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特開2024-171266合成スラブ構造及び合成スラブ構造を施工する施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171266
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】合成スラブ構造及び合成スラブ構造を施工する施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/32 20060101AFI20241204BHJP
   E04B 5/40 20060101ALI20241204BHJP
   E04B 1/16 20060101ALI20241204BHJP
   E04C 5/18 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
E04B5/32 D
E04B5/40 E
E04B1/16 C
E04C5/18 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088243
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】関 勝輝
(72)【発明者】
【氏名】米澤 泰人
(72)【発明者】
【氏名】片岡 春香
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164AA02
2E164BA02
(57)【要約】
【課題】デッキプレートが梁上で連続しない場合であっても、耐火設計基準上、連続支持として合成スラブ構造を設計する。
【解決手段】梁(H)に載置される複数の板材部(10)と、梁(H)及び複数の板材部(10)上に打設されたコンクリート部(50)と、を備える合成スラブ構造(1)であって、板材部(10)は、少なくとも3つの梁(H1,H2,H3)のうち、中間梁(H3)を跨いで連続しないように端部梁(H1,H2)と中間梁(H3)の間又は隣り合う中間梁(H3)の間に架け渡されており、コンクリート部(50)に埋設される複数の鉄筋(20)又は金網を備え、中間梁(H3)の上方に鉄筋(20)又は金網の継手部(23)が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁に載置される複数の板材部と、前記梁及び前記複数の板材部上に打設されたコンクリート部と、を備える合成スラブ構造であって、
前記板材部は、少なくとも3つの梁のうち、中間梁を跨いで連続しないように端部梁と前記中間梁の間又は隣り合う前記中間梁の間に架け渡されており、
前記コンクリート部に埋設される複数の鉄筋又は金網を備え、
前記中間梁の上方に前記鉄筋又は金網の継手部が設けられていることを特徴とする合成スラブ構造。
【請求項2】
前記鉄筋又は金網は、前記コンクリート部のひび割れ拡大防止部材であることを特徴とする請求項1に記載の合成スラブ構造。
【請求項3】
前記継手部は、連続支持とみなした際、前記中間梁近傍の負曲げモーメントが発生している範囲に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の合成スラブ構造。
【請求項4】
前記継手部が負担する曲げモーメントMaは、前記負曲げモーメントをM2としたときに、
Ma≧M2
であることを特徴とする請求項3に記載の合成スラブ構造。
【請求項5】
前記継手部における前記鉄筋又は金網の断面積atは、前記負曲げモーメントをM2、前記鉄筋又は金網の許容応力度をft、前記鉄筋又は金網の有効成dに7/8を乗じた応力中心間距離をJとしたときに、
at≧M2/(ft×J)
であることを特徴とする請求項4に記載の合成スラブ構造。
【請求項6】
前記継手部が設けられる範囲Rは、前記板材部の延在方向に沿ったスラブスパンをLxとしたときに、
R≦Lx/4
であることを特徴とする請求項3に記載の合成スラブ構造。
【請求項7】
前記継手部が設けられる範囲Rは、前記板材部の延在方向に沿ったスラブスパンをLxとしたときに、
R≦Lx/8
であることを特徴とする請求項3に記載の合成スラブ構造。
【請求項8】
前記板材部は、デッキプレートであることを特徴とする請求項1又は2に記載の合成スラブ構造。
【請求項9】
前記鉄筋は、鉄線又は異形鉄筋であることを特徴とする請求項1又は2に記載の合成スラブ構造。
【請求項10】
前記金網は、溶接金網又は異形鉄線溶接金網であることを特徴とする請求項1又は2に記載の合成スラブ構造。
【請求項11】
少なくとも3つの梁上に合成スラブ構造を施工する施工方法であって、
少なくとも3つの梁のうち、中間梁を跨いで連続しないように端部梁と前記中間梁の間又は隣り合う中間梁の間に板材部を架け渡す工程と、
前記梁及び前記板材部上にわたって複数の鉄筋又は金網を載置する工程と、
前記梁及び前記複数の板材部上にコンクリートを打設する工程と、を有し、
前記複数の鉄筋又は金網の継手部を前記中間梁の上方に設けることを特徴とする合成スラブ構造を施工する施工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成スラブ構造及び合成スラブ構造を施工する施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の床、天井、屋根等にはデッキプレート、コンクリート等を含む合成スラブ構造が使用されている。合成スラブ構造においてH形鋼により形成された大梁、小梁(鉄骨梁)の上にはデッキプレートが架け渡されて、大梁、小梁に固定されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-293835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、合成スラブ構造において、一枚のデッキプレートが、例えば、少なくとも3つの複数の梁にわたって架け渡されることもあるが、デッキプレートが少なくとも3つの複数の梁のうち、中間梁を跨いで連続しないように端部梁と中間梁の間に架け渡されることもある。この場合、合成スラブ構造を構成するコンクリートが少なくとも3つの複数の梁にわたって連続するように打設されていたとしても、中間梁の上方に発生する負曲げモーメントを負担することができる部材は存在しないことから、合成スラブ構造の耐火設計基準上、連続支持とはみなされず、単純支持とみなされる。そのため、梁間のスパンを短くしたり、デッキプレートの高さを増やしたり、デッキプレートの板厚を厚くする必要があり、設計上のデメリットとなっている。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、デッキプレートが梁上で連続しない場合であっても、耐火設計基準上、連続支持として合成スラブ構造を設計することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一態様は、梁に載置される複数の板材部と、前記梁及び前記複数の板材部上に打設されたコンクリート部と、を備える合成スラブ構造であって、前記板材部は、少なくとも3つの梁のうち、中間梁を跨いで連続しないように端部梁と前記中間梁の間又は隣り合う前記中間梁の間に架け渡されており、前記コンクリート部に埋設される複数の鉄筋又は金網を備え、前記中間梁の上方に前記鉄筋又は金網の継手部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
また、前記鉄筋又は金網は、前記コンクリート部のひび割れ拡大防止部材であることが好ましい。
【0008】
また、前記継手部は、連続支持とみなした際、前記中間梁近傍の負曲げモーメントが発生している範囲に設けられていることが好ましい。
【0009】
また、前記継手部が負担する曲げモーメントMaは、前記負曲げモーメントをM2としたときに、Ma≧M2であることが好ましい。
【0010】
また、前記継手部における前記鉄筋又は金網の断面積atは、前記負曲げモーメントをM2、前記鉄筋又は金網の許容応力度をft、前記鉄筋又は金網の有効成dに7/8を乗じた応力中心間距離Jとしたときに、 at≧M2/(ft×J)であることが好ましい。
【0011】
また、前記継手部が設けられる範囲Rは、前記板材部の延在方向に沿ったスラブスパンをLxとしたときに、R≦Lx/4であることが好ましい。
【0012】
また、前記継手部が設けられる範囲Rは、前記板材部の延在方向に沿ったスラブスパンをLxとしたときに、R≦Lx/8であることが好ましい。
【0013】
また、前記板材部は、デッキプレートであることが好ましい。
【0014】
また、前記鉄筋は、鉄線又は異形鉄筋であることが好ましい。
【0015】
また、前記金網は、溶接金網又は異形鉄線溶接金網であることが好ましい。
【0016】
本発明に係る一態様は、少なくとも3つの梁上に合成スラブ構造を施工する施工方法であって、少なくとも3つの梁のうち、中間梁を跨いで連続しないように端部梁と前記中間梁の間又は隣り合う中間梁の間に板材部を架け渡す工程と、前記梁及び前記板材部上にわたって複数の鉄筋又は金網を載置する工程と、前記梁及び前記複数の板材部上にコンクリートを打設する工程と、を有し、前記複数の鉄筋又は金網の継手部を前記中間梁の上方に設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、デッキプレートが梁上で連続しない場合であっても、耐火設計基準上、連続支持として合成スラブ構造を設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施の形態における合成スラブ構造を部分的に断面にして示す斜視図である。
図2】デッキプレートを部分的に断面にして示す斜視図である。
図3】中間梁上におけるコンクリート部の図示を省略した合成スラブ構造を示す斜視図である。
図4】合成スラブ構造を長さ方向Lに見た場合の概略的な断面図である。
図5】設計における単純支持及び連続支持とみなされた場合の曲げモーメントを比較した図である。
図6】継手部に要求される断面積の大きさを算出するために必要なパラメータを示す図である。
図7】第2の実施の形態における継手部の構成を示す図である。
図8】第2の実施の形態の変形例における継手部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率等が異なる部分が含まれている場合がある。また、以下に示す実施の形態は一例であり、本発明の範囲において、種々の実施の形態をとりうる。
【0020】
合成スラブ構造1は、梁Hに載置される複数の板材部としてのデッキプレート10と、梁H及び複数のデッキプレート10上に打設されたコンクリート部50と、を備えている。合成スラブ構造1は、長さ方向Lにおいて、デッキプレート10が少なくとも3つの梁Hのうち、間に位置する中間梁H3を跨いで連続しないように、端部梁H1,H2と中間梁H3の間又は隣り合う中間梁H3の間に架け渡されており、デッキプレート10及び梁H1~H3の上方にコンクリート部50に埋設される複数の鉄筋20が設けられている。
【0021】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る合成スラブ構造1を部分的に断面にして示す斜視図である。第1の実施の形態に係る合成スラブ構造1は、例えば、建築物の床、屋上又は天井等に用いられるものである。合成スラブ構造1は、例えば、H形鋼により形成された3つの梁H1,H2,H3、例えば鉄骨梁上に形成されている。
【0022】
図1に示すように、各梁H1,H2,H3は、互いの延在方向が並行になるように設けられている。3つの梁H1,H2,H3のうち、2つの梁H1,H2は、例えば、端部梁であり、2つの端部梁H1,H2の間に設けられている梁H3は、中間梁である。以下において梁H1,H2と梁H3とを区別しない場合には、単に、「梁H」と記載する。なお、2つの端部梁H1,H2の間に設けられている中間梁H3は、1つに限らず、複数の中間梁H3が設けられていてもよい。以下の説明において、長さ方向Lは、デッキプレート10が梁Hに架け渡される方向であり、幅方向Wは、梁Hの延在方向であり、デッキプレート10が梁Hに架け渡される方向に直交する方向である。また、厚さ方向(高さ方向)Dは、長さ方向L及び幅方向Wが形成する平面に対して直交する方向であり、合成スラブ構造1の厚さの方向である。
【0023】
図1に示すように、合成スラブ構造1は、主として、デッキプレート10と、複数の鉄筋20と、コンクリート部50と、を備える。
【0024】
デッキプレート10は、長さ方向Lにおいて、少なくとも3つの梁Hのうち間に位置する梁(中間梁)H3を跨いで連続しないように、端部梁H1と中間梁H3の間及び端部梁H2と中間梁H3の間に架け渡されていて、幅方向Wに沿って梁H上で敷き詰められている。すなわち、デッキプレート10は、延在方向における一端が隣り合う2つの梁Hの一方に載置され、延在方向における他端が隣り合う2つの梁Hの他方に載置される。デッキプレート10は、梁Hに載置されると共に梁Hにスポット溶接等により接合されていてもよい。なお、デッキプレート10は、図2に示すような山部と谷部が連続するデッキプレートであってもよいし、平板部にリブが形成されたフラットデッキや平板部に鉄筋トラスが装着された鉄筋付きデッキプレートであってもよい。
【0025】
図2に示すように、デッキプレート10は、山頂部110と、谷底部120,130と、傾斜部140と、嵌合部(折返し部)150,160と、を有する。
【0026】
デッキプレート10は、山頂部110及び谷底部120,130が長さ方向Lに延びる傾斜部140を介して互いに幅方向Wに交互に連続して波形状をなしている。デッキプレート10のプレート単体では、2つの山頂部110と、3つの谷底部120,130と、2組の一対の傾斜部140とからなり、幅方向Wに沿った断面において波形に形成されている。なお、デッキプレート10は、長さ方向Lの両端部においてエンドクローズ加工が施されていてもよい。
【0027】
山頂部110は、例えば、スラブにおいて梁Hに架け渡された状態において、梁Hに対して離間して上側に位置する平坦に形成された部分であり、長さ方向Lに延在する板状の部分である。山頂部110は、溝111を有する。溝111は、谷底部120,130の側に向けて凹状に形成されている。溝111は、長さ方向Lに延在し、溝111が1つの場合には幅方向Wにおいて中央近傍に設けられている。
【0028】
谷底部120,130は、山頂部110に対して平行又は略平行であり、梁Hに架け渡された状態において、梁Hに載置される平坦に形成された部分である。谷底部120,130は、長さ方向Lに延在する平坦な板状の部分である。谷底部120,130は、幅方向Wにおいて山頂部110とは重ならない。
【0029】
3つの谷底部120,130のうち、谷底部120は、幅方向Wにおいて谷底部130に挟まれており、デッキプレート10の中央部分に設けられている。幅方向Wにおいて谷底部120の両側には傾斜部140が連続している。谷底部120は、谷底部130に対して幅方向Wにおいて広幅に形成されている。谷底部120は、幅方向Wにおいて中央又は略中央に設けられた複数のエンボス部121を有する。エンボス部121は、長さ方向Lに沿って等間隔に設けられ、山頂部110に向かって凸に形成されている。また、エンボス部121は、長さ方向Lに沿って延在し、山頂部110に向かって凸に形成された溝部として形成されていてもよい。エンボス部121や溝部により、デッキプレート10の剛性が高まると共に形状が安定する。
【0030】
谷底部130は、デッキプレート10の幅方向Wにおける両端に設けられている。幅方向Wにおいて各谷底部130の谷底部120の側には、傾斜部140が連続している。傾斜部140が連続している側とは反対の谷底部130の端部にはそれぞれ、嵌合部150,160が設けられている。
【0031】
傾斜部140は、山頂部110と谷底部120,130とを連結する部分であり、長さ方向Lに延在する平坦な板状の部分である。傾斜部140は、幅方向Wにおいて山頂部110の両端部の側から斜めに谷底部120,130に向かって延びている。幅方向Wにおいて互いに隣り合う傾斜部140は、それぞれ異なる方向に山頂部110から互いに離間するように延びている。傾斜部140は、山頂部110及び谷底部120,130に対して所定の角度、例えば、鈍角を形成するように傾斜している。
【0032】
傾斜部140には複数のエンボス部141が形成されている。各エンボス部141は、長さ方向Lに沿って所定の間隔をあけて設けられている。エンボス部141は、傾斜部140が連続する谷底部120,130に向かって凸に形成されている。エンボス部141により、デッキプレート10の剛性が高まると共に形状が安定する。
【0033】
谷底部120,130と傾斜部140との間の移行部には膨出部142が形成されている。膨出部142は、一の山頂部110における一対の傾斜部140において互いに反対の側に突出した部分である。谷底部120を挟んで対向する一対の傾斜部140において、膨出部142は対向するように形成されており、互いに近づく方向に膨出している。また、谷底部130それぞれの側に形成された膨出部142は、谷底部120とは反対の側に膨出している。
【0034】
膨出部142と谷底部120,130との間には長さ方向Lに沿って延在する蟻溝143が形成されている。幅方向Wに沿った蟻溝143の断面は、湾曲するように形成されている。谷底部120を挟んで対向する一対の傾斜部140において、蟻溝143は、対向するように形成されており、互いに離れる方向、つまり、谷底部130の側に向かって湾曲している。また、谷底部130それぞれの側に形成された蟻溝143は、谷底部120の側に向かって湾曲している。蟻溝143により、デッキプレート10の剛性が高まると共に形状が安定する。
【0035】
嵌合部150,160は、各谷底部130に連続して設けられている。嵌合部150,160は、スラブを構築する際、幅方向Wに隣合うデッキプレート10同士の連結の用に供されている。具体的には、一のデッキプレート10の嵌合部150と、他のデッキプレート10の嵌合部160とが互いに嵌合することにより、2枚のデッキプレート10は、幅方向Wにおいて連結される。嵌合部150,160は、互いに異なる側に折り返されている。
【0036】
嵌合部150は、一方の谷底部130に設けられていて、山頂部110とは反対の側に折り返されている。嵌合部160は、他方の谷底部130に設けられていて、山頂部110の側に折り返されている。デッキプレート10は、幅方向Wにおいて隣合う他のデッキプレート10と嵌合部150,160を介して互いに連結されている。
【0037】
図3図4に示すように、鉄筋20は、梁H及びデッキプレート10上に打設されたコンクリート部50と一体化されて、コンクリート部50との合成体を形成する。
鉄筋20は、例えば、コンクリート部50のひび割れ拡大を防止することを目的としてコンクリート部50に埋設されるひび割れ拡大防止部材である。鉄筋20は、デッキプレート10及び梁Hの上方において、長さ方向L及び幅方向Wのそれぞれに延在するように配置されている。具体的に、鉄筋20は、例えば、異形鉄筋からなる複数の鉄筋21、22により形成されており、鉄筋21と鉄筋22の延在方向が互いに直交するように、平面視格子状に配置されている。鉄筋21、22は、デッキプレート10上に設置されたスペーサ30上に載せられて、厚さ方向Dにおいて、デッキプレート10の上面から間隔をあけて配置される。鉄筋21は、長さ方向Lにおいて、梁Hのフランジ面に略平行となるように配置されており、鉄筋22は、幅方向Wにおいて、梁Hに略平行となるように配置されている。幅方向Wに隣接する鉄筋21同士は、所定の間隔をあけて配置されており、長さ方向Lに隣接する鉄筋22同士は、所定の間隔をあけて配置されている。
【0038】
ここで、鉄筋21、22は、端部梁H1から端部梁H2にわたって一本の鉄筋で形成されているわけではなく、所定の長さに形成された複数の鉄筋21、22が互いの長手方向端部において重なるように配置されている。
例えば、図3図4においては、鉄筋21は、端部梁H1と中間梁H3の間に配置される鉄筋21aと、端部梁H2と中間梁H3の間に配置される鉄筋21bが存在する。
例えば、鉄筋21aは、デッキプレート10の延在方向において、端部梁H1と中間梁H3の間の中心同士の距離よりも長く、かつ、端部梁H1と端部梁H2の間の中心同士の距離よりは短く形成されている。例えば、鉄筋21bは、デッキプレート10の延在方向において、端部梁H2と中間梁H3の間の中心同士の距離よりも長く、かつ、端部梁H1と端部梁H2の間の中心同士の距離よりは短く形成されている。
鉄筋21aと鉄筋21bは、長手方向における一端部同士が少なくとも中間梁H3上方において長さ方向Lに沿って所定の長さだけ重なり合っている。ここで、鉄筋21aと鉄筋21bは、一端部同士が接触していてもよいし、互いに間隔をあけて配置されていてもよい。ただし、鉄筋21aと鉄筋21bは、互いに同一直線上、又は、互いに平行に配置されていることが好ましい。
ここで、鉄筋21a及び鉄筋21bが長さ方向Lに沿って重なり合っている部分を「継手部23」と称する。
【0039】
継手部23を構成する鉄筋21の一部は、その延在方向が長さ方向Lに沿うと共に、中間梁H3のフランジ面に略平行となるように、中間梁H3近傍の負曲げモーメントが発生している範囲に設けられている。継手部23を構成する鉄筋21の一部は、それぞれ、厚さ方向Dに所定の間隔をあけ、かつ、長さ方向Lに沿って所定の間隔をあけて少なくとも中間梁H3の上方に設けられている。継手部23は、中間梁H3のフランジ幅より長く形成されている。
鉄筋22は、その延在方向が幅方向Wに沿うと共に、中間梁H3のフランジ面に略平行となるように設けられている。鉄筋22の一部は、厚さ方向Dに所定の間隔をあけてそれぞれ設けられた複数の鉄筋21の一部に交差するように設けられている。
すなわち、鉄筋21と鉄筋22は、互いに直交して格子形状を形成するように中間梁H3の上方に設けられている。ここで、鉄筋21と鉄筋22は、接触していてもよいし、互いに離間していてもよい。
鉄筋21、22は、デッキプレート10に設けられたスペーサを介して、デッキプレート10の山頂部110よりも高い位置に設けられている。
【0040】
図5に示すように、継手部23は、中間梁H3近傍に生じる負曲げモーメントM2が発生している範囲にわたる長さを有することが好ましい。特に、図5において、中間梁H3近傍に生じる負曲げモーメントM2が発生している範囲Rとして、デッキプレート10の延在方向のうち、中間梁H3上の中心と端部梁H1、H2上の中心の間の距離をLxとしたときに、中間梁H3の中心からR≦Lx/4となる範囲を継手部23とすることが好ましい。これは、負曲げモーメントM2は中間梁H3の中心からLx/4の範囲内において発生することから、負曲げモーメントM2が発生する領域を継手部23とし、鉄筋21とコンクリート部50との合成体で負曲げモーメントM2を負担できるようにするためである。また、強度上の問題がなければ、R≦Lx/8となる範囲を継手部23としてもよい。また、ここでは例えばR≦Lx/4となる範囲をM2が発生する範囲としたが、M2が発生する範囲は実状に応じた論理式や解析などにより求めてもよい。
継手部23において、厚さ方向Dにおいて所定の間隔をあけて設けられている鉄筋21は、厚さ方向Dにおいて対向していていても、対向していなくてもよく、また、鉄筋21、22の数は、特に限定されず、例えば、1本でもよく、また、2本以上でもよい。また、鉄筋21のみで負曲げモーメントM2を負担できる場合には、鉄筋22は設けなくてもよい。すなわち、追加部材20は、鉄筋21のみから構成されていてもよい。
鉄筋21、22は、工場等によりスペーサを用いるなどして予めデッキプレート10に取り付けられて合成スラブ構造1の施工現場に搬送されてもよいし、現場でスペーサを用いるなどしてデッキプレート10や梁Hに取り付けてもよい。なお、鉄筋21、22は、異形鉄筋により構成されていたが、ひび割れ拡大防止部材としての機能を有するものであれば、異形鉄筋の代わりに、例えば、鉄線、丸鋼、溶接金網、異形鉄線溶接金網、鉄筋金網、鋼板、樹脂製の棒部材等、他の材質の部材により構成されていてもよい。
【0041】
コンクリート部50は、コンクリートをデッキプレート10の一方の面(上面)に打設して固化することにより形成されている。コンクリート部50は、デッキプレート10、鉄筋21、22を覆うように打設され、コンクリート部50の固化後、鉄筋21、22は、コンクリート部50内に埋設された状態にある。つまり、デッキプレート10は、中間梁H3上において、鉄筋21を介してコンクリート部50と合成体を形成している。
【0042】
図5は、設計上における単純支持及び連続支持とみなされた場合の曲げモーメントを比較した概略図である。図5において、デッキプレート10の下側に生じるモーメントM1およびデッキプレート10の上側に生じるモーメントM2の大きさ及び方向は、それぞれデッキプレート10下面を中心線とした場合における、各モーメントM1、M2の曲線の中心線からの距離及び方向と一致している。例えば、継手部23が設けられていない合成スラブ構造100は、単純支持とみなされる。この場合、矢印の方向から合成スラブ構造100に負荷がかかった場合、中間梁H3に生じるモーメントを負担する構造が存在しないため、便宜的に中間梁H3上に生じるモーメントはゼロとみなして、本来、中間梁H3上に生じるモーメントについては、端部梁H1と中間梁H3との間、及び、端部梁H2と中間梁H3との間で下側に生じるモーメントM1と仮定して単純支持として設計する。連続支持としての設計に比べて、下側に生じるモーメントM1は大きく想定されるので、例えば、梁H間のスパンを狭くしたり、デッキプレート10の板厚を厚くしたり、コンクリート部50の量を増やすなどして、モーメントM1を負担する必要があった。
【0043】
これに対して、合成スラブ構造1は、全体として連続支持とみなすことができる。合成スラブ構造1においては、中間梁H3上に継手部23が設けられている。継手部23が中間梁H3の上側に生じるモーメントM2を負担することができる強度を有する場合、継手部23における鉄筋21が、中間梁H3上でコンクリート部50と係合して、長さ方向Lに並ぶ2つのデッキプレート10と構造上連結されていることにより、合成スラブ構造1は、連続支持の構造とみなすことができる。したがって、中間梁H3の上側に生じるモーメント(負曲げモーメント)M2を継手部23により負担することができるので、端部梁H1,H2と中間梁H3とのスパンを、例えば、単純支持の場合よりも大きくすることや、デッキプレート10の高さを単純支持の場合よりも低くすることや、デッキプレート10の板厚を単純支持の場合よりも薄くしたり、コンクリート部50の量を減らすことなどでコストの削減を図ることができ、さらに、許容荷重を増加するなど合成スラブの性能向上を図ることができる。
【0044】
図6は、継手部23に要求される断面積atの大きさを算出するために必要なパラメータを示す図である。
図6(a)は、合成スラブ構造1を長さ方向Lに見た場合の断面図である。
図6(b)は、図6(a)の中間梁H3周辺を拡大した場合の断面図である。
合成スラブ構造1が、端部梁H1、H2と中間梁H3に渡って延在するように設けられている一方で、デッキプレート10は中間梁H3を跨いで連続しないよう、端部梁H1と中間梁H3及び端部梁H2と中間梁H3の間にそれぞれ架け渡されており、端部梁H1と中間梁H3との間のスパンと端部梁H2と中間梁H3との間のスパンがそれぞれLxとなっている。合成スラブ構造1が端部梁H1、H2と中間梁H3の上に載置されることで、合成スラブ構造1自身の重量と合成スラブ構造に作用する積載等荷重等(例えば、自重、積載荷重、仕上げ材による荷重等)により発生する梁等分布荷重Wによって、モーメントM1及びモーメントM2が生じる。モーメントM1は、端部梁H1と中間梁H3との間、及び、端部梁H2と中間梁H3との間で下側に生じ、モーメントM2は、端部梁H1と中間梁H3との間、及び、端部梁H2と中間梁H3との間で上側に生じる。
端部梁H1と中間梁H3との間、及び、端部梁H2と中間梁H3との間で上側に生じるモーメント(負曲げモーメント)M2については、以下の式が成立する。
中間梁H3上に設けられる継手部23を構成する鉄筋21の断面積をat、許容応力度をft、応力中心間距離Jを圧縮縁からの距離、つまり有効成dに7/8を乗じたものとすると、鉄筋21、22が負担することが可能となる許容モーメントMaについては、以下の式が成立する。
Ma=at×ft×J ・・(2)
また、鉄筋21、22の許容モーメントMaの大きさは、構造上、端部梁H1と中間梁H3との間、及び、端部梁H2と中間梁H3との間で上側に生じるモーメントM2を上回る必要があることから、以下の式が成立する。
Ma≧M2 ・・(3)
上記式(2)、(3)から、鉄筋21、22の断面積atが満たすべき条件について、以下の式が成立することが分かる。
at≧M2/(ft×J)・・(4)
そのため、連続支持として合成スラブ構造1を設計する場合、継手部23を構成する鉄筋21は、断面積atが上記式(4)を満たす必要がある。
なお、断面積atは、複数の鉄筋の合計断面積で上記式(4)を満たせばよい。例えば、継手部23に用いられる鉄筋21の合計断面積をatとした上で、上記式(4)を満たせば良い。
また、継手部23に用いられる鉄筋21の合計断面積atは、上記式(4)を満たせば良いことから、鉄筋21の断面積と鉄筋22の断面積は同一であっても良いし、非同一であっても良い。
【0045】
また、上記式(1)、(3)から、端部梁H1と中間梁H3との間のスパンあるいは端部梁H2と中間梁H3との間のスラブスパンLxが満たすべき条件について、以下の式が成立することが分かる。
そのため、連続支持として合成スラブ構造を設計する場合、端部梁H1と中間梁H3との間のスラブスパンあるいは端部梁H2と中間梁H3との間のスラブスパンLxは、上記式(5)を満たす必要がある。
【0046】
また、鉄筋21、22の応力中心間距離Jは、継手部23として採用する鉄筋21の圧縮縁からの距離、つまり有効成をdとすると、以下の式が成立する。
J=7×d/8 ・・(6)
上記式(4)、(6)から、鉄筋21、22の圧縮縁からの距離dが満たすべき条件について、以下の式が成立することが分かる。
d≧(8×M2)/(7×at×ft)・・(7)
そのため、連続支持として合成スラブ構造1を設計する場合、継手部23を構成する鉄筋21の圧縮縁からの距離、ここでは例えば中間梁上部からの距離dは、上記式(7)を満たす必要がある。ただし、距離dの大きさを確保する際、スラブ表面と継手部23を構成する鉄筋21の圧縮縁との間の距離は、各種法令により要求される大きさを下回ることがないように留意する必要がある。
また、ここでは上記式(1)によりM2を算定したが、M2は実状に応じた論理式や解析などにより求めてもよい。
【0047】
次に、合成スラブ構造1の施工方法について説明する。まず、梁Hにデッキプレート10を架け渡す。具体的には、デッキプレート10を、幅方向Wにおいて端部梁H1から、中間梁H3の領域まで敷き詰めていく(梁Hに架け渡す)。
【0048】
次いで、梁Hのうち、デッキプレート10が架け渡されていない側にデッキプレート10を載置して、デッキプレート10を所定の位置まで敷き詰めていく。具体的には、デッキプレート10を、幅方向Wにおいて端部梁H2から、中間梁H3の領域まで敷き詰めていく(梁Hに架け渡す)。
このように、少なくとも3つの梁のうち、中間梁H3を跨いで連続しないように端部梁H1,H2と中間梁H3の間又は隣り合う中間梁H3の間にデッキプレート10を架け渡す。デッキプレート10は、溶接等により、梁Hに固定することが好ましい。
【0049】
次いで、中間梁H3の上方で、中間梁H3近傍における負曲げモーメントM2が発生する範囲に継手部23を構成するように、ひび割れ拡大防止部材としての鉄筋21を、例えば、スペーサ30を介してデッキプレート10及び梁Hのほぼ全域にわたって載置する。
次いで、梁H及びデッキプレート10上にコンクリートを打設してコンクリート部50を形成する。ここで、コンクリート部50は、鉄筋21、22が所定の深さまで埋まるように打設する。この時、合成スラブと梁Hとは、頭付きスタッド、焼抜き栓溶接、打込み鋲、ボルト、その他溶接などによって構造的に接合されている。
以上により、合成スラブ構造1が施工される。
【0050】
以上のような合成スラブ構造1によれば、中間梁H3の上方に継手部23が設けられているので、デッキプレート10が中間梁H3を跨いで連続するように設けられていなくても、全体として単純支持ではなく、連続支持として合成スラブの耐火設計をすることができ、合成スラブ構造1は、耐火設計基準上、全体として連続支持の合成スラブ構造1としてみなすことができる。これにより、合成スラブの耐火性能を向上させることができ、さらには、端部梁H1,H2と中間梁H3とのスパンを、例えば、単純支持の場合よりも大きくすることや、デッキプレート10の高さを単純支持の場合よりも低くすることや、デッキプレート10の板厚を単純支持の場合よりも薄くしコストの削減を図ることや、コンクリート部50の量を減らすことができ、さらに、許容荷重を増加するなど合成スラブの性能向上を図ることができる。
また、耐火設計において、元々連続支持とみなせる合成スラブにおいては、継手部23を設けることでさらに耐火性能を強化することができる。
【0051】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、ひび割れ拡大防止部材として鉄筋20ではなく、溶接金網40を用いた点であるため、以下では、溶接金網40を用いた継手部について説明し、第1の実施の形態と同じ構成には同一符号を付して説明を省略する。
図7に示すように、溶接金網40は、梁H及びデッキプレート10上に打設されたコンクリート部50と一体化されて、コンクリート部50との合成体を形成する。
溶接金網40は、例えば、コンクリート部50のひび割れ拡大を防止することを目的としてコンクリート部50に埋設されるひび割れ拡大防止部材である。溶接金網40は、デッキプレート10及び梁Hの上方において、長さ方向L及び幅方向Wのそれぞれに延在するように複数配置されている。具体的に、溶接金網40は、例えば、複数の鉄線41、42により形成されており、鉄線41と鉄線42の延在方向が互いに直交するように、平面視格子状に配置されている。鉄線41、42は、デッキプレート10上に設置されたスペーサ30上に載せられて、厚さ方向Dにおいて、デッキプレート10の上面から間隔をあけて配置される。鉄線41は、長さ方向Lにおいて、梁Hのフランジ面に略平行となるように配置されており、鉄線42は、幅方向Wにおいて、梁Hに略平行となるように配置されている。幅方向Wに隣接する鉄線41同士は、所定の間隔をあけて配置されており、長さ方向Lに隣接する鉄線42同士は、所定の間隔をあけて配置されている。
隣接する溶接金網40は、長さ方向Lにおける一端部同士が少なくとも中間梁H3上方において長さ方向Lに沿って所定の長さだけ重なり合っている。ここで、重なり合う溶接金網40は、一端部同士が接触していてもよいし、互いに間隔をあけて配置されていてもよい。ただし、重なり合う溶接金網40は、互いに略同一平面上、又は、互いに平行に配置されていることが好ましい。
ここで、隣り合う溶接金網40が長さ方向Lに沿って重なり合っている部分を「継手部43」と称する。
【0052】
継手部43は、中間梁H3近傍の負曲げモーメントが発生している範囲に設けられている。重なり合う互いの溶接金網40のうち、継手部43を構成する各鉄線41の一部は、それぞれ、厚さ方向Dに並んで接触した状態で設けられている。重なり合う互いの溶接金網40のうち、継手部43を構成する各鉄線42の一部は、それぞれ、長さ方向Lに所定の間隔をあけた状態で設けられている。
すなわち、継手部43を構成する各溶接金網40は、鉄線41、42により形成される互いの格子部分が長さ方向Lにずらされた状態で中間梁H3の上方に設けられている。ここで、各溶接金網40は、互いに接触していてもよいし、互いに厚さ方向Dに離間していてもよい。
各溶接金網40は、デッキプレート10に設けられたスペーサを介して、デッキプレート10の山頂部110よりも高い位置に設けられている。
【0053】
以上のような合成スラブ構造1Aによれば、少なくとも中間梁H3の上方に継手部43が設けられているので、デッキプレート10が中間梁H3を跨いで連続するように設けられていなくても、全体として単純支持ではなく、連続支持として合成スラブの耐火設計をすることができ、合成スラブ構造1Aは、耐火設計基準上、全体として連続支持の合成スラブ構造1Aとしてみなすことができる。これにより、合成スラブの耐火性能を向上させることができ、さらには、端部梁H1,H2と中間梁H3とのスパンを、例えば、単純支持の場合よりも大きくすることや、デッキプレート10の高さを単純支持の場合よりも低くすることや、デッキプレート10の板厚を単純支持の場合よりも薄くしコストの削減を図ることができ、さらに、許容荷重を増加するなど合成スラブの性能向上を図ることができる。
また、耐火設計において、元々連続支持とみなせる合成スラブにおいては、継手部43を設けることでさらに耐火性能を強化することができる。
また、合成スラブを構築する際に、コンクリートに埋設される一般的なひび割れ拡大防止部材としての溶接金網40を少なくとも中間梁H3上で重ね合わせるだけで合成スラブの耐火性能を強化することができる。よって、簡単な構造で、新たな部材を追加することなく、合成スラブの耐火性能を強化することができる。
【0054】
(変形例)
次に、第2の実施の形態の変形例について説明する。
図8は、異形鉄線溶接金網60を用いた継手部63の構成を示す図である。
第2の実施の形態においては、鉄線41と鉄線42とが格子状に連結された溶接金網40を中間梁H3上で重ね合わせることにより継手部43が形成されていたが、本変形例においては、一端部の鉄線62が省かれて鉄線61のみが設けられている異形鉄線溶接金網60を中間梁H3上で重ね合わせて継手部63を形成している。継手部63は、好ましくは、中間梁H3近傍の負曲げモーメントが発生している範囲に設けられている。
互いの異形鉄線溶接金網60は、例えば、複数の鉄線61、62により形成されており、鉄線61と鉄線62の延在方向が互いに直交するように、平面視格子状に配置されている。鉄線61、62は、デッキプレート10上に設置されたスペーサ30上に載せられてデッキプレート10の山頂部110よりも高い位置にあり、厚さ方向Dにおいて、デッキプレート10の上面から間隔をあけて配置される。鉄線61は、長さ方向Lにおいて、梁Hのフランジ面に略平行となるように配置されており、鉄線62は、幅方向Wにおいて、梁Hに略平行となるように配置されている。幅方向Wに隣接する鉄線61同士は、所定の間隔をあけて配置されており、長さ方向Lに隣接する鉄線62同士は、所定の間隔をあけて配置されている。
重ね合わせる二つの異形鉄線溶接金網60のうち、一方は異形鉄線溶接金網60の一端部(鉄線62が省かれている端部)を中間梁H3上に設け、他方は異形鉄線溶接金網60の他端部(鉄線62が省かれていない端部)を中間梁H3上に設け、互いの端部を中間梁H3上で重ね合わせて継手部63が形成されている。
【0055】
ここで、一方の異形鉄線溶接金網60の鉄線62がなくても、他の鉄線61、62の付着作用により必要な継手部63の強度を確保することが可能であり、鉄線62を省くことにより、異形鉄線溶接金網60の重なりによる過剰な厚さの増加を抑えることができ、鉄線使用量の削減や、設置作業の簡略化によるコスト削減効果が得られる。なお、重なり合う異形鉄線溶接金網60は、端部同士が接触していてもよいし、互いに間隔をあけて配置されていてもよい。
以上のような合成スラブ構造1Bによれば、第2の実施の形態よりも溶接金網の鉄線の使用量を削減することにより、合成スラブ構造1Bを施工するコストを削減することができる。
なお、異形鉄線溶接金網60は、一端部の鉄線62が省かれている場合に限らず、両端部の鉄線62が省かれていてもよい。また、鉄線62が省かれている一端部同士を重ね合わせてもよい。また、異形鉄線溶接金網60は、長さ方向Lに沿って重ね合わせる場合に限らず、互いの鉄線61、62が直角をなすように重ね合わせてもよい。また、鉄線61を重ね合わせずに、相互の鉄線61との継手を形成できるような異形鉄筋を配置してもよい。
【0056】
<その他>
なお、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1、1A、1B 合成スラブ構造
10 デッキプレート
20 ひび割れ拡大防止部材
21 鉄筋(長さ方向Lに延在)
22 鉄筋(幅方向Wに延在)
23 継手部
30 スペーサ
40 溶接金網
41 鉄線
42 鉄線
43 継手部
50 コンクリート部
60 異形鉄線溶接金網
61 鉄線
62 鉄線
63 継手部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8