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特開2024-171268多軸ヒンジ装置、並びにこの多軸ヒンジ装置を用いた電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171268
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】多軸ヒンジ装置、並びにこの多軸ヒンジ装置を用いた電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/16 20060101AFI20241204BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20241204BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
G06F1/16 312J
G06F1/16 312F
G06F1/16 312G
F16C11/04 F
F16C11/04 V
H05K5/02 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088247
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】513014628
【氏名又は名称】株式会社ナチュラレーザ・ワン
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】武富 義隆
【テーマコード(参考)】
3J105
4E360
【Fターム(参考)】
3J105AA06
3J105AB13
3J105AC06
3J105DA15
4E360AB05
4E360AB17
4E360AB18
4E360AB42
4E360BA02
4E360BA11
4E360BB02
4E360BB14
4E360BB22
4E360BB23
4E360BB27
4E360BD05
4E360CA03
4E360CA04
4E360EA14
4E360EA18
4E360EA25
4E360EC05
4E360EC11
4E360EC13
4E360EC14
4E360ED02
4E360ED03
4E360ED07
4E360ED17
4E360ED23
4E360ED30
4E360GA12
4E360GA46
4E360GB26
4E360GB46
4E360GC14
(57)【要約】
【課題】多軸ヒンジ装置の開閉時において、カバーに皺や弛みが生じることを抑制し、円滑に開閉可能な多軸ヒンジ装置の提供という課題があった。
【解決手段】電子機器の一方の筐体に取り付けたヒンジシャフトと他方の筐体に取り付けたヒンジシャフトとを互いに相対的に回転可能に連結し、対の筐体を相対的に360度に渡って開閉可能に連結する多軸ヒンジ装置であって、前記多軸ヒンジ装置が設けられるベースフレームと、一端はベースフレームに対して揺動可能に取り付けられ、他端は前記筐体に取り付けられる取付プレートと、前記取付プレートの下面に取り付けられるカバーと、前記取付プレートの長手方向における端部に取り付けられ、前記カバーを付勢するカバースライド機構と、を有するように成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の一方の筐体に取り付けたヒンジシャフトと他方の筐体に取り付けたヒンジシャフトとを互いに相対的に回転可能に連結し、対の筐体を相対的に360度に渡って開閉可能に連結する多軸ヒンジ装置であって、
前記多軸ヒンジ装置が設けられるベースフレームと、
一端はベースフレームに対して揺動可能に取り付けられ、他端は前記筐体に取り付けられる取付プレートと、
前記取付プレートの下面に取り付けられるカバーと、
前記取付プレートの長手方向における端部に取り付けられ、前記カバーを付勢するカバースライド機構と、
を有することを特徴とする、多軸ヒンジ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の多軸ヒンジ装置において、
前記カバースライド機構は、弾性部材と、前記弾性部材によって付勢されるカバー付勢部と、前記取付プレートに取り付けられるスライドブラケットと、を有し、
前記カバーは、前記取付プレート側に立設された耳部を有し、
前記弾性部材、カバー付勢部、及び耳部が前記スライドブラケットに収容され、
前記耳部は、前記カバー付勢部と螺着され、前記弾性部材によって付勢されることを特徴とする、多軸ヒンジ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の多軸ヒンジ装置において、
内折れ状態の場合は、前記弾性部材が前記ベースフレーム側に圧縮され、前記弾性部材の復元力により前記カバーが前記筐体側に付勢され、
外折れ状態の場合は、前記弾性部材が前記筐体側に引っ張られ、前記弾性部材の復元力により前記カバー付勢部が前記ベースフレーム側に付勢されることを特徴とする、多軸ヒンジ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の多軸ヒンジ装置において、
前記スライドブラケットは前記弾性部材の付勢方向に延びる被摺動部を有し、
前記カバー付勢部は、前記被摺動部に沿って摺動することを特徴とする、多軸ヒンジ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の多軸ヒンジ装置おいて、
前記カバー付勢部は、前記弾性部材が挿入される挿入孔を有し、
前記弾性部材は、前記筐体側の一端が前記挿入孔に挿入され、前記ベースフレーム側の他端が前記スライドブラケットに螺着された締結具によって支持されることで、前記スライドブラケット内に保持されることを特徴とする、多軸ヒンジ装置。
【請求項6】
前記対の筐体と、前記対の筐体の両内面に跨って取り付けられるフレキシブルディスプレイシートと、前記対の筐体を開成位置と閉成位置との間で相対的な回転動作により回転可能に連結し、前記フレキシブルディスプレイシートの背面側に配置される請求項1から請求項5のいずれかに記載の多軸ヒンジ装置と、を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対の両表面に跨って、例えば有機EL製のフレキシブルディスプレイシートを取り付けて成る、携帯電話機、電子手帳、PDA、ネットブックやノートパソコン等の各種電子機器に用いて好適な多軸ヒンジ装置、並びにこの多軸ヒンジ装置を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、対の両表面に跨って1枚の有機EL製のフレキシブルディスプレイシートを取り付けて成る携帯電話機等の電子機器が開発されており、このような電子機器に用いられる多軸ヒンジ装置には、回転部が別体となっており、一方の筐体に取り付けたヒンジシャフトと他方の筐体に取り付けたヒンジシャフトとを互いに相対的に回転可能に連結することで、対の筐体を相対的に360度に渡って開閉可能とするものがある。
従来の多軸ヒンジ装置は、フレキシブルディスプレイシートを付勢するスライド機構が取付ベースに取り付けられることで、対の筐体のいずれか一方に対して開閉操作を行うと、対の筐体のいずれか一方或いは双方は、対の筐体のいずれか一方或いは双方に対してスライド可能となるので、対の筐体の開成操作時にフレキシブルディスプレイシートを延ばすことができるものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-009923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術において、図1(a)に示すような0°閉成状態(以下、内折れ状態という)と図1(c)に示すような360°開成状態(以下、外折れ状態という)では、多軸ヒンジ装置に取り付けられたフレキシブルディスプレイシートの屈曲部の曲率半径が異なるため、外折れ状態から内折れ状態に移行する場合は、多軸ヒンジ装置背面のカバーに生じた皺が重なり噛み込みが発生し、内折れ状態から外折れ状態に移行する場合は、多軸ヒンジ装置背面のカバーに生じた弛みが筐体と擦れてしまい、開閉装置を円滑に開閉することができない場合があるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、多軸ヒンジ装置の開閉時において、カバーに皺や弛みが生じることを抑制し、円滑に開閉可能な多軸ヒンジ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、本願請求項1に記載の多軸ヒンジ装置は、電子機器の一方の筐体に取り付けたヒンジシャフトと他方の筐体に取り付けたヒンジシャフトとを互いに相対的に回転可能に連結し、対の筐体を相対的に360度に渡って開閉可能に連結する多軸ヒンジ装置であって、前記多軸ヒンジ装置が設けられるベースフレームと、一端はベースフレームに対して揺動可能に取り付けられ、他端は前記筐体に取り付けられる取付プレートと、前記取付プレートの下面に取り付けられるカバーと、前記取付プレートの長手方向における端部に取り付けられ、前記カバーを付勢するカバースライド機構と、を有することを特徴とする。
【0007】
次に、本願請求項2に記載の多軸ヒンジ装置は、前記カバースライド機構は、弾性部材と、前記弾性部材によって付勢されるカバー付勢部と、前記取付プレートに取り付けられるスライドブラケットと、を有し、前記カバーは、前記取付プレート側に立設された耳部を有し、前記弾性部材、カバー付勢部、及び耳部が前記スライドブラケットに収容され、前記耳部は、前記カバー付勢部と螺着され、前記弾性部材によって付勢されることを特徴とする。
【0008】
次に、本願請求項3に記載の多軸ヒンジ装置は、内折れ状態の場合は、前記弾性部材が前記ベースフレーム側に圧縮され、前記弾性部材の復元力により前記カバーが前記筐体側に付勢され、外折れ状態の場合は、前記弾性部材が前記筐体側に引っ張られ、前記弾性部材の復元力により前記カバー付勢部が前記ベースフレーム側に付勢されることを特徴とする。
【0009】
次に、本願請求項4に記載の多軸ヒンジ装置は、前記スライドブラケットは前記弾性部材の付勢方向に延びる被摺動部を有し、前記カバー付勢部は、前記被摺動部に沿って摺動することを特徴とする。
【0010】
次に、本願請求項5に記載の多軸ヒンジ装置は、前記カバー付勢部は、前記弾性部材が挿入される挿入孔を有し、前記弾性部材は、前記筐体側の一端が前記挿入孔に挿入され、前記ベースフレーム側の他端が前記スライドブラケットに螺着された締結具によって支持されることで、前記スライドブラケット内に保持されることを特徴とする。
【0011】
そして、本願請求項6に記載の電子機器は、前記対の筐体と、前記対の筐体の両内面に跨って取り付けられるフレキシブルディスプレイシートと、前記対の筐体を開成位置と閉成位置との間で相対的な回転動作により回転可能に連結し、前記フレキシブルディスプレイシートの背面側に配置される請求項1から請求項5のいずれかに記載の多軸ヒンジ装置を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、多軸ヒンジ装置の開閉時において、カバーに皺や弛みが生じることを抑制し、円滑に開閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例における多軸ヒンジ装置を用いたフレキシブルディスプレイシートを有する電子機器を示し、(a)はフレキシブルディスプレイシートが内折れ状態の時における筐体斜視図、(b)はフレキシブルディスプレイシートが展開状態の時における筐体斜視図、(c)はフレキシブルディスプレイシートが外折れ状態の時における筐体斜視図である。
図2】実施例におけるフレキシブルディスプレイシートが展開状態の時における筐体と多軸ヒンジ装置の配置を示す平面図である。
図3】実施例における取付プレート、ベースフレーム、カバー及びロウワーカバーの斜視図である。
図4】実施例におけるカバースライド機構の斜視図であり、図4(a)は上面から見た斜視図、図4(b)は下面から見た斜視図である。
図5】実施例におけるカバースライド機構の取付説明図である。
図6】実施例におけるスライドブラケットの斜視図であり、図6(a)は上面から見た斜視図、図6(b)は下面から見た斜視図である。
図7】実施例におけるスライドブラケットの5面図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は正面図、図7(c)は右側面図、図7(d)は左側面図、図7(e)は底面図である。
図8】実施例におけるスライドブラケットの断面図であり、図8(a)はA-A断面図、図8(b)はB-B断面図である。
図9】実施例におけるカバー付勢部の斜視図であり、図9(a)は下面から見た斜視図、図9(b)は下面を別の方向から見た斜視図である。
図10】実施例におけるカバー付勢部の5面図であり、図10(a)は平面図、図10(b)は正面図、図10(c)は右側面図、図10(d)は左側面図、図10(e)は底面図である。
図11】実施例におけるカバー付勢部のA-A断面図である。
図12】実施例におけるカバースライド機構の断面を示す模式図であり、図12(a)は展開の時の断面模式図、図12(b)は内折れ状態の時の断面模式図、図12(c)は外折れ状態の時における断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明による多軸ヒンジ装置、並びにこの多軸ヒンジ装置を用いた電子機器の実施例を説明する。
【実施例0015】
図1(a)は本実施例における多軸ヒンジ装置Bを用いた携帯電話機Aの内折れ状態の斜視図である。なお、本実施例では、開閉装置を用いた電子機器の一例として携帯電話機Aを挙げて説明するが、それに限定されず、電子手帳、PDA、ネットブック、さらにはノートパソコンなどのように、表面に1枚のフレキシブルディスプレイシート4を取り付けた対の筐体1を互いに開閉可能に連結する構成の端末機器に広く用いることができる。
【0016】
図1(a)において、携帯電話機Aは、対の筐体1と背面カバー2に分けられ、背面カバー2はロウワーカバー21、カバー22、スライドブラケット23、ベースブラケット24で構成される。なお、スイッチ3はフレキシブルディスプレイシート4の表示を起動する為に設けられている。後述するが、対の筐体1は取付プレートと接続されており、ベースフレーム6に設けられる多軸ヒンジ装置B(それぞれ図1では見えない)により対の取付プレート5はベースフレーム6に対して揺動可能に支持されている。
【0017】
図1(b)は対の筐体1の互いのなす角度を略180度に開いてフレキシブルディスプレイシート4を展開(以下、展開状態)した時における携帯電話Aの斜視図であり、対の筐体1の互いのなす角度を360度にすると図1(c)となる。図1(c)ではフレキシブルディスプレイシート4は外折れ状態となり、携帯電話Aのコンパクト性を保ちながらユーザーはフレキシブルディスプレイシート4に表示される情報を受け取ることが出来る。
【0018】
図2はフレキシブルディスプレイシート4が展開状態の時における、多軸ヒンジ装置Bおよび対の筐体1を図示した平面図であり、多軸ヒンジ装置Bを図示する為にフレキシブルディスプレイシート4等を省いている。図2において、多軸ヒンジ装置Bはヒンジ機構7、ロック機構8、筐体スライド機構9、カバースライド機構10、同期機構11、フレキシブルディスプレイシートガイド機構12、カバーガイド機構13で構成される。尚、各々の機構は図3に示すベースフレーム6に取り付けられている。
【0019】
ヒンジ機構7とベースフレーム6はベースフレーム6の第3取付ネジ孔6cに螺着され固定されている。そしてヒンジ同期部71から延出するヒンジアーム72の取付孔72aが図3に示す対の取付プレート5に設けられた第1取付ネジ孔5aに螺着されている。その為、対の取付プレート5はヒンジアーム72の揺動軸1aに揺動可能に支持される。ヒンジ機構7はベースフレーム6上に設けられている為に対の取付プレート5はベースフレーム6に対して揺動可能に支持される事になる。尚、ヒンジアーム72の揺動軸1aは対の筐体1を内折れ状態、展開状態、外折れ状態の3状態を実現する為にヒンジ同期部71内でスウィング移動する構造になっている。
【0020】
ロック機構8とベースフレーム6はベースフレーム6の第5取付ネジ孔6eに螺着されている。そしてロック同期部81の第1関節部82から延出するロックアーム84は第2関節部83、ロックジョイント85、ロックブラケット86を介して対の取付プレート5と接続されている。ロック機構8は対の取付プレート5を内折れ状態、展開状態および外折れ状態で保持する為に設けられており各関節部には動作負荷を発生させる負荷発生部を設けている。尚、第1、第2の関節部の様に複数の関節部でベースフレーム6と取付プレート5を接続する事でヒンジ機構7との重複嵌合が生じない構成となっている。
【0021】
筐体スライド機構9とベースフレーム6はベースフレーム6の第5取付ネジ孔6e、6eに螺着されている。ここで第5取付ネジ孔6eは前述したロック機構8と共締めとなっている。筐体スライド機構9は外折れ状態から内折れ状態に移行させるにつれて対の筐体1を矢印1c方向に引っ張ることで内折れ状態になるにつれて生じるフレキシブルディスプレイシート4のたるみを取る機構である。筐体スライド機構9は対の取付プレート5の揺動を拾うスライドアーム部91、スライドアーム部91で拾った取付プレート5の動き方向を変換するテンション変換部92、テンション変換部92の動きを対の筐体1に伝えるテンションブラケット部93で構成され、テンションブラケット部93の取付孔93aが対の筐体1に設けられた取付ネジ孔(不図示)に螺着されている。その為、対の筐体1は取付プレート5の揺動状態に応じて適度なテンションを受けることが出来る。
【0022】
図4は実施例におけるカバースライド機構10の斜視図であり、図4(a)は上面から見た斜視図、図4(b)は下面から見た斜視図である。図4において、カバースライド機構10は、スライドブラケット23と、弾性部材101と、カバー付勢部102とで構成されており、内折れ又は外折れ状態に移行する場合にカバー22に皺や弛みが発生することを抑制する機構である。なお、カバースライド機構10の詳細については後述する。
【0023】
同期機構11とベースフレーム6はベースフレーム6の第2取付ネジ孔6bに螺着されている。同期機構11は対の同期シャフト111および同期シャフト111を回転軸とする対に噛合する同期ギア112を有し、対の取付プレート5の回転同期を行う為に設けられている。
【0024】
フレキシブルディスプレイシートガイド機構12は長孔121に嵌め込まれたフレキシブルディスプレイガイドピン122がフレキシブルディスプレイシート4に裏打ちされる保護シートに接着される事でフレキシブルディスプレイシート4を矢印1c方向およびその逆方向以外には動かないようにガイドしている。
【0025】
カバーガイド機構13は長孔131に嵌め込まれたカバーガイドピン132がカバー22のガイド孔22bと嵌め合う事でカバー22を矢印1c方向およびその逆方向以外には動かないようにガイドしている。
【0026】
図3に示すように、カバー22は取付孔22cとベースフレーム6の第1取付ネジ孔6aに螺着されてベースフレーム6に取り付けされる。又、ロウワーカバー21は耳部の取付孔21aと取付プレート5の第2取付ネジ孔5bに螺着されて取付プレート5に取り付けられる。更にフック21b、21cはスライドブラケット23と係合されている。
【0027】
多軸ヒンジ装置Bは上記複数の機構で構成されており、各々異なる役割を担っている。
【0028】
次に、多軸ヒンジ装置Bの開閉時において、カバー22に皺や弛みが生じることを抑制するカバースライド機構10について詳細を説明する。なお、カバースライド機構10は、対の筐体1のいずれにも設けられているが、一方の筐体1に設けられたカバースライド機構10と他方の筐体1に設けられたカバースライド機構10とは構成が同様のため、一方のカバースライド機構10について説明し、他方のカバースライド機構10については説明を省略する。
【0029】
図5は実施例におけるカバースライド機構10の取付説明図である。図5において、取付プレート5にスライドブラケット23が取り付けられ、スライドブラケット23の後述する被摺動部23gにカバー付勢部102、弾性部材101、及びカバー22の耳部22aが収容される。カバー22の耳部22aはカバー付勢部102に螺着されると共に弾性部材101によって付勢されることで、内折れ又は外折れ状態に移行する場合にカバーに皺や弛みが発生することを抑制することができる。なお、耳部22aは、カバー22から取付プレート5(上)側に立設されたものであり、取付孔22cを有している。
【0030】
以下、カバースライド機構10が取付プレート5に取り付けられた場合において、スライドブラケット23のフレキシブルディスプレイ4側をZ1(上)方向、カバー22側をZ2(下)方向とし、スライドブラケット23の長手方向筐体1側をX1(左)方向、ベースフレーム6側をX2(右)方向とし、スライドブラケット23の短手方向外側をY1(後)方向、内側をY2(前)方向とする。上下方向、左右方向及び前後方向は、互いに直交する。尚、本実施例における方向の定義は、一例である。
【0031】
図6(a)は上面から見た斜視図、図6(b)は下面から見た斜視図である。図7は本実施例におけるスライドブラケット23の5面図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は正面図、図7(c)は右側面図、図7(d)は左側面図、図7(e)は底面図である。図8は実施例におけるスライドブラケット23の断面図であり、図8(a)はA-A断面図、図8(b)はB-B断面図である。
【0032】
図6から図8において、スライドブラケット23は、第1取付孔23aと、第2取付孔23bと、第3取付孔23cと、第1係合部23eと、第2係合部23fと、被摺動部23gとを有する。
【0033】
第1取付孔23aは、スライドブラケット23を取付プレート5に取り付けるために穿設された孔である。第1取付孔23aと取付プレート5の螺着孔5cとを螺着させることで、スライドブラケット23が取付プレート5に取り付けられている。
【0034】
第2取付孔23bは、カバー22の耳部22aをカバー付勢部102に取り付けるために穿設された孔である。第2取付孔23bを介してカバー22の耳部22aの取付孔22cとカバー付勢部102の取付孔102bとをねじ等の締結具Cにより螺着させることで、カバー付勢部102がカバー22の耳部22aに取り付けられている。
【0035】
第3取付孔23cは、スライドブラケット23の左端部に穿設された孔である。弾性部材101を挿通したシャフト状の締結具Dを第3取付孔23cと螺着させることで、締結具Dが弾性部材101を支持する。
【0036】
スライドブラケット23の右端部から第1係合部23e、第2係合部23fの順番で形成され、第1係合部23e及び第2係合部23fがロウワーカバー21のフック21b、21cと係合する。ロウワーカバー21は、耳部の取付孔21aと取付プレート5の第2取付ネジ孔5bとが螺着されると共に、フック21bが第1係合部23e、フック21cが第2係合部23fと係合されることで、スライドブラケット23に取り付けられている。
【0037】
被摺動部23gは、第2取付孔23bと第3取付孔23cとの間に形成された左右方向に延びる溝であり、カバー付勢部102によって摺動される被摺動面23hを有している。被摺動部23gにカバー付勢部102、弾性部材101、及びカバー22の耳部22aが収容され、カバー付勢部102は弾性部材101の付勢力によって被摺動部23g内を被摺動面23hに沿って左右方向に摺動する。
【0038】
図9は実施例におけるカバー付勢部102の斜視図であり、図9(a)は下面から見た斜視図、図9(b)は下面を別の方向から見た斜視図である。図10は実施例におけるカバー付勢部102の5面図であり、図10(a)は平面図、図10(b)は正面図、図10(c)は右側面図、図9(d)は左側面図、図10(e)は底面図である。図11図10に示すカバー付勢部102の断面図である。
【0039】
図9から図11において、カバー付勢部102は、略T字状断面を成しており、上端部に前後方向に突出する突片102aを備えている。また、カバー付勢部102は、取付孔102bと、挿入孔102cと、当接部102dと、摺動面102eとを有する。
【0040】
取付孔102bは、カバー付勢部102の右端部に穿説された孔である。カバー22の耳部22aの取付孔22cと取付孔102bとが螺着されることで、カバー22がカバー付勢部102に取り付けられる。
【0041】
挿入孔102cは、カバー付勢部102の左端部に穿設され、弾性部材101が挿入される孔である。弾性部材101は、スライドブラケット23の第3取付孔23c側の一端をシャフト状の締結具Dによって支持され、他端を挿入孔102cに挿入されることで、スライドブラケット23の被摺動部23g内に保持されている。
【0042】
当接部102dは、カバー付勢部102の前端部の一部に設けられ、右端から左端に行くにしたがって斜め下に傾斜する傾斜面102fを有し、傾斜面102fとカバー22の耳部22aとが当接する。カバー22の耳部22aは、カバー付勢部102の傾斜面102fと当接すると共に、耳部22aの孔を挿通した締結具Cがカバー付勢部102の取付孔102bと螺着されることで、カバー付勢部102に取り付けられている。
【0043】
また、カバー付勢部102の前端部及び後端部は摺動面102eであり、スライドブラケット23の被摺動面に対向する。カバー付勢部102の摺動面102eが被摺動面23hに沿って摺動する。
【0044】
次に、内折れ状態及び外折れ状態におけるカバースライド機構10の作用について図12を参照しながら説明する。なお、図12は実施例におけるカバースライド機構10の断面を示す模式図であり、図12(a)は展開状態の時の断面模式図、図12(b)は内折れ状態の時の断面模式図、図12(c)は外折れ状態の時における断面模式図である。なお、カバースライド機構10の作用について説明するため、図12では同期機構11等の多軸ヒンジ装置Bの詳細な構成の図示を省略している。
【0045】
図12において、展開状態の場合と比較すると、内折れ状態の場合では弾性部材101が圧縮され、外折れ状態の場合では弾性部材101が引っ張られている。すなわち、内折れ状態の場合において、弾性部材101がベースブラケット24側(左方向)に圧縮され、弾性部材101の復元力によりカバー付勢部102が筐体1側(右方向)に付勢されることで、カバー付勢部102に螺着されたカバー22は、常に筐体1側(右方向)、すなわちカバー22に生じる皴を伸ばす方向に付勢される。このように、本実施例の多軸ヒンジ装置Bでは、内折れ状態の場合において、カバー22に皴が生じることを抑制し、円滑に開閉することができる。
【0046】
また、外折れ状態の場合において、弾性部材101が筐体1側(右方向)に引っ張られ、弾性部材101の復元力によりカバー付勢部102がベースブラケット24側(左方向)に付勢されることで、カバー付勢部102に螺着されたカバー22は、常に多軸ヒンジベースブラケット24側(左方向)、すなわちカバー22に生じる弛みを取る方向に付勢される。このように、本実施例の多軸ヒンジ装置Bでは、外折れ状態の場合において、カバー22に弛みが生じることを抑制し、円滑に開閉することができる。
【0047】
以上説明したように、本実施例では、電子機器の一方の筐体1に取り付けたヒンジシャフトと他方の筐体1に取り付けたヒンジシャフトとを互いに相対的に回転可能に連結し、対の筐体1を相対的に360度に渡って開閉可能に連結する多軸ヒンジ装置Bであって、多軸ヒンジ装置Bが設けられるベースフレーム6と、一端はベースフレーム6に対して揺動可能に取り付けられ、他端は筐体1に取り付けられる取付プレート5と、取付プレート5の下面に取り付けられるカバー22と、取付プレート5の長手方向における端部に取り付けられ、カバー22を付勢するカバースライド機構10と、を有することにより、多軸ヒンジ装置Bの開閉時において、カバー22に皺や弛みが生じることを抑制し、円滑に開閉することができる。
また、本実施例では、簡易な構成によって、カバー22に皺や弛みが生じることを抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、以上のように構成したので、多軸ヒンジ装置Bの開閉時において、カバーに皺や弛みが生じることを抑制し、円滑に開閉可能な多軸ヒンジ装置Bを提供できるものである。
【符号の説明】
【0049】
1 筐体
2 背面カバー
3 スイッチ
4 フレキシブルディスプレイシート
5 取付プレート
5a 第1取付ネジ孔
5b 第2取付ネジ孔
5c 螺着孔
6 ベースフレーム
6a 第1取付ネジ孔
6b 第2取付ネジ孔
6c 第3取付ネジ孔
6d 第4取付ネジ孔
6e 第5取付ネジ孔
7 ヒンジ機構
8 ロック機構
9 筐体スライド機構
10 カバースライド機構
11 同期機構
12 フレキシブルディスプレイシートガイド機構
13 カバーガイド機構
21 ロウワーカバー
21a 取付孔
21b、21c フック
22 カバー
22a 耳部
22b ガイド孔
22c 取付孔
23 スライドブラケット
23a 第1取付孔
23b 第2取付孔
23c 第3取付孔
23e 第1係合部
23f 第2係合部
23g 被摺動部
23h 被摺動面
24 ベースブラケット
71 ヒンジ同期部
72 ヒンジアーム
72a 取付孔
1a 揺動軸
A 携帯電話機
B 多軸ヒンジ装置
C 締結具
81 ロック同期部
82 第1関節部
83 第2関節部
84 ロックアーム
85 ロックジョイント
86 ロックブラケット
91 スライドアーム部
92 テンション変換部
93 テンションブラケット部
93a 取付孔
101 弾性部材
102 カバー付勢部
102a 突片
102b 取付孔
102c 挿入孔
102d 当接部
102e 摺動面
102f 傾斜面
111 同期シャフト
112 同期ギア
121 長孔
122 フレキシブルディスプレイガイドピン
131 長孔
132 カバーガイドピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12