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特開2024-171309排水の処理における異常を検出するためのシステムおよびそのシステムにおいて実行される方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171309
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】排水の処理における異常を検出するためのシステムおよびそのシステムにおいて実行される方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/34 20230101AFI20241204BHJP
【FI】
C02F3/34 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024033742
(22)【出願日】2024-03-06
(62)【分割の表示】P 2023088082の分割
【原出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】523201524
【氏名又は名称】株式会社Nocnum
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】渡部 龍一
【テーマコード(参考)】
4D040
【Fターム(参考)】
4D040BB02
4D040BB52
4D040BB91
(57)【要約】
【課題】排水の処理における異常を検出するためのシステムを提供すること。
【解決手段】本発明のシステムは、時間の経過に伴って、複数回、排水内のpH値を特定する手段と、排水内の特定された複数のpH値の推移に基づいて、排水内のアンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応に異常が発生しているか否かを判定する手段と、反応に異常が発生していると判定される場合に、反応に異常が発生している旨の警告を提示する手段とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水の処理における異常を検出するためのシステムおよびそのシステムにおいて実行される方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、硝化脱窒反応を用いた排水処理が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開第2009-022865号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、硝化脱窒反応に異常が発生しているか否かを、排水の汚泥濃度分布およびpH値などに基づいて判定する手法が、開示されている。しかしながら、排水の汚泥濃度分布を測定するための装置は、余分にコストがかかり、設置スペースも必要となる。
【0005】
本発明は、排水内のpH値のみに基づいて排水の処理における異常を検出することを可能にするシステムおよびそのシステムにおいて実行される方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの局面において、本発明のシステムは、排水の処理における異常を検出するためのシステムであり、前記システムは、時間の経過に伴って、複数回、前記排水内のpH値を特定する手段と、前記排水内の前記特定された複数のpH値の推移に基づいて、前記排水内のアンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応に異常が発生しているか否かを判定する手段と、前記反応に異常が発生していると判定される場合に、前記反応に異常が発生している旨の警告を提示する手段とを備える。
【0007】
本発明の1つの実施形態では、前記反応に異常が発生しているか否かを判定する手段は、前記排水内の前記特定された複数のpH値の推移が所定の推移を示すか否かを判定する手段と、前記排水内の前記特定された複数のpH値の推移が前記所定の推移を示す場合に、前記反応に異常が発生していると判定する手段とを備えていてもよい。
【0008】
本発明の1つの実施形態では、前記排水内の前記特定された複数のpH値の推移が前記所定の推移を示すか否かを判定する手段は、前記排水内の前記特定された複数のpH値の推移から、所定の時間毎のpH値を特定する手段と、各pH値について、前記pH値の近傍の他のpH値と前記pH値との相加平均値を算出することによって、前記所定の時間毎のpH値に対応する前記所定の時間毎の相加平均値を特定する手段と、前記所定の時間毎の相加平均値を離散値から連続値に変換し、前記所定の時間毎の相加平均値の連続関数を生成する手段と、前記所定の時間毎の相加平均値の連続関数の極小が存在するか否かを判定する手段と、前記所定の時間毎の相加平均値の連続関数の極小が存在する場合に、前記排水内の前記特定された複数のpH値の推移が前記所定の推移を示すと判定する手段とを含んでいてもよい。
【0009】
本発明の1つの実施形態では、前記所定の時間毎の相加平均値の連続関数の極小が存在するか否かを判定する手段は、前記所定の時間毎の相加平均値の連続関数を微分する手段と、前記所定の時間毎の相加平均値の連続関数の導関数に対して求根アルゴリズムを適用し、解が存在するか否かを判定する手段と、前記解が存在する場合に、前記所定の時間毎の相加平均値の連続関数の極小が存在すると判定する手段とを含んでいてもよい。
【0010】
本発明の1つの実施形態では、前記所定の時間毎の相加平均値は、時刻t-Nから時刻tまでの相加平均値であり、Nは、t未満の正の値であり、前記システムは、前記解が存在しない場合に、時刻t-Nより前のある時刻sのpH値を特定し、前記時刻sのpH値の近傍の他のpH値と前記時刻sのpH値との相加平均値を算出することによって、時刻sの相加平均値を特定する手段と、(前記時刻tの相加平均値)-(前記時刻sの相加平均値)をΔXとして算出する手段と、前記ΔXが正の値であるか否かを判定する手段とをさらに備え得、前記ΔXが正の値ではないと判定される場合に、前記反応に異常が発生していないと判定されてもよい。
【0011】
本発明の1つの実施形態では、前記システムは、前記ΔXが正の値であると判定される場合に、時刻sから時刻t-Nまでの所定の時間毎のpH値に対応する相加平均値の算出と、前記時刻tの相加平均値と前記時刻sから時刻t-Nまでの所定の時間毎のpH値に対応する相加平均値との差分の算出とを行うことによって、時刻sから時刻tまでの相加平均値の推移が上昇傾向であるか否かを判定する手段をさらに備え得、前記反応に異常が発生しているか否かを判定する手段は、時刻t-Nから時刻tまでの相加平均値の推移が上昇傾向であると判定される場合に、前記反応に異常が発生していると判定してもよい。
【0012】
本発明の1つの実施形態では、前記排水内のpH値を特定する手段は、前記排水内のpH値、アンモニウムイオン濃度、亜硝酸イオン濃度のうちの少なくとも1つを測定する手段を含んでいてもよい。
【0013】
本発明の1つの局面において、本発明の方法は、排水の処理における異常を検出するためのシステムにおいて実行される方法であり、前記システムは、プロセッサ部を備え、前記方法は、前記プロセッサ部が、時間の経過に伴って、複数回、前記排水内のpH値を特定することと、前記プロセッサ部が、前記排水内の前記特定された複数のpH値の推移に基づいて、前記排水内のアンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応に異常が発生しているか否かを判定することと、前記プロセッサ部が、前記反応に異常が発生していると判定される場合に、前記反応に異常が発生している旨の警告を提示することとを含む。
【0014】
本発明の1つの局面において、本発明のプログラムは、排水の処理における異常を検出するためのシステムにおいて実行されるプログラムであり、前記システムは、プロセッサ部を備え、前記プログラムは、前記プロセッサ部によって実行されると、時間の経過に伴って、複数回、前記排水内のpH値を特定することと、前記排水内の前記特定された複数のpH値の推移に基づいて、前記排水内のアンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応に異常が発生しているか否かを判定することと、前記反応に異常が発生していると判定される場合に、前記反応に異常が発生している旨の警告を提示することとを少なくとも実行することを前記プロセッサ部に行わせる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、排水内のpH値のみに基づいて排水の処理における異常を検出することを可能にするシステムおよびそのシステムにおいて実行される方法およびプログラムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】連続式排水処理のうち、硝化脱窒反応に係る部分の仕組みの概略図
図2】排水内のpH値のみに基づいて排水の処理における異常を検出することを可能にするシステム200の構成の一例を示す図
図3】コンピュータシステム210において実行される処理の一例を示す図
図4図3のステップS302における処理の一例を示す図
図5図4のステップS404における処理の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
1.硝化脱窒反応を用いた排水処理の仕組み
一般的に、連結された複数の槽を利用して排水処理を行う連続式排水処理と、単一の槽を利用して排水処理を行う回文式排水処理とが存在する。
【0019】
図1は、連続式排水処理のうち、硝化脱窒反応に係る部分の仕組みの概略図である。
【0020】
排水は、第1の槽110および第2の槽120を通る間に、硝化脱窒反応によって処理される。第1の槽110は、曝気装置130と第1の活性汚泥140とを備える。第1の槽110では、いわゆる硝化反応が進行する。硝化反応は、排水内のアンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応(2NH +O→2NO +2HO+4H)と、亜硝酸イオンが硝酸イオンに変化する反応(2NO +O→2NO )とを含む。第1の活性汚泥140は、硝化反応を進行させるための硝化細菌を備える。第1の槽110において硝化反応を終えて生成された亜硝酸イオンおよび硝酸イオンは、第2の槽120に流入される。
【0021】
第2の槽120は、第2の活性汚泥150を備える。第2の槽120では、いわゆる脱窒反応が進行する。脱窒反応は、亜硝酸イオンが窒素に変化する反応(2NO +3H→N+2OH+2HO)と、硝酸イオンが窒素に変化する反応(2NO +5H→N+2OH+4HO)とを含む。第2の活性汚泥150は、脱窒反応を進行させるための脱窒細菌を備える。第2の槽120において脱窒反応を終えて生成された処理水は、第2の槽120から流出される。
【0022】
なお、図1に示される実施形態では、排水内のアンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応(2NH +O→2NO +2HO+4H)と亜硝酸イオンが硝酸イオンに変化する反応(2NO +O→2NO )との両方が同一の槽において発生する例が説明されたが、本発明はこれに限定されない。例えば、排水内のアンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応(2NH +O→2NO +2HO+4H)および亜硝酸イオンが硝酸イオンに変化する反応(2NO +O→2NO )は、相互に連結された別個の槽において発生させてもよい。
【0023】
2.排水内のpH値のみに基づいて排水の処理における異常を検出することを可能にするシステムの構成
出願人は、排水内のpH値のみに基づいて排水内の処理における硝化脱窒反応の異常を検出することを可能にするために、硝化脱窒反応のうちの硝化反応に注目した。アンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応が進行している場合には、排水内のpH値は低減する。従って、出願人は、排水内のpH値が低減していないことを検出することによって、アンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応が正常に進行していないことが分かり、排水内の処理に異常が発生していると判断することができると考えた。
【0024】
出願人は、特に、連続式排水処理においてアンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応が進行する槽に注目し、その槽内の排水のpH値の推移を監視することによって、排水内のpH値のみに基づいて排水の処理における異常を検出することが十分に可能であると考えた。
【0025】
図2は、排水内のpH値のみに基づいて排水の処理における異常を検出することを可能にするシステム200の構成の一例を示す。
【0026】
図2に示される実施形態では、システム200は、排水の処理における異常を検出するためのシステムコンピュータシステム210と、排水内のpH値を特定するための装置220~220とを備える。コンピュータシステム210は、インターネット230を介して、装置220~220のそれぞれと通信することが可能なように構成されている。ここで、Mは、1以上の整数である。
【0027】
コンピュータシステム210は、排水の処理に関する情報を管理する管理会社のための処理を実行する情報処理システムである。図2に示される実施形態では、コンピュータシステム210は、インターフェース部211と、1つ以上のCPU(Central Processing Unit)を含むプロセッサ部212と、メモリ部213とを含む。コンピュータシステム210のハードウェア構成は、その機能を実現できる限りにおいて特に限定されず、単一のマシンで構成されていてもよく、複数台のマシンを組み合わせて構成されたものであってもよい。
【0028】
インターフェース部211は、装置220~220のそれぞれとの通信を制御する。
【0029】
メモリ部213には、処理を実行するために必要とされるプログラムやそのプログラムを実行するために必要とされるデータ等が格納されている。ここで、プログラムをどのようにしてメモリ部213に格納するかは問わない。例えば、プログラムは、メモリ部213にプリインストールされていてもよい。あるいは、プログラムは、インターネット230などのネットワークを経由してダウンロードされることによってメモリ部213にインストールされるようにしてもよいし、光ディスクやUSBなどの記憶媒体を介してメモリ部213にインストールされるようにしてもよい。
【0030】
プロセッサ部212は、コンピュータシステム210全体の動作を制御する。プロセッサ部212は、メモリ部213に格納されているプログラムを読み出し、そのプログラムを実行する。これにより、コンピュータシステム210は、所望のステップを実行する装置として機能することが可能であり、コンピュータシステム210のプロセッサ部212は、所望の機能を達成する手段として動作することが可能である。
【0031】
図2に示される実施形態では、コンピュータシステム210は、データベース部240に接続されている。データベース部240には、Bスプライン補間のためのsplev関数を示す情報、求根アルゴリズムを示す情報、kpss関数を示す情報などが格納されているが、これらに限定されない。
【0032】
装置220は、アンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応が発生する槽(例えば、図1に示される第1の槽110)に設置されている。装置220は、排水内のpH値を特定するために、排水内の所定のパラメータを測定することが可能なように構成されている。排水内の所定のパラメータは、排水内のpH値であってもよいし、排水内のアンモニウムイオン濃度であってもよいし、亜硝酸イオン濃度であってもよい。装置220は、排水内の所定のパラメータを測定することが可能である限りにおいて、アンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応が発生する槽の内側に設置されていてもよいし、ンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応が発生する槽の外側に設置されていてもよい。装置220~220のそれぞれについても同様である。
【0033】
なお、図2に示される実施形態では、装置220~220のそれぞれがインターネット230を介してコンピュータシステム210と通信可能であると説明したが、本発明はこれに限定されない。インターネット230の代わりに任意のタイプのネットワークを用いることも可能である。
【0034】
また、図2に示される実施形態では、データベース部240は、コンピュータシステム210の外部に設けられているが、本発明はこれに限定されない。データベース部240をコンピュータシステム210の内部に設けることも可能である。データベース部240の構成は、特定のハードウェア構成には限定されない。例えば、データベース部240は、単一のハードウェア部品で構成されてもよいし、複数のハードウェア部品で構成されてもよい。例えば、データベース部240は、コンピュータシステム210の単一の外付けハードディスク装置として構成されてもよいし、ネットワークを介して接続されるクラウド上のストレージとして構成されてもよい。
【0035】
3.コンピュータシステムにおいて実行される処理
図3は、コンピュータシステム210において実行される処理の一例を示す。図3に示される各ステップは、例えば、コンピュータシステム210のプロセッサ部211によって実行される。以下、図3に示される各ステップを説明する。
【0036】
ステップS301:時間の経過に伴って、複数回、排水内のpH値が特定される。排水内のpH値は、装置220によって測定された排水内の所定のパラメータに基づいて、特定される。
【0037】
例えば、装置220がpH値を測定する場合、コンピュータシステム210は、装置220によって測定されたpH値を装置220から受信することによって、排水内のpH値を特定することが可能である。例えば、装置220が排水内のアンモニウムイオン濃度を測定する場合、コンピュータシステム210は、装置220によって測定された排水内のアンモニウムイオン濃度を装置220から受信し、装置220から受信された排水内のアンモニウムイオン濃度に基づいて、排水内のpH値を算出することによって、排水内のpH値を特定することが可能である。例えば、装置220が排水内の亜硝酸イオン濃度を測定する場合、コンピュータシステム210は、装置220によって測定された排水内の亜硝酸イオン濃度を装置220から受信し、装置220から受信された排水内の亜硝酸イオン濃度に基づいて、排水内のpH値を算出することによって、排水内のpH値を特定することが可能である。
【0038】
排水内のpH値は、例えば、所定の期間毎(例えば、30分毎、1時間毎、3時間毎、6時間毎、12時間毎、24時間毎)に、特定される。排水内のpH値は、コンピュータシステム210が、排水内の所定のパラメータを装置220から所定の期間毎に受信することによって、その受信の度に(すなわち、所定の期間毎に)排水内の所定のパラメータに基づいて、特定されてもよい。あるいは、排水内のpH値は、コンピュータシステム210が、排水内の所定のパラメータを装置220から所定の期間内に複数回受信し、所定の期間内に受信された排水内の複数の所定のパラメータの中から、所定の期間毎の所定のパラメータを抽出することによって、排水内の所定のパラメータに基づいて、特定されてもよい。
【0039】
ステップS302:排水内のアンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応に異常が発生しているか否かが判定される。この処理は、ステップS301において特定された排水内のpH値の推移に基づいて、実行される。判定結果が「Yes」の場合には、処理はステップS303に進み、判定結果が「No」の場合には、処理はステップS304に進む。この処理の一例は、図4を参照して詳細に説明される。
【0040】
例えば、コンピュータシステム210(特に、コンピュータシステム210のプロセッサ部211)が、ステップS301において特定された排水内のpH値の推移が所定の推移を示すか否かを判定し、ステップS301において特定された排水内のpH値の推移が所定の推移を示すと判定された場合には、排水内のアンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応に異常が発生していると判定し、ステップS301において特定された排水内のpH値の推移が所定の推移を示さないと判定された場合には、水内のアンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応に異常が発生していないと判定され得る。
【0041】
所定の推移は、例えば、排水内のpH値が局所的時間において上昇していること、排水内のpH値が広域的時間において上昇していること、排水内のpH値が極小を有するように推移していることなどを含むが、これらに限定されない。
【0042】
ステップS303:排水内のアンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応に異常が発生しているか旨の警告が提示される。この警告は、例えば、コンピュータシステム210が、コンピュータシステム210のディスプレイに警告を表示することによって、コンピュータシステム210のユーザに対して、コンピュータシステム210のディスプレイを介して提示されてもよいし、コンピュータシステム210が、コンピュータシステム210のユーザが所有するユーザ装置に警告を送信することによって、コンピュータシステム210のユーザに対して提示されてもよい。
【0043】
ステップS304:少なくとも1回、排水内のpH値が特定される。この処理は、図3のステップS301と同様であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0044】
図4は、図3のステップS302における処理の一例を示す。図4に示される各ステップは、例えば、コンピュータシステム210のプロセッサ部211によって実行される。以下、図4に示される各ステップを説明する。
【0045】
ステップS401:ステップS301において特定された排水内の複数のpH値から、所定の時間毎のpH値が特定される。この処理は、ステップS301において特定された排水内の複数のpH値から、所定の時間毎のpH値を抽出および/または選択することによって、達成される。
【0046】
ステップS402:ステップS401において特定された所定の時間毎のpH値のそれぞれについて、そのpH値の近傍の他のpH値とそのpH値との相加平均値が算出される。これにより、ステップS401において特定された所定の時間毎のpH値の各々に対応する所定の時間毎の相加平均値が特定される。なお、本明細書において、そのpH値の「近傍の他のpH値」は、そのpH値から所定の時間範囲内に特定された他のpH値をいう。また、所定の時間範囲は、槽のサイズおよび構造に依存してあらかじめ決定されているものである。便宜上、ステップS402において特定された所定の時間毎の相加平均値は、「時刻t-Nから時刻tまで」において特定されたものであるとする。なお、Nは、t未満の正の値である。
【0047】
例えば、表1に示されるように、ステップS401において、1時間毎のpH値が特定されたとする。また、2時間以内を「近傍」とする。この場合、例えば、「2時のpH値」に対応する「2時の相加平均値」は、「0時のpH値」と「1時のpH値」と「2時のpH値」と「3時のpH値」と「4時のpH値」との相加平均値6.994=(7.00+6.98+6.99+6.98+7.02)/5である。例えば、「3時のpH値」に対応する「2時の相加平均値」は、「1時のpH値」と「2時のpH値」と「3時のpH値」と「5時のpH値」と「6時のpH値」との相加平均値(6.98+6.99+6.98+7.02+7.04)/5=7.002である。このようにして、所定の時間毎のpH値の各々に対応する所定の時間毎の相加平均値が特定される。表1に示されるように、これらの所定の時間毎の相加平均値は、離散値である。
【表1】
【0048】
このように、所定の時間毎のpH値の各々について相加平均値を取ることによって、新たな排水の流入によるpH値の変動への影響を低減させ、アンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応が発生している第1の活性汚泥140内の細菌の数の変動によるpH値の変動への影響を増大させることができる。
【0049】
ステップS403:ステップS402において特定された所定の時間毎の相加平均値が離散値から連続値に変換され、これにより、所定の時間毎の相加平均値の連続関数が生成される。ステップS402において特定された所定の時間毎の相加平均値の離散値から連続値への変換は、所定の時間毎の相加平均値(離散値)の間を補間するためのものである。この変換は、例えば、ステップS402において特定された所定の時間毎の相加平均値のそれぞれにsplev関数を適用してBスプライン補間することによって、達成され得る。この処理は、splev関数を示す情報を格納しているデータベース部240を参照して実行され得る。
【0050】
ステップS404:ステップS403において生成された所定の時間毎の相加平均値の連続関数の極小が存在するか否かが判定される。判定結果が「Yes」の場合には、処理はステップS405に進み、判定結果が「No」の場合には、処理はステップS406に進む。この処理の一例は、図5を参照して詳細に説明される。
【0051】
ステップS405:ステップS301において特定された排水内のpH値の推移が所定の推移を示す(すなわち、排水内のpH値が極小を有するように推移している)と判定され、ステップS302の判定結果「No」に従って、排水内のアンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応に異常が発生していると判定される。
【0052】
ステップS406:ステップS301において特定された排水内のpH値の推移が所定の推移を示さないと判定され、ステップS302の判定結果「Yes」に従って、排水内のアンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応に異常が発生していないと判定される。
【0053】
なお、図4に示される実施形態では、所定の時間毎の相加平均値の連続関数を生成するために、splev関数を使用する例が説明されたが、本発明は、これに限定されない。所定の時間毎の相加平均値の連続関数を生成するために、他のpython関数が使用されてもよい。例えば、所定の時間毎の相加平均値の連続関数を生成するために、interp1d、Akima1DInterpolator、splprepなどが使用されてもよい。
【0054】
図5は、図4のステップS404における処理の一例を示す。図5に示される各ステップは、例えば、コンピュータシステム210のプロセッサ部211によって実行される。以下、図5に示される各ステップを説明する。
【0055】
ステップS501:ステップS403において生成された所定の時間毎の相加平均値の連続関数が微分される。これにより、所定の時間毎の相加平均値の連続関数の導関数が生成される。
【0056】
ステップS502:ステップS501において生成された所定の時間毎の相加平均値の連続関数の導関数に対して、求根アルゴリズムが適用される。この処理は、求根アルゴリズムを格納しているデータベース部240を参照して実行される。
【0057】
ステップS503:ステップS502においてステップS501において生成された所定の時間毎の相加平均値の連続関数の導関数に対して求根アルゴリズムが適用された結果、ステップS501において生成された所定の時間毎の相加平均値の連続関数の導関数に解が存在するか否かが判定される。判定結果が「Yes」の場合には、ステップS403において生成された所定の時間毎の相加平均値の連続関数の極小が存在すると判定されるため、処理は図4のステップS405に進み、排水内のアンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応に異常が発生していると判定され、判定結果が「No」の場合には、処理はステップS504に進む。
【0058】
ステップS504:図4のステップS401と同様に、時刻t-Nより前の時刻sのpH値を特定し、図4のステップS402と同様に、時刻sのpH値の近傍の他のpH値と時刻sのpH値との相加平均値を算出する。これにより、時刻sの相加平均値が特定される。なお、sは、s<t-Nを満たす正の値である。
【0059】
ステップS505:時刻tの相加平均値と時刻sの相加平均値との間の差分ΔXが算出される。すなわち、(時刻tの相加平均値)-(時刻sの相加平均値)が、ΔXとして算出される。
【0060】
ステップS506:ステップS505において算出されたΔXが正の値であるか否かが判定される。判定結果が「Yes」の場合には、排水内のpH値が上昇している可能性があるため、処理はステップS507に進み、判定結果が「No」の場合には、排水内のpH値は上昇していないため、処理は図4のステップS406に進み、排水内のアンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応に異常が発生していないと判定される。
【0061】
ステップS507:時刻sから時刻t-Nまでの所定の時間毎のpH値に対応する相加平均値の算出と、時刻tの相加平均値と時刻sから時刻t-Nまでの所定の時間毎のpH値に対応する相加平均値との間の差分の算出とが行われる。これにより、時刻t-Nから時刻tまでより広範囲である時刻sから時刻tまでの相加平均値の推移の傾向を図ることが可能である。この処理は、例えば、時刻sから時刻tまでの相加平均値に対して、kpss関数を利用して、時刻sから時刻tまでの相加平均値の推移が定常過程である(すなわち、上昇傾向はない)という帰無仮説を立ててKPSS検定が実行されることによって、達成される。この処理は、kpss関数を格納しているデータベース部240を参照して実行され得る。
【0062】
ステップS508:時刻sから時刻tまでの相加平均値の推移が上昇傾向であるか否かが判定される。判定結果が「Yes」の場合には、排水内のpH値が広域的時間において上昇していると判定されるため、処理は図4のステップS405に進み、排水内のアンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応に異常が発生していると判定され、判定結果が「No」の場合には、処理は図4のステップS406に進み、排水内のアンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応に異常が発生していないと判定される。例えば、KPSS検定を実行した結果として、特定の有意水準で帰無仮説が棄却された場合、時刻sから時刻tまでの相加平均値の推移が上昇傾向であると判定される。
【0063】
なお、図5に示される実施形態では、時刻sから時刻tまでの相加平均値の推移の傾向を図るために、splev関数を使用する例が説明されたが、本発明は、これに限定されない。時刻sから時刻tまでの相加平均値の推移の傾向を図るために、他の検定が使用されてもよい。例えば、時刻sから時刻tまでの相加平均値の推移の傾向を図るために、adfuller関数を用いて計算されるADF検定などが使用されてもよい。
【0064】
なお、図5に示される実施形態では、ステップS503の判定結果が「No」の場合には処理はステップS504に進む例が説明されたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ステップS503の判定結果が「No」の場合には、降下続けている排水内のpH値が上昇に転じていない可能性が高いため、コンピュータシステム210は、ステップS403において生成された所定の時間毎の相加平均値の連続関数の極小が存在しないと判定し、従って、排水内のアンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応に異常が発生していないと判定し、ステップS504~S508は省略されてもよい。
【0065】
なお、図5に示される実施形態では、ステップS506の判定結果が「No」の場合には処理はステップS507に進む例が説明されたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ステップS506の判定結果が「Yes」の場合には、コンピュータシステム210は、排水内のpH値が局所的時間において(すなわち、時刻sから時刻tまでにおいて)上昇していると判定し、従って、排水内のアンモニウムイオンが亜硝酸イオンに変化する反応に異常が発生していると判定し、ステップS508は省略されてもよい。
【0066】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、排水内のpH値のみに基づいて排水の処理における異常を検出することを可能にするシステムおよびそのシステムにおいて実行される方法およびプログラム等を提供するものとして有用である。
【符号の説明】
【0068】
200 システム
210 コンピュータシステム
220~220 装置
240 データベース部
図1
図2
図3
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図5