(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171294
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】構築支援装置、構築支援方法及び構築支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20241204BHJP
A62C 99/00 20100101ALI20241204BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20241204BHJP
【FI】
G06F30/13
A62C99/00
G06F30/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023155699
(22)【出願日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2023087509
(32)【優先日】2023-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】畑 伸明
(72)【発明者】
【氏名】星野 弘
(72)【発明者】
【氏名】米満 ふよう
(72)【発明者】
【氏名】楠田 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】河村 良一
(72)【発明者】
【氏名】桜井 亜希
(72)【発明者】
【氏名】武田 怜
【テーマコード(参考)】
2E189
5B146
【Fターム(参考)】
2E189CG08
5B146AA04
5B146DC01
5B146FA02
(57)【要約】
【課題】消火設備の構築を支援するための構築支援装置、構築支援方法及び構築支援プログラムを提供する。
【解決手段】既存建築物に消火設備の構築を支援する制御部を備える。そして、制御部が、既存建築物の建築物情報を取得し、建築物情報において、放水対象領域を特定し、放水対象領域の面積に応じて、散水ヘッド数を算出し、散水ヘッド数に応じた放水量及び放水圧が設備条件を満たすように、既存建築物の水道に直結する既設の送水設備に対して、新設設備を特定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存建築物に消火設備の構築を支援する制御部を備えた構築支援装置であって、
前記制御部が、
前記既存建築物の建築物情報を取得し、
前記建築物情報において、放水対象領域を特定し、
前記放水対象領域の面積に応じて、散水ヘッド数を算出し、
前記散水ヘッド数に応じた放水量及び放水圧が設備条件を満たすように、前記既存建築物の水道に直結する既設の送水設備に対して、新設設備を特定する
ことを特徴とする構築支援装置。
【請求項2】
前記制御部が、
前記放水対象領域からの避難完了時間を算出し、
前記避難完了時間よりも長い放水継続時間を前記設備条件に設定し、
散水ヘッドからの放水が前記設備条件を満たすように前記新設設備を特定する
請求項1に記載の構築支援装置。
【請求項3】
前記制御部が、
前記建築物情報において、前記既設の送水設備としての水槽の有無を判定し、
前記水槽を検出できない場合には、前記建築物情報において、補助水槽の設置可否を判定し、
前記補助水槽を設置可能と判定した場合に、前記新設設備に前記補助水槽を含める
ことを特徴とする請求項1または2に記載の構築支援装置。
【請求項4】
前記制御部が、前記補助水槽を設置不可と判定した場合、前記新設設備として増圧給水ポンプを含める
ことを特徴とする請求項3に記載の構築支援装置。
【請求項5】
前記制御部が、前記既設の送水設備としての地上受水槽の有無を判定する
ことを特徴とする請求項3に記載の構築支援装置。
【請求項6】
前記制御部が、前記既設の送水設備としての高架水槽の有無を判定する
ことを特徴とする請求項3に記載の構築支援装置。
【請求項7】
既存建築物に消火設備の構築を支援する方法であって、
前記既存建築物の建築物情報を取得し、
前記建築物情報において、放水対象領域を特定し、
前記放水対象領域の面積に応じて、散水ヘッド数を算出し、
前記散水ヘッド数に応じた放水量及び放水圧が設備条件を満たすように、前記既存建築物の水道に直結する既設の送水設備に対して、新設設備を特定する
ことを特徴とする構築支援方法。
【請求項8】
前記放水対象領域からの避難完了時間を算出し、
前記避難完了時間よりも長い放水継続時間を前記設備条件に設定し、
散水ヘッドからの放水が前記設備条件を満たすように前記新設設備を特定する
請求項7に記載の構築支援方法。
【請求項9】
既存建築物に消火設備の構築を支援する制御部を備えた構築支援装置を用いて、構築支援を行なうプログラムであって、
前記制御部を、
前記既存建築物の建築物情報を取得し、
前記建築物情報において、放水対象領域を特定し、
前記放水対象領域の面積に応じて、散水ヘッド数を算出し、
前記散水ヘッド数に応じた放水量及び放水圧が設備条件を満たすように、前記既存建築物の水道に直結する既設の送水設備に対して、新設設備を特定する手段として機能させる
ことを特徴とする構築支援プログラム。
【請求項10】
前記制御部を、
前記放水対象領域からの避難完了時間を算出し、
前記避難完了時間よりも長い放水継続時間を前記設備条件に設定し、
散水ヘッドからの放水が前記設備条件を満たすように前記新設設備を特定する手段として機能させる
請求項9に記載の構築支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、消火設備の構築を支援するための構築支援装置、構築支援方法及び構築支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
火災の初期消火に消火設備として、スプリンクラー設備を用いることがある。このスプリンクラー設備では、天井に設置されたスプリンクラーヘッドから水を放出することにより、火災を消火する。スプリンクラー設備の設置が、消防法で義務付けられている建物もある。
【0003】
このような消火設備の配管システム設計装置も検討されている(特許文献1を参照。)。この文献に記載された配管システム設計装置は、コンピュータ操作により、配管ルート終点の圧力値が設定最低値を維持できるとともに、必要流量の消火剤が流れる噴射ヘッドのオリフイス径のものの中で、配管径を小さくかつ噴射ヘッド数も最少のものを算出する。
【0004】
また、無窓階の判断を行なうとともに、入力情報に基づいて消防設備配置を支援する消防設備配置支援システムも検討されている(特許文献2を参照。)。この文献に記載された消防設備配置支援システムは、所定階の床面積を含む建物情報、及び開口部仕様情報の入力を受け付ける。次に、建物情報、及び開口部仕様情報を含む情報に基づいて、開口部毎に、避難上又は消火活動上有効な開口部であるか否かを判定する。更に、有効な開口部であると判定された開口部が大型開口部であるか否かを判断する。そして、所定階が無窓階であるか否かを判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-62112号公報
【特許文献2】特開2020-123240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
窓がない居室である無窓居室では、火災が発生した場合、避難が困難になる場合がある。このため、建築基準法では、無窓居室を設置する場合の規制を設けていた。一方、近年のテレワークの普及等により、無窓居室を設置するニーズが高まっている。そこで、無窓居室に係る避難規制を合理化する改正が行なわれた。この改正では、無窓居室から直通階段までの歩行距離の上限を、無窓居室以外の居室と同等まで引き上げられた。この改正により、無窓居室の設置がより容易になったため、テレワーク等のニーズに対応しやすくなることが期待される。更に、既存の建物においても、消火設備を設けることにより、利用性を高めることができる。しかしながら、新設の建物とは異なり、既存の建物において無窓居室を構築する場合においては、消火設備の構築方法が確立されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための構築支援装置は、既存建築物に消火設備の構築を支援する制御部を備える。そして、前記制御部が、前記既存建築物の建築物情報を取得し、前記建築物情報において、放水対象領域を特定し、前記放水対象領域の面積に応じて、散水ヘッド数を算出し、前記散水ヘッド数に応じた放水量及び放水圧が設備条件を満たすように、前記既存建築物の水道に直結する既設の送水設備に対して、新設設備を特定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、消火設備の構築を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】第1実施形態のハードウェア構成の説明図である。
【
図6】第2実施形態において、構築支援処理の対象となる階層のフロアマップを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、
図1~
図5を用いて、構築支援装置、構築支援方法及び構築支援プログラムを具体化した第1実施形態を説明する。第1実施形態では、既存建築物に消火設備を構築するために用いる構築支援装置、構築支援方法及び構築支援プログラムとして説明する。
【0011】
図1に示すように、既存建築物としての建物B1には、送水設備である配水管500から、止水弁501、水道メータ503を介して、水道水が供給される。この水道水は、建物B1の給水栓505で利用される。この水道水を、新設の消火設備に直結させて用いる。この場合、天井に設けられた配管を介して、水道水を噴霧する散水ヘッド510に供給する。この散水ヘッド510には、火災警報装置(図示せず)による火災検知時に、水道水が給水される。
【0012】
ここでは、コンピュータを用いて、既存建築物に消火設備を設置する構築支援を行なう場合を想定する。
図2に示すように、第1実施形態の構築支援システムA1は、ネットワークを介して、ユーザ端末10に接続された構築支援装置20を備える。
【0013】
(ハードウェア構成の説明)
図3を用いて、ユーザ端末10、構築支援装置20を構成する情報処理装置H10のハードウェア構成を説明する。情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶装置H14、プロセッサH15を備える。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアにより実現することも可能である。
【0014】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインターフェースであり、例えばネットワークインタフェースや無線インターフェース等である。
【0015】
入力装置H12は、各種情報の入力を受け付ける装置である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイ等である。
記憶装置H14は、ユーザ端末10、構築支援装置20の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置である。
【0016】
プロセッサH15は、記憶装置H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、ユーザ端末10、構築支援装置20における各処理を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各処理のための各種プロセスを実行する。
【0017】
(構築支援システムA1)
ユーザ端末10は、ユーザが用いるコンピュータ端末である。
構築支援装置20は、消火設備の構築を支援するコンピュータシステムである。構築支援装置20は、制御部21、設備情報記憶部22、対象情報記憶部23を備える。
【0018】
制御部21は、後述する処理(管理段階、支援段階等を含む処理)を行なう。このための処理プログラムを実行することにより、制御部21は、管理部211、支援部212等として機能する。
【0019】
管理部211は、ユーザ端末10から、構築支援対象の既存建築物の情報を取得する処理を実行する。
支援部212は、既存建築物の状況に応じて、消火設備を提案する処理を実行する。この支援部212は、消火設備に求められる設備条件(放水量、放水圧)に関する情報を保持する。
【0020】
設備情報記憶部22には、消火設備に関する新設設備の設備管理情報が記録される。この設備管理情報は、消火設備に利用可能な新設設備が登録された場合に記録される。本実施形態では、新設設備としては、例えば、給水ポンプ、地上補助水槽、増圧給水ポンプ、屋上補助水槽等がある。そして、設備管理情報には、これらの資機材の仕様として、水槽の容量やポンプの能力、サイズ(設置に必要な面積)等が記録されている。
【0021】
対象情報記憶部23には、消火設備を新設する構築支援対象の建築物情報が記録される。この建築物情報は、ユーザ端末10から取得した場合に記録される。本実施形態では、建築物情報には、建築物の構造図が記録されている。構造図は、構造図、意匠図、設備図等を含んでおり、各階層のフロアマップを特定できる。そして、このフロアマップにより、放水対象領域である各階層のレイアウト、面積、既存設備を特定することができる。なお、建築物情報は、構造図に限定されるものではなく、放水対象領域や既設の送水設備等を特定できる情報を用いることができる。
【0022】
(構築支援処理)
次に、
図4、
図5を用いて、消火設備の構築支援処理を説明する。
図4に示すように、まず、構築支援装置20の制御部21は、既設設備判定処理を実行する(ステップS11)。具体的には、制御部21の管理部211は、ユーザ端末10から、構築支援対象の建築物情報を取得し、対象情報記憶部23に記録する。そして、支援部212は、建築物情報において、既設の設備情報を取得する。
【0023】
次に、構築支援装置20の制御部21は、スプリンクラーが既設かどうかについての判定処理を実行する(ステップS12)。具体的には、制御部21の支援部212は、既設の設備情報において、スプリンクラーの有無を判定する。ここで、設備情報にスプリンクラーに関する情報が記録されている場合には、スプリンクラーは既設と判定する。
【0024】
スプリンクラーは既設と判定した場合(ステップS12において「YES」の場合)、構築支援装置20の制御部21は、構築支援処理を終了する。
一方、スプリンクラーは既設ではないと判定した場合(ステップS12において「NO」の場合)、構築支援装置20の制御部21は、増圧給水ポンプは既設かどうかについての判定処理を実行する(ステップS13)。具体的には、制御部21の支援部212は、既設の設備情報において、増圧給水ポンプの有無を判定する。
【0025】
図1に示すように、増圧給水ポンプ521が既設であり、設備情報に増圧給水ポンプに関する情報を検出した場合には、増圧給水ポンプは既設と判定する。この場合、増圧給水ポンプを、新設の消火設備に用いる。
【0026】
増圧給水ポンプは既設でないと判定した場合(ステップS13において「NO」の場合)、構築支援装置20の制御部21は、地上受水槽は既設かどうかについての判定処理を実行する(ステップS14)。具体的には、制御部21の支援部212は、既設の設備情報において、地上受水槽及び加圧ポンプの有無を判定する。
【0027】
図1に示すように、地上受水槽531及び加圧ポンプ532が既設であり、設備情報に地上受水槽及び加圧ポンプに関する情報を検出した場合には、地上受水槽は既設と判定する。この場合、地上受水槽及び加圧ポンプを、新設の消火設備に用いる。
【0028】
一方、地上受水槽は既設でないと判定した場合(ステップS14において「NO」の場合)、構築支援装置20の制御部21は、地上補助水槽の設置可否判定処理を実行する(ステップS15)。具体的には、制御部21の支援部212は、設備情報記憶部22から地上補助水槽のサイズ情報を取得する。そして、支援部212は、構築支援対象の建築物情報において、地上補助水槽のサイズに応じたスペースの有無を確認する。なお、増圧給水ポンプは、配管途中に設置されるため、設置に要するスペースは考慮しない。
【0029】
次に、構築支援装置20の制御部21は、設置可能かどうかについての判定処理を実行する(ステップS16)。具体的には、制御部21の支援部212は、サイズに応じた設置可能なスペースを特定できた場合には、地上補助水槽は設置可能と判定する。
【0030】
地上補助水槽を設置可能と判定した場合(ステップS16において「YES」の場合)、構築支援装置20の制御部21は、地上補助水槽及び増圧給水ポンプの新設処理を実行する(ステップS17)。具体的には、制御部21の支援部212は、構築支援対象の建築物情報に、新設情報として地上補助水槽及び増圧給水ポンプに関する情報を追加する。
【0031】
図1に示すように、地上補助水槽541及び増圧給水ポンプ542を追加する。
一方、地上補助水槽を設置不可と判定した場合(ステップS16において「NO」の場合)、構築支援装置20の制御部21は、増圧給水ポンプの新設処理を実行する(ステップS18)。具体的には、制御部21の支援部212は、構築支援対象の建築物情報に、新設情報として増圧給水ポンプに関する情報を追加する。
【0032】
また、増圧給水ポンプ又は地上受水槽が既設であると判定した場合(ステップS13,S14において「YES」の場合)、構築支援装置20の制御部21は、構築支援装置20の制御部21は、既設の増圧給水ポンプ又は地上受水槽を、新設の消火設備に追加する。そして、ステップS15~S18の処理をスキップする。
【0033】
次に、
図5に示すように、構築支援装置20の制御部21は、放水量、放水圧の判定処理を実行する(ステップS21)。具体的には、制御部21の支援部212は、構築支援対象の建築物情報の放水対象領域を用いて、各階層のフロアマップによって特定される放水対象領域の面積に応じて、新設する散水ヘッド数を算出する。ここでは、一つの散水ヘッドにおける半径「2.6m」の散水範囲を想定する。例えば、50平方メートルの正方領域の場合、4個の散水ヘッドを用いる。支援部212は、対象情報記憶部23に記録された既設設備情報、新設設備情報を用いて、放水シミュレーションを行なうことにより、各散水ヘッドの放水量、放水圧を算出する。
【0034】
次に、構築支援装置20の制御部21は、設備条件を満足するかどうかについての判定処理を実行する(ステップS22)。具体的には、設備条件として、1個の散水ヘッド当たり放水量として「80L/分」、放水圧は、「0.1Mpa」とする。この場合、4個の散水ヘッドを用いる場合には、総水量は「320L/分」となる。そして、制御部21の支援部212は、総水量、散水ヘッドの放水圧が、設備条件を満足するかどうかを判定する。
【0035】
設備条件を満足しないと判定した場合(ステップS22において「NO」の場合)、構築支援装置20の制御部21は、高架水槽は既設かどうかについての判定処理を実行する(ステップS23)。具体的には、制御部21の支援部212は、既設の設備情報において、高架水槽の有無を判定する。ここで、高架水槽に関する情報が記録されている場合には、高架水槽は既設と判定する。
【0036】
図1に示すように、高架水槽551及び加圧ポンプ552が既設で、高架水槽及び加圧ポンプに関する情報を検出した場合には、高架水槽は既設と判定する。この場合、高架水槽を、新設の消火設備に用いる。
【0037】
高架水槽は既設でないと判定した場合(ステップS23において「NO」の場合)、構築支援装置20の制御部21は、屋上補助水槽の設置可否判定処理を実行する(ステップS24)。具体的には、制御部21の支援部212は、設備情報記憶部22から屋上補助水槽のサイズ情報を取得する。そして、支援部212は、構築支援対象の建築物情報において、屋上補助水槽のサイズに応じたスペースを確認する。
【0038】
次に、構築支援装置20の制御部21は、屋上補助水槽は設置可能かどうかについての判定処理を実行する(ステップS25)。具体的には、制御部21の支援部212は、サイズに応じた設置可能なスペースが特定できた場合には、屋上補助水槽は設置可能と判定する。
【0039】
屋上補助水槽を設置可能と判定した場合(ステップS25において「YES」の場合)、構築支援装置20の制御部21は、屋上補助水槽の新設処理を実行する(ステップS26)。具体的には、制御部21の支援部212は、構築支援対象の建築物情報に、新設情報として屋上補助水槽に関する情報を追加する。
【0040】
図1に示すように、屋上補助水槽561及び加圧ポンプ562を追加する。
一方、高架水槽は既設と判定した場合(ステップS23において「YES」の場合)、構築支援装置20の制御部21は、VNTBv既設の高架水槽を、新設の消火設備に追加するとともに、ステップS24~S26の処理をスキップする。
【0041】
次に、構築支援装置20の制御部21は、ステップS21と同様に、放水量、放水圧の判定処理を実行する(ステップS27)。具体的には、制御部21の支援部212は、高架水槽又は屋上補助水槽を含めて、放水シミュレーションを行なうことにより、各散水ヘッドの放水量、放水圧を算出する。
【0042】
次に、構築支援装置20の制御部21は、ステップS22と同様に、設備条件を満足するかどうかについての判定処理を実行する(ステップS28)。
設備条件を満足しないと判定した場合又は屋上補助水槽を設置不可能と判定した場合(ステップS25,S28において「NO」の場合)、構築支援装置20の制御部21は、ポンプ設定の変更処理を実行する(ステップS29)。具体的には、制御部21の支援部212は、設備情報記憶部22に記録された設備管理情報を用いて、仕様に応じて増圧給水ポンプ又は加圧ポンプの圧力を高くする。
【0043】
そして、放水量、放水圧の判定処理(ステップS27)以降の処理を繰り返す。
設備条件を満足すると判定した場合(ステップS22、S28において「YES」の場合)、構築支援装置20の制御部21は、結果の出力処理を実行する(ステップS30)。具体的には、支援部212は、対象情報記憶部23に記録された消火設備の新設に用いる既設情報、新設情報を、ユーザ端末10の表示装置H13に出力する。
【0044】
第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1-1)第1実施形態では、構築支援装置20の制御部21は、既設設備判定処理を実行する(ステップS11)。これにより、消火設備の新設において利用可能な既設設備を確認することができる。
【0045】
(1-2)第1実施形態では、構築支援装置20の制御部21は、増圧給水ポンプは既設かどうかについての判定処理を実行する(ステップS13)。これにより、増圧給水ポンプが既設の場合には、増圧給水ポンプを用いて、消火設備を新設することができる。
【0046】
(1-3)第1実施形態では、増圧給水ポンプは既設でないと判定した場合(ステップS13において「NO」の場合)、構築支援装置20の制御部21は、地上受水槽は既設かどうかについての判定処理を実行する(ステップS14)。これにより、消火設備において、既設の送水設備としての水槽として、地上受水槽を考慮することができる。そして、地上受水槽が既設の場合には、地上受水槽を用いて、消火設備を新設することができる。
【0047】
(1-4)第1実施形態では、地上受水槽は既設でないと判定した場合(ステップS14において「NO」の場合)、構築支援装置20の制御部21は、地上補助水槽の設置可否判定処理を実行する(ステップS15)。これにより、地上受水槽がない場合には、地上補助水槽及び増圧給水ポンプの新設を考慮して、消火設備を構築することができる。
【0048】
(1-5)第1実施形態では、地上補助水槽を設置可能と判定した場合(ステップS16において「YES」の場合)、構築支援装置20の制御部21は、地上補助水槽及び増圧給水ポンプの新設処理を実行する(ステップS17)。これにより、地上補助水槽及び増圧給水ポンプを新設して、消火設備を構築することができる。
【0049】
(1-6)第1実施形態では、地上補助水槽を設置不可と判定した場合(ステップS16において「NO」の場合)、構築支援装置20の制御部21は、増圧給水ポンプの新設処理を実行する(ステップS18)。これにより、地上補助水槽の代わりに増圧給水ポンプを新設して、消火設備を構築することができる。
【0050】
(1-7)第1実施形態では、構築支援装置20の制御部21は、放水量、放水圧の判定処理を実行する(ステップS21)。これにより、消火設備に用いる既設の設備或いは新設の設備により、設備条件を判定することができる。
【0051】
(1-8)第1実施形態では、設備条件を満足しないと判定した場合(ステップS22において「NO」の場合)、構築支援装置20の制御部21は、高架水槽は既設かどうかについての判定処理を実行する(ステップS23)。これにより、消火設備において、既設の送水設備としての水槽として、屋上側の設備を考慮することができる。そして、高架水槽が既設の場合には、高架水槽を用いて、消火設備を新設することができる。
【0052】
(1-9)第1実施形態では、高架水槽は既設でないと判定した場合(ステップS23において「NO」の場合)、構築支援装置20の制御部21は、屋上補助水槽の設置可否判定処理を実行する(ステップS24)。これにより、屋上補助水槽の新設を検討することができる。
【0053】
(1-10)第1実施形態では、屋上補助水槽を設置可能と判定した場合(ステップS25において「YES」の場合)、構築支援装置20の制御部21は、屋上補助水槽の新設処理を実行する(ステップS26)。これにより、消火設備において、屋上側の設備を考慮することができる。
【0054】
(1-11)第1実施形態では、設備条件を満足しないと判定した場合(ステップS28において「NO」の場合)、構築支援装置20の制御部21は、ポンプ設定の変更処理を実行する(ステップS29)。これにより、設備条件を満足する消火設備を模索することができる。
【0055】
(第2実施形態)
図6および
図7を用いて、構築支援装置、構築支援方法及び構築支援プログラムを具体化した第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態の構築支援装置、構築支援方法及び構築支援プログラムは、既存建築物に消火設備を構築することを含め、第1実施形態における構築支援装置、構築支援方法及び構築支援プログラムと主要な構成が同じである。そのため、第2実施形態においては、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、第1実施形態と同様の部分については同様の符号を付すことによりその詳細な説明は省略する。
【0056】
(支援対象となるフロアマップの例)
図6は、既存建築物である建物B1について、第2実施形態の構築支援処理の対象となる階層のフロアマップを模式的に示している。
図6に示すように、構築支援処理の対象となる階層には、既存設備として屋内消火栓61が設置されている。また、階層には、放水対象領域として無窓居室62が設置される。各無窓居室62には、火災警報装置63と一つ以上の散水ヘッド510とが設置される。これら屋内消火栓61や無窓居室62、散水ヘッド510に関する情報(設置位置や各種面積など)は、建築物情報に含まれている。構築支援装置、構築支援方法及び構築支援プログラムは、構築支援処理を通じて、各無窓居室62に散水ヘッド510を有する消火設備を新設する構築支援を行なう。
【0057】
(構築支援処理)
図7を用いて、消火設備の構築支援処理を説明する。
図7に示すように、構築支援装置20の制御部21は、スプリンクラーが既設でないと判定されると(ステップS12において「NO」の場合)、増圧給水ポンプは既設かどうかについての判定処理(ステップS13)を実行する前に、設備条件の一つである放水継続時間設定処理(ステップS40)を実行する。
【0058】
放水継続時間設定処理において、構築支援装置20の制御部21は、散水ヘッド510による放水継続時間T2を算出し、その算出した放水継続時間T2を設備条件の一つに設定する。
【0059】
この処理において、支援部212は、まず、避難完了時間T1を算出する処理を実行する(ステップS41)。具体的には、支援部212は、令和3年国土交通省告示第475号に定められた方法にしたがって、
図6に点線で例示するように、無窓居室62の利用者が直通階段65に到達するまでの時間を避難完了時間T1として算出する。避難完了時間T1を算出するために必要な情報は、建築物情報に含まれている。支援部212は、直通階段65に到達するまでの時間を無窓居室62ごとに算出し、その算出した時間の中から最も長い時間を避難完了時間T1として算出する。
【0060】
次に、構築支援装置20の制御部21は、放水継続時間を算出する処理を実行する(ステップS42)。制御部21は、避難完了時間T1よりも長い時間を放水継続時間T2として算出する。
【0061】
例えば、制御部21の支援部212は、避難完了時間T1を所定単位(分単位や10秒単位、15秒単位など)で切り上げることで放水継続時間T2を算出する。具体的には、支援部212は、避難完了時間T1が7分55秒である場合に、その避難完了時間T1を10秒単位で切り上げた8分を放水継続時間T2として算出する。
【0062】
また例えば、支援部212は、避難完了時間T1が10分未満であるときには、10分を放水継続時間T2として算出する。
また例えば、支援部212は、避難完了時間T1に所定の安全時間を加えた時間を所定単位で切り上げることで放水継続時間T2を算出する。具体的には、支援部212は、避難完了時間T1が7分55秒である場合に、その避難完了時間T1に安全時間の2分を加えた後に10秒単位で切り上げた10分を放水継続時間T2として算出する。
【0063】
また例えば、支援部212は、避難完了時間T1に所定の安全率を乗じた時間を所定単位で切り上げることで放水継続時間T2を算出する。具体的には、支援部212は、避難完了時間T1が9分55秒である場合、避難完了時間T1に安全率の1.2を乗じた時間を10秒単位で切り上げた12分を放水継続時間T2として算出する。
【0064】
放水継続時間設定処理が終了すると、支援部212は、(ステップS13)以降の処理を実行する。そして、ステップS21およびステップS27の放水量、放水圧の判定処理において、支援部212は、放水シミュレーションを行なうことにより、散水ヘッド510から所定の放水量、放水圧の水が放水継続時間T2だけ継続して放水されるか否かを判定する。例えば、支援部212は、1個の散水ヘッド当たりの放水量を50L/分、放水圧を0.1Mpa、放水継続時間T2を設備条件として判定する。
【0065】
第2実施形態によれば、上述した(1-1)~(1-11)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(2-1)制御部21は、無窓居室62からの避難完了時間T1を算出し、その算出した避難完了時間T1よりも長い放水継続時間T2を設備条件として設定する。これにより、無窓居室62の利用者の避難が完了するまで間、散水ヘッド510からの放水を継続して行なうことができる。
【0066】
(2-2)放水継続時間T2が設定されることにより、必要な放水時間に合わせて地上補助水槽や屋外補助水槽の容量を設定することができる。
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0067】
・上記実施形態では、コンピュータを用いて、既存建築物に消火設備を設置する構築支援を行なう場合を想定する。すべてのステップをコンピュータを用いて行なう必要はなく、人手により行なってもよい。
【0068】
・上記実施形態では、ユーザ端末10、構築支援装置20を用いたが、ハードウェア構成は、これに限定されるものではない。
・上記実施形態では、対象情報記憶部23には記録された建築物情報を用いて、既設設備を特定する。これに代えて、構築支援装置20の制御部21が、表示装置H13に、既設整備の有無の確認画面を出力するようにしてもよい。この場合には、ユーザが入力装置H12を用いて、既設設備の有無を入力する。
【0069】
・上記実施形態では、一つの散水ヘッドにおける半径「2.6m」の散水範囲を想定する。散水ヘッドの種類に応じて散水範囲を変更してもよい。この場合も、設備条件を満足しない場合に、異なる種類の散水ヘッドを利用して、散水ヘッド数を変更するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
A1…構築支援システム、10…ユーザ端末、20…構築支援装置、21…制御部、211…管理部、212…支援部、22…設備情報記憶部、23…対象情報記憶部。