(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171316
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ストレス検知システム及びストレス検知方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20241204BHJP
G01N 33/497 20060101ALI20241204BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20241204BHJP
G01N 33/64 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
A61B5/16 110
G01N33/497 Z
G01N33/50 D
G01N33/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024054072
(22)【出願日】2024-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2023087623
(32)【優先日】2023-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000125369
【氏名又は名称】学校法人東海大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 秀明
(72)【発明者】
【氏名】丸山 可那江
(72)【発明者】
【氏名】関根 嘉香
【テーマコード(参考)】
2G045
4C038
【Fターム(参考)】
2G045CB09
2G045DA02
2G045DA28
2G045DA29
2G045JA06
4C038PP03
4C038PS00
(57)【要約】
【課題】被験者のストレスを高い精度で検知可能なストレス検知システムを提供する。
【解決手段】ストレス検知システムは、被験者の皮膚から放散された複数種の皮膚ガスの放散量に関する放散量情報を取得する取得部と、放散量情報に基づいて算出された、複数種の皮膚ガスの総放散量に対する複数種の皮膚ガスから選択された特定皮膚ガスの放散量の割合を示す指標値に基づいて、被験者がストレスを感じているストレス状態にあるか否かを判定する判定部と、判定部による判定結果に基づいて被験者のストレスに関するストレス情報を生成する生成部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の皮膚から放散された複数種の皮膚ガスの放散量に関する放散量情報を取得する取得部と、
前記放散量情報に基づいて算出された、前記複数種の皮膚ガスの総放散量に対する前記複数種の皮膚ガスから選択された特定皮膚ガスの放散量の割合を示す指標値に基づいて、前記被験者がストレスを感じているストレス状態にあるか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果に基づいて前記被験者のストレスに関するストレス情報を生成する生成部と、
を備えるストレス検知システム。
【請求項2】
前記複数種の皮膚ガスは、血管運動に関する複数種の血管関連ガスを含み、
前記指標値は、前記複数種の血管関連ガスの総放散量に対する前記複数種の血管関連ガスから選択された特定血管関連ガスの放散量の割合を示す血管指標値を含み、
前記判定部は、前記血管指標値に基づいて前記被験者が前記ストレス状態にあるか否かを判定する、
請求項1に記載のストレス検知システム。
【請求項3】
前記複数種の血管関連ガスは、ヘキサン酸及びプロピオン酸を含み、
前記血管指標値は、ヘキサン酸及びプロピオン酸の総放散量に対するヘキサン酸又はプロピオン酸のどちらか一方の割合を示し、
前記判定部は、前記血管指標値と閾値との関係が所定条件を満たす場合に、前記被験者が前記ストレス状態にあると判定する、
請求項2に記載のストレス検知システム。
【請求項4】
前記複数種の皮膚ガスは、血管運動に関する複数種の血管関連ガスと、代謝活動に関する複数種の代謝関連ガスと、を含み、
前記指標値は、前記複数種の血管関連ガスの総放散量に対する前記複数種の血管関連ガスから選択された特定血管関連ガスの放散量の割合を示す血管指標値と、前記複数種の代謝関連ガスの総放散量に対する前記複数種の代謝関連ガスから選択された特定代謝関連ガスの放散量の割合を示す代謝指標値と、を含み、
前記判定部は、前記血管指標値に基づいて前記被験者が前記ストレス状態にあるか否かを判定し、前記代謝指標値に基づいて前記被験者が感じているストレスが身体的なものか精神的なものかを判定する、
請求項1に記載のストレス検知システム。
【請求項5】
前記複数種の血管関連ガスは、ヘキサン酸及びプロピオン酸を含み、
前記複数種の代謝関連ガスは、アセトン、酢酸及びアセトアルデヒドを含み、
前記血管指標値は、ヘキサン酸及びプロピオン酸の総放散量に対するヘキサン酸又はプロピオン酸のどちらか一方の放散量の割合を示し、
前記代謝指標値は、アセトン、酢酸及びアセトアルデヒドの総放散量に対するアセトン、酢酸及びアセトアルデヒドのうちのいずれか1つの放散量の割合を示し、
前記判定部は、前記血管指標値と第1閾値との関係が所定条件を満たす場合に、前記被験者が前記ストレス状態にあると判定し、前記被験者が前記ストレス状態にあると判定された場合に、前記代謝指標値と第2閾値との関係に基づいて、前記被験者が身体的なストレスを感じている身体的ストレス状態にあるか又は精神的なストレスを感じている精神的ストレス状態にあるかを判定する、
請求項4に記載のストレス検知システム。
【請求項6】
前記生成部は、前記判定部により前記被験者が前記ストレス状態にあると判定された場合に、前記被験者のストレスを軽減するための支援情報を含む前記ストレス情報を生成する、
請求項1~5のいずれか1項に記載のストレス検知システム。
【請求項7】
被験者の皮膚から放散された複数種の皮膚ガスの放散量に関する放散量情報を取得し、
前記放散量情報に基づいて算出された、前記複数種の皮膚ガスの総放散量に対する前記複数種の皮膚ガスから選択された特定皮膚ガスの放散量の割合を示す指標値に基づいて、前記被験者がストレスを感じているストレス状態にあるか否かを判定する、
ストレス検知方法。
【請求項8】
前記複数種の皮膚ガスは、血管運動に関する複数種の血管関連ガスを含み、
前記指標値は、前記複数種の血管関連ガスの総放散量に対する、前記複数種の血管関連ガスから選択された特定血管関連ガスの放散量の割合を示す血管指標値を含み、
前記血管指標値に基づいて前記被験者が前記ストレス状態にあるか否かを判定する、
請求項7に記載のストレス検知方法。
【請求項9】
前記複数種の血管関連ガスは、ヘキサン酸及びプロピオン酸を含み、
前記血管指標値は、ヘキサン酸及びプロピオン酸の総放散量に対するヘキサン酸又はプロピオン酸のどちらか一方の割合を示し、
前記血管指標値と閾値との関係が所定条件を満たす場合に、前記被験者が前記ストレス状態にあると判定する、
請求項8に記載のストレス検知方法。
【請求項10】
前記複数種の皮膚ガスは、血管運動に関する複数種の血管関連ガスと、代謝活動に関する複数種の代謝関連ガスと、を含み、
前記指標値は、前記複数種の血管関連ガスの総放散量に対する前記複数種の血管関連ガスから選択された特定血管関連ガスの放散量の割合を示す血管指標値と、前記複数種の代謝関連ガスの総放散量に対する前記複数種の代謝関連ガスから選択された特定代謝関連ガスの放散量の割合を示す代謝指標値と、を含み、
前記血管指標値に基づいて前記被験者が前記ストレス状態にあるか否かを判定し、前記代謝指標値に基づいて前記被験者が感じているストレスが身体的なものか精神的なものかを判定する、
請求項7に記載のストレス検知方法。
【請求項11】
前記複数種の血管関連ガスは、ヘキサン酸及びプロピオン酸を含み、
前記複数種の代謝関連ガスは、アセトン、酢酸及びアセトアルデヒドを含み、
前記血管指標値は、ヘキサン酸及びプロピオン酸の総放散量に対するヘキサン酸又はプロピオン酸のどちらか一方の放散量の割合を示し、
前記代謝指標値は、アセトン、酢酸及びアセトアルデヒドの総放散量に対するアセトン、酢酸及びアセトアルデヒドのうちのいずれか1つの放散量の割合を示し、
前記血管指標値と第1閾値との関係が所定条件を満たす場合に、前記被験者が前記ストレス状態にあると判定し、前記被験者が前記ストレス状態にあると判定された場合に、前記代謝指標値と第2閾値との関係に基づいて、前記被験者が身体的なストレスを感じている身体的ストレス状態にあるか又は精神的なストレスを感じている精神的ストレス状態にあるかを判定する、
請求項10に記載のストレス検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ストレス検知システム及びストレス検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被験者の皮膚から放散されるガスに基づいて被験者のストレスを検知する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
皮膚ガスの放散量は、気候的条件や被験者固有の要因(体質、精神状態等)に応じて変動する。従来技術においては、このような様々な要因に起因する皮膚ガスの放散量の変動に対する対処が十分なされていないため、十分な検知精度が得られない場合がある。
【0005】
そこで、本発明の実施形態は、被験者のストレスを高い精度で検知可能なストレス検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態としてのストレス検知システムは、被験者の皮膚から放散された複数種の皮膚ガスの放散量に関する放散量情報を取得する取得部と、放散量情報に基づいて算出された、複数種の皮膚ガスの総放散量に対する複数種の皮膚ガスから選択された特定皮膚ガスの放散量の割合を示す指標値に基づいて、被験者がストレスを感じているストレス状態にあるか否かを判定する判定部と、判定部による判定結果に基づいて被験者のストレスに関するストレス情報を生成する生成部と、を備える。
【0007】
本発明の他の実施形態としてのストレス検知方法は、被験者の皮膚から放散された複数種の皮膚ガスの放散量に関する放散量情報を取得し、放散量情報に基づいて算出された、複数種の皮膚ガスの総放散量に対する複数種の皮膚ガスから選択された特定皮膚ガスの放散量の割合を示す指標値に基づいて、被験者がストレスを感じているストレス状態にあるか否かを判定するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態のストレス検知システム及びストレス検知方法によれば、複数種の皮膚ガスの総放散量に対する特定皮膚ガスの放散量の割合を示す指標値に基づいて被験者のストレスが検知される。これにより、気候的条件や被験者固有の要因に起因する皮膚ガスの放散量の変動による影響を抑制でき、被験者のストレスを高い精度で検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るストレス検知システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る皮膚ガスの検出位置の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る情報処理装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る血管指標値とストレス値との関係の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る代謝指標値と身体的ストレス値との関係の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る判定部による判定方法の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係るストレス検知システムにおける処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る判定結果の第1例を示す図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る判定結果の第2例を示す図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係るストレス情報の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係るストレス検知システムにおいてストレス情報を被験者に提供するための形態の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係る低ストレス者及び高ストレス者の代謝指標値の日間変化量の標準偏差の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係る低ストレス者及び高ストレス者の血管指標値の日間変化量の標準偏差の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態に係る低ストレス者及び高ストレス者の代謝指標値の日内変化量の平均値の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態に係る低ストレス者及び高ストレス者の血管指標値の日内変化量の平均値の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態に係るB得点の正解値及び推定値との関係の一例を示す図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態に係る(A+C)得点の正解値及び推定値との関係の一例を示す図である。
【
図18】
図18は、第2実施形態に係る判定部による判定方法の一例を示す図である。
【
図19】
図19は、第2実施形態に係るストレス検知システムにおける処理の一例を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、第3実施形態に係るB得点の正解値及び推定値との関係の一例を示す図である。
【
図21】
図21は、第3実施形態に係る(A+C)得点の正解値及び推定値との関係の一例を示す図である。
【
図22】
図22は、第4実施形態に係る低ストレス者及び高ストレス者の朝夕のストレス心理スコアの一例を示す図である。
【
図23】
図23は、第4実施形態に係るB得点の正解値及び推定値との関係の一例を示す図である。
【
図24】
図24は、第4実施形態に係る(A+C)得点の正解値及び推定値との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、並びに当該構成によってもたらされる作用、結果、及び効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成に基づく種々の効果や派生的な効果のうち、少なくとも一つを得ることが可能である。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るストレス検知システム1の構成の一例を示す図である。本実施形態に係るストレス検知システム1は、皮膚ガスセンサ11及び情報処理装置12を含む。
【0012】
皮膚ガスセンサ11は、被験者の皮膚から放散される皮膚ガスを検出するセンサである。皮膚ガスセンサ11は、人体における恒常性維持のための活動に伴い発生する皮膚ガスを検出可能なものであり、少なくとも、血管運動(血管の収縮又は拡張)に関連する血管関連ガス、及び代謝活動に関連する代謝関連ガスを検出可能なものである。
【0013】
血管関連ガスは、例えば、ヘキサン酸、プロピオン酸等であり得る。
【0014】
代謝関連ガスは、例えば、アセトン、酢酸、アセトアルデヒド等であり得る。
【0015】
皮膚ガスセンサ11の具体的構成は特に限定されるべきものではないが、例えば、酸化物半導体式センサ、QCM(Quartz Crystal Microbalance)センサ、FET(Field Effect Transistor)センサ、膜型表面応力センサ等が皮膚ガスセンサ11として利用され得る。また、PFS(Passive Flux Sampler)で収集した皮膚ガスを、GC-MS(ガスクロマトグラフィー質量分析)装置等を利用し皮膚ガス種ごとに定量測定した皮膚ガス放散量データを、皮膚ガスセンサ11のデータとして利用することもできる。PFSとは、被験者の皮膚表面から拡散する皮膚ガスを固体状の捕集材に吸着させて捕集する小型デバイスであり、捕集材から皮膚ガスを熱的又は化学的に脱離して化学分析に供するものであり、例えば、ジーエルサイエンス社製の皮膚ガスサンプラー(MonoTrap(登録商標)SG DCC18)がある。
【0016】
図2は、第1実施形態に係る皮膚ガスの検出位置の一例を示す図である。本実施形態に係る皮膚ガスセンサ11による皮膚ガスの検出位置は、被験者の手掌部31であり、特に、母指球部32又は指先部33であることが好ましい。これらの部位においては、毛細血管が多く、通常無毛であり、皮下脂肪が少ないため、皮膚ガスの放散量が多く、皮膚ガスを比較的安定して検出できる。なお、
図2においては、指先部33として親指の指先が例示されているが、指先部33は他の指(人差し指、中指、薬指又は小指)の指先であってもよい。
【0017】
なお、皮膚ガスセンサ11の検出位置、具体的構成、設置位置等は、上記に限定されるものではない。例えば、検出位置は、膝裏部等であってもよい。
【0018】
情報処理装置12は、皮膚ガスセンサ11と所定のネットワーク15を介して接続し、皮膚ガスセンサ11の検出結果に基づいて、被験者のストレスを検知するための各種情報処理を実行する。
【0019】
ここで例示する情報処理装置12は、汎用のコンピュータを利用して構成されるものであり、CPU(Central Processing Unit)21、RAM(Random Access Memory)22、ROM(Read Only Memory)23、ストレージ24、通信I/F(Interface)25及びユーザI/F26を備える。
【0020】
CPU21は、ROM23やストレージ24に記憶されたプログラムに従いRAM22を作業領域として使用して所定の演算処理を実行する。ストレージ24は、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)等の不揮発性メモリであり、プログラム、CPU21の処理に必要なデータ、CPU21の処理により生成されたデータ等の書き込み及び読み出しを可能にする。通信I/F25は、所定のネットワーク15を介して接続された皮膚ガスセンサ11等の他の電子機器との通信を可能にするデバイスである。ユーザI/F26は、ユーザ(ストレス検知システム1の使用者等)からの入力の受け付け、ユーザへの情報の出力等を可能にするデバイスであり、例えばキーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル機構、ディスプレイ、スピーカ、マイク等であり得る。CPU21、RAM22、ROM23、ストレージ24、通信I/F25及びユーザI/F26は、データバスを介して接続されている。
【0021】
なお、情報処理装置12のハードウェア構成は上記に限定されるものではなく、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を利用して構成されてもよいし、複数のコンピュータが連携して動作するシステムであってもよい。
【0022】
図3は、第1実施形態に係る情報処理装置12の機能構成の一例を示す図である。本実施形態に係る情報処理装置12は、取得部101、血管指標値演算部102、代謝指標値演算部103、判定部104、生成部105及び出力部106を有する。これらの機能部101~106は、情報処理装置12を構成するハードウェア要素とソフトウェア要素(プログラム、ファームウェア等)との協働により構成される。また、これらの機能部101~106のうちの少なくとも一部が専用のハードウェア(回路等)で構成されてもよい。
【0023】
取得部101は、皮膚ガスセンサ11から、被験者の皮膚から放散される皮膚ガスの放散量に関する放散量情報を取得する。本実施形態に係る取得部101は、複数種の血管関連ガスのそれぞれの放散量を示す血管関連ガス情報と、複数種の代謝関連ガスのそれぞれの放散量を示す代謝関連ガス情報と、を取得する。放散量とは、例えば、所定の単位時間当たりに放散される(皮膚ガスセンサ11により検出される)ガスの量を示す値であり得る。
【0024】
血管関連ガス情報は、例えば、ヘキサン酸の放散量、プロピオン酸の放散量等を含む。
【0025】
代謝関連ガス情報は、例えば、アセトンの放散量、酢酸の放散量、アセトアルデヒドの放散量等を含む。
【0026】
なお、取得部101が取得する放散量情報には、血管関連ガス及び代謝関連ガス以外の皮膚ガス、例えば、身体における恒常性維持活動に応じて放散される他の皮膚ガス等の放散量に関する情報が含まれてもよい。
【0027】
血管指標値演算部102は、取得部101により取得された血管関連ガス情報に基づいて血管指標値を算出する。血管指標値とは、複数種の血管関連ガスの総放散量に対する、当該複数種の血管関連ガスから選択された特定血管関連ガスの放散量の割合を示す値である。例えば、複数種の血管関連ガスをヘキサン酸及びプロピオン酸とし、特定血管関連ガスをヘキサン酸とし、ヘキサン酸の放散量をA1、プロピオン酸の放散量をA2とするとき、血管指標値BVは、下記式(1)により算出され得る。
【0028】
BV=A1/(A1+A2) …(1)
【0029】
すなわち、血管指標値BVは、ヘキサン酸及びプロピオン酸の総放散量に対するヘキサン酸の放散量の割合であり得る。なお、上記血管指標値BVの算出方法は例示であり、複数種の血管関連ガスの選定、及び特定血管関連ガスの選定は上記に限定されるものではない。例えば、血管指標値BVは、ヘキサン酸及びプロピオン酸の総放散量に対するプロピオン酸の放散量の割合であってもよい(BV’=A2/(A1+A2))。
【0030】
上記のように、複数の血管関連ガスの総放散量に対する特定血管関連ガスの放散量の割合である血管指標値BVを利用することにより、気候的条件や被験者固有の要因(体質、精神状態等)に起因する皮膚ガスの放散量の変動による影響を抑制できる。
【0031】
代謝指標値演算部103は、取得部101により取得された代謝関連ガス情報に基づいて代謝指標値を算出する。代謝指標値とは、複数種の代謝関連ガスの総放散量に対する、当該複数種の代謝関連ガスから選択された特定代謝関連ガスの放散量の割合を示す値である。例えば、複数種の代謝関連ガスをアセトン、酢酸及びアセトアルデヒドとし、特定代謝関連ガスをアセトンとし、アセトンの放散量をB1、酢酸の放散量をB2、アセトアルデヒドの放散量をB3とするとき、代謝指標値MEは、下記式(2)により算出され得る。
【0032】
ME=B1/(B1+B2+B3) …(2)
【0033】
すなわち、代謝指標値MEは、アセトン、酢酸及びアセトアルデヒドの総放散量に対するアセトンの放散量の割合であり得る。なお、上記代謝指標値MEの算出方法は例示であり、複数種の代謝関連ガスの選定、及び特定代謝関連ガスの選定は上記に限定されるものではない。例えば、代謝指標値MEは、アセトン、酢酸及びアセトアルデヒドの総放散量に対する酢酸及びアルデヒド総放散量の放散量の割合であってもよい(ME’=(B2+B3)/(B1+B2+B3))。
【0034】
上記のように、複数の代謝関連ガスの総放散量に対する特定代謝関連ガスの放散量の割合である代謝指標値MEを利用することにより、気候的条件や被験者固有の要因(体質、精神状態等)に起因する皮膚ガスの放散量の変動による影響を抑制できる。
【0035】
判定部104は、血管指標値演算部102により算出された血管指標値BV及び代謝指標値演算部103により算出された代謝指標値MEに基づいて、被験者が所定程度以上のストレスを感じているストレス状態にあるか否かを判定する。なお、判定部104は、血管指標値BV及び代謝指標値ME以外の指標値に基づいてストレス状態にあるか否かを判定してもよい。
【0036】
生成部105は、判定部104による判定結果に基づいて、被験者のストレスに関するストレス情報を生成する。ストレス情報には、被験者のストレスを軽減するための支援情報が含まれてもよい。
【0037】
出力部106は、生成部105により生成されたストレス情報を所定の形式で出力する。
【0038】
図4は、第1実施形態に係る血管指標値BVとストレス値Sとの関係の一例を示す図である。
図4において、血管指標値BVとストレス値Sとの関係を示す線L1が例示されている。ストレス値Sとは、被験者が感じているストレスの強さを所定の基準に基づいて数値化したものであり、ここではストレスが強いほど高い値となるように設定されている。ここで例示する血管指標値BVは、ヘキサン酸及びプロピオン酸の総放散量に対するヘキサン酸の割合である。
図4から、ストレス値Sが高いほど血管指標値BVが低くなる関係が存在することがわかる。ここで、ストレス値Sが閾値S1以上である場合に被験者がストレス状態にあると設定する場合、血管指標値BVが閾値S1に対応する閾値X1(第1閾値の一例)以下である場合に、被験者はストレス状態にあると判定できる。
【0039】
図5は、第1実施形態に係る代謝指標値MEと身体的ストレス値Sbとの関係の一例を示す図である。
図5において、代謝指標値MEと身体的ストレス値Sbとの関係を示す線L2が例示されている。身体的ストレス値Sbとは、被験者が感じている身体的ストレスの強さを所定の基準に基づいて数値化したものであり、ここでは身体的ストレスが強いほど高い値となるように設定されている。身体的ストレスとは、ストレス刺激(ストレッサー)により身体面で引き起こされるストレス反応を指し、例えば、体のふしぶしの痛み、頭痛、肩こり、腰痛、目の疲れ、動悸や息切れ、胃痛、食用低下、便秘や下痢、不眠、だるさ感等の症状を伴うストレスをいう。ここで例示する代謝指標値MEは、アセトン、酢酸及びアセトアルデヒドの総放散量に対するアセトンの放散量の割合である。
図5から、身体的ストレス値Sbが高いほど代謝指標値MEが高くなる関係が存在することがわかる。ここで、身体的ストレス値Sbが閾値Sb1以上である場合に被験者が身体的ストレス状態にあると設定する場合、代謝指標値MEが閾値Sb1に対応する閾値Y1(第2閾値の一例)以上である場合に、被験者は身体的ストレス状態にあると判定できる。
【0040】
図6は、第1実施形態に係る判定部104による判定方法の一例を示す図である。本実施形態に係る判定部104は、血管指標値BVと閾値X1との関係が所定条件を満たす場合に、被験者がストレス状態にあると判定する。例えば、血管指標値BVをヘキサン酸及びプロピオン酸の総放散量に対するヘキサン酸の割合とする場合には、血管指標値BVが閾値X1以下である場合、すなわち
図6に示されるグラフにおいて点(BV,ME)が領域R1内又は領域R2内にある場合に、被験者はストレス状態にあると判定する。なお、上記閾値X1や所定条件(BVとX1との大小関係等)は、血管関連ガスや特定血管関連ガスの選定に応じて変化する。
【0041】
また、判定部104は、被験者がストレス状態にあると判定された場合には、代謝指標値MEと閾値Y1との関係に基づいて、被験者が身体的なストレスを感じている身体的ストレス状態にあるか又は精神的なストレスを感じている精神的ストレス状態にあるかを判定する。例えば、代謝指標値MEをアセトン、酢酸及びアセトアルデヒドの総放散量に対するアセトンの放散量の割合とする場合には、血管指標値BVが閾値X1以下であり、且つ代謝指標値MEが閾値Y1以上である場合、すなわち
図6に示されるグラフにおいて点(BV,ME)が領域R1内にある場合に、被験者は身体的ストレス状態にあると判定する。
【0042】
また、判定部104は、血管指標値BVが閾値X1以下であり、且つ代謝指標値MEが閾値Y1未満である場合、すなわち
図6に示されるグラフにおいて点(BV,ME)が領域R2内にある場合に、被験者は精神的ストレス状態にあると判定する。精神的ストレスとは、ストレス刺激(ストレッサー)によって心理面で引き起こされるストレス反応を指し、例えば、活気の低下、イライラ、不安、抑うつ(気分の落ち込み、興味・関心の低下)等の症状を伴うストレスをいう。
【0043】
また、判定部104は、血管指標値BVが閾値X1より大きく、且つ代謝指標値MEが閾値Y2以下である場合、すなわち
図6に示されるグラフにおいて点(BV,ME)が領域R3内にある場合に、被験者は中立状態にあると判定する。中立状態とは、ストレス状態でなく、心身共に安定した状態であり得る。
【0044】
また、判定部104は、血管指標値BVが閾値X1より大きく、且つ代謝指標値MEが閾値Y2より大きい場合、すなわち
図6に示されるグラフにおいて点(BV,ME)が領域R4内にある場合に、被験者は一時的高活動状態にあると判定する。一時的高活動状態とは、ストレス状態ではないが、身体的負荷が通常よりも高まっている状態であり得る。なお、上記閾値Y1,Y2や領域R1~R4を区分するための条件(MEとY1とY2との大小関係等)は、代謝関連ガスや特定代謝関連ガスの選定に応じて変化する。
【0045】
上記のような判定手法によれば、血管指標値BVに基づいて被験者がストレス状態にあるか否かを判定できる。また、血管指標値BVに加え代謝指標値MEに基づいて、被験者が感じているストレスの種類が身体的なものか精神的なものかを判定できる。また、ストレス状態以外の他の状態(上記例では中立状態及び一時的高活動状態)を判定することも可能である。このような他の状態に関する判定結果は、例えばストレス情報や支援情報の生成に利用され得る。
【0046】
図7は、第1実施形態に係るストレス検知システム1における処理の一例を示すフローチャートである。取得部101が皮膚ガスセンサ11から皮膚ガス情報を取得すると(S101)、血管指標値演算部102は皮膚ガス情報に基づいて血管指標値BVを算出し(S102)、代謝指標値演算部103は皮膚ガス情報に基づいて代謝指標値MEを算出する(S103)。血管指標値BVは例えばヘキサン酸及びプロピオン酸の総放散量に対するヘキサン酸の放散量の割合であり得る。代謝指標値MEは例えばアセトン、酢酸及びアセトアルデヒドの総放散量に対するアセトンの放散量の割合であり得る。
【0047】
その後、判定部104は血管指標値BVが閾値X1以下であるか否かを判定する(S104)。血管指標値BVが閾値X1以下である場合(S104:Yes)、判定部104は被験者がストレス状態にあると判定し、更に代謝指標値MEが閾値Y1以下であるか否かを判定する(S105)。代謝指標値MEが閾値Y1以下である(BV≦X1且つME≦Y1)場合(S105:Yes)、判定部104は被験者が精神的ストレス状態(領域R2)にあると判定する(S106)。その後、生成部105は精神的ストレス状態を軽減するための支援情報を生成し(S107)、被験者が精神的ストレス状態にあることを示す情報と、精神的ストレス状態を軽減するための支援情報と、を含むストレス情報を生成する(S108)。出力部106は生成されたストレス情報を所定の形式で出力する(S109)。
【0048】
代謝指標値MEが閾値Y1以下でない(BV≦X1且つME>Y1)場合(S105:No)、判定部104は被験者が身体的ストレス状態(領域R1)にあると判定する(S110)。その後、生成部105は身体的ストレス状態を軽減するための支援情報を生成し(S107)、被験者が身体的ストレス状態にあることを示す情報と、身体的ストレス状態を軽減するための支援情報と、を含むストレス情報を生成する(S108)。そして、出力部106は生成されたストレス情報を所定の形式で出力する(S109)。
【0049】
血管指標値BVが閾値X1以下でない(BV>X1)場合(S104:No)、判定部104は代謝指標値MEが閾値Y2以下であるか否かを判定する(S111)。代謝指標値MEが閾値Y2以下である(BV>X1且つME≦Y2)場合(S111:Yes)、判定部104は被験者が中立状態(領域R3)にあると判定する(S112)。その後、生成部105は被験者が中立状態にあることを示す情報を含むストレス情報を生成し(S108)、出力部106は生成されたストレス情報を所定の形式で出力する(S109)。
【0050】
代謝指標値MEが閾値Y2以下でない(BV>X1且つME>Y2)場合(S111:No)、判定部104は被験者が一時的高活動状態(領域R4)にあると判定する(S113)。その後、生成部105は被験者が一時的高活動状態にあることを示す情報を含むストレス情報を生成し(S108)、出力部106は生成されたストレス情報を所定の形式で出力する(S109)。
【0051】
上記のような処理によれば、血管指標値BV及び代謝指標値MEに基づいて被験者が精神的ストレス状態、身体的ストレス状態、中立状態又は一時的高活動状態のいずれにあるかを判定できる。また、その判定結果に基づいて被験者に有用なストレス情報を提供できる。
【0052】
以下に、判定部104による判定結果の利用方法例について説明する。
【0053】
図8は、第1実施形態に係る判定結果の第1例を示す図である。
図9は、第1実施形態に係る判定結果の第2例を示す図である。
図8及び
図9において、ある被験者のストレスに関する状態の一週間にわたる変化が例示されている。両図中、7つの点のそれぞれは、曜日毎の被験者の血管指標値BV及び代謝指標値MEの組み合わせで定まる点(BV,ME)を示している。なお、
図8及び
図9における血管指標値BV、代謝指標値ME及び領域R1~R4は、
図6における血管指標値BV、代謝指標値ME及び領域R1~R4と対応している。
【0054】
図8に示される第1例では、月曜日から日曜日のそれぞれに対応する全ての点が、中立状態を示す領域R3内に存在している。このような判定結果が得られた場合、被験者は一週間にわたってほとんどストレスを感じることなく過ごせたことがわかる。
【0055】
図9に示される第2例では、月曜日、水曜日、金曜日及び日曜日のそれぞれに対応する4つの点が中立状態であることを示す領域R3内に存在し、火曜日及び土曜日のそれぞれに対応する2つの点が精神的ストレス状態を示す領域R2内に存在し、木曜日に対応する1つの点が身体的ストレス状態を示す領域R1内に存在している。このような結果が得られた場合、被験者は一週間のうち火曜日及び土曜日に精神的なストレスを感じ、木曜日に身体的なストレスを感じたことがわかる。
【0056】
本実施形態の生成部105は、上記のような判定結果に基づいて、被験者にとって有用なストレス情報を生成する。例えば、上記のような時系列的な変動パターンに基づいて、被験者が高ストレス状態に陥る予兆を捉えることができ、被験者にとって有用なストレス情報を早期に展開することが可能となり、過度のストレス状態に陥ることを予防する効果を期待できる。
【0057】
図10は、第1実施形態に係るストレス情報51の一例を示す図である。本例に係るストレス情報51は、ストレス状態表示部52及び支援情報表示部53を含む。ストレス状態表示部52には、被験者のストレスに関する状態の一週間にわたる変化を示す情報が表示されている。支援情報表示部53には、被験者のストレスの傾向、被験者のストレスを軽減するためのアドバイス等を示す情報が表示されている。なお、上記ストレス情報51の構成は一例であり、ストレス情報51の態様は使用状況等に応じて適宜決定されるべきものである。
【0058】
上記のようなストレス情報51を被験者に提供することにより、被験者は自分の状態を把握し、生活様式等の改善を図ることができる。
【0059】
図11は、第1実施形態に係るストレス検知システム1においてストレス情報51を被験者Pに提供するための形態の一例を示す図である。
図11に例示されるストレス検知システム1においては、情報処理装置12が所定の検出デバイス61から複数の被験者Pのそれぞれに対応する放散量情報をネットワーク15を介して取得し、取得した各放散量情報に基づいて各被験者Pのストレス情報51を生成し、生成した各ストレス情報51をそれぞれ対応する被験者Pが使用する端末装置62にネットワーク15を介して送信する。
【0060】
検出デバイス61(皮膚ガスセンサ11が搭載されたデバイス)の形態は特に限定されるべきものではないが、例えば特定の場所に固定的に設置された専用デバイス、被験者Pが装着可能なウェアラブルデバイス等であり得る。被験者Pが使用する端末装置62の形態は特に限定されるべきものではないが、例えばスマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ、ストレス検知システム1での使用に特化した専用デバイス等であり得る。
【0061】
上記のようなシステムによれば、被験者Pは自らのストレス状態の把握、ストレスを軽減するためアドバイス等を含む有用なストレス情報51を簡便に取得できる。なお、ストレス情報51を被験者Pに提供する方法は上記に限定されるものではない。
【0062】
以上のように、本実施形態では、ストレス検知システム1は、取得部101と、判定部104と、生成部105と、を備える。取得部101は、被験者の皮膚から放散された複数種の皮膚ガスの放散量に関する放散量情報を取得する。判定部104は、放散量情報に基づいて算出された、複数種の皮膚ガスの総放散量に対する複数種の皮膚ガスから選択された特定皮膚ガスの放散量の割合を示す指標値に基づいて、被験者がストレスを感じているストレス状態にあるか否かを判定する。生成部105は、判定部104による判定結果に基づいて被験者のストレスに関するストレス情報を生成する。
【0063】
上記構成によれば、複数種の皮膚ガスの総放散量に対する特定皮膚ガスの放散量の割合を示す指標値(例えば血管指標値及び代謝指標値)に基づいて被験者のストレスが検知される。これにより、気候的条件や被験者固有の要因(体質、精神状態等)に起因する皮膚ガスの放散量の変動による影響を抑制でき、被験者のストレスを高い精度で検知することが可能となる。
【0064】
また、上記構成において、複数種の皮膚ガスは、血管運動に関する複数種の血管関連ガスを含む。指標値は、複数種の血管関連ガスの総放散量に対する複数種の血管関連ガスから選択された特定血管関連ガスの放散量の割合を示す血管指標値を含む。判定部104は、血管指標値に基づいて被験者がストレス状態にあるか否かを判定する。
【0065】
上記構成によれば、血管運動に関する血管関連ガスの放散量に基づいて被験者がストレス状態にあるか否かを定できる。
【0066】
また、上記構成において、複数種の血管関連ガスは、ヘキサン酸及びプロピオン酸を含む。血管指標値は、ヘキサン酸及びプロピオン酸の総放散量に対するヘキサン酸又はプロピオン酸のどちらか一方の割合を示す。判定部104は、血管指標値と閾値との関係が所定条件を満たす場合に、被験者がストレス状態にあると判定する。
【0067】
上記構成によれば、血管関連ガスの一例であるヘキサン酸及びプロピオン酸の放散量に基づいて被験者がストレス状態にあるか否かを判定できる。
【0068】
また、上記構成において、複数種の皮膚ガスは、血管運動に関する複数種の血管関連ガスと、代謝活動に関する複数種の代謝関連ガスと、を含む。指標値は、複数種の血管関連ガスの総放散量に対する複数種の血管関連ガスから選択された特定血管関連ガスの放散量の割合を示す血管指標値と、複数種の代謝関連ガスの総放散量に対する複数種の代謝関連ガスから選択された特定代謝関連ガスの放散量の割合を示す代謝指標値と、を含む。判定部104は、血管指標値に基づいて被験者がストレス状態にあるか否かを判定し、代謝指標値に基づいて被験者が感じているストレスが身体的なものか精神的なものかを判定する。
【0069】
上記構成によれば、血管運動に関する血管関連ガスの放散量に基づいて被験者がストレス状態にあるか否かを判定できるとともに、代謝活動に関する代謝関連ガスの放散量に基づいて被験者が感じているストレスが身体的なものか精神的なものかを判定できる。
【0070】
また、上記構成において、複数種の血管関連ガスは、ヘキサン酸及びプロピオン酸を含む。複数種の代謝関連ガスは、アセトン、酢酸及びアセトアルデヒドを含む。血管指標値は、ヘキサン酸及びプロピオン酸の総放散量に対するヘキサン酸又はプロピオン酸のどちらか一方の放散量の割合を示す。代謝指標値は、アセトン、酢酸及びアセトアルデヒドの総放散量に対するアセトン、酢酸及びアセトアルデヒドのうちのいずれか1つの放散量の割合を示す。判定部104は、血管指標値と第1閾値との関係が所定条件を満たす場合に、被験者がストレス状態にあると判定し、被験者がストレス状態にあると判定された場合に、代謝指標値と第2閾値との関係に基づいて、被験者が身体的なストレスを感じている身体的ストレス状態にあるか又は精神的なストレスを感じている精神的ストレス状態にあるかを判定する。
【0071】
上記構成によれば、血管関連ガスの一例であるヘキサン酸及びプロピオン酸の放散量に基づいて被験者がストレス状態にあるか否かを判定できるとともに、代謝関連ガスの一例であるアセトン、酢酸及びアセトアルデヒドの放散量に基づいて被験者が感じているストレスが身体的なものか精神的なものかを判定できる。
【0072】
また、上記構成において、生成部105は、判定部104により被験者がストレス状態にあると判定された場合に、被験者のストレスを軽減するための支援情報を含むストレス情報を生成する。
【0073】
上記構成によれば、被験者のストレス状態に応じて被験者にとって有用な支援情報を含むストレス情報を生成し、当該ストレス情報を被験者に提供することが可能となる。
【0074】
また、本実施形態のストレス検知方法は、被験者の皮膚から放散された複数種の皮膚ガスの放散量に関する放散量情報を取得し、放散量情報に基づいて算出された、複数種の皮膚ガスの総放散量に対する複数種の皮膚ガスから選択された特定皮膚ガスの放散量の割合を示す指標値に基づいて、被験者がストレスを感じているストレス状態にあるか否かを判定する。
【0075】
上記構成によれば、上記ストレス検知システム1と同様に、複数種の皮膚ガスの総放散量に対する特定皮膚ガスの放散量の割合を示す指標値に基づいて被験者のストレスが検知される。これにより、気候的条件や被験者固有の要因に起因する皮膚ガスの放散量の変動による影響を抑制でき、被験者のストレスを高い精度で検知することが可能となる。
【0076】
(変形例)
上記実施形態においては、情報処理装置12により生成されたストレス情報を略そのまま被験者Pに提供する場合を例示したが、ストレス情報の利用方法はこれに限定されるものではない。例えば、ストレス情報を車両等の移動体の制御に利用してもよい。この場合、皮膚ガスセンサ11は例えば車内の所定部分(例えばハンドル、シフトレバー等)に搭載され、情報処理装置12は例えば車載ECU(Electronic Control Unit)等の形態を取り得る。そして、情報処理装置12から出力されたストレス情報は、車両の各機構(例えば制動機構、駆動機構、車内ユーザインターフェース等)の制御に利用され得る。これにより、移動体の乗員(運転手)のストレス状態に応じた車両の安全制御、走行支援制御等が可能となる。
【0077】
また、本発明はストレス検知方法として実現され得るものである。ストレス検知方法において皮膚ガスを収集する好適な手段として、例えばPFSを挙げることができ、収集された皮膚ガスの放散量を測定する方法として、GC-MS等を挙げることができる。また、取得された皮膚ガス放散量情報より、複数種の皮膚ガスから選択された特定皮膚ガスの放散量の割合を示す指標値を算出し得る。
【0078】
上述したようなストレス検知システム1の各種機能を実現するために情報処理装置12に各種処理を実行させるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されてもよい。また、プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。また、プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するようにしてもよい。
【0079】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態のストレス検知システム1は、第1実施形態のストレス検知システム1と同様の構成を有する。但し、本実施形態は、ストレス検知システム1が、代謝指標値及び血管指標値の日内変動及び日間変動に関する情報に基づいて、被験者Pのストレス状態を判定する点が、第1実施形態に対して主に異なる。一例として、本実施形態のストレス検知システム1は、代謝指標値及び血管指標値の日間変動及び日内変動の特徴から被験者Pのストレス状態の重症化リスクを判定する。
【0080】
日間変動は、複数の日の間の指標値(代謝指標値、血管指標値)の変動である。各日の指標値(代謝指標値、血管指標値)は、例えば、当該日の所定の時刻の指標値であってもよいし、当該日の複数の時刻の指標値の平均値であってもよい。以後、代謝指標値の日間変動量を代謝指標値日間変動量ME1とも称し、血管指標値の日間変動量を血管指標値日間変動量BV1とも称する。
【0081】
日内変動は、一日の中での指標値(代謝指標値、血管指標値)の変動であり、例えば、一日の中の所定の二つの時刻の指標値(代謝指標値、血管指標値)の変動である。二つの時刻は、例えば朝(起床時)の第1時刻と夜(就寝前)の第2時刻とである。以後、代謝指標値の日内変動量を代謝指標値日内変動量ME2とも称し、血管指標値の日内変動量を血管指標値日内変動量BV2とも称する。なお、日内変動は、一日の中での指標値の最大値と最小値との差であってもよい。
【0082】
図12~
図15には、職業性ストレス簡易調査票にて低ストレス者及び高ストレス者と判定された被験者Pの代謝指標値と血管指標値との関係の一例が示されている。
図12は、第2実施形態に係る低ストレス者及び高ストレス者の代謝指標値の日間変化量の標準偏差の一例を示す図である。
図13は、第2実施形態に係る低ストレス者及び高ストレス者の血管指標値の日間変化量の標準偏差の一例を示す図である。
図14は、第2実施形態に係る低ストレス者及び高ストレス者の代謝指標値の日内変化量の平均値の一例を示す図である。
図15は、第2実施形態に係る低ストレス者及び高ストレス者の血管指標値の日内変化量の平均値の一例を示す図である。
【0083】
図12に示されるように、代謝指標値の日間変動(5日間の日間変化量の標準偏差)は、高ストレス者が低ストレス者よりも大きい。
図13に示されるように、血管指標値の日間変動(5日間の日間変化量の標準偏差)は、高ストレス者が低ストレス者よりも小さい。このように、低ストレス者と高ストレス者とでは、指標値(代謝指標値、血管指標値)の日間変動の特徴が異なる。
【0084】
図14に示されるように、代謝指標値の日内変動(5日間の日内変動量の平均値)は、高ストレス者が低ストレス者よりも小さい。
図15に示されるように、血管指標値の日内変動(5日間の日内変動量の平均値)は、高ストレス者が低ストレス者よりも小さい。ここで、各指標値の変動量は、例えば、第1時刻(起床時)の指標値から第2時刻(就床前)の指標値を減算したものである。このように、低ストレス者と高ストレス者とでは、指標値(代謝指標値、血管指標値)の日内変動の特徴が異なる。
【0085】
上記のような各指標値(代謝指標値、血管指標値)の変動特徴の経時的変化をみることにより、高ストレス者(重症化リスクが高い人、高まっている状態)であるかを早期に把握することができる。ここで、高ストレス者はストレス感を感じやすいことが広く知られている。よって、高ストレス者であることを早期に把握できれば有益である。
【0086】
本実施形態の判定部104は、各指標値(代謝指標値、血管指標値)に基づいて職業性ストレス簡易調査票の得点を推定し、推定した得点に基づいて被験者Pのストレス状態を推定する。ここで、本実施形態では、得点は、職業性ストレス簡易調査票において低ストレス者、高ストレス者判定に用いられるA得点、B得点、C得点を用いる。
【0087】
図16は、第2実施形態に係るB得点の正解値及び推定値との関係の一例を示す図である。
図16において、B得点の正解値とB得点の推定値である推定B得点との関係を示す線L11が例示されている。B得点の正解値は、被験者Pの職業性ストレス簡易調査票のB得点の結果である。推定B得点は、被験者Pの指標値(代謝指標値、血管指標値)から下記の式(11)によって推定されたものである。式(11)は、推定モデルの一例である。
【0088】
推定B得点=-1.496×血管指標値日間変動量BV1
-53.489×代謝指標値日間変動量ME1
+66.372×血管指標値日内変動量BV2
+37.016×代謝指標値日内変動量ME2
+1.510 …(11)
【0089】
図17は、第2実施形態に係る(A+C)得点の正解値及び推定値との関係の一例を示す図である。
図17において、(A+C)得点の正解値と(A+C)得点の推定値である推定(A+C)得点との関係を示す線L12が例示されている。(A+C)得点の正解値は、被験者Pの職業性ストレス簡易調査票のA得点とC得点との合計の結果である。推定(A+C)得点は、被験者Pの指標値(代謝指標値、血管指標値)から下記の式(12)によって推定されたものである。式(12)は、推定モデルの一例である。
【0090】
推定(A+C)得点=-8.722×血管指標値日間変動量BV1
-39.673×代謝指標値日間変動量ME1
+0.712×血管指標値日内変動量BV2
-6.029×代謝指標値日内変動量ME2
+31.859 …(12)
【0091】
図18は、第2実施形態に係る判定部による判定方法の一例を示す図である。
図18の横軸は、(A+C)得点であり、
図18の縦軸は、(B)得点である。本実施形態に係る判定部104は、推定(A+C)得点と推定(B)得点との関係が所定条件を満たす場合に、被験者Pが高ストレス状態にあると判定する。例えば、判定部104は、推定(B)得点が17(閾値)以下且つ推定(A+C)得点が26(閾値)以下の場合と、推定(A+C)得点が26(閾値)より大きく且つ推定(B)得点が12(閾値)以下の場合、すなわち
図18に示されるグラフにおいてハッチングで示されるD群の領域にある場合に、被験者Pは高ストレス状態にあると判定する。判定部104は、上記以外の場合には、被験者Pは低ストレス状態にあると判定する。以後、推定(B)得点を重症化リスク値SC1とも称し、推定(A+C)得点を重症化リスク値SC2とも称する。
【0092】
図19は、第2実施形態に係るストレス検知システムにおける処理の一例を示すフローチャートである。本処理は、第1実施形態の
図7の処理と同様の処理については詳しい説明が省略される。
【0093】
取得部101が皮膚ガスセンサ11から皮膚ガス情報を取得すると(S101)、血管指標値演算部102は皮膚ガス情報に基づいて血管指標値BVを算出し(S102)、代謝指標値演算部103は皮膚ガス情報に基づいて代謝指標値MEを算出する(S103)。
【0094】
その後、判定部104は、重症化リスク値SC1を算出するとともに(S201)、重症化リスク値SC2を算出する(S202)。
【0095】
次に、判定部104は、重症化リスク値SC1が17以上であるか否かを判定する(S203)。判定部104は、重症化リスク値SC1が17以上であると判定した場合(S203:Yes)、重症化リスク値SC2が26以下であるか否かを判定する(S204)。判定部104は、重症化リスク値SC2が26以下であると判定した場合(S204:Yes)、被験者Pが高ストレス状態にあると判定する(S205)。その後、生成部105はストレス状態を軽減するための支援情報を生成し(S107)、被験者Pが高ストレス状態にあることを示す情報と、ストレス状態を軽減するための支援情報と、を含むストレス情報を生成する(S108)。出力部106は生成されたストレス情報を所定の形式で出力する(S109)。
【0096】
判定部104は、S204において重症化リスク値SC2が26以下でないと判定した場合(S204:No)、重症化リスク値SC1が12以下であるか否かを判定する(S206)。判定部104は、S206において重症化リスク値SC1が12以下であると判定した場合(S206:Yes)、被験者Pが高ストレス状態にあると判定する(S205)。その後、S107~S109の処理が実行される。
【0097】
判定部104は、S206において重症化リスク値SC1が12以下ではないと判定した場合(S206:No)、被験者Pが低ストレス状態にあると判定する(S207)。その後、生成部105は被験者Pが低ストレス状態にあることを示す情報を含むストレス情報を生成し(S108)、出力部106は生成されたストレス情報を所定の形式で出力する(S109)。
【0098】
判定部104は、S203において重症化リスク値SC1が17以上ではないと判定した場合(S203:No)、被験者Pが低ストレス状態にあると判定する(S207)。その後、生成部105は被験者Pが低ストレス状態にあることを示す情報を含むストレス情報を生成し(S108)、出力部106は生成されたストレス情報を所定の形式で出力する(S109)。
【0099】
以上の構成によれば、代謝指標値及び血管指標値の日内変動及び日間変動に関する情報(特徴量)からB得点、(A+C)得点を高い精度で推定することができる。よって、日々の代謝指標値及び血管指標値のモニタリングにより、早期に且つタイムリーに高ストレス者(重症化リスクが高い人、高まっている状態)であるかを判定することができる。また、上記構成によれば、代謝指標値及び血管指標値の生理特徴及び心理特徴の両面から高ストレス者であるかを早期に把握することができる。
【0100】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態のストレス検知システム1は、第2実施形態のストレス検知システム1と同様の構成を有する。但し、本実施形態は、ストレス検知システム1が、代謝指標値及び血管指標値の日内変動及び日間変動のうち代謝指標値及び血管指標値の日内変動に関する情報に基づいて、被験者Pのストレス状態を判定する点が第2実施形態に対して主に異なる。
【0101】
図20は、第3実施形態に係るB得点の正解値及び推定値との関係の一例を示す図である。
図20において、B得点の正解値とB得点の推定値である推定B得点との関係を示す線L13が例示されている。推定B得点は、被験者Pの指標値(代謝指標値、血管指標値)から下記の式(13)によって推定されたものである。式(13)は、推定モデルの一例である。
【0102】
推定B得点=-21.667×血管指標値日内変動量BV2
-28.445×代謝指標値日内変動量ME2
+14.159 …(13)
【0103】
図21は、第3実施形態に係る(A+C)得点の正解値及び推定値との関係の一例を示す図である。
図21において、(A+C)得点の正解値と(A+C)得点の推定値である推定(A+C)得点との関係を示す線L14が例示されている。推定(A+C)得点は、被験者Pの指標値(代謝指標値、血管指標値)から下記の式(14)によって推定されたものである。式(14)は、推定モデルの一例である。
【0104】
推定(A+C)得点=-7.149×血管指標値日内変動量BV2
-44.650×代謝指標値日内変動量ME2
+31.416 …(14)
【0105】
そして、本実施形態では、上記によって算出された推定B得点及び推定(A+C)得点、すなわち重症化リスク値SC1及び重症化リスク値SC2を用いて
図19に示される処理が実行される。
【0106】
上記構成によれば、日々の代謝指標値及び血管指標値のモニタリングにより、早期に且つタイムリーに高ストレス者(重症化リスクが高い人、高まっている状態)であるかを判定することができる。また、上記構成によれば、代謝指標値及び血管指標値の生理特徴及び心理特徴の両面から高ストレス者であるかを早期に把握することができる。
【0107】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態のストレス検知システム1は、第3実施形態のストレス検知システム1と同様の構成を有する。但し、本実施形態は、ストレス検知システム1が、代謝指標値及び血管指標値の日内変動及び日間変動のうち代謝指標値及び血管指標値の日内変動に関する情報と、ストレス心理スコアの情報とに基づいて、被験者Pのストレス状態を判定する点が第3実施形態に対して主に異なる。
【0108】
ストレス心理スコアは、例えば、主観的に感じるストレスの度合いを表すものである。ストレス心理スコアは、例えば、被験者Pによって端末装置62に入力され、端末装置62から情報処理装置12に入力される。ストレス心理スコアは、主観的心理スコアとも称される。
【0109】
図22は、第4実施形態に係る低ストレス者及び高ストレス者の朝夕のストレス心理スコアの一例を示す図である。
図22に示されるように、ストレス心理スコアは、低ストレス者と高ストレス者とで異なるとともに、低ストレス者及び高ストレス者のそれぞれにおいて時間帯(朝、昼)によって異なる。
【0110】
図23は、第4実施形態に係るB得点の正解値及び推定値との関係の一例を示す図である。
図23において、B得点の正解値とB得点の推定値である推定B得点との関係を示す線L15が例示されている。推定B得点は、被験者Pの指標値(代謝指標値、血管指標値)及びストレス心理スコアから下記の式(15)によって推定されたものである。式(15)は、推定モデルの一例である。
【0111】
推定B得点=-31.505×血管指標値日内変動量BV2
-25.881×代謝指標値日内変動量ME2
+2.29×心理スコア差
+11.965 …(15)
ここで、心理スコア差は、1日における被験者Pのストレス心理スコアの差であり、例えば、第1時刻(朝)のストレス心理スコアと第2時刻(夜)のストレス心理スコアとの差である。なお、心理スコア差内は、一日の中でのストレス心理スコアの最大値と最小値との差であってもよい。
【0112】
図24は、第4実施形態に係る(A+C)得点の正解値及び推定値との関係の一例を示す図である。
図24において、(A+C)得点の正解値と(A+C)得点の推定値である推定(A+C)得点との関係を示す線L16が例示されている。推定(A+C)得点は、被験者Pの指標値(代謝指標値、血管指標値)及びストレス心理スコアから下記の式(16)によって推定されたものである。式(16)は、推定モデルの一例である。
【0113】
推定(A+C)得点=-15.704×血管指標値日内変動量BV2
-42.419×代謝指標値日内変動量ME2
+1.991×心理スコア差
+29.508 …(16)
ここで、心理スコア差は、ストレス心理スコアの日内変動量である。
【0114】
そして、本実施形態では、上記によって算出された推定B得点及び推定(A+C)得点、すなわち重症化リスク値SC1及び重症化リスク値SC2を用いて
図19に示される処理が実行される。
【0115】
上記構成によれば、日々の代謝指標値及び血管指標値のモニタリングにより、早期に且つタイムリーに高ストレス者(重症化リスクが高い人、高まっている状態)であるかを判定することができる。また、上記構成によれば、代謝指標値及び血管指標値の生理特徴及び心理特徴の両面から高ストレス者であるかを早期に把握することができる。
【0116】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、又は変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0117】
1…ストレス検知システム、11…皮膚ガスセンサ、12…情報処理装置、15…ネットワーク、31…手掌部、32…母指球部、33…指先部、51…ストレス情報、52…ストレス状態表示部、53…支援情報表示部、61…検出デバイス、62…端末装置、101…取得部、102…血管指標値演算部、103…代謝指標値演算部、104…判定部、105…生成部、106…出力部