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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017130
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20240201BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20240201BHJP
   B60R 22/18 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/42
B60R22/18 118
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119575
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】半田 学
【テーマコード(参考)】
3B087
3D018
【Fターム(参考)】
3B087CD05
3B087DE06
3D018CA09
3D018CB02
(57)【要約】
【課題】車両の後席シートとして別の後席シートの前方に配置される車両用シートにおいて、シートバックに内蔵されているシートパッドの干渉部が外部荷重によって車両後方へ位置ズレするのを抑制するのに有効な技術を提供する。
【解決手段】後席シート1は、車両の後席シートとして別の後席シートの前方に配置されるものであり、乗員の背凭れとなるシートバック20と、シートバック20の肩部20aからシート外部に引き出されるシートベルト2をシートバック20の内部において覆うカバー30と、シートバック20に内蔵されておりカバー30の上部と干渉する干渉部41を有するシートパッド40と、シートバック20の上部への外部荷重の入力時にシートパッド40の干渉部41がカバー30に沿って車両後方へと動くのを規制するシートパッド規制部50と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後席シートとして別の後席シートの前方に配置される車両用シートであって、
乗員の背凭れとなるシートバックと、
上記シートバックの肩部からシート外部に引き出されるシートベルトを上記シートバックの内部において覆うカバーと、
上記シートバックに内蔵されており上記カバーの上部と干渉する干渉部を有するシートパッドと、
上記シートバックの上部への外部荷重の入力時に上記シートパッドの上記干渉部が上記カバーに沿って車両後方へと動くのを規制するシートパッド規制部と、
を備える、車両用シート。
【請求項2】
上記カバーには、上下方向に沿って延びる縦壁が設けられており、上記シートパッド規制部は上記縦壁によって構成されている、請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
上記カバーは、上記縦壁と、上記縦壁の下端部から車両後方に向けて延びるように設けられた下壁と、上記カバーに上記縦壁の上端部から車両後方に向けて延びるように設けられた上壁と、を有し、
上記シートパッド規制部は、上記カバーの上記縦壁と上記下壁と上記上壁とからなる段差構造によって構成されている、請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
上記縦壁は、上記シートパッドの上記干渉部のうち乗員の手指によって上記外部荷重が入力される荷重入力領域の直下に設けられている、請求項2または3に記載の車両用シート。
【請求項5】
上記シートバックは、シートクッションに回動可能に連結されており、
上記縦壁は、上記シートバックの延在方向に沿って延びるように上記カバーに設けられている、請求項2または3に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、この種の車両用シートが開示されている。この車両用シートは、ウェビングと称されるシートベルトがシートバックの肩部からシート外部に引き出されるように構成されている。この車両用シートのシートバックには、シートバックの内部でシートベルトを覆うカバーが設けられており、このカバーの上部にシートパッドの一部である干渉部が干渉している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-64715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の車両用シートによれば、例えば、乗員が乗降時にシートバックの上部に手をついてシートバックの上部が下向きに押圧されたとき、カバーがシートパッドの干渉部を下方から支持する。このため、シートパッドの干渉部が下方に落ち込むのをカバーによって抑制できる。一方で、シートパッドの干渉部に車両後方に向かう外部荷重が入力されたような場合、この干渉部がカバーに対して車両後方へ位置ズレすることが起こり得る。この位置ズレの発生は、乗員がシートバックの上部に手をついて乗降するときの乗降動作を不安定にする要因になる。とりわけ、別の後席シートの前方に配置される後席シートにおいては、この後席シートのシートバックの上部を別の後席シートの乗員が後方から把持することで車両後方への外部荷重が生じ易くなるため、シートパッドの干渉部における上述のような位置ズレの発生がより顕著なものとなる。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、車両の後席シートとして別の後席シートの前方に配置される車両用シートにおいて、シートバックに内蔵されているシートパッドの干渉部が外部荷重によって車両後方へ位置ズレするのを抑制するのに有効な技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
車両の後席シートとして別の後席シートの前方に配置される車両用シートであって、
乗員の背凭れとなるシートバックと、
上記シートバックの肩部からシート外部に引き出されるシートベルトを上記シートバックの内部において覆うカバーと、
上記シートバックに内蔵されており上記カバーの上部と干渉する干渉部を有するシートパッドと、
上記シートバックの上部への外部荷重の入力時に上記シートパッドの上記干渉部が上記カバーに沿って車両後方へと動くのを規制するシートパッド規制部と、
を備える、車両用シート、
にある。
【発明の効果】
【0007】
上述の態様の車両用シートは、別の後席シートの前方に配置される後席シートである。この車両用シートは、シートバックと、カバーと、シートパッドと、シートパッド規制部と、を備える。カバーは、シートバックの内部でシートベルトを覆うものである。シートパッドは、このカバーの上部と干渉する干渉部を有する。このため、シートバックの上部が下向きに押圧されたとき、カバーがシートパッドの干渉部を下方から支持するため、干渉部が下方に落ち込むのをカバーによって阻止できる。
【0008】
シートバックの上部に車両後方への外部荷重が入力されたような場合、カバーによって下方から支持されているシートパッドの干渉部がカバーに沿って車両後方へ動くことが起こり得る。そこで、シートパッド規制部は、シートバックの上部への外部荷重の入力時にシートパッドの干渉部がカバーに沿って車両後方へと動くのを規制する機能を果たす。このシートパッド規制部によれば、シートパッドの干渉部の車両後方への動きを規制することで、カバーに対するシートパッドの干渉部の車両後方への位置ズレの発生を抑制することができる。
【0009】
以上のごとく、上述の態様によれば、車両の後席シートとして別の後席シートの前方に配置される車両用シートにおいて、シートバックに内蔵されているシートパッドの干渉部が外部荷重によって車両後方へ位置ズレするのを抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1にかかる車両の車室内の様子を示す斜視図。
図2】実施形態1の後席シートの上部を前斜め上方からみた斜視図。
図3】実施形態1の後席シートに設けられるカバーおよびベゼルの斜視図。
図4図3のIV-IV線矢視断面図。
図5図4においてシートバックの上部に乗員の手指によって車両後方に向かう外部荷重が入力されるときの様子を示す断面図。
図6】実施形態2の後席シートについて図4に対応した断面図。
図7】実施形態3の後席シートについて図4に対応した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述の態様の車両用シートにおいて、上記カバーには、上下方向に沿って延びる縦壁が設けられており、上記シートパッド規制部は上記縦壁によって構成されているのが好ましい。
【0012】
この車両用シートによれば、カバーに設けられた縦壁がシートパッドの干渉部に引っ掛かるため、シートパッドの干渉部の車両後方への動きをこの縦壁によって規制することができる。この場合、縦壁を利用してシートパッド規制部を構築することができるため、シートパッド規制部の構造を簡素化するのに有効である。
【0013】
上述の態様の車両用シートにおいて、上記カバーは、上記縦壁と、上記縦壁の下端部から車両後方に向けて延びるように設けられた下壁と、上記カバーに上記縦壁の上端部から車両後方に向けて延びるように設けられた上壁と、を有し、
上記シートパッド規制部は、上記カバーの上記縦壁と上記下壁と上記上壁とからなる段差構造によって構成されているのが好ましい。
【0014】
この車両用シートによれば、カバーの一部である縦壁と下壁と上壁とからなる段差構造を利用してシートパッド規制部を構築することができる。このため、シートパッド規制部のためにカバーとは別の追加部品を要しないという利点がある。また、比較的に簡単な加工によってカバーに段差構造を形成することができる。
【0015】
上述の態様の車両用シートにおいて、上記縦壁は、上記シートパッドの上記干渉部のうち乗員の手指によって上記外部荷重が入力される荷重入力領域の直下に設けられているのが好ましい。
【0016】
この車両用シートによれば、乗員の手指によって荷重入力領域に入力された外部荷重の一部を、シートパッドの干渉部を縦壁の車両前方側に押し込む荷重に利用することができる。このため、シートパッドの干渉部の車両後方への動きを規制する効果を高めることができる。
【0017】
上述の態様の車両用シートにおいて、上記シートバックは、シートクッションに回動可能に連結されており、上記縦壁は、上記シートバックの延在方向に沿って延びるように上記カバーに設けられているのが好ましい。
【0018】
この車両用シートによれば、シートクッションに対するシートバックの回動位置にかかわらず、カバーにシートバックの延在方向に沿って延びるように設けられた縦壁がシートパッドの干渉部に引っ掛かるため、シートパッドの干渉部の車両後方への動きをこの縦壁によって規制することができる。
【0019】
以下、上述の態様の車両用シートの実施形態について図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0020】
なお、以下の説明で参照する図面では、車両前方を矢印FRで示し、車両上方を矢印UPで示し、車両内方を矢印INで示す。また、特にことわらない限り、シートバックが起立位置にあるときの車両用シートの上下方向(車高方向)を矢印Xで示し、その車両用シートの前後方向(車長方向)を矢印Yで示し、その車両用シートの左右方向(車幅方向)を矢印Zで示すものとする。
【0021】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1にかかる車両Vは、1列の前席シート1Aと、2列の後席シート1,1Bと、を備える車両である。この車両Vは、一般的に「ワンボックスカー」と称される。前席シート1Aは、車室内の前部領域に配置される車両用シートである。後席シート1は、車室内の後部領域において、別の後席シート1Bの前方に配置される後席一列目の車両用シートである。この後席シート1は、所謂「キャプテンシート」と称されるものである。これに対して、別の後席シート1Bは、車室内の後部領域において、後席シート1の後方に配置される後席二列目の車両用シートである。この別の後席シート1Bは、3人掛け用のシートであり、所謂「ベンチシート」と称されるものである。
【0022】
なお、この車両Vにおける車両用シートの配列構造はあくまで例示的なものであって、図1のものに限定されるものではない。例えば、後席シートは3列以上であってもよい。また、各車両用シートの構造及び形状は、図1に示されるものから適宜に変更が可能である。また、車室内に複数列の後席シートを備える車両であれば、車両Vはワンボックスカーに限定されるものではない。
【0023】
1.後席シート1の構造
図1に示されるように、後席シート1は、着座面を有するシートクッション10と、シートクッション10から立設しており乗員の背凭れとなるシートバック20と、シートバック20の上部に配置されるヘッドレスト11と、を備えている。シートバック20は、その下端部を中心に回動可能となるようにシートクッション10に連結されている。この後席シート1は、必要に応じて、シートバック20がシートクッション10に回動不能に連結された構造を有するものであってもよい。
【0024】
なお、左席用の後席シート1は、右席用の後席シート1と左右対称構造を有するため、以下では、右席用の後席シート1の構造についてのみ説明する。
【0025】
図2は、右席用の後席シート1をシートバック20が起立位置Pにあるときの状態にて示すものである。この後席シート1は、シートバック20の右側の肩部20aからシート外部に、シートベルト2が引き出されるように構成されている。シートバック20の前側にはベゼル23が配置されており、このベゼル23の開口23aが露出するようになっている。
【0026】
シートベルト2は、ウェビングとも称される可撓性の帯状部材であり、後席シート1に内蔵されたベルト巻き取り装置(図示省略)によって巻き取り方向に常時に付勢されている。このため、シートベルト2は、巻き取り方向の付勢力に打ち勝つような引き出し方向の荷重を乗員から受けることによって、ベゼル23の開口23aを通じてシート外部に引き出される。一方で、シートベルト2は、乗員による引き出し操作から解放されると、巻き取り方向の付勢力にしたがって引き戻される。
【0027】
図3に示されるように、後席シート1のカバー30は、シートベルト2をシートバック20の内部において覆う機能を有する。このカバー30は、ベゼル23に一体状に取付けられている。このカバー30は、シートベルト2の引出用の開口30aを有し、この開口30aがベゼル23の開口23aと重なり合うように構成されている。このため、シートベルト2は、カバー30の開口30aを通過したのちにベゼル23の開口23aを通過してシート外部に引き出される。
【0028】
2.シートバック20の内部構造
図4に示されるように、後席シート1のシートバック20には、概して、シートバックフレーム21と、ベルトガイド22と、カバー30と、シートパッド40と、が内蔵されている。
【0029】
シートバックフレーム21は、シートバック20の骨格部分を構成している。ベルトガイド22は、シートバックフレーム21に固定されており、シートベルト2をガイドするガイド空間22aを有する。ベルトガイド22のガイド空間22aでガイドされたシートベルト2は、カバー30の天面部である上部によって上方から覆われている。
【0030】
シートパッド40は、カバー30よりも柔らかい素材からなるクッション材によって構成されている。このシートパッド40の表面は表皮層24によって被覆されている。このシートパッド40は、カバー30の上部と干渉する干渉部41を有する。なお、本形態では、シートパッド40は、例えば締結や接着などの固定手段によってカバー30に固定されていない。このため、シートパッド40は、カバー30に沿った方向への移動が許容されている。
【0031】
カバー30は、シートバックフレーム21に対して固定されている。このカバー30の上部には、上下方向Xに沿って延びる縦壁31と、縦壁31の下端部31aから車両後方に向けて延びる下壁32と、縦壁31の上端部31bから車両後方に向けて延びる上壁33と、が設けられている。カバー30は、いずれも前後方向Yに沿って延びる縦壁31と下壁32と上壁33とからなる階段状の段差構造を有する。
【0032】
カバー30の縦壁31と下壁32と上壁33はいずれも、左右方向Zを板幅方向とし板厚が概ね一定とされた板状部分である。このため、カバー30は、その上部が段差構造であるにもかかわらず、その上部が平板構造である場合に比べて、コスト及び重量の増加が微増に抑えられている。
【0033】
カバー30は、その上部がシートパッド40の干渉部41と干渉している。このため、シートバック20の上部が下向きに押圧されたとき、カバー30の上部がシートパッド40の干渉部41を下方から支持する。このため、シートパッド40の干渉部41が下方に落ち込むのをカバー30によって阻止できる。
【0034】
カバー30において、縦壁31は、シートパッド40の干渉部41のうち荷重入力領域42の直下に設けられている。荷重入力領域42は、乗員がシートバック20の上部を手指で押圧したり把持した状態で引っ張ったりすることで外部荷重が入力される領域として定義される。ここで、シートパッド40の干渉部41が外部荷重によってカバー30に対して位置ズレする位置ズレ方向を矢印Dとしたとき、上下方向Xに沿って延びる縦壁31は、位置ズレ方向Dと交差するように延びている。このとき、位置ズレ方向Dは、カバー30の上壁33の延在面と概ね平行な方向である。また、このカバー30の縦壁31は、シートバック20の延在方向Cに沿って延びている。
【0035】
なお、図4は、あくまでシートバック20が任意の起立位置Pにあるときの内部の様子を示すものである。そして、図4に示されるカバー30では、縦壁31は上下方向Xに対して傾斜して延びており、下壁32と上壁33がともに前後方向Yに対して傾斜して延びている。一方で、カバー30の各壁の傾斜角度はシートバック20の姿勢に応じて変化する。このため、シートバック20の姿勢によっては、縦壁31が上下方向Xに延び、且つ下壁32と上壁33がともに前後方向Yに延びるようにカバー30が配置される場合もあり得る。
【0036】
本形態において、カバー30の上記段差構造は、シートパッド40の干渉部41がカバー30に沿って車両後方へと動くのを規制するシートパッド規制部50としての機能を果たす。このときのシートパッド規制部50の機能は、図5を参照した以下の説明によってより明確になる。
【0037】
3.シートパッド規制部50の機能
図5に示されるように、例えば、後席シート1B(図1を参照)の乗員が乗降時などのタイミングで、後席シート1のシートバック20の上部に手指Hをつくことが想定される。このとき、後席シート1のシートパッド40のうち干渉部41の荷重入力領域42に乗員の手指Hから車両後方に向かう外部荷重Fが入力される。そして、シートパッド40の干渉部41は、外部荷重Fにしたがってカバー30に沿って車両後方である位置ズレ方向Dへ動こうとする。そこで、本形態では、このときの干渉部41の位置ズレ方向Dの動きを規制するためにシートパッド規制部50(カバー30の段差構造)を設けている。
【0038】
カバー30は、上下方向Xと交差するように延びる縦壁31を有しており、この縦壁31がカバー30の段差構造を構成している。このため、シートパッド40の干渉部41は、その車両後方へと動きに対してはカバー30の縦壁31に引っ掛かることによって位置ズレ方向Dの動きが規制される。特に、カバー30の縦壁31を荷重入力領域42の直下に設けることによって、乗員の手指Hから入力される外部荷重Fのうちの下向きの荷重をカバー30の縦壁31に対する干渉部41の引っ掛け力を強めるのに使用できる。すなわち、下向きの荷重をシートパッド40の荷重入力領域42をカバー30の縦壁31の前側領域に押し込む荷重に利用することができる。シートパッド40の荷重入力領域42がカバー30の縦壁31の前側領域により深く押し込まれるほど、縦壁31に対する干渉部41の引っ掛け力が強まるため、シートパッド40の干渉部41は位置ズレ方向Dに動きにくくなる。
【0039】
次に、上述の実施形態1の作用効果について説明する。
【0040】
実施形態1の後席シート1において、シートバック20の上部に車両後方への外部荷重Fが入力されたような場合、カバー30によって下方から支持されているシートパッド40の干渉部41がカバー30に沿って車両後方へ滑るように動くことが起こり得る。そこで、本形態のシートパッド規制部50は、シートバック20の上部への外部荷重Fの入力時にシートパッド40の干渉部41がカバー30に沿って車両後方へと動くのを規制する機能を果たす。
【0041】
シートパッド規制部50のこのような機能によれば、シートパッド40の干渉部41の車両後方への動きを規制することで、カバー30に対するシートパッド40の干渉部41の車両後方への位置ズレの発生を抑制することができる。その結果、乗員がシートバック20の上部に手をついて乗降するときの乗降動作を安定させることができる。
【0042】
以上のごとく、実施形態1によれば、車両Vの後席シートとして別の後席シート1Bの前方に配置される後席シート1において、シートバック20に内蔵されているシートパッド40の干渉部41が外部荷重Fによって車両後方へ位置ズレするのを抑制することが可能になる。
【0043】
実施形態1の後席シート1によれば、カバー30に設けられた縦壁31がシートパッド40の干渉部41に引っ掛かるため、シートパッド40の干渉部41の車両後方への動きをこの縦壁31によって規制することができる。この場合、縦壁31を利用してシートパッド規制部50を構築することができるため、シートパッド規制部50の構造を簡素化するのに有効である。
【0044】
実施形態1の後席シート1によれば、カバー30の一部である縦壁31と下壁32と上壁33とからなる段差構造を利用してシートパッド規制部50を構築することができる。このため、シートパッド規制部50のためにカバー30とは別の追加部品を要しないという利点がある。また、比較的に簡単な加工によってカバー30に段差構造を形成することができる。
【0045】
実施形態1の後席シート1によれば、乗員の手指Hによって荷重入力領域42に入力された外部荷重Fの一部を、シートパッド40の干渉部41を縦壁31の車両前方側に押し込む荷重に利用することができる。このため、シートパッド40の干渉部41の車両後方への動きを規制する効果を高めることができる。
【0046】
実施形態1の後席シート1によれば、シートクッション10に対するシートバック20の回動位置にかかわらず、カバー30にシートバック20の延在方向Cに沿って延びるように設けられた縦壁31がシートパッド40の干渉部41に引っ掛かるため、シートパッド40の干渉部41の車両後方への動きをこの縦壁31によって規制することができる。
【0047】
次に、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、上述の実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0048】
(実施形態2)
図6に示される実施形態2の後席シート101は、シートバック20に内蔵されたカバー130の構造が、実施形態1の後席シート1のカバー30のものと相違している。
【0049】
実施形態2のカバー130は、シートパッド40の干渉部41側に向けて突出した凸状部131を有する。この凸状部131は、各部位の板厚が概ね一定とされた板状部分である。この凸状部131は、実施形態1のカバー30の段差構造と同様に、シートパッド40の干渉部41がカバー30に沿って車両後方へと動くのを規制するシートパッド規制部50を構成している。特に、この凸状部131の縦壁132は、実施形態1のカバー30の縦壁31と同様の形状を有しており、縦壁31と同様の機能を果たすものである。
【0050】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0051】
実施形態2の後席シート101によれば、実施形態1のカバー30のような段差構造を採用する場合に比べて、シートパッド40の干渉部41の大きさを増やすことができる。
【0052】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0053】
(実施形態3)
図7に示される実施形態3の後席シート201は、シートバック20に内蔵されたカバー230の周辺構造が、実施形態1の後席シート1のカバー30のものと相違している。
【0054】
実施形態3のカバー230の上面には、カバー230とは別体のプレート部材231が接合されている。プレート部材231は、左右方向Zを幅方向としてシートパッド40の干渉部41側に向けて突出した縦壁232を有する。このプレート部材231の縦壁232は、カバー230自体の加工によって形成されたものではなく、後付けでカバー230に設けられたものである。プレート部材231は、実施形態1のカバー30の段差構造と同様に、シートパッド40の干渉部41がカバー30に沿って車両後方へと動くのを規制するシートパッド規制部50を構成している。特に、このプレート部材231の縦壁232は、実施形態1のカバー30の縦壁31と同様の形状を有しており、縦壁31と同様の機能を果たすものである。
【0055】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0056】
実施形態3の後席シート201によれば、カバー230自体を加工して縦壁232を形成するものではないため、カバー230の加工が複雑になるのを防止できる。また、実施形態1のカバー30のような段差構造を採用する場合に比べて、シートパッド40の干渉部41の大きさを増やすことができる。
【0057】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0058】
本発明は、上述の典型的な形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、上述の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0059】
上述の形態では、カバー30,130,230に設けられる縦壁31,132,232の数が1つである場合について例示したが、これに代えて、複数の縦壁31,132,232が位置ズレ方向Dに間隔を隔てて配置された構造を採用することもできる。
【0060】
上述の形態では、縦壁31,132,232をシートパッド40の干渉部41のうちの荷重入力領域42の直下に配置する場合について例示したが、縦壁31,132,232の配置位置はこれに限定されるものではなく、必要に応じた適宜の位置に縦壁31,132,232を配置することができる。
【符号の説明】
【0061】
1,101,201 後席シート(車両用シート)
1B 別の後席シート
2 シートベルト
10 シートクッション
20 シートバック
20a 肩部
30,130,230 カバー
31,132,232 縦壁(シートパッド規制部)
31a 下端部
31b 上端部
32 下壁
33 上壁
40 シートパッド
41 干渉部
42 荷重入力領域
50 シートパッド規制部
C シートバックの延在方向
F 外部荷重
H 乗員の手指
V 車両
X 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7