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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171276
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】挟持器具
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/12 20060101AFI20241204BHJP
   F16B 35/00 20060101ALI20241204BHJP
   F16B 39/18 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
F16B2/12 B
F16B35/00 T
F16B39/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088264
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】510202167
【氏名又は名称】Next Innovation合同会社
(72)【発明者】
【氏名】道脇 裕
【テーマコード(参考)】
3J022
【Fターム(参考)】
3J022DA30
3J022EA41
3J022EB03
3J022EC02
3J022ED03
3J022ED04
3J022ED06
3J022ED07
3J022ED08
3J022ED09
3J022ED10
3J022FA01
3J022FA05
3J022FB06
3J022GA07
3J022GA12
3J022GB32
(57)【要約】
【課題】ねじ体を締め付けることで被挟持体を挟持する挟持器具において、被挟持体が振動等した場合には、振動疲労や、振動によるねじ体の緩みが生じる虞がある。
【解決手段】第一挟持部2aと収容部5とを有する第一挟持体2と、第二挟持部3aと、内部に雄ねじ部30bを挿入し得る挿入孔3cを有し、収容部5に収容し得る挿嵌部6と、挿入孔3cと同軸で第一螺旋溝31を螺合し得る第一螺旋条12が形成されて成る第一雌ねじ部11と、を有する第二挟持体3とを備え、雄ねじ部30bと第一雌ねじ部11とを相対螺転させることで、挿嵌部6を収容部5内において進退させ得るように構成する。
【選択図】図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一挟持部と第二挟持部との間で被挟持体を挟持する挟持器具であって、
軸部の外周面に螺旋状の溝を形成した雄ねじ部を有する雄ねじ体を有し、
上記第一挟持部及び上記第二挟持部は、上記雄ねじ体が挿入される挿入孔を有し、
上記第一挟持部と上記第二挟持部の内、一方は、略筒状で上記雄ねじ体の軸部の外径よりも拡径させた内径を有する挿嵌部を有し、他方は、上記挿入孔の少なくとも一部が上記挿嵌部を受容して上記挿入孔に連通する受容部を有し、
上記第一挟持部及び/又は上記第二挟持部の上記挿入孔の内周面には、上記雄ねじ体に螺合し得る螺旋条が形成されていることを特徴とする挟持器具。
【請求項2】
前記雄ねじ部の軸部には、適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一雄ねじ螺旋溝と、該第一雄ねじ螺旋溝と相異なるリード角及び/又はリード方向に設定された第二雄ねじ螺旋溝とが、該軸部の外周面における同一領域内に重複して形成され、
前記第一挟持部及び前記第二挟持部よりも前記雄ねじ体の先端部側で、上記第一雄ねじ螺旋溝に螺合し得る第一雌ねじ螺旋条を有する雌ねじ体を設け、
前記第一挟持部及び/又は前記第二挟持部の前記挿入孔の内周面には、上記第二雄ねじ螺旋溝に螺合し得る第二雌ねじ螺旋条が形成されることを特徴とする請求項1記載の挟持器具。
【請求項3】
前記雌ねじ体は、前記雄ねじ体に螺合し、貫通孔から軸心に向かって突出して配設された一つ以上の板片を有し、該板片の先端部が断続的又は連続的な螺旋条を成すことを特徴とする請求項2記載の挟持器具。
【請求項4】
前記第一挟持部は、前記雌ねじ体を挿脱可能に案内する案内部を有し、
上記案内部は、前記雌ねじ体の軸方向回りの回転を規制し、
上記案内部に配された前記雌ねじ体は、前記第一挟持部及び前記第二挟持部の各前記挿入孔と連通し、前記雄ねじに螺合し得ることを特徴とする請求項3記載の挟持器具。
【請求項5】
前記案内部は、前記雌ねじ体の周面を支持する凹溝と、前記雌ねじ体を軸直交方向に変位させ得る開放口とを有することを特徴とする請求項4記載の挟持器具。
【請求項6】
前記雌ねじ体は、前記案内部に外装又は内装されることを特徴とする請求項4記載の挟持器具。
【請求項7】
前記雌ねじ体は、前記案内部の外側に位置する取出し部を有することを特徴とする請求項4乃至6の何れかに記載の雌ねじ体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挟持器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ねじ体の締付けによって一対の挟持体の間隔を狭めるように、近接させて被挟持体を挟持する挟持器具が知られている。例えば、屋根の取付部(立平葺屋根のハゼ部など)に挟持固定可能な金具本体の上部に、雪止めアングルを取付け可能なアングル取付部が設けられた雪止めアングル取付用金具(例えば、特許文献1参照)が利用されており、このような雪止めアングル取付用金具は、一対の対向挟持体で屋根の取付部を挟むようにして屋根上に配置し、対向挟持体間に架設されている締付ボルトに、締付ナットを螺着して締付けることで、取付部(屋根上)に取付固定される。即ち、締結ボルトに締結ナットを締付けることで、一対の対向挟持体が接近し、対向挟持体によって取付部を両外側から締付挟持して、雪止めアングル取付用金具が取付部に取付固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-065311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ねじ体を締め付けることで被挟持体を挟持する挟持器具において、被挟持体が振動等した場合には、振動疲労によるねじ体の破壊や振動によるねじ体の緩み等が発生する虞がある。そのため挟持器具において、振動による疲労破壊や緩み対策が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の挟持器具は、第一挟持部と第二挟持部との間で被挟持体を挟持する挟持器具であって、軸部の外周面に螺旋状の溝を形成した雄ねじ部を有する雄ねじ体を有し、上記第一挟持部及び上記第二挟持部は、上記雄ねじ体が挿入される挿入孔を有し、上記第一挟持部と上記第二挟持部の内、一方は、略筒状で上記雄ねじ体の軸部の外径よりも拡径させた内径を有する挿嵌部を有し、他方は、上記挿入孔の少なくとも一部が上記挿嵌部を受容して上記挿入孔に連通する受容部を有し、上記第一挟持部及び/又は上記第二挟持部の上記挿入孔の内周面には、上記雄ねじ体に螺合し得る螺旋条が形成されていることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の挟持器具は、前記雄ねじ部の軸部には、適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一雄ねじ螺旋溝と、該第一雄ねじ螺旋溝と相異なるリード角及び/又はリード方向に設定された第二雄ねじ螺旋溝とが、該軸部の外周面における同一領域内に重複して形成され、前記第一挟持部及び前記第二挟持部よりも前記雄ねじ体の先端部側で、上記第一雄ねじ螺旋溝に螺合し得る第一雌ねじ螺旋条を有する雌ねじ体を設け、前記第一挟持部及び/又は前記第二挟持部の前記挿入孔の内周面には、上記第二雄ねじ螺旋溝に螺合し得る第二雌ねじ螺旋条が形成されることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の挟持器具は、前記雌ねじ体が前記雄ねじ体に螺合し、貫通孔から軸心に向かって突出して配設された一つ以上の板片を有し、該板片の先端部が断続的又は連続的な螺旋条を成すことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の挟持器具は、前記第一挟持部が前記雌ねじ体を挿脱可能に案内する案内部を有し、上記案内部は、前記雌ねじ体の軸方向回りの回転を規制し、上記案内部に配された前記雌ねじ体は、前記第一挟持部及び前記第二挟持部の各前記挿入孔と連通し、前記雄ねじに螺合し得ることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の挟持器具は、前記案内部が前記雌ねじ体の周面を支持する凹溝と、前記雌ねじ体を軸直交方向に変位させ得る開放口とを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の挟持器具は、前記雌ねじ体が前記案内部に外装又は内装されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の挟持器具は、前記雌ねじ体が前記案内部の外側に位置する取出し部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の挟持器具によれば、簡易な構造によって、ねじ体の疲労破壊抑制及び緩み止め効果を発揮して長期的に締結状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第一の実施形態に係る挟持器具を第二挟持体側からみた斜視図である。
図2】第一の実施形態に係る挟持器具を第一挟持体側からみた斜視図である。
図3】第一の実施形態に係る第一挟持体を示し、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は背面図、(D)は底面図である。
図4】第一の実施形態に係る第二挟持体を示し、(A)は背面図、(B)は側面図、(C)は正面図、(D)は上面図である。
図5】第一の実施形態に係る第二挟持体を示す断面図である。
図6】第一の実施形態に係る雄ねじ体を示す図である。
図7】挟持器具の組付けを示す図である。
図8】第一の実施形態の変形例に係る挟持器具を示す断面図である。
図9】第二の実施形態に係る挟持器具を示す斜視図である。
図10】第二の実施形態に係る雄ねじ体を示し、(A)は正面図、(B)両螺旋溝領域における雄ねじ部を示す平面図である。
図11】第二の実施形態に係る雄ねじ部の他の例を示す図である。
図12】第二の実施形態に係る第二挟持体を示し、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は背面図、(D)は上面図である。
図13】雌ねじ体を示し、(A)は正面図、(B)は背面図、(C)は側面図、(D)は(A)のA-A矢視断面図である。
図14】雌ねじ体を第二狭持体に装着する手順を示す図である。
図15】(A)は、右雌ねじ体に回転力を加えて回転させようとした状態を示す一部分断面図であり、(B)は、(A)の別の部分断面図である。
図16】第2実施形態の変形例に係る雌ねじ体を示す(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は右側面図、(D)はA-A矢視断面図である。
図17】第2実施形態の変形例に係る、(A)は、案内部の上面図であり、(B)は、雌ねじ体が案内部に配された状態における上面図である。
図18】第3実施形態に係る挟持器具300を示す図である。
図19】第4実施形態の変形例に係る相対回転抑制構造の相対回転状態の遷移を説明するための(A)は正面図、(B)は(A)のB-B矢視断面図、(C)は正面図、(D)は(C)のD-D矢視断面図、(E)は正面図、(F)は(E)のF-F矢視断面図である。
図20】相対回転抑制構造が適用される第二挟持体の(A)正面図、(B)平面図である。
図21】相対回転抑制構造が適用される雌ねじ体の(A)正面図、(B)平面図である。
図22】環状凸部の外周長と環状凹部との内周長とを示す図である。
図23】(A)は、図19の(F)を拡大した断面図であり、(B)は、(A)を基準として第二雌ねじ体を相対回転させた状態を示す断面図である。
図24】第4実施形態の雄ねじ体の逆回転防止構造を示す側面部分断面図である。
図25】逆回転防止構造で用いられる雄ねじ体を示し、(A)は側面部分断面図、(B)は底面図である。
図26】逆回転防止構造で用いられるワッシャを示し、(A)は上面図、(B)は側面部分断面図である。
図27】第一挟持部、第二挟持部の他の例を示す図である。
図28】他の雌ねじ体の例を示す図である。
図29】複数の被挟持体を挟持している例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、第一の実施形態に係る挟持器具1について説明する。尚、実施形態として記載され又は図面に示された構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲を前述した内容に限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「ある方向に向かって」「平行」、「直交」、「垂直」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは一義的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度及び距離をもって相対的に変位した状態も表すものとする。例えば、「同一」、「等しい」、「均等」及び「等密度」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差、又は、比率が存在した状態も表すものとする。例えば、三角錐、円錐、三角柱及び円柱等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での三角錐、円錐、三角柱及び円柱等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部及び面取り部、湾曲部、R形状部等を含む形状も表すものとする。一方、一の構成要素を「備える」、「形成される」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0015】
また、図1は本実施形態に係る締結部材1を示す斜視図であり、締結部材1は第一狭締部と第二狭締部との間隙で被締結部材を挟んで締め付けるものである。また締結部材1は、雄ねじ体と第一狭締部と第二狭締部との間隙量の調整を行い得る。
【0016】
また、図面においては、適宜三次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、ここで便宜的にX軸方向は、雄ねじ体10の軸方向と平行な方向とする。Y軸方向は、X軸方向と直交する方向であって被締結部材10の幅方向とする。Z軸方向は、X軸方向とY軸方向との両方と直交する方向とする。また、X軸及びY軸によって規定されるXY平面が延びる任意の方向を指して「水平方向」と呼ぶ。
【0017】
また、以下の説明においては、Z軸方向を上下方向とし、Z軸方向の正の側(+Z側)を「上側(Z軸方向上側)」と記し、Z軸方向の負の側(-Z側)を「下側(Z軸方向下側)」と記す。X軸方向を前後方向(長さ方向)とし、X軸方向の正の側(+X側)を「前方」と記し、X軸方向の負の側(-X側)を「後方」と記す。また、X軸を中心とする径方向を単に「径方向」と記し、X軸を中心とする周方向(θ方向)を単に「周方向」と記す。Y軸方向を幅方向とする。尚、径方向、周方向、上下方向、上側および下側、前後方向(長さ方向)、前方および後方、幅方向とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定しない。
【0018】
尚、本明細書において、延びる、とは、厳密に軸方向に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°以下の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、径方向に延びる、とは、厳密に径方向、即ち、X軸方向に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°以下の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0019】
第1実施形態の挟持器具1は、雄ねじ体10の締め付けにより、第一挟持部2aと第二挟持部2bの間隙を狭め、第一挟持部2aと第二挟持部2bとの間で被挟持体Pを挟持するものである。
本実施形態において挟持器具1は、少なくとも被挟持体Pを挟持し得るもの全般に適用できる。また被挟持体となる対象を限定するものではない。
【0020】
挟持器具1は、図1及び図2に示すように、第一挟持体2と第二挟持体3と雄ねじ体10を備え、雄ねじ体10を第一挟持体2に挿通し、第二挟持体3の第一雌ねじ部11に螺合させており、雄ねじ体10を締め付けることで、第一挟持体2が第二挟持体3側に変位し、第二挟持体3が第一挟持体2側に変位し、結果第一挟持体2と第二挟持体3との間に在る被挟持体Pを挟持し得る。
【0021】
図3は、第一挟持体2を示し、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は背面図、(D)は底面図である。第一挟持体2は、下側(―Z側)から、第一挟持部2a、その上方に連続する本体部2b等を有する。
【0022】
第一挟持部2aは、第二挟持体3の第二挟持部3aと対向して被挟持体Pを挟持するように、突き合わせて配置される(例えば図1参照)。第一挟持部2aは、本体部2bの下端縁に沿って、第二挟持体3側(+X側)へ突出するように形成されている。また第一挟持部2aの被挟持体Pに当接する箇所は、被挟持体Pの表面形状に対応させた形状を有する。例えば、被挟持体Pに溝等の凹部が形成されている場合に、該凹部に嵌合し得る凸部を有する。或いは第一挟持部2aは、被挟持体Pに対する当接面に凹凸、条状の突起、溝及び/又は複数の微小凹凸等を設けることによって被挟持体Pとの間での摩擦力を向上させるようにしてもよい。
【0023】
本体部2bは、上下反転した逆L字状に形成され、逆L字状の長辺部(YZ平面)において、その略中央に挿入孔2cを有する。挿入孔2cは、X軸方向に延びており、第一挟持体2の後方(-X側)から雄ねじ体10を挿通させ得る。
【0024】
挿入孔2cの孔径は、雄ねじ体10を挿入する入口側において、雄ねじ体10の頭部20の外径より小さく且つ軸部30の径より大きく形成されている。一方、第一挟持体2に挿入された雄ねじ体10の出口側において、挿入孔2cの孔径は拡径し、中空円筒状の収容部5が形成されている。
【0025】
収容部5は、第二挟持体3の挿嵌部6を収容する。尚、収容部5は、挿嵌部6の全体を収容する必要はなく、挿嵌部6の少なくとも一部を収容可能に形成してもよい。具体的には収容部5内において、挿嵌部6を相対的に進退可能に構成し、一定程度に収容部5に挿嵌部6が収容された状態で雄ねじ体10に掛かる曲げ荷重や剪断荷重の一部乃至全部を分担し、雄ねじ体10を補助、補強することで雄ねじ体10の耐久性や疲労度の低下を抑制することができる様に構成されていればよい。
この様に構成することで、雄ねじ体10の耐力低下の抑制や疲労寿命の延長だけでなく、挟持器具1の耐久性を向上させ、更に疲労寿命を延長させることが出来る。
【0026】
本体部2bは、逆L字状の短辺部(XY平面)において、X軸方向と略平行に溝部2dが形成される。溝部2dは、短辺部から下側(-Z側)を開放面とするように有底状に形成される。溝部2dを構成する壁部2eは、後述する第二挟持体3の位置決め部3dと当接し、第一挟持体2と第二挟持体3のY方向の位置決めをする。
尚、溝部2dを所謂蟻溝状(断面が略逆ハの字状になった溝)として、溝部2dに位置決め部3dを挿嵌した際に、これらが上下方向に乖離することを防止するようにしてもよい。
【0027】
これにより、被挟持体Pを挟持する作業において、第一挟持体2と第二挟持体3の位置決めを容易にし、また位置決め部3dの形状が異なる部品の誤使用を防止する。更に雄ねじ体10により締結された状態では、第一挟持体2と第二挟持体3の相対回転を防止するだけでなく、第一挟持体2と第二挟持体3とのガタ付きを防止し、相対的な傾斜を防止する。
【0028】
図4は第二挟持体3を示し、(A)は背面図、(B)は側面図、(C)は正面図、(D)は上面図である。第二挟持体3は、下側(―Z側)から、第二挟持部3aと、その上方に連続する本体部3bと、位置決め部3dを有する。
【0029】
第二挟持部3aは、第一挟持体2の第一挟持部2aと対向して被挟持体Pを挟持するように、突き合わせて配置される(図1参照)。第二挟持部3aは、本体部3bの下端縁に沿って、第一挟持体2側へ突出するように形成されている。また、第二挟持部3aの被挟持体Pに当接する箇所は、被挟持体Pの表面形状に対応させた形状を有する。例えば、被挟持体Pに溝等の凹部が形成されている場合に、該凹部に嵌合し得る凸部を有する。或いは第二挟持部3aは、被挟持体Pに対する当接面に凹凸、条状の突起、溝及び/又は複数の微小凹凸等を設けることによって被挟持体Pとの間での摩擦力を向上させるようにしてもよい。
【0030】
本体部3bは、その略中央に、雄ねじ体10の雄ねじ部30bを挿入し得る挿入孔3cを有する。挿入孔3cには、X軸方向に第一挟持体2へ向けて延びる中空円筒状の挿嵌部6が連接される。この挿嵌部6の少なくとも一部は、第一挟持体2の収容部5に収容され得る。
【0031】
挿入孔3cの内周壁部6bには、第一雌ねじ部11を構成する第一螺旋条12(例えば、図5参照)が形成される。第一螺旋条12は、後述する雄ねじ体10の雄ねじ部30bにおける第一螺旋溝31と螺合する。尚、本実施形態では、第一雌ねじ部11は、右ねじ11aである第一螺旋条12が形成されるが、第一雌ねじ部11は、右ねじに限定されるものではない。
【0032】
尚、挿嵌部6は、その少なくとも一部が、収容部5に収容可能に形成し、且つ挿嵌部6は収容部5内において、相対的に進退可能に構成されていればよい。
【0033】
位置決め部3dは、突起状であり、第一挟持体2の溝部2dの壁部2eに当接するように形成されている。前述のように、位置決め部3dは、溝部2dを構成する壁部2eと当接し、第一挟持体2と第二挟持体3の位置決めをする。
【0034】
尚、本実施形態においては、第一挟持体2に溝部2dを形成し、第二挟持体3に位置決め部3dを形成したが、これに限定されない。例えば、第一挟持体2に位置決め部3dを形成してもよい。また、挟持器具1に、必ずしも溝部2dと位置決め部3dを設ける必要もない。
【0035】
図6は雄ねじ体10を示す図であり、雄ねじ体10は、頭部20と軸部30を有する。頭部20は、軸部30の一端に設けられ、軸部30と比較して大径の外径形状を有する。勿論、頭部20の外径形状は、これに限らず、所謂キャップボルト状に頭部上面から凹設された異形凹部を有するものであってもよい。
【0036】
軸部30には、円筒部30aと雄ねじ部30bが設けられる。雄ねじ部30bは、軸部30の外周面に、適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一螺旋溝31が形成される。尚、本実施形態では、雄ねじ部30bは、右ねじである第一螺旋溝31が形成されるが、雄ねじ部30bは、右ねじに限定されるものではない。
【0037】
本実施形態の挟持器具1は、図7(A)に示すように、第一挟持体2の収容部5に第二挟持体3の挿嵌部6を収容させた後、図7(B)に示すように雄ねじ体10を第一挟持体2の挿入孔2cに挿通させて第一雌ねじ部11に螺合させて構成される。また、雄ねじ体10を締付け方向に回転させて第一挟持体2と第二挟持体3同士の相対変位の規制及び被挟持体Pの挟持を成し得る。即ち、雄ねじ体10の締付けによって、第二挟持体3が軸方向に螺進し、一方で第一挟持体2が頭部20の座面に当接して軸方向の変位が制限されるため、第一挟持体2と第二挟持体3との間隔が狭まり、第一挟持部2aと第二挟持部3aの間で被挟持体Pを挟持し得る。
【0038】
以上、本実施形態の挟持器具1によれば、第一挟持体2は、第二挟持体3の挿嵌部6を収容可能な収容部5を有し、雄ねじ体10の雄ねじ部30bと、第二挟持体3の第一雌ねじ部11とを相対螺転することで、挿嵌部6を収容部6内において進退させ得るように構成されている。これにより、第一挟持体2と第二挟持体3との境界面で剪断力が作用した場合に、その剪断力を挿嵌部6の外周面で受け止めることができる。また、収容部5を備える第一挟持体2と挿嵌部6を備える第二挟持体3とが一体となり、剪断力に対する剛性を高めることが可能となる。
そのため、本実施形態の挟持器具1は、本構成を有しない挟持器具と比して、雄ねじ体10の径を小さくしても、剪断力に対して剛性を高めて雄ねじ体疲労破壊抑制及び緩み止め効果を発揮して長期的に締結状態を維持することができる。
更に被挟持体Pの交換作業等において、挟持器具1から雄ねじ体10を外した場合であっても、第一挟持体2の収容部5に第二挟持体3の挿嵌部6が収容された状態である為、第一挟持体2と第二挟持体3との分離を防止でき、例えば第一挟持体2及び第二挟持体3の何れか一方の落下等を防止することができる。
【0039】
[第一の実施形態の変形例]
図8は、第一の実施形態の変形例に係る挟持器具1を示し、(A)は各構成要素を示す図、(B)は組み立てた状態を示す断面図である。挟持器具1は、第一挟持体2と第二挟持体3と雄ねじ体10を備える。挟持器具1は、雄ねじ体10を締め付けることで、第一挟持体2と第二挟持体3の間に位置する被挟持体Pを挟持する。
【0040】
第一挟持体2は、挿嵌部16を有し、第二挟持体3は、収容部15を有する点で、第1実施形態の挟持器具1と相違する。尚、第一の実施形態における変形例では、上述した構成要素と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0041】
第一挟持体2は、第一挟持部2aと、内部に雄ねじ部30bを挿入し得る挿入孔2cを有し、第二挟持体3の収容部15に収容し得る挿嵌部16を有する。当該挿嵌部16は、X軸方向に第二挟持体3へ向けて延びる中空円筒形状を有し、挿入孔2cに連接される。
【0042】
第二挟持体3は、第二挟持部3aと、挿嵌部16を囲繞し得る収容部15を有する。第二挟持体3は、更に第一挟持体2の挿入孔2cと同軸で第一螺旋溝31を螺合し得る第一螺旋条12が形成されて成る第一雌ねじ部11を有する。
従って、挟持器具1は、雄ねじ部30bと第一雌ねじ部11とを相対螺転させることで、挿嵌部16を収容部15内において進退させ得るように構成させることを可能とする。
【0043】
これにより、挟持器具1を構成する第一挟持体2と第二挟持体3との境界面で剪断力が作用した場合に、その剪断力を挿嵌部16の外周面で受け止めることができる。
【0044】
[第二の実施形態]
図9は、第二の実施形態に係る挟持器具100を示す斜視図である。第二の実施形態である挟持器具100について説明する。尚、第一の実施形態と同様に、挟持器具100は、被挟持体Pを挟持するもの全般に適用でき、また対象となる被挟持体についても限定するものではない。また上述した第一の実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0045】
第二の実施形態において、挟持器具100は第一挟持体2と第二挟持体3と雄ねじ体110と雌ねじ体50を備える。挟持器具100は、雄ねじ体110を締め付けることで、第一挟持体2と第二挟持体3の間に位置する被挟持体Pを挟持する。更に雌ねじ体50を用いることにより、雄ねじ体110が緩むことを規制する。
【0046】
尚、挟持器具100は、第一の実施形態の挟持器具1に対し、軸部の外周面に、右ねじと左ねじとが同一領域内に重複して形成されて成る雄ねじ体110(図10参照)を用いている点と、第二挟持体3の挿嵌部6に、雄ねじ体110の右ねじ131a又は左ねじ131bの一方に螺合し得る第一雌ねじ部11が形成されると共に、雄ねじ体110の右ねじ131a又は左ねじ131bの他方に螺合し得る第二雌ねじ部が形成されて成る雌ねじ体50を備えている点が異なる。
【0047】
図10は第二の実施形態に係る雄ねじ体を示す(A)は正面図、(B)両螺旋溝領域における雄ねじ部を示す平面図である。雄ねじ体110は、頭部120と軸部130を有する。頭部120は、軸部130の一端に設けられ、軸部130と比較して大径の外径形状を有する。勿論、頭部120の外径形状は、これに限らず、所謂キャップボルト状に頭部上面から凹設された異形凹部を有するものであってもよい。
【0048】
軸部130には、円筒部130aと雄ねじ部130bが設けられる。雄ねじ部130bは、軸部130の外周面に、右ねじ131aである第一螺旋溝133a、及び左ねじ131bである第二螺旋溝133bの二種類の雄ねじ螺旋溝を同一領域上に重複して形成される重複領域Wを有する。従って、雄ねじ部130bは、右ねじ及び左ねじの何れの雌ねじ体とも螺合可能である。
【0049】
図10(B)に示すように、雄ねじ部130bにおいては、軸心(ねじ軸)Cに垂直となる面方向において周方向に延びる略三日月状の条状を成すねじ山Gが、雄ねじ部130bの直径方向における一方側(図の右側)及び他方側(図の左側)に交互に設けられる。
即ち、このねじ山Gは、その稜線が軸に対して垂直に延びており、ねじ山Gの高さは、周方向中央が高くなり、周方向両端が次第に低くなるように変化する。
従って、ねじ山Gの山高さが最も高い地点から、周方向に90°位相差を有する部分は、山高さが低くなる。
【0050】
尚、周方向に180°位相差部分では、山高さはゼロとなっている。ねじ山Gをこのように構成することで、右回りに旋回する仮想的な螺旋溝構造及び左回りに旋回する仮想的な螺旋溝構造の二種類の螺旋溝を、ねじ山Gの間に形成することが出来る。
【0051】
尚、雄ねじ部130bは、必ずしも右ねじと左ねじとを形成することに限定するものではなく、適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一螺旋溝133aと、第一螺旋溝133aとは相異なるリード角及び/又はリード方向に設定された第二螺旋溝133bであればよい。
例えば、リード方向(L1、L2)が同じで、リード角が異なる第一螺旋溝133a及び第一螺旋条12と、第二螺旋溝133b及び第二螺旋条54を採用することもできる。この場合、図11に示すように、第一螺旋溝133aに対して、更にリード角の異なる螺旋溝を重畳形成することにより、リードがL1(リード角α1)の第一螺旋溝133a及びリードがL2(リード角がα2)の第二螺旋溝133bが、ねじ方向を揃えて形成される。この場合は、第一螺旋溝133aの第一ねじ山G1と、第二螺旋溝133bの第二ねじ山G2は、共有されずに別々となる。
二種類の雄ねじ螺旋構造が形成された雄ねじ部130bの詳細については、本願の発明者に係る特許第4663813号公報を参照されたい。
【0052】
次に、第二挟持体3について説明する。第二挟持体3の本体部3bには、図12に示すように、本体部3bの一方側に、第一挟持体2の収容部5に収容され得る挿嵌部6が形成されている。また、本体部3bの他方側には、雌ねじ体50を着脱可能とする案内部7が形成されている。
【0053】
案内部7は、図12に示すように、第二挟持体3の本体部3bに形成された挿入孔3cのY方向両側に対峙するように形成されている。案内部7は、後述する雌ねじ体50の係止部55aが、案内部7を挟み込めるように断面略U字状の凹溝7aを有する。
凹溝7aは、上側(Z軸方向上側)に開放口7bを有しており、雌ねじ体50を開放口7bから凹溝7aに沿って所定の位置に配することを可能とする。
【0054】
案内部7を設けたことによって、雌ねじ体50を第二狭持体3の外側で案内部7に着脱可能に装着(外装)することが可能となる。雌ねじ体50を第二挟持体3と別体とすることで、加工コストの低減化や、雌ねじ体50が破損等した時の交換を容易にすることができる。
【0055】
尚、案内部7の開放口7bは、好ましくは本体部3bの上側(Z軸方向上側)に設けた方がよいが、これに限定されない。例えば、本体部3bの側方(Y軸方向)に案内部7の開放口7bを設けてもよい。
【0056】
尚、本実施形態においては、案内部7を用いることで、雌ねじ体50を着脱可能とした。しかしながら、案内部7を用いずに、雌ねじ体50を第二挟持体3に設けてもよい。例えば、雌ねじ体50を第二挟持体3に溶接により固定してもよいし、雌ねじ体50と第二挟持体3とを一体物として加工してもよい。
【0057】
雌ねじ体50について説明する。図13は雌ねじ体50を示し、(A)は正面図、(B)は背面図、(C)は側面図、(D)は(A)のA-A矢視断面図である。雌ねじ体50は、平面視において、短辺部分50aと長辺部分50bとを有する略長方形状の板状部材55からなり、その略中央部には貫通孔51が形成されている。また貫通孔51の一端縁部には、雄ねじ体110の雄ねじ部130bの左ねじ131bと螺合し得る第二雌ねじ部53(図13(C)参照)が形成されている。
【0058】
板状部材55は、第二雌ねじ部53が形成された側とは逆側に向けて、断面略U字状に係止部55aが形成されている(図13(C)参照)。係止部55aは、第二挟持体3の案内部7の凹溝7aと係止する(図13(B)参照)。
【0059】
第二雌ねじ部53は、板片52によって構成することができる。具体的には、貫通孔51の全周を縁取る貫通孔周縁には、略円弧状の先端部52aを有する六枚の弾性を有する板片52が配設されている。これらの板片52の先端部52aは、それぞれ第二雌ねじ部53の軸心Cに向かって傾斜して突き出ており、全体として仮想的な左螺旋状に列設されている。
尚、本実施形態においては、板片52の配設枚数は、六枚に設定したが、一枚以上であればよい。
【0060】
また、板片52の半径方向外側部分は、貫通孔51の貫通孔周縁に固設され、板片52の半径方向内側部分は、自由端とされ、この自由端側が定常位置から雄ねじ体110を締め付ける方向に向かって一方向にのみ撓むように構成される。
【0061】
六枚の板片52は、雄ねじ体110の左ねじ131bである第二螺旋溝133bのピッチ、外径、谷の径に整合するように、板片52の幅、配設傾斜角、配設位置が設定され、板片52の先端形状が左回転の螺旋状を成す弧状に形成されている。
即ち、雌ねじ体50の第二雌ねじ部53は、雄ねじ体110の第二螺旋溝133bに螺合し得る断続的な螺旋状の左ねじの第二螺旋条54が形成されている。
尚、本実施形態においては、六枚の板片52により、断続的な螺旋状の螺旋条を形成したが、これに限定されない。例えば、一枚の板片52により、連続的な螺旋状の螺旋条を形成してもよい。
【0062】
板片52の幅は、雄ねじ体110の左ねじ131bの外径と谷の径との差程に設定される。そして、配設傾斜角は、雄ねじ体110の左ねじ131bにおける外径に対するピッチの比に対応して設定される。
ここで、雄ねじ体110の右ねじ131aの外径と左ねじ131bの外径、及び、右ねじ131aの谷の径と左ねじ131bの谷の径とは、それぞれ同等に設定されているが、異なるものに設定することも可能である。
【0063】
つまり、第一雌ねじ部11の軸に垂直に配された板状部材55の貫通孔51からの板片52の動径方向の傾きは、第一雌ねじ部11の軸に対する垂直面からの傾斜角をθ、雄ねじ体110の左ねじ131bにおける外径に対するピッチPLの比をTとするとき、T≒tanθとなるように設定される。
つまり、第一雌ねじ部11の内周面の第一螺旋条12のリード角をαとするとき、θ=(180-2α)°±15°程度に設定する。また、各板片52の配設位置は、雄ねじ体110の左ねじ131bのピッチPLに対応して、それぞれの板片52が左ねじ131bに噛み合う位置関係と成るように設定される。
尚、このとき板片52を複数枚配設する場合には、互いに段違いと成るように配設することが出来る。
【0064】
雌ねじ体50を第二狭持体3に装着する手順は、先ず図14(A)に示すようにZ方向に沿って雌ねじ体50の係止部55aと案内部7とを対向させる。そして、Z方向に沿って係止部55aを案内部7内に嵌め込み、雌ねじ体50を第二狭持体3に装着する。即ち、図14(B)に示すように係止部55aを凹溝7a内に進入させ、図14(C)に示すように雌ねじ体50を案内部7(凹溝7a)の最奥に位置させて雌ねじ体50が第二狭持体3に装着される。
なお、第二狭持体3からの雌ねじ体50の取り外しは、装着時と逆向きに回転防止部材30をスライド移動させることで行うことができる。
【0065】
第二狭持体3に装着された雌ねじ体50は、貫通孔51の軸心の位置が挿入孔3cの軸心の略延長線上に位置する。従って、雌ねじ体50は、第二狭持体3の第一雌ねじ部11に螺合している雄ねじ体110に螺合し得る。なお、雌ねじ体50は、係止部55aが案内部7に係合し軸心回りの回転が規制される為、螺進する雄ねじ体10に供回りすることがない。
【0066】
また、雄ねじ体110を挿入孔2cに挿通させて締め込み方向(右回転方向)に回転させたとき、雄ねじ部130bが第一雌ねじ部11に螺合する。また雄ねじ体110の締め込みに伴い、第二雌ねじ部53の各板片52が雄ねじ体110のねじ山に係合しつつ、雄ねじ体110の螺進を許容するように弾性的に変形する。即ち、各板片52は、仮想的な左螺旋状に列設されているため、雄ねじ体110を第一雌ねじ部28に対する締付方向に回転させると、雄ねじ体110のねじ山に係合してそれぞれの半径方向中心側の自由端が、雄ねじ体110の進行方向に向かって撓んで拡径する。
【0067】
各板片52は、ねじ山との係合状態から解放されたとき、弾性的な復元力によって縮閉する。即ち、各板片52は、雄ねじ体110の雄ねじ部130bにおける所要の位置(右ねじ131aから離れた位置)まで螺合されると、その弾性的な復元力によって元の位置に戻り、雄ねじ体110の左ねじ131bに噛み合って、各板片52と左ねじ131bとが互いに整合する。
尚、雄ねじ体110の左ねじ131bに整合した各板片52は、上述の雄ねじ体110の進行方向とは逆方向(雄ねじ体110を緩ませるときの進行方向)には撓まない。或いは極めて撓み難く設けられる。
【0068】
このような第二雌ねじ部53を第二狭持体3に装着し、二種類の雄ねじ螺旋構造が形成された雄ねじ体110を第一雌ねじ部11及び第二雌ねじ部53に螺合させるだけで、雄ねじ体110が緩むことを規制することができる。
例えば、地震等の外力の付加によって被挟持物Pが振動、或いは挟持器具100が振動したとき、この振動により、挟持器具100の第一雌ねじ部11にも左回転向きのトルクも加わる虞がある。
【0069】
この場合、第一雌ねじ部11に左回転向きのトルクが作用した場合には、図15に示すように、第二挟持体3自身は、螺合時の進行方向と逆向きの力が作用することに成るが、これに対して、板片52は雄ねじ体110の左ねじ131bに整合され、且つ板片52が逆向きには撓まない為に、左回転向きのトルクが作用した各板片52には左ねじの進行方向、即ち、螺合時の進行方向(雄ねじ体110の頭部120側に向かう方向)に進行しようとする力が働くことになる。
【0070】
つまり、第二挟持体3の挿入孔3cの内周面に形成された右回転の第一螺旋条12に働く後退しようとする力と第二挟持体3に固設された各板片52に働く前進しようとする力とが拮抗して、結果的に、第二挟持体3は雄ねじ体110の重複領域W上において与えられた一定の位置に止まることに成る。
即ち、本実施態様の雄ねじ体110と第二挟持体3の第一雌ねじ部11との螺合の組み合わせにおいては、第二挟持体3は、進行するか止まるかの何れかであり、後退することはない。従って、雄ねじ体110は、第一ねじ部11に対して緩み方向に螺進し得ない。つまり、第2実施形態の雌ねじ体50によって雄ねじ体110が緩むのを規制することができる。
【0071】
[第2実施形態の変形例]
図16及び図17は、第2実施形態の変形例に係る雌ねじ体50を示す図である。第2実施形態と異なるのは、雌ねじ体50の係止部55bの形状が異なる点と、案内部70の形状が、係止部55bの形状に対応する構成になっている点である。即ち、雌ねじ体50が案内部70に包持されるように、雌ねじ体50を案内部70によって囲われた内側に装着(内装)させる構成となっている。
また、第二雌ねじ部53を構成する、板片52の枚数が第1実施形態と異なる。尚、本実施形態では、第2実施形態と同様の構成要素には第2実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0072】
図16に示すように、板状部材55の短辺部分50aには、第二雌ねじ部53が形成された側に向けて断面略U字形の係止部55bが、形成されている。
貫通孔51の全周を縁取る貫通孔周縁には、略円弧状の先端部52aを有する一枚の弾性を有する板片52が配設されている。この板片52の先端部52aは、第二雌ねじ部53の軸心Cに向かって傾斜して突き出ている。この一枚の板片52により、連続的な螺旋状の螺旋条を形成する。即ち、雌ねじ体50の第二雌ねじ部53は、雄ねじ体110の第二螺旋溝133bに螺合し得る連続的な螺旋状の左ねじの第二螺旋条54が形成されている。
【0073】
次に案内部70について説明する。図17に示すように、案内部70は、第二挟持体3の本体部3bに形成された挿入孔3cの両側に、対峙して設けられている。案内部70は、雌ねじ体50を配した際に雌ねじ体50の係止部55bの位置と対応する位置に突設され、且つ係止部55bを挟むように保持する断面略U字状である。案内部70は、上側(Z軸方向上側)を開放口70bとする凹溝70aで構成されており、雌ねじ体50を開放口70bから凹溝70aに沿って所定の位置に配することを可能とする。
【0074】
ここで雌ねじ体50の両端はU字形に係止部55bが設けられ、凹溝70aに弾性的に挿嵌されるが、これに限らず、U字形にせずに平坦な両端形状としたり、テーパ状に形成したものであってもよい。また、U字形の形成向きを第二雌ねじ部53が形成されたのと逆側に向けて断面略U字形に形成してもよい。具体的には、雌ねじ体50を本体部3bの表面に重ねた状態で上側(Z軸方向上側)からスライドさせながら開放口70bから案内部70に挿入する。これにより、雌ねじ体50は、雌ねじ体50の両側及び下側の外縁が案内部70の凹溝70aに挟まれて所定の位置で保持される。
【0075】
[第3実施形態]
図18は、第3実施形態に係る挟持器具300を示し、(A)は第一狭持体2、第二狭持体3、雄ねじ体110、雌ねじ体310を分離させた状態の断面図、(B)は各部を組み合わせた状態の断面図である。
である。
尚、第3実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成要素には第1実施形態及び第2実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。挟持器具300は、図18(A)に示すように、第一挟持体2と第二挟持体3と雄ねじ体110と雌ねじ体310を備える。挟持器具300は、雄ねじ体110を締め付けることで、第一挟持体2と第二挟持体3の間で被挟持体を挟持し得る。更に雌ねじ体310を用いることにより、雄ねじ体110が緩むことを規制する。
【0076】
雌ねじ体310は、所謂ナットであって筒形状を有し、左ねじとしての第二雌ねじ部313を有する。即ち、雌ねじ体310は、貫通孔311の内周面に左ねじの第二螺旋条を有し、当該第二螺旋条が雄ねじ体110の第二螺旋溝133bに螺合し得る。
【0077】
尚、第二挟持体3の第一雌ねじ部11は、雄ねじ体110の第一螺旋溝133aに螺合する為の右ねじの第一螺旋条12を有する。
ここで、雄ねじ体110の雄ねじ部130bにおける、右ねじに螺合する第一雌ねじ部11を有する第二挟持体3と、雄ねじ体110の雄ねじ部130bにおける、左ねじに螺合する第二雌ねじ部313を有する雌ねじ体310とが、所謂ダブルナット構造となっている。
【0078】
勿論、雄ねじ部130bは、必ずしも右ねじと左ねじとを形成することに限定するものではなく、適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一螺旋溝133aと、第一螺旋溝133aとは相異なるリード角及び/又はリード方向に設定された第二螺旋溝133bであればよい。
【0079】
本実施形態においては、ダブルナット構造を採用することにより、互いの第二挟持体3と雌ねじ体310が、相対回転しない限り回転緩みし得ない。即ち、図18(B)に示すように、第一狭持体2と第二狭持体3とを組付けて雄ねじ体110を第一雌ねじ部11に螺合させ、雄ねじ体110の先端側で雌ねじ体310を螺合することで、雄ねじ体110に対する第二狭持体3の回転緩みを防止する。
相対回転しない限り回転緩みし得ない点について、その原理の詳細については、本願の発明者に係る特許第7014395号公報を参照されたい。
【0080】
[第3実施形態の変形例]
図19は、第3実施形態の変形例に係る相対回転抑制構造の相対回転状態の遷移を説明する為の(A)は正面図、(B)は(A)のB-B矢視断面図、(C)は正面図、(D)は(C)のD-D矢視断面図、(E)は正面図、(F)は(E)のF-F矢視断面図である。
【0081】
第3実施形態の変形例である挟持器具500において、第二挟持体と雌ねじ体550の間に相対回転抑制構造8が設けられる。第二挟持体503と雌ねじ体550との相対回転を確実に抑制することが可能となる。尚、本変形例の相対回転抑制構造8を除いた他の部位・部材は、他の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0082】
<相対回転防止構造>
図19に示すように、相対回転防止構造8は、第二挟持体503に形成される環状凸部505と、雌ねじ体550に形成される環状凸部505を収容する環状凹部552を備える。
【0083】
図20(A)に示すように、第二挟持体503の環状凸部505の外周面は、軸方向Jに沿って径方向Kに拡径又は縮径するテーパ面となる。ここでは外周面が軸方向Jの外側(雌ねじ体550側)に向かって縮径している。
【0084】
図20(B)に示すように、環状凸部505の外周面には、周方向Sに移動するにつれて、径方向Kに変位する第一(相手側)変位部540が形成される。この第一変位部540は、軸方向から視た場合、回転中心と同軸となる仮想正円M(仮想正円錐)の部分円弧M1に対して、径方向Kの外側に凸となる突起となる。従って、第一変位部540の突出部分の外周面の曲率は、仮想正円Mの曲率よりも小さくなる。また、環状凸部505の外周面を軸方向から視た場合の曲率中心は、常に、外周面の内側(又は仮想正円Mの内側)に位置している。即ち、第一変位部540の外周面の曲率は、周方向に沿って正負が反転しないように設定される。このようにすると、図34に示すように、環状凸部505の外周面は、径方向外側に凸状となるか、少なくとも仮想正円Mと外接する平坦面となるので、雌ねじ体550において弾塑性変形する第二変形許容部560に対して、全周に亘って密着することができる。結果、機械構造的に環状凸部505と環状凹部552とが、互いに略同等の異形状の凹凸が嵌合することで、構造的に相対回転を防止し、締結状態の緩みを防止することができる。
【0085】
尚、第一変位部540の各突起が周方向に120°の位相範囲を占めており、三個の第一変位部540が、周方向に均等配置される。結果として、環状凸部505を軸視すると、角丸の正三角形となっており、隣接する一対の第一変位部540の仮想的な境界540Xは、直線状の平面となっている。尚、本発明はこれに限定されず、角丸の正四角形、正五角形等、様々な形状を採用できる。
【0086】
尚、第一変位部540は、軸方向Jに向かって延びている。第一変位部540の軸直角方向の断面形状は、環状凸部505の突端側が小さくなり、基端側が大きくなる相似形となる。また、環状凸部505の外周面の外周長は、基端側が最も大きいR1となり、突端側が最も小さいR3となり、その中間がR2となる(R1>R2>R3)。尚、この第一変位部540の部分円弧形状の外表面は、周方向Sに移動するにつれて径方向Kに変位することになる。
【0087】
図21に示すように、雌ねじ体550の環状凹部552の円錐内周面(円筒面)は、正円形状であり、且つ軸方向Jに沿って径方向Kに拡径又は縮径するテーパ面となる。ここでは内周面が、第二挟持体503側に向かって拡径しており、環状凸部505の外周面と平行になる。この内周面は平滑面となる。内周面の内周長は、突端側が最も大きいE1となり、基端が最も小さいE3となり、その中間がE2となる(E1>E2>E3)。これらの内周長E1、E2、E3を、環状凸部505の外周面の外周長R1、R2、R3と比較すると、以下の条件を満たす。
【0088】
R1≧E1>R2≧E2>R3≧E3(図22参照)
【0089】
図19(E)(F)に示すように、環状凸部505と環状凹部552が最終的に嵌合(フィット)した状態において、軸方向に一致する場所の環状凸部505の外周長と、環状凹部552の内周長が、ほぼ等しくなる。つまり、この設定にすると、環状凹部552の第二変形許容部560は、弾性変形及び/又は塑性変形(弾塑性変形)しないと、環状凸部505の第一変位部540を受け入れることができない。
【0090】
図23に示すように、この環状凹部552全体が、第二(ねじ体側)変形許容部560となる。従って、第二挟持体503と雌ねじ体550が互いに接近する際の締結力を利用して、この第二変形許容部560は、第二挟持体503の第一変位部540に押圧することで、自らの一部が径方向外側に凹むように変形し、この変形によって、第二(ねじ体側)変位部555を作出する。
【0091】
図23に示すように、変形後の第二変位部555の凹み形状を画定する一対の作出面562A、562Bは、径方向Kの幅を有する(変位する)。また、この作出面562A、562Bは、軸方向Jに延びる。第二変形許容部560の表面において、第二変位部555が、ねじ体の1ピッチ以上の軸方向範囲(領域)に広がって作出される。結果、雌ねじ体550が、緩み方向に1回転する際に、凡ての位相において常に、相対回転の抑制効果を発揮できる。尚、具体的には3ピッチ以上の軸方向範囲に広がって作出されることが好ましい。この軸方向範囲(領域)は、第二変形許容部560と第一変位部540の軸方向の干渉距離と定義することもできる。
【0092】
尚、相対回転抑制構造が適用される係合機構の詳細については、本願の発明者に係る特許7014395号公報を参照されたい。
【0093】
[第4実施形態]
図24の第4実施形態の雄ねじ体の逆回転防止構造を示す側面部分断面図を参照して、第4実施形態の挟持器具600について説明する。図24に示すように、挟持器具600は、第一挟持体602と雄ねじ体610を有する。挟持器具600は、雄ねじ体610を締め付けることで、第一挟持体602と第二挟持体3(不図示)の間に位置する被挟持体を挟持する。更にねじ体の逆回転防止構造を用いることにより、雄ねじ体610が緩むことを防止する。
【0094】
図24には、第4実施形態に係るねじ体の逆回転防止構造が示される。ねじ体の逆回転防止構造では、雄ねじ体610と、環状のワッシャ690を備えて構成される。
【0095】
図25は逆回転防止構造で用いられる雄ねじ体610を示し、(A)は側面部分断面図、(B)は底面図である。雄ねじ体610は、頭部620と軸部630を有する。頭部620の下部乃至付け根に相当する部位には、ねじ体側座部622が形成される。軸部630には、円筒部630aと雄ねじ部630bとが形成される。勿論、円筒部630aは必須ではない。
【0096】
ワッシャ690の一方側(図24の上面側)には、第一受部660が形成される。この第一受部660は、ねじ体側座部622と対向しており、両者の間には、第一係合機構Aが構成される。この第一係合機構Aは、少なくともねじ体側座部622が、締結状態の雄ねじ体610を緩める方向に回転しようとすると、第一受部660とねじ体側座部622が互いに係合して、当該回転方向に対する第一受部660とねじ体側座部622との相対回転を防止する。
【0097】
ワッシャ690の他方側(図24の下面側)には、第二受部670が形成される。この第二受部670は、第一挟持体602と対向する。
【0098】
第一挟持体602には、ワッシャ690の第二受部670に対向する部材側座部682が形成される。第一挟持体602の部材側座部682と、ワッシャ690の第二受部670の間には、第二係合機構Bが構成される。この第二係合機構Bは、少なくともワッシャ690が、雄ねじ体610と共に、緩める方向に回転しようとすると、第二受部670と部材側座部682が互いに係合して、当該回転方向に対する第二受部670と部材側座部682との相対回転を防止する。
【0099】
この第一係合機構Aと第二係合機構Bの作用により、雄ねじ体610が緩み方向に回転しようとすると、ワッシャ690の介在によって、雄ねじ体610と第一挟持体602の相対回転が規制される。結果、雄ねじ体610が緩むことが防止される。
【0100】
図24に示すように、第一係合機構Aとして、雄ねじ体610のねじ体側座部622には、ねじ体側凹凸624が形成される。ねじ体側凹凸624は、周方向に複数連続して設けられる鋸刃形状と成っている。ねじ体側凹凸624の各々が延びる方向、即ち、稜線が延びる方向は、雄ねじ体610の半径方向となっている。結果、ねじ体側凹凸624は、軸心から放射状に延びる。
【0101】
更に、このねじ体側座部622は、半径方向に傾斜するねじ体側テーパ面626が形成される。このねじ体側テーパ面626は、中心側がねじ先に近づくように傾斜しているので、結果として、ねじ先側に凸の円錐形状となる。更に好ましくは、このねじ体側テーパ面626に、既述のねじ体側凹凸624が形成される。
【0102】
図26に示されるように、第一係合機構Aとして、ワッシャ690の第一受部660には、ねじ体側凹凸624と係合する第一受部側凹凸664が形成される。第一受部側凹凸664は、周方向に複数連続して設けられる鋸刃形状となっている。第一受部側凹凸664の各々が延びる方向、即ち稜線が延びる方向は、雄ねじ体610の半径方向に沿っている。結果、第一受部側凹凸664は、ワッシャ690の貫通穴52の中心から放射状に延びる。
【0103】
更に、好ましくは、この第一受部660は、半径方向に傾斜するワッシャ側テーパ面666が形成される。このワッシャ側テーパ面666は、中心側がねじ先に近づくように傾斜してすり鉢状を成しているので、結果として、ねじ先側に凹の円錐形状となる。このワッシャ側テーパ面666に、既述の第一受部側凹凸664が形成される。
【0104】
結果、雄ねじ体610を締め付ける際に、第一係合機構Aでは、ワッシャ690のワッシャ側テーパ面666の凹内に、ねじ体側座部622のねじ体側テーパ面626が進入し、ねじ体側凹凸624と第一受部側凹凸664が係合する。
【0105】
図26に示すように、ワッシャ690の第二受部670の外壁672は、ねじの軸心からの距離が周方向に沿って変動する。具体的に、この外壁672は、ねじの軸心(貫通孔652の中心)に対して偏心した円形状となっている。
【0106】
一方、図24に示すように、第一挟持体602の部材側座部682は、ワッシャ690の第二受部670を収容する為の収容凹部684を備えており、且つこの収容凹部684の内壁も、ねじの軸心に対して偏心した円形状となっている。尚、偏心量は、第二受部670と収容凹部684で同じであり、第二受部670と収容凹部684の直径差(余裕隙間)は、偏心量よりも小さく設定される。
【0107】
第4実施形態のねじ体の逆回転防止構造によれば、ワッシャ690を介在させることによって、ねじ体側座部622と第一受部660の間に第一係合機構Aを構成し、部材側座部682と第二受部670の間に第二係合機構Bを構成し、雄ねじ体610が緩もうとすると、第一係合機構A及び第二係合機構Bの双方の規制作用によって、雄ねじ体610が第一挟持体602と周方向に係合した状態となり、逆回転すること、即ち緩むことが防止される。従って、振動等が生じても、全く緩まない締結状態を得ることが出来る。
【0108】
尚、本実施形態では、ワッシャ690を用いたが、ワッシャ690の構成を第一挟持体602に持たせても良い。即ち、第一挟持体602に第一受部660を形成し、この第一受部660とねじ体側座部622の間に第一係合機構Aを設けてもよい。
【0109】
以上、第1実施形態乃至第4実施形態において、挟持器具に、挿嵌部を収容可能な収容部を設けることで、挟持器具を構成する第一挟持体と第二挟持体間で生じ得る剪断力に対する剛性を高めることを可能とした。しかしながら、これらの構成を有しない挟持器具としてもよい。
例えば、被挟持体を挟持する挟持器具は、適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一螺旋溝(133a)が形成されると共に、該第一螺旋溝(133a)とは相異なるリード角及び/リード方向に設定された第二螺旋溝(133b)とが、軸部の外周面における同一領域内に重複して、形成されて成る雄ねじ部(130b)を有する雄ねじ体(110、610)と、第一挟持部(2a)と雄ねじ体(110、610)を挿入し得る挿入孔(2c)を有する第一挟持体(602)と、第二挟持部(3a)と雄ねじ体(110、610)の第一螺旋溝(133a)又は第二螺旋溝(133b)の一方に螺合し得る第一螺旋条(12)が形成されて成る第一雌ねじ部(11)を有する第二挟持体(3、503)と、雄ねじ体(110、610)の第一螺旋溝(133a)又は第二螺旋溝(133b)の他方に螺合し得る第二螺旋条(54)が形成されて成る第二雌ねじ部(53)を有する雌ねじ体(50、550)を備える。そして、第一雌ねじ部(11)及び第二雌ねじ部(53)が、それぞれ雄ねじ体(110、610)の雄ねじ部(130b)に螺合される。本構成の挟持器具によれば、ねじ体の緩みを防止することができる。
【0110】
以上、上記に説明した第1実施形態乃至第4実施形態の構成要素は、矛盾の無い限り相互に組み合わせて実施することができる。また、各実施形態における挟持器具を構成する第一挟持体、第二挟持体、雄ねじ体、雌ねじ体の材料として、鉄系材料、非鉄系材料等の金属材料や、樹脂材料、強化樹脂材料等或いはこれらを組み合わせた材料等を用いることができる。
【0111】
また、被挟持体は、第一挟持体、第二挟持体の間で挟めるものであれば、その対象は特に限定されるものでは無く、例えば、上水道用、下水道用、ガス用、蒸気用、各種薬品用、オイル用等の各種配管、建造物を構成する梁、柱、筋交い、鉄骨材、鉄筋、ワイヤ、ケーブル、針金、板状の部材等も被挟持体となり得る。
また、被挟持体の素材には、金属及び/又は非金属を含む。金属には、アルミ、銅、銀、金、鉄、ニッケル、タングステン、チタン、亜鉛等の純物質系やそれらを成分に含んで成る混合物や化合物、例えば、真鍮、ステンレス、マグネシウム合金等の合金等を含む。非金属には、木、プラスチック、紙、難燃処理した木、合板、石材、ガラス、セラミック、陶器、磁器、ゴム、天然樹脂、合成樹脂、コンクリート、アスファルト等を含み、またこれらの複合材料を含む。また被挟持体は、導電材料であっても、電気絶縁性材料の何れであってもよい。
【0112】
また、第一挟持部、第二挟持部の形状は、被挟持体の外形形状に対応させたものであればよく、例えば図27(a)に示すように第一挟持部2a、第二挟持部3a間に略円形状の空間200を作出し、該空間200内に配した断面略円形状の被挟持体の外周を覆い得るように第一挟持部2a、第二挟持部3aの形状を定めることが出来る。また、図27(b)に示すように、第一挟持部2a、第二挟持部3aが平面で被挟持体に当接して挟持し得るように、平面状の当接面210を有するものであってもよい。
【0113】
また、雌ねじ体50を案内部70から容易に引き出し可能とするために、雌ねじ体50に引出片を設けるようにしてもよい。例えば、雌ねじ体50は、案内部70に装着するときの、装着方向の上流端に引出片としての取出し部150を設けることができる。
取出し部150は、板状部材55の厚み方向に突出するように、板状部材55に対して屈曲させた部位である。なお、取出し部150が突出する長さは、特に限定するものではなく、案内部70よりも軸方向の前方に突出する長さであってもよく、案内部70よりも前方側に出っ張らないような長さであってもよい。また取出し部150は、厚み方向と平行な方向に延在していてもよく、また厚み方向に対して傾斜させた方向に延在していてもよい。
【0114】
このような取出し部150は、図28(A)に示すように雌ねじ体50を第二挟持体3に対して鉛直方向下向きに差し込んで装着させた場合に、案内部70の上方に配されるように設ける。また、取出し部150は、案内部70の外側で露出しているので、図28(B)に示すように取出し部150を引き上げることで、雌ねじ体50を第二挟持体3から容易に抜去することが出来る。
【0115】
また、本発明の挟持器具100は、単一の被挟持体を挟持するものに限定されるものではなく、複数の被挟持体Pを挟持し得るものであってもよい。例えば、図29に示すように二つの被挟持体Pを重ね合わせた状態で挟持して保持するように挟持器具100を用いることがあり得る。
被挟持体Pが板状部材である場合、第一挟持部2a及び第二挟持部3aは、表面に複数の凹凸を形成した当接面を被挟持体Pに当接させる。これによって第一挟持部2a或いは第二挟持部3aに対する被挟持体Pの摺動を抑制してもよい。勿論当接面の形状は、上記に限定するものではなく、一対の凹凸や、一又は二以上の溝及び又は条状部を形成したもの、綾目模様や平目模様等に細かい凹凸や切り込みを設けたもの等もあり得る。
【符号の説明】
【0116】
1,100,300,500,600・・・挟持器具、2,602・・・第一挟持体、2a・・・第一挟持部、2b・・・本体部、2c・・・挿入孔、2d・・・溝部、2e・・・壁部、3,503・・・第二挟持体、3a・・・第二挟持部、3b・・・本体部、3c・・・挿入孔、3d・・・位置決め部、4・・・接続部、5,15・・・収容部、5a・・・底面、5b・・・内周壁部、5c・・・先端縁、6,16・・・挿嵌部、6b・・・内周壁部、6c・・・先端縁、7,70・・・案内部、7a,70a・・・凹溝、7b,70b・・・開放口、8・・・相対回転抑制構造、10,110,610・・・雄ねじ体、11・・・第一雌ねじ部、11a・・・右ねじ、12・・・第一螺旋条、20,120,620・・・頭部、30,130・・・軸部、30a・・・円筒部、30b・・・雄ねじ部、31・・・第一螺旋溝、50,550・・・雌ねじ体、50a・・・短辺部分、50b・・・長辺部分、51・・・貫通孔、52・・・板片、52a・・・先端部、53・・・第二雌ねじ部、54・・・第二螺旋条、55・・・板状部材、55a,55b・・・係止部、130b・・・雄ねじ部、131a・・・右ねじ、131b・・・左ねじ、133a・・・第一螺旋溝、133b・・・第二螺旋溝、505・・・環状凸部、540・・・第一変位部、552・・・環状凹部、555・・・第二変位部、560・・・第二変形許容部、562A、562B・・・作出面、652・・・貫通孔、660・・・第一受部、664・・・第一受部側凹凸、666・・・ワッシャ側テーパ面、670・・・第二受部、672・・・外壁、682・・・部材側座部、684 ・・・収容凹部、690・・・ワッシャ、
図1
図2
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図5
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