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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171322
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】冷却具
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/10 20060101AFI20241204BHJP
   A61F 9/04 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
A61F7/10 300C
A61F9/04 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024075163
(22)【出願日】2024-05-07
(31)【優先権主張番号】P 2023087944
(32)【優先日】2023-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 葵
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓也
【テーマコード(参考)】
4C099
【Fターム(参考)】
4C099AA02
4C099CA06
4C099EA04
4C099GA01
4C099HA09
4C099LA03
4C099LA04
4C099LA18
4C099NA10
4C099TA04
(57)【要約】
【課題】着用者に心地よい冷たさを与えることが可能な冷却具に関する。
【解決手段】着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺を覆う本体部と、本体部に設けられる冷却体とを備える冷却具であって、冷却体は、水を保有する保水層を有し、保水層は、水の初期含有量が0.04g/cm以上0.4g/cm以下であり、冷却体は、着用時において、少なくとも一部が着用者の目及び/又は目の周辺と直接的又は間接的に接触するよう本体部に配置されており、冷却具は、メントールを含有しており、水の初期含有量[g/cm]×メントールの初期含有量[mg/cm]×1000の値が4以上40以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺を覆う本体部と、前記本体部に設けられる冷却体とを備える冷却具であって、
前記冷却体は、水を保有する保水層を有し、
前記保水層は、水の初期含有量が0.04g/cm以上0.4g/cm以下であり、
前記冷却体は、着用時において、少なくとも一部が着用者の目及び/又は目の周辺と直接的又は間接的に接触するよう前記本体部に配置されており、
前記冷却具は、メントールを含有しており、
水の初期含有量[g/cm]×メントールの初期含有量[mg/cm]×1000の値が4以上40以下である
冷却具。
【請求項2】
前記冷却具は、メントールの初期含有量が0.02mg/cm以上0.35mg/cm以下である
請求項1に記載の冷却具。
【請求項3】
前記冷却体は、水を吸水可能な保水材を有しており、
前記冷却体は、前記保水材の含有量が5mg/cm以上20mg/cm以下である
請求項1又は2に記載の冷却具。
【請求項4】
前記保水層は、水の初期含有量が前記保水層の最大吸水量の1質量%以上20質量%以下である
請求項1又は2に記載の冷却具。
【請求項5】
前記冷却具は、水の総含有量が2g以上20g以下である
請求項1又は2に記載の冷却具。
【請求項6】
前記冷却具は、メントールの総含有量が0.9mg以上17mg以下である
請求項1又は2に記載の冷却具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、着用者の少なくとも目に対して冷却感及び冷涼感を与えることが可能な冷却具が知られている。例えば、特許文献1には、マスク本体の裏面に含浸布を設けたアイマスクが記載されている。この含浸布は、メント-ル及びク-リング剤をアルコ-ル類及び活性剤に溶解させると共に、精製水にて希釈させたク-リング液を含侵させたものである。
【0003】
特許文献1に記載のアイマスクは、着用者の少なくとも目に含浸布が接触することにより、着用者に対して冷却感を与えることができ、含浸布に含侵されたク-リング液により、着用者に対して冷涼感を与えることができるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3049415号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のアイマスクでは、着用者に与える冷却感と冷涼感のバランスについては検討されていないため、アイマスクの着用時において、着用者が必ずしも心地よい冷たさを感じるものではないという点において、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、着用者に心地よい冷たさを与えることが可能な冷却具に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る冷却具は、着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺を覆う本体部と、前記本体部に設けられる冷却体とを備える冷却具であって、前記冷却体は、水を保有する保水層を有し、前記保水層は、水の初期含有量が0.04g/cm以上0.4g/cm以下であり、前記冷却体は、着用時において、少なくとも一部が着用者の目及び/又は目の周辺と直接的又は間接的に接触するよう前記本体部に配置されており、前記冷却具は、メントールを含有しており、水の初期含有量[g/cm]×メントールの初期含有量[mg/cm]×1000の値が4以上40以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の冷却具によれば、着用者に心地よい冷たさを与えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る冷却具を示す図である。
図2】本実施形態に係る冷却具の概略断面図である。
図3】本実施形態に係る冷却体を示す図である。
図4図3のII-II´線に沿った概略断面図である。
図5図5(a)は、耳掛け部の引張時の状態を示す図であり、図5(b)は、耳掛け部の装着時の状態を示す図である。
図6】本実施形態に係る冷却具が包装体に封入された状態を示す図である。
図7】水蒸気発生量を測定する装置を示す模式図である。
図8】メントール揮散量を測定する装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、本実施形態においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や、一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0011】
[冷却具の全体構成]
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る冷却具1は、着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺を覆う本体部10と、本体部10に設けられる冷却体20と、本体部10の幅方向の両端部に設けられる耳掛け部30とを備えている。この冷却具1には、メントールが賦香されている。また、本実施形態に係る冷却具1は、防水性を有する包装体200に封入された状態で保存されている(図6参照)。なお、図1は、着用者の非目元側の面(外面)が上を向くよう本体部10を展開させた状態における平面図である。
【0012】
本明細書において、「幅方向」とは、本体部10を平面方向から見た状態(図1の状態)における後述する第1パネル部10A及び第2パネル部10Bの並び方向に一致する方向をいう。また、「本体部10の幅方向両端部」とは、第1パネル部10Aの耳掛け部30側の端部と第2パネル部10Bの耳掛け部30側の端部とを意味する。
【0013】
[本体部の構成]
図2に示すように、本体部10は、冷却具1の着用時において、着用者の肌側(図2の上側)に向く内面シート11と、冷却体20を介して内面シート11と対向するよう配された外面シート12とを備えており、全体としてシート状に形成されている。内面シート11及び外面シート12は、同形同大に形成されており、内面シート11と外面シート12との間に冷却体20が配された状態において、互いに接合されている。なお、本実施形態では、内面シート11及び外面シート12が同形同大に形成されているものとして説明したが、これに限定されず、内面シート11と外面シート12とで形状が異なっていても良いし、大きさが異なっていても良い。
【0014】
ここで、内面シート11と外面シート12の接合方法について説明する。本実施形態では、外面シート12に接着剤(図示せず)が塗布されており、該接着剤を介して冷却体20及び内面シート11が接着されている。接着剤としては、ホットメルト型接着剤を用いることが好ましいが、これに限定されず、種々の公知の固定手段を用いることができる。例えば、ホットメルト型以外の接着剤、縫製、熱融着等が可能であるが、固定できれば限定されない。
【0015】
なお、外面シート12に接着剤を塗布する構成に代えて、又はこれに加えて、内面シート11に接着剤を塗布する構成を採用することも可能である。また、内面シート11と外面シート12とを局所的に非接着とすることにより、内面シート11と外面シート12との間に冷却体20を挿脱可能な開口及び収納空間を形成する構成としても良い。
【0016】
[本体部の材料]
内面シート11及び外面シート12の材料は、着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺を覆うことが可能な冷却具の技術分野において、従来から用いられているものを用いることができる。例えば、不織布、織布、紙などの繊維シート、樹脂発泡シート、金属シート又はこれらの組み合わせ等が用いられる。なかでも、加工のしやすさや経済性の観点から不織布を用いることが好ましい。不織布の繊維素材としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル;PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、エチレンプロピレン共重合体等のポリオレフィン;レーヨン;コットン等から選択される1種又は2種以上の繊維で構成されるものが好ましい。また、不織布としては、前記の1種又は2種以上の素材の繊維を用いて、エアスルー法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、メルトブローン法、カード法、熱融着法、水流交絡法、溶剤接着法等により製造されたものを用いることができ、単層でも多層構造でもよい。なお、不織布は、目的に応じ化学処理を行ってもよい。
【0017】
また、内面シート11及び外面シート12は、それぞれ、単層及び多層を問わない一枚のシート材のみからなる単層の構造であってもよく、二種以上のシート材を重ね合わせた多層の構造であってもよい。さらに、内面シート11と外面シート12とで構成材料が異なる構成としても良い。具体的には、着用した際に外側に配される外面シート12は、冷却具に保形性を与える上で適した構成材料を選択してもよく、また、外面の風合いを良くするために適した構成材料を選択してもよい。一方、着用した際に内側に配される内面シート11は、肌あたり改善を目的とした構成材料を選択してもよい。また、内面シート11及び外面シート12は、任意の色に着色されていても良く、印刷等により任意の模様(柄)が施されていても良い。このような構成によれば、風合いや趣向性が向上し、使用者の好みの冷却具とすることが可能となる。
【0018】
[本体部の通気性]
内面シート11は、通気性を有している。具体的には、内面シート11は、少なくとも着用者の目と保水層22との間の領域における透気度が、水の蒸発による気化放熱を促進させる観点から、30000秒/100mL以下であることが好ましく、3000秒/100mL以下であることがより好ましく、300秒/100mL以下であることがより好ましく、200秒/100mL以下であることがより好ましく、100秒/100mL以下であることが更に好ましく、5秒/100mL以下であることがより更に好ましく、また、0秒/100mLであることが最も好ましい。こうした透気度を満足すれば、内面シート11は、その一部が通気性を有しない構成であってもよい。
【0019】
ここで、透気度とは、JIS P8117(2009年改正版)によって測定される値であり、一定の圧力のもとで100mLの空気が6.42cmの面積を通過する時間として定義される。したがって、透気度の数値が大きいことは空気の通過に時間がかかること、即ち通気性が低いことを意味している。逆に、透気度の数値が小さいことは通気性が高いことを意味している。このように、透気度の数値の大小と通気性の高低とは逆の関係を示す。透気度は、王研式透気度計で計測することができる。本明細書中においては、30000秒/100mL未満の透気度を「通気性」と定義し、30000秒/100mL以上80000秒/100mL未満の透気度を「難通気性」と定義し、80000秒/100mL以上の透気度を「非通気性」と定義する。
【0020】
外面シート12は、通気性、難通気性及び非通気性のいずれを有していても良い。しかしながら、外面シート12は、冷却体20の蒸気放出方向を内面シート11側(着用者の目側)に規定する観点から、難通気性又は非通気性を有していることが好ましい。
【0021】
[本体部の透湿性]
内面シート11は、透湿性を有している。具体的には、内面シート11は、少なくとも着用者の目と保水層22との間の領域における透湿度が、着用時に蒸れや濡れを抑制する観点から、12000g/m・24hr以下であることが好ましく、11000g/m・24hr以下であることがより好ましく、10000g/m・24hr以下であることが更に好ましい。また、この透湿度は、水の蒸発に伴う気化放熱によって冷却効果を高める観点から、2000g/m・24hr以上であることが好ましく、2500g/m・24hr以上であることがより好ましく、3000g/m・24hr以上であることが更に好ましい。こうした透湿度を満足すれば、内面シート11は、その一部が透湿性を有しない構成であってもよい。
【0022】
ここで、透湿性とは、水蒸気を通す性質のことをいう。また、透湿度とは、JIS L1099:2012のA-1法によって測定される値であり、1mあたりにおける24時間で透過する水分を数値(g)として定義される。したがって、透湿度の数値が大きいことは透湿性が高いことを意味し、逆に、透湿度の数値が小さいことは透湿性が低いことを意味している。本明細書中においては、100g/m・24h以上の透湿度を「透湿性」と定義し、100g/m・24hr未満30g/m・24hr以上の透湿度を「難透湿性」と定義し、30g/m・24hr未満の透湿度を「非透湿性」と定義する。
【0023】
なお、内面シート11や外面シート12等のシート部材において、シート部材が通気性を有している場合には、透湿性も有している。
【0024】
外面シート12は、透湿性、難透湿性及び非透湿性のいずれを有していても良い。しかしながら、外面シート12は、冷却体20の蒸気放出方向を内面シート11側(着用者の目側)に規定する観点から、難透湿性又は非透湿性を有していることが好ましい。
【0025】
[本体部の防水性]
内面シート11は、防水性を有している。具体的には、内面シート11は、少なくとも着用者の目と保水層22との間の領域における耐水度が、着用者の目及び/又は目の周辺の濡れを防ぐ観点から、300mm以上であることが好ましく、400mm以上であることがより好ましく、500mm以上であることが更に好ましい。さらに、1000mmであることが最も好ましい。こうした耐水度を満足すれば、内面シート11は、その一部が防水性を有しない構成であってもよい。また、内面シート11は、防水性を有しているものとして説明したが、これに限定されず、非防水性(透水性)を有していても良い。
【0026】
ここで、防水性とは、水の透過を防ぐ性質のことをいう。防水性は、耐水度によって評価することができ、この耐水度は、JIS L 1092 A法により測定することができる。この耐水度は、水の透過に耐えることができる1cmあたりの水柱の高さ(mm)として定義される。したがって、耐水度の数値が大きいことは防水性が高いことを意味し、逆に、耐水度の数値が小さいことは防水性が低いことを意味している。本明細書中においては、300mm以上の耐水度を「防水性」と定義し、300mm未満の耐水度を「非防水性」又は「透水性」と定義する。
【0027】
外面シート12は、防水性を有していても良いし、非防水性(透水性)を有していても良い。
【0028】
[本体部の形状等]
図1及び図2に示すように、本体部10は、本体部10を幅方向に二分する縦中心線100と、縦中心線100を境とした幅方向の一方側を構成する第1パネル部10Aと、縦中心線100を境とした幅方向の他方側を構成する第2パネル部10Bとを有している。
【0029】
縦中心線100は、着用者の非目元側の面(外面)が上を向くよう本体部10を展開させた状態(図1の状態)における本体部10の幅方向の中央部において、該幅方向と直交する方向に延びる線である。
【0030】
第1パネル部10Aは、冷却具1の着用時において、着用者の一方の目(例えば右目)を覆うように構成されている。第2パネル部10Bは、冷却具1の着用時において、着用者の他方の目(例えば左目)を覆うように構成されている。第1パネル部10A及び第2パネル部10Bは、それぞれ略正方形状に形成されており、本体部10の幅方向両端部の周縁は、外側に突出する円弧状に形成されている。なお、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bは、正方形状に形成されていても良いし、矩形状に形成されていても良いし、他の形状を有していても良い。
【0031】
また、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bは、縦中心線100を境として左右対称の形状を有しており、かつ、縦中心線100において一体的に連続している。換言すれば、本体部10は、同形同大の第1パネル部10A及び第2パネル部10Bを左右対称に配したシート状部材からなる。なお、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bが当初から一体として形成された構成に代えて、例えば、別体として形成された第1パネル部10A及び第2パネル部10Bを機械的に結合させる構成であっても良い。
【0032】
第1パネル部10A及び第2パネル部10Bは、縦中心線100の後述する上縁部13近傍及び後述する下縁部14近傍がそれぞれ接続されておらず、縦中心線100においてのみ接続されている。これにより、本体部10は、縦中心線100を中心として第1パネル部10A及び第2パネル部10Bを展開させた際に、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bが平面方向に並列する平面形状となるよう構成されている。すなわち、本体部10は、図2に示すように、第1パネル部10Aと第2パネル部10Bとのなす角が180度となるよう、縦中心線100を中心として第1パネル部10A及び第2パネル部10Bを展開させることが可能に構成されている。なお、ここでいう「接続」には、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bが一体として形成されることにより当初から接続されている構成と、別体として形成された第1パネル部10A及び第2パネル部10Bを機械的に接続させる構成との双方が含まれる。
【0033】
図1に示すように、本体部10は、冷却具1の着用時において、着用者の額側に位置する上縁部13と、冷却具1の着用時において、着用者の鼻側に位置する下縁部14と、上縁部13から下縁部14側に向けて形成された上側スリット15と、下縁部14から上縁部13側に向けて形成された下側スリット16とを有している。
【0034】
上側スリット15は、上縁部13から下縁部14側に向けて先細りとなるよう形成された略三角状の切り欠きである。また、上側スリット15は、冷却具1の着用時において、着用者の眉間又はその近傍に位置するよう構成されている。
【0035】
下側スリット16は、下縁部14から上縁部13側に向けて先細りとなるよう形成された略逆三角状の切り欠きである。また、下側スリット16の先端は、上縁部13側に向けて湾曲する円弧状に形成されている。この下側スリット16は、冷却具1の着用時において、着用者の鼻梁又はその近傍に位置するよう構成されている。
【0036】
本体部10の上縁部13、下縁部14、上側スリット15及び下側スリット16の形状は、着用者の顔(特に、鼻、目元及び額)にフィットしやすくなるよう適宜調整されるものであり、それぞれ、直線、円弧状、局所的に凸部や曲線部を有する形状等の種々の任意の形状を採用することが可能である。例えば、上述した実施形態では、上側スリット15及び下側スリット16が切り欠きであるものとして説明したが、これに限定されず、上側スリット15及び下側スリット16が切開線であっても良い。
【0037】
以上の構成を備える本体部10は、使用前においては、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bが縦中心線100に沿って二つ折りされることで、平面状に折り畳まれている。なお、この状態において、後述するように耳掛け部30を本体部10の内側に折り込んで収納することで(図2及び図6参照)、コンパクト化することが可能である。一方、本体部10は、使用時に縦中心線100とは反対側の縁部から開かれ、本体部10が折り畳まれていた内側の面が着用者側の面となるようにして着用される。
【0038】
また、本体部10は、冷却具1の着用時において、着用者の顔の目及び目の周辺を覆うように構成されている。本明細書において、「目の周辺」とは、例えば、額、眉毛、頬、こめかみ、鼻等である。なお、本実施形態では、本体部10が着用者の顔の目及び目の周辺を覆うように構成されているものとして説明したが、これに限定されず、着用者の顔の目のみを覆うように構成されていても良いし、目の周辺のみを覆うように構成されていても良い。すなわち、本体部10は、冷却具1の着用時において、目のみを覆う大きさ及び形状であっても良いし、着用者の目と対向する領域が開口していても良い。また、本体部10は、着用者の顔の目及び/又は目の周辺に加えて他の領域を覆うように構成されていても良く、例えば、着用者の顔の全部を覆うように構成されていても良い。
【0039】
なお、本実施形態では、本体部10が内面シート11及び外面シート12を有しているものとして説明したが、これに限定されず、内面シート11及び外面シート12のいずれか一方のみを有する構成としても良い。また、内面シート11と冷却体20との間に他のシートを有していても良いし、外面シート12と冷却体20との間に他のシートを有していても良い。
【0040】
[冷却体の構成]
図1図4に示すように、冷却体20は、水を保有する保水層22を有している。本実施形態において、保水層22は、冷却具1が包装体200に封入された状態において水を保有している。
【0041】
冷却体20の形態として、例えば、以下に示す(1)及び(2)の形態が挙げられる。
(1) 冷却体20の一形態として、保水層22をもつシート状物である形態が挙げられる。この場合、保水層22は、粉末状または繊維状の保水材に水を含有させ混合することで得られるペーストを、シートの一方の面に塗布することで得られるものである。シートとは、後述する第一シート23、第二シート24及び基材層21のいずれであってもよい。
(2) また、冷却体20の別の形態として、保水材自体が形状を保持しており、保水層22である形態が挙げられる。この場合、保水材を好みのサイズに切断し、水を含有させることで得られるものである。
なお、本明細書において、保水材とは、保水能(吸水作用又は除水作用)を有するものであり、水の保持が可能なものであればその種類に特に制限はないが、水放散性に優れたものであることが好ましい。
【0042】
本実施形態では、冷却体20は、上記(1)の形態である。具体的には、冷却体20は、矩形状の扁平体であり、基材層21と、基材層21上に積層された保水層22とを備えている。また、冷却体20は、第一シート23と、保水層22及び基材層21を介して第一シート23と対向するよう配された第二シート24とを更に備えている。
【0043】
なお、上記(1)及び(2)のいずれの形態においても、冷却体20は、第一シート23及び第二シート24の周縁部を互いに接合することにより形成された袋体の中に、保水材が封入された構成を有していてもよい。冷却体20は、このように第一シート23及び第二シート24が袋体を構成することにより、構成材料の意図しない脱落を防いで製造効率を更に高めることができる。
【0044】
[保水層及び保水材]
上記のとおり、本実施形態に係る冷却体20は、水を吸水可能な保水材を有している。上記(1)の形態においては、保水層22が保水材を有している。具体的には、保水層22は、基材層21の上に散布された保水材と、該保水材に保持された水とを有している。この場合において、保水材としては、例えば、炭素成分、繊維材料及び吸水性の粉体等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0045】
炭素成分は、保水能を有するものであり、例えば、活性炭、アセチレンブラック、及び黒鉛から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。また、繊維材料としては、親水性繊維、中でもセルロース繊維を用いることがより好ましい。セルロース繊維としては、化学繊維(合成繊維)や天然繊維を用いることができる。さらに、前記以外の吸水性の粉体としては、バーミキュライト、おがくず、シリカゲル、ケイ酸カルシウム、ゼオライト、パルプ粉末、及び吸水性ポリマーから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0046】
吸水性ポリマーとしては、自重の20倍以上の液体を吸収、保持できる架橋構造を有する親水性のポリマーが挙げられる。吸水性ポリマーの形状は、球状、塊状、ブドウ房状、及び繊維状のいずれでもよい。吸水性ポリマーの質量平均粒径は、1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることがさらに好ましい。また、吸水性ポリマーの質量平均粒径は、1000μm以下であることが好ましく、700μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらにより好ましい。吸水性ポリマーの粒径はレーザー回折法により測定される。
【0047】
吸水性ポリマーの具体例としては、例えば、デンプン、架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。これらのなかでも、担持される水の量を特定の範囲に維持しやすいことから、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体が好ましい。
【0048】
吸水性ポリマーを使用した場合の保水層の態様としては、例えば、(a)吸水性ポリマーが2枚の透湿性シート間に挟持されて形成された単一層を有する態様、(b)吸水性ポリマーが、基材層21に直接積層されており、単一層状に配された態様、あるいは(c)吸水性ポリマーが隣接して層状に配された第1吸水性ポリマー層と、第1吸水性ポリマー層に隣接し、吸水性樹脂の粉末が2枚の透湿性シート間に挟持されて形成された第2吸水性ポリマー層とが配された積層構造をとる態様等が挙げられる。
【0049】
一方、上記(2)の形態においては、保水層22が保水材として機能している。この場合において、保水層22及び保水材としては、たとえば、種々の繊維素材により構成が可能であるが、親水性繊維や、親水性繊維と合成繊維の混紡とすることで構成できる。繊維素材として例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、レーヨン、コットン、パルプ等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0050】
上記(1)及び(2)のいずれの形態においても、冷却体20は、保水材の含有量が5mg/cm以上20mg/cm以下であることが好ましく、8mg/cm以上17mg/cm以下であることがより好ましく、10mg/cm以上13mg/cm以下であることが更に好ましい。このような含有量であることにより、十分な水の吸水が可能であり、十分な冷却機能を与えることができるという利点がある。
【0051】
保水材に保持される水は、電解質水溶液(例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の水溶液)由来のものであっても良く、また、例えばエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、フェノキシエタノール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の防腐剤、静菌剤、殺菌剤や酸化防止剤が添加されていても良い。
【0052】
[水の含有量]
保水材がこのような構成を有しているところ、上記(1)及び(2)のいずれの形態においても、保水層22に保有される水の初期含有量は、保水層22の最大吸水量の1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、2質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上10質量%以下であることが更に好ましく、4質量%以上7質量%以下であることがより更に好ましい。このような初期含有量であることにより、長時間に亘って着用者に冷却感を与えることができるという利点がある。また、着用者がメントールによる冷涼感を感じるのに十分な水分量を着用者に与えることができるという利点もある。
【0053】
[保水層の最大吸水量の測定方法]
保水層22の最大吸水量は、例えば、次の方法により測定することができる。すなわち、まず、250メッシュ(61μm)のナイロン製織物袋(100mm×150mm)と試料を秤量し、メッシュ袋の風袋重量と試料の重量を量る。次に、上記メッシュ袋内に試料を入れ、300mLビーカー内に立てて入れ、イオン交換水をメッシュ袋に直接当たらないように300mL加え、30分間浸せきし、充分膨潤させる。その後、10分間吊り下げて水切りを行い、化学天秤で小数点以下2桁まで秤量する。そして、以上により求めた「メッシュ袋総重量」、「メッシュ袋の風袋重量」及び「試料の重量」を用いて、以下の式により最大吸水量を求める。
「最大吸水量」=「メッシュ袋総重量」-「メッシュ袋の風袋重量」-「試料の重量」
【0054】
具体的には、水の初期含有量は、0.04g/cm以上0.4g/cm以下であることが好ましく、0.08g/cm以上0.21g/cm以下であることがより好ましく、0.1g/cm以上0.15g/cm以下であることが更に好ましい。このような初期含有量であることにより、長時間に亘って着用者に冷却感を与えることができるという利点がある。また、着用者がメントールによる冷涼感を感じるのに十分な水分量を着用者に与えることができるという利点もある。さらに、水によって着用者の目の周囲の皮膚が膨潤し、メントールによる冷涼感の感度が向上するため、着用者に心地よい冷たさを与えることができるという利点もある。
【0055】
また、本実施形態に係る冷却具1は、上記(1)及び(2)のいずれの形態においても、水の総含有量が2g以上20g以下であることが好ましく、4g以上16g以下であることがより好ましく、6g以上10g以下であることが更に好ましい。このような総含有量であることにより、長時間に亘って着用者に冷却感を与えることができるという利点がある。また、着用者がメントールによる冷涼感を感じるのに十分な水分量を着用者に与えることができるという利点もある。さらに、水によって着用者の目の周囲の皮膚が膨潤し、メントールによる冷涼感の感度が向上するため、着用者に心地よい冷たさを与えることができるという利点もある。
【0056】
ここで、水の初期含有量とは、酸素遮断袋等の包材(本実施形態では包装体200)を開封させた直後において、保水層22が保有する水の単位面積当たりの質量である。また、水の総含有量とは、酸素遮断袋等の包材(本実施形態では包装体200)を開封させた直後において、保水層22が保有する水の総質量である。そのため、冷却具1が冷却体20を2つ以上有している場合には、各冷却体20の保水層22が保有する水の合計質量が水の総含有量となる。
【0057】
水の初期含有量及び水の総含有量は、例えば、次の方法により測定することができる。すなわち、まず、包装体200を開封して冷却具1を取り出し、冷却具1の水を含有している部位、すなわち、冷却体20を冷却具1から取り出す。冷却体20を取り出した後、水分計(ケット水分計 FD-240、(株)ケット科学研究所製)に冷却体20を設置する。そして、包装体200の開封開始から30秒後に冷却体20の質量を測定する。その後、水分計にて冷却体20を70℃で10時間加熱乾燥し、加熱乾燥後の冷却体20の質量を測定する。そして、測定された冷却体20の「乾燥前質量」及び「乾燥後質量」を用いて、以下の式により水の総含有量を求める。
「水の総含有量」=「乾燥前質量」-「乾燥後質量」
【0058】
その後、保水層22の第一シート23に対向する対向面の総面積を測定する。上記(1)の形態の場合、基材層21の保水層22を介して第一シート23に対向する対向面の総面積を測定し、当該基材層21の総面積を上記保水層22の総面積とみなす。上記(2)の形態の場合、保水層22の第一シート23に対向する対向面の総面積を測定する。そして、測定された冷却体20の「乾燥前質量」及び「乾燥後質量」と「保水層22の総面積」とを用いて、以下の式により水の初期含有量を求める。
「水の初期含有量」=(「乾燥前質量」-「乾燥後質量」)/「保水層22の総面積」
【0059】
[基材層]
基材層21は、保水層22の第一シート23又は第二シート24とは反対側の表面を被覆するよう設けられている。本実施形態では、基材層21は、保水層22の第一シート23とは反対側の表面を被覆している。
【0060】
基材層21を第二シート24側(着用者の非目側)に配置した場合、基材層21は、保水層22の第一シート23とは反対側の表面を被覆している。この場合において、基材層21は、難通気性又は非通気性と難透湿性又は非透湿性とを有していることが好ましい。基材層21がこのような構成を有していることにより、保水層22の蒸気放出方向を第一シート23側(着用者の目側)に規定することができるという利点がある。また、基材層21の上に保水層22を積層させることで、本体部10に冷却体20を設置する際の生産性が向上するという利点がある。
【0061】
このような基材層21としては、例えば、合成樹脂フィルムを用いることができ、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。合成樹脂フィルムは、単層でも、複数層の積層体であってもよい。不織布、紙若しくはフィルム又はこれらの2種以上の積層体を用いることができる。
【0062】
なお、本実施形態では、基材層21は、保水層22の第一シート23とは反対側の表面を被覆しているものとして説明したが、これに限定されず、基材層21が保水層22の第二シート24とは反対側の表面を被覆するよう設けられていても良いし、基材層21を有しない構成としても良い。
【0063】
[第一シート及び第二シート]
第一シート23は、着用者の目側に配されている。本実施形態において、第一シート23は、通気性を有している。具体的には、第一シート23は、少なくとも着用者の目と保水層22との間の領域における透気度が、発生した蒸気をゆるやかに放出しつつ、過度に加湿しない観点から、350秒/100mL以下であることが好ましく、100秒/100mL以下であることがより好ましい。第一シート23は、このような透気度を有することにより、水の蒸発に伴う気化放熱によって顔への冷却効果を高めることも可能となる。なお、第一シート23は、こうした透気度を満足すれば、その一部が通気性を有しない構成であってもよい。
【0064】
また、第一シート23は、透湿性を有している。具体的には、第一シート23は、少なくとも着用者の目と保水層22との間の領域における透湿度が、着用時に蒸れや濡れを抑制する観点から、12000g/m・24hr以下であることが好ましく、11000g/m・24hr以下であることがより好ましく、10000g/m・24hr以下であることが更に好ましく、8000g/m・24hr以下であることがより一層好ましい。また、この透湿度は、水の蒸発に伴う気化放熱によって冷却効果を高める観点から、2000g/m・24hr以上であることが好ましく、2500g/m・24hr以上であることがより好ましく、3000g/m・24hr以上であることが更に好ましい。こうした透湿度を満足すれば、第一シート23は、その一部が透湿性を有しない構成であってもよい。
【0065】
さらに、第一シート23は、防水性を有していても良い。具体的には、第一シート23は、少なくとも着用者の目と保水層22との間の領域における耐水度が、着用時に蒸れや濡れを抑制する観点から、300mm以上であることが好ましく、400mm以上であることがより好ましく、500mm以上であることが更に好ましい。さらに、1000mm以上であることが最も好ましい。こうした耐水度を満足すれば、第一シート23は、その一部が防水性を有しない構成であってもよい。また、第一シート23は、防水性を有しているものとして説明したが、これに限定されず、非防水性(透水性)を有していても良い。
【0066】
第二シート24は、着用者の非目側に配されている。第二シート24は、通気性、難通気性及び非通気性のいずれを有していても良い。しかしながら、第二シート24は、保水層22の蒸気放出方向を内面シート11側(着用者の目側)に規定する観点から、難通気性又は非通気性を有していることが好ましい。
【0067】
また、第二シート24は、透湿性、難透湿性及び非透湿性のいずれを有していても良い。しかしながら、第二シート24は、保水層22の蒸気放出方向を内面シート11側(着用者の目側)に規定する観点から、難透湿性又は非透湿性を有していることが好ましい。
【0068】
さらに、第二シート24は、防水性を有していても良いし、非防水性(透水性)を有していても良い。
【0069】
第一シート23及び第二シート24の材料は、内面シート11及び外面シート12と同じあっても良いし、異なっていても良い。
【0070】
本実施形態では、冷却体20が第一シート23及び第二シート24を有しているものとして説明したが、これに限定されず、第一シート23及び第二シート24のいずれか一方のみを有する構成としても良い。また、第一シート23及び第二シート24を有しておらず、基材層21及び保水層22を内面シート11又は外面シート12に固定させる構成としても良いし、基材層21及び保水層22を内面シート11と外面シート12との間に封入させる構成としても良い。さらに、冷却体20が第一シート23及び第二シート24に加えて基材層21も有していない場合には、保水層22を内面シート11又は外面シート12に固定させる構成としても良いし、保水層22を内面シート11と外面シート12との間に封入させる構成としても良い。また、第一シート23、第二シート24、内面シート11及び外面シート12を有していない構成としても良い。
【0071】
[冷却体の水蒸気発生量]
冷却体20は、水蒸気発生開始から60分間に放出される着用者の目側への水蒸気発生量が、2.5mg/(cm・時)以上であることが好ましく、5.0mg/(cm・時)以上であることがより好ましく、7.5mg/(cm・時)以上であることが更に好ましい。このような水蒸気発生量とすることにより、着用者の目及び目の周辺から冷却体20に伝導された熱を冷却体20から効率的に放熱させることができるという利点がある。また、着用者に与える冷却感と冷涼感のバランスを適切なものにすることができるという利点もある。さらに、水によって着用者の目の周囲の皮膚が膨潤し、メントールによる冷涼感の感度が向上するため、着用者に心地よい冷たさを与えることができるという利点もある。
【0072】
また、冷却体20は、水蒸気発生開始から60分間に放出される着用者の目側への水蒸気発生量が、30mg/(cm・時)以下であることが好ましく、20mg/(cm・時)以下であることがより好ましく、15mg/(cm・時)以下であることが更に好ましい。このような水蒸気発生量とすることにより、着用者がメントールによる冷涼感を感じるのに十分な水分量を着用者に与えつつも、着用者の目及び目の周辺の湿度を抑えて蒸れや濡れを抑制することができるという利点がある。また、水によって着用者の目の周囲の皮膚が膨潤し、メントールによる冷涼感の感度が向上するため、着用者に心地よい冷たさを与えることができるという利点もある。
【0073】
着用者の目側への水蒸気発生量は、図7に示す測定装置40を用いて、次のように測定される数値である。なお、以下の説明では防水性の包材(本実施形態では、包装体200)等に封入されて密封状態となっている冷却体20を対象とし、該防水性の包材等の開封を開始し、開封開始から図7に示す測定装置40に設置するまでに要する時間、つまり開封開始から5秒後の時点を「水蒸気発生開始時点」と定義する。図7に示す測定装置40は、アルミニウム製の測定室(容積4.2L)41と、測定室41の下部に除湿空気(湿度2%未満、流量2.1L/分)を流入させる流入路42と、測定室41の上部から空気を流出させる流出路43と、流入路42に設けられた入口温湿度計44及び入口流量計45と、流出路43に設けられた出口温湿度計46及び出口流量計47と、測定室41内に設けられた温度計(サーミスタ)48とを備えている。温度計48としては、温度分解能が0.01℃程度のものを使用する。なお、本明細書における水蒸気発生量とは、冷却体20の「水蒸気発生開始時点」を起点とし、60分後までに測定された水蒸気量の総量をいう。また、冷却具1が冷却体20を2つ以上有している場合には、各冷却体20の合計水蒸気発生量が上記の値を満たしていることが好ましい。
【0074】
[冷却体の形状・配置]
冷却体20の平面形状は、特に限定されず、円形、多角形等であってもよい。製造効率、取り扱い易さ、冷却効果の観点から、長方形、略正方形等の四角形が好ましく、取り扱いやすさの観点から略正方形がより好ましい。
【0075】
また、冷却体20は、冷却具1の着用時において、少なくとも一部が着用者の目及び/又は目の周辺と直接的又は間接的に接触するよう本体部10に配置されている。具体的には、冷却体20は、冷却具1の着用時において、少なくとも一部が着用者の目及び目の周辺と内面シート11を介して接触するよう本体部10に配置されている。
【0076】
なお、本実施形態では、冷却体20の少なくとも一部が着用者の目及び目の周辺と内面シート11を介して接触するものとして説明したが、これに限定されず、冷却体20の少なくとも一部が着用者の目及び/又は目の周辺と直接的に接触しても良い。冷却体20が着用者の目及び/又は目の周辺と直接的に接触する場合とは、本体部10が内面シート11を有していない場合である。
【0077】
また、冷却体20は、少なくとも一部が着用者の目の周辺と直接的又は間接的に接触すれば良い。すなわち、冷却体20は、冷却具1の着用時において、着用者の目と対向する領域が開口していても良い。さらに、冷却体20は、少なくとも一部が着用者の顔の全域と直接的又は間接的に接触しても良い。
【0078】
本実施形態において、冷却体20は、縦中心線100を境として左右対称となるよう、第1パネル部10Aと第2パネル部10Bとにそれぞれ設けられている(図1及び図2参照)。図示の例においては、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bに1つずつ、計2つの冷却体20が設置されている。
【0079】
なお、冷却体20は、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bに2つずつ設けられていても良いし、本体部10全体で1つの冷却体20が設けられていても良い。また、冷却体20が複数設けられる場合において、複数の冷却体20の冷却特性は同じであっても良いし、異なっても良いが、同じであることがより好ましい。
【0080】
[耳掛け部の構成]
耳掛け部30は、本体部10の幅方向の両端部に設けられており、該本体部10により着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺が覆われるように該本体部10を着用者の顔に保持させることが可能に構成されている(図5参照)。具体的には、耳掛け部30は、本体部10により着用者の顔の少なくとも目及び目の周辺が覆われるように該本体部10を着用者の顔に保持させることが可能に構成されている。
【0081】
なお、耳掛け部30は、本体部10により着用者の顔の少なくとも目の周辺が覆われるように該本体部10を着用者の顔に保持させることが可能に構成されていれば良い。また、耳掛け部30は、本体部10により着用者の顔の全部が覆われるように該本体部10を着用者の顔に保持させることが可能に構成されていても良い。
【0082】
図2及び図6に示すように、耳掛け部30は、冷却具1の使用前においては、本体部10の内側に折り込んで収納されている。また、図1及び図5に示すように、耳掛け部30は、冷却具1の使用時においては、本体部10の幅方向外側に展開されている。
【0083】
図1に示すように、耳掛け部30は、本体部10の幅方向に対して、着用時における本体部10の下方側に傾斜して設けられている。また、耳掛け部30は、それぞれ、着用時における本体部10の上下方向に対して傾斜した接合部50によって本体部10に接合されている。
【0084】
本実施形態に係る接合部50の構成としては、例えば、以下の(1)及び(2)の構成が挙げられる。
(1) 本体部10と耳掛け部30とが接着剤(例えば、ホットメルト型接着剤)等の他の部材により相互に接続されている場合には、当該接着剤等の他の部材が接合部50として機能する。
(2) 本体部10と耳掛け部30とが熱融着により相互に接続されている場合等、本体部10と耳掛け部30とが他の部材を介することなく相互に接合されている場合には、本体部10における耳掛け部30が接合される接合領域と耳掛け部30における本体部10が接合される接合領域とが、それぞれ接合部50として機能する。
【0085】
図1に示すように、各耳掛け部30は、耳掛け部本体31と、着用者の耳が挿通可能な耳掛け孔32とを有している。耳掛け部本体31は、上辺31aと、下辺31bと、本体部10に接合されていない耳掛け部30の開放側の開放縁31cと、本体部10に接合されている接合縁31dとを有している。
【0086】
本実施形態において、耳掛け部本体31は、平面形状を有しており、かつ略四角形状を有している。具体的には、上辺31a及び下辺31bが接合縁31d側から開放縁31cに向けて先細りとなっており、開放縁31cと連結する部分において湾曲している。また、接合縁31dが第1パネル部10A又は第2パネル部10Bの周縁に沿った形状を有している。
【0087】
耳掛け孔32は、耳掛け部本体31の接合縁31d近傍から耳掛け部本体31の開放縁31c近傍に亘って形成された円弧状の切開線である。この耳掛け孔32は、着用者の耳を挿通可能に構成されている。なお、耳掛け孔32の形状は何ら限定されるものではなく、直線状の切開線であっても良いし、着用者の耳を挿通可能な開口であっても良い。
【0088】
耳掛け部30は、本体部10と同様な材料であってもよく、異なる材料であってもよいが、本体部10のフィット感を良好にする観点から、伸縮性を有する材料であることが好ましく、本体部10の幅方向に伸長しやすいものがよい。本実施形態においては、耳掛け部30は不織布からなることが好ましく、伸縮性を有する不織布であることがより好ましい。なお、耳掛け部30は、伸縮性を更に高める観点から、不織布にエラストマーフィルムを積層させた多層構造であっても良い。また、耳掛け部30は、本体部10との結合性の観点から、構成繊維として熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。更に、加工のし易さの観点から、ポリプロピレンを含むことがより好ましい。なお、耳掛け部30は、ポリプロピレン以外の熱可塑性樹脂を更に含んでも良く、例えば、ウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれる一種以上を更に含むことが好ましく、ウレタンからなる合成繊維を用いることがより好ましい。このような構成となっていることによって、耳掛け部30の柔軟性及びフィット性を効率良く発現させることができるとともに、冷却具1の使用時に十分な強度を発現できる。
【0089】
なお、耳掛け部30は、本体部10を着用者の顔に保持させることが可能な構成であれば、上述した平面状の耳掛けに限定されず、冷却具を固定するために通常用いることが可能なものを任意に用いることが可能である。例えば、ゴム紐状の耳掛けや、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bの幅方向両端部に亘って架け渡された1又は複数のバンド等の種々の構成を採用可能である。また、耳掛け部30は、本体部10の幅方向両端部に接合される別部材の構成に限定されず、本体部10と一体的に形成された構成であっても良い。
【0090】
[メントール]
既述のとおり、本実施形態に係る冷却具1には、メントールが賦香されている。すなわち、冷却具1は、メントールを含有している。なお、本明細書において、「メントール」には、l-メントール及びdl-メントールの双方を含む態様と、l-メントール及びdl-メントールのいずれか一方のみを含む態様との両方の態様が含まれている。
【0091】
[メントールの賦香方法及び賦香位置]
冷却具1にメントールを賦香させる方法は、特に限定されず、種々の公知の賦香方法を採用することができる。例えば、メントールをエタノール等の溶剤で溶解させることにより得られる溶液を含侵させる方法や、内面シート11等とは別に液体を含侵させたシートを設ける方法、スプレーで吹き付ける方法、メントールを内面シート11等のシートに直接塗布する方法等が挙げられる。この他、メントールをエタノール等の溶剤で溶解させることにより得られる溶液を塗布させる方法や、内面シート11等とは別に溶液を塗布させたシートを設ける方法が挙げられる。
【0092】
本実施形態では、メントールを第二シート24の内面に直接塗布させている。なお、メントールの賦香位置は、第二シート24に限定されるものではない。例えば、内面シート11に賦香させても良いし、外面シート12に賦香させても良いし、第一シート23に賦香させても良いし、保水層22に賦香させても良い。
【0093】
[メントールの含有量]
メントールの賦香方法及び賦香位置に関わらず、本実施形態に係る冷却具1は、メントールの初期含有量が0.02mg/cm以上0.35mg/cm以下であることが好ましく、0.04mg/cm以上0.2mg/cm以下であることがより好ましく、0.06mg/cm以上0.12mg/cm以下であることが更に好ましい。このような初期含有量を有していることにより、着用者に対して冷涼感を与えることができるという利点がある。
【0094】
また、本実施形態に係る冷却具1は、メントールの賦香方法及び賦香位置に関わらず、メントールの総含有量が0.9mg以上17mg以下であることが好ましく、1.9mg以上10mg以下であることがより好ましく、2.8mg以上6mg以下であることが更に好ましい。このような総含有量を有していることにより、着用者に対して冷涼感を与えることができるという利点がある。
【0095】
ここで、メントールの初期含有量とは、冷却具1に賦香されたメントールの単位面積当たりの質量である。また、メントールの総含有量とは、冷却具1に賦香されたメントールの総質量である。そのため、メントールが冷却具1の複数位置に賦香されている場合には、各メントールの合計質量がメントールの総含有量となる。
【0096】
メントールの初期含有量及びメントールの総含有量は、例えば、次の方法により測定することができる。すなわち、まず、酸素遮断袋等の包材(本実施形態では包装体200)を開封して冷却具1を取り出すと共に、冷却具1をエタノールに24時間含侵させ、エタノールにメントールが抽出された抽出液を得る。その後、得られた抽出液をガスクロマトグラフィー質量分析計(GC-MS)(Agilient 6890N(製品名)、アジレント・テクノロジー株式会社製)により定量することにより、メントールの総含有量を求めることができる。なお、包材を開封させた直後に冷却具1に含有されているメントールの総質量は、冷却具1に賦香されたメントールの総質量とみなすことができるため、包材を開封させた直後におけるメントールの総含有量を用いている。
【0097】
その後、メントールが賦香されたシートの当該メントールが賦香された面の総面積を測定する。本実施形態では、第二シート24の基材層21に対向する面の総面積を測定する。そして、「メントールの総含有量」及び「シートの総面積」を用いて、以下の式によりメントールの初期含有量を求める。
「メントールの初期含有量」=「メントールの総含有量」/「シートの総面積」
【0098】
[メントールの目側揮散量]
冷却具1は、メントールの揮散開始から(例えば、包装体200の開封開始から)60分間に放出される着用者の目側へのメントール揮散量が、0.01μg/(cm・時)以上であることが好ましく、0.1μg/(cm・時)以上であることがより好ましく、0.5μg/(cm・時)以上であることが更に好ましい。このようなメントール揮散量であることにより、着用者に対して冷涼感を与えることができるという利点がある。また、着用者に与える冷却感と冷涼感のバランスを適切なものにすることができるという利点もある。
【0099】
また、冷却具1は、メントールの揮散開始から(例えば、包装体200の開封開始から)60分間に放出される着用者の目側へのメントール揮散量が、1000μg/(cm・時)以下であることが好ましく、100μg/(cm・時)以下であることがより好ましく、50μg/(cm・時)以下であることが更に好ましい。このようなメントール揮散量であることにより、着用者がメントールによる刺激を感じることを防止することができるという利点がある。
【0100】
着用者の目側へのメントール揮散量は、例えば、図8に示す測定装置60及びガスクロマトグラフィー質量分析計(GC-MS)(Agilient 6890N(製品名)、アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いて測定をすることができる。図8に示す測定装置60は、ポンプ61と、エタノールEを収容する容器62と、適切な大きさの漏斗63(又は漏斗状の器具)と、ポンプ61及び容器62を接続する第1ホース64と、容器62及び漏斗63を接続する第2ホース65とを備えている。また、第2ホース65の容器62側の端部は、エタノールEに浸水している。着用者の目側へのメントール揮散量を測定するにあたっては、まず、包装体200を開封して冷却具1を取り出し、冷却具1を漏斗63の大径部分の上に載置する。このとき、冷却具1の内面シート11が漏斗63側を向くよう、冷却具1を漏斗63に載置させる。次に、冷却具1の内面シート11から揮散される空気をポンプ61で吸引し、吸引した空気を容器62のエタノールEでバブリングする。ポンプ61による吸引は、包装体200を開封してから15秒後に開始し、0.2mL/時で1時間行う。そして、メントールが溶解されたエタノール溶液を適切な量にメスアップした後、ガスクロマトグラフィー質量分析計でメントール含有量を定量し、着用者の目側へのメントール揮散量を算出する。
【0101】
なお、本実施形態に係る冷却具1は、冷却具1の効果を妨げない範囲で他の冷涼成分を含んでいても良い。例えば、冷涼成分として、d-カンフル、dlカンフル、d-ボルネオール、dlボルネオール、ゲラニオール等を含んでいても良い。
【0102】
[冷却感と冷涼感とのバランス]
本実施形態に係る冷却具1は、水の初期含有量[g/cm]×メントールの初期含有量[mg/cm]×1000の値が4以上40以下であることが好ましい。このような構成を有する冷却具1によれば、水によって着用者の目の周囲の皮膚が膨潤し、メントールによる冷涼感の感度が向上するため、着用者に心地よい冷たさを与えることができるという利点がある。本実施形態に係る冷却具1は、このようにして、着用者に与える冷却感と冷涼感のバランスを適切なものにすることができる。
【0103】
なお、本実施形態に係る冷却具1は、水の初期含有量とメントールの初期含有量とを調整することにより、着用者に与える感覚や冷却時間、冷涼時間を変えることができる。例えば、以下の(1)~(3)の場合がある。
【0104】
(1) 着用者に対して冷涼感よりも冷却感を与えたい場合や、冷涼時間よりも冷却時間を長くさせたい場合には、水の初期含有量が0.2g/cm以上0.4g/cm以下であることが好ましく、メントールの初期含有量が0.02mg/cm以上0.06mg/cm以下であることが好ましい。
(2) 着用者に対して冷却感よりも冷涼感を与えたい場合や、冷却時間よりも冷涼時間を長くさせたい場合には、水の初期含有量が0.04g/cm以上0.1g/cm以下であることが好ましく、メントールの初期含有量が0.2mg/cm以上0.35mg/cm以下であることが好ましい。
(3) 着用者に対して冷却感及び冷涼感を同様に与えたい場合や、冷却時間及び冷涼時間を同様にさせたい場合には、水の初期含有量が0.1g/cm以上0.18g/cm以下であることが好ましく、メントールの初期含有量が0.06mg/cm以上0.24mg/cm以下であることが好ましい。
【0105】
なお、上記(1)~(3)のいずれの場合においても、着用者に対して心地よい冷たさを与えることができる。
【0106】
[冷却具の使用方法]
次に、本実施形態に係る冷却具1の使用方法について、説明する。図6に示すように、本実施形態に係る冷却具1は、防水性の包装体200に封入された状態で保管されている。この保管状態において、耳掛け部30は、本体部10の内側に折り込まれており、本体部10は、縦中心線100を中心として折り畳まれている。また、冷却体20の保水層22は、冷却具1が包装体200に封入された状態において水を保有している。
【0107】
冷却具1を使用する場合、まず、着用者は、包装体200を開封し、冷却具1を包装体200から取り出す。また、包装体200から冷却具1を取り出した後、着用者は、二つ折りになっている本体部10を幅方向両端部側から開き、本体部10の内側から一対の耳掛け部30を取り出す。そして、図5(a)に示すように、本体部10を着用者の目及び目の周辺に当てた状態において耳掛け部30を指で引張り、耳掛け孔32に耳を挿通させる。このようにして一対の耳掛け部30を着用者の左右の耳に引っ掛けることにより、図5(b)に示すように、本体部10によって着用者の目及び目の周辺が覆われた状態が維持されるよう、該本体部10を着用者の顔に保持させることができる。
【0108】
なお、本実施形態に係る冷却具1では、冷却具1が包装体200に封入された状態において、保水層22が水を保有しているため、冷却具1を包装体200から取り出した後に水に浸ける等して、保水層22に水を保有させる必要がない。そのため、包装体200を開封させるだけで、冷却具1を使用することができるという利点がある。また、冷却具1が包装体200に1個のみ封入されている場合には、衛生的であるという利点もある。
【0109】
そして、このように本体部10により着用者の目及び目の周辺が覆われた状態において、冷却体20の少なくとも一部が着用者の目及び目の周辺と内面シート11を介して接触することにより、着用者の目及び目の周辺から冷却体20に熱が伝導され、着用者の目及び目の周辺が冷却される。
【0110】
また、冷却体20が着用者の目及び目の周辺の熱で温められると、保水層22が保有する水が蒸発し、水蒸気が第一シート23及び内面シート11を通過して着用者の肌側に放出される。そのため、着用者の目及び目の周辺から冷却体20に伝導された熱が冷却体20から放熱されることとなる。さらに、冷却体20から外気に熱が伝導されるため、着用者の目及び目の周辺から冷却体20に伝導された熱が冷却体20から放熱されることとなる。冷却体20から熱が放熱されると、再度、着用者の目及び目の周辺から冷却体20に熱が伝導されるため、着用者の目及び目の周辺を更に冷却することができる。このような冷却メカニズムにより、本実施形態に係る冷却具1は、長時間に亘って着用者に冷却感を与えることができる。
【0111】
また、本実施形態に係る冷却具1では、第二シート24の内面にメントールが賦香されている。そのため、冷却具1の周囲の温度の影響などによりメントールが揮散すると、揮散したメントールが着用者の肌側に放出される。しかしながら、着用者が冷却具1を着用した直後においては、着用者の目及び目の周辺に潤いが足りていないため、着用者の目及び目の周辺にメントールが付着しても着用者は冷涼感を感じない。着用者が冷却具1を着用してから数秒が経過すると、冷却体20から放出された水蒸気により、着用者の目が潤い、また、着用者の目の周辺の皮膚が膨潤するため、着用者の目及び目の周辺に付着したメントールにより冷涼感の感度が向上する。
【0112】
このように、着用者は、冷却具1を着用した直後から冷却感及び冷涼感の双方を感じるわけではない。すなわち、着用者は、冷却具1を着用した直後においては、冷却体20による冷却感のみを感じている。そして、着用者は、冷却具1を着用していく中で徐々にメントールによる冷涼感を感じ始め、最終的には、水とメントールとの相乗効果により冷却感及び冷涼感の双方を感じることとなる。
【0113】
以上説明したとおり、本実施形態に係る冷却具1では、着用者に対して冷却感及び冷涼感を与えることができる。特に本実施形態に係る冷却具1は、水の初期含有量[g/cm]×メントールの初期含有量[mg/cm]×1000の値が4以上40以下であるため、着用者に与える冷却感と冷涼感のバランスを適切なものにすることができ、着用者に心地よい冷たさを与えることができる。また、メントールの初期含有量、メントールの総含有量、或いは、メントールの揮散開始から60分間に放出される着用者の目側へのメントール揮散量が比較的少ない態様であっても、水による皮膚の膨潤によってメントールによる冷涼感の感度が向上するため、着用者に対して心地良い冷たさを与えることができるという利点がある。
【0114】
[本実施形態に係る冷却具の利点]
このように、本実施形態に係る冷却具1は、着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺を覆う本体部10と、本体部10に設けられる冷却体20とを備える冷却具1であって、冷却体20は、水を保有する保水層22を有し、保水層22は、水の初期含有量が0.04g/cm以上0.4g/cm以下であり、冷却体20は、着用時において、少なくとも一部が着用者の目及び/又は目の周辺と直接的又は間接的に接触するよう本体部10に配置されており、冷却具1は、メントールを含有しており、水の初期含有量[g/cm]×メントールの初期含有量[mg/cm]×1000の値が4以上40以下である。
【0115】
このような構成を備える冷却具1によれば、着用者に与える冷却感と冷涼感のバランスを適切なものにすることができ、着用者に心地よい冷たさを与えることができるという利点がある。
【0116】
[変形例]
本発明に係る冷却具は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内において種々の改変を行なうことができる。
【0117】
例えば、上述した実施形態では、冷却具1全体が包装体200に封入されているものとして説明したが、これに限定されず、冷却体20が本体部10と一体となっていない場合(後付け可能な場合)には、本体部10と冷却体20とを個別に包装しても良いし、冷却体20のみを包装しても良い。
【0118】
また、上述した実施形態では、本体部10が上側スリット15及び下側スリット16を有しているものとして説明したが、これに限定されず、上側スリット15及び下側スリット16を有しない構成としても良い。
【0119】
さらに、上述した実施形態では、耳掛け部30が本体部10の幅方向に対して、着用時における本体部10の下方側に傾斜して設けられているものとして説明したが、これに限定されず、例えば、耳掛け部30が本体部10の幅方向に沿って設けられていても良い。
【0120】
また、上述した実施形態では、内面シート11の材料として不織布を用いることが好ましいものとして説明をしたが、さらに、当該不織布が親水性を有していても良い。すなわち、内面シート11の材料として親水性不織布を用いても良い。内面シート11の材料として親水性不織布を用いることにより、蒸発した水及び揮散したメントールが内面シート11に吸収及び保持されるため、着用者に与える冷却感及び冷涼感を向上させることができるという利点がある。
【0121】
親水性不織布としては、例えば、親水性繊維により形成された不織布や、親水化剤により親水化処理が施された不織布等を用いることができる。親水性繊維としては、例えば、セルロース繊維やポリアクリロニトリル繊維を含むことが好ましい。セルロース繊維としては、レーヨン、リヨセル(登録商標)、テンセル(登録商標)、コットンの繊維などが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、親水性の合成繊維を用いることも好ましい。親水性の合成繊維としては、アクリル繊維や、繊維油剤などの親水化剤による処理で親水化されたポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維などを用いることが好ましい。親水化処理の方法としては、親水化剤による表面付着処理や練り込みなどが挙げられる。親水化剤としては、一般的な繊維用界面活性剤や親水性油剤などを用いることができる。
【0122】
なお、本明細書では、親水度が1%以上の不織布を「親水性不織布」と定義する。この親水度は、例えば、以下の(1)~(7)の方法により測定することができる。
(1)不織布サンプルを温度25℃湿度25%環境下で24時間置き、乾燥させる。
(2)不織布サンプルに1cm×1cmのマス目を100マス分記入する。
(3)不織布サンプルの裏面が作業台に触れないよう、不織布サンプルを任意の枠に固定する。この時、不織布サンプルは、弛みおよび伸びの無いこととする。
(4)3μLのイオン交換水をマイクロピペットでとり、不織布サンプルに着滴する。着滴は、1マスに1滴とする。1個目の着滴から時間を計測し、5秒ごとに1滴のペースで着滴を行う。
(5)10回の着滴が終わったら、1個目の着滴から60秒後に1個目の水滴の評価を行い、続けて5秒ごとに1滴のペースで2個目以降の水滴の状態を順番に評価する。評価内容は、以下のa~cの3通りで行う。
a:球状のままの水滴
b:球状を保てずに不織布上で広がった水滴
c:不織布にしみ込んでいる水滴
(6)10個の水滴の評価が終わったら、上記(4)及び(5)を10回繰り返し、計100個の水滴の評価を行う。
(7)上記a~cの内、aを0点,bを0.5点、cを1点とする。また、評価がaだった水滴の個数を「A」、評価がbだった水滴の個数を「B」、評価がcだった水滴の個数を「C」とし、次の式で親水度を求める。
親水度(%)={(0×A+0.5×B+1×C)/100}×100
【0123】
上記のような変形例が本発明の範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0124】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の冷却具を開示する。
【0125】
<1>
着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺を覆う本体部と、前記本体部に設けられる冷却体とを備える冷却具であって、
前記冷却体は、水を保有する保水層を有し、
前記保水層は、水の初期含有量が0.04g/cm以上0.4g/cm以下であり、
前記冷却体は、着用時において、少なくとも一部が着用者の目及び/又は目の周辺と直接的又は間接的に接触するよう前記本体部に配置されており、
前記冷却具は、メントールを含有しており、
水の初期含有量[g/cm]×メントールの初期含有量[mg/cm]×1000の値が4以上40以下である
冷却具。
【0126】
<2>
前記冷却具は、メントールの初期含有量が0.02mg/cm以上0.35mg/cm以下であって、0.04mg/cm以上0.2mg/cm以下であることが好ましく、0.06mg/cm以上0.12mg/cm以下であることがより好ましい
前記<1>に記載の冷却具。
<3>
前記冷却体は、水を吸水可能な保水材を有しており、
前記冷却体は、前記保水材の含有量が5mg/cm以上20mg/cm以下であって、8mg/cm以上17mg/cm以下であることが好ましく、10mg/cm以上13mg/cm以下であることがより好ましい
前記<1>又は<2>に記載の冷却具。
<4>
前記保水層は、水の初期含有量が前記保水層の最大吸水量の1質量%以上20質量%以下であって、2質量%以上15質量%以下であることが好ましく、3質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、4質量%以上7質量%以下であることが更に好ましい
前記<1>~<3>のいずれか1項に記載の冷却具。
<5>
前記冷却具は、水の総含有量が2g以上20g以下であって、4g以上16g以下であることが好ましく、6g以上10g以下であることがより好ましい
前記<1>~<4>のいずれか1項に記載の冷却具。
<6>
前記冷却具は、メントールの総含有量が0.9mg以上17mg以下であって、1.9mg以上10mg以下であることが好ましく、2.8mg以上6mg以下であることがより好ましい
前記<1>~<5>のいずれか1項に記載の冷却具。
【0127】
<7>
前記保水層は、水の初期含有量が0.04g/cm以上0.4g/cm以下であって、0.08g/cm以上0.21g/cm以下であることがより好ましく、0.1g/cm以上0.15g/cm以下であることが更に好ましい
前記<1>~<6>のいずれか1項に記載の冷却具。
<8>
前記保水層は、水の初期含有量が0.2g/cm以上0.4g/cm以下であり、
前記冷却具は、メントールの初期含有量が0.02mg/cm以上0.06mg/cm以下である
前記<1>~<7>のいずれか1項に記載の冷却具。
<9>
前記保水層は、水の初期含有量が0.04g/cm以上0.1g/cm以下であり、
前記冷却具は、メントールの初期含有量が0.2mg/cm以上0.35mg/cm以下である
前記<1>~<8>のいずれか1項に記載の冷却具。
<10>
前記保水層は、水の初期含有量が0.1g/cm以上0.18g/cm以下であり、
前記冷却具は、メントールの初期含有量が0.06mg/cm以上0.24mg/cm以下である
前記<1>~<9>のいずれか1項に記載の冷却具。
【0128】
<11>
前記冷却体は、水蒸気発生開始から60分間に放出される着用者の目側への水蒸気発生量が、2.5mg/(cm・時)以上であって、5.0mg/(cm・時)以上であることが好ましく、7.5mg/(cm・時)以上であることがより好ましい
前記<1>~<10>のいずれか1項に記載の冷却具。
<12>
前記冷却体は、水蒸気発生開始から60分間に放出される着用者の目側への水蒸気発生量が、30mg/(cm・時)以下であって、20mg/(cm・時)以下であることが好ましく、15mg/(cm・時)以下であることがより好ましい
前記<1>~<11>のいずれか1項に記載の冷却具。
<13>
前記冷却具は、メントールの揮散開始から60分間に放出される着用者の目側へのメントール揮散量が、0.01μg/(cm・時)以上であって、0.1μg/(cm・時)以上であることが好ましく、0.5μg/(cm・時)以上であることがより好ましい
前記<1>~<12>のいずれか1項に記載の冷却具。
<14>
前記冷却具は、メントールの揮散開始から60分間に放出される着用者の目側へのメントール揮散量が、1000μg/(cm・時)以下であって、100μg/(cm・時)以下であることが好ましく、50μg/(cm・時)以下であることがより好ましい
前記<1>~<13>のいずれか1項に記載の冷却具。
【0129】
<15>
前記本体部は、
着用時において、着用者の肌側に向く内面シートと、
前記冷却体を介して前記内面シートと対向するよう配された外面シートと
を有し、
前記冷却体は、着用時において、少なくとも一部が前記内面シートを介して着用者の目及び/又は目の周辺と接触するよう前記本体部に配置されている
前記<1>~<14>のいずれか1項に記載の冷却具。
<16>
前記内面シートは、通気性を有している
前記<15>に記載の冷却具。
<17>
前記内面シートは、少なくとも着用者の目と前記保水層との間の領域における透気度が、30000秒/100mL以下であって、3000秒/100mL以下であることが好ましく、300秒/100mL以下であることがより好ましく、200秒/100mL以下であることがより好ましく、100秒/100mL以下であることが更に好ましく、5秒/100mL以下であることがより更に好ましく、また、0秒/100mLであることが最も好ましい
前記<16>に記載の冷却具。
【0130】
<18>
前記内面シートは、透湿性を有している
前記<15>~<17>のいずれか1項に記載の冷却具。
<19>
前記内面シートは、少なくとも着用者の目と前記保水層との間の領域における透湿度が、12000g/m・24hr以下であって、11000g/m・24hr以下であることが好ましく、10000g/m・24hr以下であることがより好ましい
前記<18>に記載の冷却具。
<20>
前記内面シートは、少なくとも着用者の目と前記保水層との間の領域における透湿度が、2000g/m・24hr以上であって、2500g/m・24hr以上であることが好ましく、3000g/m・24hr以上であることがより好ましい
前記<18>又は<19>に記載の冷却具。
<21>
前記内面シートは、防水性を有している
前記<15>~<20>のいずれか1項に記載の冷却具。
<22>
前記内面シートは、少なくとも着用者の目と前記保水層との間の領域における耐水度が、300mm以上であって、400mm以上であることが好ましく、500mm以上であることがより好ましく、1000mmであることが更に好ましい
前記<21>に記載の冷却具。
【0131】
<23>
前記内面シートの材料は、不織布、織布及び紙から選択される1種又は2種以上の繊維シートと、樹脂発泡シートと、金属シートとから選択される1種又は2種以上である
前記<15>~<22>のいずれか1項に記載の冷却具。
<24>
前記内面シートの材料は、不織布である
前記<15>~<23>のいずれか1項に記載の冷却具。
<25>
前記内面シートの材料は、親水性不織布である
前記<15>~<24>のいずれか1項に記載の冷却具。
<26>
前記親水性不織布は、親水度が1%以上の不織布である
前記<25>に記載の冷却具。
【0132】
<27>
前記外面シートは、難通気性又は非通気性を有している
前記<15>~<26>のいずれか1項に記載の冷却具。
<28>
前記外面シートは、難透湿性又は非透湿性を有している
前記<15>~<27>のいずれか1項に記載の冷却具。
<29>
前記冷却体は、
着用者の目側に配された第一シートと、
少なくとも前記保水層を介して前記第一シートと対向するよう配された第二シートと
を有している
前記<1>~<28>のいずれか1項に記載の冷却具。
<30>
前記第一シートは、通気性を有している
前記<29>に記載の冷却具。
<31>
前記第一シートは、少なくとも着用者の目と前記保水層との間の領域における透気度が、350秒/100mL以下であって、100秒/100mL以下であることが好ましい
前記<30>に記載の冷却具。
【0133】
<32>
前記第一シートは、透湿性を有している
前記<29>~<31>のいずれか1項に記載の冷却具。
<33>
前記第一シートは、少なくとも着用者の目と前記保水層との間の領域における透湿度が、12000g/m・24hr以下であって、11000g/m・24hr以下であることが好ましく、10000g/m・24hr以下であることがより好ましく、8000g/m・24hr以下であることが更に好ましい
前記<32>に記載の冷却具。
<34>
前記第一シートは、少なくとも着用者の目と前記保水層との間の領域における透湿度が、2000g/m・24hr以上であって、2500g/m・24hr以上であることが好ましく、3000g/m・24hr以上であることがより好ましい
前記<32>又は<33>に記載の冷却具。
<35>
前記第一シートは、防水性を有している
前記<29>~<34>のいずれか1項に記載の冷却具。
<36>
前記第一シートは、少なくとも着用者の目と前記保水層との間の領域における耐水度が、300mm以上であって、400mm以上であることが好ましく、500mm以上であることがより好ましく、1000mm以上であることが更に好ましい
前記<35>に記載の冷却具。
【0134】
<37>
前記第二シートは、難通気性又は非通気性を有している
前記<29>~<36>のいずれか1項に記載の冷却具。
<38>
前記第二シートは、難透湿性又は非透湿性を有している
前記<29>~<37>のいずれか1項に記載の冷却具。
【実施例0135】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらは本発明の目的を限定するものではない。
【0136】
[実施例1~6及び比較例1~3]
以下の手順に従い、実施例1~6及び比較例1~3に係る冷却具を作製した。実施例1~6及び比較例1~3の作製条件は、水の初期含有量及びメントールの初期含有量が異なること以外は、同様である。
【0137】
[冷却体の作製]
水の初期含有量及びメントールの初期含有量が表1に示す値となるように、図3及び図4に示す冷却体20を2つ作製した。基材層21としては、24cmのMEGC21(坪量32g/m、ニットク株式会社製)を用い、保水材としては、吸水性ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム、球状、平均粒子径300μm、坪量70g/m、アクアリックCA、株式会社日本触媒社製)と、木材パルプ紙(伊野上紙株式会社製)とを積層してなるポリマーシート(坪量120、PS-120PHC、伊野上株式会社製)を用いた。また、吸水性ポリマーに水を添加して、保水層22を得た。
【0138】
第一シート23としては、40cmのブレスロン(BRN-503)(透気度50秒/100mL、株式会社ニトムズ社製)を用い、第二シート24としては、40cmのLF-KIPE-P71(非通気性、坪量71g/m、伊野紙株式会社製)を用いた。また、メントールを27.5質量%含む合成香料を第二シート24に直接塗布し、メントールを賦香させた。
【0139】
[冷却具の作製]
作製された2つの冷却体20を用いて、図1及び図2に示す冷却具1を作製した。内面シート11としては、137cmのNW-PRPW025(通気性、坪量25g/m、PT Multi Spunindo Jaya社製)を用い、外面シート12としては、137cmのNW-PRBPW052-YE(非通気性、坪量50g/m、株式会社ヨシモト印刷社製)を用いた。また、耳掛け部30としては、112cmのエラクサスF0501-C1(坪量50g/m、Golden Phoenix Fiberwebs Inc.製)を用いた。
【0140】
[試験1]
専門パネリスト2名が実施例1~6及び比較例1~3に係る冷却具をそれぞれ20分間着用し、着用時に感じる冷たさについて、以下の評価基準に従って評価した。
【0141】
[心地よい冷たさの評価基準]
5:刺激を感じる
4:心地よい冷たさを感じるが、やや冷涼感を強めに感じる
3:冷却感と冷涼感のバランスが良く、心地よい冷たさを感じる
2:心地よい冷たさを感じるが、やや冷却感を強めに感じる
1:冷たさを感じない
【0142】
【表1】
【0143】
[試験1の評価]
実施例1は、冷涼感をやや強めに感じたものの、心地よい冷たさが感じられた。実施例2、5及び6は、冷却感及び冷涼感を適度に感じることができ、心地よい冷たさが感じられた。実施例3及び4は、冷却具の着用初期にやや強めの冷却感を感じたものの、その後やや弱めの冷涼感が感じられ、心地よい冷たさが感じられた。比較例1及び2は、冷却感及び冷涼感が弱く、冷たさを感じなかった。比較例3は、冷却感及び冷涼感が強く、刺激感を感じた。
【0144】
[実施例7及び8]
また、内面シート11の材料として親水性不織布を用いた点以外は実施例1と同様にして、実施例7及び8に係る冷却具を作製した。なお、実施例7では、親水性不織布として、レーヨンにより形成された不織布(SD2-30S、大和紡績株式会社製)を用いた。一方、実施例8では、親水性不織布として、親水性油剤を塗工した繊維を用いた不織布(NW-QF181、花王株式会社製)を用いた。
【0145】
[試験2]
専門パネリスト2名が実施例1、7及び8に係る冷却具をそれぞれ20分間着用し、着用時に感じる冷感について、以下の評価基準に従って評価した。
【0146】
[冷感の評価基準]
5:痛む程度の過剰に強い冷感がある
4:十分に強い冷感がある
3:評価基準4と評価基準2の中間程度の冷感がある
2:弱い冷感がある
1:冷感がない
【0147】
【表2】
【0148】
[試験2の評価]
実施例7は、しっとりと水分を含むことにより、触れた瞬間から熱が奪われることが感じられるとともに、メントールによる冷涼感を感じるまでの時間も早く感じられ、装着中を総合して十分に強い冷感があった。実施例8は、実施例7には及ばずとも実施例1よりしっとりとしていることが寄与して着用初期からの冷感があり、装着中を総合して実施例7に次いで強い冷感があった。
【符号の説明】
【0149】
1 :冷却具
10 :本体部
10A :第1パネル部
10B :第2パネル部
11 :内面シート
12 :外面シート
13 :上縁部
14 :下縁部
15 :上側スリット
16 :下側スリット
20 :冷却体
21 :基材層
22 :保水層
23 :第一シート
24 :第二シート
30 :耳掛け部
31 :耳掛け部本体
31a :上辺
31b :下辺
31c :開放縁
31d :接合縁
32 :耳掛け孔
40 :測定装置
41 :測定室
42 :流入路
43 :流出路
44 :入口温湿度計
45 :入口流量計
46 :出口温湿度計
47 :出口流量計
48 :温度計
50 :接合部
60 :測定装置
61 :ポンプ
62 :容器
63 :漏斗
64 :第1ホース
65 :第2ホース
100 :縦中心線
200 :包装体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8