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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017129
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】電動装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 23/00 20160101AFI20240201BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20240201BHJP
   B60T 17/02 20060101ALI20240201BHJP
   B60T 13/20 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H02P23/00
F04B49/06 311
B60T17/02
B60T13/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119574
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榊原 優理
(72)【発明者】
【氏名】藤井 拓也
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
3H145
5H505
【Fターム(参考)】
3D048BB37
3D048BB41
3D048HH15
3D048HH18
3D048HH66
3D048HH68
3D048RR13
3D049BB23
3D049BB26
3D049CC02
3D049HH12
3D049HH47
3D049HH48
3D049RR06
3H145AA05
3H145AA24
3H145AA34
3H145BA33
3H145CA19
3H145CA20
3H145DA04
3H145EA16
3H145EA37
3H145EA42
5H505AA01
5H505AA16
5H505DD06
5H505JJ03
5H505JJ04
5H505JJ17
5H505LL38
5H505LL43
5H505LL48
5H505PP01
(57)【要約】
【課題】一例として、より適切な出力でモータを駆動させることができる電動装置を得る。
【解決手段】実施形態に係る電動装置は、第1の流体が流れる内部流路が設けられ、第2の流体により潤滑された回転要素を有し、前記回転要素の回転に応じて前記内部流路における圧力を変動させる、流体圧力装置と、前記回転要素を回転させるモータと、前記モータを駆動させる制御装置と、外部流路における前記第1の流体の温度を測定可能なセンサと、を備え、前記制御装置は、前記外部流路における前記第1の流体の温度に基づいて、前記内部流路における前記第1の流体又は前記第2の流体の温度としての推定温度を推定し、前記推定温度に基づいて損失トルクを推定し、前記モータの目標回転数及び目標仕事量のうち少なくとも一方に基づき理論トルクを算出し、前記損失トルク及び前記理論トルクに基づいて出力トルクを算出し、前記出力トルクで前記モータを駆動させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の流体が流れる内部流路が設けられ、第2の流体により潤滑された回転要素を有し、前記回転要素の回転に応じて前記内部流路における前記第1の流体の圧力を変動させる、流体圧力装置と、
前記回転要素を回転させるモータと、
前記モータを駆動させる制御装置と、
前記内部流路に接続された外部流路における前記第1の流体の温度を測定可能なセンサと、
を具備し、
前記制御装置は、
前記センサにより測定された前記外部流路における前記第1の流体の温度に基づいて、前記内部流路における前記第1の流体の温度又は前記第2の流体の温度としての推定温度を推定し、
前記推定温度に基づいて損失トルクを推定し、
前記モータの目標回転数及び目標仕事量のうち少なくとも一方に基づき理論トルクを算出し、
前記損失トルク及び前記理論トルクに基づいて出力トルクを算出し、
前記出力トルクで前記モータを駆動させる、
電動装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記センサにより測定された前記外部流路にける前記第1の流体の温度に基づいて前記外部流路から前記内部流路に流入する前記第1の流体の熱エネルギーを推定し、
前記熱エネルギーに基づいて前記推定温度を推定する、
請求項1の電動装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記損失トルクに基づいて当該損失トルクの仕事量を推定し、
前記熱エネルギーと前記仕事量とに基づいて前記推定温度を推定する、
請求項2の電動装置。
【請求項4】
前記流体圧力装置は、複数の位置で互いに摺動する複数の摺動要素を有し、
前記制御装置は、前記複数の位置のうちそれぞれにおいて前記複数の摺動要素の摺動により生じる前記損失トルクの前記仕事量を推定する、
請求項3の電動装置。
【請求項5】
前記第2の流体は、前記内部流路における前記第1の流体の一部である、
請求項1の電動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータによって回転させられる回転要素を有する電動装置が知られている。モータのシャフトを潤滑する流体の温度は、当該流体の粘度に影響する。このため、電動装置は、回転要素を所望の条件で回転させるために、当該流体の温度に基づく種々の制御を行うことがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-224891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、回転要素の回転は、モータのシャフトを潤滑する流体のみならず、種々の流体からも影響を受けることがある。例えば、回転要素を潤滑する流体や、回転要素の回転に伴って電動装置に出入りする流体が、回転要素の回転に影響する。このため、モータのシャフトを潤滑する流体の温度、又はモータの周辺の温度に基づく制御のみでは、回転要素を所望の条件で回転させるような適切な出力でモータを駆動させることが困難となる可能性が有る。
【0005】
そこで、本発明は上記に鑑みてなされたものであり、より適切な出力でモータを駆動させることができる電動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る電動装置は、一例として、第1の流体が流れる内部流路が設けられ、第2の流体により潤滑された回転要素を有し、前記回転要素の回転に応じて前記内部流路における前記第1の流体の圧力を変動させる、流体圧力装置と、前記回転要素を回転させるモータと、前記モータを駆動させる制御装置と、前記内部流路に接続された外部流路における前記第1の流体の温度を測定可能なセンサと、を備え、前記制御装置は、前記センサにより測定された前記外部流路における前記第1の流体の温度に基づいて、前記内部流路における前記第1の流体の温度又は前記第2の流体の温度としての推定温度を推定し、前記推定温度に基づいて損失トルクを推定し、前記モータの目標回転数及び目標仕事量のうち少なくとも一方に基づき理論トルクを算出し、前記損失トルク及び前記理論トルクに基づいて出力トルクを算出し、前記出力トルクで前記モータを駆動させる。よって、一例としては、電動装置は、より適切な出力でモータを駆動させることができる。例えば、流体の温度は、当該流体の粘度に影響する。このため、内部流路における第1の流体の温度及び第2の流体の温度うち少なくとも一方が、流体圧力装置におけるエネルギーの損失(損失トルク)に影響する。一方で、損失トルクに影響する温度は、直接的には測定しにくいことがある。上述のように、制御装置は、外部流路における第1の流体の温度に基づき推定温度を推定するとともに、推定温度に基づいて損失トルクを推定する。これにより、制御装置は、温度に応じた適切な出力トルクでモータを駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係るブレーキ制御装置を模式的に示す回路ブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態のポンプを概略的に示す断面図である。
図3図3は、第1の実施形態のトルク制御動作の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、第1の実施形態の使用推定温度と損失トルクとの関係の一例を示すグラフである。
図5図5は、第2の実施形態に係る加圧ユニットの一部を模式的に示す回路ブロック図である。
図6図6は、第2の実施形態のポンプを図5のF6-F6線に沿って概略的に示す断面図である。
図7図7は、第2の実施形態のトルク制御動作の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、第3の実施形態に係る加圧ユニットの一部を模式的に示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態について、図1乃至図4を参照して説明する。なお、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称でも特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によっても説明され得る。
【0009】
図1は、第1の実施形態に係るブレーキ制御装置11を模式的に示す回路ブロック図である。ブレーキ制御装置11は、自動車のような車両1に搭載され、車両1のブレーキの制動力を制御する。ブレーキ制御装置11は、電動装置の一例である。
【0010】
ブレーキ制御装置11は、前輪Wfのホイールシリンダ12,13及び後輪Wrのホイールシリンダ14,15におけるブレーキフルードの圧力を調整することで、制動力を発生させる。ブレーキ制御装置11は、マスタシリンダユニット21と、リザーバ22と、ストロークセンサ23と、ストロークシミュレータ24と、加圧ユニット25と、アクチュエータ26と、液圧回路27と、electronic control unit(ECU)28と、複数の電磁弁31,32と、複数の圧力センサ33,34,35,36とを有する。ECU28は、制御装置の一例である。圧力センサ36は、センサの一例である。
【0011】
マスタシリンダユニット21は、ホイールシリンダ12,13にブレーキフルードを供給するよう構成される。マスタシリンダユニット21は、入力ピストン41と、マスタシリンダ42と、マスタピストン43と、リザーバ44と、スプリング45とを有する。
【0012】
入力ピストン41は、運転者によるブレーキペダル46の操作に連動してマスタシリンダ42内を摺動する。ストロークセンサ23が、ブレーキペダル46のストロークを検出する。マスタシリンダ42の内部は、マスタピストン43により、離間室51と、反力室52と、サーボ室53と、マスタ室54とに区画される。
【0013】
離間室51は、入力ピストン41、マスタシリンダ42、及びマスタピストン43により区画される。入力ピストン41及びマスタピストン43は互いに離間しており、入力ピストン41とマスタピストン43との間に離間室51が形成される。離間室51は、液路55及びノーマルクローズ型の電磁弁31を介してストロークシミュレータ24に接続される。さらに、離間室51には圧力センサ33が接続される。
【0014】
反力室52は、マスタシリンダ42及びマスタピストン43により区画される。反力室52は、マスタピストン43が前進することで容積が減少し、マスタピストン43が後退することで容積が増大する。反力室52は、液路56及びノーマルオープン型の電磁弁32を介してリザーバ44に接続される。
【0015】
液路56のうち電磁弁32と反力室52との間の部分は、液路57を介して、液路55のうち電磁弁31とストロークシミュレータ24との間の部分に接続される。圧力センサ34は、液路56に接続され、反力室52の液圧である反力圧を検出する。
【0016】
マスタピストン43は、マスタシリンダ42内に配置される。マスタピストン43は、マスタ室54の容積を変化させるようにマスタシリンダ42内を摺動可能である。マスタピストン43は、サーボ室53内の液圧に対応する力で駆動されて、マスタ室54に液圧であるマスタ圧を発生させる。
【0017】
サーボ室53は、マスタシリンダ42及びマスタピストン43により区画される。例えばマスタピストン43のフランジ状の部分が、反力室52とサーボ室53との間に位置し、反力室52とサーボ室53とを区画する。サーボ室53の液圧であるサーボ圧は、マスタピストン43を押圧し、マスタピストン43を前進させる力である駆動力となる。
【0018】
マスタ室54は、マスタピストン43の前方の端部と、マスタシリンダ42の底との間に形成される。マスタ室54は、マスタピストン43が前進することで容積が減少し、マスタピストン43が後退することで容積が増大する。
【0019】
リザーバ22は、ブレーキフルードを貯留する。リザーバ22の内部は、大気圧に保たれる。リザーバ22とマスタ室54とを接続する液路は、マスタピストン43が初期位置にある場合に連通され、マスタピストン43が初期位置から所定距離前進すると遮断される。スプリング45は、マスタピストン43を初期位置に向かって押圧する。
【0020】
加圧ユニット25は、ブレーキフルードを吐出し、所定の液路の液圧を調整する。例えば、加圧ユニット25は、アクチュエータ26及びサーボ室53にブレーキフルードを供給する。加圧ユニット25は、モータ61と、ポンプ62と、リザーバ63と、環状液路64と、複数の電磁弁65,66とを有する。ポンプ62は、流体圧力装置の一例である。
【0021】
モータ61は、ECU28の制御により駆動されることで、ポンプ62を駆動させる。すなわち、ECU28は、モータ61を駆動させる。モータ61は、例えば、ブラシレスモータである。なお、モータ61は、サーボモータのような他の種類のモータであっても良い。
【0022】
ポンプ62は、リザーバ63に貯留されたブレーキフルードを吸入及び吐出する。ポンプ62が吸入及び吐出するブレーキフルードの流量は、モータ61の駆動に応じて変化し得る。環状液路64は、ポンプ62の吐出口と吸入口とを接続する液路であって、液路64a,64b,64c,64dを有する。
【0023】
液路64aは、ポンプ62の吐出口と電磁弁65の流入口とを接続する。液路64bは、電磁弁65の流出口と電磁弁66の流入口とを接続する。液路64cは、電磁弁66の流出口とリザーバ63とを接続する。液路64dは、リザーバ63とポンプ62の吸入口とを接続する。
【0024】
電磁弁65,66は、ノーマルオープン型の電磁弁であって、上下流間の差圧を制御できるリニア弁である。電磁弁65,66は、ECU28からの制御電流の大きさに基づいて、上流側の液圧を下流側の液圧より高くすることができる。
【0025】
電磁弁65は、閉弁側に制御され且つポンプ62が駆動することで、液路64aと液路64bとの間に差圧を発生させる。電磁弁66は、閉弁側に制御され且つポンプ62が駆動することで、液路64bと液路64cとの間に差圧を発生させる。
【0026】
液圧回路27は、加圧ユニット25が液路64aに発生させた液圧(第1の液圧)をホイールシリンダ14,15に供給し、加圧ユニット25が液路64bに発生させた液圧(第2の液圧)をホイールシリンダ12,13に供給する。液圧回路27は、複数の供給路71,72,73を有する。
【0027】
供給路71は、アクチュエータ26を介して加圧ユニット25の液路64aとホイールシリンダ14,15とを接続する。供給路72は、加圧ユニット25の液路64bとサーボ室53とを接続する。供給路73は、アクチュエータ26を介して、マスタ室54とホイールシリンダ12,13とを接続する。
【0028】
ポンプ62は、環状液路64を介して供給路71,72にブレーキフルードを吐出する。サーボ室53は、供給路72を介して加圧ユニット25からブレーキフルードが供給されることで容積が増大する。マスタピストン43は、サーボ室53の容積が増大することで前方に摺動する。
【0029】
加圧ユニット25は、供給路71及びアクチュエータ26を介して、ホイールシリンダ14,15に第1の液圧に基づく制動液圧を供給する。また、加圧ユニット25は、供給路72を介してサーボ室53に第2の液圧を供給し、マスタ室54及び供給路73を介して第2の液圧に基づく制動液圧をホイールシリンダ12,13に供給する。
【0030】
圧力センサ35は、供給路73に接続され、マスタ圧を検出する。圧力センサ36は、液路64aから分岐した液路64eに接続される。圧力センサ36は、液路64a,64e及び供給路71の液圧を検出する。
【0031】
ECU28は、ブレーキペダル46のストロークに応じた目標ホイール圧を設定し、目標ホイール圧に応じた電磁弁66の目標差圧を設定する。さらに、ECU28は、ポンプ62を駆動するとともに、目標差圧に応じた制御電流を電磁弁66に印加する。また、ECU28は、前輪Wf及び後輪Wrでほぼ同一のホイール圧を発生させる場合、電磁弁65を開状態(非通電状態)で維持する。これにより、加圧ユニット25は、電磁弁66の下流側の液圧であるリザーバ63の液圧(大気圧)に対して、電磁弁66の上流側の液圧を目標差圧分だけ高くすることができる。つまり、第1の液圧及び第2の液圧は、液路64c,64dの液圧に対して目標差圧だけ高くなる。
【0032】
また、ECU28は、アクチュエータ26を用いずにホイールシリンダ12,13とホイールシリンダ14,15とで異なる液圧を発生させる場合、電磁弁65の目標差圧も設定し、電磁弁65に制御電流を印加する。これにより、第1の液圧は、第2の液圧に対して目標差圧分だけ高くなる。
【0033】
アクチュエータ26は、各ホイール圧を加圧可能に構成されたいわゆるESCアクチュエータである。アクチュエータ26は、例えば、電磁弁、ポンプ、及び調圧リザーバを有する。ECU28は、アクチュエータ26の電磁弁及びポンプを制御することで、各ホイール圧を加圧、減圧、又は保持することができる。また、アクチュエータ26は、ECU28の指令に基づき、アンチスキッド制御や横滑り防止制御を実行することができる。
【0034】
ECU28は、CPU、メモリ、基板、駆動回路、及び種々の電子部品を有する電子制御ユニットである。例えば、ECU28は、少なくとも一つのプロセッサを有し、当該プロセッサが例えばメモリから読み出されたプログラムを実行することにより各種制御が実行される。なお、ECU28の機能の少なくとも一部は、ハードウェアにより実現されても良い。
【0035】
ECU28は、ストロークセンサ23及び圧力センサ33~36のような種々のセンサからの情報に基づいて、加圧ユニット25及びアクチュエータ26を制御する。ECU28は、圧力センサ35,36の検出値に基づいて、各ホイール圧を推定する。なお、ECU28は、例えば、加圧ユニット25を制御するECU、及びアクチュエータ26を制御するECUのような、複数のECUを有しても良い。
【0036】
ECU28は、ブレーキペダル46が操作されると、例えばストロークセンサ23の検出値に基づいて、目標減速度及び目標ホイール圧を設定する。また、ECU28は、通常時は、電磁弁31を開弁させ、電磁弁32を閉弁させる。これにより、反力室52とリザーバ44との間が遮断され、離間室51と反力室52とストロークシミュレータ24とが連通する。離間室51及び反力室52には、反力として、ブレーキペダル46の操作に応じた液圧が発生する。
【0037】
ECU28は、目標ホイール圧に応じて、加圧ユニット25のポンプ62及び電磁弁66を制御する。ECU28は、ポンプ62を駆動させるとともに、電磁弁66に目標差圧に対応する制御電流を印加する。制御電流の印加により、電磁弁66は閉弁側に制御される。
【0038】
ポンプ62は、リザーバ63からブレーキフルードを吸入し、液路64a及び供給路71にフルードを吐出する。ポンプ62は、モータ61の駆動に応じた流量のブレーキフルードを吐出する。ポンプ62から吐出されたブレーキフルードは、供給路71に供給されるとともに、供給路72を介してサーボ室53にも供給される。サーボ室53及びホイールシリンダ14,15は、電磁弁66の目標差圧に応じた液圧が発生する。
【0039】
サーボ圧が上昇すると、マスタピストン43が前進し、マスタ室54の縮小によりマスタ圧が上昇する。つまり、マスタ室54と接続された供給路73の液圧も上昇する。マスタ圧は、アクチュエータ26を介してホイールシリンダ12,13に供給される。このように、サーボ圧に対応する液圧(第1の液圧及び第2の液圧)は、液圧回路27を介して、ホイールシリンダ12~15に供給される。
【0040】
図2は、第1の実施形態のポンプ62を概略的に示す断面図である。図2に示すように、第1の実施形態のポンプ62は、内接型ギヤポンプ(トロコイドポンプ)である。ポンプ62は、シャフト81と、ロータユニット82と、ハウジング83と、複数のシール84と、二つのベアリング85とを有する。
【0041】
シャフト81は、中心軸Axに沿って延びる略円柱状に形成される。中心軸Axは、シャフト81の中心である。シャフト81は、モータ61により、中心軸Axまわりに回転させられる。
【0042】
本明細書において、便宜上、軸方向、径方向、及び周方向が定義される。軸方向は、中心軸Axに沿う方向である。径方向は、中心軸Axと直交する方向である。周方向は、中心軸Axまわりの方向である。
【0043】
ロータユニット82は、インナロータ91と、アウタロータ92とを有する。インナロータ91は、インナギヤとも称され得る。インナロータ91は、回転要素の一例である。アウタロータ92は、アウタギヤとも称され得る。
【0044】
インナロータ91は、中心軸Axと略直交する略円盤状に形成される。シャフト81は、インナロータ91を貫通し、中心軸Axまわりにインナロータ91と略一体に回転可能である。すなわち、モータ61は、シャフト81を介してインナロータ91を回転させることができる。インナロータ91の外縁に外歯93が設けられる。
【0045】
アウタロータ92は、シャフト81の中心軸Axと略平行な他の中心軸まわりに延びる略円環状に形成される。アウタロータ92は、インナロータ91を囲む。アウタロータ92の内縁に、内歯94が設けられる。内歯94は、外歯93と噛み合う。
【0046】
外歯93と内歯94との間に、複数の空隙95が形成(規定、区画)される。外歯93が設けられたインナロータ91は、内歯94が設けられたアウタロータ92から偏心している。このため、複数の空隙95の大きさは、互いに異なる。
【0047】
ハウジング83は、シリンダ101と、プラグ102と、ケーシング103と、二つのリングシール104,105とを有する。シリンダ101、プラグ102、及びケーシング103は、軸方向に並べられる。ケーシング103は、略円筒形に形成され、シリンダ101とプラグ102との間に位置する。
【0048】
ハウジング83に、ロータ室106と、吸入路107と、吐出路108とが設けられる。ロータ室106は、内部流路の一例である。ロータ室106は、ケーシング103の内側に位置し、シリンダ101、プラグ102、及びケーシング103によって形成(規定、区画)される。シャフト81の一部とロータユニット82とは、ロータ室106に収容される。
【0049】
吸入路107及び吐出路108は、シリンダ101に設けられる。吸入路107は、ロータ室106と液路64dとを連通する。吐出路108は、ロータ室106と液路64aとを連通する。
【0050】
リングシール104は、シリンダ101とロータユニット82との間に位置する。リングシール105は、プラグ102とロータユニット82との間に位置する。区画壁109が、リングシール104,105のそれぞれからロータユニット82に向かって突出する。
【0051】
区画壁109は、ロータ室106を低圧領域106Lと高圧領域106Hとに区画する。低圧領域106Lは、吸入路107に連通する。高圧領域106Hは、吐出路108に連通する。外歯93と内歯94とは、低圧領域106Lと高圧領域106Hとに亘って設けられる。このため、外歯93及び内歯94は、インナロータ91及びアウタロータ92の回転に伴って、低圧領域106Lと高圧領域106Hとの間を循環する。
【0052】
モータ61がシャフト81を介してインナロータ91を回転させると、外歯93と内歯94との噛み合いにより、アウタロータ92も回転する。これにより、空隙95は、拡大及び縮小しながら移動する。
【0053】
ブレーキフルードは、吸入路107を通じて液路64dから低圧領域106Lに流入する。ブレーキフルードは、低圧領域106Lにおいて空隙95に流入する。回転するインナロータ91及びアウタロータ92は、空隙95のブレーキフルードを低圧領域106Lから高圧領域106Hへ送る。高圧領域106Hへ送られたブレーキフルードは、空隙95から吐出路108を通じて液路64aへ吐出される。このように、ロータユニット82は、インナロータ91が回転することで、低圧領域106Lの流体を高圧領域106Hへ送る。言い換えれば、ブレーキフルードは、ロータ室106を流れる。
【0054】
ロータ室106において、ブレーキフルードは、インナロータ91及びアウタロータ92の回転に応じた空隙95の容積の増減により、加圧される。すなわち、ポンプ62は、インナロータ91の回転に応じてロータ室106におけるブレーキフルードの圧力を変動させる。
【0055】
複数のシール84のうち一つは、シリンダ101とリングシール104との間で、ロータ室106を低圧領域106Lと高圧領域106Hとに区画する。複数のシール84のうち他の一つは、プラグ102とリングシール105の間で、ロータ室106を低圧領域106Lと高圧領域106Hとに区画する。
【0056】
二つのベアリング85のうち一方は、シリンダ101に設けられる。二つのベアリング85のうち他方は、プラグ102に設けられる。二つのベアリング85は、ロータ室106の外で、シャフト81を中心軸Axまわりに回転可能に支持する。ベアリング85とロータ室106との間に、シールが設けられても良い。
【0057】
ロータ室106において、ブレーキフルードは、インナロータ91及びアウタロータ92を潤滑する。すなわち、インナロータ91及びアウタロータ92を潤滑するブレーキフルード(潤滑フルード)は、ロータ室106におけるブレーキフルードの一部である。ブレーキフルードは、第1の流体の一例である。潤滑フルードは、第2の流体の一例である。潤滑フルードは、インナロータ91及びアウタロータ92の境界面に保持されている。
【0058】
ブレーキフルードの温度は、ブレーキフルードの粘度に影響する。ブレーキフルードの粘度は、モータ61によるインナロータ91の回転に影響する。このため、ECU28は、所望の回転数及び仕事量でインナロータ91を回転させることができるように、潤滑フルードを含むブレーキフルードの温度に基づいて、モータ61の出力トルクを制御する。
【0059】
第1の実施形態では、ECU28は、潤滑フルードの飽和温度としての推定温度を推定し、当該推定温度に基づいてモータ61の出力トルクを制御する。なお、推定温度は、ロータ室106を流れるブレーキフルードの温度であっても良い。
【0060】
図3は、第1の実施形態のトルク制御動作の一例を示すフローチャートである。以下、図3を参考に、第1の実施形態におけるモータ61のトルク制御動作の一例について説明する。なお、モータ61のトルク制御動作は、下記に説明される方法に限られない。
【0061】
まず、ECU28は、圧力センサ36の検出値に基づいて、液路64eにおけるブレーキフルードの温度Tsen(t)を取得する(S101)。すなわち、圧力センサ36は、液路64eにおけるブレーキフルードの温度を測定可能なセンサである。環状液路64の全体の容積はロータ室106の容積よりも大きく、液路64eにおけるブレーキフルードの温度Tsen(t)は飽和温度である。このため、温度Tsen(t)は、液路64dからロータ室106に流入するブレーキフルード(流入フルード)の温度とおおよそ等しい。液路64d,64eを含む環状液路64は、ロータ室106に接続されており、外部流路の一例である。
【0062】
ブレーキフルードの温度Tsen(t)は、他の方法により取得されても良い。例えば、ECU28は、液路64aに接続された温度センサにより、ブレーキフルードの温度Tsen(t)を取得しても良い。温度センサは、例えば、リザーバ63に設けられても良い。
【0063】
次に、ECU28は、取得した温度Tsen(t)を、推定温度Test(t-1)に設定する(S102)。推定温度Test(t-1)は、例えば、以降の計算に利用される推定温度の初期値として用いられる。
【0064】
次に、ECU28は、圧力センサ36の検出値に基づいて、温度Tsen(t)を取得する(S103)。次に、ECU28は、初期値としての推定温度Test(t-1)とブレーキフルードの温度Tsen(t)とが一致するか否かを判定する(S104)。
【0065】
推定温度Test(t-1)と温度Tsen(t)とが一致する場合(S104:Yes)、ECU28は、温度Tsen(t)を使用推定温度T(t)に設定する(S105)。一方、推定温度Test(t-1)が温度Tsen(t)と異なる場合(S104:No)、ECU28は、推定温度Test(t-1)を使用推定温度T(t-1)に設定する(S106)。使用推定温度T(t-1)は、以降の計算において推定温度として利用される。
【0066】
さらに、ECU28は、推定温度Test(t-1)と温度Tsen(t)との差異(乖離)が所定の閾値を越えるか否かを判定しても良い。例えば、ECU28は、差異が所定の閾値を越えた場合、温度Tsen(t-1)を使用推定温度T(t-1)に設定しても良い。これにより、ECU28は、例えば計算による推定温度Test(t-1)の誤差の累積を解消することができる。反対に、S103~S106が省略され、以降の計算において推定温度Test(t-1)が使用推定温度T(t-1)の代わりに利用されても良い。
【0067】
S105又はS106で使用推定温度T(t-1)が設定されると、ECU28は、理論トルクNtheory(t)を算出する(S107)。ECU28は、例えば、ストロークセンサ23が検出したブレーキペダル46のストロークに基づき、モータ61の出力軸(インナロータ91)の目標回転数及び目標仕事量のうち少なくとも一方を算出する。さらに、ECU28は、目標回転数及び目標仕事量のうち少なくとも一方に基づき、理論トルクNtheory(t)を算出する。なお、目標回転数及び目標仕事量は、他の条件に応じて設定されても良い。
【0068】
次に、ECU28は、損失トルクNloss(t)を推定する(S108)。ECU28は、例えば、目標回転数及び目標仕事量のうち少なくとも一方と、使用推定温度T(t-1)とに基づき、損失トルクNloss(t)を推定する。
【0069】
ECU28は、目標回転数及び目標仕事量のうち少なくとも一方と、使用推定温度T(t-1)と、損失トルクNloss(t)の推定値と、を対応付けたマップを、例えばメモリに記憶している。当該マップは、例えば、実験、経験則、又は種々の手法に基づき予め作成され、ECU28のメモリに記憶される。すなわち、本実施形態における損失トルクNloss(t)は、使用推定温度T(t-1)を説明変数とする目的変数である。ECU28は、目標回転数及び目標仕事量のうち少なくとも一方と、使用推定温度T(t-1)とを当該マップに入力することで、損失トルクNloss(t)の推定値を得ることができる。なお、損失トルクNloss(t)は、関係式のような他の方法により推定されても良い。
【0070】
次に、ECU28は、必要トルクNnec(t)を算出する(S109)。必要トルクNnec(t)は、出力トルクの一例である。例えば、ECU28は、理論トルクNtheory(t)と、損失トルクNloss(t)と、モータ61の機械的損失と、制御トルクマージンとを和することで、必要トルクNnec(t)を算出する。すなわち、ECU28は、理論トルクNtheory(t)と損失トルクNloss(t)とに基づいて必要トルクNnec(t)を算出する。
【0071】
モータ61の機械的損失は、例えば、モータ61の内部で生じる損失トルクである。モータ61の機械的損失は、例えば定数として、ECU28のメモリに記憶される。なお、モータ61の機械的損失は、例えば関係式又はマップにより得られても良い。
【0072】
制御トルクマージンは、例えば、ポンプ62の安定的な動作のために付与されるトルクである。例えば、ECU28は、圧力のような温度とは異なる変数と、制御トルクマージンと、を対応付けたマップを、メモリに記憶している。なお、制御トルクマージンは、この例に限られない。
【0073】
次に、ECU28は、必要トルクNnec(t)でモータ61を駆動させる(S110)。具体的には、ECU28は、モータ61が必要トルクNnec(t)を出力するような電流を、モータ61に供給する。
【0074】
図4は、第1の実施形態の使用推定温度T(t-1)と損失トルクNloss(t)との関係の一例を示すグラフである。使用推定温度T(t-1)は、潤滑フルードの温度におおよそ対応するため、潤滑フルードの粘度に影響する。潤滑フルードの温度は、損失トルクNloss(t)に影響する。
【0075】
例えば、潤滑フルードが低温で粘度が高いと、損失トルクNloss(t)が大きくなる。潤滑フルードが適温で粘度が低いと、損失トルクNloss(t)が小さくなる。一方で、潤滑フルードが高温で粘度が過剰に低くなると、潤滑フルードによる潤滑効果が低減する油膜切れが生じ、損失トルクNloss(t)が大きくなる。
【0076】
図4に示すように、潤滑フルードの温度に対応する使用推定温度T(t-1)に応じて、損失トルクNloss(t)が変動する。上述のように、ECU28は、使用推定温度T(t-1)に基づき損失トルクNloss(t)を推定し、損失トルクNloss(t)に基づく必要トルクNnec(t)でモータ61を駆動する。これにより、ECU28は、適切な出力でモータ61を駆動させる。
【0077】
例えば、損失トルクNloss(t)が増大すると、ECU28は必要トルクNnec(t)を増大させる。これにより、ブレーキ制御装置11は、モータ61にストールが発生することを抑制できる。一方、損失トルクNloss(t)が減少すると、ECU28は必要トルクNnec(t)を減少させる。これにより、ブレーキ制御装置11は、余分な電力を消費することを抑制できる。
【0078】
次に、図3に示すように、ECU28は、温度Tsen(t)に基づいて流入フルードの単位時間当たりの熱エネルギーE1(t)を推定する(S111)。例えば、熱エネルギーE1(t)は、下記の関係式により算出される。mは流入フルードの質量であり、cは流入フルードの比熱である。
E1(t)=m×c×Tsen(t)
【0079】
ECU28は、例えば、モータ61の出力軸(インナロータ91)の実際の回転数に基づき、流入フルードの質量mを算出する。比熱cは、例えば、ECU28のメモリに予め記憶される。
【0080】
次に、ECU28は、損失トルクNloss(t)に基づいて、当該損失トルクNloss(t)の単位時間当たりの仕事量E2(t)を推定する(S112)。仕事量E2(t)は、損失トルクNloss(t)が存在することにより生じるエネルギーである。
【0081】
例えば、ECU28は、損失トルクNloss(t)に基づき、モータ61の出力軸(インナロータ91)の一回転当たりに生じるエネルギーErev(t)を算出する。ECU28は、エネルギーErev(t)と、モータ61の出力軸(インナロータ91)の実際の回転数と、に基づき、単位時間当たりの仕事量E2(t)を算出する。
【0082】
具体的には、仕事量E2(t)は、例えば下記の関係式により算出される。nはモータ61の出力軸(インナロータ91)の実際の回転数[rpm]であり、Nloss(T(t-1))は、使用推定温度T(t-1)における損失トルクNloss(t)である。
E2(t)=2π×n÷60×Nloss(T(t-1))
【0083】
ECU28は、ポンプ62の全体における損失トルクNloss(t)を推定しても良い。一方、ポンプ62において、種々の要素が、複数の位置で互いに摺動し、当該複数の位置のそれぞれで損失トルクを生じさせる。本実施形態のECU28は、複数の要素が互いに摺動する複数の位置のそれぞれにおいて生じる損失トルクを合算する。
【0084】
例えば、ロータユニット82とリングシール104,105とは、互いに摺動し得る。インナロータ91とアウタロータ92とは、互いに摺動し得る。アウタロータ92とケーシング103とは、互いに摺動し得る。シャフト81とベアリング85とは、互いに摺動し得る。このように、シャフト81と、ロータユニット82(インナロータ91及びアウタロータ92)と、ベアリング85と、ケーシング103と、リングシール104,105とは、複数の位置で互いに摺動する、複数の摺動要素の一例である。なお、摺動要素は、この例に限られない。
【0085】
例えば、ECU28のメモリは、ロータユニット82とリングシール104,105との間の摺動と、インナロータ91とアウタロータ92との間の摺動と、アウタロータ92とケーシング103との間の摺動と、シャフト81とベアリング85との間の摺動と、のそれぞれにより生じる損失トルクに係るマップを記憶している。
【0086】
ECU28は、目標回転数及び目標仕事量のうち少なくとも一方と、使用推定温度T(t-1)とを当該マップに入力することで、複数の位置のそれぞれにおいて複数の摺動要素の摺動により生じる損失トルクNloss(t)の推定値を得る。さらに、ECU28は、損失トルクNloss(t)から、複数の位置のそれぞれにおいて複数の摺動要素の摺動により生じる損失トルクNloss(t)の仕事量E2(t),E2(t)……を得る(推定する)。
【0087】
次に、ECU28は、熱エネルギーE1(t)と仕事量E2(t)とに基づき、推定温度Test(t)を推定する(S113)。推定温度Test(t)は、例えば、下記の関係式により算出される。A,B,Cは、例えば、ブレーキフルードの熱容量及び比熱のような物性と体積とから経験則的に得られる係数である。tunitは、例えば、図3のトルク制御動作のループが繰り返される周期である。
est(t)=T(t-1)+A×E1(t)×tunit
+B×E2(t)×tunit
+C×E2(t)×tunit+……
【0088】
使用推定温度T(t-1)は、上述のように、圧力センサ36により測定された液路64e(環状液路64)におけるブレーキフルードの温度Tsen(t)に基づいて推定される。このため、推定温度Test(t)は、温度Tsen(t)に基づいて推定された、ロータ室106におけるブレーキフルード又は潤滑フルードの温度である。
【0089】
次に、ECU28は、トルク制御動作が終了するか否かを判定する(S114)。例えば、ECU28は、当該ECU28への待機電力を含めた電源供給が無くなった時に制御終了と判定する。
【0090】
トルク制御動作が終了しない場合(S114:No)、ECU28は、算出した推定温度Test(t)を、初期値としての推定温度Test(t-1)に設定する(S115)。次に、ECU28は、S103に戻り、トルク制御動作が終了するまでS103~S115を繰り返す。S114においてトルク動作制御が終了すると判定された場合(S114:Yes)、ECU28はトルク制御動作を終了する。
【0091】
以上説明された第1の実施形態に係るブレーキ制御装置11において、ポンプ62に、ブレーキフルードが流れるロータ室106が設けられる。ポンプ62は、潤滑フルードにより潤滑されたインナロータ91を有する。ポンプ62は、インナロータ91の回転に応じてロータ室106におけるブレーキフルードの圧力を変動させる。ECU28は、インナロータ91を回転させるモータ61を駆動させる。ECU28は、圧力センサ36により測定された環状液路64におけるブレーキフルードの温度Tsen(t)に基づいて、ロータ室106におけるブレーキフルードの温度又は潤滑フルードの温度としての推定温度Test(t)を推定する。ECU28は、推定温度Test(t)に基づいて損失トルクNloss(t)を推定する。ECU28は、モータ61の目標回転数及び目標仕事量のうち少なくとも一方に基づき理論トルクNtheory(t)を算出する。ECU28は、損失トルクNloss(t)及び理論トルクNtheory(t)に基づいて必要トルクNnec(t)を算出し、必要トルクNnec(t)でモータ61を駆動させる。よって、一例としては、ブレーキ制御装置11は、より適切な出力でモータ61を駆動させることができる。例えば、流体の温度は、当該流体の粘度に影響する。このため、ロータ室106におけるブレーキフルードの温度及び潤滑フルードの温度うち少なくとも一方が、ポンプ62におけるエネルギーの損失(損失トルクNloss(t))に影響する。一方で、ロータ室106におけるブレーキフルードの温度及び潤滑フルードの温度は、直接的には測定しにくい。上述のように、ECU28は、環状液路64におけるブレーキフルードの温度Tsen(t)に基づき推定温度Test(t)を推定するとともに、推定温度Test(t)に基づいて損失トルクNloss(t)を推定する。これにより、ECU28は、低温時及び高温時のいずれにおいてもより適切な必要トルクNnec(t)でモータ61を駆動させることができ、ひいてはポンプ62のストール及び無駄な電力の消費を抑制できる。また、ECU28は、ロータ室106におけるブレーキフルードの温度又は潤滑フルードの温度としての推定温度Test(t)を推定するため、圧力センサ36と、温度Tsen(t)の推定対象である位置(ロータ室106)と、の間の距離が長い場合であっても当該位置の推定温度Test(t)を得ることができる。以上より、ブレーキ制御装置11は、より正確な損失トルクNloss(t)を推定することができるため、より適切な出力でモータ61を駆動させることができる。また、ブレーキ制御装置11は、モータ61の過剰な出力が不要となるため、モータ61を小型化することができ、消費電力を低減できる。さらに、ブレーキ制御装置11は、トルクセンサを用いることなくモータ61の出力を調整できるため、部品点数の増加及びコストの増大を抑制できる。
【0092】
ECU28は、圧力センサ36により測定された環状液路64におけるブレーキフルードの温度Tsen(t)に基づいて、流入フルードの熱エネルギーE1(t)を推定する。さらに、ECU28は、当該熱エネルギーE1(t)に基づいて推定温度Test(t)を推定する。よって、一例としては、ECU28は、より正確な推定温度Test(t)を推定することができる。例えば、流入フルードの熱エネルギーE1(t)は、ロータ室106におけるブレーキフルードの温度及び潤滑フルードの温度を増減させる。すなわち、ECU28は、当該熱エネルギーE1(t)がロータ室106におけるブレーキフルードの温度及び潤滑フルードの温度に与える影響を加味して推定温度Test(t)を推定するため、より正確な推定温度Test(t)を推定できる。
【0093】
ECU28は、損失トルクNloss(t)に基づいて当該損失トルクNloss(t)の仕事量E2(t)を推定する。さらに、ECU28は、熱エネルギーE1(t)と仕事量E2(t)とに基づいて推定温度Test(t)を推定する。よって、一例としては、ECU28は、より正確な推定温度Test(t)を推定することができる。例えば、ポンプ62において、複数の摺動要素が互いに摺動することで損失トルクNloss(t)が生じる。すなわち、ECU28は、当該複数の摺動要素の摺動による損失トルクNloss(t)の仕事量E2(t),E2(t)……がロータ室106におけるブレーキフルードの温度及び潤滑フルードの温度に与える影響を加味して推定温度Test(t)を推定するため、より正確な推定温度Test(t)を推定できる。
【0094】
ポンプ62は、複数の位置で互いに摺動する複数の摺動要素を有する。ECU28は、当該複数の位置のそれぞれにおいて複数の摺動要素の摺動により生じる損失トルクNloss(t)の仕事量E2(t),E2(t)……を推定する。よって、一例としては、ECU28は、より正確な推定温度Test(t)を推定することができる。例えば、複数の位置のそれぞれにおける損失トルクNloss(t)とブレーキフルードの温度との関係は異なる可能性が有る。このため、ECU28は、複数の位置における損失トルクNloss(t)の個別の特性を加味して推定温度Test(t)を推定するため、より正確な推定温度Test(t)を推定できる。
【0095】
潤滑フルードは、ロータ室106におけるブレーキフルードの一部である。これにより、ECU28は、推定温度Test(t)を容易に推定することができる。
【0096】
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態について、図5乃至図7を参照して説明する。なお、以下の複数の実施形態の説明において、既に説明された構成要素と同様の機能を持つ構成要素は、当該既述の構成要素と同じ符号が付され、さらに説明が省略される場合がある。また、同じ符号が付された複数の構成要素は、全ての機能及び性質が共通するとは限らず、各実施形態に応じた異なる機能及び性質を有していても良い。
【0097】
図5は、第2の実施形態に係る加圧ユニット25の一部を模式的に示す回路ブロック図である。図5に示すように、第2の実施形態の加圧ユニット25は、内接型ギヤポンプであるポンプ62の代わりに、外接型ギヤポンプであるポンプ200を有する。
【0098】
図6は、第2の実施形態のポンプ200を図5のF6-F6線に沿って概略的に示す断面図である。図6に示すように、ポンプ200は、ハウジング201と、二つのロータ202と、ピニオンギヤ203と、中間ギヤ204とを有する。
【0099】
ハウジング201に、内部流路211が設けられる。内部流路211の一方の端部は、液路64aに接続される。内部流路211の他方の端部は、液路64dに接続される。このため、ブレーキフルードが内部流路211を流れる。
【0100】
二つのロータ202のそれぞれは、シャフト221と、駆動ギヤ222と、外部ギヤ223とを有する。外部ギヤ223は、回転要素の一例である。シャフト221は、ハウジング201の内部と外部とに亘って設けられる。シャフト221は、回転可能にハウジング201に支持される。
【0101】
駆動ギヤ222及び外部ギヤ223は、シャフト221に取り付けられ、シャフト221と一体に回転可能である。駆動ギヤ222は、内部流路211に配置される。二つのロータ202の駆動ギヤ222は、互いに噛み合っている。外部ギヤ223は、内部流路211の外部に配置される。
【0102】
ピニオンギヤ203は、モータ61の出力軸に取り付けられる。ピニオンギヤ203は、内部流路211の外部に位置し、二つのロータ202のうち一方の外部ギヤ223と噛み合う。
【0103】
中間ギヤ204は、二つのロータ202のうち他方の外部ギヤ223と、ピニオンギヤ203と、に噛み合う。モータ61は、ピニオンギヤ203を回転させることで、中間ギヤ204及び外部ギヤ223を回転させ、ひいては二つのロータ202を回転させる。
【0104】
二つのロータ202の駆動ギヤ222は、回転させられることで、内部流路211においてブレーキフルードを送る。すなわち、ポンプ200は、外部ギヤ223の回転に応じて内部流路211におけるブレーキフルードの圧力を変動させる。
【0105】
第2の実施形態において、外部ギヤ223は、潤滑剤により潤滑される。潤滑剤は、第2の流体の一例である。潤滑剤は、内部流路211の外部に位置し、ブレーキフルードとは異なる。潤滑剤は、外部ギヤ223のみならず、ピニオンギヤ203、中間ギヤ204、シャフト221、及び当該シャフト221を支持するベアリングを潤滑しても良い。
【0106】
図5に示すように、第2の実施形態の加圧ユニット25は、温度センサ230をさらに有する。温度センサ230は、センサの一例である。温度センサ230は、例えば、リザーバ63におけるブレーキフルードの温度を測定する。リザーバ63におけるブレーキフルードの温度は、液路64dにおけるブレーキフルードの温度と略等しい。すなわち、温度センサ230は、内部流路211の外部に位置する流路(外部流路)におけるブレーキフルードの温度を測定可能である。
【0107】
第2の実施形態のECU28は、潤滑剤の飽和温度としての推定温度を推定し、当該推定温度に基づいてモータ61の出力トルクを制御する。潤滑剤の温度は、内部流路211におけるブレーキフルードの温度とは異なり得る。
【0108】
図7は、第2の実施形態のトルク制御動作の一例を示すフローチャートである。以下、図7を参考に、第2の実施形態におけるモータ61のトルク制御動作の一例について説明する。なお、モータ61のトルク制御動作は、下記に説明される方法に限られない。
【0109】
まず、ECU28は、温度センサ230により、リザーバ63におけるブレーキフルードの温度Tsen(t)を取得する(S201)。次に、ECU28は、取得した温度Tsen(t)を、推定温度Test(t-1)に設定する(S202)。
【0110】
次に、ECU28は、温度センサ230により、リザーバ63におけるブレーキフルードの温度Tsen(t)を取得する(S203)。次に、ECU28は、第1の実施形態のS107と同様に、理論トルクNtheory(t)を算出する(S204)。
【0111】
次に、ECU28は、損失トルクNloss(t)を推定する(S205)。ECU28は、例えば、目標回転数及び目標仕事量のうち少なくとも一方と、推定温度Test(t-1)とに基づき、損失トルクNloss(t)を推定する。
【0112】
ECU28は、目標回転数及び目標仕事量のうち少なくとも一方と、推定温度Test(t-1)と、損失トルクNloss(t)の推定値と、を対応付けたマップを、例えばメモリに記憶している。ECU28は、目標回転数及び目標仕事量のうち少なくとも一方と、推定温度Test(t-1)とを当該マップに入力することで、損失トルクNloss(t)の推定値を得ることができる。
【0113】
次に、ECU28は、第1の実施形態のS109と同様に、必要トルクNnec(t)を算出する(S206)。次に、ECU28は、必要トルクNnec(t)でモータ61を駆動させる(S207)。
【0114】
次に、ECU28は、温度Tsen(t)に基づいて、環状液路64から内部流路211に流入するブレーキフルード(流入フルード)の単位時間当たりの熱エネルギーE1(t)を推定する(S208)。第1の実施形態と同様に、例えば、熱エネルギーE1(t)は、下記の関係式により算出される。
E1(t)=m×c×Tsen(t)
【0115】
次に、ECU28は、流入フルードから潤滑剤に移動するエネルギーE´1(t)を推定する(S209)。エネルギーE´1(t)は、例えば、下記の関係式により算出される。kは、ハウジング201及びシャフト221のような、内部流路211のブレーキフルードと潤滑剤との間の熱伝導の経路上に存在する部品の、熱伝導率である。
E´1(t)=k×E1(t)
【0116】
次に、ECU28は、損失トルクNloss(t)に基づいて、当該損失トルクNloss(t)の単位時間当たりの仕事量E2(t)を推定する(S210)。例えば、仕事量E2(t)は、例えば下記の関係式により算出される。Nloss(Test(t-1))は、推定温度Test(t-1)における損失トルクNloss(t)である。
E2(t)=2π×n÷60×Nloss(Test(t-1))
【0117】
ECU28は、ポンプ200の全体における損失トルクNloss(t)を推定しても良い。しかし、本実施形態のECU28は、複数の要素が互いに摺動する複数の位置のそれぞれにおいて生じる損失トルクを合算する。
【0118】
例えば、二つのロータ202の駆動ギヤ222は、互いに摺動し得る。外部ギヤ223とピニオンギヤ203とは、互いに摺動し得る。外部ギヤ223と中間ギヤ204とは、互いに摺動し得る。シャフト221とベアリングとは、互いに摺動し得る。このように、ピニオンギヤ203と、中間ギヤ204と、シャフト221と、駆動ギヤ222と、外部ギヤ223とは、複数の位置で互いに摺動し、複数の摺動要素の一例である。なお、摺動要素は、この例に限られない。
【0119】
例えば、ECU28のメモリは、二つのロータ202の駆動ギヤ222の間の摺動と、外部ギヤ223とピニオンギヤ203との間の摺動と、外部ギヤ223と中間ギヤ204との間の摺動と、シャフト221とベアリングとの間の摺動と、のそれぞれにより生じる損失トルクに係るマップを記憶している。
【0120】
ECU28は、目標回転数及び目標仕事量のうち少なくとも一方と、推定温度Test(t-1)とを当該マップに入力することで、複数の位置のそれぞれにおいて複数の摺動要素の摺動により生じる損失トルクNloss(t)の推定値を得る。さらに、ECU28は、損失トルクNloss(t)から、複数の位置のそれぞれにおいて複数の摺動要素の摺動により生じる損失トルクNloss(t)の仕事量E2(t),E2(t)……を得る(推定する)。
【0121】
次に、ECU28は、エネルギーE´1(t)と仕事量E2(t)とに基づき、推定温度Test(t)を推定する(S211)。推定温度Test(t)は、例えば、下記の関係式により算出される。Aは、例えば、ブレーキフルードの熱容量及び比熱のような物性と体積と、から経験則的に得られる係数である。B,C……は、例えば、潤滑剤の熱容量及び比熱のような物性と体積と、から経験的に得られる係数である。
est(t)=T(t-1)+A×E´1(t)×tunit
+B×E2(t)×tunit
+C×E2(t)×tunit+……
【0122】
推定温度Test(t-1)は、上述のように、温度センサ230により測定されたリザーバ63(外部流路)におけるブレーキフルードの温度Tsen(t)に基づいて設定される。このため、推定温度Test(t)は、温度Tsen(t)に基づいて推定された、潤滑剤の温度である。
【0123】
次に、ECU28は、トルク制御動作が終了するか否かを判定する(S212)。例えば、ECU28は、当該ECU28への待機電力を含めた電源供給が無くなった時に制御終了と判定する。トルク制御動作が終了しない場合(S212:No)、ECU28は、算出した推定温度Test(t)を、初期値としての推定温度Test(t-1)に設定する(S213)。次に、ECU28は、S203に戻り、トルク制御動作が終了するまでS203~S213を繰り返す。S212においてトルク動作制御が終了すると判定された場合(S212:Yes)、ECU28はトルク制御動作を終了する。
【0124】
以上説明された第2の実施形態のブレーキ制御装置11において、潤滑剤は、内部流路211の外部に位置する。すなわち、ECU28は、内部流路211におけるブレーキフルードとは異なる潤滑剤の温度を推定する。これにより、ブレーキ制御装置11は、より適切な出力でモータ61を駆動させることができる。
【0125】
(第3の実施形態)
以下に、第3の実施形態について、図8を参照して説明する。図8は、第3の実施形態に係る加圧ユニット25の一部を模式的に示す回路ブロック図である。図8に示すように、第3の実施形態の加圧ユニット25は、ポンプ62,200の代わりに、電動シリンダ300を有する。電動シリンダ300は、流体圧力装置の一例である。電動シリンダ300は、ハウジング301と、ボールネジ302とを有する。
【0126】
ハウジング301に、内部流路311が設けられる。内部流路311の一方の端部は、液路64aに接続される。内部流路311の他方の端部は、液路64dに接続される。このため、ブレーキフルードが内部流路311を流れる。
【0127】
ボールネジ302は、ネジ軸321と、ピストン322とを有する。ネジ軸321は、回転要素の一例である。ネジ軸321は、回転可能にハウジング301に支持されるとともに、モータ61の出力軸に接続される。このため、モータ61は、ネジ軸321を回転させることができる。ピストン322は、ネジ軸321と噛み合うナットである。ピストン322は、回転を制限されるようにハウジング301に支持される。
【0128】
ピストン322は、ブレーキフルードが流れる内部流路311と、機械室330とを区画する。機械室330は、ハウジング301の内部の空間のうち、ピストン322により内部流路311から区画された空間である。機械室330には、基本的に、ブレーキフルードは流れない。なお、内部流路311から機械室330にブレーキフルードが漏出しても良い。
【0129】
ピストン322は、モータ61によるネジ軸321の回転に応じて移動し、内部流路311の容積を増減させる。これにより、電動シリンダ300は、内部流路311及び環状液路64の圧力を所望の圧力に保つことができる。すなわち、電動シリンダ300は、ネジ軸321の回転に応じて内部流路311におけるブレーキフルードの圧力を変動させる。
【0130】
ネジ軸321の一部は、機械室330に位置する。機械室330において、ネジ軸321は、潤滑剤により潤滑される。潤滑剤は、内部流路311の外部に位置し、ブレーキフルードとは異なる。潤滑剤は、ネジ軸321のみならず、当該ネジ軸321を支持するベアリング、及びピストン322を潤滑しても良い。
【0131】
第3の実施形態のECU28は、第2の実施形態と同様に、潤滑剤の温度としての推定温度を推定し、当該推定温度に基づいてモータ61の出力トルクを制御する。以上のように、液体圧力装置はポンプ62,200に限られない。
【0132】
電動装置、流体圧力装置、及び制御装置は、上述の例に限られない。例えば、流体圧力装置としてのポンプ62,200又は電動シリンダ300は、ブレーキ制御装置11において加圧ユニット25とは異なる部分に設けられても良い。また、電動装置は、車両1とは異なる装置に搭載されても良い。
【0133】
以上説明された少なくとも一つの実施形態に係る電動装置は、一例として、第1の流体が流れる内部流路が設けられ、第2の流体により潤滑された回転要素を有し、前記回転要素の回転に応じて前記内部流路における前記第1の流体の圧力を変動させる、流体圧力装置と、前記回転要素を回転させるモータと、前記モータを駆動させる制御装置と、前記内部流路に接続された外部流路における前記第1の流体の温度を測定可能なセンサと、を備え、前記制御装置は、前記センサにより測定された前記外部流路における前記第1の流体の温度に基づいて、前記内部流路における前記第1の流体の温度又は前記第2の流体の温度としての推定温度を推定し、前記推定温度に基づいて損失トルクを推定し、前記モータの目標回転数及び目標仕事量のうち少なくとも一方に基づき理論トルクを算出し、前記損失トルク及び前記理論トルクに基づいて出力トルクを算出し、前記出力トルクで前記モータを駆動させる。よって、一例としては、電動装置は、より適切な出力でモータを駆動させることができる。例えば、流体の温度は、当該流体の粘度に影響する。このため、内部流路における第1の流体の温度及び第2の流体の温度うち少なくとも一方が、流体圧力装置におけるエネルギーの損失(損失トルク)に影響する。一方で、損失トルクに影響する温度は、直接的には測定しにくいことがある。上述のように、制御装置は、外部流路における第1の流体の温度に基づき推定温度を推定するとともに、推定温度に基づいて損失トルクを推定する。これにより、制御装置は、低温時及び高温時のいずれにおいてもより適切な出力トルクでモータを駆動させることができ、ひいては流体圧力装置のストール及び無駄な電力の消費を抑制できる。また、制御装置は、内部流路における第1の流体の温度又は第2の流体の温度としての推定温度を推定するため、センサと、温度の推定対象である位置と、の間の距離が長い場合であっても当該位置の温度を得ることができる。以上より、電動装置は、より正確な損失トルクを推定することができるため、より適切な出力でモータを駆動させることができる。
【0134】
上記電動装置では、一例として、前記制御装置は、前記センサにより測定された前記外部流路にける前記第1の流体の温度に基づいて前記外部流路から前記内部流路に流入する前記第1の流体の熱エネルギーを推定し、前記熱エネルギーに基づいて前記推定温度を推定する。よって、一例としては、制御装置は、より正確な推定温度を推定することができる。例えば、外部流路から内部流路に流入する第1の流体の熱エネルギーは、内部流路における第1の流体の温度及び第2の流体の温度を増減させる。すなわち、制御装置は、当該熱エネルギーが内部流路における第1の流体の温度及び第2の流体の温度に与える影響を加味して推定温度を推定するため、より正確な推定温度を推定できる。
【0135】
上記電動装置では、一例として、前記制御装置は、前記損失トルクに基づいて当該損失トルクの仕事量を推定し、前記熱エネルギーと前記仕事量とに基づいて前記推定温度を推定する。よって、一例としては、制御装置は、より正確な推定温度を推定することができる。例えば、流体圧力装置において、複数の摺動要素が互いに摺動することで損失トルクが生じる。すなわち、制御装置は、当該複数の摺動要素の摺動による損失トルクの仕事量が内部流路における第1の流体の温度及び第2の流体の温度に与える影響を加味して推定温度を推定するため、より正確な推定温度を推定できる。
【0136】
上記電動装置では、一例として、前記流体圧力装置は、複数の位置で互いに摺動する複数の摺動要素を有し、前記制御装置は、前記複数の位置のうちそれぞれにおいて前記複数の摺動要素の摺動により生じる前記損失トルクの前記仕事量を推定する。よって、一例としては、制御装置は、より正確な推定温度を推定することができる。例えば、複数の位置のそれぞれにおける損失トルクと流体の温度との関係は異なる可能性が有る。このため、制御装置は、複数の位置における損失トルクの個別の特性を加味して推定温度を推定するため、より正確な推定温度を推定できる。
【0137】
上記電動装置では、一例として、前記第2の流体は、前記内部流路における前記第1の流体の一部である。よって、一例としては、制御装置は、推定温度を容易に推定することができる。
【0138】
以上の説明において、抑制は、例えば、事象、作用、若しくは影響の発生を防ぐこと、又は事象、作用、若しくは影響の度合いを低減させること、として定義される。また、以上の説明において、制限は、例えば、移動若しくは回転を防ぐこと、又は移動若しくは回転を所定の範囲内で許容するとともに当該所定の範囲を超えた移動若しくは回転を防ぐこと、として定義される。
【0139】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態および変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態や変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各実施形態や各変形例の構成や形状は、部分的に入れ替えて実施することも可能である。
【符号の説明】
【0140】
11…ブレーキ制御装置(電動装置)、28…ECU(制御装置)、36…圧力センサ(センサ)、61…モータ、62,200…ポンプ、64…環状液路(外部流路)、82…ロータユニット(摺動要素)、91…インナロータ(回転要素、摺動要素)、92…アウタロータ(摺動要素)、103ケーシング(摺動要素)、104,105…リングシール(摺動要素)、106…ロータ室(内部流路)、201…ハウジング(摺動要素)、203…ピニオンギヤ(摺動要素)、204…中間ギヤ(摺動要素)、211,311…内部流路、221…シャフト(摺動要素)、222…駆動ギヤ(摺動要素)、223…外部ギヤ(回転要素、摺動要素)、230…温度センサ、321…ネジ軸(回転要素)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8