(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171328
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】シーラントフィルム、包装材及び包装袋
(51)【国際特許分類】
B32B 27/06 20060101AFI20241204BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20241204BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241204BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B32B27/06
B32B7/023
B32B27/32 Z
B65D65/40 D BRH
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024084941
(22)【出願日】2024-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2023087586
(32)【優先日】2023-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】藤井 愛沙子
(72)【発明者】
【氏名】古屋 武史
(72)【発明者】
【氏名】小野 竜典
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD01
3E086BA04
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3E086BB02
3E086BB05
3E086BB51
3E086BB62
4F100AB10A
4F100AK04A
4F100AK04C
4F100AK07A
4F100AK07C
4F100AK42A
4F100AK46A
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4F100BA10A
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4F100GB16
4F100JL12B
4F100JL16A
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】 ヒートシール性及び機械的特性を十分に有しつつ、2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材のマテリアルリサイクルを可能とするシーラントフィルム、包装材及び包装袋を提供すること。
【解決手段】 シーラントフィルム1aは、2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有するリサイクル材含有層2と、リサイクル材含有層の一方の主面に積層されたシーラント層3と、を備え、リサイクル材含有層2が、シーラントフィルムを平面視する方向から透過観察したときに透過明度が周囲よりも小さいドメインを含み、ドメインは、最大面積が1000μm
2以下であり、且つ、最大アスペクト比が10以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有するリサイクル材含有層と、前記リサイクル材含有層の一方の主面に積層されたシーラント層と、を備える、シーラントフィルムであって、
前記リサイクル材含有層が、前記シーラントフィルムを平面視する方向から透過観察したときに透過明度が周囲よりも小さいドメインを含み、
前記ドメインは、最大面積が1000μm2以下であり、且つ、最大アスペクト比が10以下である、シーラントフィルム。
【請求項2】
前記リサイクル材含有層は、HSV色空間データにおける明度の平均値が200以上であり、且つ、明度の標準偏差が10以下である、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項3】
前記シーラント層が、前記リサイクル材含有層における含有比率が最も大きい樹脂と同種の樹脂を含む、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項4】
前記リサイクル材含有層の他方の主面に積層された補助層を更に備え、
前記補助層が、前記リサイクル材含有層における含有比率が最も大きい樹脂と同種の樹脂を含む、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項5】
前記リサイクル材に含まれる前記2種以上の樹脂のうちの含有比率が最も大きい樹脂が、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂である、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のシーラントフィルムを備える、包装材。
【請求項7】
前記リサイクル材に含まれるプラスチック材料の含有量が、包装材におけるプラスチック材料全量を基準として、10質量%以上である、請求項6に記載の包装材。
【請求項8】
請求項6に記載の包装材から製袋される包装袋。
【請求項9】
請求項7に記載の包装材から製袋される包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーラントフィルム、包装材及び包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にプラスチックフィルムは、軽量である、化学的に安定である、加工がしやすい、柔軟で強度がある、大量生産が可能、などの性質があり、様々なものに利用されている。その用途としては、例えば、食料品や医薬品等を包装する包装材や、点滴パック、買い物袋、ポスター、テープ、液晶テレビ等に利用される光学フィルム、保護フィルム、窓に貼合するウィンドウフィルム、ビニールハウス、建装材等々、多岐にわたる。具体的な材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリイミドなどの熱硬化性樹脂などが挙げられる。
【0003】
用途により適正なプラスチック材料が選択され、さらに、それらを複数種類重ね、積層体とすることもなされている。また、複数のプラスチック材料を1つの層中に混ぜることで、単一材料の欠点を補うようにした用い方もある。その他にも遮光性を付与するためのアルミ箔や、商品の意匠性を持たせるためにインクで絵柄を印刷した印刷層、非相溶なプラスチック材料同士を接着するための接着剤層が設けられた積層体もある。
【0004】
昨今の環境問題への取り組みとしてプラスチック製品のリサイクルが期待され、様々なリサイクル方法が検討されている。例えばペットボトルは回収した製品を洗浄・粉砕し原料として再利用するマテリアルリサイクルや、モノマー化するケミカルリサイクルの技術が確立されている。また、下記特許文献1には、再生ポリエチレン樹脂を含むシーラントフィルムに関する技術が開示されており、再生ポリエチレンとして、使用済みのポリエチレン成形体或いはその製造時の廃材から回収されるものであり、粉砕、洗浄、濾過、抽出などの種々の工程を得て得られるものを使用できることが記載されている。
【0005】
これに対してプラスチックフィルムは様々な材料で構成されるため、洗浄・粉砕しただけでは原料として再利用する事が難しい。具体的には不特定多数の樹脂が混合するため、均一な溶融物性(流動性)を得る事ができず成形することが難しく、仮に成形できたとしても機械的強度が不足する。
【0006】
このような制限がある為、プラスチックフィルムの多くはサーマルリサイクルに回されているが、その流通量の多さから、プラスチックフィルムにおいても、包装材等フィルム製品の原料としてリサイクルされることが熱望されている。
【0007】
これまでにも、プラスチックフィルムを再利用する方法についての検討はなされており、例えば、下記特許文献2には、ガスバリアフィルムとして機能するEVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)層を含む複層樹脂成形体から、EVOHを効率的に抽出する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2022/124229号
【特許文献2】国際公開第2022/158287号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記の方法は、EVOH抽出剤にEVOHを溶解させた後、析出・沈殿によってEVOHを回収するため、手間とコストが増加し、手軽に使えるとは言い難い。
【0010】
特許文献1には、再生ポリエチレンを含む中間層を、一度も加工履歴のないバージン材を使用して作製した2つのバージンポリエチレン層の間に設けたシーラントフィルムが提案されており、脱臭性や隠蔽性などが評価されているが、再生材として様々な材料で構成されるプラスチックフィルムを用いたシーラントフィルムについては具体的な構成及びその評価が示されていない。
【0011】
そこで、プラスチックフィルムをシーラントフィルムの原料としてリサイクルすることを本発明者らが検討したところ、種類の異なる樹脂が混在すると、含有比率が最大となる樹脂以外の樹脂成分が凝集体を形成し、フィルムの平滑性や物性に影響を及ぼすことが判明した。このような影響によってフィルムのヒートシール性や機械的特性が大きく損なわれると、包装材における再生プラスチックの含有率を高めることが難しくなる。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ヒートシール性及び機械的特性を十分に有しつつ、2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材のマテリアルリサイクルを可能とするシーラントフィルム、包装材及び包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下の[1]~[8]に関する。
【0014】
[1] 2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有するリサイクル材含有層と、前記リサイクル材含有層の一方の主面に積層されたシーラント層と、を備える、シーラントフィルムであって、
前記リサイクル材含有層が、前記シーラントフィルムを平面視する方向から透過観察したときに透過明度が周囲よりも小さいドメインを含み、前記ドメインは、最大面積が1000μm2以下であり、且つ、最大アスペクト比が10以下である、シーラントフィルム。
[2] 前記リサイクル材含有層は、HSV色空間データにおける明度の平均値が200以上であり、且つ、明度の標準偏差が10以下である、[1]に記載のシーラントフィルム。
[3] 前記シーラント層が、前記リサイクル材含有層における含有比率が最も大きい樹脂と同種の樹脂を含む、[1]又は[2]に記載のシーラントフィルム。
[4] 前記リサイクル材含有層の他方の主面に積層された補助層を更に備え、前記補助層が、前記リサイクル材含有層における含有比率が最も大きい樹脂と同種の樹脂を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のシーラントフィルム。
[5] 前記リサイクル材に含まれる前記2種以上の樹脂のうちの含有比率が最も大きい樹脂が、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂である、[1]~[4]のいずれかに記載のシーラントフィルム。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載のシーラントフィルムを備える、包装材。
[7] 前記リサイクル材に含まれるプラスチック材料の含有量が、包装材におけるプラスチック材料全量を基準として、10質量%以上である、[6]に記載の包装材。
[8] [6]又は[7]に記載の包装材から製袋される包装袋。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ヒートシール性及び機械的特性を十分に有しつつ、2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材のマテリアルリサイクルを可能とするシーラントフィルム、包装材及び包装袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係るシーラントフィルムの一実施形態を示す模式断面図である。
【
図2】低透過明度領域のアスペクト比を説明するための模式図である。
【
図3】本発明に係るシーラントフィルムの別の実施形態を示す模式断面図である。
【
図4】本発明に係る積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図5】本発明に係る包装材の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図6】本発明に係る包装材の別の実施形態を示す模式断面図である。
【
図7】実施例1のシーラントフィルムの実体顕微鏡写真を示す図である。
【
図8】比較例1のシーラントフィルムの実体顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、
図1~6は、模式的に示した図であり、各部の大きさや形状等は理解を容易にするため適宜誇張して示している。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに限定されるものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
<シーラントフィルム>
本実施形態のシーラントフィルムは、2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有するリサイクル材含有層と、リサイクル材含有層の一方の主面に積層されたシーラント層と、を備える。
【0019】
図1は、シーラントフィルムの一実施形態を示す模式断面図である。
図1に示されるシーラントフィルム1aは、リサイクル材含有層2と、リサイクル材含有層2の一方の主面に積層されたシーラント層3と、を備える。
【0020】
(リサイクル材含有層)
リサイクル材含有層が含有するリサイクル材としては、例えば、ポストコンシューマーリサイクル(PCR)と呼ばれる、市場回収された飲料・洗剤・調味料用のボトル及び包装袋、弁当やカップ麺の食品容器、食品・ゴミ袋の包装袋、ハンガー・文房具・日用品・家電製品・玩具のプラスチック成品等や、ポストインダストリーリサイクル(PIR)と呼ばれる、工場から排出される製品にならない不良品、製品を作る過程で発生する端材、搬送や梱包に使用されたプラスチック製品等を用いることができる。
【0021】
リサイクル材がマテリアルリサイクル材である場合、マテリアルリサイクル材は、必要に応じて洗浄され、粉砕されたものであってもよい。マテリアルリサイクル材は、熱分解等により化学的にリサイクルするケミカルリサイクルによって得られる樹脂と比較して、リサイクル時に要するエネルギーが少ないという利点を有する。したがって、リサイクル材含有層におけるマテリアルリサイクル材の割合を大きくするほど環境負荷を小さくすることができる。
【0022】
本実施形態のシーラントフィルムにおいては、プラスチックフィルムのマテリアルリサイクルの観点から、複数種の樹脂シートを貼り合わせた積層体(包装材)、それを製袋してなる包装袋、同種の樹脂シートを貼り合わせた積層体(包装材)、又は、それを製袋してなる包装袋、から作製されるもの、及び、これらを混合したものなどを用いてもよい。包装袋としては、例えば、トイレタリー用詰め替えパウチ等が挙げられる。
【0023】
リサイクル材含有層が含有するリサイクル材は2種以上の樹脂を含む。2種以上の樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及びこれらの硬化物(架橋体を含む)が挙げられる。なお、2種以上の樹脂には、例えば、接着剤を構成する樹脂成分(例えば熱硬化性樹脂など)及びその硬化物も包含される。
【0024】
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。
【0025】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-αオレフィン共重合体等のポリエチレン系樹脂、並びに、ホモポリプロピレン(PP)、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、及びプロピレン-αオレフィン共重合体等のポリプロピレン系樹脂が挙げられる。
【0026】
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸などが挙げられる。
【0027】
ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6などが挙げられる。
【0028】
2種以上の樹脂は、リサイクル材において含有比率が最大となる第1の樹脂と、第1の樹脂と相溶しない又は第1の樹脂中で凝集体を形成し得る第2の樹脂と、を含んでいてもよい。リサイクル材含有層に含まれる樹脂の種類は、顕微赤外分光光度計などによって確認することができる。
【0029】
第1の樹脂及び第2の樹脂は、以下の組み合わせであってもよい。
(a)熱可塑性樹脂と、熱硬化性樹脂及びその硬化物
(b)炭化水素系樹脂と、ヘテロ原子含有樹脂
(c)所定の溶剤に溶解する樹脂と、前記所定の溶剤に溶解しない樹脂
【0030】
(b)における炭化水素系樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などが挙げられ、ヘテロ原子含有樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
【0031】
(c)における所定の溶剤としては、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素などが挙げられる。所定の溶剤に溶解しない樹脂としては、架橋されている樹脂、硬化した熱硬化性樹脂などが挙げられる。
【0032】
リサイクル材において含有比率が最大となる第1の樹脂としては、パウチ製品等の包装袋をリサイクルする観点から、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂であってもよい。この場合、第2の樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、並びに、接着剤を構成する樹脂成分及びその硬化物のうちの少なくとも1種であってもよい。
【0033】
リサイクル材含有層における第1の樹脂の含有量は、リサイクル材含有層の全質量を基準として、75~98質量%であってもよく、75~95質量%であってもよく、80~90質量%であってもよい。
【0034】
リサイクル材含有層における第2の樹脂の含有量は、第1の樹脂100質量部に対して、2~33質量部であってもよく、5~33質量部であってもよく、11~25質量部であってもよい。
【0035】
リサイクル材含有層におけるリサイクル材の含有量は、リサイクル材含有層の全質量を基準として、13質量%以上であってもよく、33質量%以上であってもよく、50質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0036】
リサイクル材含有層において含有比率が最大となる樹脂と、リサイクル材において含有比率が最大となる樹脂とが同じであってもよい。そのような樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)からなる群より選択される少なくとも1種のポリエチレン系樹脂であってもよい。
【0037】
リサイクル材含有層はバージン樹脂などのバージン材を含んでいてもよい。バージン材は、リサイクル材における含有比率が最大となる樹脂と、リサイクル材含有層において含有比率が最大となる樹脂とが同じになるように配合してもよい。バージン材としては、例えば、上述したポリオレフィン樹脂と同様のものを用いることができ、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)からなる群より選択される少なくとも1種のポリエチレン系樹脂であってもよい。
【0038】
リサイクル材含有層は、シーラントフィルムを平面視する方向から透過観察したときに透過明度が周囲よりも小さいドメイン(以下、「低透過明度領域」ともいう。)を含み、ドメインは、最大面積が1000μm2以下であり、且つ、最大アスペクト比が10以下である。
【0039】
低透過明度領域の最大面積及び最大アスペクト比は、以下の手順で算出される。
(i)実体顕微鏡システムSZX16(オリンパス株式会社製、製品名)を用いて、シーラントフィルムの平面方向の観察画像(画像サイズ:243μm×851μm)を無作為に10箇所取得する。
(ii)得られた10枚の画像を、WinROOF2021(三谷商事(株)製、製品名)によって画像解析する。画像解析においては、低透過明度領域と、その周囲の高透過明度領域とを二値化することで、各低透過明度領域における面積、最小径及び最大径を算出する。なお、二値化に際しては、以下の操作を適宜組み合わせることによって、低透過明度領域の目視形状と着色範囲とを合わせることができる。
(a)明るさ・コントラスト調整で低透過明度領域を強調する
(b)閾値を調整して、視認される低透過明度領域と着色範囲とを合わせる
(c)隣接する低透過明度領域が1個の領域として認識されている個所や、穴開きの低透過明度領域が複数の領域と認識されている箇所がある場合、必要に応じて、分割や統合処理を行う
【0040】
図2は、低透過明度領域のアスペクト比を説明するための模式図である。
図2には、低透過明度領域20と、その周囲の高透過明度領域30とが示されており、低透過明度領域20のアスペクト比は最大径(長軸)D
Lと最小径(短軸)D
Sとの比D
L/D
Sを意味する。なお、アスペクト比の最小値は1であり、低透過明度領域の形状は
図2に示されるような楕円形状に限らない。
【0041】
上記の方法で特定される低透過明度領域の最大面積が1000μm2を超える、すなわち、面積が1000μm2を超える低透過明度領域が存在すると、フィルム表面に凝集体由来の部分的な膨らみが生じて、ヒートシール性や機械的特性が低下する。また、低透過明度領域の最大アスペクト比が10を超える、すなわち、アスペクト比が10を超える低透過明度領域が存在すると、近接する低透過明度領域と合わさって疑似的な大サイズの凝集体となり、面積が1000μm2を超える低透過明度領域が存在する場合と同様のデメリットをもたらす。
【0042】
一般的な製造装置への適合や、シーラントフィルムにおけるリサイクル材の含有割合を高める観点から、低透過明度領域の最大面積は、50μm2以上であってもよく、200μm2以上であってもよく、400μm2以上であってもよい。また、低透過明度領域の最大アスペクト比は、6以上であってもよい。
【0043】
ところで、パウチ等の製品形態となったフィルムをリサイクル材の原料とする場合、インキなどの着色成分が混入することがある。この場合、リサイクル材含有層において着色部分が局在化していると、色ムラによる外観不良が著しくなり、製品として用いる場合には白色の印刷層や白色顔料を含む白色層などを追加して製膜したりする必要があった。これに対し、本実施形態に係るシーラントフィルムによれば、リサイクル材がインキなどの着色成分を含む場合であっても、低透過明度領域の最大面積及び最大アスペクト比が上述した条件を満たすことで、外観不良を抑制することができる。これにより、バージン材のみからシーラントフィルムを作製する場合に比べて、上述した追加の層を設けるための材料及び工程が必要となり、環境への負荷が増大するというデメリットを回避することができる。
【0044】
また、上記と同様の観点から、リサイクル材含有層においては、低透過明度領域が局在化しているよりも全面に分散し、色味の均一性が高い方が好ましい。
【0045】
また、上記と同様の観点から、リサイクル材含有層は、HSV色空間データにおける明度の平均値が200以上であり、且つ、明度の標準偏差が10以下であってもよい。
【0046】
リサイクル材含有層のHSV色空間データにおける明度の平均値及び標準偏差は、以下の手順で算出される。
(i)シーラントフィルムを、幅方向センターから±200mm幅(幅400mm)、流れ方向250mmのサイズに切り出す。
(ii)切り出したサンプルを、デジタルフルカラー複合機MP C6503(株式会社リコー製、製品名)を用いて、以下の読み取り条件にてスキャンし、画像を得る。
[読み取り条件]種類:フルカラー、文字・写真、解像度:600、サイズ:A3
(iii)得られた画像を、画像解析ソフトimageJにて画像解析し、画像全域における明度平均値と標準偏差を算出する。画像解析は、TIF形式に保存された画像をHSB Stackに変換し、HSV色空間データにおけるヒストグラム解析結果の内、V値(明度)のヒストグラムから算出された平均値と標準偏差を取得する。なお、V値の範囲は0~255である。
【0047】
シーラントフィルムを透明包装材として利用する場合の色味調整の観点から、リサイクル材含有層は、明度の平均値が210~240であり、且つ、明度の標準偏差が6以下であってもよい。
【0048】
リサイクル材含有層の厚みは、20~80μmであってもよい。
【0049】
リサイクル材含有層において低透過明度領域の最大面積及び最大アスペクト比を小さくするには、例えば、以下の調整手段が挙げられる。
(イ)リサイクル材含有層におけるリサイクル材の含有割合を小さくする
(ロ)リサイクル材における上記第1の樹脂の含有割合を大きくする
(ハ)リサイクル材含有層を押出成形する場合、スクリュー回転数を上げる
(ニ)リサイクル材含有層を押出成形する場合、流路の狭小化を極力避け、伸長応力が掛かりにくい機構とする
(ホ)リサイクル材を、二軸押出機を用いてリペレタイズ又はバージン樹脂と混合してマスターバッチ化して用いる
【0050】
リサイクル材含有層において明度の平均値を大きくするには、例えば、上述した調整手段によって低透過明度領域の最大面積を小さくするなどの方法が挙げられる。また、リサイクル材含有層において明度の標準偏差を小さくするには、例えば、低透明度領域を形成するドメインが局在化しないように、リサイクル材と混合する樹脂を選定して流動性を上げるなどの方法が挙げられる。
【0051】
(シーラント層)
シーラント層を形成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、エチレン酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ乳酸、環状ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及び、これらの誘導体などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
シーラント層は、ヒートシール性の観点から、リサイクル材含有層における含有比率が最も大きい樹脂と同種の樹脂を含むことができ、そうなるようにバージン樹脂を配合してもよい。例えば、リサイクル材含有層における含有比率が最も大きい樹脂がポリエチレン系樹脂である場合、シーラント層はポリエチレン系樹脂を含んでいてもよく、ポリエチレン系樹脂が主成分(例えば、シーラント層における含有割合が95質量%以上)であってもよい。また、リサイクル材含有層における含有比率が最も大きい樹脂がポリプロピレン系樹脂である場合、シーラント層はポリプロピレン系樹脂を含んでいてもよく、ポリプロピレン系樹脂が主成分(例えば、シーラント層における含有割合が95質量%以上)であってもよい。
【0053】
ポリエチレン系樹脂のMFRは、フィルム製膜の加工性の観点から、0.05~15g/10分であってもよく、0.1~8g/10分であってもよい。ここでのMFRは、JISK7210(190℃、荷重2.16kg)に準拠して測定される値を意味する。
【0054】
ポリプロピレン系樹脂のMFRは、フィルム製膜の加工性の観点から、0.05~20g/10分であってもよく、0.1~10g/10分であってもよい。ここでのMFRは、JISK7210(230℃、荷重2.16kg)に準拠して測定される値を意味する。
【0055】
ヒートシール性や剛性の観点から、ポリプロピレン系樹脂の示差走査熱量計(DSC)を使った融解熱量による結晶化度が、25%以上60%以下であってもよく、30%以上55%以下であってもよい。
【0056】
本明細書において、ポリプロピレン系樹脂の結晶化度は、試料の融解時の吸熱ピークの積分により求められた融解熱量ΔHmと理論計算から求められた結晶化度が100%である完全結晶体の融解熱量ΔH100との比率から、下記式のように試料の結晶化度を求めたものである。
結晶化度[%]=(ΔHm/ΔH100)×100
なお、完全結晶体の融解熱量ΔH100は、下記文献に記載の値を採用することができる。例えば、ポリプロピレンのΔH100は207J/gとすることができる。)
参照文献:(社)プラスチック成形加工学会:成形加工におけるプラスチック材料、335(2011)、森北出版株式会社
【0057】
シーラント層の厚みは、ヒートシール性の観点から、20μm以上であってもよく、40μm以上であってもよく、80μm以上であってもよく、包装材として使用する場合に総厚を抑制する観点から、150μm以下であってもよく、120μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。シーラント層の厚みは、5μm以上60μm以下であってもよく、5μm以上55μm以下であってもよく、5μm以上50μm以下であってもよく、5μm以上40μm以下であってもよく、5μm以上30μm以下であってもよく、5μm以上20μm以下であってもよく、10μm以上65μm以下であってもよく、10μm以上60μm以下であってもよく、10μm以上55μm以下であってもよく、10μm以上50μm以下であってもよく、10μm以上40μm以下であってもよく、10μm以上30μm以下であってもよく、15μm以上60μm以下であってもよく、20μm以上60μm以下であってもよい。
【0058】
リサイクル材含有層及びシーラント層には、必要に応じて、相溶化剤、造核剤、補強フィラー、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、光安定剤、可塑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、分散剤、銅害防止剤、中和剤、気泡防止剤、ウェルド強度改良剤、天然油、合成油、ワックス等の添加剤を配合してもよい。添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
造核剤及び補強フィラーとしては、タルク、シリカ、クレー、モンモリロナイト、炭酸カルシウム、炭酸リチウムアルミナ、酸化チタン、アルミニウム、鉄、銀、銅等の金属、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、セルロースミクロフィブリル、酢酸セルロース等のセルロース類、ガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリアクリレート繊維等の繊維状フィラー、カーボンナノチューブ等のカーボン類、エチレンプロピレンゴム(EPR)等のエラストマー等が挙げられる。
【0060】
酸化防止剤としては、フェノール系化合物、有機ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物等が挙げられる。
【0061】
熱安定剤及び光安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
【0062】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。
【0063】
帯電防止剤としては、ノニオン系化合物、カチオン系化合物、アニオン系化合物等が挙げられる。
【0064】
難燃剤としては、ハロゲン系化合物、リン系化合物、窒素系化合物、無機化合物、ホウ素系化合物、シリコーン系化合物、硫黄系化合物、赤リン系化合物等が挙げられる。
【0065】
難燃助剤としては、アンチモン化合物、亜鉛化合物、ビスマス化合物、水酸化マグネシウム、粘土質珪酸塩等が挙げられる。
【0066】
図3は、シーラントフィルムの別の実施形態を示す模式断面図である。
図3に示されるシーラントフィルム1bは、リサイクル材含有層2と、リサイクル材含有層2の一方の主面に積層されたシーラント層3と、リサイクル材含有層2の他方の主面に積層された補助層4と、を備える。このように、本実施形態のシーラントフィルムは、リサイクル材含有層のシーラント層が積層されている側とは反対側の主面に積層された補助層を更に備えていてもよい。
【0067】
補助層4にラミネート層としての機能を持たせる場合、上述したシーラント層3と同様の構成を有してもよい。また、補助層4は、リサイクル材含有層2における含有比率が最も大きい樹脂と同種の樹脂を含むことができる。この場合、より高いラミネート強度によって別の層との密着性を向上させることが容易となる。
【0068】
補助層4には、必要に応じて、上述した添加剤を1種又は2種以上配合してもよい。
【0069】
補助層4の厚みは、シーラントフィルムの機械的特性及び密着性の観点から、20μm以上であってもよく、40μm以上であってもよく、80μm以上であってもよく、包装材として使用する場合に総厚を抑制する観点から、150μm以下であってもよく、120μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。
【0070】
<シーラントフィルムの製造方法>
本実施形態のシーラントフィルムは、従来公知の方法により製造することができる。例えば、リサイクル材含有層を構成する樹脂組成物を製膜したリサイクル材含有フィルムを、シーラント層を構成する樹脂組成物で押出ラミネートする方法や、共押出成形によりリサイクル材含有層とシーラント層とを製膜する方法を用いることができる。
【0071】
前者の方法において、リサイクル材含有フィルムは、リサイクル材含有層を構成する樹脂組成物を射出成型機又は押出成形機(例えば二軸押出機)で溶融したあと、フィードブロックまたはマルチマニホールドを介しTダイで製膜する、又はインフレーション法により製膜することができる。リサイクル材は、各種プラスチック廃材を回収、洗浄、粉砕したものを押出機にて溶融成形してペレット化したものを用いることができる。押出ラミネートは、押出ラミネート機などを用いることができる。
【0072】
後者の方法では、例えば、多層押出成形機を用いて、リサイクル材含有層を構成する樹脂組成物及びシーラント層を構成する樹脂組成物をそれぞれ溶融混練し、共押出しすることにより、シーラントフィルムを作製することができる。
【0073】
リサイクル材含有層を構成する樹脂組成物は、リサイクル材のみを含んでいてもよく、粘度調整、機械物性補強と言った種々所望の性能を付与する為にバージン樹脂や添加剤が更に配合されていてもよい。また、リサイクル材とバージン樹脂とを混合する場合、バージン樹脂とリサイクル材を同時にホッパーに投入して溶融混練しながら製膜するドライブレンドであってもよく、バージン材とリサイクル材とを別々に二軸押出機にて溶融混練し、マスターバッチ化するメルトブレンドであってもよい。
【0074】
リサイクル材含有層における低透過明度領域の最大面積及び最大アスペクト比を小さくする観点から、二軸押出機を用いたリペレタイズ、高剪断条件での成形、又は、酸変性ポリオレフィン樹脂などを相溶化剤として配合してもよい。
【0075】
フィルムの冷却方法に関しては、成形機に準じて使用する事が可能であり、例えばTダイ法では、エアーチャンバー、バキュームチャンバー、エアナイフ等の空冷方式、冷水パンへ冷却ロールをディッピングする等の水冷方式等を用いることができる。賦形による表面凹凸形状を付与する場合には、シリコーンゴム、NBRゴム、またはフッ素樹脂等を加工したニップロールと、金属を切削加工した冷却ロールとを0.1MPa以上の圧力を印加した接触部に溶融樹脂を流入し、冷却する方式であってもよい。
【0076】
シーラントフィルムには、後工程適性を向上する表面改質処理を実施してもよい。例えば、印刷適性向上、他の層又は基材フィルムと積層するときのラミネート適性向上のために、ラミネートする面に対して表面改質処理を行うことができる。表面改質処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理等のフィルム表面を酸化させることにより官能基を発現させる手法や、易接着層のコーティング等のウェットプロセスによる改質が挙げられる。
【0077】
なお、シーラントフィルムの製造方法は上述した方法に限定されるものではなく、成形機により製膜したシーラントフィルムに、インラインまたはオフラインの延伸処理を施しても構わない。その他、適宜必要な工程や添加剤を加えることは制限されるものではない。
【0078】
<積層体>
本実施形態の積層体は、上述した本実施形態のシーラントフィルムを備える。
図4は、本実施形態の積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
図4に示される積層体10aは、
図3に示されるシーラントフィルム1bにおける補助層4のリサイクル材含有層2側とは反対側にガスバリア層12が更に設けられている。積層体10aは、ガスバリア性(例えば、酸素バリア性及び水蒸気バリア性など)が向上したものになり得る。ガスバリア層は、単層構造でもよいし、積層構造でもよい。
【0079】
ガスバリア層12としては、金属又は無機酸化物などからなる蒸着層(蒸着膜)、アルミニウム箔等の金属箔、及び、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂等のフィルムなどが挙げられる。
【0080】
蒸着層は、単層構造でもよいし、積層構造でもよい。蒸着層としては、アルミニウムなどの金属、並びに酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウムなどの無機酸化物から構成される、蒸着層を挙げることができる。
【0081】
蒸着層は、従来公知の方法を用いて形成することができる。形成方法は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法などの物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、並びにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法および光化学気相成長法などの化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)などを蒸着材料等に合わせて適宜選択することができる。
【0082】
蒸着層がアルミニウム蒸着膜である場合、そのOD値は、積層体の生産性、酸素バリア性及び水蒸気バリア性の観点から、2以上3.5以下であってもよい。なお、本明細書においてOD値とは、JIS-K-7361に準拠して測定される値を意味する。
【0083】
蒸着層が酸化ケイ素を用いた無機酸化物層である場合、当該無機酸化物層のO/Si比は、透明性の観点から、1.5以上であってもよい。また、O/Si比は、バリア性の観点から、2.0以下であってもよい。上記の効果をより十分に得る観点から、無機酸化物層のO/Si比は、1.5以上2.0以下であってもよく、1.6以上1.8以下であってもよい。
【0084】
上記の無機酸化物層のO/Si比は、X線光電子分光法(XPS)により求めることができ、例えば、測定装置はX線光電子分光分析装置(日本電子株式会社製、商品名:JPS-90MXV)にて、X線源は非単色化MgKα(1253.6eV)を使用し、100W(10kV-10mA)のX線出力で測定することができる。O/Si比を求めるための定量分析には、それぞれO1sで2.28、Si2pで0.9の相対感度因子を用いることができる。
【0085】
蒸着層の厚さは、1nm以上150nm以下、5nm以上60nm以下、又は5nm以上40nm以下であってもよい。蒸着層の厚さが1nm以上であると、酸素バリア性及び水蒸気バリア性が得られやすくなる。蒸着層の厚さが150nm以下であると、蒸着層におけるクラックの発生を防止しやすくなるとともに、シーラントフィルムのリサイクル性を維持しやすくなる。
【0086】
ガスバリア層が設けられている補助層4は、上述したシーラント層3と同様の構成を有してもよい。補助層4がポリオレフィン樹脂を含む場合、ポリオレフィン樹脂は、印刷適性、蒸着適性、強度及び耐熱性の観点から、結晶性が高い方が好ましい。ポリオレフィン樹脂はバージン樹脂であってもよい。
【0087】
上記のポリオレフィン樹脂がポリエチレンの場合、印刷適性、強度及び耐熱性の観点から、高密度ポリエチレン(HDPE)及び中密度ポリエチレン(MDPE)が好ましく、延伸適正の観点から、中密度ポリエチレンがより好ましい。上記のポリオレフィン樹脂がポリプロピレンの場合、示差走査熱量計(DSC)を使った融解熱量による結晶化度が、印刷適性、強度及び耐熱性の観点から、40%以上であってもよく、45%以上であってもよく、耐衝撃性の観点から、60%以下であってもよく、55%以下であってもよい。
【0088】
ガスバリア層が設けられている補助層4における非マテリアルリサイクル樹脂(バージン樹脂など)の含有割合は、リサイクル材含有層における非マテリアルリサイクル樹脂の含有割合よりも高くすることができる。この場合、リサイクル材含有層表面の凝集体由来の部分的な膨らみを平滑化させることができるとともに、積層体の機械的特性及びガスバリア性を向上させることができる。
【0089】
ガスバリア層が設けられている補助層4の厚みは、ガスバリア性及び密着性の観点から、20μm以上であってもよく、40μm以上であってもよく、80μm以上であってもよく、包装材として使用する場合に総厚を抑制する観点から、150μm以下であってもよく、120μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。
【0090】
<包装材>
本実施形態の包装材は、上述した本実施形態のシーラントフィルムを備える。
図5は、包装材の一実施形態を示す模式断面図である。
図5に示される包装材100は、補助層4を備えるシーラントフィルム1bと、補助層4上に接着剤層5を介してラミネートされた基材フィルム6と、を備える。
【0091】
基材フィルム6としては、機械的強度や寸法安定性を有するものであれば特に限定されないが、プラスチックフィルム、紙、不織布等が使用できる。プラスチックフィルムの構成材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、6-ナイロン等のポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリイミド等が挙げられる。
【0092】
基材フィルム6は、機械的強度や寸法安定性の観点から、延伸フィルムであることが好ましい。
【0093】
基材フィルム6は、シーラントフィルムにおける含有比率が最も大きい樹脂と同種の樹脂(「同一樹脂」ともいう)を含有することで、包装材全体としてモノマテリアル化することができ、包装材のリサイクル性が向上する。この場合、シーラントフィルムを構成するすべての層(例えば、シーラント層、又は、シーラント層及び補助層)が、リサイクル材含有層における含有比率が最も大きい樹脂と同種の樹脂を含んでいてもよい。
【0094】
包装材における同一樹脂の含有量は、包装材の全量を基準として、90質量%以上であってよい。この場合の包装材は、単一素材からなる(モノマテリアルの)包装材料ということができる。包装材における同一樹脂の含有量は、リサイクル性をより向上させる観点から、包装材の全量を基準として、92.5質量%以上であってよく、95質量%以上であってよい。
【0095】
基材フィルム6のヘイズ値は、透明性の観点から、30%以下であってもよく、20%以下であってもよい。なお、本明細書においてフィルムのヘイズ値とは、JIS K 7105に準拠して測定される値を意味する。
【0096】
基材フィルム6は、表面処理が施されていてもよい。この場合、隣接する層との密着性を向上させることができる。表面処理の方法は特に限定されず、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス及び/又は窒素ガスなどを用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的処理、並びに化学薬品を用いた酸化処理などの化学的処理が挙げられる。
【0097】
基材フィルム6の表面には、従来公知のアンカーコート剤を用いて、アンカーコート層が設けられていてもよい。
【0098】
基材フィルム6の厚さは、10μm以上50μm以下であってもよく、12μm以上30μm以下であってもよい。基材フィルムの厚さが10μm以上であると、包装材の強度を向上させることが容易となる。また、基材の厚さが50μm以下であると、包装材の加工適性を維持しやすくなる。
【0099】
接着剤層5は、基材フィルム6とシーラントフィルムとを接着する層である。包装材100においては、シーラントフィルムの補助層4と基材フィルム6とが接着剤層5を介して接着されている。
【0100】
接着剤層を構成する接着剤としては、特に限定されないが、ドライラミネート用接着剤を用いることができる。ドライラミネート用接着剤としては、二液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤等が挙げられる。
【0101】
包装材がレトルト用途の包装袋に使用される場合、レトルト耐性のある二液硬化型のウレタン系接着剤を用いることができる。
【0102】
接着剤層5は、環境配慮の観点から、以下の条件を少なくとも一つ満たすものであってもよい。
(1)3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)を含まない。
(2)バイオマス材料を含む。
(3)溶剤を含まない。
【0103】
接着剤層5は、リサイクル後の再生樹脂等の着色、及び加熱処理による臭いの発生を抑制する観点から、塩素を含まないものであってもよい。
【0104】
接着剤層の厚さは、0.3μm以上5.0μm以下であってもよい。接着剤層の厚さは、接着力発現の観点から、0.3μm以上、0.5μm以上、又は1μm以上であってもよく、リサイクル性の観点から、5.0μm以下、3.5μm以下、又は2.5μm以下であってもよい。接着剤層の厚さが上記の上限値以下であると、包装材におけるモノマテリアルの比率を高くすることができる。
【0105】
本実施形態の包装材は、印刷層及びガスバリア層などの機能層を更に備えていてもよい。これらの機能層は、上述した基材フィルム上に設けられていてもよい。
【0106】
印刷層は、基材フィルムのシーラントフィルムが設けられる側の面に形成されていてもよい。この場合、印刷層が外気と接触することを防止することができ、経時的な劣化を防止することができる。
【0107】
印刷層は、文字、柄、記号及びこれらの組み合わせなどを表すものであってもよい。
【0108】
環境負荷のより少ない包装材を作製する観点から、印刷層はバイオマス由来のインキを用いて形成されていてもよい。
【0109】
印刷層の形成方法は、特に限定されるものではなく、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法などの従来公知の印刷法を用いることができる。これらの中でも、環境負荷の観点から、フレキソ印刷法を用いてもよい。
【0110】
ガスバリア層は、基材フィルム上に設けることができ、上述したガスバリア層12と同様の構成を有していてもよい。
【0111】
また、金属箔とプラスチックフィルムとの積層フィルム、又は、プラスチックフィルム上に、上述した金属又は無機酸化物などからなる蒸着層(蒸着膜)を設けた蒸着フィルムを積層することにより、ガスバリア層を設けてもよい。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、6-ナイロン等のポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリイミド等が挙げられる。
【0112】
図6は、包装材の別の実施形態を示す模式断面図である。
図6に示される包装材102は、シーラント層3、リサイクル材含有層2及び補助層4の積層構造を有するシーラントフィルム1b及びガスバリア層12がこの順に積層された積層体10aと、この積層体のガスバリア層12側に接着剤層5を介して接着された印刷層7を有する基材フィルム6と、を備える。包装材102においては、上述したように、印刷層7が基材フィルム6のシーラントフィルムが設けられる側の面に形成されている。
【0113】
本実施形態の包装材における各層には、上述した添加剤を含有させてもよい。
【0114】
本実施形態の包装材は、上述した構成以外にも種々の変更が可能であり、以下の構成を有していてもよい。
(a)本実施形態のシーラントフィルム/接着剤層/ガスバリアフィルム/接着剤層/基材フィルム
(b)本実施形態のシーラントフィルム/接着剤層/ガスバリアフィルム
(c)本実施形態のシーラントフィルム/ガスバリア層(例えば蒸着層)/接着剤層/基材フィルム
上記のガスバリアフィルムとしては、上述した、ガスバリア層が設けられた基材フィルム、金属箔とプラスチックフィルムとの積層フィルム、及び蒸着フィルムであってもよく、アルミニウム箔等の金属箔、及び、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂等のフィルムであってもよい。
【0115】
また、包装材は、補助層を備えるシーラントフィルムと、補助層上に接着剤層を介してラミネートされた第1の基材フィルムと、第1の基材フィルム上に接着剤層を介してラミネートされた印刷層を有する第2の基材フィルムと、を備えるものであってもよい。
【0116】
本実施形態の包装材は、マテリアルリサイクルの観点から、リサイクル材に含まれるプラスチック材料の含有量が、包装材におけるプラスチック材料全量を基準として、10質量%以上であってもよく、25質量%以上であってもよい。本実施形態の包装材がラミネート包装材である場合、プラスチック以外の材料(例えば、接着剤、印刷インキ、アルミ箔など)を重量計算から除いてもよい。
【0117】
リサイクル材に含まれるプラスチック材料(所謂、再生プラスチック)としては、上述した本実施形態に係るリサイクル材含有層に含まれるリサイクル材が含む樹脂が挙げられる。再生プラスチックのうちプレコンシューマ材料は重量に1/2を乗じて計算してもよい。
【0118】
本実施形態の包装材は、スタンディングパウチ、三方袋、合掌袋、ガゼット袋、スパウト付きパウチ、ビーク付きパウチ等に用いることができる。
【0119】
<包装袋>
本実施形態の包装袋は、上述した本実施形態の包装材から製袋されるものである。包装袋の製袋様式は特に制限されるものではないが、包装袋は、スタンディングパウチ、三方袋、合掌袋、ガゼット袋、スパウト付きパウチ、ビーク付きパウチなどであってもよい。
【実施例0120】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0121】
<リサイクル材の準備>
(リサイクル材1)
LLDPEフィルム(三井化学東セロ社製、製品名「TUX FC-S」、膜厚100μm)と、接着剤層と、PETフィルム(東レフィルム加工社製、製品名「VM-PET 1310」、膜厚12μm、アルミ蒸着)と、接着剤層と、印刷層と、Nyフィルム(東洋紡製、製品名「ハーデンフィルム N1100」、膜厚15μm)とがこの順に積層されているフィルムを、圧縮、切断して顆粒状に成形することでリサイクル材1を得た。なお、接着剤層は、主剤としてディックドライ LX-500(DICグラフィックス製、製品名)と、硬化剤としてKW75(DICグラフィックス製、製品名)と、溶剤としてNC401(東洋インキ製、製品名)とを混合した接着剤を用いるドライラミネートによって形成した。
【0122】
(リサイクル材2)
PPフィルム(東レフィルム加工社製、製品名「トレファンNO ZK207」、膜厚100μm)と、接着剤層と、PETフィルム(東レフィルム加工社製、「VM-PET 1310」、膜厚12μm、アルミ蒸着)と、接着剤層と、印刷層と、Nyフィルム(東洋紡製、製品名「ハーデンフィルム N1100」、膜厚15μm)とがこの順に積層されているフィルムを、圧縮、切断して顆粒状に成形することでリサイクル材2を得た。接着剤層は、リサイクル材1と同様にして形成した。
【0123】
(リサイクル材3)
LLDPEフィルム(三井化学東セロ社製、製品名「TUX FC-S」、膜厚100μm)と、接着剤層と、HDPEフィルム(タマポリ社製、製品名「HF31」、膜厚35μm)と、接着剤層と、印刷層と、HDPEフィルム(タマポリ社製、製品名「HF31」、膜厚35μm)とがこの順に積層されているフィルムを、圧縮、切断して顆粒状に成形することでリサイクル材3を得た。接着剤層は、リサイクル材1と同様にして形成した。
【0124】
<シーラントフィルムの作製>
(実施例1)
リサイクル材含有層を押出すホッパーに、リサイクル材1及びLLDPE(プライムポリマー社製、製品名「エボリューSP2040」)を重量比1:1になるように投入し、シーラント層を押出すホッパーにLLDPE(プライムポリマー社製、製品名「エボリューSP2040」)を投入し、単軸多層押出機を用いて共押出成形により、厚み80μmのリサイクル材含有層と厚み20μmのシーラント層とを製膜し、シーラントフィルムを作製した。なお、リサイクル材含有層を押出す際のスクリュー回転数は、16rpmとし、Tダイ前における流路の狭小化を極力避け、伸長応力が掛かりにくい機構とした。
【0125】
(実施例2)
リサイクル材含有層を押出すホッパーに、リサイクル材1のみを投入したこと以外は実施例1と同様にして、シーラントフィルムを作製した。
【0126】
(実施例3)
リサイクル材含有層を押出すホッパーに、リサイクル材1に代えてリサイクル材2を投入し、シーラント層を押出すホッパーにブロックポリプロピレン樹脂(bPP)(日本ポリプロ社製、製品名「ノバテックPP BC6DRF」)を用いた以外は実施例2と同様にして、シーラントフィルムを作製した。
【0127】
(実施例4)
リサイクル材含有層を押出すホッパーに、リサイクル材1に代えてリサイクル材2を投入したこと以外は実施例2と同様にして、シーラントフィルムを作製した。
【0128】
(実施例5)
リサイクル材含有層を押出すホッパーに、リサイクル材3及びLLDPE(プライムポリマー社製、製品名「エボリューSP2040」)を重量比1:1になるように投入したこと以外は実施例1と同様にして、シーラントフィルムを作製した。
【0129】
(実施例6)
リサイクル材含有層を押出すホッパーに、リサイクル材1に代えてリサイクル材3を投入したこと以外は実施例2と同様にして、シーラントフィルムを作製した。
【0130】
(実施例7)
リサイクル材含有層を押出すホッパーに、リサイクル材1のみを投入し、シーラント層を押出すホッパーにLLDPE(プライムポリマー社製、製品名「エボリューSP2040」)を投入し、補助層を押出すホッパーにLLDPE(プライムポリマー社製、製品名「エボリューSP2040」)を投入し、単軸多層押出機を用いて共押出成形により、厚み20μmの補助層と、厚み80μmのリサイクル材含有層と、厚み20μmのシーラント層とをこの順に製膜し、シーラントフィルムを作製した。なお、リサイクル材含有層を押出す際のスクリュー回転数は、16rpmとし、Tダイ前における流路の狭小化を極力避け、伸長応力が掛かりにくい機構とした。
【0131】
(参考例1)
市販のPE製シーラントフィルム(タマポリ社製、製品名「MZ434」)を用意した。
【0132】
(比較例1)
リサイクル材含有層を押出す際に、Tダイ前にオリフィスを挿入して伸長応力が掛かる機構としたこと以外は実施例1と同様にして、シーラントフィルムを作製した。
【0133】
(比較例2)
リサイクル材含有層を押出す際に、スクリュー回転数を10rpmに低減したこと以外は実施例2と同様にして、シーラントフィルムを作製した。
【0134】
(比較例3)
リサイクル材含有層を押出す際に、スクリュー回転数10rpmに低減し、Tダイ前にオリフィスを挿入して伸長応力が掛かる機構としたこと以外は実施例3と同様にして、シーラントフィルムを作製した。
【0135】
(比較例4)
リサイクル材含有層を押出す際に、スクリュー回転数を10rpmに低減し、Tダイ前にオリフィスを挿入して伸長応力が掛かる機構としたこと以外は実施例4と同様にして、シーラントフィルムを作製した。
【0136】
(比較例5)
リサイクル材含有層を押出す際に、スクリュー回転数を10rpmに低減したこと以外は実施例5と同様にして、シーラントフィルムを作製した。
【0137】
(比較例6)
リサイクル材含有層を押出す際に、Tダイ前にオリフィスを挿入して伸長応力が掛かる機構としたこと以外は実施例6と同様にして、シーラントフィルムを作製した。
【0138】
<リサイクル材含有層の分析>
(低透過明度領域の最大面積及び最大アスペクト比)
リサイクル材含有層における低透過明度領域の最大面積及び最大アスペクト比を、以下の手順で算出した。
(i)実体顕微鏡システムSZX16(オリンパス株式会社製、製品名)を用いて、シーラントフィルムの平面方向の観察画像(画像サイズ:243μm×851μm)を無作為に10箇所取得した。
(ii)得られた10枚の画像を、WinROOF2021(三谷商事(株)製、製品名)によって画像解析した。なお、画像解析においては、低透過明度領域と、その周囲の高透過明度領域とを二値化し、二値化に際しては、以下の操作を適宜行い、低透過明度領域の目視形状と着色範囲とを合わせた。
(a)明るさ・コントラスト調整で低透過明度領域を強調する
(b)閾値を調整して、視認される低透過明度領域と着色範囲とを合わせる
(c)隣接する低透過明度領域が1個の領域として認識されている個所や、穴開きの低透過明度領域が複数の領域と認識されている箇所がある場合、必要に応じて、分割や統合処理を行う
【0139】
なお、
図7は、実施例1のシーラントフィルムの実体顕微鏡写真を示す図である。
図8は、比較例1のシーラントフィルムの実体顕微鏡写真を示す図である。
【0140】
(明度の平均値および標準偏差)
リサイクル材含有層のHSV色空間データにおける明度の平均値及び標準偏差を、以下の手順で算出した。
(i)シーラントフィルムを、幅方向センターから±200mm幅(幅400mm)、流れ方向250mmのサイズに切り出した。
(ii)切り出したサンプルを、デジタルフルカラー複合機MP C6503(株式会社リコー製、製品名)を用いて、以下の読み取り条件にてスキャンし、画像を得た。
[読み取り条件]種類:フルカラー、文字・写真、解像度:600、サイズ:A3
(iii)得られた画像を、画像解析ソフトimageJにて画像解析し、画像全域における明度平均値と標準偏差を算出した。なお、画像解析は、TIF形式に保存された画像をHSB Stackに変換し、HSV色空間データにおけるヒストグラム解析結果の内、V値(明度)のヒストグラムから算出された平均値と標準偏差を取得した。なお、V値の範囲は0~255である。
【0141】
<シーラントフィルムの評価>
(ヒートシール強度)
2枚のシーラントフィルムのシーラントフィルム層側同士を重ね、端部10mmを残して20mm幅でヒートシールし、両長辺端部を5mmずつ切り落とすことにより、10mm幅の試験片を作製した。なお、ヒートシール温度は、120~180℃の範囲で10℃ずつ変えた。各試験片について、テンシロン万能試験機RTG-1310((株)エー・アンド・デイ製、製品名)を用い、シールしなかった10mm部分を各々上下チャックに取り付けて100mm/分で引っ張った。このとき、ヒートシール温度を問わず、市販のシーラントフィルム(参考例1)と同等以上の強度が得られた場合は「◎」、市販のシーラントフィルムの強度未満ではあるが、試験片の破断が生じれば「〇」、界面剥離や凝集破壊が生じれば「×」と評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0142】
(破断強度)
シーラントフィルムから、製膜流れ方向が長辺になるよう15mm×25mmのサイズで試験片を切り出した。テンシロン万能試験機RTG-1310((株)エー・アンド・デイ製、製品名)に試験片をチャック間距離が20mmになるように設置し、100mm/秒で引っ張った。このとき、市販のシーラントフィルム(参考例1)と同等以上の伸びを示せば「〇」、市販のシーラントフィルムに及ばない場合は「×」と評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0143】
(外観1)
シーラントフィルムのシーラント層とは反対側の面上に、接着剤層、PETフィルム(東洋紡(株)製、E5202、膜厚12μm)、接着剤層、印刷層、及び、Nyフィルム(東洋紡製、製品名「ハーデンフィルム N1100」、膜厚15μm)の積層構造を設けて積層体を得た。他方で、市販のシーラントフィルム(参考例1)上に上記と同様の積層構造を設けて比較用積層体を得た。積層体が、比較用積層体と同様の外観(色味)を有している場合は「〇」、比較用積層体とは外観(色味)が異なるように見える場合は「×」と評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0144】
(外観2)
シーラントフィルムのシーラント層とは反対側の面上に、接着剤層、PETフィルム(東レフィルム加工社製、「VM-PET 1310」、膜厚12μm、アルミ蒸着)、接着剤層、印刷層、及び、Nyフィルム(東洋紡製、製品名「ハーデンフィルム N1100」、膜厚15μm)の積層構造を設けて積層体を得た。他方で、市販のシーラントフィルム(参考例1)上に上記と同様の積層構造を設けて比較用積層体を得た。積層体が、比較用積層体と同様の外観(表面平滑性(凹凸感のなさ))を有している場合は「◎」、比較用積層体と比べて外観(表面平滑性(凹凸感のなさ))が劣るが、実用上問題ない場合は「〇」、と実用上問題ある場合は「×」と評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0145】
【0146】
【0147】
表1に示すように、実施例1~7のシーラントフィルムは、ヒートシール強度及び破断伸度が市販のシーラントフィルムと同等以上であり、リサイクル材を含有しつつヒートシール性及び機械的特性を十分に有していることが確認された。
【0148】
また、実施例1~7のシーラントフィルムによれば、リサイクル材が印刷層を含んでいるにもかかわらず、市販のシーラントフィルムを用いて作製した積層体と同等以上の外観を有する積層体を得ることができることから、外観不良を隠蔽する追加の層を設けるための材料及び工程を省略することができる。これにより、本発明によれば、リサイクル材を利用しながら、コストや環境への負荷を抑制した包装材の実現が可能であることも確認された。
1a,1b…シーラントフィルム、2…リサイクル材含有層、3…シーラント層、4…補助層、5…接着剤層、6…基材フィルム、7…印刷層、10a…積層体、12…ガスバリア層、20…低透過明度領域(凝集体)、30…高透過明度領域、100,102…包装材。