(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171317
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】糸巻取機及びパッケージ生産システム
(51)【国際特許分類】
B65H 54/70 20060101AFI20241204BHJP
B65H 67/048 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B65H54/70 Z
B65H67/048
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024064785
(22)【出願日】2024-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2023088036
(32)【優先日】2023-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】松井 崇倫
【テーマコード(参考)】
3F112
【Fターム(参考)】
3F112AA08
3F112BA03
3F112CA03
3F112EA02
3F112EA06
3F112EA10
3F112EB02
3F112ED03
3F112SA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】玉揚げ中のパッケージから外れた糸が、巻取位置にあるボビンホルダに装着されたボビンに絡まることを抑制する。
【解決手段】糸巻取機1は、複数のボビンBに糸を巻き取って複数のパッケージPを形成する巻取位置A1と巻取位置よりも下側の待機位置A2との間で切り替え可能に構成された2つのボビンホルダ5と、前後方向に移動可能に構成され、後側から前側に移動することによって、待機位置にあるボビンホルダの前側の端部から複数のパッケージを押し出す押出部材と、巻取位置にあるボビンホルダに装着された複数ボビンに糸が進入することを阻止可能な糸進入阻止部材10と、を含む。糸進入阻止部材は、左右方向に延び、下側から糸が接触可能な糸接触部31を有する。糸接触部は、待機位置にあるボビンホルダよりも前後方向の前側であり、待機位置にあるボビンホルダよりも上側であり、且つ、巻取位置にあるボビンホルダよりも下側に位置している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のボビンが装着される2つのボビンホルダであって、前記各ボビンに糸を巻き取って複数のパッケージを形成する巻取位置と前記巻取位置よりも下側の待機位置との間で切り替え可能に構成された2つのボビンホルダと、
前記待機位置にある前記ボビンホルダの軸方向に移動可能に構成され、前記軸方向において一方側から他方側に移動することによって、前記待機位置にある前記ボビンホルダの前記他方側の端部から前記複数のパッケージを押し出す押出部材と、
前記巻取位置にある前記ボビンホルダに装着された前記複数のボビンに前記糸が進入することを阻止可能な糸進入阻止部材と、
を備え、
前記糸進入阻止部材は、前記軸方向と交差する交差方向に延び、下側から糸が接触可能な糸接触部を有し、
前記糸接触部は、前記待機位置にある前記ボビンホルダよりも前記軸方向の前記他方側であり、前記待機位置にあるボビンホルダよりも上側であり、且つ、前記巻取位置にある前記ボビンホルダよりも下側に位置している糸巻取機。
【請求項2】
前記糸進入阻止部材は、前記糸接触部の前記交差方向における途中部分から両側に向かって下方に傾斜する屈曲形状を有する請求項1に記載の糸巻取機。
【請求項3】
前記糸進入阻止部材は、前記糸接触部の前記交差方向における少なくとも一方側の端部に形成され、前記糸接触部から糸が外れることを防止する脱落防止部を有する請求項1又は2に記載の糸巻取機。
【請求項4】
前記糸進入阻止部材は、前記糸接触部を前記交差方向に伸縮させる伸縮機構を有する請求項1~3の何れか1項に記載の糸巻取機。
【請求項5】
前記糸接触部は、糸と接触する部分が曲面形状を有する請求項1~4の何れか1項に記載の糸巻取機。
【請求項6】
前記糸進入阻止部材の全体は、前記ボビンホルダよりも前記軸方向の前記他方側にある請求項1~5の何れか1項に記載の糸巻取機。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の糸巻取機と、
前記糸巻取機の、前記待機位置にある前記ボビンホルダに装着された前記複数のパッケージを玉揚げするための玉揚げ装置と、
を備え、
前記玉揚げ装置は、前記複数のパッケージを挿入可能に構成されたパッケージ支持軸と、前記パッケージ支持軸を上下方向に移動させる昇降機構と、を有するパッケージ生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡糸装置から紡出された糸をボビンに巻き取るための糸巻取機、及び、当該糸巻取機を有するパッケージ生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、紡糸装置から紡出された糸をボビンに巻き取ってパッケージを形成するための糸巻取機(特許文献1の糸条巻取機)が開示されている。糸巻取機は、複数のボビンが装着される2本のボビンホルダと、各ボビンホルダを片持ち支持する円板状のターレットとを有する。各ボビンホルダは、ターレットの回転中心に対して互いに対称な2つの位置に取り付けられており、ターレットが回転することによって上側の巻取位置と下側の待機位置との間で切り替え可能となっている。
【0003】
特許文献1のような糸巻取機では、上側の巻取位置にあるボビンホルダに装着された複数のボビンに糸が巻き取られることでパッケージが形成される。パッケージが満巻きになるとターレットが略半回転し、巻取位置にあるボビンホルダは下側の待機位置へと移動する。その後、各パッケージは玉揚げ装置によって玉揚げされる。以下、パッケージが玉揚げされるまでの具体的な流れについて説明する。
【0004】
まず、待機位置まで移動したボビンホルダに装着された複数のパッケージは、プッシャー装置によって押し出されて、ボビンホルダから取り外される。詳しく説明すると、プッシャー装置は、ボビンホルダの軸方向に移動可能に構成された押出部材(特許文献1の押し出し板)と、押出部材をボビンホルダの軸方向に沿ってターレットと反対側に移動させる駆動機構(特許文献1の駆動手段)とを有する。押出部材は、待機位置にあるボビンホルダに装着された複数のボビンのうち、最もターレット側にあるボビンとターレットとの間に配置されている。プッシャー装置は、駆動機構によって押出部材を軸方向におけるボビンホルダの自由端まで移動させることで、複数のパッケージをまとめて押し出して、待機位置にあるボビンホルダから取り外す。続いて、ボビンホルダから取り外された複数のパッケージは、玉揚げ装置に受け渡される。詳しく説明すると、玉揚げ装置は、各パッケージが挿し込まれるパッケージ支持軸を有する。そして、玉揚げ装置は、パッケージの玉揚げを行う際、待機位置にあるボビンホルダの軸方向の延長線上に沿ってパッケージ支持軸が配置されるような位置及び姿勢をとる。そうすると、押出部材によってボビンホルダから押し出された各パッケージは、そのままパッケージ支持軸に挿し込まれる。その後、パッケージが挿し込まれたパッケージ支持軸を、巻取位置のボビンホルダよりもさらに上方の所定の高さまで上昇させることによって、パッケージの玉揚げが完了する。
【0005】
ここで、パッケージ支持軸を所定の高さまで上昇させるのは、次の2つの理由からである。1つ目は、待機位置にあるボビンホルダに新たにボビンを装着する作業を行う際に、取り外し済みのパッケージが挿し込まれたパッケージ支持軸が邪魔にならないようにするためである。2つ目は、玉揚げされたパッケージを保管場所まで運ぶために玉揚げ装置が工場内を移動するとき、工場内を歩行しているオペレータにパッケージ支持軸が接触してしまう事故を防ぐためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1のような糸巻取機では、満巻きとなったパッケージが装着されたボビンホルダが巻取位置から待機位置に移動するのと入れ替わりで、新しいボビンが装着されたボビンホルダが上側の巻取位置にセットされる。そして、パッケージの玉揚げが行われている最中に、新たに巻取位置にセットされたボビンホルダを回転させて、新しいボビンへの糸の巻き取りが開始される。
【0008】
このとき、ボビンホルダの回転によって、ボビンホルダの周囲には風が発生する。この風によって、下側の待機位置にあるボビンホルダから取り外されている最中のパッケージにおいて糸の端部が自由に動き得る。そして、糸の端部がパッケージの表面から外れ落ちて押出部材や待機位置にあるボビンホルダ等(以下、単に「ボビンホルダ等」と言う)に引っ掛かってしまうおそれがある。玉揚げが進行し、玉揚げ装置に受け渡された各パッケージがパッケージ支持軸とともに所定の高さまで上昇すると、パッケージの表面から外れてボビンホルダ等に繋がっている糸は上に引っ張られる。そして、上に引っ張られた糸は、巻取位置にあるボビンホルダの回転に巻き込まれ、糸巻き取り中のボビンに絡まってしまう。
【0009】
従来は、ボビンホルダ等への糸の引っ掛かりがあった場合に、オペレータがハサミやカッタなどを用いて手作業で糸を切断することで対処している。しかしながら、オペレータが糸の引っ掛かりを目視で確認しなければならず、見落としが発生してしまう。或いは別の対処法として、パッケージ支持軸の先端部に電熱線を取り付けて、電熱線によって糸を焼き切ることが行われている。しかし、電熱線を糸に確実に接触させることが難しく、仮に電熱線を糸に接触させることができたとしても電熱線での切断はハサミ等による切断と比べて確実性に欠ける。
【0010】
本発明の目的は、玉揚げ中のパッケージから外れた糸が、巻取位置にあるボビンホルダに装着されたボビンに絡まることを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の糸巻取機は、複数のボビンが装着される2つのボビンホルダであって、前記各ボビンに糸を巻き取って複数のパッケージを形成する巻取位置と前記巻取位置よりも下側の待機位置との間で切り替え可能に構成された2つのボビンホルダと、前記待機位置にある前記ボビンホルダの軸方向に移動可能に構成され、前記軸方向において一方側から他方側に移動することによって、前記待機位置にある前記ボビンホルダの前記他方側の端部から前記複数のパッケージを押し出す押出部材と、前記巻取位置にある前記ボビンホルダに装着された前記複数のボビンに前記糸が進入することを阻止可能な糸進入阻止部材と、を備え、前記糸進入阻止部材は、前記軸方向と交差する交差方向に延び、下側から糸が接触可能な糸接触部を有し、前記糸接触部は、前記待機位置にある前記ボビンホルダよりも前記軸方向の前記他方側であり、前記待機位置にあるボビンホルダよりも上側であり、且つ、前記巻取位置にある前記ボビンホルダよりも下側に位置している。
【0012】
満巻きとなった複数のパッケージは、玉揚げ装置によって糸巻取機から玉揚げされる。玉揚げの際、玉揚げ装置は、複数のパッケージが挿入されたパッケージ支持軸を所定の高さまで上昇させる。このとき、パッケージから外れた糸が待機位置にあるボビンホルダ等に引っ掛かっていると、当該糸は、パッケージ支持軸の上昇に伴い上に引っ張られて、巻取位置にあるボビンホルダに装着されたボビンに絡まるおそれがある。この点、本発明によれば、糸進入阻止部材に設けられた糸接触部は、待機位置にあるボビンホルダよりも軸方向の他方側であり、待機位置にあるボビンホルダよりも上側であり、且つ、巻取位置にあるボビンホルダに装着されたボビンよりも下側に位置している。このため、玉揚げ時にパッケージの表面から外れた糸がボビンホルダ等に引っ掛かった状態で、さらに玉揚げが進行したとしても、糸が下側から糸接触部に接触して糸接触部よりも上側に移動することが規制される(詳しくは図を用いて後述する)。これにより、糸進入阻止部材は、巻取位置にあるボビンホルダに糸が進入することを阻止できる。したがって、玉揚げ中のパッケージから外れた糸が、巻取位置にあるボビンホルダに装着されたボビンに絡まることを抑制できる。
【0013】
本発明の糸巻取機において、前記糸進入阻止部材は、前記糸接触部の前記交差方向における途中部分から両側に向かって下方に傾斜する屈曲形状を有することが好ましい。
【0014】
本発明によれば、玉揚げが進行することによって糸が上昇するとき、糸は屈曲形状の傾斜に沿って糸接触部の途中部分に向かって移動する。すなわち、糸は糸接触部の両端部に向かう向きとは反対向きに移動するため、糸が交差方向における糸接触部の両端部から外れにくくなる。
【0015】
本発明の糸巻取機において、前記糸進入阻止部材は、前記糸接触部の前記交差方向における少なくとも一方側の端部に形成され、前記糸接触部から糸が外れることを防止する脱落防止部を有することが好ましい。
【0016】
本発明によれば、糸接触部に接触した糸が、パッケージが玉揚げされている途中で糸接触部の端部から外れてしまうことを抑制できる。
【0017】
本発明の糸巻取機において、前記糸進入阻止部材は、前記糸接触部を前記交差方向に伸縮させる伸縮機構を有することが好ましい。
【0018】
玉揚げされるパッケージの巻き径、パッケージの全周面のうちの糸の外れる箇所、玉揚げ装置と糸巻取機との位置関係等によって、玉揚げ中のパッケージの表面から外れてボビンホルダ等に繋がっている糸の経路が決まる。交差方向において糸接触部を長くすればするほど、パッケージの表面から外れてボビンホルダ等に繋がっている糸の経路がどのような経路であったとしても、より確実に糸を糸接触部に接触させることができる。一方で、交差方向において糸接触部が長すぎると、糸巻取機の他の部材が動作するときに、糸接触部と当該他の部材とが干渉してしまうおそれがある。本発明によれば、パッケージの表面から外れてボビンホルダ等に繋がっている糸の経路に応じて糸接触部を適当な長さに伸縮させることで、糸巻取機の他の部材との干渉を回避できる範囲内において、より確実に糸を糸接触部に接触させることができる。
【0019】
本発明の糸巻取機において、前記糸接触部は、糸と接触する部分が曲面形状を有することが好ましい。
【0020】
本発明によれば、糸が糸接触部の角に引っ掛かることがない。このため、糸接触部の角に糸が引っ掛かることで糸が固定された状態となることを抑制できる。その結果、糸が固定された状態で玉揚げが進行することによってパッケージから糸が余分に引き出されてしまうことを抑制できる。
【0021】
本発明の糸巻取機において、前記糸進入阻止部材の全体は、前記ボビンホルダよりも前記軸方向の前記他方側にあることが好ましい。
【0022】
本発明によれば、糸進入阻止部材の全体がボビンホルダよりも軸方向の他方側に配置されるため、糸進入阻止部材とボビンホルダとの接触を回避できる。加えて、一般に、ボビンホルダよりも軸方向の他方側には十分なスペースがあるため、糸進入阻止部材を設置し易い。
【0023】
本発明の糸巻取機において、前記糸進入阻止部材は、前記押出部材が、前記待機位置にある前記ボビンホルダに装着された前記複数のパッケージを押し出すときに、前記複数のパッケージと接触しない位置に配置されていることが好ましい。
【0024】
本発明によれば、待機位置にあるボビンホルダからパッケージが押し出されるとき、パッケージと糸進入阻止部材とが干渉することを回避できる。
【0025】
本発明の糸巻取機において、前記糸進入阻止部材は、前記待機位置にある前記ボビンホルダに装着された前記複数のパッケージの、所定の最大巻き径まで巻き取られたときの仮想最大周面の上端よりも上側に配置されていることが好ましい。
【0026】
本発明によれば、待機位置にあるボビンホルダからパッケージが押し出されるとき、パッケージと糸進入阻止部材とが干渉することを回避できる。
【0027】
本発明の糸巻取機において、前記糸進入阻止部材は、前記軸方向から見たときに、前記糸接触部の前記交差方向における両端が、前記巻取位置にあるボビンホルダに装着された前記複数のパッケージの、所定の途中巻き径まで巻き取られたときの途中周面の前記交差方向における両端よりも外側にあるように、設けられることが好ましい。前記途中巻き径とは、前記待機位置にある前記ボビンホルダからの前記複数のパッケージの取り外しが完了した時点で、前記巻取位置にある前記ボビンホルダに装着された各ボビンに糸が巻き取られて形成された複数のパッケージの巻き径である。
【0028】
本発明によれば、待機位置にあるボビンホルダからの複数のパッケージの取り外しが完了した時点での、巻取位置にあるボビンホルダに装着されたパッケージの途中周面は、交差方向において糸接触部よりも内側にある。すなわち、糸接触部によって、巻取位置にあるボビンホルダに装着されたパッケージの途中周面の交差方向における全体が保護された状態となっている。このため、待機位置にあるボビンホルダから複数のパッケージの取り外しが完了するまでの間に、パッケージの表面から外れてボビンホルダ等に繋がっている糸が、巻取位置にあるボビンホルダに装着された複数のパッケージに移動することを確実に回避できる。
【0029】
本発明の糸巻取機において、前記糸進入阻止部材は、前記軸方向から見たときに、前記糸接触部の前記交差方向における両端が、前記待機位置にある前記ボビンホルダに装着された前記複数のパッケージの、所定の最大巻き径まで巻き取られたときの仮想最大周面の前記交差方向における両端よりも外側にあるように設けられることが好ましい。
【0030】
本発明によれば、軸方向から見たときに、待機位置にあるボビンホルダに装着された各パッケージの周面は、交差方向において糸接触部の両端よりも内側にある。このため、玉揚げ中のパッケージの表面から外れた糸は、パッケージの全周面のうちの何れの箇所から外れたとしても、糸接触部の交差方向における両端よりも内側を必ず通ってボビンホルダ等に繋がる。よって、パッケージの表面から外れてボビンホルダ等に繋がっている糸を、確実に糸接触部に接触させることができる。
【0031】
本発明の糸巻取機において、前記糸進入阻止部材は、前記糸巻取機を構成する前記糸進入阻止部材以外の構成部分のうちの前記軸方向における最も他方側にある構成部分よりも一方側に配置されていることが好ましい。
【0032】
本発明によれば、糸巻取機全体の軸方向における寸法が大きくなることを抑制できる。
【0033】
本発明のパッケージ生産システムは、上記何れかの糸巻取機と、前記糸巻取機の、前記待機位置にある前記ボビンホルダに装着された前記複数のパッケージを玉揚げするための玉揚げ装置と、を備え、前記玉揚げ装置は、前記複数のパッケージを挿入可能に構成されたパッケージ支持軸と、前記パッケージ支持軸を上下方向に移動させる昇降機構と、を有する。
【0034】
満巻きとなった複数のパッケージは、玉揚げ装置によって糸巻取機から玉揚げされる。玉揚げの際、玉揚げ装置は、昇降機構によって、複数のパッケージが挿入されたパッケージ支持軸を所定の高さまで上昇させる。このとき、パッケージから外れた糸が待機位置にあるボビンホルダ等に引っ掛かっていると、当該糸は、パッケージ支持軸の上昇に伴い上に引っ張られて、巻取位置にあるボビンホルダに装着されたボビンに絡まるおそれがある。この点、本発明によれば、玉揚げ時にパッケージの表面から外れた糸がボビンホルダ等に引っ掛かった状態で、さらに玉揚げが進行したとしても、糸進入阻止部材によって、巻取位置にあるボビンホルダに糸が進入することが阻止される。したがって、玉揚げ装置によって玉揚げされているパッケージから外れた糸が、巻取位置にあるボビンホルダに装着されたボビンに絡まることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】第1実施形態に係る糸巻取機の側面図である。
【
図2】第1実施形態に係る糸巻取機の正面図である。
【
図3】パッケージの取り外し開始時の、プッシャー装置の押出部材近傍の側面図である。
【
図4】パッケージの取り外し途中の、プッシャー装置の押出部材近傍の側面図である。
【
図5】押出部材が退避位置にあるときの、プッシャー装置の押出部材近傍の側面図である。
【
図6】第1実施形態に係る糸巻取機の正面図であって、巻取位置にあるボビンホルダに装着されたパッケージの途中周面を示す図である。
【
図7】パッケージが装着されたボビンホルダが待機位置に移動したときにおける、糸巻取機及び玉揚げ装置の側面図である。
【
図8】押出部材によって、待機位置にあるボビンホルダから複数のパッケージが押し出されている途中における、糸巻取機及び玉揚げ装置の側面図である。
【
図9】押出部材によって、すべてのパッケージが待機位置にあるボビンホルダから取り外されたときにおける、糸巻取機及び玉揚げ装置の側面図である。
【
図10】昇降機構によって、複数のパッケージが挿入されたパッケージ支持軸を所定の高さまで上昇させたときにおける、糸巻取機及び玉揚げ装置の側面図である。
【
図11】第2実施形態に係る糸巻取機の正面図である。
【
図12】第1変形例に係る糸進入阻止部材を示す正面図である。
【
図13】第2変形例に係る糸巻取機の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係る糸巻取機1の側面図である。
図2は、糸巻取機1の正面図である。本明細書では、
図1の紙面左右方向を前後方向、紙面の手前から奥に向かう方向を左右方向(手前が右側)と定義する。また、前後方向及び左右方向の両方と直交する方向を重力が作用する上下方向と定義する。
【0037】
(糸巻取機)
糸巻取機1は、紡糸装置(不図示)から紡出された複数の糸Yを複数のボビンBに巻き取って複数のパッケージPを形成するためのものである。複数のパッケージPは、後述する玉揚げ装置50によって糸巻取機1から玉揚げされる。
図1及び
図2に示すように、糸巻取機1は、本体フレーム2と、支持フレーム3と、ターレット4と、ボビンホルダ5と、トラバース装置6と、支点ガイド12と、コンタクトローラ7と、装置カバー41と、プッシャー装置8と、糸進入阻止部材10と、を含む。
【0038】
ターレット4は、本体フレーム2に回転可能に支持された円板状の部材である。ターレット4は、前後方向と略平行な回転軸4aを中心に回転可能である。2本のボビンホルダ5のそれぞれは、ターレット4に回転自在に支持されている。各ボビンホルダ5は、ターレット4の前面から前側に延びている。言い換えれば、各ボビンホルダ5の前後方向における後側の端部がターレット4に片持ち支持されている。各ボビンホルダ5の回転軸方向は、前後方向と略平行である。前後方向から見たときに、2本のボビンホルダ5は、ターレット4の回転中心を対称点として点対称に配置されている(
図2参照)。各ボビンホルダ5には、複数の糸Yにそれぞれ対応する複数のボビンB(本実施形態では16個)が前後方向に並べて装着されている。
【0039】
ターレット4は、不図示のモータによって回転軸4aを中心に回転駆動される。ターレット4が回転することによって、2本のボビンホルダ5は、コンタクトローラ7に接触してボビンBに糸Yを巻取る巻取位置A1と、巻取位置A1よりも下側であり巻取位置A1とターレット4の回転中心に関して点対称な位置である待機位置A2との間で移動可能である(
図2参照)。巻取位置A1にあるボビンホルダ5に装着されたボビンBに糸Yが巻き取られてパッケージPが形成されると、ターレット4が回転駆動されることによって、巻取位置A1に位置するボビンホルダ5と待機位置A2に位置するボビンホルダ5とは切り換えられる。待機位置A2に移動したボビンホルダ5に装着されている複数のパッケージPは、プッシャー装置8(詳しくは後述)によってボビンホルダ5から取り外されて、後述の玉揚げ装置50によって玉揚げされる。また、複数のパッケージPの玉揚げが行われている最中において、待機位置A2に移動したボビンホルダ5と入れ替わりで巻取位置A1に移動したボビンホルダ5に装着された複数のボビンBへの糸Yの巻き取りが開始される。
【0040】
ターレット4に支持された2つのボビンホルダ5の各々は、不図示の巻取モータによって個別に回転駆動される。そして、巻取位置A1にあるボビンホルダ5が回転することによって、ボビンホルダ5に装着された複数のボビンBに複数の糸Yがそれぞれ巻き取られてパッケージPが形成される。
【0041】
支持フレーム3は、前後方向に延びた部材である。
図1に示すように、支持フレーム3は、本体フレーム2に片持ち支持されて前方に突出している。支持フレーム3の前後方向の両端部には、コンタクトローラ7を回転自在に支持する支持部3aが設けられている(
図2参照)。
【0042】
コンタクトローラ7は、ボビンホルダ5と平行な方向(すなわち前後方向)に延びている。コンタクトローラ7の両端部は、支持フレーム3の支持部3aに支持されている。コンタクトローラ7は、巻取位置A1にあるボビンホルダ5に装着された複数のボビンB、または、ボビンBに糸Yが巻き取られて形成されたパッケージPの外周面に接触可能である。コンタクトローラ7は、ボビンBへの糸巻取時には、パッケージPに所定の接圧を付与しながら回転することで、パッケージPの形状を整える。
【0043】
トラバース装置6は、支持フレーム3に設けられている。トラバース装置6は、糸Yの本数と同じ数が前後方向に並んで設けられている。各トラバース装置6は、巻取位置A1にあるボビンホルダ5に装着された複数のボビンBのそれぞれに対応するトラバースガイド6aを有している。各トラバース装置6が、糸Yが掛けられた状態のトラバースガイド6aをボビンホルダ5の軸方向(前後方向)に沿った所定のトラバース範囲で往復移動させることで、複数の糸Yはそれぞれ綾振られながら対応するボビンBに巻き取られる。
【0044】
支点ガイド12は、トラバース装置6が糸Yを綾振る際の支点となるガイドである。支点ガイド12は、糸Yの本数と同じ数が前後方向に並んで設けられている。
図1に示すように、各支点ガイド12は、対応するトラバース装置6の上側に配置されている。
【0045】
装置カバー41は、支持フレーム3、コンタクトローラ7、複数のトラバース装置6、巻取位置A1にあるボビンホルダ5の上部分、等を覆って保護するための部材である。具体的には、装置カバー41は、支持フレーム3、コンタクトローラ7、複数のトラバース装置6、巻取位置A1にあるボビンホルダ5の上部分、等の少なくとも上側、前側及び後側を覆う(
図2参照)。装置カバー41は、例えば支持フレーム3に取り付けられている。また、装置カバー41の前端部且つ左下部には、飛び出し防止プレート42が取り付けられている(
図2参照)。飛び出し防止プレート42は、巻取位置A1にあるボビンホルダからボビンBやパッケージPが外れて前側に飛び出してしまうことを防止するための部材である。飛び出し防止プレート42は、上下方向及び左右方向に広がっている。なお、飛び出し防止プレート42は、例えば、装置カバー41の後面に取り付けられている。
【0046】
次に、
図3~
図5を参照しつつ、プッシャー装置8について説明する。
図3は、パッケージPの取り外し開始時の、プッシャー装置8の押出部材21近傍の側面図である。
図4は、パッケージPの取り外し途中の、押出部材21近傍の側面図である。
図5は、押出部材が退避位置にあるときの、押出部材21近傍の側面図である。
【0047】
図3~
図5に示すように、プッシャー装置8は、押出部材21と、押出部材21を前後方向(すなわち待機位置A2にあるボビンホルダ5の軸方向)に移動させる駆動機構23と、押出部材21の姿勢を切り替える切替機構22と、を含む。
【0048】
押出部材21は、前後方向に移動可能に構成された板状部材である。また、押出部材21は、直立姿勢(
図3及び
図4の姿勢)と傾倒姿勢(
図5の姿勢)とをとるものである。直立姿勢の押出部材21は、ボビンホルダ5に装着されたボビンの端面と平行に直立している。直立姿勢の押出部材21は、待機位置A2にあるボビンホルダ5に装着された複数のボビンBのうちの最もターレット4側にあるボビンBとターレット4との間に配置されている。直立姿勢の押出部材21は、前後方向の後側(待機位置A2にあるボビンホルダ5の軸方向の一方側)から前側(待機位置A2にあるボビンホルダ5の軸方向の他方側)に向かって移動することによって、待機位置A2にあるボビンホルダ5の前側の端部から複数のパッケージPを押し出し可能に構成されている。
【0049】
駆動機構23は、押出部材21を前後方向に移動させるためのものである。駆動機構23は、例えば流体シリンダである。但し、駆動機構23は、これに限られない。例えば、駆動機構23は、モータ等であってもよい。駆動機構23は、本体フレーム2の下部に固定されている。
図3に示すように、駆動機構23は、その前端部からボビンホルダ5の軸方向における長さ以上の長さを有するピストンロッド24が前側に突出している。駆動機構23は、駆動することで、ピストンロッド24を前後方向に沿って、ターレット4の前面よりも後方からボビンホルダ5の前端部まで往復移動させる。駆動機構23がピストンロッド24を後ろから前に移動させることによって、押出部材21が前方に移動し(
図4の実線矢印を参照)、複数のパッケージPが前に押し出される。
【0050】
切替機構22は、押出部材21を直立姿勢と傾倒姿勢との間で切り替えるためのものである。
図3に示すように、切替機構22は、連結部材25と、揺動部材26とを有する。連結部材25は、ピストンロッド24の前端部に連結されている。揺動部材26は、連結部材25に取り付けられており、連結部材25に対して揺動可能な部材である。揺動部材26は押出部材21を支持する。揺動部材26は、揺動軸26aを中心に回転することで、連結部材25に対して揺動可能である。揺動部材26が揺動することによって、押出部材21は直立姿勢と傾倒姿勢との間で切り換わる。
【0051】
プッシャー装置8は、ターレット4を回転させて2つのボビンホルダ5の位置を切り替える際には、切替機構22によって押出部材21を傾倒姿勢に切り替える。さらに、プッシャー装置8は、駆動機構23によって、傾倒姿勢の押出部材21を退避位置まで移動させる。退避位置とは、ターレット4の回転にともない移動するボビンホルダ5の移動領域から離れた位置である。
【0052】
(糸進入阻止部材)
糸進入阻止部材10は、巻取位置A1にあるボビンホルダ5に装着された複数のボビンBに糸Yが進入することを阻止可能な部材である。糸進入阻止部材10は、左右方向(すなわちボビンホルダ5の軸方向と交差する交差方向)に延びる長尺の円筒状の部材である。糸進入阻止部材10は、下側から糸Yが接触可能な糸接触部31を有する。
図1及び
図2に示すように、糸進入阻止部材10は、例えば、飛び出し防止プレート42の下部に取り付けられている。より詳細には、糸進入阻止部材10は、飛び出し防止プレート42の前面に取り付けられている。よって、糸進入阻止部材10の全体は、ボビンホルダ5よりも前後方向の前側にある。
【0053】
糸進入阻止部材10は、押出部材21が、待機位置A2にあるボビンホルダ5に装着された複数のパッケージPを押し出すときに、複数のパッケージPと接触しない位置に配置されている。さらに詳細には、糸進入阻止部材10は、待機位置A2にあるボビンホルダ5に装着された複数のパッケージPの仮想最大周面Smの上端t1よりも上側に配置されている(
図2参照)。パッケージPの仮想最大周面Smとは、糸巻取機1の機械仕様において定められたパッケージPの最大巻き径のときの、パッケージPの周面のことである。
【0054】
また、糸進入阻止部材10は、糸巻取機1を構成する糸進入阻止部材10以外の構成部分のうちの前後方向における最も前側にある構成部分よりも後側に配置されている。具体的に説明すると、本実施形態において、糸巻取機1を構成する糸進入阻止部材10以外の構成部分のうちの前後方向における最も前側にある構成部分は、支持フレーム3の前端部である。したがって、糸進入阻止部材10は、支持フレーム3の前端部よりも後側に配置されている。
【0055】
糸接触部31は、糸進入阻止部材10の下面のうち下側から糸Yが接触可能な部分である。糸接触部31は、左右方向に延びる糸進入阻止部材10の下面であって、すなわち、左右方向に延びている。また、糸接触部31は、円筒状の糸進入阻止部材10の下面であって、すなわち左右方向から見たときに曲面形状を有する。
図1に示すように、糸進入阻止部材10は、待機位置A2にあるボビンホルダ5よりも前後方向の前側に配置されている。言い換えれば、糸接触部31は、待機位置A2にあるボビンホルダ5よりも前後方向の前側に位置している。また、
図2に示すように、糸進入阻止部材10は、待機位置A2にあるボビンホルダ5よりも上側に配置されている。言い換えれば、糸接触部31は、待機位置A2にあるボビンホルダ5よちも上側に位置している。さらに、糸進入阻止部材10は、巻取位置A1にあるボビンホルダ5よりも下側に配置されている。言い換えれば、糸接触部31は、巻取位置A1にあるボビンホルダ5よりも下側に位置している。
【0056】
図6に示すように、糸進入阻止部材10は、前後方向から見たときに、糸接触部31の左右方向における両端が、巻取位置A1にあるボビンホルダ5に装着された複数のパッケージPの途中周面Srの左右方向の両端r1、r2よりも外側にあるように、設けられている。具体的には、糸接触部31の左端は、前後方向から見たときに、巻取位置A1にあるボビンホルダ5に装着された複数のパッケージPの途中周面Srの左端r1よりも左側にある。また、糸接触部31の右端は、前後方向から見たときに、巻取位置A1にあるボビンホルダ5に装着された複数のパッケージPの途中周面Srの右端r2よりも右側にある。パッケージPの途中周面Srとは、巻取位置A1にあるボビンホルダ5に装着されたボビンBに所定の途中巻き径まで糸Yが巻き取られたときの、パッケージPの周面のことである。
【0057】
所定の途中巻き径とは、プッシャー装置8によって待機位置A2にあるボビンホルダ5からの複数のパッケージPの取り外しが完了した時点で、巻取位置A1にあるボビンホルダ5に装着された各ボビンBに糸Yが巻き取られて形成された複数のパッケージPの巻き径である。「待機位置A2にあるボビンホルダ5からの複数のパッケージPの取り外しが完了した時点」とは、例えば、押出部材21が最も前側まで移動して、待機位置A2にあるボビンホルダ5の前側の端部から複数のパッケージPを押し出された直後の時点である。または、「待機位置A2にあるボビンホルダ5からの複数のパッケージPの取り外しが完了した時点」とは、押出部材21によって待機位置A2にあるボビンホルダ5の前側の端部から複数のパッケージPを押し出された後、押出部材21がターレット4近傍の位置まで戻ってきた時点でもよい。
【0058】
さらに、
図2に示すように、糸進入阻止部材10は、前後方向から見たときに、糸接触部31の左右方向における両端が、待機位置A2にあるボビンホルダ5に装着された複数のパッケージPの仮想最大周面Smの左右方向の両端m1、m2よりも外側にあるように設けられている。具体的には、糸接触部31の左端は、前後方向から見たときに、待機位置A2にあるボビンホルダ5に装着された複数のパッケージPの仮想最大周面Smの左端m1よりも左側にある。また、糸接触部31の右端は、前後方向から見たときに、待機位置A2にあるボビンホルダ5に装着された複数のパッケージPの仮想最大周面Smの右端m2よりも右側にある。
【0059】
加えて、糸進入阻止部材10は、糸接触部31の左右方向における右側の端部に形成され、糸接触部31から糸Yが外れることを防止する脱落防止部32を有する。具体的には、
図2に示すように、脱落防止部32は、糸接触部31の右端よりも若干左側の位置に形成されている。本実施形態において、脱落防止部32は円筒状に構成されている。脱落防止部32の軸心は、糸進入阻止部材10の軸心と同軸上にある。脱落防止部32の直径は、糸進入阻止部材10の直径よりも大きい。なお、脱落防止部32は、糸接触部31の左側の端部にのみ形成されていてもよく、糸接触部31の右端部及び左端部の両方に形成されていてもよい。
【0060】
(パッケージの玉揚げ)
次に、玉揚げ装置50によって複数のパッケージPが玉揚げされるときの手順について、
図7~
図10を参照しつつ以下に説明する。まず、パッケージPの玉揚げを行うための玉揚げ装置50について説明する。
図7に示すように、玉揚げ装置50は、複数のパッケージPを挿入可能に構成されたパッケージ支持軸51と、パッケージ支持軸51を上下方向に移動させる昇降機構52と、を有する。パッケージ支持軸51は、複数のパッケージPが直列に並んで挿し込まれる長尺の円筒状の部材である。パッケージ支持軸51の軸方向に沿った長さは、ボビンホルダ5の軸方向に沿った長さと略同じである。昇降機構52は、パッケージ支持軸51を片持ち支持し、不図示のモータを有する。なお、詳細な記載は省略するが、玉揚げ装置50は、床面上を自在に移動可能に構成されており、玉揚げを行ったパッケージPを所定の保管場所まで運ぶことが可能となっている。
【0061】
本実施形態において、複数のパッケージPを生産するためのパッケージ生産システム70は、糸巻取機1と、玉揚げ装置50と、糸巻取機1及び玉揚げ装置50の動作を制御する制御部(不図示)と、を含む(
図7~
図10参照)。パッケージ生産システム70は、まず、制御部によって糸巻取機1を動作を制御して、紡糸装置から紡出された複数の糸Yから複数のパッケージPを形成させる。その後、パッケージ生産システム70は、制御部によって糸巻取機1及び玉揚げ装置50の動作を制御して、糸巻取機1から複数のパッケージPを玉揚げさせる。続いて、パッケージ生産システム70は、制御部によって玉揚げ装置50の動作を制御して、複数のパッケージPを所定の保管場所まで搬送させる。以下、玉揚げ装置50によって、糸巻取機1から複数のパッケージPが玉揚げされるときの手順を説明する。なお、以下の記載において、実際には、不図示の制御部によって、糸巻取機1の各構成部分及び玉揚げ装置50の各構成部分の動作が制御されているが、説明を簡潔にするために、制御部が制御している旨の記載は省略している。
【0062】
まず、上述したように、巻取位置A1にあるボビンホルダ5に装着されたボビンBに糸Yが巻き取られてパッケージPが形成されると、ターレット4が回転駆動されることによって、巻取位置A1に位置するボビンホルダ5は待機位置A2に移動する(
図7の状態)。このとき、
図7に示すように玉揚げ装置50は、糸巻取機1から複数のパッケージPを受け取り可能な位置にある。具体的には、玉揚げ装置50は、待機位置A2にあるボビンホルダ5の軸方向の延長線上に沿ってパッケージ支持軸51が配置されるような位置及び姿勢をとる。
【0063】
続いて、
図8に示すように、プッシャー装置8は、駆動機構23によって、押出部材21を前後方向に沿って前方に移動させる(
図8の実線矢印を参照)。そうすると、待機位置A2にあるボビンホルダ5に装着された複数のパッケージPはまとめて前側に押し出される。そして、前側のパッケージPから順に、ボビンホルダ5から外れて、パッケージ支持軸51に挿入される。
【0064】
押出部材21によって、すべてのパッケージPが待機位置A2にあるボビンホルダ5から取り外されてパッケージ支持軸51に受け渡されると、押出部材21は後方に移動して元の位置に戻っていく(
図9参照)。
【0065】
そして、
図10に示すように、玉揚げ装置50は、昇降機構52によって、複数のパッケージPが挿入されたパッケージ支持軸51を、巻取位置A1にあるボビンホルダ5よりもさらに上方の所定の高さまで上昇させる。以上によって、玉揚げ装置50による複数のパッケージPの玉揚げが完了する。なお、複数のパッケージPが取り外されたボビンホルダ5には、糸Yが巻かれていない状態の複数の空のボビンが新たに装着される。
【0066】
(効果)
本実施形態の糸巻取機1は、複数のボビンBに糸Yを巻き取って複数のパッケージPを形成する巻取位置A1と巻取位置A1よりも下側の待機位置A2との間で切り替え可能に構成された2つのボビンホルダ5と、前後方向(待機位置A2にあるボビンホルダ5の軸方向)に移動可能に構成され、前後方向において後側(待機位置A2にあるボビンホルダ5の軸方向の一方側)から前側(待機位置A2にあるボビンホルダ5の軸方向の他方側)に移動することによって、待機位置A2にあるボビンホルダ5の前側の端部から複数のパッケージPを押し出す押出部材21と、巻取位置A1にあるボビンホルダ5に装着されたボビンBに糸Yが進入することを阻止可能な糸進入阻止部材10と、を含む。糸進入阻止部材10は、左右方向に延び、下側から糸Yが接触可能な糸接触部31を有する。糸接触部31は、待機位置A2にあるボビンホルダ5よりも前後方向の前側であり、待機位置A2にあるボビンホルダ5よりも上側であり、且つ、巻取位置A1にあるボビンホルダ5よりも下側に位置している。
【0067】
また、本実施形態のパッケージ生産システム70は、糸進入阻止部材10を有する糸巻取機1と、玉揚げ装置50と、を含む。玉揚げ装置50は、複数のパッケージPを挿入可能に構成されたパッケージ支持軸51と、パッケージ支持軸51を上下方向に移動させる昇降機構52と、を有する。
【0068】
満巻きとなった複数のパッケージPは、玉揚げ装置50によって糸巻取機1から玉揚げされる。玉揚げの際、玉揚げ装置50は、複数のパッケージPが挿入されたパッケージ支持軸51を所定の高さまで上昇させる。このとき、パッケージPから外れた糸Yが待機位置A2にあるボビンホルダ5等に引っ掛かっていると、当該糸Yは、パッケージ支持軸51の上昇に伴い上に引っ張られて、巻取位置A1にあるボビンホルダ5に装着されたボビンBに絡まるおそれがある。この点、本実施形態によれば、糸進入阻止部材10に設けられた糸接触部31は、待機位置A2にあるボビンホルダ5よりも前後方向の前側であり、待機位置A2にあるボビンホルダ5よりも上側であり、且つ、巻取位置A1にあるボビンホルダ5よりも下側に位置している。このため、玉揚げ時にパッケージPの表面から外れた糸Yが押出部材21や待機位置A2にあるボビンホルダ5等に引っ掛かった状態で、さらに玉揚げが進行したとしても、糸Yが下側から糸接触部31に接触して糸接触部31よりも上側に移動することが規制される。これにより、糸進入阻止部材10は、巻取位置A1にあるボビンホルダ5に糸Yが進入することを阻止できる。
【0069】
以下、糸進入阻止部材10に設けられた糸接触部31によって糸Yが巻取位置A1にあるボビンホルダ5に移動することが規制される仕組みについて、
図9及び
図10を参照しつつ詳細に説明する。
図9は、待機位置A2にあるボビンホルダ5から取り外された複数のパッケージPのうちの最も後側のパッケージPの表面から糸Yの端が外れ落ちて、押出部材21に引っ掛かってしまったときの様子を示す図である。
図10は、複数のパッケージPが挿入されたパッケージ支持軸51を上昇させたときにおける、パッケージPから外れて押出部材21に繋がっている糸Yの様子を示している。なお、
図9及び
図10では、複数のパッケージPのうちの最も後側のパッケージPから糸Yが外れたときの様子を示しているが、複数のパッケージPのうちの任意の一又は複数のパッケージPから糸Yが外れ得ることに留意されたい。また、
図9及び
図10では、パッケージPから外れた糸Yが押出部材21に引っ掛かっているときの様子を示しているが、パッケージPから外れた糸Yは待機位置A2にあるボビンホルダ5にも同様に引っ掛かり得ることに留意されたい。さらに、パッケージPから外れた糸Yは、糸巻取機1の構成部分のうちの待機位置A2にあるボビンホルダ5の近傍にある構成部分(図示していないものも含む)にも引っ掛かり得る。
【0070】
本実施形態において、糸接触部31は、待機位置A2にあるボビンホルダ5よりも上側に位置している。このため、
図10に示すように、パッケージPの表面から外れて押出部材21に繋がっている糸Yは、糸進入阻止部材10の糸接触部31(
図10の糸進入阻止部材10の下部)に下側から接触する。これにより、パッケージPの表面から外れた糸Yのうちの糸接触部31と押出部材21との間の糸Yの部分である糸Ya(
図10参照)は、糸接触部31よりも上側に移動することが規制される。また、糸接触部31は、巻取位置A1にあるボビンホルダ5に装着された複数のボビンBよりも下側に位置している。このため、パッケージPの表面から外れた糸Yのうちの糸接触部31と押出部材21との間の糸Yの部分である糸Yaが、巻取位置A1にあるボビンホルダ5に移動することを規制できる。ところで、パッケージPの表面から外れた糸YのうちのパッケージPと糸接触部31との間の糸Yの部分である糸Yb(
図10参照)は、パッケージPの上昇に伴って糸接触部31よりも上側に移動する。この点、糸接触部31は、待機位置A2にあるボビンホルダ5よりも前後方向の前側にある。このため、パッケージPと糸接触部31との間の糸Yの部分である糸Ybの上側には、巻取位置A1にあるボビンホルダ5が存在しない状態となる。したがって、糸Ybが糸接触部31よりも上側に移動したとしても、巻取位置A1にあるボビンホルダ5に移動することがない。以上によって、本実施形態の糸巻取機1によれば、玉揚げ中のパッケージPから外れた糸Yが、巻取位置A1にあるボビンホルダ5に装着されたボビンBに絡まることを抑制できる。なお、パッケージPの表面から外れて糸接触部31に引っ掛かった糸Yは、例えば、オペレータによってカッタ等で切断される。
【0071】
また、本実施形態の糸進入阻止部材10は、2つのボビンホルダ5よりも前後方向の前側にある。このため、ターレット4によって回転軸4aを中心に2つのボビンホルダ5が回転移動する際に、糸進入阻止部材10が、回転移動するボビンホルダ5と干渉することがない。
【0072】
また、本実施形態の糸巻取機1では、糸進入阻止部材10は、糸接触部31の左右方向における少なくとも一方側の端部に形成され、糸接触部31から糸Yが外れることを防止する脱落防止部32を有する。これによれば、糸接触部31に接触した糸Yが、パッケージPが玉揚げされている途中で糸接触部31の端部から外れてしまうことを抑制できる。
【0073】
また、本実施形態の糸巻取機1では、糸接触部31は、糸Yと接触する部分が曲面形状を有する。これによれば、糸Yが糸接触部31の角に引っ掛かることがない。このため、糸接触部31の角に糸Yが引っ掛かることで糸Yが固定された状態となることを抑制できる。その結果、糸Yが固定された状態で玉揚げが進行することによってパッケージPから糸Yが余分に引き出されてしまうことを抑制できる。
【0074】
また、本実施形態の糸巻取機1では、糸進入阻止部材10の全体は、ボビンホルダ5よりも前後方向の前側にある。これによれば、糸進入阻止部材10とボビンホルダ5との接触を回避できる。加えて、一般に、ボビンホルダ5よりも前後方向の前側には十分なスペースがあるため、糸進入阻止部材10を設置し易い。
【0075】
また、本実施形態の糸巻取機1では、糸進入阻止部材10は、待機位置A2にあるボビンホルダ5に装着された複数のパッケージPの、所定の最大巻き径まで巻き取られたときの仮想最大周面Smの上端t1よりも上側に配置されている。これによれば、待機位置A2にあるボビンホルダ5からパッケージPが押し出されるとき、パッケージPと糸進入阻止部材10とが干渉することを回避できる。
【0076】
さらに、本実施形態の糸巻取機1では、糸進入阻止部材10は、前後方向から見たときに、糸接触部31の左右方向における両端が、巻取位置A1にあるボビンホルダ5に装着された複数のパッケージPの、所定の途中巻き径まで巻き取られたときの途中周面Srの左右方向における両端r1、r2よりも外側にあるように、設けられている。これによれば、待機位置A2にあるボビンホルダ5からの複数のパッケージPの取り外しが完了した時点での、巻取位置A1にあるボビンホルダ5に装着されたパッケージPの途中周面Srは、左右方向において糸接触部31よりも内側にある。すなわち、糸接触部31によって、巻取位置A1にあるボビンホルダ5に装着されたパッケージPの途中周面Srの左右方向における全体が保護された状態となっている。このため、待機位置A2にあるボビンホルダ5から複数のパッケージPの取り外しが完了するまでの間に、パッケージPの表面から外れて押出部材21等に繋がっている糸Yが、巻取位置A1にあるボビンホルダ5に装着された複数のパッケージPに移動することを確実に回避できる。
【0077】
また、本実施形態の糸巻取機1では、糸進入阻止部材10は、前後方向から見たときに、糸接触部31の左右方向における両端が、待機位置A2にあるボビンホルダ5に装着された複数のパッケージPの仮想最大周面Smの左右方向における両端よりも外側にあるように設けられている。これによれば、前後方向から見たときに、待機位置A2にあるボビンホルダ5に装着された各パッケージの周面は、左右方向において糸接触部31の両端よりも内側にある。このため、玉揚げ中のパッケージPの表面から外れた糸Yは、パッケージPの全周面のうちの何れの箇所から外れたとしても、糸接触部31の左右方向における両端よりも内側を必ず通って押出部材21等に繋がる。よって、パッケージPの表面から外れて押出部材21等に繋がっている糸Yを、確実に糸接触部31に接触させることができる。
【0078】
また、本実施形態の糸巻取機1では、糸進入阻止部材10は、糸巻取機1を構成する糸進入阻止部材10以外の構成部分のうちの前後方向における最も前側にある構成部分よりも後側に配置されている。これによれば、糸巻取機1全体の前後方向における寸法が大きくなることを抑制できる。
【0079】
(第2実施形態)
次に、上記第1実施形態に種々の変更を加えた第2実施形態について説明する。但し、上記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0080】
図11に示すように、第2実施形態に係る糸巻取機101では、糸進入阻止部材110は、糸接触部31を左右方向に伸縮させる伸縮機構33を有する。伸縮機構33は、例えば、シリンダである。但し、伸縮機構33はこれに限られない。伸縮機構33を駆動させることによって、糸接触部31を左右方向に伸縮させることができる(
図11の実線矢印を参照)。
【0081】
玉揚げされるパッケージPの巻き径、パッケージPの全周面のうちの糸Yの外れる箇所、玉揚げ装置50と糸巻取機1との位置関係等によって、玉揚げ中のパッケージPの表面から外れて押出部材21や待機位置A2にあるボビンホルダ等に繋がっている糸Yの経路が決まる。左右方向において糸接触部31を長くすればするほど、パッケージPの表面から外れて押出部材21やボビンホルダ5等に繋がっている糸Yの経路がどのような経路であったとしても、より確実に糸Yを糸接触部31に接触させることができる。一方で、左右方向において糸接触部31が長すぎると、糸巻取機1の他の部材が動作するときに、糸接触部31と当該他の部材とが干渉してしまうおそれがある。第2実施形態によれば、パッケージPの表面から外れて押出部材21やボビンホルダ5等に繋がっている糸Yの経路に応じて糸接触部31を適当な長さに伸縮させることで、糸巻取機1の他の部材との干渉を回避できる範囲内において、より確実に糸Yを糸接触部31に接触させることができる。
【0082】
(変形例)
以下に、前記第1実施形態及び第2実施形態に変更を加えた変形例について説明する。以下、単に実施形態という場合、第1実施形態及び第2実施形態の両方を指すものとする。以下、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0083】
(第1変形例)
糸進入阻止部材10は、左右方向に真っ直ぐ延びている。しかしながら、糸進入阻止部材10は屈曲していてもよい。例えば、
図12に示すように、第1変形例に係る糸進入阻止部材310は、糸接触部131の左右方向における途中部分131aから両側に向かって下方に傾斜する屈曲形状を有する。これによれば、玉揚げが進行することによって糸Yが上昇するとき、糸Yは糸接触部131の屈曲形状の傾斜に沿って途中部分131aに向かって移動する。すなわち、糸Yは糸接触部131の両端部に向かう向きとは反対向きに移動するため、糸Yが左右方向における糸接触部131の両端部から外れにくくなる。
【0084】
(第2変形例)
上記実施形態において、糸進入阻止部材10の役割の一部をラムダガイド9で代用してもよい。まず、ラムダガイド9について、具体的に説明する。
図13に示すように、第2変形例に係る糸巻取機201は、ラムダガイド9を有する。ラムダガイド9は、紡糸装置(不図示)から送られてきた複数の糸Yを、巻取位置A1にあるボビンホルダ5に装着された空のボビンBに巻き掛ける際に、複数の糸Yを所定の巻き掛け位置まで案内するためのガイドである。ラムダガイド9は、揺動軸9aと、アーム部9bと、ガイド部9cとを有する。ラムダガイド9は、揺動軸9aを介して、本体フレーム2の下部に設置された直立部材60に揺動可能に支持されている。アーム部9bの基端部に揺動軸9aが形成されており、アーム部9bの先端部にガイド部9cが形成されている。ラムダガイド9は、揺動軸9aを中心に揺動可能である(
図13の実線矢印を参照)。ラムダガイド9の揺動は、例えば不図示のモータによって駆動される。ラムダガイド9は、例えば、前後方向において糸進入阻止部材10の前側に配置されている。これによって、複数の糸Yのラムダガイド9への糸掛けがし易くなる。但し、ラムダガイド9の配置される位置はこれに限定されない。
【0085】
紡糸装置(不図示)から送られてきた複数の糸Yは、複数の支点ガイド12に掛けられた後、ガイド部9cにまとめて掛けられる。続いて、揺動軸9aを中心にラムダガイド9を時計回りに揺動させることによって、ガイド部9cにまとめて掛けられた複数の糸Yは、不図示のセパレータに受け渡された後、所定の巻き掛け位置まで案内される。そして、巻取位置A1にあるボビンホルダ5を回転させることで、ボビンホルダ5に装着された空のボビンBに巻き掛けられる。
【0086】
続いて、ラムダガイド9によって糸進入阻止部材10の役割の一部を代用させる方法について説明する。押出部材21によってすべてのパッケージPが待機位置A2にあるボビンホルダ5から取り外されてパッケージ支持軸51に受け渡された後、昇降機構52によってパッケージ支持軸51を上昇させる前に、ラムダガイド9を、揺動軸9aを中心に揺動させる。より具体的には、前後方向から見たときに、ラムダガイド9を、アーム部9bの右側面9b1が左右方向と概ね平行となるように揺動させる。そうすることで、アーム部9bの右側面9b1は、待機位置A2にあるボビンホルダ5よりも前後方向の前側であり、待機位置A2にあるボビンホルダ5よりも上側であり、且つ、巻取位置A1にあるボビンホルダ5よりも下側に位置することとなる。これにより、アーム部9bの下面を、下側から糸Yが接触可能な糸接触部として用いることができる。言い換えれば、第2変形例では、糸進入阻止部材10及びラムダガイド9が本発明の糸進入阻止部材に相当する。
【0087】
(その他の変形例)
上記実施形態では、糸進入阻止部材10は、飛び出し防止プレート42に取り付けられている。しかしながら、糸進入阻止部材10は、他の部材に取り付けられていてもよい。例えば、糸進入阻止部材10は、装置カバー41の下部に取り付けられていてもよい。
【0088】
上記実施形態では、糸接触部31は、左右方向に延びている。しかしながら、糸接触部31は、例えば、左端部が右端部よりも上側又は下側となるように傾いていてもよい。
【0089】
上記実施形態では、糸進入阻止部材10は、脱落防止部32を有する。しかしながら、糸進入阻止部材10は、脱落防止部32を有していなくてもよい。
【0090】
上記実施形態では、糸進入阻止部材10は、長尺の円筒状の部材である。しかしながら、糸進入阻止部材10は、このような形状に限られない。糸進入阻止部材10は、左右方向に延び且つ下側から糸Yが接触可能な糸接触部31を有するものであればどのような形状でもよい。
【0091】
上記実施形態では、糸進入阻止部材10は、待機位置A2にあるボビンホルダ5に装着された複数のパッケージPの仮想最大周面Smの上端t1よりも上側に配置されている。しかしながら、このような態様に限定されない。ただし、糸進入阻止部材10は、押出部材21が、待機位置A2にあるボビンホルダ5に装着された複数のパッケージPを押し出すときに、複数のパッケージPと接触しない位置に配置されることが好ましい。そうすることで、待機位置A2にあるボビンホルダ5からパッケージPが押し出されるとき、パッケージPと糸進入阻止部材10とが干渉することを回避できる。
【0092】
上記実施形態では、糸進入阻止部材10の全体が、ボビンホルダ5よりも前後方向の前側にある。しかしながら、糸進入阻止部材10の一部が、ボビンホルダ5の前端よりも前後方向の後側に存在していてもよい。
【0093】
本発明は、上記実施形態のように紡糸装置から紡出された糸Yを巻き取る糸巻取機1に限られず、複数の糸Yを巻き取るように構成された様々な糸巻取機に適用されることが可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 糸巻取機
5 ボビンホルダ
10 糸進入阻止部材
21 押出部材
31 糸接触部
32 脱落防止部
33 伸縮機構
50 玉揚げ装置
51 パッケージ支持軸
52 昇降機構
70 パッケージ生産システム
101 糸巻取機
110 糸進入阻止部材
131 糸接触部
131a 途中部分
201 糸巻取機
310 糸進入阻止部材
A1 巻取位置
A2 待機位置
B ボビン
P パッケージ
Sm 仮想最大周面
Sr 途中周面
Y 糸