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特開2024-171308画像形成装置、情報処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171308
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】画像形成装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
B41J2/01 123
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024026908
(22)【出願日】2024-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2023088068
(32)【優先日】2023-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023099544
(32)【優先日】2023-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池島 悠太
(72)【発明者】
【氏名】成實 一樹
(72)【発明者】
【氏名】大西 徹
(72)【発明者】
【氏名】石川 智一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 文孝
(72)【発明者】
【氏名】赤石 貴恒
(72)【発明者】
【氏名】小橋 庸平
(72)【発明者】
【氏名】中塚 祐太朗
(72)【発明者】
【氏名】高田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】新庄 健司
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA06
2C056EB13
2C056EB29
2C056EB35
2C056EB45
2C056EB49
2C056EB58
2C056EC07
2C056EC72
2C056EC75
2C056FA10
2C056FA13
2C056HA42
(57)【要約】
【課題】インクに対する反応液の量を適切に設定し、画像ムラを抑制する。
【解決手段】 画像形成装置により印刷媒体上に反応液が吐出されるタイミングと、印刷媒体上に反応液に続いて2色以上のインクのそれぞれが吐出されるタイミングと、画像形成装置による2色以上のインクのそれぞれの吐出量と、に基づいて、反応液の吐出量を決定する。反応液及び2色以上のインクの吐出を制御する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置により印刷媒体上に反応液が吐出されるタイミングと、前記印刷媒体上に反応液に続いて2色以上のインクのそれぞれが吐出されるタイミングと、前記画像形成装置による前記2色以上のインクのそれぞれの吐出量と、に基づいて、反応液の吐出量を決定する決定手段と、
前記反応液及び前記2色以上のインクの吐出を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする、画像形成装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記印刷媒体上に前記反応液が吐出されるタイミングと、前記印刷媒体上に前記反応液に続いて前記2色以上のインクのそれぞれが吐出されるタイミングと、前記画像形成装置による前記2色以上のインクのそれぞれの吐出量と、に基づいて設定される重み付け係数に基づいて、前記反応液の吐出量を決定することを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記重み付け係数は、前記2色以上に含まれるインクそれぞれについて設定されることを特徴とする、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記2色以上のインクに含まれる第1のインクについて設定される第1の重み付け係数が、前記2色以上のインクに含まれる第2のインクについて設定される第2の重み付け係数以下に設定され、
前記反応液を吐出する記録素子から前記第1のインクを吐出する記録素子までの距離が、前記反応液を吐出する記録素子から前記第2のインクを吐出する記録素子までの距離未満であることを特徴とする、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記重み付け係数は、前記反応液を吐出する記録素子から前記インクを吐出する記録素子までの距離に基づいて設定されることを特徴とする、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記重み付け係数は、前記反応液及び前記インクを吐出する記録ヘッドと印刷媒体との相対的な移動速度とに基づいて設定されることを特徴とする、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記重み付け係数は、前記印刷媒体の種類にさらに基づいて設定されることを特徴とする、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記重み付け係数は、前記インクの種類にさらに基づいて設定されることを特徴とする、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記決定手段は、前記印刷媒体上に前記反応液が吐出されるタイミングと、前記印刷媒体上に前記反応液に続いて前記2色以上のインクのそれぞれが吐出されるタイミングと、前記画像形成装置による前記2色以上のインクのそれぞれの吐出量と、に対応する前記反応液の吐出量を格納するテーブルに基づいて、前記反応液の吐出量を決定することを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記テーブルは、前記印刷媒体上に前記反応液が吐出されるタイミングと、前記印刷媒体上に前記反応液に続いて前記2色以上のインクのそれぞれが吐出されるタイミングと、前記画像形成装置による前記2色以上のインクのそれぞれの吐出量と、に加えて前記反応液を吐出する記録素子から前記インクを吐出する記録素子までの距離に対応する前記反応液の吐出量を格納することを特徴とする、請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記テーブルは、前記印刷媒体上に前記反応液が吐出されるタイミングと、前記印刷媒体上に前記反応液に続いて前記2色以上のインクのそれぞれが吐出されるタイミングと、前記画像形成装置による前記2色以上のインクのそれぞれの吐出量と、に加えて前記印刷媒体の種類に対応する前記反応液の吐出量を格納することを特徴とする、請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記テーブルは、前記印刷媒体上に前記反応液が吐出されるタイミングと、前記印刷媒体上に前記反応液に続いて前記2色以上のインクのそれぞれが吐出されるタイミングと、前記画像形成装置による前記2色以上のインクのそれぞれの吐出量と、に加えて前記インクの種類に対応する前記反応液の吐出量を格納することを特徴とする、請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記制御手段は、前記印刷媒体の幅以上の幅を有するフルラインタイプの記録ヘッドによる、前記反応液及び前記2色以上のインクの吐出を制御することを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記印刷媒体の搬送に合わせて、前記印刷媒体の搬送方向と直交するようにシリアルタイプの記録ヘッドのノズル列を移動させながら、前記反応液及び前記2色以上のインクの吐出を制御することを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項15】
印刷媒体に対して、1パスで反応液を吐出し、反応液を吐出した領域の少なくとも一部に第1のインク、反応液を吐出した領域の少なくとも一部に第2のインクを順に吐出するよう、画像形成装置による前記反応液並びに前記第1のインク及び前記第2のインクの吐出を制御する制御手段と、
前記印刷媒体を、液体が浸透しやすい印刷媒体と液体が浸透しにくい印刷媒体と、に分類する分類手段と、
前記第1のインク又は前記第2のインクの吐出量に対応する前記反応液の吐出量を設定する設定手段と、を備え、
前記設定手段は、前記液体が浸透しやすい印刷媒体に対して、前記第1のインクの第1の吐出量に対応する前記反応液の第2の吐出量を、前記第2のインクの前記第1の吐出量に対応する前記反応液の第3の吐出量より少なくなるように設定する設定手段と、
を備える、画像形成装置。
【請求項16】
前記設定手段は、前記液体が浸透しやすい印刷媒体に対して、前記第1のインクを前記第1の吐出量で吐出し前記第2のインクを第4の吐出量で吐出する前記印刷媒体上の領域に吐出する前記反応液の第5の吐出量を、前記第1の吐出量と、前記第2のインクの第4の吐出量に対応する前記反応液の第6の吐出量と、の和よりも小さい吐出量に設定することを特徴とする、請求項15に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記設定手段は、前記液体が浸透しにくい印刷媒体に対して、前記第2の吐出量と前記第3の吐出量とが等しくなるよう前記反応液の吐出量を設定することを特徴とする、請求項15に記載の画像形成装置。
【請求項18】
前記設定手段は、前記液体が浸透しにくい印刷媒体に対して、前記第1のインクを前記第1の吐出量で吐出し前記第2のインクを第4の吐出量で吐出する前記印刷媒体上の領域に吐出する前記反応液の第5の吐出量を、前記第1の吐出量と、前記第2のインクの第4の吐出量に対応する前記反応液の第6の吐出量と、の和に設定することを特徴とする、請求項15に記載の画像形成装置。
【請求項19】
前記画像形成装置がインクジェット画像形成装置である、請求項15に記載の画像形成装置。
【請求項20】
画像形成装置により印刷媒体上に吐出される反応液と、前記印刷媒体上に前記反応液に続いて吐出されるインクと、について、前記インクの種類ごとに重み付け係数を設定する設定手段と、
前記重み付け係数と、前記画像形成装置による前記インクの吐出量と、に基づいて、前記インクの前に吐出される前記反応液の吐出量を決定する決定手段と、
を備える、画像形成装置。
【請求項21】
前記設定手段は、前記インクの凝集性に基づいて前記重み付け係数を設定することを特徴とする、請求項20に記載の画像形成装置。
【請求項22】
前記設定手段は、前記インクの吐出量に対する前記反応液の吐出量を規定するテーブルを少なくとも2つ用いて、前記反応液の吐出量を設定することを特徴とする、請求項20に記載の画像形成装置。
【請求項23】
前記設定手段は、前記重み付け係数を印刷媒体ごとに設定することを特徴とする、請求項20に記載の画像形成装置。
【請求項24】
前記インクは、前記反応液に続いて、凝集性が低い種類から順に吐出されることを特徴とする、請求項20に記載の画像形成装置。
【請求項25】
画像形成装置により印刷媒体上に反応液が吐出されるタイミングと、前記印刷媒体上に反応液に続いて2色以上のインクのそれぞれが吐出されるタイミングと、前記画像形成装置による前記2色以上のインクのそれぞれの吐出量と、に基づいて、反応液の吐出量を決定する決定工程と、
前記反応液及び前記2色以上のインクの吐出を制御する制御工程と、
を備えることを特徴とする、情報処理方法。
【請求項26】
印刷媒体に対して、1パスで反応液を吐出し、反応液を吐出した領域の少なくとも一部に第1のインク、反応液を吐出した領域の少なくとも一部に第2のインクを順に吐出するよう、画像形成装置による前記反応液並びに前記第1のインク及び前記第2のインクの吐出を制御する制御工程と、
前記印刷媒体を、液体が浸透しやすい印刷媒体と液体が浸透しにくい印刷媒体と、に分類する分類工程と、
前記第1のインク又は前記第2のインクの吐出量に対応する前記反応液の吐出量を設定する設定工程と、を備え、
前記設定工程は、前記液体が浸透しやすい印刷媒体に対して、前記第1のインクの第1の吐出量に対応する前記反応液の第2の吐出量を、前記第2のインクの前記第1の吐出量に対応する前記反応液の第3の吐出量より少なくなるように設定する、情報処理方法。
【請求項27】
画像形成装置により印刷媒体上に吐出される反応液と、前記印刷媒体上に前記反応液に続いて吐出されるインクと、について、前記インクの種類ごとに重み付け係数を設定する設定工程と、
前記重み付け係数と、前記画像形成装置による前記インクの吐出量と、に基づいて、前記インクの前に吐出される前記反応液の吐出量を決定する決定工程と、
を備える、情報処理方法。
【請求項28】
コンピュータを、請求項1乃至14の何れか一項に記載の画像形成装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項29】
コンピュータを、請求項15乃至19の何れか一項に記載の画像形成装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項30】
コンピュータを、請求項20乃至24の何れか一項に記載の画像形成装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷媒体に画像を形成する方法として、記録素子から色材を含む水性インクを飛ばすことで印刷媒体上に画像を形成する、インクジェット方式の画像形成装置が知られている。このような画像形成を行う際に、インクと合わせて反応液を飛ばし、印刷媒体上でそれらを触れさせて反応させることにより、印刷媒体に色材を定着させる方式が出てきている。
【0003】
このような手法においては、インクを効率よく定着させるためには、反応液を適切な量とする必要がある。特許文献1では、インクの種類に応じて反応液である処理液の吐出量を異ならせることにより、処理液の量を過不足の無いものとする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-321349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、反応液が印刷媒体に着弾した後、印刷媒体内部への吸収や蒸発により、印刷媒体表面の反応液量は時間とともに減少する。液体が浸透しやすい媒体に対して反応液を付与する場合、反応液を付与してからの経過時間により紙面上に残る反応液量は減少する。特に、反応液を付与した後に複数のインクを順に付与する場合においては、最初にインクを付与するタイミングと、次にインクを付与するタイミングで紙面上に残る反応液量は異なる。特許文献1では、この時間経過による反応液量減少が考慮されておらず、インクごとに過不足の無い反応液量を設定しても、インクの着弾時点で適正な反応液量とならない。
【0006】
また、液体浸透しにくい用紙を用いる場合であっても、反応液との凝集性がインク毎に異なる場合には、その凝集性に応じて、必要な反応液量は異なる。特許文献1では、色材濃度の違いや、色材の種類によって必要な反応液量が変わることに言及している。一方で、反応液とインクとの凝集性は色材以外の成分によっても変化するため、特許文献1に記載の技術では、色材と反応液との凝集性だけでは適切な反応液量を決定できない。
【0007】
上述した要因によりインクごとに適切な反応液量を規定できず、反応液の量の不足により、インクの定着が不足し、濃度低下、画像ムラ、又は画像流れといった、画像形成上の弊害が生じてしまうことがあるという課題があった。
【0008】
本発明は、インクに対する反応液の量を適切に設定し、画像ムラを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的を達成するために、例えば、一実施形態に係る画像形成装置は以下の構成を備える。すなわち、画像形成装置により印刷媒体上に反応液が吐出されるタイミングと、前記印刷媒体上に反応液に続いて2色以上のインクのそれぞれが吐出されるタイミングと、前記画像形成装置による前記2色以上のインクのそれぞれの吐出量と、に基づいて、反応液の吐出量を決定する決定手段と、前記反応液及び前記2色以上のインクの吐出を制御する制御手段と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
インクに対する反応液の量を適切に設定し、画像ムラを抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る画像形成装置の構成の一例を示す図。
図2】実施形態1に係る記録ヘッドの構成の一例を示す図。
図3】実施形態1に係るシステムの構成の一例を示すブロック図。
図4】実施形態1に係る画像処理の一例を示すフローチャート。
図5】実施形態1に係る画像形成処理の一例を示すフローチャート。
図6】反応液の吐出から各インクの吐出までの距離を説明するための図。
図7】反応液の吐出からの距離に応じた反応液の減少量を説明するための図。
図8】重み付け係数を用いて補填する反応液の説明を行うための図。
図9】実施形態2に係る反応液量決定のLUTを示す図。
図10】実施形態2に係る反応液量決定を説明する図。
図11】実施形態2に係る反応液量決定の他の例を説明する図。
図12】実施形態2に係る画像処理の他の例を示すフローチャート。
図13】実施形態2に係る画像処理の他の例を示すフローチャート。
図14】実施形態3に係る反応液量決定のLUTの他の例を示す図。
図15】実施形態3に係る反応液量決定のLUTの他の例を示す図。
図16】実施形態4に係る反応液及びカラーインクの反応凝集を説明するための図。
図17】実施形態4に係る反応液量決定処理を説明するための図。
図18】実施形態5に係る反応液量決定処理を説明するための図。
図19】実施形態6に係る画像形成装置の一例を示す模式図。
図20】実施形態6に係る反応液とインクとの吐出の時間差を説明するための図。
図21】実施形態6に係る反応液とインクとの吐出の時間差を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
図1に示す装置において、装置の上方を「上方」、右から左を「長手方向」、印刷媒体搬送方向に直交するシート手前から奥方向を「シート幅方向」と定義する。また、以下に説明する画像形成装置100は、ロール状に巻かれた連続シートを印刷媒体として使用する高速ラインプリンタであるものとして説明を行う。
【0014】
[実施形態1]
[画像形成装置]
図1は本実施形態に係る情報処理装置により制御される、画像の形成を行うインクジェット印刷装置(以下、画像形成装置と称する)の概略構成図である。本実施形態に係る画像形成装置100は、巻出ロール部2、印刷部101、スキャナ部4、巻取ロール部5、乾燥部6の各ユニットを備える。印刷媒体であるシートSは、図中の実線で示したシート搬送経路に沿って搬送され、各ユニットで処理がなされる。本実施形態に係る画像形成装置100は、シートの搬送方向(シートS)に沿って画像形成の工程を行う。
【0015】
巻出ロール部2は、ロール状に巻かれた連続シートを保持して供給するためのユニットである。巻出ロール部2は、巻出ロールを収納し、シートSを引き出して供給する構成となっている。なお、収納可能なロールは1つであることに限定はされず、2つ、又は3つ以上を収納し、択一的にシートSを引き出して供給する構成であってもよい。
【0016】
本実施形態に係る画像形成装置100はフルラインタイプの画像形成装置であり、印刷媒体の幅以上の幅を有する印刷部101により画像の形成を行う。本実施形態に係る画像形成処理では、印刷媒体上に反応液(P)を吐出した後に、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のカラーインクを順次吐出する処理が想定されるものとして以下の説明を行うが、これらとは異なる色のインクが用いられてもよいものとする。例えばインクとして、粒状性の向上を目的として淡シアンインク若しくは淡マゼンタインクが用いられてもよく、発色向上を目的としてレッドインク、グリーンインク、若しくはブルーインクが用いられてもよい。また、インクとしてクリア(透明)インクが用いられてもよい。
【0017】
印刷部101は、記録ヘッド102~106を備えており、それぞれの記録ヘッドが反応液(P)、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のカラーインクを順次吐出する。記録ヘッド102は反応液を吐出し、記録ヘッド103~106は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)のインクをそれぞれ吐出する。記録ヘッド102~106は、この順番で印刷媒体の搬送方向(y方向)に並列配置されている。記録ヘッド102~106により反応液及びカラーインクを吐出することで、印刷媒体に反応液及びインクを付与し、画像の形成を行うことができる。
【0018】
本実施形態に係る反応液とは、インクを高粘度化する成分を含有する液体である。ここでインクの高粘度化とは、インクを構成している色材又は樹脂等がインクを高粘度化する成分と接触することにより、化学反応若しくは物理吸着し、インク粘度の上昇が発現する状態である。
【0019】
シートS上へのインク付与前に反応液を付与しておくと、シートSに達したインクを定着させることができる。これにより、隣接するインク同士が混ざり合うビーディングを抑制することができる。
【0020】
本実施形態に係る画像形成処理においては、印刷媒体は巻出ロール部2、巻取ロール部5の回転に伴って図1における長手方向に所定の速度で搬送され、この搬送の最中に印刷部101による画像形成処理が行われる。印刷部101による画像形成処理が行われる位置の印刷媒体は、画像形成中の印刷部101からの距離及び平滑性が維持されている。
【0021】
本実施形態に係る画像形成処理においては、記録ヘッド102により印刷媒体へ反応液が形成された後、記録ヘッド103~106により、反応液の形成領域と一部が重なるように印刷媒体にカラーインクが形成される。本実施形態に係る反応液は、カラーインクと印刷媒体上で接触することでカラーインクの色材を凝集させ、その場に留めることができるようになる。例えば、液体を内部に吸収する吸収型の印刷媒体に対して画像形成を行う場合には、反応液を用いることにより、色材が印刷媒体のより上層に留まるようになる。また液体を表層に押し留める非吸収型の印刷媒体に対して画像形成を行う場合には、反応液を用いることにより、色材が印刷媒体表面の反応が生じた箇所で留まるようになる。このように、反応液を用いて画像形成処理を行うことにより、形成画像の濃度を増すことができるほか、画像ムラ又は画像流れなどの画像形成における弊害の発生を抑制することができる。
【0022】
[印刷部]
図2は、本実施形態に係る画像形成装置100において用いられる印刷部101の概略構成図である。各インク色に対応する記録ヘッド102~106の各々においては、複数の記録素子列202が、オーバーラップ領域Dを設けながらx方向に連続するようにy方向に交互に配置されている。記録素子列202は、一定のピッチで複数個が配列される記録素子201を備える。一定の速度でy方向に搬送される印刷媒体に対し、個々の記録素子201が記録データに従って一定の周波数でインクを吐出することにより、印刷媒体には記録素子201の配列ピッチに応じた解像度の画像が形成される。ここで、「記録データ」とは、画像形成において用いる画像データを含む、画像形成装置が行う各種処理を示すデータであるものとする。
【0023】
[反応液の調製]
本実施形態で使用する反応液は、インクに含まれる顔料と反応し、該顔料を凝集又はゲル化させる反応性成分を含有する。この反応性成分とは、具体的には、イオン性基の作用によって水性媒体中に安定に分散されている顔料を有するインク又は印刷媒体上などで混合された場合に、該インクの分散安定性を破壊することができる成分である。詳細には、本実施形態では、反応液として硫酸マグネシウムを用いるものとするが、必ずしもこれに限定されるわけではない。本実施形態においては、例えば、水溶性であれば種々の有機酸、又は多価金属塩・カチオン性樹脂などのカチオン性成分が、反応液の反応性成分として用いられてもよい。
【0024】
多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+、及びZn2+などの2価の金属イオン、又はFe3+、Cr3+、Y3+、及びAl3+などの3価の金属イオンを挙げることができる。反応液に多価金属イオンを含有させるためには、多価金属イオンとアニオンとが結合して構成される多価金属塩(水和物であってもよい)を用いることができる。アニオンとしては、例えば、Cl、Br、I、ClO、ClO 、ClO 、ClO 、NO 、NO 、SO 2-、CO 2-、HCO 、PO 3-、HPO 2-、及びHPO などの無機アニオン、又はHCOO、(COO、COOH(COO)、CHCOO、C(COO、CCOO、C(COO、及びCHSO などの有機アニオンを挙げることができる。反応剤として多価金属イオンを用いる場合、反応液中の多価金属塩換算の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、1.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましい。
【0025】
有機酸を含有する反応液は、酸性領域(pH7.0未満、好ましくはpH2.0~5.0)に緩衝能を有することによって、インク中に存在する成分のアニオン性基を効率よく酸型にして凝集させるものである。有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピコリン酸、ニコチン酸、チオフェンカルボン酸、レブリン酸、クマリン酸などのモノカルボン酸及びその塩、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、セバシン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸などのジカルボン酸、及びその塩や水素塩、クエン酸、トリメリット酸などのトリカルボン酸及びその塩や水素塩、又はピロメリット酸などのテトラカルボン酸及びその塩若しくは水素塩などを挙げることができる。反応液中の有機酸の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、1.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
【0026】
カチオン性樹脂としては、例えば、1~3級アミンの構造を有する樹脂、又は4級アンモニウム塩の構造を有する樹脂などを挙げることができる。具体的には、カチオン性樹脂として、ビニルアミン、アリルアミン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、エチレンイミン、又はグアニジンなどの構造を有する樹脂を挙げることができる。反応液中での溶解性を高めるために、カチオン性樹脂と酸性化合物とが併用されてもよく、カチオン性樹脂の4級化処理が施されてもよい。反応剤としてカチオン性樹脂を用いる場合、反応液中のカチオン性樹脂の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
【0027】
[インクの作製]
本実施形態では、反応液として硫酸マグネシウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)を使用し、下記の成分を混合して反応液を作製した。
・硫酸マグネシウム7水和物:15.0部
・1,2-プロパンジオール:15.0部
・アセチレノールE100:0.3部
・イオン交換水:残部
【0028】
[インクの組成]
次に、本実施形態におけるインク処方について、詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施形態によって何ら限定されるものではない。なお、文中「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0029】
[樹脂微粒子分散液の作製]
実施形態1に係るインクには、印刷媒体と色材とを密着させ記録画像の耐擦過性(定着性)を向上させるための水溶性樹脂微粒子を含有させている。樹脂微粒子は熱で溶融し、ヒータにより樹脂微粒子の造膜とインクに含有する溶剤の乾燥とが行われる。本発明において「樹脂微粒子」とは、水中に分散している状態で存在するポリマー微粒子を意味する。本実施形態においては、樹脂微粒子として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル若しくは(メタ)アクリル酸アルキルアミドなどのモノマーを乳化重合するなどして合成したアクリル樹脂微粒子、(メタ)アクリル酸アルキルエステル若しくは(メタ)アクリル酸アルキルアミドなどとスチレンのモノマーとを乳化重合するなどして合成したスチレン-アクリル樹脂微粒子、ポリエチレン樹脂微粒子、ポリプロピレン樹脂微粒子、ポリウレタン樹脂微粒子、又はスチレン-ブタジエン樹脂微粒子などを挙げることができる。また、樹脂微粒子を構成するコア部とシェル部とでポリマーの組成が異なるコアシェル型樹脂微粒子、又は粒径を制御するために予め合成したアクリル系微粒子をシード粒子とし、その周辺で乳化重合することにより得られる樹脂微粒子が用いられてもよい。さらに、アクリル樹脂微粒子とウレタン樹脂微粒子など異なる樹脂微粒子とを化学的に結合させたハイブリッド型樹脂微粒子が用いられてもよい。
【0030】
また、「水中に分散している状態で存在するポリマー微粒子」とは、解離性基を有するモノマーを単独重合又は複数種を共重合させて得られる樹脂微粒子の形態、いわゆる自己分散型樹脂微粒子分散体であってもよい。ここで例えば、解離性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、又はリン酸基などが挙げられ、この解離性基を有するモノマーとしてはアクリル酸又はメタクリル酸などが挙げられる。さらに、乳化剤により樹脂微粒子を分散させた、いわゆる乳化分散型樹脂微粒子分散体がポリマー微粒子として用いられてもよい。乳化剤としては、低分子量、高分子量に関わらずアニオン性の電荷を有する材料を用いることができる。
【0031】
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水74.0部と過硫酸カリウム0.2部とを入れて混合した。また、エチルメタクリレート24.0部、メタクリル酸1.5部、及び反応性界面活性剤(商品名「アクアロンKH-05」、第一工業製薬製)0.3部を混合して乳化物を調製した。窒素雰囲気下、調製した乳化物を上記の四つ口フラスコ内に1時間かけて滴下し、80℃で撹拌しながら2時間重合反応を行った。25℃まで冷却した後、イオン交換水、及び樹脂粒子の酸価と等モルの水酸化カリウムを含む水溶液を添加して、樹脂粒子(固形分)の含有量が25.0%である樹脂粒子の水分散液を調製した。以下、各インクの調整方法について説明する。
【0032】
[顔料分散液の調製]
(顔料分散液1)
酸価150mgKOH/gと、重量平均分子量8,000のスチレン-アクリル酸エチル-アクリル酸共重合体(樹脂1)とを用意した。20.0部の樹脂1を、その酸価と等モルの水酸化カリウムで中和した後、適量の純水を加え、樹脂(固形分)の含有量が20.0%である樹脂1の水溶液を調製した。顔料(カーボンブラック)10.0部、樹脂1の水溶液15.0部、及び純水75.0部を混合して混合物を得た。得られた混合物及び0.3mm径のジルコニアビーズ200部をバッチ式の縦型サンドミル(アイメックス製)に入れ、水冷しながら5時間分散させた。遠心分離して粗大粒子を除去した後、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過して、顔料の含有量が10.0%、樹脂分散剤(樹脂1)の含有量が3.0%の顔料分散液1を調製した。
【0033】
(顔料分散液2)
顔料をC.I.ピグメントブルー15:3に変更したこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の手順で、顔料の含有量が10.0%、樹脂分散剤(樹脂1)の含有量が3.0%の顔料分散液2を調製した。
【0034】
(顔料分散液3)
顔料をC.I.ピグメントレッド122に変更したこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の手順で、顔料の含有量が10.0%、樹脂分散剤(樹脂1)の含有量が3.0%の顔料分散液3を調製した。
【0035】
(顔料分散液4)
顔料をC.I.ピグメントイエロー74に変更したこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の手順で、顔料の含有量が10.0%、樹脂分散剤(樹脂1)の含有量が3.0%の顔料分散液4を調製した。
【0036】
[インクの調製]
以下の表1に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過を行い、各インクを調製した。「アセチレノールE100」は川研ファインケミカル製の界面活性剤の商品名である。
【表1】
【0037】
[システム構成]
図3は、本実施形態に係る画像形成装置100を含むシステムの全体構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、本実施形態に係るシステムは、図1に示した画像形成装置100と、そのホスト装置としての情報処理装置(PC)300とにより構成される。
【0038】
情報処理装置300は、CPU(Central Processing Unit)301、RAM(Read Only Memory)302、HDD(Hard Disk Drive)303、通信I/F304、入力デバイスI/F305、及び表示デバイスI/F306を備えている。情報処理装置300の有する各機能部は、内部バスにより互いに通信可能に接続される。CPU301は、HDD303又はRAM302に保持されているプログラム及び各種データに従った処理を実行する。RAM302は、揮発性のストレージであり、プログラム及びデータを一時的に保持する。HDD303は、不揮発性のストレージであり、プログラム及びデータを格納する。
【0039】
通信I/F304は外部装置との通信を司るインターフェースであり、ここでは画像形成装置100との間におけるデータの送受信を制御する。ここでのデータ送受信の接続方式としては、USB、IEEE1394、若しくはLAN(Local Area Network)等の有線接続、又はBluetooth(登録商標)、若しくはWiFi(登録商標)等の無線接続を用いることができる。入力デバイスI/F305は、キーボード又はマウス等のHID(Human Interface Device)を制御するインターフェースであり、ユーザによる入力デバイスから入力を受け付ける。表示デバイスI/F306は、ディスプレイ(不図示)などの表示デバイスにおける表示を制御する。
【0040】
ここでは、情報処理装置300は、画像形成装置100と別体のPCであるものとして以下の説明を行うが、同様の処理が行えるのであればとくにこれらの実装態様は限定されない。例えば情報処理装置300は、画像形成装置100に内蔵される装置としてもよく、サーバとしてもよい。また例えば、情報処理装置300は、スマートフォン、タブレット端末又は撮像装置などの携帯端末であってもよい。
【0041】
画像形成装置100は、CPU311、RAM312、ROM313、通信I/F314、ヘッドコントローラ315、及び画像処理アクセラレータ316を備える。さらに、画像形成装置100の有する各機能部は、内部バスにより互いに通信可能に接続される。CPU311は、ROM313又はRAM312に保持されているプログラム及び各種データに従い、後述する各実施形態に係る処理を実行する。RAM312は、揮発性のストレージであり、プログラム及びデータを一時的に保持する。ROM313は不揮発性のストレージであり、後述する処理で使用されるテーブルデータ及びプログラムなどの各種データを格納する。
【0042】
通信I/F314は、外部装置との通信を司るインターフェースであり、ここでは情報処理装置300との間におけるデータの送受信を制御する。ヘッドコントローラ315は、図1に示した印刷部101の制御を、形成データに基づいて行う。具体的には、ヘッドコントローラ315は、RAM312の所定のアドレスから制御パラメータ及び形成データを読み込む構成とすることができる。
【0043】
CPU311が制御パラメータ及び形成データをRAM312の所定のアドレスに書き込むと、ヘッドコントローラ315により画像形成処理が開始され、印刷部101によりインクの吐出動作が行われる。画像処理アクセラレータ316(Image Processing Accelerator)(以下、アクセラレータ316)は、ハードウェアによって構成され、CPU311よりも高速に画像処理を実行することができる。具体的には、アクセラレータ316は、RAM312の所定のアドレスから画像処理に必要なパラメータ及びデータを読み込む構成としてもよい。ここでは、CPU311が当該パラメータ及びデータをRAM312の所定のアドレスに書き込むと、アクセラレータ316が起動され、所定の画像処理が行われる。なお、アクセラレータ316は必ずしも必要な要素でなく、画像形成装置の仕様などに応じて、CPU311による処理のみで以下に説明する画像処理を実行してもよい。
【0044】
[画像処理]
以下、画像形成装置100が行う画像処理について説明を行う。この画像処理は、例えば画像形成装置100のCPU311がROM313等に含まれるプログラム及びデータを読み出して実行することにより実現される。なお、本処理はアクセラレータ316にて一部又は全部が実行されるような構成であってもよい。また、本処理の一部又は全てが、情報処理装置300のCPU301がHDD303等に含まれるプログラム及びデータを読み出すことにより実行されてもよい。
【0045】
図4は、本実施形態に係る画像形成装置100が行う画像処理の一例を示すフローチャートである。以下において、単に「画像処理」と称する場合この画像処理を指すものとする。
【0046】
S401で画像形成装置100は、入力画像データを、画像形成装置100の色再現域に対応した画像データに変換する。ここで、入力される画像データは、本実施形態では、モニタの表現色であるsRGB等の色空間座標中の色座標(R,G,B)を示すデータであるものとする。本実施形態に係る画像形成装置100は、RGB(各々の値は8ビットで表現される)の入力画像データを、マトリクス演算処理又は三次元ルックアップテーブル(3DLUT)を用いた処理等の既知の手法によって、画像形成装置100の色再現域の画像データ(R´,G´,B´)に変換する。本実施形態では、3DLUTが用いられ、これに補間演算を併用することにより変換処理が行われる。また入力画像の形式は上述したものに限定されず、例えばCMYKの入力画像データを用いることもでき、その場合には四次元LUTを用いた処理などにより画像データの変換を行うことができる。
【0047】
S402で画像形成装置100は、S401によって処理されたRGBの画像データを画像形成装置100で用いるカラーインクの色信号データによる画像データに変換する。本実施形態ではブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)のインクが用いられるため、RGB信号の画像データは、K、C、M、及びYの各8ビットの色信号からなる画像データに変換される。S402における色変換処理は、S401におけるものと同様に、3DLUTに補間演算を併用して行うことが可能である。なお、他の変換手法として、S401と同様にマトリクス演算処理等の手法を用いてもよい。また、インクの数はK、C、M、及びYの4色を例に挙げたが、その他のインクを追加してもよく、一部インクが使用されなくてもよい。
【0048】
S403で画像形成装置100は、CMYKの信号画像データに対し、画像形成時のドット数に対応するように補正されたインク量信号値へと変換を行う。インク量信号値への変換方法については1次元LUTを用いてγ調整する方法など、任意の方法を採用することができる。ここでは、インク量信号値は、画像形成におけるインクの吐出量を示す情報であるものとする。
【0049】
S404で画像形成装置100は、S403によって処理された各種類(インク色)のカラーインクのインク量信号値と、後述する反応液減少量とに基づいて、反応液の吐出量を示す反応液量信号値を決定する。S404の詳細については後述する。
【0050】
S405で画像形成装置100は、反応液のインク量信号値とカラーインクのインク量信号値であるK、C、M、及びYに対し、量子化処理を行い図4の処理を終了する。量子化処理には2値化、又は3値化~16値化等、様々な量子化レベルが存在する。一般的に2値化処理時には、反応液のインク量信号値とカラーインクのインク量信号値K、C、M、及びYが、P、K、C、M、及びYの各1bitのインクドット有り又は無しデータに変換される。量子化処理方法としては、既知のディザマトリクス法又は誤差拡散法などの疑似中間調処理を用いてもよい。
【0051】
[画像形成処理]
画像形成装置100は、S405で量子化処理したデータをヘッドコントローラ315に転送し、反応液と各色のカラーインクを記録素子201から吐出して印刷媒体に画像形成を行う。画像形成装置100は、画像形成処理の完了後も一定時間はRAM312に量子化処理したデータを記憶しておくことができる。
【0052】
[反応液量の決定]
以下、本実施形態に係る画像形成装置100が行う、画像形成に用いる反応液の吐出量の決定方法について述べる。反応液の吐出量の決定処理は、図4における反応液量算出部S404にて行われる。なお、以下においてはカラーインクに対して使用される反応液量は、インクの種類に関わらずカラーインクの量と等量であるものとして説明を行う。
【0053】
本実施形態に係る画像形成装置100は、反応液が吐出されて以降の印刷媒体上の反応液の減少量と、インクの吐出量と、に基づいて、インクの前に吐出される反応液の吐出量(反応液量)を決定する。例えば、画像形成装置100は、当該減少量に基づいてインクの種類に応じた重み付け係数を設定し、重み付け係数とインクの吐出量とに基づいて、反応液量を決定することができる。本実施形態においては、インク一色あたりに用いられる反応液量Pr(COL)は、例えば下記の式(1)により算出される。
Pr(COL) = V(COL) × W(COL) (1)
【0054】
ここで、V(COL)はインク量であり、W(COL)は重み付け係数である。式(1)において、COLはインクの種類(総数n)ごとに個別に用意される値であることを示し、ここではCOL~COLがそれぞれK、M、C、Yに対応する。例えば、Kインクに対応する反応液量をPr(K)(又はPr(COL))と記載することが可能である。以下、式(1)を用いた反応液量の算出手順について、処理フローと共に説明する。
【0055】
図5は、本実施形態に係る画像形成装置100が行う、反応液量の決定処理の一例を示すフローチャートである。S501で画像形成装置100は、式(1)で用いるインクの種類を特定し、特定した種類それぞれのインクの量V(COL)を取得する。ここでは画像形成装置100は、例えば、S403にて算出したK、C、M、及びYのインク量信号値を、それぞれカラーインク量V(K)、V(C)、V(M)、及びV(Y)として取得することができる。
【0056】
S502で画像形成装置100は、インクの種類に応じた(各インクに対応する)重み付け係数の設定を行う。反応液は印刷媒体上に着弾した後、時間の経過と共に印刷媒体内部への吸収又は蒸発により、印刷媒体の表層に残る反応液量が減少していく。そのため反応液の吐出から各インクへの吐出までの時間差が大きいほど、インク着弾時に印刷媒体表層に残る反応液量は減少する。インクの印刷媒体着弾時に表層に残る反応液量が不足していた場合、インクが印刷媒体上に十分に定着できず、濃度低下又は画像ムラが生じたり、搬送により発生する風又は重力などの影響で画像流れが生じたりすることが考えられる。そのような観点から、本実施形態に係る画像形成装置100は、重み付け係数を、インクの種類と、印刷媒体上に反応液が吐出されてからインクが吐出されるまでの印刷媒体上の反応液の減少量とに応じて設定する。すなわち、印刷媒体上の反応液の減少を補填するような重み付け係数の設定を行うことにより、インクの定着不良を抑制する。
【0057】
なお、反応液及び各カラーインクの吐出から印刷媒体表面への着弾までの間に生じる時間差については、十分に小さいものであるため無視するものとし、本実施形態では吐出時を基準として説明する。しかしながら、この着弾までの時間差を考慮して反応液の吐出から各インクへの吐出までの時間差を算出してもよく、また、吐出時ではなく印刷媒体への着弾時を基準として各種計算を行ってもよい。
【0058】
本実施形態に係る重み付け係数の算出に用いる、反応液が吐出されてからインクが吐出されるまでの印刷媒体上の反応液の減少量ΔPr(COL)(以下、これを単に「反応液減少量」と呼ぶ)は、例えば以下の式(2)により算出される。
ΔPr(COL) = Pv × t(COL) (2)
【0059】
ここで、Pvは時間当たりの反応液の減少速度であり、t(COL)は反応液とカラーインクとの吐出時間の差である。反応液の減少速度Pvは一定量の反応液を印刷媒体上に吐出して、印刷媒体内部に吸収及び蒸発されるまでに要する時間に基づいて予め算出することができる。反応液の印刷媒体内部への吸収及び蒸発に要する時間を測る方法としては、例えばデジタル顕微鏡を用いて印刷媒体を観察し、反応液吐出直後からの単位面積における輝度変動を観測して、当該輝度変動が生じなくなるまでの時間を測るなどの方法が考えられる。吸収及び蒸発に要する時間は印刷媒体の材質又は構造によって変動するため、印刷媒体の種類によって反応液の減少速度の値も変わり得る。すなわち、本実施形態においては、反応液減少量が、画像形成を行う印刷媒体の種類にさらに基づいて取得されてもよい。
【0060】
なお、本実施形態においては、反応液減少量ΔPr(COL)を、式(2)を用いて時間差t(COL)に比例するものとして算出している。しかしながら、例えば時間差t(COL)が大きくなるについて反応液減少量が少なくなるような場合など、ΔPrが経過時間に比例しないような場合には、異なる手法によりΔPrが取得されてもよい。例えば、式(2)とは異なる式によりΔPrが算出されてもよく、t(COL)に対応するΔPrを記録したテーブルが予め格納され、そのようなテーブルを参照することによりΔPrが取得されてもよい。
【0061】
反応液とインクとの吐出時間の差を示すt(COL)は、印刷媒体上の対象の記録位置が、反応液の吐出位置を基準として、インクの吐出位置まで相対的に移動する時間に相当する。フルラインタイプの画像形成装置100においては、このt(COL)を下記の式(3)により求めることができる。
t(COL) = l(COL) ÷ Cv (3)
【0062】
ここで、l(COL)は反応液の吐出位置とインクの吐出位置との距離であり、Cvは印刷部(記録素子)と印刷媒体との相対的な移動速度(相対移動速度)である。図6は、本実施形態に係る印刷部101における反応液吐出から各インク吐出までの距離l(COL)の例を説明するための図である。本実施形態に係る画像形成装置100はフルラインタイプであり、反応液を吐出する記録素子から各インクを吐出する記録素子までの距離が、反応液の吐出位置と各インクの吐出位置の間の距離と定義される。図6のL1~L4は、反応液を吐出する記録ヘッド102から、各インクの記録ヘッド103~106までの距離を示す。例えば、反応液の記録ヘッド102からKインクの記録ヘッド103までの距離はL1で表されるため、l(K)=L1となる。
【0063】
本実施形態に係る相対移動速度Cvは、印刷媒体の搬送により、画像形成を行う位置が反応液を吐出する記録ヘッドの位置から各インクを吐出する記録ヘッドの位置まで相対的に移動する速度を示すものとする。相対移動速度Cvは、画像形成装置100の印刷媒体搬送時における速度設定に応じて設定可能である。この相対移動速度Cvは、印刷媒体の搬送に加えて印刷部101の位置の移動も行われる場合には、印刷部101の移動も考慮して設定されてもよい。
【0064】
式(3)に示す通り、フルラインタイプの画像形成装置100では時間差t(COL)は距離l(COL)に比例して変動するため、l(COL)が大きいほどt(COL)も大きくなる。また式(2)においては時間差t(COL)が大きいほど反応液減少量ΔPr(COL)も大きくなるため、言い換えれば、距離l(COL)が大きいほど各インク吐出までの反応液の減少量も大きくなると言える。
【0065】
なお、本実施形態においては式(2)に基づいて反応液減少量ΔPrを決定するものとして説明を行ったが、上述のように異なる手法により反応液減少量が取得されてもよい。例えば、予め計算された反応液減少量を出力とするテーブルが格納され、印刷媒体の相対移動速度及び反応液とインクとの吐出時間差を入力として反応液減少量が決定されてもよい。
【0066】
以上、各インクについての反応液減少量を取得する処理について説明を行った。次いで、取得した反応液減少量に基づいて重み付け係数を設定する処理について説明を行う。本実施形態に係る画像形成装置100は、反応液減少量を補填するために、上述のようにインクの種類と反応液減少量とに基づいて重み付け係数を設定する。ここでは、各インクに対応する重み付け係数W(COL)は、例えば以下の式(4)に従い、インクごとに、反応液吐出量PV(基準反応液量)から反応液減少量ΔPr(COL)を減算した値を用いて算出することができる。
W(COL) = PV / ( PV - ΔPr(COL) ) (4)
【0067】
式(4)の基準反応液量PVは、例えば想定されるインクの最大量吐出量に必要な反応液量などにより決めてもよく、所望の条件又は環境などに応じて任意に設定が可能である。またインクの種類によって必要な反応液量が異なるような場合には、インクごとに基準反応液量PVを異ならせてもよい。
【0068】
S503で画像形成装置100は、実際に吐出する反応液量を決定する。ここでは、式(4)を用いて算出した重み付け係数を用いて各インクについての反応液量を算出し、それらの合計を実際に吐出する反応液量として決定することができる。本実施形態においては、画像形成装置100は、S502で算出されたインクごとの重み付け係数W(COL)を合算することにより、反応液量を決定する。例えば、反応液量VPは、以下の式(5)により算出することができる。
【数1】
【0069】
ここで、CNはインクの種類の数の総数であり、ここではCMYKが用いられているため4となる。
【0070】
このような処理によれば、反応液減少量を考慮して反応液の吐出量を決定することにより、減少量を補填した適切な反応液量による画像形成を行うことができるようになる。
【0071】
なお、本実施形態においてはインクの種類に応じて使用される反応液量は変化しないものとして説明を行ったが、インクの種類により反応液量が異なっていてもよい。すなわち、基準反応液量PVがインクの種類に応じて異なっていてもよい。
【0072】
続いて、本実施形態に係る画像形成装置100が行う処理について、具体的な例を用いた説明を行う。この例では、式(3)において用いられる相対移動速度Cvは100m/sとし、測定により得られる反応液の減少速度Pvは1pl/sであるものとする。インクそれぞれの反応液減少量ΔPr(COL)は式(2)の通り、反応液減少速度Pvと、反応液とインクとの吐出時間の差t(COL)より算出される。
【0073】
図7は、反応液Pを吐出する記録ヘッド102からの距離に応じて減少する、各色の記録ヘッド103~106での画像形成時における反応液量を示している。反応液量701は全体の反応液量を示している。反応液量702~705は、それぞれK、C、M、Yの記録素子による画像形成時の反応液量を示している。反応液量702~705においては、破線部が画像形成時の反応液の減少量に対応し、実線部が減少後の反応液量に対応している。
【0074】
図7に示されるように、反応液の記録ヘッド102より吐出される反応液量701は、カラーインクの記録ヘッド103から106にかけて搬送され、時間差が大きくなるごとに、インク吐出時の印刷媒体上の反応量が減少していく。図7の表(a)では反応液吐出位置とインク吐出位置の距離l(COL)の具体的な数値の例が示されており、またその値及び相対移動速度Cvより求められる、反応液とカラーインクとの吐出時間の差t(COL)の計算結果が示されている。ここでは、Y、M、C、Kの各色について、距離l(COL)はそれぞれ400mm、300mm、200mm、100mmとなり、t(COL)は式(3)により4s、3s、2s、1sと求められる。図7の表(a)に示される通り、本実施形態においては反応液吐出位置とカラーインク吐出位置との距離l(COL)が大きいほど、反応液とカラーインクとの吐出時間の差t(COL)の値も大きくなる。
【0075】
また図7の表(b)は、図7の表(a)に示した反応液とカラーインクとの吐出時間の差t(COL)、及び反応液の減少速度Pvに基づいて算出される、反応液減少量ΔPr(COL)の計算結果を示している。ここではY、M、C、Kの各色について、反応液減少量ΔPr(COL)はそれぞれ式(2)より4pl、3pl、2pl、1plと求められる。図7の表(b)に示される通り、反応液とカラーインクとの吐出時間の差t(COL)が大きいほど、反応液減少量ΔPr(COL)は大きくなる。
【0076】
次いで、重み付け係数の算出処理が行われる。この例では、基準反応液量PVが10plであるものとして説明を行う。図8は、重み付け係数を用いて補填を行う反応液量を説明するための図である。図8に示す反応液量801~804は、それぞれK、C、M、Yの記録素子による、重み付け係数を用いて補填された画像形成時の反応液量を示している。本実施形態においては、図8に示されるように、反応液量が減少したとしても、反応液量が十分に保たれるように重み付け係数を設定する。
【0077】
図8の表は基準反応液量PVが10plである場合を例として、反応液減少量ΔPr(COL)を基に算出されたカラーインクごとの重み付け係数Wを示す。また反応液吐出から各カラーインクの吐出までの間に生じる時間差t(COL)と重み付け係数W(COL)との対応についても示している。ここではY、M、C、Kの重み付け係数(COL)はそれぞれ式(4)より1.67、1.43、1.25、1.11と求められる。この例においては、図8に示される通り、反応液とカラーインクの吐出時間差t(COL)が大きく、反応液減少量ΔPrが大きいほど、重み付け係数Wの値が大きくなるようになり、反応液量が多くなるように調整される。
【0078】
次いで画像形成装置100は、カラーインクそれぞれの量V(COL)と、各カラーインクに対応する重み付け係数(COLとに基づいて、反応液量VPを決定する。例えば、Y、M、C、Kのカラーインク量がそれぞれ、8pl、4pl、4pl、3plである場合、反応液量VPは下記の式の通りに求められる。
【数2】
【0079】
カラーインク量の合計量は24plであるが、上記の計算により算出されるように、各カラーインクの重み付け係数W(COL)が考慮されて、反応液量が多くなるように調整される。
【0080】
以上説明したように、図8の例においては重み付けにより印刷媒体上の反応液の減少量に応じて反応液量が変動され、さらに反応液の吐出からの時間差が大きく、反応液減少量が大きいカラーインクほど、生成される反応液量が多くなる。このような処理によれば、時間経過に応じて反応液量が減少する場合であっても、インクの着弾時点で反応液量が不足することを抑制することができ、適切な反応が保持されるようになる。
【0081】
なお、重み付け係数は、画像処理中に必要な入力値を与えて随時計算してもよく、予め計算された値を記録モードごとに所定のアドレスに格納しておき、反応液量の算出時に読み込んで使われるようにしてもよい。
【0082】
なお、本実施形態においては、式(4)に従い反応液減少量に基づいて重み付け係数W(COL)が算出されることにより、反応液減少量に対する反応液量の補填が行われるものとして説明を行った。しかしながら、反応液減少量に応じて反応液量の補填ができるのであれば特にこのような処理を行う必要があるわけではなく、例えば反応液減少量に応じた反応液量の加算が行われてもよい。例えば、各色について算出された反応液の減少量ΔPr(COL)を合算し、基準反応液量PVに加算したものが、反応液の吐出量として決定されてもよい。
【0083】
また例えば、反応液の吐出量は、反応液減少量に応じて線形的に変化するものとして説明を行ったが、特にこのように限定するわけではない。例えば、反応液減少量が第1の閾値以上第2の閾値未満である場合には反応液の吐出量を第1の吐出量とし、反応液減少量が第2の閾値以上第3の閾値未満である場合には反応液の吐出量を第2の吐出量とするなど、段階的な吐出量の設定が行われてもよい。ここでの閾値はユーザが任意に設定可能である。
【0084】
[実施形態2]
実施形態1に係る画像形成装置100は、インクの種類と反応液減少量とに基づいて、インク毎の反応液の吐出量(反応液量)を算出している。より具体的には、実施形態1に係る画像形成装置100は、反応液減少量に基づいて重み付け係数を設定することで、インク量毎の反応液量を変えることを実現している。一方で、本実施形態に係る画像形成装置100は、インク量の入力に基づいて、重み付け係数を用いて(ここでは、反応液量を出力とするLUTに基づいて)反応液量を決定する。カラーインクに対して使用される反応液量は、インクの種類に関わらずカラーインクの量と等量であるものとして以下の説明を行う。
【0085】
[反応液量算出処理]
本実施形態に係る画像形成装置100は、S404における処理が異なることを除き、実施形態1の図4に示したフローと同様の処理を行うことが可能である。S404で本実施形態に係るCPU301は、ルックアップテーブル(LUT)を用いて、ある一定領域毎において付与される各色のインク量(K、C、M、Y)を基に反応液量(P)を決定する。以下、本実施形態に係る画像形成装置100によって実行されるS404について説明を行う。
【0086】
反応液量が過少であると、十分にインクが定着されず、隣接ドット同士が表面張力により引き合い、不規則な隙間によるムラが発生するビーディング現象が生じる可能性がある。一方で反応液量が過剰であると、インク膜のひび割れ、又は反応液膜へのインクの埋没などにより画像ムラが発生することがある。そのため、反応液は適正量であることが望ましい。
【0087】
ここでは、液体が浸透しやすいシートに対し、「反応液」、「(搬送方向)上流側のインク」、及び「(搬送方向)下流側のインク」が順に付与される場合を想定する。浸透しやすいシートの種類としては、コート層が塗工された一般的なコート紙があり、ここでは表面張力が35mN/m、粘度が2mPa・sの試液における浸透速度が0.5~30um/sの範囲にあるものを指すものとする。浸透速度は協和界面科学株式会社製の極小接触角系MCAで評価することができる。本実施形態では、上流側のインクを第1の量付与した際に付与する反応液の第2の量は、下流側のインクを第1の量付与した際に付与する反応液の第3の量より少ない。
【0088】
なお、ここでは、「液体が浸透しやすいシート」とは、シートにおける反応液の浸透速度が所定速度以上であるシートであるものとする。以下においては、「液体が浸透しやすいシート」として上述した例のものを用いるものとして説明を行うが、ユーザ所望の条件又は環境などに応じて各種値が変動してもよい。一方で、以下において、「液体が浸透しにくいシート」として、ここでは表面張力が35mN/m、粘度が2mPa・sの試液における浸透速度が0.5um/s未満であるものを用いるものとする。液体が浸透しにくいシートの種類としては、例えばPET又はPPなどのフィルムを用いたシートを使用することができる。このように、画像形成装置100は、印刷媒体を、液体が浸透しやすいシートであるか液体が浸透しにくいシートであるかを、例えば液体の浸透速度(印刷媒体内部への吸収速度)に基づいて分類することができる。
【0089】
図9は、本実施形態において、反応液量決定の際に参照されるLUTの一例を示す図である。図9においては、液体が浸透しやすいシートに対して付与する、CMYKの値を入力として反応液の吐出量を決定する4次元LUTが示されている。図9のLUTにおける左側4列に記載されている数字は、S403によって処理された各インク色のインク量信号値を8ビットの信号で示している。図9のLUTにおける一番右の列は、各インク色のインク量信号値の組み合わせから決定される反応液(P)の付与量信号値である。すなわち、図9に示す4次元LUTは、複数種のインクそれぞれの量の組み合わせに対する反応液の量を対応付けたものである。
【0090】
本実施形態においては、各色のインク量に対する反応液量は、シートSの搬送方向に関して反応液の記録ヘッドに近い記録ヘッドのインク色ほど少ない。これは、反応液が付与された後に各色のインクが付与されるまで、シート内部に反応液が浸透してシート上から減る分を考慮したものである。このような反応液量の関係とすることで、画像ムラを抑制した画像形成が可能となる。
【0091】
なお、図9においては、最下行以外の値は一次色(1種のインクのみで得られる色)に対する反応液(P)の付与量信号値を示している。一方で、図9のLUTにおける一番下の行においては、二次色(2色以上のインクを混合して得られる色)について、それぞれのインクが該当量で必要とする反応液量を積算したものが示されている。例えば、図9の最下行の例では、K信号値(ここでは128)に対応するP信号値(ここでは16)と、Y信号値(ここでは128)に対応するP信号値(ここでは28)との和である「44」となっている。
【0092】
図10は、本実施形態に係る反応液量の決定処理について説明するための図である。図10は、とりわけ、反応液量決定処理において参照するLUTを生成する処理について説明するための図である。ここでは、図10は、インク付与量に対する反応液の付与量を示すグラフを示している。ここでは説明を簡単にするために、搬送方向の上流側(反応液の記録ヘッドにより近い)のKインクと下流側(反応液の記録ヘッドからより遠い)のYインクの2色に限定して説明を行う。図10のグラフにおいては、インクの付与量がX軸で示されており、反応液の付与量がY軸で示されている。
【0093】
図10においては、どちらのインク色についても、付与量が増えるほど(つまりX軸が増加するほど)、付与する反応液量が増えている。また、上流側のKインクの方がYインクよりも、インク付与量が同じであっても付与する反応液量が少ない。また、2色のインクを50:50の比率で付与する領域については、反応液は、各インクをそれぞれ単独で付与する場合の反応液量の中間の反応液量を付与している。K:Yの比率が75:25を付与する際は、上述した50:50の比率で付与した場合とブラックインクのみを付与した場合との反応液付与量の中間の反応液量が付与されている。
【0094】
なお、図10においてはインク付与量に比例して反応液量が決定されるものとして図示されているが、インクの付与量に基づいて反応液の付与量が決定可能なのであれば、インク付与量と反応液付与量との関係は特にこのように限定されない。例えば、図11に例示するLUTにおける対応関係のように、インク付与量が所定範囲内である場合には反応液を付与しない(反応液付与量をゼロとする)ようにしてもよい。
【0095】
なお、本実施形態においては、図4に示す処理と同様に、インク量の変換処理(S403)の後に反応液量を決定する処理(S404)を行うものとして説明を行ったが、処理の順序はとくにこのように限定されるわけではない。例えば、画像形成装置100は、S402に続いて、インク量の変換処理の決定と反応液量の決定とを併せて(同時に)行うようにしてもよい。図12においては、そのようなインク量の変換処理の決定と反応液量の決定とを同時に行う処理(S1206)が、図4のS403~S404の代わりに行われる場合の処理の一例が示されている。このような処理は、例えば、インク量変換時のLUTに反応液の量信号値も併せて格納しておくことにより実現され得る。
【0096】
さらに別の方法として、画像形成装置100は、反応液量の決定処理を、インク量の変換及び量子化処理の後に行ってもよい。ここでは、画像形成装置100は、画素毎のインク量に従い、演算処理又はLUTを用いた処理によって反応液量を決定してもよい。例えば、多次色のみ反応液の付与量を減らすようにする(例えば、後述する変形例1における図14に示すLUTを用いる)場合は、量子化された後に反応液量を決めてもよい。そのような処理の一例が、図13に示されている。図13に示す処理は、S404が行われず、S405に続いて行われるS1301で反応液量が決定されることを除き図4に示す処理と同様に行われるため、ここでの説明は省略する。図13に示す処理によれば、各画素における多次色の各色の付与量がほぼ等しい画素に対しては反応液付与量をより減らすというような画素ごとの制御がより容易になる。
【0097】
[効果]
図1に示す画像形成システムを用いて画像形成を行い、効果の確認を行った。尚、成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断りのない限り質量基準である。反応液とインクには実施形態1で説明したものを用いた。
【0098】
印刷記録する媒体であるシートSは、液体が浸透しやすいリンテック株式会社製の「アートE PW 8K」を用いた。協和界面科学株式会社製の極小接触角系MCAで評価したところ、このシートは表面張力が35mN/m、粘度が2mPa・sの試液における浸透速度が4~6um/sであった。シートの搬送速度は0.2m/sとし、記録ヘッド7の隙間はそれぞれ150mmとした。また、ここでは反応液量の決定において図9に示すLUTを用い、各カラーインクの最大付与量は20g/m、反応液の最大付与量は5g/mとした。上記条件で画像を形成した結果、液体が浸透しやすいシートに対して画像ムラが抑制されていることを確認した。
【0099】
以上説明したとおり実施形態2に係る処理によれば、インクジェット印刷において、インクに対する反応液付与からインク付与までの時間差を考慮して、反応液の付与量を決定する。具体的には、反応液付与からインク付与までの時間差が大きいほど反応液の付与量を増加させるよう制御する。これにより、液体(反応液、インク)が浸透しやすいシートに対して画像形成した際の画像形成不良(画像ムラなど)を抑制することが可能となる。
【0100】
[変形例1]
実施形態2において、反応液量決定処理において用いるLUTでは、二次色(2色以上のインクを混合して得られる色)については、それぞれのインクが該当量で必要とする反応液量を積算したものを反応液量とするものとして説明を行った。しかしながら、二次色についての反応液の吐出量として、そのような反応液量の積算以外の値を用いてもよい。
【0101】
例えば複数の色インクが重なった領域では、必要となる反応液量が、その色インクそれぞれを単独で付与した場合に必要となる反応液量の合計よりも小さくなる傾向がある。その要因について、以下に説明を行う。
【0102】
この要因の1つ目としては、反応液単体での浸透速度に対し、反応液が上流側のインクに接触した際は、混合物中の液体又はインク全体の粘度が上昇することで、反応液の浸透速度が遅くなることが考えられる。これはすなわち、下流側のインクが付与されるタイミングでのシート上に残っている反応液が、上流側のインクと接触していない場合と比較し増えることを意味する。
【0103】
この要因の2つ目としては、反応液が上流側のインクに接触した際に、上流側のインクが定着されインクが置き石状に存在することになることが考えられる。これはすなわち、下流側のインクが平面方向に流動しにくくなり、結果的に必要な反応液量が減ることを意味する。
【0104】
図14は、変形例1に係る反応液量決定処理において用いられるLUTの例を示す図である。図14は、液体が浸透しやすいシートとして設定されるシートに対応する4次元LUTを示しており、最下行(二次色)以外は図9に示す4次元LUTと同じである。図14に示すLUTの最下行では、出力されるP信号値は、K信号値(ここでは128)に対応するP信号値(ここでは16)と、Y信号値(ここでは128)に対応するP信号値(ここでは28)との和である「44」よりも小さい値「35」となっている。このように、二次色における反応液の吐出量を、それぞれのインクが該当量で必要とする反応液量を積算したものよりも大きい値とすることにより、画像ムラが抑制され発色性が高い画像形成が可能となる。
【0105】
変形例1では、上述した例と同様に、液体が浸透しやすいシートに対して、「反応液」、「(搬送方向)上流側のインク」、及び「下流側のインク」を順に付与する構成を想定している。そして、一次色の印刷においては、上流側のインクを第1の量付与する領域に反応液を第2の量で付与し、下流側のインクを第1の量付与する領域に反応液を第3の量(第2の量<第3の量)で付与する点も同様である。
【0106】
ただし、本変形例においては、上述したように、二次色の印刷においては、上流側のインクを第1の量で付与しかつ下流側のインクを第1の量で付与する領域に対して、反応液を第4の量で付与する。ここで、第4の量は、第2の量と第3の量の和以下となるように決定される。上述のようなLUTを用いて反応液の吐出量を決定することにより、図9に示すLUTを用いる場合と比較して、画像ムラが抑制され発色性が高い画像形成が可能となる。
【0107】
[変形例2]
変形例1においては、(例えば、特定の印刷媒体を使用することを想定して)反応液の吐出量を決定するために1つのLUTのみを用いる構成について説明した。しかしながら、画像形成装置100は、複数の印刷媒体を切り替えて使用する場合などを想定して、反応液量を決定する際に、複数の印刷媒体に対応する複数のLUTを切り替えて参照するようにしてもよい。特に、印刷媒体における液体の浸透しやすさ(浸透速度)に応じて、それらの印刷媒体に対応したLUTをそれぞれ用意しておくことにより、印刷媒体の種類に応じた設定を行うことが可能となる。
【0108】
図15は、本変形例において反応液量決定処理の差異に参照される、液体が浸透しにくいシートに対応する4次元LUTの一例を示す図である。ここでは、液体が浸透しにくいシートとして、一例として「PETWH50(A) PAT1 9K」を用いている。このシートは表面張力が35mN/m、粘度が2mPa・sの試液における浸透速度が0.5um/s未満であった。
【0109】
変形例2においても上述した例と同様に、シートに対して反応液、上流側のインク、及び下流側のインクを順に付与する構成を想定する。ここでは、液体が浸透しにくいシートSに対しては、上流側のインクを第1の量で付与する領域に対して反応液を第2の量で付与する場合、下流側のインクを第1の量で付与する領域に対しても反応液が第2の量で付与される(つまり、反応液の吐出量が上流・下流に依存しない)。なおここでは、液体が浸透しにくいシートSにおいて、二次色の印刷を行う際に吐出する反応液量は、当該二次色を構成する一次色の各インクの量に対する反応液量を積算したものを用いるものとする。例えば、上流側のインクを第1の量で付与しかつ下流側のインクを第1の量で付与する領域に対して、反応液が第3の量(ここでは、第3の量=第2の量+第2の量)で付与されるものとする。液体が浸透しにくいシートでは、反応液が付与された後に各色のインクが付与されるまで、反応液がシート上から減る量が無視できる程度であることも考えられる。そのため、図15に示すような反応液量の関係とすることで、液体が浸透しにくいシートにおいても画像ムラを抑制した画像形成が可能となる。
【0110】
[実施形態3]
実施形態1~2においては、インク着弾時の印刷媒体上での反応液の残存量に着目してインク毎の反応液量を決定することで、画像ムラを抑制した画像形成が行われた。一方で、反応液の吐出量を、インクと反応液との凝集性の違いを考慮して決定することも考えられる。そのような観点から、実施形態3に係る画像形成装置100は、実施形態1において用いた重み付け係数を、インクと反応液との凝集性の違いに基づいて設定する。
【0111】
図16は反応液及びカラーインクの反応による凝集を説明するための図である。図16(a)の色材1601はカラーインクの色材を表しており、水溶性樹脂1602は色材1601と共にインク中に分散されている。図16(a)の例では、色材・水溶性樹脂共にアニオンの状態で水中に分散しており、マイナス電荷の反発力によって安定化されており、同時に物理的な構造での反発力1603(立体障害)も分散に寄与している。一方、図16(b)は反応液の分散状態を表しており、本実施形態においてはプラスの電荷を帯びたカチオンの状態のマグネシウムイオン1604と、マイナスの電荷を帯びたアニオンの状態の硫酸イオン1605に電離して、水中に分散している。
【0112】
カラーインクと反応液が混合した際には、カラーインク内のアニオンと反応液内のカチオンとが反応し、電荷が失われることで、色材1601及び水溶性樹脂1602の分散が破壊され、溶媒内で反応凝集する。反応液のカチオン濃度が高いほど凝集力の高い反応液となり、アニオン濃度の高いカラーインクほど、反応凝集した際の凝集粘度が高くなる傾向にある。
【0113】
また反応液内にカチオンが少しでもあれば、カラーインクと反応凝集を起こすわけではなく、立体障害1603を壊すだけのカチオン濃度が必要となる。図16(c)はカラーインクと反応液とが混合した結果起こる反応凝集の様子を図示しており、凝集物1607が未凝集物1606の中に存在している。凝集物1607は、反応凝集した色材1601と水溶性樹脂1602とを含んでおり、未凝集物1608は水分又は溶剤などの液体成分を含んでいる。
【0114】
本実施形態においては、以下の表2に示される成分を有するカラーインクが用いられる。
【表2】
【0115】
表2に示す成分のインクは、表1のものと比較すると、ブラックインク及びシアンインクの樹脂粒子の水分散液の混合量が増加している。ブラックインク及びシアンインクは、マゼンタインク・イエローインクと比較して暗い色のため、これらの樹脂量を増加させることにより、傷の視認性を下げ、耐擦過性を向上させることができる。
【0116】
反応液と反応凝集する成分は色材だけでなく水溶性樹脂も寄与することが分かっている。よって、例えば、表1の組成でインク毎の反応液との凝集性とが同等である場合には、それに対して樹脂量を増加させることで、インク毎の凝集性は同一でなくなる。そのような場合に、それらのインクと反応液との凝集性の違いを考慮して重み付け係数を設定することにより、不十分な色が発生してしまうことを抑制することが可能となる。
【0117】
以下、本実施形態に係る画像形成装置100が行う、反応液とカラーインクの凝集性を考慮した(重み付け係数を設定することによる)反応液量の決定処理について説明する。
【0118】
[効果]
インクと反応液との凝集性の違いは、反応液(又はインク)の吸収が遅い(又は、吸収性を有さない)用紙においてより顕著に差がでる。本実施形態においては、一例として「PETWH50(A) PAT1 9K」をシートとして用いた。図17は、本実施形態に係る画像形成装置100による処理を行った場合の効果を、比較例を用いて説明するための図である。図17においては、パッチ1~3の各パッチに対して、インクの種類に応じて反応液量を変化させない場合の効果(比較例)と、本実施形態に係る画像形成装置100により反応液量を決定した場合の効果(実施形態)と、が示されている。本実施形態に係る画像形成装置100は、以下に示す式(6)を用いて、パッチ毎に付与する反応液量VPを決定している。また、実施形態1においてはインク量に対して必要な反応液量は同一であるものとしたが、本実施形態ではインク量に対して必要な反応液量がインク量とは異なり、図17におけるPRIはその反応液量を示している。本実施形態で用いた印刷媒体は吸収が遅いため、必要な反応液量も吸収が速い用紙と比較して少なく済む。本実施形態ではブラックインク10plに対して必要な反応液量が規定されており、具体的には2plである。なお、ここでは「吸収が遅い」とは、反応液(又はインク)の印刷媒体内部へ吸収されるまでに要する時間が所定時間以下であることを指すものとするが、当該所定時間は任意に設定可能である。
【数3】
【0119】
図17の比較例において、重み付け係数Wはインクによらず1とされている。また比較例において、凝集力の弱いイエローインクを使用したパッチ2及びパッチ3では、凝集力が不足した結果端部ムラが発生している。一方で、本実施形態に係る画像形成装置100は、凝集力の弱いイエローインクの重み付け係数Wを2に変更しており、パッチ2及び3における端部ムラが解消されて端部ムラなしとなっていることが確認された。
【0120】
なお、本実施形態では、カラーインクと反応液との凝集性の違いが、インクに含有される樹脂量によって定まる場合について説明を行った。しかしながら実際には、カラーインクの凝集性は、色材の種類及び量、樹脂の種類及び量、並びに溶剤などが複合的に影響して定まることが考えられる。重み付け係数を決定する際には、あらかじめ凝集性の差を検討して決めることで、より正確な重み付け係数を決定することができる。この凝集性は、例えばカラーインクと反応液の混合比を同一にして各色インクのパッチを印刷することによる、パッチの均一性の優劣に基づいて決定することができる。凝集性の高いインクの方が、少ない反応液量でパッチを均一に定着させることができる。凝集性が不足したパッチでは、凝集が不足しているために、パッチの端部側にムラが発生する所謂端部ムラ、又はドットが偏って凝集するビーディングなどの現象が発生する。
【0121】
[実施形態4]
前述の実施形態3においては、カラーインクが1色あたり10plである場合の反応液量の決定方法について説明をしており、インクと反応液量との比率がインクの付与量によらず一定である。そのため、インクの凝集性の差を重み付け係数のみによって考慮している。しかしながら、カラーインク及び反応液の凝集性は、カラーインクの吐出量によっても異なる場合がある。本実施形態に係る画像形成装置100は、吐出量に凝集性を考慮した反応液量に調整することを目的として、インクの種類に対応する、インクの吐出量に対する反応液量を規定するテーブルを2つ以上用いて、吐出する反応液量を決定する。
【0122】
図18は、カラーインクの吐出量に対する反応液量を規定したテーブルと、そのようなテーブルを用いて反応液量を決定する計算過程とを示したものである。反応液量PRIは、前述の実施形態2で示したようにインクの吐出量に応じてLUTに応じて算出することができる。図18(a)は、2pl、6pl、10pl及び12plの時の反応液量をテーブルごとに示したものである。
【0123】
本実施形態においては、テーブル1とテーブル2との2種類を用意している。テーブル1は凝集性の強いブラックインクの検討結果に基づいて規定したテーブルであり、ここではインクと反応液との比率が一定である。テーブル2は凝集性の弱いイエローインクの検討結果に基づいて規定したテーブルであり、ここではインクと反応液との比率は一定ではない。ここでは、ブラックインク及びイエローインク単色の反応液吐出量は、各テーブルを参照するだけで決定でき、重み付け係数を用いた計算を行う必要はない。一方で、ブラックインクとイエローインクとを両方用いる混色パッチ(複次色のパッチ)、又はシアンインクの単色パッチなどについては、ルックアップテーブルを参照するだけでは決定できない。式(7)は本実施形態に係る画像形成装置100が用いる、複次色のパッチにおける反応液量を算出するための重心Cを算出するための式である。
【数4】
【0124】
本実施形態においては、重み付け係数Wが凝集性に応じてインク色ごとに設定されており、それらの値が図18(b)に示されている。ここでは、重み付け係数は、ブラックインクを用いる場合は0、シアンインクを用いる場合は4、マゼンタインクを用いる場合は8、イエローインクを用いる場合は10と設定されている。
【0125】
式(8)は反応液量VPを算出するための式であり、重心Cと重み付け係数Wを用いている。反応液量PRI1、PRI2はそれぞれテーブル1及びテーブル2から参照して得られた反応液量であり、重み付け係数W1及びW2は、テーブル1とテーブル2との重み付け係数を示している。
【数5】
【0126】
図18(c)は、パッチ1~4のそれぞれについて、付されるカラーインクの種類及び量と、その重心及び反応液量についての計算式と、を示している。ここでは、図18(c)内に計算式を示しているように、PRI1及びPRI2は、それぞれインク単独の吐出量ではなくパッチに付与されるインクの合計量から算出される反応液量である。また重心Cは、凝集性の強いインクの反応液量PRI1と凝集性の強い反応液PRI2と、からの距離を意味している。つまり、凝集性が強いインクの組み合わせになるほど、重心値も0に近くなる(すなわち、小さくなる)。
【0127】
以上、図18を用いて説明したように、複数のテーブルと凝集性を考慮して決めた重み付け係数から算出した重心とを用いることによって、よりインク色ごとに適切な反応液量を設定することが可能となる。使用するインク量毎に反応液量を示すテーブルを画像形成装置本体に持たせる場合、画像形成装置本体に容量が必要かつ、反応液量を決定する際に参照するテーブルが多い分、処理時間がかかってしまう。一方で、本実施形態に係る処理によれば、反応液量と重み付け係数とを用いて、単純な計算式(ここでは、1次式)により反応液量を算出することができる。したがって、処理時間を抑制しつつ、凝集性に応じた適切な反応液量を決定することが可能となる。
【0128】
なお、反応液とインクとの凝集性の差の影響は、吸収性を有する(又は、吸収が遅い)用紙においてより顕著となるが、吸収性を有する(又は、吸収が速い)用紙においても存在する。吸収性を有する用紙においては、実施形態2の変形例で述べたように用紙内に吸収されることによる液量への影響を考慮して、凝集性と時間に応じた減少量の両方を考慮した重み付け係数を用いることによって、より反応液量を最適化することができる。
【0129】
また、凝集性が低いほど反応液量が必要であるが、印刷に必要となるコストを低減することを考えると、反応液の使用量は少なくする方がよい。そのような観点から、吐出するインクの色順は、反応液に近い方から凝集性が低い順に並べることで、必要な反応液量を削減することが可能となる。
【0130】
[実施形態5]
実施形態1~4に係る画像形成装置100はフルラインタイプの画像形成装置であるものとして説明を行った。本実施形態に係る画像形成装置1900は、印刷媒体の搬送に合わせ、印刷媒体の搬送方向と直交するように印刷部のノズル列を移動させながら画像形成を行う、シリアルタイプの画像形成装置である。実施形態5に係る画像形成装置1900は、以下に説明する構成を除き実施形態1~4と同様の構成を有し同様の処理を実行可能であるため、重複する説明は省略する。
【0131】
[画像形成装置及び印刷部]
図19は、本実施形態に係るシリアルタイプの画像形成装置を模式的に示す図である。図19に示すように、画像形成装置1900は、画像形成装置の構造材をなすフレーム上に印刷部1902を備える。印刷部1902はインクを吐出するための複数の記録ヘッドを搭載している。この記録ヘッドは、ブラック(K)の記録ヘッド1904、シアン(C)の記録ヘッド1905、マゼンタ(M)の記録ヘッド1906、及びイエロー(Y)の記録ヘッド1907を含む。
【0132】
図19に示す画像形成装置1900は、印刷媒体1910の搬送方向(幅方向)に直交する方向(X方向)にノズルを配列し、印刷部1902をガイド1908に沿って操作することで、印刷媒体1910に対してノズル列を相対的に移動させながら画像形成を行う。それぞれのインク色のノズル列のノズル配置の解像度は1200dpiである。
【0133】
印刷媒体1910は、搬送ローラ1909(及び他の不図示のローラ)がモータ(不図示)の駆動力によって回転することにより、図19中のY方向に搬送される。印刷媒体1910が給紙された後、印刷部1902の複数(所定数)のノズルから形成データに応じてインクが吐出されることにより、印刷部のノズル列に対応した1走査幅分の画像が形成される。画像形成後は再びノズル列に対応した幅分、印刷媒体が図中Y方向に搬送され、再び1走査幅分の画像が形成される。このような印刷媒体の搬送と印刷媒体に対する各印刷部からのインク吐出動作を繰り返すことにより、例えば、一頁分の画像を形成することができる。
【0134】
シリアルタイプの画像形成装置では、画像形成時のドットの着弾精度によって、位置ずれに起因する色むら又はスジによる画質低下が生じる可能性がある。この画質低下を回避するため、印刷媒体上で一度の走査で画像形成(1パス印刷)せず、複数回の走査に分けて画像形成(マルチパス印刷)することが有効である。
【0135】
[反応液量の算出]
以下、本実施形態に係る画像形成装置1900が行う、シリアルタイプの画像形成装置における反応液と各インクとの間の吐出時間の差の算出処理について説明を行う。この点を除く反応液量の算出処理については実施形態1と同様に行うことが可能である。
【0136】
画像形成装置1900は、反応液が印刷媒体上で浸透した後に各インクを着弾させるために、記録素子の使用領域を分割して画像形成を行う。図20は、シリアルタイプの画像形成装置により画像形成が行われる場合の、印刷部1901及び印刷媒体1910の動作により、反応液吐出と各グループのカラーインク吐出との間に生じる時間差を説明するための図である。図20の(a)~(c)はノズル分割を行い、マルチパス印刷で双方向の形成を行う場合の各パスの例を示している。図20の例では、ノズルの分割グループを打ち順に合わせて、反応液、K及びCから成るカラーグループ1、並びにM及びYから成るカラーグループ2の3グループとする。分割ノズルの使用位置はそれぞれ、反応液が上段、カラーグループ1が中段、カラーグループ2が下段となるように割り当てられる。
【0137】
図20の着目位置2002に対して、(a)~(c)の順に、反応液吐出と各グループのカラーインクの吐出との時間差(以下、これを単に「時間差」と称する場合がある)が生じる要因について説明を行う。まず、図20の(a)では1パス目の画像形成処理として分割ノズル上段の反応液を吐出させる。次いで、元位置から印刷部1902をX方向に操作させながら、反応液用、及びインク用に割り当てたノズルより反応液を吐出し、形成領域2001への画像形成を行う。
【0138】
着目位置2002に対しては、着目位置2002に反応液の形成を開始してから、印刷部1902が形成領域2001の左端まで移動する時間2003が時間差に加わる。さらに、図20の(b)左端の退避位置で折り返し、形成領域2001の左端まで戻るのに要する時間2004が時間差に加わる。また、この印刷部の移動に加えて、印刷媒体の搬送が行われる。印刷媒体の搬送量は分割ノズルの各グループのノズル高さ分とし、ここではy方向の反応液の画像形成高さと同じ分だけ印刷媒体をy方向に移動させる。したがって、この印刷媒体の搬送に要する時間2005が時間差に加わる。なお、印刷媒体の搬送は印刷部の折り返し移動と並行して行われても良く、その場合は、搬送と折り返し移動で合わせて要した時間が時間差に加えられる。本実施形態では折り返し移動と搬送が平行に行われなかった場合を例として説明している。その後、同じく図20の(b)において、形成領域2001の左端から右に向かって印刷部1902の移動に合わせてカラーグループ1の形成を行い、形成領域2001の左端から着目位置2002までの間の移動に要した時間2006を時間差として加える。
【0139】
ここで、時間2003と時間2006は着目領域の位置により大きさが異なる。図21は形成領域2001上における、着目領域の位置ごとの生じる時間の違いを示している。図21のA、B、Cはそれぞれ、形成領域2001の左端位置、中間位置、右端位置とする。また図21の表は、(a)、(b)それぞれで生じる時間を、0から最大までで示したものである。
【0140】
以下、図21(a)を用いて、A、B、Cの位置毎に、反応液吐出からカラーグループ1の吐出までの間に形成領域2001上で要する時間を説明する。Aは左端位置であるため反応液吐出から形成領域の左端までの移動に要する時間は発生せず、0となる。またBは、中間位置から左端までの反応液の形成に要する時間と、折り返し後、左端からBの位置までのカラーグループ1の形成に要する時間となり、形成領域2001全体の画像形成に要する時間の半分が時間差に加わる。またCは右端位置であるため、形成領域2001全体の形成に要する時間がそのまま時間差に加わる。
【0141】
なお、本実施形態では形成領域2001上における印刷部1902の移動速度を一定としており、時間2003と時間2006は同じ大きさとしている。しかしながら、印刷部1902の速度が一定でない場合には時間2003と時間2006は異なる大きさとしてもよい。以上より、反応液吐出からカラーグループ1を吐出するまでの間に要した時間差(T1)は下記の式(9)により求めることができる。
T1 = t(px) × 2 + t + tLF (9)
【0142】
ここで、t(px)は印刷部の片方向の移動に要する時間であり、pxにより形成領域上の着目領域の位置が指定される。また、tは印刷部の折り返しに要する時間である。
【0143】
式においてt(px)は時間2003と時間2006の一方に要する時間を表しており、両者を足し合わせる意味で×2が行われている。式(9)の計算は形成領域上のx方向の位置毎に行われ、x方向に分割した複数領域毎に行われる。反応液の吐出とカラーグループ2の吐出との時間差は、反応液の吐出とカラーグループ1の吐出との間の時間差T1にさらに時間が加えたものとなる。
【0144】
図20の(c)では、分割ノズルの下段を使用してカラーグループ2の印字を行う。先に、図20の(b)のカラーグループ1の形成時における、着目位置2002から形成領域2001の右端までの距離が、時間2007として時間差に加わる。次に図20の(c)左端の退避位置で折り返し、形成領域2001の右端まで戻るのに要する時間2008が時間差に加わる。また、同時に印刷媒体の搬送が行われ、これに要する時間2020が時間差に加わる。その後、同じく図20の(c)において、形成領域2001の右端から左に向かって印刷部1902の移動に合わせてカラーグループ2の形成を行い、形成領域2001の右端から着目位置2002までの間の移動に要した時間2009を時間差として加える。時間2007と時間2009についても、着目領域の位置により大きさが異なる。
【0145】
次いで、図21(b)を参照して、A、B、Cの位置毎に、カラーグループ1の吐出からカラーグループ2の吐出までの間に形成領域2001上で要する時間T2についての説明を行う。Aは左端位置であるため、図21(a)の時とは逆に、形成領域2001全体の形成に要する時間がそのまま時間差に加わる。Bは、中間位置から右端までのカラーグループ1の形成に要する時間と、折り返し後に右端からBの位置までのカラーグループ2の形成に要する時間となる。またCは右端位置であるため、反応液吐出から形成領域の左端までの移動に要する時間は発生せず、0となる。以上より、カラーグループ1の吐出からカラーグループ2を吐出するまでの間に要した時間差(T2)は下記の式(10)により求めることができる。
T2 = T1 + (tmax-t(px)) × 2 + t + tLF (10)
【0146】
ここで、tmaxは形成領域全体の形成に要する時間である。式(10)において、tmaxは形成領域2001全体の形成に要する時間を表しており、tmax-t(px)は、pxが左端でありt(px)が0となる時に最大となる。
【0147】
なお、この例では、搬送に要する時間2005及び時間2020は同じ大きさであり、また同様に印刷部1902の折り返しに要する時間2004と時間2008とは同じ大きさであるものとしている。しかしながら、これらは異なる大きさであってもよく、設定又は条件に応じて任意の値とすることができる。
【0148】
このような処理により、カラーグループ1とカラーグループ2とのそれぞれで時間差を算出することができる。重み付け係数の算出を含むその他の計算方法については第1の実施形態と同様の計算式を用いて行うことができ、本実施形態では各インクの代わりに、カラーグループごとに重み付け係数算出が行われる。
【0149】
なお、本実施形態では着目領域内における反応液及びカラーインクの記録ノズル1903~1907のx方向の位置の違いによる吐出時間差は、十分に小さく無視できるものとしているが、式(9)及び式(10)に加えて計算されるようにしてもよい。
【0150】
このような処理によれば、シリアルタイプの画像形成装置1900においても反応液の吐出と各カラーインクの吐出との間の時間差を算出することができる。したがって、反応液減少量を補填するように重み付け係数を設定し、反応液減少量が大きいカラーグループほど多くなるように反応液の吐出量を決定することができる。これにより実施形態1と同様に、時間経過に応じて反応液量が減少する場合であっても、インクの着弾時点で反応液量が不足することを抑制することができ、適切な反応が保持されるようになる。
【0151】
本明細書の開示は、以下の画像形成装置、情報処理方法、及びプログラムを含む。
【0152】
(項目1)
画像形成装置により印刷媒体上に反応液が吐出されるタイミングと、前記印刷媒体上に反応液に続いて2色以上のインクのそれぞれが吐出されるタイミングと、前記画像形成装置による前記2色以上のインクのそれぞれの吐出量と、に基づいて、反応液の吐出量を決定する決定手段と、
前記反応液及び前記2色以上のインクの吐出を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする、画像形成装置。
(項目2)
前記決定手段は、前記印刷媒体上に前記反応液が吐出されるタイミングと、前記印刷媒体上に前記反応液に続いて前記2色以上のインクのそれぞれが吐出されるタイミングと、前記画像形成装置による前記2色以上のインクのそれぞれの吐出量と、に基づいて設定される重み付け係数に基づいて、前記反応液の吐出量を決定することを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
(項目3)
前記重み付け係数は、前記2色以上に含まれるインクそれぞれについて設定されることを特徴とする、請求項2に記載の画像形成装置。
(項目4)
前記2色以上のインクに含まれる第1のインクについて設定される第1の重み付け係数が、前記2色以上のインクに含まれる第2のインクについて設定される第2の重み付け係数以下に設定され、
前記反応液を吐出する記録素子から前記第1のインクを吐出する記録素子までの距離が、前記反応液を吐出する記録素子から前記第2のインクを吐出する記録素子までの距離未満であることを特徴とする、請求項3に記載の画像形成装置。
(項目5)
前記重み付け係数は、前記反応液を吐出する記録素子から前記インクを吐出する記録素子までの距離に基づいて設定されることを特徴とする、請求項2に記載の画像形成装置。
(項目6)
前記重み付け係数は、前記反応液及び前記インクを吐出する記録ヘッドと印刷媒体との相対的な移動速度とに基づいて設定されることを特徴とする、請求項2に記載の画像形成装置。
(項目7)
前記重み付け係数は、前記印刷媒体の種類にさらに基づいて設定されることを特徴とする、請求項2に記載の画像形成装置。
(項目8)
前記重み付け係数は、前記インクの種類にさらに基づいて設定されることを特徴とする、請求項2に記載の画像形成装置。
(項目9)
前記決定手段は、前記印刷媒体上に前記反応液が吐出されるタイミングと、前記印刷媒体上に前記反応液に続いて前記2色以上のインクのそれぞれが吐出されるタイミングと、前記画像形成装置による前記2色以上のインクのそれぞれの吐出量と、に対応する前記反応液の吐出量を格納するテーブルに基づいて、前記反応液の吐出量を決定することを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
(項目10)
前記テーブルは、前記印刷媒体上に前記反応液が吐出されるタイミングと、前記印刷媒体上に前記反応液に続いて前記2色以上のインクのそれぞれが吐出されるタイミングと、前記画像形成装置による前記2色以上のインクのそれぞれの吐出量と、に加えて前記反応液を吐出する記録素子から前記インクを吐出する記録素子までの距離に対応する前記反応液の吐出量を格納することを特徴とする、請求項9に記載の画像形成装置。
(項目11)
前記テーブルは、前記印刷媒体上に前記反応液が吐出されるタイミングと、前記印刷媒体上に前記反応液に続いて前記2色以上のインクのそれぞれが吐出されるタイミングと、前記画像形成装置による前記2色以上のインクのそれぞれの吐出量と、に加えて前記印刷媒体の種類に対応する前記反応液の吐出量を格納することを特徴とする、請求項9に記載の画像形成装置。
(項目12)
前記テーブルは、前記印刷媒体上に前記反応液が吐出されるタイミングと、前記印刷媒体上に前記反応液に続いて前記2色以上のインクのそれぞれが吐出されるタイミングと、前記画像形成装置による前記2色以上のインクのそれぞれの吐出量と、に加えて前記インクの種類に対応する前記反応液の吐出量を格納することを特徴とする、請求項9に記載の画像形成装置。
(項目13)
前記制御手段は、前記印刷媒体の幅以上の幅を有するフルラインタイプの記録ヘッドによる、前記反応液及び前記2色以上のインクの吐出を制御することを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
(項目14)
前記制御手段は、前記印刷媒体の搬送に合わせて、前記印刷媒体の搬送方向と直交するようにシリアルタイプの記録ヘッドのノズル列を移動させながら、前記反応液及び前記2色以上のインクの吐出を制御することを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
(項目15)
印刷媒体に対して、1パスで反応液を吐出し、反応液を吐出した領域の少なくとも一部に第1のインク、反応液を吐出した領域の少なくとも一部に第2のインクを順に吐出するよう、画像形成装置による前記反応液並びに前記第1のインク及び前記第2のインクの吐出を制御する制御手段と、
前記印刷媒体を、液体が浸透しやすい印刷媒体と液体が浸透しにくい印刷媒体と、に分類する分類手段と、
前記第1のインク又は前記第2のインクの吐出量に対応する前記反応液の吐出量を設定する設定手段と、を備え、
前記設定手段は、前記液体が浸透しやすい印刷媒体に対して、前記第1のインクの第1の吐出量に対応する前記反応液の第2の吐出量を、前記第2のインクの前記第1の吐出量に対応する前記反応液の第3の吐出量より少なくなるように設定する設定手段と、
を備える、画像形成装置。
(項目16)
前記設定手段は、前記液体が浸透しやすい印刷媒体に対して、前記第1のインクを前記第1の吐出量で吐出し前記第2のインクを第4の吐出量で吐出する前記印刷媒体上の領域に吐出する前記反応液の第5の吐出量を、前記第1の吐出量と、前記第2のインクの第4の吐出量に対応する前記反応液の第6の吐出量と、の和よりも小さい吐出量に設定することを特徴とする、請求項15に記載の画像形成装置。
(項目17)
前記設定手段は、前記液体が浸透しにくい印刷媒体に対して、前記第2の吐出量と前記第3の吐出量とが等しくなるよう前記反応液の吐出量を設定することを特徴とする、請求項15に記載の画像形成装置。
(項目18)
前記設定手段は、前記液体が浸透しにくい印刷媒体に対して、前記第1のインクを前記第1の吐出量で吐出し前記第2のインクを第4の吐出量で吐出する前記印刷媒体上の領域に吐出する前記反応液の第5の吐出量を、前記第1の吐出量と、前記第2のインクの第4の吐出量に対応する前記反応液の第6の吐出量と、の和に設定することを特徴とする、請求項15に記載の画像形成装置。
(項目19)
前記画像形成装置がインクジェット画像形成装置である、請求項15に記載の画像形成装置。
(項目20)
画像形成装置により印刷媒体上に吐出される反応液と、前記印刷媒体上に前記反応液に続いて吐出されるインクと、について、前記インクの種類ごとに重み付け係数を設定する設定手段と、
前記重み付け係数と、前記画像形成装置による前記インクの吐出量と、に基づいて、前記インクの前に吐出される前記反応液の吐出量を決定する決定手段と、
を備える、画像形成装置。
(項目21)
前記設定手段は、前記インクの凝集性に基づいて前記重み付け係数を設定することを特徴とする、請求項20に記載の画像形成装置。
(項目22)
前記設定手段は、前記インクの吐出量に対する前記反応液の吐出量を規定するテーブルを少なくとも2つ用いて、前記反応液の吐出量を設定することを特徴とする、請求項20に記載の画像形成装置。
(項目23)
前記設定手段は、前記重み付け係数を印刷媒体ごとに設定することを特徴とする、請求項20に記載の画像形成装置。
(項目24)
前記インクは、前記反応液に続いて、凝集性が低い種類から順に吐出されることを特徴とする、請求項20に記載の画像形成装置。
(項目25)
画像形成装置により印刷媒体上に反応液が吐出されるタイミングと、前記印刷媒体上に反応液に続いて2色以上のインクのそれぞれが吐出されるタイミングと、前記画像形成装置による前記2色以上のインクのそれぞれの吐出量と、に基づいて、反応液の吐出量を決定する決定工程と、
前記反応液及び前記2色以上のインクの吐出を制御する制御工程と、
を備えることを特徴とする、情報処理方法。
(項目26)
印刷媒体に対して、1パスで反応液を吐出し、反応液を吐出した領域の少なくとも一部に第1のインク、反応液を吐出した領域の少なくとも一部に第2のインクを順に吐出するよう、画像形成装置による前記反応液並びに前記第1のインク及び前記第2のインクの吐出を制御する制御工程と、
前記印刷媒体を、液体が浸透しやすい印刷媒体と液体が浸透しにくい印刷媒体と、に分類する分類工程と、
前記第1のインク又は前記第2のインクの吐出量に対応する前記反応液の吐出量を設定する設定工程と、を備え、
前記設定工程は、前記液体が浸透しやすい印刷媒体に対して、前記第1のインクの第1の吐出量に対応する前記反応液の第2の吐出量を、前記第2のインクの前記第1の吐出量に対応する前記反応液の第3の吐出量より少なくなるように設定する、情報処理方法。
(項目27)
画像形成装置により印刷媒体上に吐出される反応液と、前記印刷媒体上に前記反応液に続いて吐出されるインクと、について、前記インクの種類ごとに重み付け係数を設定する設定工程と、
前記重み付け係数と、前記画像形成装置による前記インクの吐出量と、に基づいて、前記インクの前に吐出される前記反応液の吐出量を決定する決定工程と、
を備える、情報処理方法。
(項目28)
コンピュータを、請求項1乃至14の何れか一項に記載の画像形成装置の各手段として機能させるためのプログラム。
(項目29)
コンピュータを、請求項15乃至19の何れか一項に記載の画像形成装置の各手段として機能させるためのプログラム。
(項目30)
コンピュータを、請求項20乃至24の何れか一項に記載の画像形成装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【0153】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0154】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0155】
100:画像形成装置、101:印刷部、102:記録素子、103:記録素子、104:記録素子、105:記録素子、106:記録素子、107:搬送ローラ、108:プラテン
図1
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図3
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