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特開2024-171280移動装置、および、それを用いた移動方法
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  • 特開-移動装置、および、それを用いた移動方法 図1
  • 特開-移動装置、および、それを用いた移動方法 図2
  • 特開-移動装置、および、それを用いた移動方法 図3
  • 特開-移動装置、および、それを用いた移動方法 図4
  • 特開-移動装置、および、それを用いた移動方法 図5
  • 特開-移動装置、および、それを用いた移動方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171280
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】移動装置、および、それを用いた移動方法
(51)【国際特許分類】
   B66F 3/46 20060101AFI20241204BHJP
   F16H 19/02 20060101ALI20241204BHJP
   B66F 3/08 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B66F3/46
F16H19/02 Z
B66F3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088271
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】304053946
【氏名又は名称】株式会社キャムズ
(72)【発明者】
【氏名】太田 雅章
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AA27
3J062AC07
(57)【要約】
【課題】二つの移動手段を組み合わせて、大規模装置並みの能力を発揮させることができるコンパクトな移動装置を提供する。
【解決手段】本発明の移動装置は、対象物を移動させる移動装置であって、第一の並進移動手段と第二の並進移動手段を備え、第二の並進手段の筐体は第一の並進手段に固定され、第二の並進手段の並進部は第二の並進手段の筐体に対して並進し、第二の並進手段の並進部には対象物を固定するためのアタッチメントを取り付け可能であり、第一の並進移動手段による並進方向と第二の並進移動手段による並進方向は略平行であり、第二の並進手段は回転部を有し、当該回転部の回転運動を上記並進部の並進運動に変換する回転並進変換部を有し、第一の並進手段の並進ストロークは第二の並進手段の並進ストロークよりも小さく、第一の並進手段の単位並進長さ当たりの並進力は第二の並進手段の単位並進長さ当たりの並進力よりも大きいことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を移動させる移動装置であって、
第一の並進移動手段と、
第二の並進移動手段と
を備え、
前記第二の並進手段の筐体は前記第一の並進手段に固定され、
前記第二の並進手段の並進部は前記第二の並進手段の筐体に対して並進し、
前記第二の並進手段の前記並進部には対象物を固定するためのアタッチメントを取り付け可能であり、
前記第一の並進移動手段による並進方向と前記第二の並進移動手段による並進方向は略平行であり、
前記第二の並進手段は回転部を有し、当該回転部の回転運動を上記並進部の並進運動に変換する回転並進変換部を有し、
前記第一の並進手段の並進ストロークは前記第二の並進手段の並進ストロークよりも小さく、
前記第一の並進手段の単位並進長さ当たりの並進力は前記第二の並進手段の単位並進長さ当たりの並進力よりも大きい
ことを特徴とする移動装置。
【請求項2】
前記第二の並進手段の前記回転部は、インパクトレンチのソケットと結合する形態を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の移動装置。
【請求項3】
前記第一の並進移動手段は油圧式ジャッキであることを特徴とする
請求項1または2に記載の移動装置。
【請求項4】
上記請求項1から3のいずれかの移動装置を用いる移動方法であって、
前記第二の並進手段の前記並進部と対象物の所定箇所とを紐状体で接合した状態で、
前記第一の移動手段で所定のストロークを並進移動させる第一の工程と、
前記第一の移動手段で上記所定のストロークと略同一のストロークを逆方向に並進する第二の工程と、
前記第二の移動手段で上記所定のストロークを並進する第三の工程とを、
繰り返して行う
ことを特徴とする移動方法。
【請求項5】
上記請求項1から3のいずれかの移動装置を用いる移動方法であって、
前記第二の並進手段の前記並進部と対象物の所定箇所とを接合した状態で、
前記第一の移動手段で対象物を並進移動させることで、対象物の固定状態を緩和し、
その後に、前記第二の移動手段により対象物を並進移動させる
ことを特徴とする移動手段。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物を移動させる移動装置、および当該移動装置を用いて物を移動させる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動させたい対象物を移動させる機構は様々な機構がある。一般には、大きな移動ストロークを持つ移動機構は小さな力しか出せず、一方、大きな力を出せる移動機構は、移動ストロークが小さい。
例えば、特許文献1に示す油圧式ジャッキは、オイルの圧力を用いてシリンダーを強い力で押し出すが、その移動ストロークは大きくは取れない。
【0003】
したがって、大きな力で大きな移動ストロークを得るためには、かなり大きな、大規模な装置が必要となる。たとえば、道路から道端に落ちた自動車を引き上げるためには、レッカー車やクレーンといった大きな装置が必要になる。
あるいは、地中に深く埋め込んだ支柱は、埋め込んでから時間が経過することで地盤が固まり、容易には抜けないため、地中まで引き出す移動ストロークと固まった地盤から引き上げるための大きな力を出す装置が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-198686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、大きな力で大きな移動ストロークを得るためには、大規模な装置が必要となるのが普通である。例えば、特許文献1に記載された油圧式ジャッキは、比較的軽量で持ち運び可能な装置であり、且つ大きな力は出せる。しかし、物を移動させる移動距離は短い。したがって、油圧式ジャッキで物を長い距離移動するためには、油圧式ジャッキのシリンダーと移動するものの固定を何度もやり直し、少しずつ物を移動させねばならず、大変な手間と時間が必要になるという問題があった。
【0006】
例えば、フェンスの支柱を地中から引き抜く場合を考えてみる。支柱は地中深くに埋まっており、地盤が固まると地中に固定され、容易に引き抜くことはできない。したがって、強い力で地上まで引き抜くためには、強い力で長い距離を移動させて引き抜く必要がある。
もし、フェンスが道路際に設置されたものであれば、大規模な装置を用いることができるが、鳥獣防止策のように山中等の自動車が入れない場所に設置されたフェンスの場合、支柱を引き抜くのに大規模な装置を用いることは不可能であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の移動装置は、対象物を移動させる移動装置であって、第一の並進移動手段と、第二の並進移動手段とを備え、前記第二の並進手段の筐体は前記第一の並進手段に固定され、前記第二の並進手段の並進部は前記第二の並進手段の筐体に対して並進し、前記第二の並進手段の前記並進部には対象物を固定するためのアタッチメントを取り付け可能であり、
前記第一の並進移動手段による並進方向と前記第二の並進移動手段による並進方向は略平行であり、前記第二の並進手段は回転部を有し、当該回転部の回転運動を上記並進部の並進運動に変換する回転並進変換部を有し、前記第一の並進手段の並進ストロークは前記第二の並進手段の並進ストロークよりも小さく、前記第一の並進手段の単位並進長さ当たりの並進力は前記第二の並進手段の単位並進長さ当たりの並進力よりも大きいことを特徴とするものである。
また、本発明の移動装置は、前記第二の並進手段の前記回転部が、インパクトレンチのソケットと結合する形態を有することを特徴とするものである。
さらに、本発明の移動装置は、前記第一の並進移動手段は油圧式ジャッキであることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の移動方法は、上記のいずれかの移動装置を用いる移動方法であって、前記第二の並進手段の前記並進部と対象物の所定箇所とを紐状体で接合した状態で、前記第一の移動手段で所定のストロークを並進移動させる第一の工程と、前記第一の移動手段で上記所定のストロークと略同一のストロークを逆方向に並進する第二の工程と、前記第二の移動手段で上記所定のストロークを並進する第三の工程とを繰り返して行うことを特徴とするものである。
また、本発明の移動方法は、上記の移動装置を用いる移動方法であって、前記第二の並進手段の前記並進部と対象物の所定箇所とを接合した状態で、前記第一の移動手段で対象物を並進移動させることで、対象物の固定状態を緩和し、その後に、前記第二の移動手段により対象物を並進移動させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の移動装置は、コンパクトな装置でありながら、対象物を並進移動させる大きな力と、大きな並進のストロークを得ることができるため、普通乗用車にも日常的に搭載できる。あるいは、山深くの道がない場所でっても、持って入ることができるため、どこでも作業可能である。例えば、獣害防止柵のように、山中に設置するものでは、支柱が埋められた場所に車で入ることは不可能な場合が多いが、本発明品は魂魄で軽量であるため、持ち運び容易である。
また、市販のインパクトレンチを使用できるため、特別な動力源は不要である。
【0010】
また、本発明の移動方法は、移動する対象物と移動装置との固定をやり直すことなく、長い距離を移動できるため、手間と時間を節約できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の移動装置の構成図であり、(a)は第一の並進移動手段、(b)は第二の並進移動手段である。
図2】本発明の移動装置を用いた移動方法の説明図であり、初期の状態を表す図である。
図3】本発明の移動装置を用いた移動方法の説明図であり、第一の工程を示す図である。
図4】本発明の移動装置を用いた移動方法の説明図であり、第二の工程を示す図である。
図5】本発明の移動装置を用いた移動方法の説明図であり、第三の工程を示す図である。
図6】本発明の移動装置を用いた移動方法の説明図であり、繰り返しの第一の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態.
以下に、本発明の実施の形態に係る移動装置、および当該移動装置を用いた移動方法について、説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明の良好な一例であって、特に本発明をこの一例に限定するものではない。本発明の良好な一例を示すにすぎないため、以下の実施の形態と同様の発明概念を持つ発明品を本発明は含有するものである。
【0013】
本発明の移動装置は、移動させる物(対象物)を並進移動させる装置である。この装置の構成を図1を用いて説明する。さらに、この移動装置を用いた移動方法を図2から図6を用いて説明する。
【0014】
<本発明の構成>
図1は、本発明の移動装置の構成図であり、(a)は第一の並進移動手段、(b)は第二の並進移動手段である。
本発明の移動装置は、対象物(移動させる物)を移動させる移動装置であって、主に、第一の並進移動手段10と、第二の並進移動手段20とを備えている。
そして、第二の並進手段20の筐体21は第一の並進手段10の並進部12に固定されている。第二の並進手段20の並進部23は第二の並進手段20の筐体21に対して並進し、第二の並進手段20の並進部23には対象物を固定するためのアタッチメント24を取り付け可能であり、第一の並進移動手段10による並進方向と第二の並進移動手段20による並進方向は略平行である。また、第二の並進手段20は回転部22を有し、回転部22の回転運動を並進部23の並進運動に変換する(図示しない)回転並進変換部を有している。
ここで、第一の並進手段10の並進ストロークは第二の並進手段20の並進ストロークよりも小さく、第一の並進手段10の単位並進長さ当たりの並進力は第二の並進手段20の単位並進長さ当たりの並進力よりも大きい。
【0015】
より望ましくは、第二の並進手段20の回転部22が、インパクトレンチのソケットと結合する形態を有するものである。このようにすることで、市販のインパクトレンチを第二の並進手段20の駆動源とすることが可能であり、特別の駆動源を持つ必要がなくなる。
【0016】
また、第一の並進移動手段10は油圧式ジャッキであっても良い。この場合、駆動ハンドル13を回転させることで、並進部12であるシリンダーを上下動することができる。上下動のストロークは、例えば、10mmから300mm程度である。また、第一の並進移動手段10の鉛直方向長さは、例えば、250mmから400mm程度である。
そして、第一の並進手段10の耐荷重は、2000kg重から10000kg重程度である。
【0017】
第一の並進手段10の並進部12と、第二の並進部20の筐体21とを固定するために、第一の並進移動手段10には並進部23に固定されたアタッチメントを、第二の並進手段20の筐体21には接続部26を設ける等することで、第一の並進手段10の並進部12と第二の並進部20の筐体21とを固定できるようにしている。
【0018】
また、第二の並進手段20の並進部23には、様々な形態のアタッチメント24を取り付けることが可能であり、対象物の形態や移動方法等により、最適なアタッチメントを選択することができる。図1においては、アタッチメント24は釣り下げ部を有し、そこに紐状体であるロープやチェーンを取り付け、この紐状体で対象物を固定できるようにしている。
【0019】
第二の並進手段20は縦置き、横置き等、様々な使い方が考えられる。図1においては立設して使用する場合を想定し、筐体21の底面部に脚部27を設けている。
なお、第二の並進手段20の上下動のストロークは、例えば、100mmから900mm程度であり、第一の並進手段10の上下動のストロークよりも長いようにする。また第二の並進移動手段20の鉛直方向長さは、例えば、800mmから1200mm程度である。
そして、第二の並進手段20の耐荷重は、300kg重から1000kg重程度である。
【0020】
<移動方法>
次に、この移動装置を用いて対象物を移動させる方法に関して、図2から図6を用いて説明する。
図2は、第二の並進部20の並進部23に取り付けたアタッチメント24に掛けた紐状体25により、対象物Aを固定した初期状態を表している。対象物Aは支柱であり、下部は地中深くに埋まっている。この支柱を地面Bまで引き抜く工程を説明する。
なお、支柱Aが強く地面に固定されていないときには、インパクトレンチ30により第二の並進手段20の回転部20を回転させ、並進部23を上昇させて支柱を引き上げることが可能である。しかし、ここでは支柱Aが強く地面に固定されているため、インパクトレンチ30はトルク不足で回転部20は回転せず、支柱Aを全く引き上げられない状態を仮定する。
【0021】
第一の工程
図2の状態から、第一の並進手段10の並進部12を所定のストローク上昇させ、第二の並進部20の筐体21を持ち上げ、結果として支柱Aを上昇させる。この状態を図3に示す。所定のストロークは、第一の並進手段の最大ストロークでありことが望ましい。
【0022】
第二の工程
図3の状態から、第一の並進手段10の並進部12を元に戻す。すなわち、第一の並進手段10の並進部12を逆方向に上記の所定ストローク程度動かす。この状態を図4に示す。紐状体25は緩んだ状態になっている。
【0023】
第三の工程
図4の状態から、第一の並進手段20の並進部23を上記の所定ストロークと同程度上昇させる。紐状体25は図5に示すように張った状態になる。第一の並進手段20の並進部23を上昇させるには、紐状体25が緩んだ状態であるため、回転部22を手回しすることも可能であるかもしれないが、図5ではインパクトレンチ30を用いた例を示している。
【0024】
以上が第一から第三の工程であり、この3つの工程を繰り返すことで、紐状体25をくくりなおすことなく(固定を開放した後に再固定する必要なく)、支柱Aを上昇させることができる。図6は、最初の繰り返しの第一の工程が終了した際の図である。
【0025】
以上のように、本発明の移動方法は、本発明の移動装置を用いて、第二の並進手段20の並進部23と対象物の所定箇所とを紐状体25で接合した状態で、第一の移動手段10で所定のストロークを並進移動させる第一の工程と、第一の移動手段10で上記所定のストロークと略同一のストロークを逆方向に並進する第二の工程と、第二の移動手段20で上記所定のストロークを並進する第三の工程とを繰り返して行うことを特徴とするものである。
【0026】
なお、第一の移動手段で対象物を並進移動させることで、対象物の固定状態を緩和した場合、その後に、前記第二の移動手段により対象物を並進移動させても良い。例えば、支柱の地中に埋まっている部分の全てが固く地中に固定されている状態ではなく、支柱の最下部付近のみが地中に強固に固定されている場合には、第一の移動手段で対象物を並進移動させる(上昇させる)ことで強固な固定状態が緩和し、第二の移動手段だけで支柱を引き抜くことができる場合である。
【0027】
<本発明のまとめ>
対象物を並進移動させる二つのコンパクトな移動装置を組み合わせて、大規模装置並みの能力を発揮させることができる。
【0028】
コンパクトな装置の組み合わせでありながら、対象物を並進移動させる大きな力と、大きな並進のストロークを得ることができるため、普通乗用車にも日常的に搭載できる。あるいは、山深くの道がない場所でっても、持って入ることができるため、どこでも作業可能である。例えば、獣害防止柵のように、山中に設置するものでは、支柱が埋められた場所に車で入ることは不可能な場合が多いが、本発明品は魂魄で軽量であるため、持ち運び容易である。
また、市販のインパクトレンチを使用できるため、特別な動力源は不要である。
【符号の説明】
【0029】
10 第一の移動手段
11 筐体
12 並進部
13 駆動ハンドル
14 アタッチメント
20 第二の移動手段
21 筐体
22 回転部
23 並進部
24 アタッチメント
25 紐状体
26 接続部
27 脚部


図1
図2
図3
図4
図5
図6