは、押出片が一方の腕部を押し出すと回動し、一方の腕部が押出片を押し戻すように弾性接続部が弾性変形した状態から復元すると基本位置に戻る。
【0099】
上述の構成では、吸込ケースがノズル本体に対して左方向又は右方向に突出する基本位置にある状態で、使用者が吸込ノズルを前後方向に移動すれば、幅広の領域から塵埃が吸込ケースの吸込空間に吸い込まれる。このとき、吸込ケースが障害物に衝突し、後向きの外力を受ければ、吸込ケースは、床面に沿って後方に回動する。逆に、前向きの外力を受ければ、吸込ケースは、床面に沿って前方に回動する。吸込ケースの前後方向の回動により、吸込ノズルは、幅狭になり、使用者は、障害物の存在に拘わらず、吸込ノズルを狭い空間に挿入することができる。
【0100】
仮に、床からの摩擦力といった小さな外力で吸込ケースが前後方向に大きく回動すれば、吸込ノズルの幅が安定せず、清掃作業に不都合である。このため、吸込ケースは、位置決め機構によって基本位置に位置決めされる。吸込ケースが基本位置から回動しようとすると、押出片は、第1腕部又は第2腕部に接触する。このとき、押出片が第1腕部又は第2腕部に加える力が弾性接続部を弾性変形させるほど大きくなければ、押出片の角変位は、第1腕部又は第2腕部によって妨げられる。この場合、吸込ケースは、回動せず、基本位置に留まる。
【0101】
一方、吸込ケースが、上述の如く、障害物との衝突に起因して前向き又は後向きの大きな外力を受ければ、押出片は、第1腕部又は第2腕部を押し出す。押出片が第1腕部及び第2腕部のうち一方の腕部を押し出すと、この腕部は、回動軸回りに角変位することができ、吸込ケースは、ある程度大きく回動することができる。一方の腕部が吸込ケースの回動軸回りに角変位しているとき、第1腕部及び第2腕部のうち他方の腕部の角変位は、変形促進部によって規制され、第1腕部及び第2腕部が繋がった弾性接続部は、弾性変形する。この結果、弾性接続部に復元力が蓄えられ、その後、吸込ケースに作用している外力がなくなれば、弾性接続部の復元力により、押出片は、一方の腕部によって元の位置に押し戻される。すなわち、吸込ケースは、基本位置に戻される。このように、吸込ケースは、単一の弾性規制片によって基本位置に位置決めされており、複数のばね間の力のバランスが崩れることに起因して吸込ケースの基本位置が変化するという従来の問題は生じない。
【0102】
上述の構成において、吸込ケースが基本位置にあるとき、第1腕部及び第2腕部は、押出片に接触していてもよい。
【0103】
上述の構成では、吸込ケースが基本位置にあるとき、第1腕部及び第2腕部は、押出片に接触しており、第1腕部と押出片との間及び第2腕部と押出片との間に空隙は生じていない。このため、吸込ケースのガタが抑制される。
【0104】
上述の構成において、弾性規制片は、弾性接続部がコイル状に形成されたトーションばねを含んでいてもよい。
【0105】
上述の構成では、弾性規制片としてトーションばねが利用可能である。
【0106】
上述の構成において、位置決め機構は、弾性接続部に挿入されるように吸込ケースから突出して、弾性接続部を所定の位置で位置決めする位置決め部を有していてもよい。
【0107】
上述の構成では、位置決め部は、コイル状の弾性接続部内に挿通されるので、第1腕部及び第2腕部のうち一方の腕部が押出片によって押し出されたときに、弾性規制片全体が変位することが規制される。また、コイル状の弾性接続部の内部空間は、位置決め部の配置に有効に利用される。
【0108】
上述の構成において、弾性接続部は、吸込ケースが基本位置にあるときに一方の腕部を変形促進部に圧接させるように弾性変形していてもよい。
【0109】
弾性接続部が弾性変形及び復元を繰り返すことにより、弾性接続部が経時的に塑性変形することが想定される。仮に、弾性接続部が弾性変形していない状態で設けられていれば、弾性接続部の経時的な塑性変形により、吸込ケースが基本位置にあるときに一方の腕部が変形促進部に接触した状態から変形促進部から離れた状態になるような一方の腕部の位置変化が生じ得る。このような一方の腕部の位置変化に伴って、吸込ケースの基本位置が経時的に変化し得る。
【0110】
一方、上述の構成のように、弾性接続部が弾性変形した状態で設けられていれば、吸込ケースが基本位置にあるときに一方の腕部が変形促進部に圧接した状態が得られる。このとき、弾性接続部がある程度塑性変形したとしても、変形促進部に対する一方の腕部の圧接力は低下し得るものの、一方の腕部は、変形促進部に接触する位置に維持される。この結果、吸込ケースの基本位置の経時的な変化が抑制される。
【0111】
上述の構成において、変形促進部は、押出片が他方の腕部を押し出したときに他方の腕部が回動軸回りに角変位して、変形促進部から離間することを許容するとともに、他方の腕部が回動軸回りに角変位しているときに、一方の腕部が回動軸回りに回動することを規制することにより弾性接続部を弾性変形させて弾性接続部に復元力を蓄えさせるように構成されていてもよい。
【0112】
上述の構成では、押出片が第1腕部及び第2腕部のうち一方の腕部を押し出したときに、他方の腕部は、変形促進部と係合するので、他方の腕部の角変位が規制される。この場合には、押出片が一方の腕部を押し出す方向における吸込ケースの回動が許容される。また、他方の腕部が押出片により押し出された場合には、変形促進部は、他方の腕部が回動軸回りに角変位して変形促進部から離間することを許容するので、反対方向における吸込ケースの回動も許容される。このとき、変形促進部は、一方の腕部が回動軸回りに回動することを規制するので、吸込ケースが反対方向に回動しているときも、弾性接続部が弾性変形し、弾性接続部に復元力が蓄えられる。このため、吸込ケースが反対方向に回動しているときも、弾性接続部の復元力により、吸込ケースは、基本位置に戻り得る。
【0113】
上述の構成において、変形促進部は、吸込ケースが基本位置にあるときに第1腕部及び第2腕部と係合するように回動軸回りの周方向において互いに離間した位置に設けられた第1係合端面及び第2係合端面を有していてもよい。第1係合端面は、押出片が第2腕部を第2係合端面から離す方向に押し出しているときに第1腕部との係合状態を維持するように構成されていてもよい。第2係合端面は、押出片が第1腕部を第1係合端面から離す方向に押し出しているときに第1腕部との係合状態を維持するように構成されていてもよい。
【0114】
上述の構成では、吸込ケースを回動させる外力が吸込ケースに作用すると、押出片は、第1腕部又は第2腕部を第1係合端面又は第2係合端面から離す方向に押し出す。第1係合端面は、押出片が第2腕部を第2係合端面から離す方向に押し出しているときに第1腕部との係合状態を維持するので、弾性接続部は、弾性変形することができる。逆に、押出片が第1腕部を第1係合端面から離す方向に押し出しているときには、第2係合端面は、第2腕部との係合状態を維持するので、このときも、弾性接続部は、弾性変形することができる。その後、吸込ケースに作用している外力がなくなると、弾性接続部の弾性変形に起因する復元力により、押出片は、元に位置に押し戻される。この結果、吸込ケースは、基本位置に戻る。
【0115】
上述の構成において、弾性規制片は、弾性接続部が弾性変形しておらず、且つ、第2腕部が第2係合端面に係合した状態で、第1腕部が第1係合端面から離れた離間位置で回動軸の軸方向における変形促進部の端面上に位置するように構成されていてもよい。変形促進部の端面は、第1腕部が変形促進部の端面に押し付けられながら離間位置から第1係合端面側にスライドするにつれて、回動軸の軸方向における第1腕部の弾性的な曲げ変形量が大きくなるように形成されていてもよい。第2係合端面は、第1腕部が変形促進部の端面上をスライドしている間において第2腕部との係合状態を維持するように構成されていてもよい。第1腕部は、変形促進部の端面を越えて角変位されると復元して第1係合端面と係合するように構成されていてもよい。
【0116】
使用者は、指で第1腕部と第2腕部とを摘まんで弾性接続部を弾性変形させた状態で変形促進部に近づけ、その後、指を取り除けば、第1腕部及び第2腕部を第1係合端面及び第2係合端面に係合させることができる。しかし、このような取付作業では、弾性規制片の弾発力により、弾性規制片が使用者の手から弾け飛ぶことが想定される。このような事態を回避するため、上述の構成では、使用者は、以下のように、回動軸の軸方向における変形促進部の端面を利用して、弾性規制片を取り付けることができる。
【0117】
使用者は、弾性接続部を弾性変形させることなく、第2係合端面に第2腕部を係合させると、第1腕部は、第1係合端面から離れた離間位置で回動軸の軸方向における変形促進部の端面上に位置する。この状態から、使用者が第1腕部を変形促進部の端面に押し付けながら離間位置から第1係合端面側にスライドするにつれて、回動軸の軸方向における第1腕部の弾性的な曲げ変形量が大きくなる。そして、第1腕部が変形促進部の端面を越えてスライドされると、第1腕部は、復元して第1係合端面と係合する。第1腕部が変形促進部の端面上をスライドしている間、第2腕部は、第2係合端面との係合状態を維持しているので、第1腕部が第1係合端面に係合したときには、弾性接続部は、弾性変形した状態になる。
【0118】
なお、使用者は、第1腕部が変形促進部の端面上の離間位置にあるように弾性規制片を設置するときに、第1腕部と第2腕部との間に押出片が位置するように吸込ケースの向きを調整してもよい。この場合、使用者は、第1腕部が変形促進部の端面に押し付けられるように弾性規制片を押圧しながら吸込ケースを回動軸回りに回動させることにより、押出片で第1腕部を第1係合端面側に押し出して、変形促進部の端面上でスライドさせることができる。すなわち、使用者は、押出片を用いて、第1腕部を第1係合端面と係合させることができる。
【0119】
上述の構成において、回動軸の軸方向における変形促進部の端面は、第1腕部が変形促進部の端面に押し付けられながら離間位置から第1係合端面側にスライドするにつれて、回動軸の軸方向における第1腕部の弾性的な曲げ変形量が大きくなるように、離間位置から第1係合端面にかけて傾斜していてもよい。
【0120】
上述の構成では、回動軸の軸方向における変形促進部の端面は、離間位置から第1係合端面にかけて傾斜しているので、使用者が第1腕部を第1係合端面側にスライドすれば、回動軸の軸方向における第1腕部の弾性的な曲げ変形量が大きくなる。その後、第1腕部が変形促進部の端面を越えると、第1腕部は、復元して第1係合端面と係合することができる。
【0121】
上述の構成において、ノズル本体は、第1腕部が離間位置から変形促進部の端面上をスライドしているときに弾性規制片が回動軸の軸方向に変位することを防止するように構成されていてもよい。
【0122】
上述の構成では、使用者が、第1腕部を離間位置から変形促進部の端面上でスライドさせているときに、第1腕部は、回転軸の軸方向に弾性的に曲げ変形する。このとき、弾性規制片は、第1腕部の復元力により、回転軸の軸方向に変位しようとする。しかし、この変位は、ノズル本体によって防止されるので、使用者自身が弾性規制片を押さえなくてもよい。
【0123】
上述の実施形態に係る他の局面に係る掃除機は、塵埃を吸引する吸引力を発生する吸引源と、吸引源の吸引力によって吸い込まれた塵埃が流れる吸引管と、上述の吸込ノズルと、を備えている。
【産業上の利用可能性】
【0124】
上述の実施形態の吸込ノズル及び掃除機は、清掃作業に用いられる装置に好適に利用される。
【符号の説明】
【0125】
100・・・・・・・・・・・・・・・・・掃除機
113・・・・・・・・・・・・・・・・・吸引管
116・・・・・・・・・・・・・・・・・吸引源
120・・・・・・・・・・・・・・・・・変形促進部
130・・・・・・・・・・・・・・・・・吸込ノズル
131・・・・・・・・・・・・・・・・・ノズル本体
132,133・・・・・・・・・・・・・吸込ケース
134・・・・・・・・・・・・・・・・・吸込空間
139・・・・・・・・・・・・・・・・・押出片
140・・・・・・・・・・・・・・・・・位置決め機構
141・・・・・・・・・・・・・・・・・弾性規制片
142・・・・・・・・・・・・・・・・・弾性接続部
143・・・・・・・・・・・・・・・・・第1腕部
144・・・・・・・・・・・・・・・・・第2腕部
145・・・・・・・・・・・・・・・・・第1係合端面
146・・・・・・・・・・・・・・・・・第2係合端面
153・・・・・・・・・・・・・・・・・接続部
192,193・・・・・・・・・・・・・位置決め部
図1
図2
図3
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