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特開2024-17133覆工コンクリートの打込みシステム及び覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017133
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】覆工コンクリートの打込みシステム及び覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20240201BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20240201BHJP
   B28C 7/16 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
E21D11/10 Z
E04G21/02 103Z
B28C7/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119579
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000172813
【氏名又は名称】佐藤工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598163064
【氏名又は名称】学校法人千葉工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100073210
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100173668
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 吉之助
(72)【発明者】
【氏名】橋本 紳一郎
(72)【発明者】
【氏名】宇野 洋志城
(72)【発明者】
【氏名】小野 和義
(72)【発明者】
【氏名】小山 広光
(72)【発明者】
【氏名】弘光 太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 正佑
【テーマコード(参考)】
2D155
2E172
4G056
【Fターム(参考)】
2D155CA06
2D155CA07
2D155KA00
2D155LA15
2E172AA05
2E172DE02
4G056AA06
4G056CE04
4G056DA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】経験や勘に頼ることなく且つ危険を伴うことなく覆工型枠内へのコンクリートの充填完了時期を判定することができ、しかもコスト増を招くことなく且つ煩雑な手間を掛けることなく判定することができる覆工コンクリートの打込みシステム及び覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法を提供する。
【解決手段】コンクリートポンプと、コンクリートポンプに一端を接続する圧送管と、圧送管の他端が接続される圧入孔が設けられた覆工型枠と、を有し、覆工型枠内に自己充填コンクリートを圧送充填することにより打込みを行う構成において、圧送管には、圧送される自己充填コンクリートの圧力値を計測する圧力センサが少なくとも一カ所に配設されており、圧力センサによって計測された圧力値がピークとなった時に自己充填コンクリートの充填が完了したことを判定する構成であること、を特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートポンプと、該コンクリートポンプに一端を接続する圧送管と、該圧送管の他端が接続される圧入孔が設けられた覆工型枠と、を有して成り、前記覆工型枠内に自己充填コンクリートを圧送充填することにより打込みを行う構成の覆工コンクリートの打込みシステムにおいて、
前記圧送管には、圧送される自己充填コンクリートの圧力値を計測する圧力センサが少なくとも一カ所に配設されており、
圧力センサによって計測された圧力値がピークとなった時に自己充填コンクリートの充填が完了したことを判定する構成であること、
を特徴とする覆工コンクリートの打込みシステム。
【請求項2】
圧送初期の平均圧力値を1とした時、進行する充填と共に上昇する圧力値の変化率が前記1に対して4.5倍~8.5倍の範囲に入った時に充填完了と判定する構成であることを特徴とする請求項1に記載の覆工コンクリートの打込みシステム。
【請求項3】
圧送初期の平均圧力値を1とした時、進行する充填と共に上昇する圧力値の変化率が前記1に対して7.2倍~8.5倍の範囲に入った時に充填完了と判定する構成であることを特徴とする請求項1に記載の覆工コンクリートの打込みシステム。
【請求項4】
用いる圧力値が、圧力センサによって計測される圧力値から自己充填コンクリートの自重圧を除く補正を行った補正後圧力値であって、
圧送初期の補正後平均圧力値を1とした時、進行する充填と共に上昇する補正後圧力値の変化率が前記1に対して2.1倍~3.5倍の範囲に入った時に充填完了と判定する構成であることを特徴とする請求項1に記載の覆工コンクリートの打込みシステム。
【請求項5】
用いる圧力値が、圧力センサによって計測される圧力値から自己充填コンクリートの自重圧を除く補正を行った補正後圧力値であって、
圧送初期の補正後平均圧力値を1とした時、進行する充填と共に上昇する補正後圧力値の変化率が前記1に対して2.6倍~3.5倍の範囲に入った時に充填完了と判定する構成であることを特徴とする請求項1に記載の覆工コンクリートの打込みシステム。
【請求項6】
前記圧力センサの配置箇所数が一カ所、二カ所、三カ所のいずれかであり、その配置位置が、一カ所である場合は下記(1)~(3)のいずれか1つの位置であり、二カ所である場合は下記(1)~(3)から選ばれる2つの位置であり、三カ所である場合は下記(1)~(3)の全てであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の覆工コンクリートの打込みシステム。
[コンクリートポンプから圧入孔までの圧送管に配設される圧力センサの配置位置構成]
(1)圧力センサが、コンクリートポンプからの距離が圧送管の全長の4/5以上である位置に配設される構成。
(2)圧力センサが、コンクリートポンプからの距離が圧送管の全長の2/5~3/5の範囲内である位置に配設される構成。
(3)圧力センサが、コンクリートポンプからの距離が圧送管の全長の1/5~2/5の範囲内である位置に配設される構成。
【請求項7】
覆工型枠の長手方向の左右両側の底部近傍に圧入孔が各々設けられ、この左右の圧入孔の各々に圧送管が接続され、自己充填コンクリートが一定量毎に間欠的に左右交互に切り替えて圧送充填される構成であり、
左右のいずれか一方の圧送時の圧送した自己充填コンクリートの量と、他方の圧送を停止した時の圧力センサにより計測した圧力値である自己充填コンクリートの自重圧と、から、型枠内の充填進行具合を判定する構成であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の覆工コンクリートの打込みシステム。
【請求項8】
覆工型枠の底部近傍から頂部近傍にかけての高さ方向の複数箇所に加速度計を取り付け、充填中の型枠への骨材の衝突によって生じる振動を計測することにより型枠内の充填進行具合を判定する構成であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の覆工コンクリートの打込みシステム。
【請求項9】
コンクリートポンプと、該コンクリートポンプに一端を接続する圧送管と、該圧送管の他端が接続される圧入孔が設けられた覆工型枠と、を有して成り、前記覆工型枠内に自己充填コンクリートを圧送充填することによって覆工コンクリートの打込みを行う際に、
前記圧送管には、圧送される自己充填コンクリートの圧力値を計測する圧力センサを少なくとも一カ所に配設し、
この圧力センサによって計測された圧力値がピークとなった時に自己充填コンクリートの充填完了と判定する構成であること、
を特徴とする覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【請求項10】
圧送初期の平均圧力値を1とした時、進行する充填と共に上昇する圧力値の変化率が前記1に対して4.5倍~8.5倍の範囲に入った時に充填完了と判定する構成であることを特徴とする請求項9に記載の覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【請求項11】
圧送初期の平均圧力値を1とした時、進行する充填と共に上昇する圧力値の変化率が前記1に対して7.2倍~8.5倍の範囲に入った時に充填完了と判定する構成であることを特徴とする請求項9に記載の覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【請求項12】
用いる圧力値が、圧力センサによって計測される圧力値から自己充填コンクリートの自重圧を除く補正を行った補正後圧力値であって、
圧送初期の補正後平均圧力値を1とした時、進行する充填と共に上昇する補正後圧力値の変化率が前記1に対して2.1倍~3.5倍の範囲に入った時に充填完了と判定する構成であることを特徴とする請求項9に記載の覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【請求項13】
用いる圧力値が、圧力センサによって計測される圧力値から自己充填コンクリートの自重圧を除く補正を行った補正後圧力値であって、
圧送初期の補正後平均圧力値を1とした時、進行する充填と共に上昇する補正後圧力値の変化率が前記1に対して2.6倍~3.5倍の範囲に入った時に充填完了と判定する構成であることを特徴とする請求項9に記載の覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【請求項14】
前記圧力センサの配置箇所数が一カ所、二カ所、三カ所のいずれかであり、その配置位置が、一カ所である場合は下記(1)~(3)のいずれか1つの位置であり、二カ所である場合は下記(1)~(3)から選ばれる2つの位置であり、三カ所である場合は下記(1)~(3)の全てであることを特徴とする請求項9~13のいずれかに記載の覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
[コンクリートポンプから圧入孔までの圧送管に配設される圧力センサの配置位置構成]
(1)圧力センサが、コンクリートポンプからの距離が圧送管の全長の4/5以上である位置に配設される構成。
(2)圧力センサが、コンクリートポンプからの距離が圧送管の全長の2/5~3/5の範囲内である位置に配設される構成。
(3)圧力センサが、コンクリートポンプからの距離が圧送管の全長の1/5~2/5の範囲内である位置に配設される構成。
【請求項15】
覆工型枠の長手方向の左右両側の底部近傍に圧入孔が各々設けられ、この左右の圧入孔の各々に圧送管が接続され、自己充填コンクリートが一定量毎に間欠的に左右交互に切り替えて圧送充填される構成であり、
左右のいずれか一方の圧送時の圧送した自己充填コンクリートの量と、他方の圧送を停止した時の圧力センサにより計測した圧力値である自己充填コンクリートの自重圧と、から、型枠内の充填進行具合を判定する構成であることを特徴とする請求項9~13のいずれかに記載の覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【請求項16】
覆工型枠の底部近傍から頂部近傍にかけての高さ方向の複数箇所に加速度計を取り付け、充填中の型枠への骨材の衝突によって生じる振動を計測することにより型枠内の充填進行具合を判定する構成であることを特徴とする請求項9~13のいずれかに記載の覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は覆工コンクリートの打込みシステム及び覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法に関し、詳しくは上方が閉鎖された覆工型枠内に自己充填コンクリートを圧送充填する際に充填完了時期を把握することができる打込みシステム及び判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な型枠内へのコンクリート打込みは、型枠上方からコンクリートを流し込むように送り込むことから、型枠内にコンクリートが充填されていく状態を常に目視確認できるため充填進行具合を常に把握することができる。従って、充填完了時期の見極めは極めて容易である。
【0003】
しかし、覆工コンクリートのように上方が閉鎖された覆工型枠内にコンクリートの打込みを行う場合は、充填進行具合を上方から目視確認できない。型枠内部空間の容積から充填に必要なコンクリート量は予め大よそ判っているが、必要充分な最適量を充填できたか、充填完了時期の判断は現場作業者の経験や勘に頼ることが多かった。
更に現場作業者は、コンクリート充填中の覆工型枠の軋み音や僅かな膨らみ等を間近で感知すること等によっても充填完了時期の判断材料にしており、型枠破綻等の危険が伴うことから安全性の点でも問題が多かった。
【0004】
そこで、経験や勘に頼ることなく覆工型枠内へのコンクリートの充填進行具合を把握することができる技術が提案された(例えば、特許文献1、2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6055695号
【特許文献2】特許第5316895号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術は、覆工型枠内の頂部の地山側に圧力センサを覆工型枠の長手方向に複数配設することにより、コンクリートが覆工型枠内の頂部内まで充填されたことを検知するものである。かかる構成によって、コンクリートが覆工型枠内の頂部まで充填されたことを現場作業者の経験や勘に頼ることなく客観的に判断することができる技術である。
【0007】
特許文献2の技術は、覆工型枠内である地山側に充填検知センサを配設すると共に覆工型枠の表面側に圧力センサを配設することにより、コンクリートの充填具合を検知すると共に覆工型枠への加圧付加状態を検知するものである。かかる構成によって、現場作業者の経験や勘に頼ることなく客観的にコンクリートの充填進行具合を判断することができる技術である。
【0008】
しかし、特許文献1、2の技術では共に、覆工型枠内に複数の圧力センサを配設しなければならず、覆工トンネルが長スパンの場合、その全長に亘って圧力センサを配設しなければならないことから、多数箇所への圧力センサの配設作業は煩雑で手間が掛かるだけでなく、配設した多数の圧力センサは打込み工事終了後も回収されることなくコンクリート内に埋設されたままとなるためコストを要するという問題点を有している。
【0009】
そこで本発明の課題は、経験や勘に頼ることなく且つ危険を伴うことなく覆工型枠内へのコンクリートの充填完了時期を判定することができ、しかもコスト増を招くことなく且つ煩雑な手間を掛けることなく判定することができる覆工コンクリートの打込みシステム及び覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は下記構成を有する。
【0011】
1.コンクリートポンプと、該コンクリートポンプに一端を接続する圧送管と、該圧送管の他端が接続される圧入孔が設けられた覆工型枠と、を有して成り、前記覆工型枠内に自己充填コンクリートを圧送充填することにより打込みを行う構成の覆工コンクリートの打込みシステムにおいて、
前記圧送管には、圧送される自己充填コンクリートの圧力値を計測する圧力センサが少なくとも一カ所に配設されており、
圧力センサによって計測された圧力値がピークとなった時に自己充填コンクリートの充填が完了したことを判定する構成であること、
を特徴とする覆工コンクリートの打込みシステム。
【0012】
2.圧送初期の平均圧力値を1とした時、進行する充填と共に上昇する圧力値の変化率が前記1に対して4.5倍~8.5倍の範囲に入った時に充填完了と判定する構成であることを特徴とする上記1に記載の覆工コンクリートの打込みシステム。
【0013】
3.圧送初期の平均圧力値を1とした時、進行する充填と共に上昇する圧力値の変化率が前記1に対して7.2倍~8.5倍の範囲に入った時に充填完了と判定する構成であることを特徴とする上記1に記載の覆工コンクリートの打込みシステム。
【0014】
4.用いる圧力値が、圧力センサによって計測される圧力値から自己充填コンクリートの自重圧を除く補正を行った補正後圧力値であって、
圧送初期の補正後平均圧力値を1とした時、進行する充填と共に上昇する補正後圧力値の変化率が前記1に対して2.1倍~3.5倍の範囲に入った時に充填完了と判定する構成であることを特徴とする上記1に記載の覆工コンクリートの打込みシステム。
【0015】
5.用いる圧力値が、圧力センサによって計測される圧力値から自己充填コンクリートの自重圧を除く補正を行った補正後圧力値であって、
圧送初期の補正後平均圧力値を1とした時、進行する充填と共に上昇する補正後圧力値の変化率が前記1に対して2.6倍~3.5倍の範囲に入った時に充填完了と判定する構成であることを特徴とする上記1に記載の覆工コンクリートの打込みシステム。
【0016】
6.前記圧力センサの配置箇所数が一カ所、二カ所、三カ所のいずれかであり、その配置位置が、一カ所である場合は下記(1)~(3)のいずれか1つの位置であり、二カ所である場合は下記(1)~(3)から選ばれる2つの位置であり、三カ所である場合は下記(1)~(3)の全てであることを特徴とする上記1~5のいずれかに記載の覆工コンクリートの打込みシステム。
[コンクリートポンプから圧入孔までの圧送管に配設される圧力センサの配置位置構成]
(1)圧力センサが、コンクリートポンプからの距離が圧送管の全長の4/5以上である位置に配設される構成。
(2)圧力センサが、コンクリートポンプからの距離が圧送管の全長の2/5~3/5の範囲内である位置に配設される構成。
(3)圧力センサが、コンクリートポンプからの距離が圧送管の全長の1/5~2/5の範囲内である位置に配設される構成。
【0017】
7.覆工型枠の長手方向の左右両側の底部近傍に圧入孔が各々設けられ、この左右の圧入孔の各々に圧送管が接続され、自己充填コンクリートが一定量毎に間欠的に左右交互に切り替えて圧送充填される構成であり、
左右のいずれか一方の圧送時の圧送した自己充填コンクリートの量と、他方の圧送を停止した時の圧力センサにより計測した圧力値である自己充填コンクリートの自重圧と、から、型枠内の充填進行具合を判定する構成であることを特徴とする上記1~5のいずれかに記載の覆工コンクリートの打込みシステム。
【0018】
8.覆工型枠の底部近傍から頂部近傍にかけての高さ方向の複数箇所に加速度計を取り付け、充填中の型枠への骨材の衝突によって生じる振動を計測することにより型枠内の充填進行具合を判定する構成であることを特徴とする上記1~5のいずれかに記載の覆工コンクリートの打込みシステム。
【0019】
9.コンクリートポンプと、該コンクリートポンプに一端を接続する圧送管と、該圧送管の他端が接続される圧入孔が設けられた覆工型枠と、を有して成り、前記覆工型枠内に自己充填コンクリートを圧送充填することによって覆工コンクリートの打込みを行う際に、
前記圧送管には、圧送される自己充填コンクリートの圧力値を計測する圧力センサを少なくとも一カ所に配設し、
この圧力センサによって計測された圧力値がピークとなった時に自己充填コンクリートの充填完了と判定する構成であること、
を特徴とする覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【0020】
10.圧送初期の平均圧力値を1とした時、進行する充填と共に上昇する圧力値の変化率が前記1に対して4.5倍~8.5倍の範囲に入った時に充填完了と判定する構成であることを特徴とする上記9に記載の覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【0021】
11.圧送初期の平均圧力値を1とした時、進行する充填と共に上昇する圧力値の変化率が前記1に対して7.2倍~8.5倍の範囲に入った時に充填完了と判定する構成であることを特徴とする上記9に記載の覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【0022】
12.用いる圧力値が、圧力センサによって計測される圧力値から自己充填コンクリートの自重圧を除く補正を行った補正後圧力値であって、
圧送初期の補正後平均圧力値を1とした時、進行する充填と共に上昇する補正後圧力値の変化率が前記1に対して2.1倍~3.5倍の範囲に入った時に充填完了と判定する構成であることを特徴とする上記9に記載の覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【0023】
13.用いる圧力値が、圧力センサによって計測される圧力値から自己充填コンクリートの自重圧を除く補正を行った補正後圧力値であって、
圧送初期の補正後平均圧力値を1とした時、進行する充填と共に上昇する補正後圧力値の変化率が前記1に対して2.6倍~3.5倍の範囲に入った時に充填完了と判定する構成であることを特徴とする上記9に記載の覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【0024】
14.前記圧力センサの配置箇所数が一カ所、二カ所、三カ所のいずれかであり、その配置位置が、一カ所である場合は下記(1)~(3)のいずれか1つの位置であり、二カ所である場合は下記(1)~(3)から選ばれる2つの位置であり、三カ所である場合は下記(1)~(3)の全てであることを特徴とする上記9~13のいずれかに記載の覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
[コンクリートポンプから圧入孔までの圧送管に配設される圧力センサの配置位置構成]
(1)圧力センサが、コンクリートポンプからの距離が圧送管の全長の4/5以上である位置に配設される構成。
(2)圧力センサが、コンクリートポンプからの距離が圧送管の全長の2/5~3/5の範囲内である位置に配設される構成。
(3)圧力センサが、コンクリートポンプからの距離が圧送管の全長の1/5~2/5の範囲内である位置に配設される構成。
【0025】
15.覆工型枠の長手方向の左右両側の底部近傍に圧入孔が各々設けられ、この左右の圧入孔の各々に圧送管が接続され、自己充填コンクリートが一定量毎に間欠的に左右交互に切り替えて圧送充填される構成であり、
左右のいずれか一方の圧送時の圧送した自己充填コンクリートの量と、他方の圧送を停止した時の圧力センサにより計測した圧力値である自己充填コンクリートの自重圧と、から、型枠内の充填進行具合を判定する構成であることを特徴とする上記9~13のいずれかに記載の覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【0026】
16.覆工型枠の底部近傍から頂部近傍にかけての高さ方向の複数箇所に加速度計を取り付け、充填中の型枠への骨材の衝突によって生じる振動を計測することにより型枠内の充填進行具合を判定する構成であることを特徴とする上記9~13のいずれかに記載の覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【発明の効果】
【0027】
請求項1、9に示す発明によれば、経験や勘に頼ることなく且つ危険を伴うことなく覆工型枠内へのコンクリートの充填完了時期を判定することができ、しかもコスト増を招くことなく且つ煩雑な手間を掛けることなく判定することができる覆工コンクリートの打込みシステム及び覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法を提供することができる。
【0028】
特に、圧送管に配設した圧力センサによって、圧送する自己充填コンクリートの圧力値を計測し、計測した圧力値のピーク時点で覆工型枠内に圧送充填する自己充填コンクリートの充填完了時期を判定することができる。
充填完了時期、即ち、圧送の終了するタイミングを適切に把握することができるため、地山側に未充填箇所を残さず、密実な覆工を形成することができ、且つ型枠端部の安全性も確保することができる。しかも、この充填完了時期の判定構成は、覆工型枠内の多数箇所に多数の圧力センサを配設する必要がなく、用いる圧送管に圧力センサを配設するだけなので圧力センサの数を著しく減じることができることから、覆工型枠内にその全長に亘って多数の圧力センサを配設するという煩雑な手間が不要であり、打込み終了後もコンクリート内に埋設されたままとなる多数の圧力センサの無駄も無くなり、コスト増とならない。圧力センサは、施工の度に回収不能と成る構成に用いる圧力センサとは異なり、圧送管に圧力センサを配設する構成の場合、圧力センサが特に故障のない限りは繰り返し使用できるので高精度の高価な圧力センサを用いることが可能である。
また、充填完了時期の判断を型枠近くで作業員が確認する必要がなくなるため、作業員の安全を確保することができる。
【0029】
請求項2~5、10~13に示す発明によれば、覆工型枠内への自己充填コンクリートの圧送充填が進むことによって圧力センサによって計測している圧送管内の圧力値が上昇し、この圧力値が特定の範囲に入った時点で覆工型枠内への自己充填コンクリートの充填完了時期を極めて容易に判定することができる。
【0030】
請求項6、14に示す発明によれば、圧力センサを圧送管に一カ所、二カ所、三カ所のいずれかの箇所に配設することにより、覆工型枠内の多数箇所に圧力センサを配設することなく自己充填コンクリートの充填完了時期を判定することができる。特に二カ所に配設した場合、更には三カ所に配設した場合には、計測する圧力値の推移がより詳細に判るため、充填完了時期の判定制度が向上する。
【0031】
請求項7、15に示す発明によれば、左右の圧入孔のいずれか一方への圧送中において、圧送停止中の他方の圧力値であるコンクリートの自重圧と、圧送中の一方の圧力値と、から充填進行具合を判定することができる。従って、自己充填コンクリートの充填中から充填完了時期に到達するまでを的確に判定することができる。
【0032】
請求項8、16に示す発明によれば、覆工型枠内に自己充填コンクリートを充填する過程において、該自己充填コンクリートに含有する骨材が覆工型枠に衝突することによって生じる振動を当該位置に配設されている加速度計が検知して計測することによって、この検知計測した加速度計の配設位置まで自己充填コンクリートが充填されていることを判定することができる。加速度計は覆工型枠の底部近傍から頂部近傍にかけての高さ方向の複数箇所に配設されているため、自己充填コンクリートの圧送充填の進行具合を判定することができる。従って、自己充填コンクリートの充填中から充填完了時期に到達するまで的確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明に係る覆工コンクリートの打込みシステムの一実施例を示す概略説明図
図2】圧送管に配設する圧力センサの配置位置の一例を示す概略説明図
図3】圧送管に配設した圧力センサによって計測された圧力値(平均圧力)の時間毎の変化を示すグラフ
図4図3に示す圧力値の変化の内、圧送開始から700秒(11分40秒)~800秒(13分20秒)時点における圧力値を示すグラフ
図5図3に示す圧力値の変化の内、圧送開始から11450秒(3時間10分50秒)~11650秒(3時間14分10秒)時点における圧力値を示すグラフ
図6】圧送管の三カ所に配設した圧力センサによって計測された圧力値の内、圧送開始から700秒(11分40秒)、4700秒(1時間18分20秒)、11450秒(3時間10分50秒)の時点における圧力値(平均圧力と最大圧力)の各々を示すグラフ
図7】充填完了時点付近の圧力値の波形を示すグラフ
図8】充填完了時点付近の補正圧力値(圧力センサによって計測される圧力値から自己充填コンクリートの自重圧を除く補正を行った値)の波形を示すグラフ
図9】圧送初期の圧力値を1とした時の圧送開始から700秒(11分40秒)、4700秒(1時間18分20秒)、11450秒(3時間10分50秒)、充填完了時の各時点における各圧力値の変化率を示すグラフ
図10】圧送初期の圧力値を1とした時の圧送開始から700秒(11分40秒)、4700秒(1時間18分20秒)、11450秒(3時間10分50秒)、充填完了時、の各時点における各補正圧力値(圧力センサによって計測される圧力値から自己充填コンクリートの自重圧を除く補正を行った値)の変化率を示すグラフ
図11】左右の圧入孔に対する圧送を左右交互に間欠的に切り替えて行った際の圧送を停止した時の圧力センサにより計測した圧力値である自己充填コンクリートの自重圧の時間毎の変化を示すグラフ
図12】圧送管の三カ所に配設した圧力センサによって計測された圧力値において、充填完了直前の圧力値を1とした時の充填完了時の各圧力値の変化率を示すグラフ
図13】圧送管の三カ所に配設した圧力センサによって計測された圧力値において、充填完了直前の補正圧力値(圧力センサによって計測される圧力値から自己充填コンクリートの自重圧を除く補正を行った値)を1とした時の充填完了時の各圧力値の変化率を示すグラフ
図14】覆工型枠に取り付ける加速度計の配置位置の一例を示す概略説明図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る覆工コンクリートの打込みシステム(以下、単に打込みシステムと言うこともある。)及び覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法(以下、単に判定方法と言うこともある。)について説明する。
【0035】
本発明の打込みシステム及び判定方法は、上方が閉鎖された覆工型枠内に自己充填コンクリートを圧送充填する際の充填完了時期を把握することができる技術である。
即ち、一般的な型枠内へのコンクリート打込みでは、型枠上方からコンクリートを流し込むように送り込むことから該型枠内にコンクリートが充填されていく状態を常に目視確認できるため、充填進行具合を常に把握することができる。しかし、覆工型枠内へのコンクリート打込みでは、上方が閉鎖されていることによってコンクリート打込み時の充填進行具合を型枠の上方から確認することができないが、本発明によれば、覆工型枠内への自己充填コンクリートの圧送充填の際の充填完了時期を現場作業者の経験や勘に頼ることなく且つ危険を伴うことなく把握することができる。
【0036】
本発明の打込みシステムの具体的構成としては、図1に示すように、
コンクリートポンプ車のコンクリートポンプ1と、該コンクリートポンプ1に一端を接続する圧送管2と、該圧送管2の他端が接続される圧入孔3が設けられた覆工型枠4と、を有して成り、前記覆工型枠4内に自己充填コンクリート5を圧送充填することにより打込みを行う構成において、
前記圧送管2には、圧送される自己充填コンクリート5の圧力値を計測する圧力センサ6が少なくとも一カ所に配設されており、
圧力センサ6によって計測された圧力値がピークとなった時に自己充填コンクリート5の充填が完了したことを判定する構成であること、
を主構成とするものである。
【0037】
図1において、符号7は自己充填コンクリート5を攪拌するアジテータ車、符号8は地山、符号9は覆工型枠4と地山8との間の打込み空間、符号10は圧力センサ6によって計測された圧力値を表示・記録するデータロガー、符号11は圧力センサ6とデータロガー10とを接続するケーブル、を各々示す。
【0038】
また、図1に示すように覆工型枠4は断面アーチ形を有しており、アーチ形である覆工型枠4の長手方向の左右両側の底部近傍に圧入孔3が各々設けられている。
【0039】
更に、圧入孔3に接続される圧送管2は、該圧入孔3に接続される以前に切替弁21を介して左右2本に分岐しており、覆工型枠4の左側の圧入孔3には圧送管(左)2Aが、右側の圧入孔には圧送管(右)2Bが、各々接続される。
自己充填コンクリート5の充填圧送差の際には、一定量毎に切替弁21によって間欠的に左右交互に切り替えて圧送充填される構成である。
【0040】
圧力センサ6は、圧送管2に配設することにより該圧送管2の内部をコンクリートが流動する際に圧送管2にかかる圧力を計測するものであり、計測した圧力値はケーブル11を介してデータロガー10に送られて表示・記録される。本発明の判定方法は、この計測・表示・記録された圧力値に基いて自己充填コンクリートの充填完了時期を適切に判定するのである。
【0041】
圧力センサ6は、配置箇所数が一カ所、二カ所、三カ所のいずれかであることが好ましく、本実施例では一カ所×2+二カ所の計四カ所に配設しており、各配置箇所に1つずつ圧力センサ6を配設している。
尚、一カ所×2とは、圧送管2として本実施例においては、アーチ形である覆工型枠4の長手方向の左右両側の底部近傍に圧入孔3が各々設け、この2つの圧入孔3・3に接続される圧送管2について、切替弁23を介して左右2本(圧送管(左)2Aと圧送管(右)2B)に分岐し、覆工型枠4の左側の圧入孔3には圧送管(左)2Aを、右側の圧入孔には圧送管(右)2Bを、各々接続した構成のためである。従って、圧送管2の分岐が無い態様に適用する場合には、この圧入孔3に近い配置箇所については一カ所となるので、全体としての配置箇所数は三カ所となる。即ち、一つの圧入孔3に対して圧力センサ6を三カ所配置する構成であることが好ましい。
【0042】
圧力センサ6を複数箇所に配設した場合、その配設位置としては、下記(1)~(3)に示す位置であることが好ましい。尚、一カ所のみ配設の場合は下記(1)~(3)のいずれか1つの位置、二カ所に配設の場合は下記(1)~(3)から選ばれる2つの位置であることが好ましい。
[コンクリートポンプ1から圧入孔3までの圧送管2に配設される圧力センサ6の配置位置構成]
(1)圧力センサ6が、コンクリートポンプ1からの距離が圧送管の全長の4/5以上である位置に配設される構成。(尚、この位置の圧力センサ6を第1圧力センサ61とする。尚、圧送管(左)2Aに配設するものを第1圧力センサ(左)61A、圧送管(右)2Bに配設されるものを第1圧力センサ(右)61Bとする。)
(2)圧力センサ6が、コンクリートポンプ1からの距離が圧送管の全長の2/5~3/5の範囲内である位置に配設される構成。(尚、この位置の圧力センサ6を第2圧力センサ62とする。)
(3)圧力センサ6が、コンクリートポンプ1からの距離が圧送管の全長の1/5~2/5の範囲内である位置に配設される構成。(尚、この位置の圧力センサ6を第3圧力センサ63とする。)
【0043】
尚、本発明が適用される覆工型枠4としては、この種の覆工トンネル施工において用いられる公知公用の覆工型枠に特別の制限なく適用することができる。
また、コンクリートポンプ1、圧送管2、切替弁21、自己充填コンクリート5、アジテータ車7の各々についても同様にこの種の覆工トンネル施工において用いられる公知公用の各々を特別の制限なく用いることができる。
【0044】
以上の構成を有する本発明の打込みシステムによれば、覆工型枠4内に自己充填コンクリート5を圧送充填した際に、圧送管2に配設した圧力センサ6によって圧送する自己充填コンクリート5の圧力値を計測し、この計測した圧力値がピークとなった時に自己充填コンクリートの充填が完了したと判定することができることが判った。
【0045】
充填完了時期、即ち、圧送の終了するタイミングを適切に把握することができるため、打込み空間9に未充填箇所を残さず、密実な覆工を形成することができ、且つ型枠端部の安全性も確保することができる。しかも、この充填完了時期の判定構成は、覆工型枠4内の多数箇所に多数の圧力センサを配設する必要がなく、用いる圧送管2に圧力センサ6を配設するだけなので圧力センサ6の数を著しく減じることができることから、覆工型枠4内にその全長に亘って多数の圧力センサを配設するという煩雑な手間が不要であり、打込み終了後もコンクリート5内に埋設されたままとなる多数の圧力センサの無駄も無くなり、コスト増とならない。圧力センサは、施工の度に回収不能と成る構成に用いる圧力センサとは異なり、圧送管2に配設する圧力センサ6は特に故障のない限りは繰り返し使用できるので高精度の高価な圧力センサ6を用いることが可能である。
また、充填完了時期の判断を覆工型枠4近くで作業員が確認する必要がなくなるため、作業員の安全を確保することができる。
【0046】
圧力センサ6によって計測する圧力値がピークとなった時点とは、後述する検証結果等から圧送初期の平均圧力値を1とした時、進行する充填と共に上昇する圧力値の変化率が前記1に対して4.5倍~8.5倍の範囲に入った時、より詳細には7.2倍~8.5倍の範囲に入った時とすることができる。従って、自己充填コンクリート5の圧送充填中において、圧力センサ6によって計測され、データロガー10に表示・記録される圧力値が、覆工型枠4内への自己充填コンクリート5の圧送充填が進むことによって圧力値が上昇し、この圧力値が特定の範囲に入った時点で覆工型枠4内への自己充填コンクリートの充填完了時期を極めて容易に判定することができる。
【0047】
尚、本発明の打込みシステム及び判定方法において、判定に用いる圧力値は計測した値そのものの実測値のままであってもよいが、圧力センサ6によって計測される圧力値から自己充填コンクリート5の自重圧を除く補正を行った補正後圧力値であってもよい。この補正後圧力値を用いる場合は、圧送初期の補正後平均圧力値を1とした時、進行する充填と共に上昇する補正後圧力値の変化率が前記1に対して2.1倍~3.5倍の範囲に入った時、より詳細には2.6倍~3.5倍の範囲に入った時に充填完了と判定する構成とすることができる。
【0048】
測定した実測値から自己充填コンクリート5の自重圧を除く補正を行う場合、自己充填コンクリート5の自重圧は、圧送を停止した時の圧力センサ6によって計測された圧力値である。従って、図1に示す本実施例のように、覆工型枠4の長手方向の左右両側の底部近傍に圧入孔3・3が各々設けられ、この左右の圧入孔3・3の各々に分岐した圧送管2・2が接続され、自己充填コンクリート5が一定量毎に間欠的に左右交互に切り替えて圧送充填される構成の場合、左右の圧入孔3の内の一方の圧入孔3に対して圧送を行っている際における圧力値から、他方の圧送を停止している圧入孔3に接続する圧送管2に配設した圧力センサにより計測した圧力値である自己充填コンクリートの自重圧を除くことにより補正後圧力値を求めることができる。
【0049】
次に下記の諸条件にて図1に示す覆工型枠(高さ約6m)に自己充填コンクリートを圧送充填し検証した。
【0050】
[自己充填コンクリートの配合]
W/C :41.6%
s/a :48.7%
空気量 : 4.5%
水 :170kg/m
普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製、密度3.15g/cm):409kg/m
山砂(茨城県行方市産、表乾密度2.58g/cm):576kg/m
砕砂(栃木県佐野市会沢産、表乾密度2.69g/cm):257kg/m
2005砕石(茨城県つくば市産、表乾密度2.69g/cm):904kg/m
高性能AE減水剤 標準形(I種)シーカメント(登録商標)1100NT V(日本シーカ社製、ポリカルボン酸系化合物と増粘成分):6.95kg/m
AE剤(I種)フローリックAE400(フローリック社製、ロジン系界面活性剤:0.002kg/m
AE剤(I種)シーカ(登録商標)AER-50(日本シーカ社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩):0.006kg/m
【0051】
上記配合の自己充填コンクリートは、土木学会高流動コンクリート設計・施工指針(案)に規定される自己充填ランク3の条件(スランプフロー:600±50mm、U形充填高さ・障害なし:300mm)を目標値とした。
自己充填コンクリートは1バッチ当り1.5mを練り混ぜ、1台のアジテータ車に2バッチ分3mを積み込み、実験用の覆工型枠に対して2台用意した。尚、運搬時間は約15分であり、実験場所に到着後にスランプフロー試験及び空気量測定等を実施してフレッシュ性状を確認した後に圧送充填を行った。
【0052】
自己充填コンクリートの圧送はコンクリートポンプ車(極東開発工業社製PY100-26H)を用いた。
圧送管は125A(5B)管を用いた。また、覆工型枠の圧入孔の大きさはφ130mmとした。
コンクリートポンプ車のコンクリートポンプ1から圧入孔3までの圧送管2の全長(水平換算距離)は35.5mとした。
圧送充填のための吐出量は20m/hとした。
【0053】
圧力センサ6の配設位置構成は下記(1)~(3)に示す通りである(図2参照)。
(1)圧送管(左)2Aに配設される第1圧力センサ(左)61A・圧送管(右)2Bに配設される第1圧力センサ(右)61Bが、各々のコンクリートポンプ1からの距離が30mの位置、即ち、圧送管2の全長35.5mの4/5以上である位置に配設される構成。
(2)第2圧力センサ62が、コンクリートポンプ1からの距離が17.5mの位置、即ち、圧送管2の全長35.5mの2/5~3/5の範囲内である位置に配設される構成。
(3)第3圧力センサ63が、コンクリートポンプ1からの距離が9.5mの位置、即ち、圧送管2の全長35.5mの1/5~2/5の範囲内である位置に配設される構成。
【0054】
覆工型枠4への自己充填コンクリート5の圧送充填を行い、圧力センサ6によって圧送管2内の圧力値を計測し、充填完了を判定するまでの経過を示す各データについて図3図13に示す。
【0055】
図3は、圧送管2に配設した圧力センサ6によって計測された圧力値(平均圧力)の時間毎の変化を示すグラフである。充填完了は充填開始から11650秒後(3時間14分10秒後)である。
図3から、全ての圧力センサ6(61A・61B、62、63)において時間経過とともに圧送管2内の平均圧力が徐々に大きくなっていることが判る。
【0056】
図4は、図3に示す圧力値の変化の内、圧送開始から700秒(11分40秒)~800秒(13分20秒)時点における圧力値を示すグラフである。
図4から、この時点における圧送管2の平均圧力(10ストローク)が、第1圧力センサ(右)61Bは0.0295MPa、第2圧力センサ62は0.0448MPa、第3圧力センサ63は0.1291MPaを示し、また、ピーク圧力が、第1圧力センサ(右)61Bは0.0392MPa、第2圧力センサ62は0.0749MPa、第3圧力センサ63は0.1538MPaを示している。
【0057】
図5は、図3に示す圧力値の変化の内、圧送開始から11450秒(3時間10分50秒)~11650秒(3時間14分10秒)時点における圧力値を示すグラフである。
図5から、この時点における圧送管2の平均圧力(10ストローク)が、第1圧力センサ(右)61Bは0.0585MPa、第2圧力センサ62は0.0970MPa、第3圧力センサ63は0.2092MPaを示し、また、ピーク圧力が、第1圧力センサ(右)61Bは0.07730MPa、第2圧力センサ62は0.14120MPa、第3圧力センサ63は0.33180MPaを示している。
【0058】
図6は、圧送管2の三カ所に配設した圧力センサによって計測された圧力値の内、圧送開始から700秒(11分40秒)、4700秒(1時間18分20秒)、11450秒(3時間10分50秒)の時点における圧力値(平均圧力と最大圧力)の各々を示すグラフである。
図6から、コンクリートポンプ1に近い方が圧力が高い傾向がみられることがわかる。また、圧送時間が長いほど圧送にかかる圧力が高くなることがわかる。
【0059】
図7は、充填完了時点付近の圧力値の波形を示すグラフである。
図8は、充填完了時点付近の補正圧力値(圧力センサによって計測される圧力値から自己充填コンクリートの自重圧を除く補正を行った値)の波形を示すグラフである。
【0060】
図9は、圧送初期の圧力値を1とした時の圧送開始から700秒(11分40秒)、4700秒(1時間18分20秒)、11450秒(3時間10分50秒)、充填完了時の各時点における各圧力値の変化率を示すグラフである。
図9から、圧送初期の平均圧力値を1とした時、進行する充填と共に圧力値が上昇し、充填完了時点では前記1に対して4.5倍~8.5倍の範囲内、より詳細には7.2倍~8.5倍の範囲内である8.2倍となっていることがわかる。
【0061】
図10は、圧送初期の圧力値を1とした時の圧送開始から700秒(11分40秒)、4700秒(1時間18分20秒)、11450秒(3時間10分50秒)、充填完了時、の各時点における各補正圧力値(圧力センサによって計測される圧力値から自己充填コンクリートの自重圧を除く補正を行った値)の変化率を示すグラフである。
図10から、圧送初期の補正後平均圧力値を1とした時、進行する充填と共に圧力値が上昇し、充填完了時点では前記1に対して2.1倍~3.5倍の範囲内、より詳細には2.6倍~3.5倍の範囲内である3.4倍となっていることがわかる。
【0062】
図11は、左右の圧入孔3に対する圧送を左右交互に間欠的に切り替えて行った際の圧送を停止した時の圧力センサ6により計測した圧力値である自己充填コンクリート5の自重圧の時間毎の変化を示すグラフである。
この圧送途中において計測した自重圧の値を用いることで補正圧力値を得ることができる。
【0063】
図12は、圧送管2の三カ所に配設した圧力センサ6によって計測された圧力値において、充填完了直前の圧力値を1とした時の充填完了時の各圧力値の変化率を示すグラフである。
図12から、圧入孔3に近付くにしたがって変化率が小さくなることがわかる。
【0064】
図13は、圧送管2の三カ所に配設した圧力センサによって計測された圧力値において、充填完了直前の補正圧力値(圧力センサによって計測される圧力値から自己充填コンクリートの自重圧を除く補正を行った値)を1とした時の充填完了時の各圧力値の変化率を示すグラフである。
図13から、自重圧を考慮した補正圧力値から圧力センサ6の配設位置にかかわらず変化率が同程度となることがわかる。
【0065】
以上、本発明に係る覆工コンクリートの打込みシステム及び覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法について実施例に基づき説明したが、本発明は上記構成に限定されず本発明の範囲内において他の態様を採ることもできる。
【0066】
例えば、図1に示す覆工型枠4のように、長手方向の左右両側の底部近傍に圧入孔3・3を各々設け、この左右の圧入孔3・3の各々に圧送管2(2A・2B)を接続し、自己充填コンクリート5を一定量毎に間欠的に左右交互に切り替えて圧送充填する際に、左右のいずれか一方の圧送時の圧送した自己充填コンクリート5の量と、他方の圧送を停止した時の圧力センサ6により計測した圧力値である自己充填コンクリート5の自重圧と、から覆工型枠4内の充填進行具合を判定する構成とすることもできる。
即ち、充填完了時点ではなく、充填開始から完了に至るまでの途中における充填状況を把握することができる。この途中経過が把握できることによって、いつくらいに充填完了するか等の予測が可能となり、充填完了の判定がより容易となる。
【0067】
充填完了時点ではなく、充填開始から完了に至るまでの途中における充填状況を把握する更に他の構成としては、例えば、図14に示すように、覆工型枠4の底部近傍から頂部近傍にかけての高さ方向の複数箇所に加速度計12を取り付け、充填中の覆工型枠4への骨材の衝突によって生じる振動を計測することにより覆工型枠4内の充填進行具合を判定する構成を挙げることができる。
かかる構成によれば、覆工型枠4内に自己充填コンクリート5を充填する過程において、該自己充填コンクリート5に含有する骨材が覆工型枠4に衝突することによって生じる振動を当該位置に配設されている加速度計12が検知して計測することによって、この検知計測した加速度計12の配設位置まで自己充填コンクリート5が充填されていることを判定することができる。加速度計12は覆工型枠4の底部近傍から頂部近傍にかけての高さ方向の複数箇所に配設されているため、自己充填コンクリート5の圧送充填の進行具合を判定することができる。従って、自己充填コンクリート5の充填中から充填完了時期に到達するまで的確に判定することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 コンクリートポンプ
2 圧送管
2A 圧送管(左)
2B 圧送管(右)
21 切替弁
3 圧入孔
4 覆工型枠
5 自己充填コンクリート
6 圧力センサ
61A 第1圧力センサ(左)
61B 第1圧力センサ(右)
62 第2圧力センサ
63 第3圧力センサ
7 アジテータ車
8 地山
9 打込み空間
10 データロガー
11 ケーブル
12 加速度計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14