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特開2024-171325粘着フィルムの製造方法、粘着フィルム、粘着フィルム半完成品、及び接続構造体の製造方法
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  • 特開-粘着フィルムの製造方法、粘着フィルム、粘着フィルム半完成品、及び接続構造体の製造方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171325
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】粘着フィルムの製造方法、粘着フィルム、粘着フィルム半完成品、及び接続構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20241204BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024083590
(22)【出願日】2024-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2023087762
(32)【優先日】2023-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 早織
(72)【発明者】
【氏名】浅羽 康祐
(72)【発明者】
【氏名】新 康正
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA01
4J004AA11
4J004AA14
4J004AB01
4J004CA01
4J004CB03
4J004CC03
4J004CE01
4J004EA06
4J004FA05
4J040EC051
4J040FA012
4J040GA01
4J040JB09
4J040JB10
4J040KA12
4J040KA23
4J040KA32
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA19
4J040PA23
4J040PB19
(57)【要約】
【課題】広幅の基材フィルムの片面に粘着層を積層した広幅の積層フィルムから、0.4mm以上の細幅の複数の粘着フィルムだけでなく、0.4mm幅未満の細幅の複数の粘着フィルムを一般的なスリット装置でスリットする際に、基材フィルムからの粘着層の浮きを生じさせず、また、粘着層に皺を発生させないようにする。
【解決手段】基材フィルムと、その長手方向に線状に設けられた粘着層とを有し、粘着層の両側に基材フィルムが長手方向に沿って露出している粘着フィルムの製造方法は、基材フィルムの片面に複数の線状の粘着層を所定の間隔を空けて形成する工程、及び隣接する粘着層の間の露出した基材フィルムを、各粘着層の両側に基材フィルムが長手方向に沿って露出するようにスリットする工程、を有する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、その長手方向に線状に設けられた粘着層とを有し、粘着層の両側に基材フィルムが長手方向に沿って露出している粘着フィルムの製造方法であって、
基材フィルムの片面に複数の線状の粘着層を所定の間隔を空けて形成する工程;
隣接する粘着層の間の露出した基材フィルムを、各粘着層の両側に基材フィルムが長手方向に沿って露出するようにスリットする工程
を有する製造方法。
【請求項2】
粘着層が、導電粘着層または異方性導電粘着層である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
線状が、直線状、点線状、破線状、一点鎖線状又は短冊状である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
粘着層の幅方向において、粘着層から露出した基材フィルムの端部までの距離が粘着層の両側で略等しい請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項5】
粘着層の幅をa[mm]、スリットの幅をc[mm]とし、(c-a)/2をb[mm]と定義したときに、a>0.05mm且つc≧0.4mm且つb>0.05mmを満足する請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項6】
粘着層の幅aの公差が±0.1mmであり、スリット幅cの公差が±0.05mmである請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項7】
基材フィルムと粘着層との間の剥離力が、JIS K 6854によるT型剥離試験により5N/mm以上45N/mm以下である請求項1又2記載の製造方法。
【請求項8】
基材フィルムと、その長手方向に線状に設けられた粘着層とを有し、粘着層の両側に基材フィルムが長手方向に沿って露出している粘着フィルム。
【請求項9】
基材フィルムの長手方向に短冊状の粘着層が線状に設けられており、隣接する短冊状の粘着層の離間距離が500mm以下である請求項8記載の粘着フィルム。
【請求項10】
粘着層が、接着層、導電粘着層又は異方性導電粘着層であり、接着フィルム、導電フィルム又は異方性導電フィルムとして用いられる請求項8又は9記載の粘着フィルム。
【請求項11】
粘着層の幅をa[mm]とし、スリット後の基材フィルムの幅をc[mm]とし、(c-a)/2をb[mm]と定義したときに、a>0.05mm且つc≧0.4mm且つb>0.05mmを満足する請求項8又は9記載の粘着フィルム。
【請求項12】
基材フィルムと粘着層との間の剥離力が、JIS K 6854によるT型剥離試験により5N/mm以上45N/mm以下である請求項11記載の粘着フィルム。
【請求項13】
基材フィルムの片面に、複数の線状の粘着層が、基材フィルムが露出するように所定の間隔を空けて形成されているスリット前の粘着フィルム半完成品。
【請求項14】
粘着層の幅をa[mm]とし、隣接する粘着層の層間距離を2b[mm]とし、a+2bをcと定義したときに、a>0.05mm且つb>0.05mm且つc≧0.4mmを満足する請求項13記載の粘着フィルム半完成品。
【請求項15】
第1部品と第2部品とを粘着層を介して接続する接続構造体の製造方法であって、第1部品に対し、請求項9記載の粘着フィルムを粘着層側から仮貼りし、次いで基材フィルムを剥離除去し、露出した粘着層に第2部品を設け、圧着する製造方法。
【請求項16】
第1電子部品と第2電子部品とを導電粘着層又は異方性導電粘着層を介して接続する接続構造体の製造方法であって、第1電子部品に対し、請求項10記載の粘着フィルムを粘着層側から仮貼りし、次いで基材フィルムを剥離除去し、露出した接着層、導電粘着層又は異方性導電粘着層に第2電子部品を設け、圧着する製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着フィルムの製造方法、粘着フィルム、粘着フィルム半完成品、及び接続構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材フィルムに粘着層が剥離可能に積層されている長尺の粘着フィルムが、図形、文字等を物品に転写する転写リボン等として使用されている。また、粘着層に導電粒子を含有させることにより、粘着フィルムを導電フィルムあるいは異方性導電フィルムとして利用することも行われている。
【0003】
このような粘着フィルムは、広幅の基材フィルムの片全面に、粘着剤組成物を塗布し乾燥することにより粘着層を形成することにより得た広幅の、スリット前の粘着フィルム半完成品という意義を有する積層フィルムを、複数のスリット刃を備えた刃付きロールとアンビルロールとを有するスリット装置(特許文献1)やそれぞれ複数の上刃ロールと下刃ロールとを備えたスリット装置(特許文献2)でスリットすることにより、一度に複数の細幅の完成品としての粘着フィルムとして製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-168715号公報
【特許文献2】特開2020-168716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、積層フィルムを特許文献1や特許文献2のスリット装置でスリットする場合、0.5mm幅程度にスリットすることが可能ではあるが、粘着フィルムを異方性導電フィルムとして使用する場合には0.4mm幅未満のものが求められるようになっており、そのため積層フィルムを0.4mm未満の幅にスリットしようとすると、ごく稀に粘着層がスリット刃に付着する場合があり、基材フィルムからの粘着層の浮きが生じ、粘着層に皺が発生するという問題の発生が懸念されている。このような問題は、積層フィルムが長尺になるほど発生し易くなり、積層フィルムの生産性を大きく低下させかねない。また、積層フィルムのスリット幅が0.4mm以上でも積層フィルムの長尺化に伴い、このような問題の発生が懸念される。また、積層フィルムの幅に関係なく、スリット時に粘着フィルムがスリット刃と接触することを原因とした生産性の低下も問題である。
【0006】
本発明の目的は、従来の問題を解決しようとするものであり、広幅の基材フィルムの片面に粘着層を積層した広幅の積層フィルムから、0.4mm幅未満の細幅の複数の粘着フィルムを一般的なスリット装置でスリットする際に、基材フィルムからの粘着層の浮きを生じさせず、また、粘着層の皺を発生させないようにすることである。また、積層フィルムの幅に関係なく、生産性の低下を回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、スクリーン印刷法やインクジェット印刷法等の一般的な印刷法によれば0.4mm未満の幅で粘着剤組成物を線状に塗布することが可能であり、また、粘着フィルムをスリットする際に、スリット刃に粘着層が接触しなければ、粘着層に浮きや皺が発生することを大きく抑制できる可能性が高いことに着目し、それらを組み合わせることにより本発明の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、基材フィルムと、その長手方向に線状に設けられた粘着層とを有し、粘着層の両側に基材フィルムが長手方向に沿って露出している粘着フィルムの製造方法であって、
基材フィルムの片面に複数の線状の粘着層を所定の間隔を空けて形成する工程;
隣接する粘着層の間の露出した基材フィルムを、各粘着層の両側に基材フィルムが長手方向に沿って露出するようにスリットする工程
を有する製造方法を提供する。このような製造方法によれば、スリット時に粘着フィルムがスリット刃と接触することなく、従来の課題を回避することができる。
【0009】
また、本発明は、基材フィルムと、その長手方向に線状に設けられた粘着層とを有し、粘着層の両側に基材フィルムが長手方向に沿って露出している粘着フィルム、及び基材フィルムの片面に、複数の線状の粘着層が、基材フィルムが露出するように所定の間隔を空けて形成されているスリット前の粘着フィルム半完成品を提供する。
【0010】
また、本発明は、第1部品と第2部品とを粘着層を介して接続する接続構造体の製造方法であって、第1部品に対し、前述の本発明の粘着フィルムを粘着層側から仮貼りし、次いで基材フィルムを剥離除去し、露出した粘着層に第2部品を設け(載置し)、圧着する製造方法を提供する。この製造方法は、粘着フィルムを、接着フィルム、導電フィルム又は異方性導電フィルム等として使用することにより、第1電子部品と第2電子部品とを、接着層、導電粘着層又は異方性導電粘着層を介して接続する接続構造体の製造方法となる。これらの接着フィルム、導電フィルム又は異方性導電フィルム等は硬化性を示すことが好ましい。換言すれば、これらのフィルムは、硬化性樹脂組成物から形成されることが好ましい。また、導電フィルム又は異方性導電フィルム等は、接着フィルムと同様に接着性を示すことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粘着フィルムの製造方法においては、基材フィルムに、複数の細幅の粘着層を所定の間隔を空けて、スクリーン印刷法等の公知の形成方法により形成し、続いて隣接する粘着層の間の露出している基材フィルムをスリットする。このため、スリット刃が粘着層に触れずにスリットすることができ、スリット刃に粘着層が接触することにより生ずる問題を回避することができる。
【0012】
また、本発明の粘着フィルムによる接続構造体の製造方法においては、細幅の粘着層が所定の間隔を空けて基材フィルム上に配置されているため、接続構造体の製造に使用する長さだけ粘着層を形成すればよい。そのため、基材フィルム上に粘着層をベタに形成した従来の粘着フィルムの場合に行っていたハーフカット工程が不要になる。また、粘着層形成材料の削減も可能となる。また、接続構造体の製造時の接続を熱圧着で行う場合、従来、加熱加圧ツールからの輻射熱の影響を受けた粘着層部分の使用を回避し、その部分を廃棄していたが、本発明の粘着フィルムを使用することにより、輻射熱の影響を受ける粘着層部分を小さくする、更には無くすことができ、粘着層の廃棄対象を大きく削減する、更には無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A図1Aは、本発明の粘着フィルムの製造方法における直線状粘着層形成工程の説明図(平面図)である。
図1B図1Bは、本発明の粘着フィルムの製造方法における短冊状粘着層形成工程の説明図(平面図)である。
図2図2は、本発明の粘着フィルムの製造方法における粘着層形成工程の説明図(図1A、1BのA-A断面図)である。
図3A図3Aは、図1Aの本発明の粘着フィルムの製造方法におけるスリット工程の説明図(部分拡大図)である。
図3B図3Bは、図1Bの本発明の粘着フィルムの製造方法におけるスリット工程の説明図(部分拡大図)である。
図4図4は、本発明の粘着フィルムの断面図である。
図5A図5Aは、本発明の粘着フィルムの平面図である。
図5B図5Bは、本発明の粘着フィルムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
<粘着フィルムの製造方法>
本発明は、基材フィルムと、その長手方向に線状に設けられた粘着層とを有し、粘着層の両側に基材フィルムが長手方向に沿って露出している粘着フィルムの製造方法である。この製造方法は、以下の粘着層形成工程とスリット工程とを有する。以下、工程毎に説明する。
【0016】
<粘着層形成工程>
粘着層形成工程は、図1Aの平面図及び図2の断面図に示すように、基材フィルム1の片面に複数の線状の粘着層2を幅方向に(スリット方向に直交する方向に)所定の間隔を空けて形成する工程であり、この工程により、スリット前の粘着フィルム半完成品10を取得することができる。ここで、基材フィルム1の片面に「複数の線状の粘着層2を形成」するのは、スリットにより一度に多数の細幅の粘着フィルムを製造するためであり、複数の粘着層2を「所定の間隔を空けて形成」するのは、スリットの際にスリット刃に粘着層2が付着しないようにするためである。
【0017】
粘着層2の「複数」とは2以上を意味するものであるが、スリット装置で一度にスリット可能な数であることが好ましい。また、「線状」とは、スリット可能であれば曲線状であってもよいが、スリットが容易な直線状が好ましい。この場合、連続した直線が好ましいが、点線状、破線状、一点鎖線状等であってもよい。また、図1Bのように、短冊状の個片の粘着層2aとしてもよい。この場合、個片のサイズは、接続構造体の製造に適用するのに必要十分なサイズとすることが好ましい。
【0018】
粘着層2、2aの形成は、好ましくは0.4mm未満の細幅に印刷可能な公知の手法により行うことができ、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等により行うことができる。
【0019】
なお、隣接する粘着層2間(又は隣接する粘着層2a間)の「所定の間隔」とは、特に限定されるものではないが、印刷時の精度を考慮して、スリットの際にスリット刃が粘着層2、2aに食い込まない程度もしくは接触しない程度の間隔を意味する。この場合、少なくとも、粘着層2、2aの幅方向において、粘着層2、2aとそれに隣接する粘着層2、2aとの間の距離L(換言すれば隣接粘着層間の基材フィルム1の露出幅)が粘着層の両側で略等しいことが好ましい。通常、スリット装置の複数のスリット刃のピッチが一定だからである。なお、スリットにより取得できる複数の粘着フィルムがすべて同じ寸法であることが好ましいため、この距離Lの中央がスリット線になることが好ましい。この距離Lの具体的な長さとしては、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.15mm以上、特に好ましくは0.2mm以上、好ましくは20mm以下、より好ましくは10mm以下、特に好ましくは6mm以下である。なお、この距離Lの長さは、製造管理上、隣接する粘着層2間で揃っていることが好ましいが、同一組成で別品種を作成するといった製造自由度の観点から揃っていなくともよい。また、前記同様の理由で、平面視で見た場合に図1Bのように塗布方向で粘着層が揃っていてもよく、揃っていなくともよい。
【0020】
(基材フィルム1)
基材フィルム1は、粘着層2、2aを保持するための基材であり、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET等のポリエステル等の、引張弾性率が概略1100MPa以上4200MPa以下の熱可塑性樹脂で形成されたフィルムである。そのフィルム厚は、通常0.012mm以上、好ましくは0.025mm以上、通常0.075mm以下、好ましくは0.050mm以下である。なお、基材フィルム1の表面は、シリコーン剥離剤などで表面処理されていることが好ましい。粘着層と分離可能にするためである。
【0021】
(粘着層2)
粘着層2、2aは、樹脂組成物を好ましくは3μm厚以上、より好ましくは5μm厚以上、好ましくは100μm厚以下、より好ましくは50μm厚以下に成膜したものである。また、粘着層2、2aの幅は、下限は好ましくは50μm超、より好ましくは100μm以上であり、上限は特に制限はないが、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下、更により好ましくは5mm以下である。同様のサイズに成膜した粘着層転写体から転写したものでもよい。粘着フィルムの用途に応じて、粘着層2、2aは、単一の樹脂層から構成されていてもよく、複数の樹脂層の積層体又は多層体から構成されていてもよい。また、粘着層2、2aには、必要に応じてフィラーが含有されていてもよい。粘着層2、2aは、含有する樹脂組成物やフィラーの種類等により、導電粘着層、異方性導電粘着層等として機能することができる。
【0022】
(粘着層2、2aを形成する樹脂組成物)
粘着層2、2aを構成する樹脂組成物は、粘着フィルムの用途、フィラーの有無等に応じて粘着性又は接着性を示すものが適宜選択され、熱可塑性樹脂組成物、高粘度粘着性樹脂組成物、又は硬化性樹脂組成物等から形成することができる。例えば、粘着フィルムを電子部品の実装等に使用する導電フィルムや異方性導電フィルムなどとする場合、WO2018/074318A1公報に記載の絶縁性樹脂層を形成する樹脂組成物と同様に、粘着層を形成する樹脂組成物を、重合性化合物と重合開始剤を含む硬化性樹脂組成物とすることができる。硬化性樹脂組成物を含まない、所謂ホットメルトタイプの樹脂組成物であってもよい。特に、粘着フィルムを、本発明の効果を有利に発揮できる代表的な態様として、予め使用するサイズ(好ましくは個片化したサイズ)に形成された粘着層を有する硬化型の接着フィルムとして使用する場合にも、上述したような樹脂組成物の中から適宜選択することができる。
【0023】
硬化性樹脂組成物の重合開始剤としては熱重合開始剤を使用してもよく、光重合開始剤を使用してもよく、それらを併用してもよい。例えば、熱重合開始剤として熱カチオン系重合開始剤、熱重合性化合物としてエポキシ樹脂を使用し、光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤、光重合性化合物としてアクリレート化合物を使用する。熱重合開始剤として、熱アニオン系重合開始剤を使用してもよい。熱アニオン系重合開始剤としては、イミダゾール変性体を核としその表面をポリウレタンで被覆してなるマイクロカプセル型潜在性硬化剤を用いることが好ましい。
【0024】
このような樹脂組成物で形成される粘着層全体としての最低溶融粘度は、特に制限はないが粘着フィルム形成の点から100Pa・s以上とすることができ、粘着層2を物品に熱圧着するときのフィラーの不用な流動を抑制するため、好ましくは1500Pa・s以上とする。一方、最低溶融粘度の上限については、特に制限はないが、一例として、好ましくは15000Pa・s以下、より好ましくは10000Pa・s以下である。この最低溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA Instruments社製)を用い、測定圧力5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用し求めることができ、より具体的には、温度範囲30~200℃において、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、前記測定プレートに対する荷重変動5gとすることにより求めることができる。なお、最低溶融粘度の調整は、溶融粘度調整剤として含有させる微小固形物の種類や配合量、樹脂組成物の調整条件の変更などにより行うことができる。
【0025】
(粘着層2、2aのフィラー)
粘着層2、2aにフィラーを含有させる場合、そのフィラーは、粘着フィルムの用途に応じて、公知の無機系フィラー(金属、金属酸化物、金属窒化物など)、有機系フィラー(樹脂、ゴムなど)、有機系材料と無機系材料が混在したフィラー等から用途に応じて適宜選択される。例えば、光学的用途や艶消しの用途では、シリカフィラー、酸化チタンフィラー、スチレンフィラー、アクリルフィラー、メラミンフィラーや種々のチタン酸塩のフィラー等を使用することができる。コンデンサー用フィルムの用途では、酸化チタン、チタン酸マグネシウム、チタン酸亜鉛、チタン酸ビスマス、酸化ランタン、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛及びこれらの混合物のフィラー等を使用することができる。接着材としての用途ではポリマー系のゴム粒子、シリコーンゴム粒子等を含有させることができる。電子部品の実装の用途ではフィラーは導電性あるいは絶縁性を有していても良い。フィラーが導電性を有する場合、粘着フィルムは導電フィルムあるいは異方性導電フィルムとして使用することができる。なお、フィラーが絶縁性を有する場合には、フィラーをスペーサとして使用することができる。
【0026】
フィラーの粒子径は、粘着フィルムの用途に応じて定めることができる。例えば、電子部品の実装に使用する場合、フィラーの粒子径は好ましくは1μm以上、より好ましくは2.5μm以上30μm以下である。ここで、粒子径は平均粒子径を意味する。平均粒子径は、粘着フィルムの粘着層2、2aの平面画像又は断面画像から求めることができる。また、フィラーを粘着フィルムの粘着層2、2aに含有させる前の原料粒子としてのフィラーの平均粒子径は湿式フロー式粒子径・形状分析装置FPIA-3000(マルバーン・パナリティカル社)を用いて求めることができる。N数は1000以上、好ましくは2000以上、より好ましくは5000以上である。一方、フィラーには粒子径1μm未満のものが含まれていてもよい。粒子径1μm未満のフィラー(所謂ナノフィラー)としては粘度調整用の充填剤などを挙げることができる。この大きさは電子顕微鏡(TEM、SEM)の観察によって求めることができる。N数は200以上が好ましい。
【0027】
フィラーとして、量子ドットのように機能性を持ったものが含まれてもよい。このようなフィラーの大きさとしては特に限定はないが、2nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。この大きさも電子顕微鏡(TEM、SEM)の観察によって求めることができる。N数は200以上が好ましい。
【0028】
粘着層2、2aにおいて、フィラーは樹脂中に混練りされてランダムに分散していてもよく、平面視で個々に非接触であってもよく、平面視で所定配列を繰り返す規則的な配置となっていてもよい。フィラーの個数密度は、粘着フィルムのスリットに影響しない範囲で適宜調整し、面視野において例えば、30~100000個/mm2とすることができる。この個数密度は、平面視で光学顕微鏡や金属顕微鏡を用いて粘着層中のフィラーを観察し、10箇所以上の領域を合計2mm2以上とし、フィラー数合計が200以上になるようにして計測することが好ましい。
【0029】
(粘着フィルム半完成品における基材フィルム1と粘着層2、2aとの間の剥離力)
粘着フィルム半完成品における粘着層2、2aと基材フィルム1との間の剥離力は、粘着層2、2aを、粘着フィルムの用途ごとに所定の物品に貼着した場合の粘着層2、2aの粘着力よりも弱く、基材フィルム1が粘着層2、2aから剥離可能となっていることが好ましい。このような剥離力は、基材フィルムにベタに粘着層を設けた積層体を幅5cm、長さ15cmにカットし、剥離試験としてT型剥離試験(JIS K 6854)で測定することができる。本発明では、剥離力は好ましくは5N/mm以上、より好ましくは15N/mm以上、好ましくは45N/mm以下、より好ましくは30N/mm以下である。この範囲を下回ると基材フィルムと粘着層とが剥がれやすくなり、上回ると剥がれにくくなる傾向がある。
【0030】
<スリット工程>
本発明の粘着フィルムの製造方法においては、前述した「粘着層形成工程」に引き続き、スリット工程を実施する。このスリット工程は、図3A図3Bに示すように、粘着フィルム半完成品10における隣接する粘着層2、2aの間の露出した基材フィルム1を、各粘着層2、2aの両側に基材フィルム1が長手方向に沿って露出するようにスリットする工程である。この工程により、本発明の製造方法の目的物である粘着フィルムが得られることになる。本工程において、このようにスリットすることにより、スリット刃と粘着層2、2aとが接触することがないため、それら同士が接触することにより生ずる問題の発生を回避することができる。また、接続構造体の製造に使用する長さだけ粘着層を形成すればよく、そのため、基材フィルム上に粘着層をベタに形成した従来の粘着フィルムの場合に行っていたハーフカット工程が不要になり、基材フィルムの再利用が期待できる。また、粘着層形成材料の削減も可能となる。更に、接続構造体の製造時の接続を熱圧着で行う場合、輻射熱の影響を受ける粘着層部分を小さくすることができ、粘着層の廃棄対象を大きく削減することができる。これらの効果は、短冊長さ方向にも離間距離eが形成されている粘着層2aの方が粘着層2よりも高くなることが期待できる。
【0031】
スリットする際に使用するスリット装置としては、公知のスリット装置を使用することができる(特開2020-168715号公報、特開2020-168716号公報等)。
【0032】
基材フィルム1における露出の程度は、粘着層2、2aの幅と隣接スリット間距離であるスリット幅と密接に関係している。即ち、図3A図3Bに示すように、粘着層2、2aの幅(作製したい粘着層幅)をa[mm]、スリットの幅(作製したい粘着フィルム幅)をc[mm]としたときに、隣接粘着層間距離Lの1/2に相当する長さbは、b=(c-a)/2で定義することができ、このbは、粘着層2、2aの両側に基材フィルム1が同じ幅で露出しているときの片側の基材フィルム1の露出幅(スリットするために必要な幅)を意味する。尚、これは基材フィルムの中央に粘着フィルムが存在するようにスリットした場合を想定しているため、実用上は基材フィルム上の粘着フィルムの左右にある長さbは左右の平均(左右にあるbの合計の1/2)に対して、それぞれで30%以内、好ましくは20%以内の誤差は含まれる。もしくは粘着フィルムの左右にある長さbの平均を上記の式に当てはまるようにしてもよい。スリットの幅が狭くなるほど、製造難易度が上がるため、歩留まりの低下を防ぐためである。本発明では、粘着層幅aは、幅公差のために好ましくは0.05mm超であり、より好ましくは0.1mm以上である。また、スリット幅cは、現状の公知のスリット装置のスリット幅限界が0.3mm程度であるため、好ましくは0.4mm以上、より好ましくは0.5mm以上である。更に、粘着層2、2aの両側に基材フィルム1が同じ幅で露出しているときの片側の基材フィルム1の露出幅b(=(c-a)/2)は、粘着層幅とスリット幅の公差の影響のために好ましくは0.05mm超、より好ましくは0.1mm以上である。なお、これらの数値は0.4mm未満の粘着フィルムを得る場合の好ましい範囲であり、0.4mm以上の粘着フィルムを得る場合には、これらの数値範囲に限定されるものではない。
【0033】
また、図3Bの短冊状の個片の粘着層2aを有する粘着フィルムの場合、フィルム長手方向に線上に複数設けられた短冊状の個片の各粘着層2aの長さdと、フィルム長手方向における短冊状の粘着層2aの離間距離eとが形成される。この長さdは、接続構造体の製造に適用するのに必要十分な長さとすることが好ましい。また、離間距離eは、熱圧着の際の加熱加圧ツールからの輻射熱の影響を受けない程度に離れた距離である。
【0034】
なお、上述のように規定したa、b、c、d及びeの数値範囲は、粘着層の幅aの公差(±0.1mm)及びスリット幅cの公差(±0.05mm)等を考慮して決められる。
【0035】
<粘着フィルム>
前述した本発明の製造方法により得られる粘着フィルムも本発明の一態様である。図4(断面図)及び図5A、5B(平面図)に示すように、この粘着フィルム40は、基材フィルム41と、その長手方向に線状に設けられた粘着層42、42aとを有し、粘着層42、42aの両側に基材フィルム41が長手方向に沿って露出しているものである。なお、基材フィルム41及び粘着層42、42aは、それぞれ基材フィルム1及び粘着層2、2aと同じ構成とすることができる。また、長手方向、線状の意味も既に説明したとおりである。
【0036】
なお、図5A図5Bの粘着フィルム40の代表的サイズとしては、その用途により異なるものの、例えば、導電フィルム又は異方性導電フィルム用途の場合には、粘着層の幅aが好ましくは0.05mm超、より好ましくは0.1mm以上、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下、特に好ましくは5mm以下であり、片側露出幅bが好ましくは0.05mm超、より好ましくは0.1mm以上、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下であり、スリット幅cが好ましくは400μm以上、より好ましくは500μm以上、好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下である。更に、図5Bの粘着フィルムの場合、短冊長さdが好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上、好ましくは80mm以下、より好ましくは50mm以下である。離間距離eは、接続時の輻射熱の影響を受けないよう十分な距離も設けることが必要であるため上限については特に制限はない。一方、距離eが大きすぎるとフィルムが過度に長尺になり、接続方法や接続対象物によっては輻射熱の影響を考慮する必要はないため小さくした方がよい場合もある。そのため、下限については微小な粘着フィルムの貼付けに必要な距離を確保する点から好ましくは0.2mm以上、より好ましくは2mm以上、特に好ましくは20mm以上、好ましくは500mm以下、より好ましくは300mm以下、特に好ましくは200mm以下、さらに好ましくは150mm以下である。上限および下限については、短冊長さdと接続対象物及び接続方法、接続に使用する装置といった種々の条件から最適な条件を選択すればよい。
【0037】
本発明の粘着フィルム40は、様々な用途に適用できるが、粘着層が導電性粘着層あるいは異方性導電性粘着層である導電フィルムあるいは異方性導電フィルムに好ましく適用することができる。
【0038】
なお、本発明の粘着フィルム40において、粘着層42、42aの幅a[mm]、スリット後の基材フィルムの幅(換言すればスリット幅)c[mm]、及び粘着層42、42aの片側の基材フィルムの露出幅b[mm](=(c-a)/2)は、本発明の製造方法で説明した粘着層幅a、基材フィルムの露出幅b、スリット幅cと同じ意義・数値範囲を有する。
【0039】
本発明の粘着フィルムにおける基材フィルム41と粘着層42、42aとの間の剥離力は、粘着フィルム半完成品の場合と同様に、基材フィルムにベタに粘着層を設けた積層体をJIS K 6854によるT型剥離試験により好ましくは5N/mm以上、より好ましくは15N/mm以上、好ましくは45N/mm以下、より好ましくは30N/mm以下である。この範囲を下回ると剥がれやすくなり、上回ると剥がれにくくなる傾向がある。
【0040】
本発明の細幅の粘着フィルムは、リールに巻き取り、巻装体として流通することが好ましい。巻装体におけるフィルム長は、実用性の観点から好ましくは5m以上、より好ましくは50m以上、好ましくは5000m以下、より好ましくは1000m以下である。
【0041】
<粘着フィルム半完成品>
本発明の製造方法の「粘着層形成工程」で得られるスリット前の粘着フィルム半完成品(図1A図1Bの符号10)も本発明の一態様である。粘着フィルム半完成品は、複数の本発明の粘着フィルムが短手方向に連なった状態のものである。このスリット前の粘着フィルム半完成品において、基材フィルムの片面に、複数の線状の粘着層が、基材フィルムが露出するように所定の間隔を空けて形成されている。具体的には、粘着層の幅をa[mm]とし、隣接する粘着層の層間距離を2b[mm]とし、a+2bをcと定義したときに、0.4mm未満の幅の場合において好ましくはa>0.05mm且つb>0.05mm且つc≧0.4mmを満足するものである。0.4mm以上の場合においても上の式を満足することが好ましい。
【0042】
<接続構造体の製造方法>
第1部品と第2部品とを粘着層を介して接続する接続構造体の製造方法は、第1部品に対し、本発明の粘着フィルムを粘着層側から公知の手法により仮貼りし、次いで基材フィルムを同じく公知の手法により剥離除去し、露出した粘着層に第2部品を公知の手法により設け(載置し)圧着する製造方法であり、本発明の一態様である。この接続構造体の製造方法において、用いる第1部品や第2部品には特に制限はない。従って、本発明の粘着フィルムを介して種々の第1部品と第2部品とを接続し、第1物品と第2物品の接続構造体を得ることができる。例えば、粘着フィルムを接着フィルム、導電フィルム又は異方性導電フィルムとして構成する場合、この態様は、より具体的には、第1電子部品と第2電子部品とを接着層、導電粘着層又は異方性導電粘着層を介して接続する接続構造体の製造方法であって、第1電子部品に対し、接着フィルム、導電フィルム又は異方性導電フィルムとして機能する粘着フィルムを粘着層側から仮貼りし、次いで基材フィルムを剥離除去し、露出した接着層、導電粘着層又は異方性導電粘着層に第2電子部品を設け(載置し)、圧着する製造方法として表現することができる。
【0043】
なお、第1電子部品としては、PN接合を利用した半導体素子(太陽電池等の発電素子、CCD等の撮像素子、μLED等の発光素子、ペルチェ素子)、その他各種半導体素子、ICチップ、ICモジュール、FPCなどを例示することができ、第2電子部品としては、FPC、ガラス基板、プラスチック基板、リジッド基板、セラミック基板などを例示することができる。また、第1電子部品及び第2電子部品の形状、大きさ、用途等に特に制限はない。これら電子部品が小型で端子サイズが狭小化していてもよく、電子部品の実装に高精度のアライメントが必要とされてもよい。例えば、バンプ面積が数十μm2~数千μm2の極小化された電子部品も接続対象とすることができる。一方、外形サイズの大きな電子部品の実装を、本発明の粘着フィルムを用いて行うことができる。また、実装した電子部品を分割することにより小片化して使用してもよい。また、大型テレビやデジタルサイネージなどの大型ディスプレイに適用する場合には、粘着フィルムをディスプレイのフレーム近傍に1m以上、例えば4.5m以上貼着することもある。
【0044】
本発明の接続構造体の製造方法において、「仮貼り」の方法、「剥離除去」の方法、「載置(第1電子部品と第2電子部品の搭載、設け方)」の方法、「圧着」の方法については、公知の手法の中から適宜選択して採用することができる。
【実施例0045】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。
【0046】
実施例1~10
(異方性導電ペーストの調製)
平均粒子径20μmの樹脂コア導電粒子(樹脂コア/Ni(下地)/Au(表面)メッキ)5質量部と、以下に示す絶縁性バインダー95質量部とを、遊星式撹拌装置(製品名:泡取り錬太郎、(株)シンキー)に投入し、1分間撹拌することにより異方性導電ペースト(固形分が50質量%)を得た。
【0047】
(絶縁性バインダー)
・フェノキシ樹脂(商品名:YP-50、日鉄ケミカル&マテリアル(株))47質量部
・単官能モノマー(商品名:M-5300、東亞合成(株))3質量部
・ウレタン樹脂(商品名:UR-1400、東洋紡エムシー(株))25質量部
・ゴム成分(商品名:SG80H、ナガセケムテックス(株))15質量部
・シランカップリング剤(商品名:A-187、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)2質量部
・有機過酸化物(商品名:ナイパーBW、日油(株))3質量部
・溶剤(酢酸エチルとトルエンの混合物)固形分が50質量%となる量
【0048】
(粘着層形成工程(粘着フィルム半完成品の製造))
異方性導電ペーストを、表1に示した幅(a)且つ間隔(2b)のストライプパターンで、図1Aに示すように、長さ150mm、幅100mmの基材フィルム(シリコーン樹脂により離型処理されたフィルム厚38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)にスクリーン印刷法により塗布し、更に乾燥することにより、基材フィルム上に複数の異方性導電層として機能する粘着層を形成した。これによりスリット前の粘着フィルム半完成品を得た。なお、異方性導電ペーストの塗布時の公差は±0.1mmであった。
【0049】
(スリット工程(粘着フィルムの製造))
得られた粘着フィルム半完成品を、各ストライプの両側のそれぞれに、表1に示す露出幅(b)で基材フィルムに露出部分が形成されるように隣接するストライプの中央で、一般的なスリット装置でスリット長さ150mmでスリットした。このときのスリット幅cを表1に示す。このようにして長尺の粘着フィルムを作成した。なお、スリット装置によるスリット幅の公差は±0.05mmであった。
【0050】
比較例1
(粘着層形成工程(粘着フィルム半完成品の製造))
実施例1と同様に、異方性導電ペーストを、長尺の基材フィルムにスクリーン印刷法によりベタで塗布し、更に乾燥することにより、基材フィルムの片面全面に異方性導電層として機能する粘着層を形成した。これにより粘着フィルム半完成品を得た。
【0051】
(スリット工程(粘着フィルムの製造))
得られた粘着フィルム半完成品を、実施例1で使用したものと同じスリット装置で0.4mm幅にスリットした。これにより基材フィルム上に粘着層が長尺の粘着フィルムを作成した。なお、スリット装置によるスリット幅の公差は±0.05mmであった。
【0052】
<スリット時の粘着層の浮き・皺の評価>
各実施例及び比較例で得られた粘着フィルム半完成品をスリットした際に、粘着層に基材フィルムからの浮きが発生したか否か、又は粘着層に皺が発生したか否かについて、スリットにより得られた粘着フィルムの粘着層を目視観察し、以下の評価基準に従って評価した。評価結果を表1に示す。実用上、A又はB評価であることが好ましい。
【0053】
(評価基準)
ランク 浮き又は皺の状態
A: 浮きも皺も生じさせずに意図した形状にスリットできた場合。
B: 粘着層の幅又は基材フィルムの露出部分の幅について、意図した大きさより小さい部分が存在するが、実用上問題のない形状にスリットできた場合。
C: 浮きが発生し、意図した形状にスリットできなかった場合。
【0054】
【表1】
【0055】
(評価結果の考察)
実施例1~10では、基材フィルムに、複数の細幅の粘着層を所定の間隔を空けて形成し、続いて隣接する粘着層の間の露出している基材フィルムを、粘着層に触れないようにスリットすることができた。このため、スリット時の粘着層の浮き・皺の評価がA評価又はB評価であった。特に実施例2、3、5、7、8、10の場合、a>0.05mm且つb>0.05mm且つc≧0.4mmであったので、A評価であった。なお、実施例1の場合、aが0.05mmであったのでB評価であり、実施例4の場合、cが0.35mmであったのでB評価であり、実施例6及び9の場合、bが0.05mmであったのでB評価であった。
【0056】
それに対し、比較例1の場合、基材フィルムの方全面に粘着層がベタで形成されていたので、スリット時にスリット刃に粘着層が接触したため、スリット時の粘着層の浮き・皺の評価がC評価であった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の粘着フィルムの製造方法によれば、スクリーン印刷法やインクジェット印刷法等の一般的な印刷法により0.4mm未満の幅で樹脂組成物を線状に塗布することができ、しかも粘着フィルムをスリットする際に、スリット刃に粘着層が接触しないようにすることができ、粘着層に浮きや皺が発生することを大きく抑制することができる。従って、0.4mm幅未満の細幅、例えば0.1mm幅の接着フィルム、導電フィルムや異方性導電フィルムなどの粘着フィルムの製造に有用である。また、0.4mm幅以上であっても、接続構造体の製造方法までを含めた工程全体の歩留まりやコストの削減の観点からも本発明は有用である。
【符号の説明】
【0058】
1、41 基材フィルム
2、2a、42、42a 粘着層
10 粘着フィルム半完成品
40 粘着フィルム
L 隣接粘着層間距離
a 粘着層の幅(図4、5A、5B)、作成したい粘着層の幅(図3A、3B)
b 粘着層の片側の基材フィルムの露出幅(図4、5A、5B)、スリットするのに必要な幅(図3A、3B)
c 基材フィルムの幅(スリット幅、図4、5A、5B)、スリットしたい幅(図3A、3B)
d 短冊状の粘着層の長さ
e 短冊状の粘着層の離間距離
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
【手続補正書】
【提出日】2024-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
なお、図5A図5Bの粘着フィルム40の代表的サイズとしては、その用途により異なるものの、例えば、導電フィルム又は異方性導電フィルム用途の場合には、粘着層の幅aが好ましくは0.05mm超、より好ましくは0.1mm以上、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下、特に好ましくは5mm以下であり、片側露出幅bが好ましくは0.05mm超、より好ましくは0.1mm以上、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下であり、スリット幅cが好ましくは0.4mm以上、より好ましくは0.5mm以上、好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下である。更に、図5Bの粘着フィルムの場合、短冊長さdが好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上、好ましくは80mm以下、より好ましくは50mm以下である。離間距離eは、接続時の輻射熱の影響を受けないよう十分な距離も設けることが必要であるため上限については特に制限はない。一方、距離eが大きすぎるとフィルムが過度に長尺になり、接続方法や接続対象物によっては輻射熱の影響を考慮する必要はないため小さくした方がよい場合もある。そのため、下限については微小な粘着フィルムの貼付けに必要な距離を確保する点から好ましくは0.2mm以上、より好ましくは2mm以上、特に好ましくは20mm以上、好ましくは500mm以下、より好ましくは300mm以下、特に好ましくは200mm以下、さらに好ましくは150mm以下である。上限および下限については、短冊長さdと接続対象物及び接続方法、接続に使用する装置といった種々の条件から最適な条件を選択すればよい。