(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171330
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】電車線路用架線金及び電車線路用架線金具取付方法
(51)【国際特許分類】
B60M 1/23 20060101AFI20241204BHJP
F16B 33/02 20060101ALI20241204BHJP
F16B 35/00 20060101ALI20241204BHJP
F16B 2/12 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B60M1/23 E
F16B33/02 Z
F16B35/00 Q
F16B35/00 T
F16B2/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024085977
(22)【出願日】2024-05-28
(31)【優先権主張番号】P 2023088265
(32)【優先日】2023-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】511025411
【氏名又は名称】株式会社NejiLaw
(71)【出願人】
【識別番号】521108456
【氏名又は名称】株式会社NejiLaw MO IP Innovation
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596116053
【氏名又は名称】ジェイアール東海商事株式会社
(72)【発明者】
【氏名】道脇 裕
(72)【発明者】
【氏名】寺田 泰隆
(72)【発明者】
【氏名】神矢 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】大村 公則
【テーマコード(参考)】
3J022
【Fターム(参考)】
3J022DA15
3J022EA42
3J022EB14
3J022ED22
3J022FB12
3J022GA12
(57)【要約】
【課題】ねじ体を締め付けることで電車線路用架線を挟持する電車線路用架線金具において、電車線路用架線が振動等した場合には、振動疲労や、振動によるねじ体の緩みが生じる虞がある。
【解決手段】第一挟持部2aと収容部5とを有する第一挟持体2と、第二挟持部3aと、内部に雄ねじ部30bを挿入し得る挿入孔3cを有し、収容部5に収容し得る挿嵌部6と、挿入孔3cと同軸で第一螺旋溝31を螺合し得る第一螺旋条12が形成されて成る第一雌ねじ部11と、を有する第二挟持体3とを備え、雄ねじ部30bと第一雌ねじ部11とを相対螺転させることで、挿嵌部6を収容部5内において進退させ得るように構成する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一挟持部と第二挟持部とから成る一対の挟持部の間に位置された、電車線路用架線を挟持する電車線路用架線金具であって、
適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一螺旋溝が形成されて成る雄ねじ部を有する雄ねじ体と、
前記第一挟持部と、収容部と、を有する第一挟持体と、
前記第二挟持部と、内部に前記雄ねじを挿入し得る挿入孔を有し、前記収容部に収容し得る挿嵌部と、該挿入孔と同軸で前記第一螺旋溝を螺合し得る第一螺旋条が形成されて成る第一雌ねじ部と、を有する第二挟持体とを備え、
前記雄ねじ部と前記第一雌ねじ部とを相対螺転させることで、前記挿嵌部を前記収容部内において進退させ得るように構成されることを特徴とする電車線路用架線金具。
【請求項2】
第一挟持部と第二挟持部とから成る一対の挟持部の間に位置された、電車線路用架線を挟持する電車線路用架線金具であって、
適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一螺旋溝が形成されて成る雄ねじ部を有する雄ねじ体と、
前記第一挟持部と、内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔を有し、第二挟持体に形成されて成る収容部に収容し得る挿嵌部を有する第一挟持体と、
前記第二挟持部と、収容部が形成され、前記挿入孔と同軸で前記第一螺旋溝を螺合し得る第一螺旋条が形成されて成る第一雌ねじ部と、を有する第二挟持体とを備え、
前記雄ねじ部と前記第一雌ねじ部とを相対螺転させることで、前記挿嵌部を前記収容部内において進退させ得るように構成させることを特徴とする電車線路用架線金具。
【請求項3】
前記雄ねじ体と螺合し得る雌ねじ体を更に備え、
前記雄ねじ体の前記雄ねじ部には、前記第一螺旋溝が形成されると共に、該第一螺旋溝とは相異なるリード角及び/リード方向に設定された第二螺旋溝とが、軸部の外周面における同一領域内に重複して、形成され、
前記第一雌ねじ部は、前記雄ねじ体の前記第一螺旋溝又は前記第二螺旋溝の一方に螺合し得る第一螺旋条が形成されており、
前記雌ねじ体は、前記雄ねじ体の第一螺旋溝又は第二螺旋溝の他方に螺合し得る第二螺旋条が形成されて成る第二雌ねじ部を有し、
前記挿嵌部が、前記収容部に収容された状態において、前記第一雌ねじ部及び前記第二雌ねじ部が、それぞれ前記雄ねじ体の雄ねじ部に螺合されることを特徴とする請求項1又は2記載の電車線路用架線金具。
【請求項4】
前記雌ねじ体は、貫通孔を有する板状部材であり、
前記雌ねじ体の前記第二雌ねじ部は、前記貫通孔から該第二雌ねじ部の軸心に向かって突出して配設された一つ以上の板片で構成され、
前記板片の先端部が、断続的又は連続的な螺旋状の前記第二螺旋条を成し、且つ該板片の先端部の成す該第二螺旋条が前記第二挟持体の挿入孔に形成された前記第一雌ねじ部の前記第一螺旋条のリード角に対して有限の傾斜角を有することを特徴とする、請求項3記載の電車線路用架線金具。
【請求項5】
前記第二挟持体は、前記雌ねじ体を着脱可能に案内する案内部を有し、
前記雌ねじ体は、前記案内部において案内された状態で、前記第一雌ねじ部及び前記第二雌ねじ部が、それぞれ前記雄ねじ体の雄ねじ部に螺合し得ることを特徴とする請求項4記載の電車線路用架線金具。
【請求項6】
第一挟持部と第二挟持部とから成る一対の挟持部の間に位置された、電車線路用架線を挟持する電車線路用架線金具であって、
適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一螺旋溝と、該第一螺旋溝とは相異なるリード角及び/リード方向に設定された第二螺旋溝とが、軸部の外周面における同一領域内に重複して、形成されて成る雄ねじ部を有する雄ねじ体と、
前記雄ねじ体と螺合し得る雌ねじ体と、
前記第一挟持部と、内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔とを有する第一挟持体と、
前記第二挟持部と、内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔と、前記雌ねじ体を装着する案内部とを有する第二挟持体と、を備え
第二挟持体が有する前記挿入孔は、前記雄ねじ体の前記第一螺旋溝又は前記第二螺旋溝の一方に螺合し得る第一螺旋条が形成されて成る第一雌ねじ部を有し、
前記雌ねじ体は、前記雄ねじ体の第一螺旋溝又は第二螺旋溝の他方に螺合し得る第二螺旋条が形成されて成る第二雌ねじ部を有し、
前記雌ねじ体が、前記案内部に装着された状態において、前記雄ねじ部と前記第一雌ねじ部とを相対螺転させることで、記第一雌ねじ部及び前記第二雌ねじ部が、それぞれ前記雄ねじ体の雄ねじ部に螺合されることを特徴とする電車線路用架線金具。
【請求項7】
前記第二挟持体は、前記雌ねじ体が前記案内部に案内された状態において、前記雌ねじ体と係合する係合部を更に有することを特徴とする請求項5又は請求項6記載の電車線路用架線金具。
【請求項8】
第一挟持部と第二挟持部とから成る一対の挟持部の間に位置された、電車線路用架線を挟持する電車線路用架線金具であって、
適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一螺旋溝が形成されて成る雄ねじ部を有する雄ねじ体と、
前記第一挟持部と、収容部を有し、当該収容部の内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔が形成された第一本体部とを備える第一挟持体と、
前記第二挟持部と、前記収容部に収容し得る挿嵌部を有し、当該挿嵌部の内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔が形成された第二本体部とを備える第二挟持体とで構成され、
前記第一挟持体は、第一部材と第二部材とで構成され、前記第一部材には、一端面側に前記収容部が形成されて成り、他端面側に受部が形成されて成り、
前記第二部材には、前記受部と嵌まり合う凹部が形成されて成り、
前記第二挟持体の前記第二本体部の挿入孔に、該挿入孔と同軸で前記前記第一螺旋溝を螺合し得る第一螺旋条が形成されて成る第一雌ねじ部が形成されて成り、
前記第二挟持体の前記挿嵌部は、前記第一部材と前記第二部材とが嵌合して構成される前記第一挟持体の前記収容部に収容された状態において、前記雄ねじ部と前記第一雌ねじ部とを相対螺転させることで、前記挿嵌部を前記収容部内において進退させ得るように構成させることを特徴とする電車線路用架線金具。
【請求項9】
第一挟持部と第二挟持部とから成る一対の挟持部の間に位置された、電車線路用架線を挟持する電車線路用架線金具であって、
適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一螺旋溝が形成されて成る雄ねじ部を有する雄ねじ体と、
前記第一挟持部と、第二挟持体に形成されて成る収容部に収容し得る挿嵌部を有し、当該挿嵌部の内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔を有する第一本体部とを有する第一挟持体と、
前記第二挟持部と、前記挿嵌部を収容し得る収容部を有し、当該収容部の内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔を有する第二本体部とを備える第二挟持体とで構成され、
前記第一挟持体は、第一部材と第二部材とで構成され、前記第一部材には、一端面側に前記挿嵌部が形成されて成り、他端面側に受部が形成されて成り、
前記第二部材には、前記受部と嵌まり合う凹部が形成されて成り、
前記第二挟持体の前記第二本体部の挿入孔に、該挿入孔と同軸で前記第一螺旋溝を螺合し得る第一螺旋条が形成されて成る第一雌ねじ部が形成されて成り、
前記第一挟持体の前記挿嵌部は、前記第一部材と第二部材とが嵌合し、且つ前記第二挟持体の前記収容部に収容された状態において、前記雄ねじ部と前記第一雌ねじ部とを相対螺転させることで、前記挿嵌部を前記収容部内において進退させ得るように構成させることを特徴とする電車線路用架線金具。
【請求項10】
前記第一部材は、前記第一本体部の一端側に環状部材と接続する略円柱形状の接続部を、他端側には第一挟持部を有し、
前記接続部は、前記環状部材の内径より若干小さな外径を有する小径部と、前記環状部材の内径より大きな外径を有する大径部とで構成され、
前記環状部材が前記接続部に存する場合において、前記第一部材と前記第二部材とが嵌合した状態及び又は前記第一部材と前記第二挟持体とが組合わされた状態で、前記環状部材の前記小径部からの抜けを防止することを特徴とする請求項8又は9記載の電車線路用架線金具。
【請求項11】
前記接続部は、当該接続部内部に前記大径部の上端側から開口し、下端側を底面とする空洞部を有することを特徴とする請求項8又は9記載の電車線路用架線金具。
【請求項12】
前記接続部は、前記空洞部の底面において、前記上端側に形成された開口より小さい水抜き穴を有することを特徴とする請求項11記載の電車線路用架線金具。
【請求項13】
雄ねじ部を有する雄ねじ体と、内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔を有し、一端面側に収容部が他端面側に受部が形成された第一部材と前記受部と嵌り合う凹部とが形成された第二部材とで構成される第一挟持体と、内部に前記雄ねじ部と螺合し得る雌ねじ部が形成された挿入孔を有し、前記収容部に収容し得る挿嵌部を有する第二挟持体とを備えた電車線路用架線金具を、曲線引金具の取付金具に取付ける電車線路用架線金具取付方法であって、前記第一部材を前記取付金具の環状部材に挿入する工程と、
前記環状部材を挟んで当該環状部材の一端側に前記第一部材の大径部が存し、他端側に前記第一部材の収容部が存する状態において、前記挿嵌部を前記収容部に収容し、且つ前記第二部材を前記第一部材と嵌合させる工程と、
前記雄ねじ体を前記第一挟持体側から挿入し、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とを相対螺転させて、前記挿嵌部を前記収容部内において進退させ得ることで、電車線路用架線金具を取付ける工程と、
を有することを特徴とする電車線路用架線金具取付方法。
【請求項14】
雄ねじ部を有する雄ねじ体と、内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔を有し、一端面側に挿嵌部が他端面側に受部が形成された第一部材と前記受部と嵌り合う凹部とが形成された第二部材とで構成される第一挟持体と、内部に前記雄ねじ部と螺合し得る雌ねじ部が形成された挿入孔を有し、前記挿嵌部を収容し得る収容部を有する第二挟持体とを備えた電車線路用架線金具を、曲線引金具の取付金具に取付ける電車線路用架線金具取付方法であって、
前記第一部材を前記取付金具の環状部材に挿入する工程と、
前記環状部材を挟んで当該環状部材の一端側に前記第一部材の大径部が存し、他端側に前記第一部材の挿嵌部が存する状態において、前記収容部は前記挿嵌部を収容し、且つ前記第二部材を前記第一部材と嵌合させる工程と、
前記雄ねじ体を第一挟持体側から挿入し、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とを相対螺転させて、前記挿嵌部を前記収容部内において進退させ得ることで、電車線路用架線金具を取付ける工程と、
を有することを特徴とする電車線路用架線金具取付方法。
【請求項15】
雄ねじ部を有する雄ねじ体と、内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔を有し、一端面側に収容部が他端面側に受部が形成された第一部材と前記受部と嵌り合う凹部とが形成された第二部材とで構成される第一挟持体と、内部に前記雄ねじ部と螺合し得る雌ねじ部が形成された挿入孔を有し、前記収容部に収容し得る挿嵌部を有する第二挟持体とを備えた電車線路用架線金具を、曲線引金具の取付金具に取付ける電車線路用架線金具取付方法であって、
前記第一部材を前記取付金具の環状部材に挿入する工程と、
前記環状部材を挟んで当該環状部材の一端側に前記第一部材の大径部が存し、他端側に前記第一部材の収容部が存する状態において、前記挿嵌部を前記収容部に収容し、且つ第二部材を第一部材と嵌合させることにより、第一挟持部と第二挟持部とで電車線路用架線を挟持する工程と、
前記雄ねじ体を第一挟持体側から挿入し、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とを相対螺転させて、前記挿嵌部を前記収容部内において進退させ得ることで、電車線路用架線金具を取付ける工程と、
を有することを特徴とする電車線路用架線金具取付方法。
【請求項16】
雄ねじ部を有する雄ねじ体と、内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔を有し、一端面側に挿嵌部が他端面側に受部が形成された第一部材と前記受部と嵌り合う凹部とが形成された第二部材とで構成される第一挟持体と、内部に前記雄ねじ部と螺合し得る雌ねじ部が形成された挿入孔を有し、前記挿嵌部を収容し得る収容部を有する第二挟持体と、を備えた電車線路用架線金具を、曲線引金具の取付金具に取付ける電車線路用架線金具取付方法であって、
前記第一部材を前記取付金具の環状部材に挿入する工程と、
前記環状部材を挟んで当該環状部材の一端側に前記第一部材の大径部が存し、他端側に第一部材の挿嵌部が存する状態において、前記第二挟持体の収容部は前記挿嵌部を収容し、且つ前記第二部材を前記第一部材と嵌合させることで、前記第一挟持部と前記第二挟持部とで電車線路用架線を挟持する工程と、
前記雄ねじ体を前記第一挟持体側から挿入し、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とを相対螺転させて、前記挿嵌部を前記収容部内において進退させ得ることで、電車線路用架線金具を取付ける工程と、
を有することを特徴とする電車線路用架線金具取付方法。
【請求項17】
雄ねじ部を有する雄ねじ体と、内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔を有し、一端面側に収容部が他端面側に受部が形成された第一部材と前記受部と嵌り合う凹部とが形成された第二部材とで構成される第一挟持体と、内部に前記雄ねじ部と螺合し得る雌ねじ部が形成された挿入孔を有し、前記収容部に収容し得る挿嵌部を有する第二挟持体とを備え、
前記第一部材は、環状部材と接続する略円柱形状の接続部を有し、前記接続部は、前記環状部材の内径より若干小さな外径を有する小径部と、前記環状部材の内径より大きな外径を有する大径部とで構成された電車線路用架線金具を、曲線引金具の取付金具に取り付ける電車線路用架線金具取付方法であって、
前記第一部材を、前記環状部材の上方から挿入し、前記第一部材の前記大径面と前記環状部材の上端面とを当接する位置まで挿入する工程と、
前記第二挟持体の前記挿嵌部を前記第一部材の前記収容部に収容し、且つ前記第二部材を前記第一部材と嵌合させる工程と、
前記雄ねじ体を前記第一挟持体側から挿入し、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とを相対螺転させて、前記挿嵌部を前記収容部内において進退させ得ることで、電車線路用架線金具を取り付ける工程と、
を有することを特徴とする電車線路用架線金具取付方法。
【請求項18】
雄ねじ部を有する雄ねじ体と、内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔を有し、一端面側に挿嵌部が他端面側に受部が形成された第一部材と前記受部と嵌り合う凹部とが形成された第二部材とで構成される第一挟持体と、内部に前記雄ねじ部と螺合し得る雌ねじ部が形成された挿入孔を有し、前記挿嵌部を収容し得る収容部を有する第二挟持体と、
前記第一部材は、環状部材と接続する略円柱形状の接続部を有し、前記接続部は、前記環状部材の内径より若干小さな外径を有する小径部と、前記環状部材の内径より大きな外径を有する大径部とで構成された電車線路用架線金具を、曲線引金具の取付金具に取り付ける電車線路用架線金具取付方法であって、
前記第一部材を、前記環状部材の上方から挿入し、前記第一部材の前記大径面と前記環状部材の上端面とを当接する位置まで挿入する工程と、
前記第二挟持体収容部は前記第一部材の前記挿嵌部を収容し、且つ前記第二部材を前記第一部材と嵌合させる工程と、
前記雄ねじ体を前記第一挟持体側から挿入し、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とを相対螺転させて、前記挿嵌部を前記収容部内において進退させ得ることで、電車線路用架線金具を取り付ける工程と、
を有することを特徴とする電車線路用架線金具取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車線路用架線金具及び電車線路用架線金具取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電車線用のハンガイヤー、曲線引金具、コネクタ金具等に使用されるねじ式イヤーは、一対のイヤー片と、該イヤー片を貫通し、イヤー片を閉じ方向に締結するボルトとにより構成されている。
例えば、特許文献1には、一対のイヤー片間を貫通して両イヤー片間を開閉自在に締め付ける締め付けボルトを備える電車線路用ハンガイヤーが開示されている。特許文献2には、一対のイヤー片間を貫通して両イヤー片間を開閉自在に締め付ける締め付けボルトを備える電車線路用曲線引金具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5371108号
【特許文献2】実開昭59-69025
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ねじ体を締め付けることで電車線路用架線を挟持する電車線路用架線金具において、電車線路用架線が振動等した場合には、イヤー片間における剪断力による振動疲労や、振動によるねじ体の緩みが生じる虞がある。例えば、電車線を挟持した場合は、電車の通過時に電車線の振動に伴い、電車線路用架線金具も振動する。
そのため電車線路用架線金具において、イヤー片間における剪断力による振動疲労や振動によるボルトの緩みへの対策が必要となる。
【0005】
また二つ目の課題として、特許文献2(
図5乃至
図7参照)に開示されている曲線引金具においては、曲線引金具を構成する部品数が多く、且つ構造の複雑さからトロリ線等の張替え作業等において、施工工数が多い。
ここで
図37(B)を用いて、従来の曲線引金具におけるトロリ線Tの挟持手順を示す。従来の曲線引金具900の主な構成部品は、イヤー2400は、イヤー片(2402、2403)、ボルト(2410、2440)及びリング(2430)で構成されている。
まずイヤー取付金具950をイヤー2400に接続するには、イヤー2402及び2403のボルト2410による締結によりトロリ線Tを挟持し(
図37(B)(st1)(st2))、その後にイヤー取付金具950とイヤー(2402、2403)とを、更にリング2430とボルト2440を用いて締結する(
図37(B)(st3)乃至(st6))。そのため少なくとも2回以上のボルト締結作業が必要となる。
更にイヤー2400を構成するイヤー片(2402、2403)は、環状部材951の下方から上向きに挿設しなければならず、作業的には、一方の手で下側から挿設したイヤー片(2402、2403)を保持しながら他方の手で環状部材951の上方から突出した本体部上部にリング(2430)を螺合しなければならず、作業が煩雑で、両手を使わなければならなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明は、第一挟持部と第二挟持部とから成る一対の挟持部の間に位置された、電車線路用架線を挟持する電車線路用架線金具であって、適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一螺旋溝が形成されて成る雄ねじ部を有する雄ねじ体と、前記第一挟持部と、収容部と、を有する第一挟持体と、前記第二挟持部と、内部に前記雄ねじを挿入し得る挿入孔を有し、前記収容部に収容し得る挿嵌部と、該挿入孔と同軸で前記第一螺旋溝を螺合し得る第一螺旋条が形成されて成る第一雌ねじ部と、を有する第二挟持体とを備え、前記雄ねじ部と前記第一雌ねじ部とを相対螺転させることで、前記挿嵌部を前記収容部内において進退させ得るように構成されることを特徴とする電車線路用架線金具である。
【0007】
また、前記課題を解決するための本発明は、第一挟持部と第二挟持部とから成る一対の挟持部の間に位置された、電車線路用架線を挟持する電車線路用架線金具であって、適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一螺旋溝が形成されて成る雄ねじ部を有する雄ねじ体と、前記第一挟持部と、内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔を有し、第二挟持体に形成されて成る収容部に収容し得る挿嵌部を有する第一挟持体と、前記第二挟持部と、収容部が形成され、前記挿入孔と同軸で前記第一螺旋溝を螺合し得る第一螺旋条が形成されて成る第一雌ねじ部と、を有する第二挟持体とを備え、前記雄ねじ部と前記第一雌ねじ部とを相対螺転させることで、前記挿嵌部を前記収容部内において進退させ得るように構成させることを特徴とする電車線路用架線金具である。
【0008】
また、本発明の前記電車線路用架線金具は、前記雄ねじ体と螺合し得る雌ねじ体を更に備え、前記雄ねじ体の前記雄ねじ部には、前記第一螺旋溝が形成されると共に、該第一螺旋溝とは相異なるリード角及び/リード方向に設定された第二螺旋溝とが、軸部の外周面における同一領域内に重複して、形成され、前記第一雌ねじ部は、前記雄ねじ体の前記第一螺旋溝又は前記第二螺旋溝の一方に螺合し得る第一螺旋条が形成されており、前記雌ねじ体は、前記雄ねじ体の第一螺旋溝又は第二螺旋溝の他方に螺合し得る第二螺旋条が形成されて成る第二雌ねじ部を有し、前記挿嵌部が、前記収容部に収容された状態において、前記第一雌ねじ部及び前記第二雌ねじ部が、それぞれ前記雄ねじ体の雄ねじ部に螺合されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の前記電車線路用架線金具における、前記雌ねじ体は、貫通孔を有する板状部材であり、前記雌ねじ体の前記第二雌ねじ部は、前記貫通孔から該第二雌ねじ部の軸心に向かって突出して配設された一つ以上の板片で構成され、前記板片の先端部が、断続的又は連続的な螺旋状の前記第二螺旋条を成し、且つ該板片の先端部の成す該第二螺旋条が前記第二挟持体の挿入孔に形成された前記第一雌ねじ部の前記第一螺旋条のリード角に対して有限の傾斜角を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の前記電車線路用架線金具における、前記第二挟持体は、前記雌ねじ体を着脱可能に案内する案内部を有し、前記雌ねじ体は、前記案内部において案内された状態で、前記第一雌ねじ部及び前記第二雌ねじ部が、それぞれ前記雄ねじ体の雄ねじ部に螺合し得ることを特徴とする。
【0011】
また、前記課題を解決するための本発明は、第一挟持部と第二挟持部とから成る一対の挟持部の間に位置された、電車線路用架線を挟持する電車線路用架線金具であって、適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一螺旋溝と、該第一螺旋溝とは相異なるリード角及び/リード方向に設定された第二螺旋溝とが、軸部の外周面における同一領域内に重複して、形成されて成る雄ねじ部を有する雄ねじ体と、前記雄ねじ体と螺合し得る雌ねじ体と、前記第一挟持部と、内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔とを有する第一挟持体と、前記第二挟持部と、内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔と、前記雌ねじ体を装着する案内部とを有する第二挟持体と、を備え、第二挟持体が有する前記挿入孔は、前記雄ねじ体の前記第一螺旋溝又は前記第二螺旋溝の一方に螺合し得る第一螺旋条が形成されて成る第一雌ねじ部を有し、前記雌ねじ体は、前記雄ねじ体の第一螺旋溝又は第二螺旋溝の他方に螺合し得る第二螺旋条が形成されて成る第二雌ねじ部を有し、前記雌ねじ体が、前記案内部に装着された状態において、前記雄ねじ部と前記第一雌ねじ部とを相対螺転させることで、記第一雌ねじ部及び前記第二雌ねじ部が、それぞれ前記雄ねじ体の雄ねじ部に螺合されることを特徴とする電車線路用架線金具である。
【0012】
また、本発明の前記電車線路用架線金具における、前記第二挟持体は、前記雌ねじ体が前記案内部に案内された状態において、前記雌ねじ体と係合する係合部を更に有することを特徴とする。
【0013】
また、前記課題を解決するための本発明は、第一挟持部と第二挟持部とから成る一対の挟持部の間に位置された、電車線路用架線を挟持する電車線路用架線金具であって、適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一螺旋溝が形成されて成る雄ねじ部を有する雄ねじ体と、前記第一挟持部と、収容部を有し、当該収容部の内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔が形成された第一本体部とを備える第一挟持体と、前記第二挟持部と、前記収容部に収容し得る挿嵌部を有し、当該挿嵌部の内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔が形成された第二本体部とを備える第二挟持体とで構成され、前記第一挟持体は、第一部材と第二部材とで構成され、前記第一部材には、一端面側に前記収容部が形成されて成り、他端面側に受部が形成されて成り、前記第二部材には、前記受部と嵌まり合う凹部が形成されて成り、前記第二挟持体の前記第二本体部の挿入孔に、該挿入孔と同軸で前記前記第一螺旋溝を螺合し得る第一螺旋条が形成されて成る第一雌ねじ部が形成されて成り、前記第二挟持体の前記挿嵌部は、前記第一部材と前記第二部材とが嵌合して構成される前記第一挟持体の前記収容部に収容された状態において、前記雄ねじ部と前記第一雌ねじ部とを相対螺転させることで、前記挿嵌部を前記収容部内において進退させ得るように構成させることを特徴とする電車線路用架線金具である。
【0014】
また、前記課題を解決するための本発明は、第一挟持部と第二挟持部とから成る一対の挟持部の間に位置された、電車線路用架線を挟持する電車線路用架線金具であって、適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一螺旋溝が形成されて成る雄ねじ部を有する雄ねじ体と、前記第一挟持部と、第二挟持体に形成されて成る収容部に収容し得る挿嵌部を有し、当該挿嵌部の内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔を有する第一本体部とを有する第一挟持体と、前記第二挟持部と、前記挿嵌部を収容し得る収容部を有し、当該収容部の内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔を有する第二本体部とを備える第二挟持体とで構成され、前記第一挟持体は、第一部材と第二部材とで構成され、前記第一部材には、一端面側に前記挿嵌部が形成されて成り、他端面側に受部が形成されて成り、前記第二部材には、前記受部と嵌まり合う凹部が形成されて成り、前記第二挟持体の前記第二本体部の挿入孔に、該挿入孔と同軸で前記第一螺旋溝を螺合し得る第一螺旋条が形成されて成る第一雌ねじ部が形成されて成り、前記第一挟持体の前記挿嵌部は、前記第一部材と第二部材とが嵌合し、且つ前記第二挟持体の前記収容部に収容された状態において、前記雄ねじ部と前記第一雌ねじ部とを相対螺転させることで、前記挿嵌部を前記収容部内において進退させ得るように構成させることを特徴とする電車線路用架線金具である。
【0015】
また、前記課題を解決するための本発明は、第一挟持部と第二挟持部とから成る一対の挟持部の間に位置された、電車線路用架線を挟持する電車線路用架線金具であって、適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一螺旋溝が形成されて成る雄ねじ部を有する雄ねじ体と、前記第一挟持部と、第二挟持体に形成されて成る収容部に収容し得る挿嵌部を有し、当該挿嵌部の内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔を有する第一本体部とを有する第一挟持体と、 前記第二挟持部と、前記挿嵌部を収容し得る収容部を有し、当該収容部の内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔を有する第二本体部とを備える第二挟持体とで構成され、前記第一挟持体は、第一部材と第二部材とで構成され、前記第一部材には、一端面側に前記挿嵌部が形成されて成り、他端面側に受部が形成されて成り、前記第二部材には、前記受部と嵌まり合う凹部が形成されて成り、前記第二挟持体の前記第二本体部の挿入孔に、該挿入孔と同軸で前記第一螺旋溝を螺合し得る第一螺旋条が形成されて成る第一雌ねじ部が形成されて成り、前記第一挟持体の前記挿嵌部は、前記第一部材と第二部材とが嵌合し、且つ前記第二挟持体の前記収容部に収容された状態において、前記雄ねじ部と前記第一雌ねじ部とを相対螺転させることで、前記挿嵌部を前記収容部内において進退させ得るように構成させることを特徴とする電車線路用架線金具である。
【0016】
また、本発明の前記電車線路用架線金具における、前記第一部材は、前記第一本体部の一端側に環状部材と接続する略円柱形状の接続部を、他端側には第一挟持部を有し、前記接続部は、前記環状部材の内径より若干小さな外径を有する小径部と、前記環状部材の内径より大きな外径を有する大径部とで構成され、前記環状部材が前記接続部に存する場合において、前記第一部材と前記第二部材とが嵌合した状態及び又は前記第一部材と前記第二挟持体とが組合わされた状態で、前記環状部材の前記小径部からの抜けを防止することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の前記電車線路用架線金具における、前記接続部は、当該接続部内部に前記大径部の上端側から開口し、下端側を底面とする空洞部を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の前記電車線路用架線金具における、前記接続部は、前記空洞部の底面において、前記上端側に形成された開口より小さい水抜き穴を有することを特徴とする。
【0019】
また、前記課題を解決するための本発明は、雄ねじ部を有する雄ねじ体と、内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔を有し、一端面側に収容部が他端面側に受部が形成された第一部材と前記受部と嵌り合う凹部とが形成された第二部材とで構成される第一挟持体と、内部に前記雄ねじ部と螺合し得る雌ねじ部が形成された挿入孔を有し、前記収容部に収容し得る挿嵌部を有する第二挟持体とを備えた電車線路用架線金具を、曲線引金具の取付金具に取付ける電車線路用架線金具取付方法であって、前記第一部材を前記取付金具の環状部材に挿入する工程と、前記環状部材を挟んで当該環状部材の一端側に前記第一部材の大径部が存し、他端側に前記第一部材の収容部が存する状態において、前記挿嵌部を前記収容部に収容し、且つ前記第二部材を前記第一部材と嵌合させる工程と、前記雄ねじ体を前記第一挟持体側から挿入し、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とを相対螺転させて、前記挿嵌部を前記収容部内において進退させ得ることで、電車線路用架線金具を取付ける工程と、を有することを特徴とする電車線路用架線金具取付方法である。
【0020】
また、前記課題を解決するための本発明は、雄ねじ部を有する雄ねじ体と、内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔を有し、一端面側に挿嵌部が他端面側に受部が形成された第一部材と前記受部と嵌り合う凹部とが形成された第二部材とで構成される第一挟持体と、内部に前記雄ねじ部と螺合し得る雌ねじ部が形成された挿入孔を有し、前記挿嵌部を収容し得る収容部を有する第二挟持体とを備えた電車線路用架線金具を、曲線引金具の取付金具に取付ける電車線路用架線金具取付方法であって、前記第一部材を前記取付金具の環状部材に挿入する工程と、前記環状部材を挟んで当該環状部材の一端側に前記第一部材の大径部が存し、他端側に前記第一部材の挿嵌部が存する状態において、前記収容部は前記挿嵌部を収容し、且つ前記第二部材を前記第一部材と嵌合させる工程と、前記雄ねじ体を第一挟持体側から挿入し、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とを相対螺転させて、前記挿嵌部を前記収容部内において進退させ得ることで、電車線路用架線金具を取付ける工程と、を有することを特徴とする電車線路用架線金具取付方法である。
【0021】
また、前記課題を解決するための本発明は、雄ねじ部を有する雄ねじ体と、内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔を有し、一端面側に収容部が他端面側に受部が形成された第一部材と前記受部と嵌り合う凹部とが形成された第二部材とで構成される第一挟持体と、内部に前記雄ねじ部と螺合し得る雌ねじ部が形成された挿入孔を有し、前記収容部に収容し得る挿嵌部を有する第二挟持体とを備えた電車線路用架線金具を、曲線引金具の取付金具に取付ける電車線路用架線金具取付方法であって、前記第一部材を前記取付金具の環状部材に挿入する工程と、前記環状部材を挟んで当該環状部材の一端側に前記第一部材の大径部が存し、他端側に前記第一部材の収容部が存する状態において、前記挿嵌部を前記収容部に収容し、且つ第二部材を第一部材と嵌合させることにより、第一挟持部と第二挟持部とで電車線路用架線を挟持する工程と、前記雄ねじ体を第一挟持体側から挿入し、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とを相対螺転させて、前記挿嵌部を前記収容部内において進退させ得ることで、電車線路用架線金具を取付ける工程と、を有することを特徴とする電車線路用架線金具取付方法である。
【0022】
また、前記課題を解決するための本発明は、雄ねじ部を有する雄ねじ体と、内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔を有し、一端面側に挿嵌部が他端面側に受部が形成された第一部材と前記受部と嵌り合う凹部とが形成された第二部材とで構成される第一挟持体と、内部に前記雄ねじ部と螺合し得る雌ねじ部が形成された挿入孔を有し、前記挿嵌部を収容し得る収容部を有する第二挟持体と、を備えた電車線路用架線金具を、曲線引金具の取付金具に取付ける電車線路用架線金具取付方法であって、前記第一部材を前記取付金具の環状部材に挿入する工程と、前記環状部材を挟んで当該環状部材の一端側に前記第一部材の大径部が存し、他端側に第一部材の挿嵌部が存する状態において、前記第二挟持体の収容部は前記挿嵌部を収容し、且つ前記第二部材を前記第一部材と嵌合させることで、前記第一挟持部と前記第二挟持部とで電車線路用架線を挟持する工程と、前記雄ねじ体を前記第一挟持体側から挿入し、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とを相対螺転させて、前記挿嵌部を前記収容部内において進退させ得ることで、電車線路用架線金具を取付ける工程と、を有することを特徴とする電車線路用架線金具取付方法である。
【0023】
また、前記課題を解決するための本発明は、雄ねじ部を有する雄ねじ体と、内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔を有し、一端面側に収容部が他端面側に受部が形成された第一部材と前記受部と嵌り合う凹部とが形成された第二部材とで構成される第一挟持体と、内部に前記雄ねじ部と螺合し得る雌ねじ部が形成された挿入孔を有し、前記収容部に収容し得る挿嵌部を有する第二挟持体とを備え、前記第一部材は、環状部材と接続する略円柱形状の接続部を有し、前記接続部は、前記環状部材の内径より若干小さな外径を有する小径部と、前記環状部材の内径より大きな外径を有する大径部とで構成された電車線路用架線金具を、曲線引金具の取付金具に取り付ける電車線路用架線金具取付方法であって、前記第一部材を、前記環状部材の上方から挿入し、前記第一部材の前記大径面と前記環状部材の上端面とを当接する位置まで挿入する工程と、前記第二挟持体の前記挿嵌部を前記第一部材の前記収容部に収容し、且つ前記第二部材を前記第一部材と嵌合させる工程と、前記雄ねじ体を前記第一挟持体側から挿入し、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とを相対螺転させて、前記挿嵌部を前記収容部内において進退させ得ることで、電車線路用架線金具を取り付ける工程と、を有することを特徴とする電車線路用架線金具取付方法である。
【0024】
また、前記課題を解決するための本発明は、雄ねじ部を有する雄ねじ体と、内部に前記雄ねじ部を挿入し得る挿入孔を有し、一端面側に挿嵌部が他端面側に受部が形成された第一部材と前記受部と嵌り合う凹部とが形成された第二部材とで構成される第一挟持体と、内部に前記雄ねじ部と螺合し得る雌ねじ部が形成された挿入孔を有し、前記挿嵌部を収容し得る収容部を有する第二挟持体と、前記第一部材は、環状部材と接続する略円柱形状の接続部を有し、前記接続部は、前記環状部材の内径より若干小さな外径を有する小径部と、前記環状部材の内径より大きな外径を有する大径部とで構成された電車線路用架線金具を、曲線引金具の取付金具に取り付ける電車線路用架線金具取付方法であって、前記第一部材を、前記環状部材の上方から挿入し、前記第一部材の前記大径面と前記環状部材の上端面とを当接する位置まで挿入する工程と、前記第二挟持体収容部は前記第一部材の前記挿嵌部を収容し、且つ前記第二部材を前記第一部材と嵌合させる工程と、前記雄ねじ体を前記第一挟持体側から挿入し、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とを相対螺転させて、前記挿嵌部を前記収容部内において進退させ得ることで、電車線路用架線金具を取り付ける工程と、を有することを特徴とする電車線路用架線金具取付方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の電車線路用架線金具によれば、電車線路用架線金具を構成する第一挟持体と第二挟持体間で生じ得る剪断力に対する剛性を高めるとともに、振動によるボルトの緩みを防止することを可能とする。
第二の発明に係る電車線路用架線金具によれば、トロリ線の張替え作業等において、ボルト締結作業等の回数を低減し、更に従来品の両手を使った煩雑な作業を減らすことにより、施工性を高めることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1実施形態に係る電車線路用架線金具を第二挟持体側からみた斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る電車線路用架線金具を第一挟持体側からみた斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る第一挟持体を示す(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は背面図、(D)は上面図、(E)は下面図である。
【
図4】第1実施形態に係る第二挟持体を示す(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は背面図、(D)は上面図、(E)は下面図である。
【
図5】第1実施形態に係る雄ねじ体を示す正面図である。
【
図6】第1実施形態に係るハンガバーの一端に接続された電車線路用架線金具を構成する、
図3(A)に示す第一挟持体、
図4(A)に示す第二挟持体及び
図5の雄ねじ体におけるA-A矢視断面図であり、(A)は分解図、(B)は組立図である。
【
図7】第1実施形態の変形例に係る電車線路用架線金具の正面断面図である。
【
図8】第2実施形態に係る電車線路用架線金具を第二挟持体側からみた斜視図である。
【
図9】第2実施形態に係る雄ねじ体を示す(A)は正面図、(B)両螺旋溝領域における雄ねじ部を示す平面図である。
【
図10】第2実施形態の雄ねじ部及び雌ねじ部の締結構造の変形例に係る正面断面図である。
【
図11】第2実施形態に係る第二挟持体を示す(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は背面図、(D)は上面図、(E)は下面図である。
【
図12】第2実施形態に係る雌ねじ体を示す(A)は正面図、(B)は背面図、(C)は側面図、(D)は(A)のA-A矢視断面図である。
【
図13】第2実施形態の変形例に係る雌ねじ体及び第二挟持体を示す(A)は側面図、(B)は背面図である。
【
図14】第2実施形態に係るハンガバーの一端に接続された電車線路用架線金具の断面図と、雌ねじ体を拡大した断面図である。
【
図15】(A)は、右ねじと左ねじを有する雄ねじ体の重複領域に右雌ねじ体が螺合されている状態を示す部分断面図であり、(B)は、(A)の断面と一直角異なる断面を示す部分断面図である。
【
図16】(A)は、右雌ねじ体に回転力を加えて回転させようとした状態を示す一部分断面図であり、(B)は、(A)の別の部分断面図である。
【
図18】第3実施形態に係る挟持体を示す。(A)は第一挟持体の正面図、(B)第一挟持体の背面図、(C)は第二挟持体の正面図、(D)は第二挟持体の背面図である。
【
図19】第3実施形態の変形例に係る挟持体を示す。(A)は第一挟持体の正面図、(B)第一挟持体の背面図、(C)は第二挟持体の正面図、(D)は第二挟持体の背面図である。
【
図20】第4実施形態に係る電車線路用架線金具を第二挟持体側からみた斜視図であり、(A)は分解図、(B)は組立図である。
【
図21】第4実施形態に係る第一挟持体の第一部材を示す(A)は正面図、(B)は背面図、(C)は上面図、(D)は下面図である。
【
図22】(A)は、
図21(A)のA-A矢視断面図、(B)は、
図21(A)のB-B矢視断面図である。
【
図23】第4実施形態に係る第一挟持体の第二部材を示す(A)は正面図、(B)は背面図、(C)は上面図、(D)は(C)のA-A矢視断面図である。
【
図24】第4実施形態に係る第二挟持体を示す(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は上面図、(D)は背面図である。
【
図26】第4実施形態に係る電車線路用架線金具の断面図である。
【
図27】(A)(B)(C)は、第4実施形態に係る電車線路用架線金具と曲線引金具との取付手順を示す図である。
【
図28】第4実施形態の変形例に係る電車線路用架線金具を示す正面図である。
【
図29】第5実施形態に係る、(A)は電車線路用架線金具とトロリ線を示す正面図、(B)はカントが設けられていない区間における、トロリ線とパンタグラフの接触を示す模式図、(C)は、カントが設けられた区間における、トロリ線とパンタグラフの接触を示す模式図である。
【
図30】本発明の適用先の一つであるハンガイヤーの正面図である。
【
図31】第3実施形態に係る、本発明の適用先の一つであるコネクタ金具の正面図である。
【
図32】第4実施形態及び第5実施形態に係る、(A)は本発明の適用先の一つである曲線引金具の正面図である。
【
図33】第3実施形態の変形例に係る、電車線路用架線金具を第二挟持体側からみた斜視分解図である。
【
図34】第3実施形態の変形例に係る、電車線路用架線金具を示す(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は背面図である。
【
図35】第4実施形態の変形例に係る、電車線路用架線金具を示す斜視図である。
【
図36】第4実施形態の変形例に係る、電車線路用架線金具を示す(A)は上面図、(B)は(A)のA-A矢視断面図である。
【
図37】曲線引金具のアーム部材及び架線と電車線路用架線金具との取付手順を示し、(A)は第4実施形態に係る電車線路用架線金具の取付手順、(B)は従来の電車線路用架線金具との取付手順を示す。
【
図38】曲線引金具のアーム部材と電車線路用架線金具の取付手順を示し、(A)は第4実施形態に係る電車線路用架線金具の取付手順を示し、(B)は従来の電車線路用架線金具との取付手順を示す。
【
図39】曲線引金具を用いた場合における架線の張替え等の手順を示し、(A)は第4実施形態に係る電車線路用架線金具における架線の張替え手順を示し、(B)は従来の電車線路用架線金具における架線の張替え手順を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る電車線路用架線金具1について、
図1~
図6を参照して説明する。電車線路用架線金具1は、曲線引金具、振止金具、吊架金具、饋電金具、接続金具、引留金具、ワイヤクリップ及びワイヤターンバックル等に適用し得る、電車線路用架線を支持するための金具である。
ここで、電車線路用架線は、普通鉄道及び軌道における架空電車線路及び饋電線路を構成する架線(電車線やトロリ線)や饋電線等の電線類と電線類を支持するための吊架線等を含む概念である。
尚、実施形態として記載され又は図面に示された構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲を前述した内容に限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「ある方向に向かって」「平行」、「直交」、「垂直」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは一義的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度及び距離をもって相対的に変位した状態も表すものとする。例えば、「同一」、「等しい」、「均等」及び「等密度」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差、又は、比率が存在した状態も表すものとする。例えば、三角錐、円錐、三角柱及び円柱等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での三角錐、円錐、三角柱及び円柱等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部及び面取り部、湾曲部、R形状部等を含む形状も表すものとする。一方、一の構成要素を「備える」、「形成される」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0028】
また、図面においては、適宜三次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、ここで便宜的にX軸方向は、
図1に示す雄ねじ体10の軸方向と平行な方向とする。Y軸方向は、X軸方向と直交する方向であって
図1のトロリ線Tの延在方向とする。Z軸方向は、X軸方向とY軸方向との両方と直交する方向とする。また、X軸及びY軸によって規定されるXY平面が延びる任意の方向を指して「水平方向」と呼ぶ。
【0029】
また、以下の説明においては、Z軸方向を上下方向とし、Z軸方向の正の側(+Z側)
を「上側(Z軸方向上側)」と記し、Z軸方向の負の側(-Z側)を「下側(Z軸方向下側)」と記す。X軸方向を前後方向(長さ方向)とし、X軸方向の正の側(+X側)を「前方」と記し、X軸方向の負の側(-X側)を「後方」と記す。また、X軸を中心とする径方向を単に「径方向」と記し、X軸を中心とする周方向(θ方向)を単に「周方向」と記す。Y軸方向を幅方向とする。尚、径方向、周方向、上下方向、上側および下側、前後方向(長さ方向)、前方および後方、幅方向とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定しない。
【0030】
尚、本明細書において、延びる、とは、厳密に軸方向に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°以下の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、径方向に延びる、とは、厳密に径方向、即ち、X軸方向に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°以下の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0031】
第1実施形態の電車線路用架線金具1は、雄ねじ体10を締め付けることで、第一挟持部2aと第二挟持部3aの間に位置する電車線路用架線CAを挟持する。
本実施形態においては、電車線路用架線金具1を、
図30に示すハンガイヤー700に適用した電車線路用架線金具1として説明する。勿論、電車線路用架線金具1の適用対象は、ハンガイヤー700に限定されるものではない。また、電車線路用架線CAをトロリ線Tとして説明するが、電車線路用架線CAはトロリ線Tに限定するものでもない。以下、詳細を説明する。
【0032】
ハンガイヤー700は、
図30に示すように、吊架線Mなどからトロリ線Tを吊るために用いる金具であり、吊架線Mに掛け止めるためのフック部720と、フック部から下方に延びるハンガバー710と、トロリ線を挟持するイヤー701とで、構成されている。
【0033】
本実施形態において、電車線路用架線金具1は、ハンガイヤー700のイヤー701として用いることができる。
【0034】
電車線路用架線金具1は、
図1及び
図2に示すように、第一挟持体2と第二挟持体3と雄ねじ体10を備える。電車線路用架線金具1は、
図6に示すように、第二挟持体3の挿嵌部6を収容可能な収容部5を有する第一挟持体2を備え、雄ねじ体10の雄ねじ部30bと、第二挟持体3の第一雌ねじ部11とを相対螺転することで、挿嵌部6を収容部5内において進退させ得るように構成されている。
【0035】
第一挟持体2は、
図3及び
図6(A)に示すように、下側(―Z側)から、第一挟持部2aと、その上方に連続する本体部2bと、接続部4を有する。
【0036】
第一挟持部2aは、第二挟持体3の第二挟持部3aと対向してトロリ線Tを挟持するように、突き合わせて配置される(
図1参照)。第一挟持部2aは、本体部2bの下端縁に沿って、第二挟持体3側へ突出するように形成されている。この第一挟持部2aは、トロリ線Tの周面の長さ方向に沿う溝部Mに対し、側方から嵌まり込む。
【0037】
本体部2bは、
図3(B)に示すように、上下反転した逆L字状に形成されている。
本体部2bは、
図3(A)に示すように、逆L字状の長辺部(YZ平面)において、その略中央にX軸方向に、挿入孔2cが形成されている。
図6に示すように、この挿入孔2cには、第一挟持体2の後方(-X側)から雄ねじ体10が挿入される。挿入孔2cの孔径は、雄ねじ体10を挿入する入口側において、雄ねじ体10の頭部20の外径より小さく且つ軸部30の径より大きく形成されている。
一方、挿入孔2cの孔径は、第一挟持体2に挿入された雄ねじ体10の出口側において、孔径は拡径し、中空円筒状の収容部5が形成されている。
【0038】
収容部5は、
図6(A)に示すように、X軸方向に底面5aから接続部4の軸心Cを超えて延設される内周壁部5bを有する。即ち、内周壁部5bの先端縁5cは、X軸方向において、接続部4の軸心Cを超える位置に形成されている。
収容部5は、第二挟持体3の挿嵌部6を収容する。尚、収容部5は、挿嵌部6の全体を収容する必要はなく、挿嵌部6の少なくとも一部を収容可能に形成し、且つ挿嵌部6を収容部5内において、相対的に進退可能に構成され、一定程度に収容部5に挿嵌部6が収容された状態で雄ねじ体10に掛かる曲げ荷重や剪断荷重の一部乃至全部を分担し、雄ねじ体10を補助、補強することで雄ねじ体10の耐久性や疲労度の低下を抑制することができる様に構成されていればよい。この様に構成することで、雄ねじ体10の耐力低下の抑制や疲労寿命の延長だけでなく、電車線路用架線金具1の耐久性を向上させ、更に疲労寿命を延長させることが出来る。
【0039】
尚、収容部5の先端縁5cは、必ずしもX軸方向に接続部4の軸心Cを超える位置に形成される必要はない。収容部5の先端縁5cの位置は、軸心Cの位置まででもよいし、軸心Cの位置まで達していなくてもよい。
【0040】
本体部2bは、逆L字状の短辺部(XY平面)において、X軸方向に向けて溝部2dが形成される。溝部2dは、
図3(B)(C)に示すように、短辺部から下側(-Z側)を開放面とするように有底状に形成される。溝部2dを構成する壁部2eは、後述する第二挟持体3の位置決め部3dと当接し、第一挟持体2と第二挟持体3の位置決めをする。
尚、溝部2dを、所謂蟻溝状(断面が略逆ハの字状になった溝)として、溝部2dに位置決め部3dを挿嵌した際に、これらが上下方向に乖離することを防止するようにしてもよい。
【0041】
これにより、例えば、トロリ線T等の電車線路用架線CAを挟持する作業において、第一挟持体2と第二挟持体3の位置決めを容易にし、また位置決め部3dの形状が異なる部品の誤使用を防止する。更に雄ねじ体10により締結された状態では、第一挟持体2と第二挟持体3の相対回転を防止するだけでなく、第一挟持体2と第二挟持体3とのガタ付きを防止し、相対的な傾斜を防止する。
【0042】
接続部4は、
図30に示すハンガバー710の一端部と圧縮接続等により固着される。
尚、本実施形態においては、接続部4を、第一挟持体2に設けたが、これに限らない。例えば、第二挟持体3に接続部4を設けてもよい。
また、本実施形態においては、接続部4は、電車線路用架線金具1の上側(+Z軸)に延びて形成されているが、X軸方向及び又はY軸方向に延びて形成されていてもよい。
【0043】
第二挟持体3は、
図4及び
図6(A)に示すように、下側(―Z側)から、第二挟持部3aと、その上方に連続する本体部3bと、位置決め部3dを有する。
【0044】
第二挟持部3aは、第一挟持体2の第一挟持部2aと対向してトロリ線Tを挟持するように、突き合わせて配置される(
図1参照)。第二挟持部3aは、本体部3bの下端縁に沿って、第一挟持体2側へ突出するように形成されている。この第二挟持部3aは、トロリ線Tの周面の長さ方向に沿う溝部Mに対し、側方から嵌まり込む。
【0045】
ここで、
図1及び
図6(B)に示すように、第一挟持部2aと第二挟持部3aとでトロリ線Tを挟持した状態において、溝部Mの位置に対応する第一挟持部2aと第二挟持部3a間の距離をDとする。この距離Dの最小距離が、トロリ線Tの溝部Mの弾性域における最大圧縮時幅と同等以上になるように、収容部5の底面5aと挿嵌部6の先端縁6cが当接し、及び/又は収容部5の先端縁5cと第二挟持体3の本体部3bが当接する。
尚、当接する箇所は、これらの箇所に限らない。即ち、第一挟持体2の何れかの箇所と第二挟持体3の何れかの箇所とが、当接することで、距離Dの最小距離がそれ以上縮まらないように構成されていればよい。
また、上述において、トロリ線Tにおける溝部Mの位置を例にして、第一挟持部2aと第二挟持部3a間との距離をDとした。しかしながら、溝部Mの位置に対応する第一挟持部2aと第二挟持部3aの距離に限定されない。即ち、第一挟持部2aと第二挟持部3aとにより挟持されるトロリ線Tの特定の位置における、第一挟持部2aと第二挟持部3aの最小距離が、トロリ線Tの材料の弾性域における最大圧縮時幅と同等以上になるように構成されていればよい。これにより、トロリ線Tは、降伏強度以下の応力により挟持される為、本構成を有しない電車線路用架線金具と比較して、トロリ線Tの耐久性を高めることが可能となる。
例えば、作業者が、電車線路用架線金具1を設置する際に、雄ねじ体10を締め付け過ぎた場合であっても、第一挟持部2aと第二挟持部3aの間に位置するトロリ線Tに対しては、降伏強度以下の応力を作用させながら挟持力を印加することとなる。
【0046】
本体部3bは、
図4(A)に示すように、その略中央に、雄ねじ体10の雄ねじ部30bを挿入し得る挿入孔3cを有する。
【0047】
挿入孔3cには、X軸方向に第一挟持体2へ向けて延びる中空円筒状の挿嵌部6が連接される。この挿嵌部6の少なくとも一部は、第一挟持体2の収容部5に収容され得る(
図6(B)参照)。
挿入孔3cの内周壁部6bには、第一雌ねじ部11を構成する第一螺旋条12が形成される(
図6(A)及び
図17参照)。第一螺旋条12は、雄ねじ体10の雄ねじ部30bにおける第一螺旋溝31と螺合する。尚、本実施形態では、第一雌ねじ部11は、右ねじである第一螺旋条12が形成されるが、第一雌ねじ部11は、右ねじに限定されるものではない。
【0048】
挿嵌部6の先端縁6cは、第一挟持体2へ向けて、X軸方向に接続部4の軸心Cを超える位置に形成されている。
尚、挿嵌部6は、挿嵌部6の少なくとも一部が、収容部5に収容可能に形成し、且つ挿嵌部6は収容部5内において、相対的に進退可能に構成されていればよい。挿嵌部6の先端縁6cは、第一挟持体2へ向けて、X軸方向に接続部4の軸心Cを超える位置に形成される必要はない。挿嵌部6の先端縁6cの位置は、軸心Cの位置まででもよいし、軸心Cの位置まで達していなくてもよい。
【0049】
位置決め部3dは、突起状であり、第一挟持体2の溝部2dの壁部2eに当接するように形成されている。前述のように、位置決め部3dは、溝部2dを構成する壁部2eと当接し、第一挟持体2と第二挟持体3の位置決めをする。
【0050】
尚、本実施形態においては、第一挟持体2に溝部2dを形成し、第二挟持体3に位置決め部3dを形成したが、これに限定されない。例えば、第一挟持体2に位置決め部3dを形成してもよい。また、電車線路用架線金具1に、必ずしも溝部2dと位置決め部3dを設ける必要もない。
【0051】
雄ねじ体10は、
図5に示すように、頭部20と軸部30を有する。
頭部20は、軸部30の一端に設けられ、軸部30と比較して大径の外径形状を有する。勿論、頭部20の外径形状は、これに限らず、所謂キャップボルト状に頭部上面から凹設された異形凹部を有するものであってもよい。
軸部30には、円筒部30aと雄ねじ部30bが設けられる。雄ねじ部30bは、軸部30の外周面に、適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一螺旋溝31が形成される。
尚、本実施形態では、雄ねじ部30bは、右ねじである第一螺旋溝31が形成されるが、雄ねじ部30bは、右ねじに限定されるものではない。
【0052】
図1及び
図6に示すように、雄ねじ体10の締め付けにより、第一挟持体2と第二挟持体3とでトロリ線Tを挟持する。雄ねじ体10と第一挟持体2の間には、弾性部材9が介される。この弾性部材9は、コイルスプリング、皿バネ、板バネ、弾性樹脂部材等の弾性体であり、付勢部として機能する。
この付勢部により、第一挟持部2aと第二挟持部3a間が狭まる向きに付勢される。また、雄ねじ体10の頭部20は、外方(―X方向)に付勢される。
これにより、例えば、第一挟持部2aと第二挟持部3aの間にトロリ線Tを挟持しようとする場合は、作業者は、片手で第一挟持部2aと第二挟持部3aの間隔を広げ、トロリ線Tを両挟持部(2a、3a)の間に位置させておけば、あとは弾性部材9の付勢により、トロリ線Tを自動的に挟持することができる。
また、例えば、第一挟持部2aと第二挟持部3a間に挟持されたトロリ線Tを取り外したい場合は、作業者は、最初にトロリ線Tを取り外せる程度に、雄ねじ体10を電車線路用架線金具1から緩める。このとき、トロリ線Tは、弾性部材9の付勢により、第一挟持部2aと第二挟持部3aは挟持された状態である。次に、作業者は、片手で第一挟持部2aと第二挟持部3aの間隔を拡げさえすれば、トロリ線Tを両挟持部(2a、3a)から取り外すことができる。
以上のように、電車線路用架線金具1は、本構成を有しない電車線路用架線金具と比較して、作業性や施工性を高めることが可能となる。
【0053】
以上、第1実施形態の電車線路用架線金具1によれば、第一挟持体2の収容部5は、第二挟持体3の挿嵌部6を収容可能な収容部5を有し、雄ねじ体10の雄ねじ部30bと、第二挟持体3の第一雌ねじ部11とを相対螺転することで、挿嵌部6を収容部6内において進退させ得るように構成されている。
これにより、電車線路用架線金具1を構成する第一挟持体2と第二挟持体3との境界面で剪断力が作用した場合に、その剪断力を挿嵌部6の外周面で受け止めることができる。
【0054】
また、収容部5を備える第一挟持体2と挿嵌部6を備える第二挟持体3とが一体となり、剪断力に対する剛性を高めることが可能となる。
例えば、本構成を有しない電車線路用架線金具と比較して、雄ねじ体10の径を小さくすることができる。
【0055】
又、第1実施形態の電車線路用架線金具1によれば、本構成を有しない電車線路用架線金具と比較して、雄ねじ体10が緩むことを規制することとなる。これは、雄ねじ体10が軸方向に負荷が掛かり続けて耐力が低下すると、雄ねじ体10の軸力が低下して、雄ねじ体10が緩んでしまう虞がある。雄ねじ体10が軸方向に負荷が掛かる原因となる力の方向は、軸方向以外にもあり、例えば曲げ方向の力でも負荷が掛かることになる。本実施形態の電車線路用架線金具1においては、剪断力に対する剛性を高めると共に、雄ねじ体10に曲げ方向の力が作用すること及び曲げによって雄ねじ体10が軸方向に負荷が掛かることを抑制する為、結果的に雄ねじ体10が緩むことを規制することとなる。
【0056】
更にトロリ線T等の電車線路用架線CAの交換作業等において、電車線路用架線金具1から雄ねじ体10を外した場合であっても、第一挟持体2の収容部5に第二挟持体3の挿嵌部6が収容された状態である為、本構成を有しない電車線路用架線金具と比較して、第一挟持体2又は第二挟持体3の一方の落下等を防止することができる。
【0057】
[第1実施形態の変形例]
図7は、第1実施形態の変形例に係る電車線路用架線金具1を示す図である。
【0058】
本実施形態の変形例における電車線路用架線金具1について説明する。
図7に示すように、電車線路用架線金具1は、第一挟持体2と第二挟持体3と雄ねじ体10を備える。電車線路用架線金具1は、雄ねじ体10を締め付けることで、第一挟持体2と第二挟持体3の間に位置するトロリ線Tを挟持する。
【0059】
第一挟持体2は、挿嵌部16を有し、第二挟持体3は、収容部15を有する点で、第1実施形態の電車線路用架線金具1と相違する。
尚、本実施形態における変形例では、第1実施形態と同様の構成要素には第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0060】
本実施形態における変形例の電車線路用架線金具1は、第一挟持部2aと第二挟持部3aとから成る一対の挟持部(2a、3a)の間に位置された、電車線路用架線CAを挟持する。雄ねじ体10は、適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一螺旋溝31が形成された雄ねじ部30bを有する。
第一挟持体2は、第一挟持部2aと、内部に雄ねじ部30bを挿入し得る挿入孔2cを有し、第二挟持体3の収容部15に収容し得る挿嵌部16を有する。第二挟持体3は、第二挟持部3aと、収容部15を有する。第二挟持体3は、更に第一挟持体2の挿入孔2cと同軸で第一螺旋溝31を螺合し得る第一螺旋条12が形成されて成る第一雌ねじ部11を有する。電車線路用架線金具1は、雄ねじ部30bと第一雌ねじ部11とを相対螺転させることで、挿嵌部16を収容部15内において進退させ得るように構成させることを可能とする。
【0061】
これにより、電車線路用架線金具1を構成する第一挟持体2と第二挟持体3との境界面で剪断力が作用した場合に、その剪断力を挿嵌部16の外周面で受け止めることができる。又、本変形例の電車線路用架線金具1によれば、本構成を有しない電車線路用架線金具と比較して、雄ねじ体10が緩むことを規制することとなる。これは、雄ねじ体10が軸方向に負荷が掛かり続けて耐力が低下すると、雄ねじ体10の軸力が低下して、雄ねじ体10が緩んでしまう虞がある。雄ねじ体10が軸方向に負荷が掛かる原因となる力の方向は、軸方向以外にもあり、例えば曲げ方向の力でも負荷が掛かることになる。本変形例の電車線路用架線金具1においては、剪断力に対する剛性を高めると共に、雄ねじ体10に曲げ方向の力が作用すること及び曲げによって雄ねじ体10が軸方向に負荷が掛かることを抑制する為、結果的に雄ねじ体10が緩むことを規制することとなる。
【0062】
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態に係る電車線路用架線金具100を示す斜視図である。
【0063】
本発明の第2実施形態である電車線路用架線金具100について説明する。電車線路用架線が振動等した場合には、ねじ体の緩みが生じる虞がある。これに対し、本実施形態に係る電車線路用架線金具100は、ねじ体の緩みを防止することが出来る。
第1実施形態と同様に、電車線路用架線金具100を、
図30に示すハンガイヤー700に適用した電車線路用架線金具100として説明する。勿論、電車線路用架線金具100の適用対象は、ハンガイヤーに限定されるものではない。また、電車線路用架線CAをトロリ線Tとして説明するが、電車線路用架線CAはトロリ線Tに限定するものでもない。
以下、詳細を説明する。
【0064】
本実施形態において、電車線路用架線金具100は、ハンガイヤー700のイヤー701として用いることができる。
図8に示すように、第2実施形態の電車線路用架線金具100は、第一挟持体2と第二挟持体3と雄ねじ体110と雌ねじ体50を備える。
電車線路用架線金具100は、雄ねじ体110を締め付けることで、第一挟持体2と第二挟持体3の間に位置するトロリ線Tを挟持する。更に雌ねじ体50を用いることにより、雄ねじ体110が緩むことを規制する。
【0065】
第1実施形態と異なる点は、
図9(A)に示す、雄ねじ体110の軸部130の外周面に、右ねじ131aと左ねじ131bとが同一領域内に重複して形成されて成る雄ねじ体110を用いた点と、
図11及び
図12に示す、第二挟持体3の挿嵌部6に、雄ねじ体110の右ねじ131a又は左ねじ131bの一方に螺合し得る第一雌ねじ部11が形成されると共に、雄ねじ体110の右ねじ131a又は左ねじ131bの他方に螺合し得る第二雌ねじ部53が形成されて成る雌ねじ体50を備えた点である。
尚、第2実施形態では、第1実施形態と同様の構成要素には第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0066】
雄ねじ体110について説明する。
雄ねじ体110は、
図9(A)に示すように、頭部120と軸部130を有する。頭部120は、軸部130の一端に設けられ、軸部130と比較して大径の外径形状を有する。
勿論、頭部120の外径形状は、これに限らず、所謂キャップボルト状に頭部上面から凹設された異形凹部を有するものであってもよい。
雄ねじ体110の軸部130には、円筒部130aと雄ねじ部130bが設けられる。
本実施形態では、雄ねじ部130bは、軸部130の外周面に、右ねじ131aである第一螺旋溝133a、及び左ねじ131bである第二螺旋溝133bの二種類の雄ねじ螺旋溝を同一領域上に重複して形成される重複領域Wを有する。
従って、雄ねじ部130bは、右ねじ及び左ねじの何れの雌ねじ体とも螺合可能である。
【0067】
図9(B)に示すように、雄ねじ部130bにおいては、軸心(ねじ軸)Cに垂直となる面方向において周方向に延びる略三日月状の条状を成すねじ山Gが、雄ねじ部130bの直径方向における一方側(図の右側)及び他方側(図の左側)に交互に設けられる。
即ち、このねじ山Gは、その稜線が軸に対して垂直に延びており、ねじ山Gの高さは、周方向中央が高くなり、周方向両端が次第に低くなるように変化する。
従って、ねじ山Gの山高さが最も高い地点から、周方向に90°位相差を有する部分は、山高さが低くなる。
尚、周方向に180°位相差部分では、山高さはゼロとなっている。ねじ山Gをこのように構成することで、右回りに旋回する仮想的な螺旋溝構造及び左回りに旋回する仮想的な螺旋溝構造の二種類の螺旋溝を、ねじ山Gの間に形成することが出来る。
【0068】
尚、雄ねじ部130bは、必ずしも右ねじと左ねじとを形成することに限定するものではなく、適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一螺旋溝133aと、第一螺旋溝133aとは相異なるリード角及び/又はリード方向に設定された第二螺旋溝133bであればよい。
例えば、
図10に示すように、リード方向(L1、L2)が同じで、リード角が異なる第一螺旋溝133a及び第一螺旋条12と、第二螺旋溝133b及び第二螺旋条54を採用することもできる。この場合、第一螺旋溝133aに対して、更にリード角の異なる螺旋溝を重畳形成することにより、リードがL1(リード角α1)の第一螺旋溝133a及びリードがL2(リード角がα2)の第二螺旋溝133bが、ねじ方向を揃えて形成される。この場合は、第一螺旋溝133aの第一ねじ山G1と、第二螺旋溝133bの第二ねじ山G2は、共有されずに別々となる。
二種類の雄ねじ螺旋構造が形成された雄ねじ部130bの詳細については、本願の発明者に係る特許第4663813号公報を参照されたい。
【0069】
第二挟持体3について説明する。
第二挟持体3の本体部3bには、
図11に示すように、本体部3bの一方側に、第一挟持体2の収容部5に収容され得る挿嵌部6が形成されている。また、本体部3bの他方側には、雌ねじ体50を着脱可能とする案内部7が形成されている。
【0070】
案内部7は、
図11(C)に示すように、第二挟持体3の本体部3bに形成された挿入孔3cの両側に対峙するように形成されている。
案内部7は、
図11(D)に示すように、板状の雌ねじ体50を挟み込めるように断面略U字状の凹溝7aを有する。
図11(C)に示すように、凹溝7aは、その上側(Z軸方向上側)に開放口7bが形成され、凹溝7aの下側(Z軸方向下側)に、ストッパ7cが形成されている。これにより、雌ねじ体50は、開放口7bから凹溝7aに沿って所定の位置に配されることとなる。
【0071】
このように、案内部7を用いることで、第二雌ねじ部53を有する雌ねじ体50を第二挟持体3に着脱することが可能となる。即ち、第二雌ねじ部53を第二挟持体3と別体とすることで、加工コストの低減化や、雌ねじ体50が破損等した時の交換を容易にすることが可能となる。
また、トロリ線Tなどの交換作業等において、事前(工場出荷時等)に案内部7に雌ねじ体50を配しておくことで、作業現場における、雄ねじ体110の緩み止めのための作業(割りピンを挿入する等)は不要となる。
またトロリ線Tなどの交換作業前に、予め雌ねじ体50が案内部7に配されていない場合であっても、作業者は電車線路用架線金具1の上側(Z軸方向上側)から雌ねじ体50を案内部7にスライドさせる動作だけで挿入ができる。
更にトロリ線Tなどの交換作業等において、電車線路用架線金具100からトロリ線Tを取り外す場合であっても、雌ねじ体50から雄ねじ体110が外れても、案内部7に雌ねじ体50は保持されており、雌ねじ体50の落下を防ぐことが可能となる。
【0072】
尚、案内部7の開放口7bは、好ましくは本体部3bの上側(Z軸方向上側)に設けた方がよいが、これに限定されない。例えば、本体部3bの側方(Y軸方向)に案内部7の開放口7bを設けてもよい。
尚、案内部7は、雨水等の溜めを防ぐために、案内部下側(Z軸方向下側)に水抜きを設けても良い。例えば、ストッパ7cに水抜き穴や溝を設けることで、雨水等の溜めを防ぐことが可能となる。
【0073】
尚、本実施形態においては、案内部7を用いることで、雌ねじ体50を着脱可能とした。しかしながら、案内部7を用いずに、雌ねじ体50を第二挟持体3に設けてもよい。例えば、雌ねじ体50を第二挟持体3に溶接により固定してもよいし、雌ねじ体50と第二挟持体3とを一体物として加工してもよい。
【0074】
次に雌ねじ体50について説明する。
雌ねじ体50は、
図12(A)に示すように、平面視において、短辺部分50aと長辺部分50bとを有する略長方形状の板状部材55からなり、その略中央には貫通孔51が形成されている。貫通孔51には、雄ねじ体110の雄ねじ部130bの左ねじ131bと螺合し得る第二雌ねじ部53(
図12(C)参照)が形成されている。尚、板状部材55は、長方形状に限定されず、正方形状等であってもよい。
尚、本実施形態においては、雌ねじ体50の第二雌ねじ部53として、雄ねじ体110の左ねじ131bと螺合し得る左ねじ部が形成されているが、これに限定されない。例えば、雌ねじ体50の第二雌ねじ部53に、雄ねじ体110の右ねじ131aと螺合し得る右ねじ部を形成してもよい。この場合、第二挟持体3の第一雌ねじ部11には、雄ねじ体110の左ねじ131bに螺合し得る左ねじ部が形成される。
【0075】
尚、板状部材55に、抜き差し用の取っ手部55aを設けてもよい。例えば、
図13に示すように、板状部材55の一端部に、断面略L字状の取っ手部55aを形成する。これにより、作業者は、取っ手部55aを用いることで板状部材55の抜き差しが容易になる。
【0076】
図12(A)に示すように、貫通孔51の全周を縁取る貫通孔周縁には、略円弧状の先端部52aを有する六枚の弾性を有する板片52が配設されている。これらの板片52の先端部52aは、それぞれ第二雌ねじ部53の軸心Cに向かって傾斜して突き出ており、全体として仮想的な左螺旋状に列設されている。
尚、本実施形態においては、板片52の配設枚数は、六枚に設定したが、一枚以上であればよい。
【0077】
また、板片52の半径方向外側部分は、貫通孔51の貫通孔周縁に固設され、板片52の半径方向内側部分は、自由端とされ、この自由端側が定常位置から雄ねじ体110を締め付ける方向に向かって一方向にのみ撓むように構成される。
【0078】
六枚の板片52は、
図12及び
図15に示すように、雄ねじ体110の左ねじ131bである第二螺旋溝133bのピッチ、外径、谷の径に整合するように、板片52の幅、配設傾斜角、配設位置が設定され、板片52の先端形状が左回転の螺旋状を成す弧状に形成されている。
即ち、雌ねじ体50の第二雌ねじ部53は、雄ねじ体110の第二螺旋溝133bに螺合し得る断続的な螺旋状の左ねじの第二螺旋条54が形成されている。
尚、本実施形態においては、六枚の板片52により、断続的な螺旋状の螺旋条を形成したが、これに限定されない。例えば、一枚の板片52により、連続的な螺旋状の螺旋条を形成してもよい。
【0079】
板片52の幅は、雄ねじ体110の左ねじ131bの外径と谷の径との差程に設定される。そして、配設傾斜角は、雄ねじ体110の左ねじ131bにおける外径に対するピッチの比に対応して設定される。
ここで、雄ねじ体110の右ねじ131aの外径と左ねじ131bの外径、及び、右ねじ131aの谷の径と左ねじ131bの谷の径とは、それぞれ同等に設定されているが、異なるものに設定することも可能である。
第一雌ねじ部11の軸に垂直に配された板状部材55の貫通孔51からの板片52の動径方向の傾きは、第一雌ねじ部11の軸に対する垂直面からの傾斜角をθ、雄ねじ体110の左ねじ131bにおける外径に対するピッチPLの比をTとするとき、T≒tanθとなるように設定される。
つまり、第一雌ねじ部11の内周面の第一螺旋条12のリード角をαとするとき、θ=(180-2α)°±15°程度に設定する。また、各板片52の配設位置は、雄ねじ体110の左ねじ131bのピッチPLに対応して、それぞれの板片52が左ねじ131bに噛み合う位置関係と成るように設定される。
尚、このとき板片52を複数枚配設する場合には、互いに段違いと成るように配設することが出来る。
【0080】
図16に示すように、雄ねじ体110を締め付けにより、第一雌ねじ部11の螺合による移動時には、第二挟持体3に配された各板片52は、この移動に伴って、それぞれの半径方向中心側の自由端が、雄ねじ体110の進行方向に向かって撓んで拡開したり、弾性的な復元力によって縮閉したりする。
【0081】
各板片52は、雄ねじ体110の雄ねじ部130bにおける所要の位置まで螺合されると、その弾性的な復元力によって元の位置に戻り、雄ねじ体110の左ねじ131bに噛み合って、各板片52と左ねじ131bとが互いに整合する。
尚、雄ねじ体110の左ねじ131bに整合した各板片52は、上述の雄ねじ体110の進行方向とは逆方向(雄ねじ体110を緩ませるときの進行方向)には撓まない。或いは極めて撓み難く設けられる。
【0082】
ここで、例えば電車のパンタグラフPの通過などにより、トロリ線Tなどの電車線路用架線CAが振動した場合、電車線路用架線金具100に振動が伝搬することになる。この振動により、電車線路用架線金具100の第一雌ねじ部11にも左回転向きのトルクも加わる虞がある。
この場合、第一雌ねじ部11に左回転向きのトルクが作用した場合には、
図16に示すように、第二挟持体3自身は、螺合時の進行方向と逆向きの力が作用することに成るが、これに対して、板片52は雄ねじ体110の左ねじ131bに整合され、且つ板片52が逆向きには撓まない為に、左回転向きのトルクが作用した各板片52には左ねじの進行方向、即ち、螺合時の進行方向(雄ねじ体110の頭部120側に向かう方向)に進行しようとする力が働くことになる。
つまり、第二挟持体3の挿入孔3cの内周面に形成された右回転の第一螺旋条12に働く後退しようとする力と第二挟持体3に固設された各板片52に働く前進しようとする力とが拮抗して、結果的に、第二挟持体3は雄ねじ体110の重複領域W上において与えられた一定の位置に止まることに成る。
即ち、本実施態様の雄ねじ体110と第二挟持体3の第一雌ねじ部11との螺合の組み合わせにおいては、第二挟持体3は、進行するか止まるかの何れかであり、後退することはない。
従って、雄ねじ体110は、第一雌ねじ部11から緩む方向に進むことはない。つまり、第2実施形態の電車線路用架線金具100によれば、雄ねじ体110が緩むことを規制することとなる。
【0083】
[第3実施形態]
図18は、第3実施形態に係る電車線路用架線金具300を示す図である。
【0084】
本発明の第3実施形態である電車線路用架線金具300について説明する。
第3実施形態は、電車線路用架線金具300を、
図31に示すトロリ線Tを挟持するコネクタ金具800に適用した電車線路用架線金具300として説明する。勿論、電車線路用架線金具300の適用対象は、コネクタ金具に限定されるものではない。また、電車線路用架線CAをトロリ線Tとして説明するが、電車線路用架線CAはトロリ線Tに限定するものでもない。以下、詳細を説明する。
【0085】
ここで、コネクタ金具800は、電車線のトロリ線Tや吊架線Mなどの線条間を、電気的に接続する金具であり、一般的に軟銅より線を用いたリード線810とイヤー801およびクランプ(図示せず)とで構成されている。イヤー801はトロリ線Tを挟持し、クランプは、ループ部820において、吊架線Mを挟持する。尚、ループ部820は、ループ形状に限定されず、他の形状でもよい。
【0086】
本実施形態において、電車線路用架線金具300は、コネクタ金具800のイヤー801として用いることができる。尚、第3実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成要素には第1実施形態及び第2実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0087】
電車線路用架線金具300は、
図18(A)及び(B)に示す第一挟持体302と、
図18(C)及び(D)に示す第二挟持体303と雌ねじ体50と、
図9に示す雄ねじ体110とで構成される。電車線路用架線金具300は、雄ねじ体110を締め付けることで、第一挟持体302と第二挟持体303の間に位置するトロリ線Tなどの電車線路用架線CAを挟持する。
【0088】
第一挟持体302の収容部5は、第二挟持体303の挿嵌部6を収容可能であり、雄ねじ体110の雄ねじ部130bと、第二挟持体303の第一雌ねじ部11とを相対螺転すること、挿嵌部6を収容部5内において進退させ得るように構成されている。更に雌ねじ体50を用いることにより、雄ねじ体110が緩むことを規制する。
【0089】
第2実施形態と異なるのは、電車線路用架線金具300は、二つの雄ねじ体110を用いて、電車線路用架線CAを挟持する点である。
【0090】
第一挟持体302は、
図18(A)(B)に示すように、本体部2bには、トロリ線Tの延在方向前後位置に二つの挿入孔2cが形成される。各挿入孔2cには、第二挟持体303の挿嵌部6の少なくとも一部を収容する収容部5が連接されて形成される。
【0091】
第二挟持体303は、
図18(C)(D)に示すように、本体部3bには、トロリ線Tの延在方向前後位置に二つの挿入孔6cが形成される。各挿入孔3cには、第一挟持体302の収容部5に少なくとも一部が収容される挿嵌部6が連接されて形成される。
【0092】
第二挟持体303は、トロリ線Tの延在方向において、接続部4が形成される。接続部4はコネクタ金具800のリード線810の一端部と圧縮接続等により固着される。
尚、接続部4は、第二挟持体303の側方(X軸方向又はY軸方向)に形成されているが、形成される場所はこれに限らない。第二挟持体303の上側や下側といったZ軸方向に形成されてもよい。又、第二挟持体303に形成する必要はなく、第一挟持体302に接続部4を設けてもよい。
【0093】
第二挟持体303は、雌ねじ体50を着脱可能にする案内部7を備える。案内部7は、二つの挿入孔3cにそれぞれ形成されている。二つの案内部7を設ける場合は、二枚の板状部材55の雌ねじ体50が必要となる。
尚、案内部7は、挿入孔3cそれぞれに形成する必要はない。例えば、二つの挿入孔3cに一つの案内部7を形成し、一枚の板状部材55の雌ねじ体50を用いるようにしてもよい。この場合一枚の板状部55には、二つの第二雌ねじ部53が形成されることとなる。
【0094】
尚、本実施形態においては、第一挟持体302に二つの収容部5を設けたが、これに限定されない。例えば、
図19(A)(B)に示すように、第一挟持体352に収容部5と挿嵌部6を設けてもよい。この場合、
図19(C)(D)に示すように、第二挟持体353に収容部5と挿嵌部6を設けることとなる。尚、第一挟持体352の収容部5には、第二挟持体353の挿嵌部6が対向するように設けられ、第一挟持体352の挿嵌部6には、第二挟持体353の収容部5が、対向するよう設けられている。
【0095】
また、本実施形態においては、第二挟持体303に二つの案内部7を設け、二つの雌ねじ体50を配したが、これに限定されない。例えば、
図19に示すように、第一挟持体352に一つの雌ねじ体50を配し、第二挟持体353に一つの雌ねじ体50を配してもよい。
【0096】
また、第1実施形態と同様に、第一挟持部2aと第二挟持部3a間の最小距離が、トロリ線Tの材料の弾性域における最大圧縮時幅と同等以上になるように構成することが好ましい。
これにより、トロリ線Tは、降伏強度以下の応力により挟持される為、本構成を有しない電車線路用架線金具と比較して、トロリ線Tの耐久性を高めることが可能となる。
例えば、作業者が、電車線路用架線金具を設置する際に、雄ねじ体110を締め付け過ぎた場合であっても、第一挟持部2aと第二挟持部3aの間に位置するトロリ線Tに対しては、降伏強度以下の応力を作用させながら挟持力を印加することとなる。
【0097】
尚、第1実施形態と同様に、雄ねじ体110と第一挟持体(302、352)の間に、付勢部として機能する弾性部材9を介在させてもよい。尚、第3実施形態においては、複数の雄ねじ体110を用いるが、雄ねじ体110毎に弾性部材9の要否を適宜決めればよい。
【0098】
尚、雄ねじ体110は、第2実施形態で説明した通りであるが、必ずしも二種類の雄ねじ螺旋溝を有する雄ねじ体110を用いる必要はない。例えば、第二雌ねじ部53を有する雌ねじ体50を用いない場合には、第1実施形態で説明した雄ねじ体10を用いてもよい。
【0099】
[第3実施形態の変形例]
図33は、第3実施形態の変形例に係る電車線路用架線金具1000を示す斜視分解図である。
図34は、第3実施形態の変形例に係る電車線路用架線金具1000を示す、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は背面図である。
【0100】
本発明の第3実施形態の変形例である電車線路用架線金具1000について説明する。
本実施形態における変形例に係る電車線路用架線金具1000は、吊架線及び補助吊架線を挟持するドロッパクリップや、補助吊架線を挟持する補助アームクリップに適用することが可能である。勿論、電車線路用架線金具1000の適用対象は、ドロッパクリップや補助アームクリップに限定されるものではない。また、吊架線や補助吊架線を電車線路用架線CAとして説明するが、電車線路用架線CAはこれに限定するものでもない。以下、詳細を説明する。
尚、本実施形態では、第1実施形態乃至第3実施形態と同様の構成要素には第1実施形態乃至第3実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0101】
電車線路用架線金具1000は、
図33に示すように、第一挟持体1002と、第二挟持体1003と、雄ねじ体1010と、雌ねじ体1050とで構成される。電車線路用架線金具1000は、雄ねじ体1010を締め付けることで、第一挟持体1002と第二挟持体1003の間に位置する補助吊架線などの電車線路用架線CAを挟持する。
【0102】
第3実施形態と異なる点は、
図33及び
図34に示すように、電車線路用架線金具1000は、挟持体が挿嵌部及び収容部を備えない点と、第一挟持体1002と第二挟持体1003とが連結部(1002d、1003d)により連結されている点である。
【0103】
雄ねじ体1010について説明する。
雄ねじ体1010は、
図33に示すように、頭部1020と軸部1030を有する。頭部1020は、軸部1030の一端に設けられ、軸部1030と比較して大径の外径形状を有する。雄ねじ体1010の頭部1020には六角穴1020aが形成されており(
図34(C)参照)、六角ビットが取付けられた工具等により着脱される。雄ねじ体1010は、所謂全ねじであり、軸部1030の略全体において、雄ねじ部1030bが設けられる。雄ねじ部1030bは、前述の雄ねじ体110と同様に、軸部1030の外周面に、右ねじ1031aである第一螺旋溝1033a、及び左ねじ1031bである第二螺旋溝1033bの二種類の雄ねじ螺旋溝を同一領域上に重複して形成される重複領域を有する。従って、雄ねじ部1030bは、右ねじ及び左ねじの何れの雌ねじ体とも螺合可能である。
尚、本実施形態においては、軸部1030の略全体において雄ねじ部1030bを設けたが、これに限定されない。例えば、軸部1030に雄ねじ部1030bを設けない円筒部を設けてもよい。
【0104】
挟持体(1002、1003)について説明する。
第一挟持体1002及び第二挟持体1003は、
図33及び
図34に示すように、第一挟持体1002は、その基端となる下側(-Z側)から、連結部1002dと、その上方に連続する第一挟持部1002aと、本体部1002bを有し、第二挟持体1003は、その基端となる下側(-Z側)から、連結部1003dと、その上方に連続する第二挟持部1003aと、本体部1003bを有する。
【0105】
連結部(1002d、1003d)について説明する。
連結部1002dは、第一挟持体1002の基端側に設けられており、軸体1060を支持する軸受孔が形成された一つの環部を有する。また、連結部1003dは、第二挟持体1003の基端側に設けられており、軸体1060を支持する軸受孔が形成された二つの環部を有する。
軸体1060は、双方の連結部(1002d、1003d)が有する環部に挿通される。連結部1002d、連結部1003d及び軸体1060により、所謂蝶番構造を構成することとなる。この蝶番構造により第一挟持体1002及び第二挟持体1003は、基端に存する軸体1060を中心軸として、開閉することが可能となる。この開閉する動作により、一対の挟持部(1002a、1003a)により電車線路用架線CAを挟持し、又は着脱することが可能となる。
【0106】
挟持部(1002a、1003a)について説明する。
第一挟持部1002a及び第二挟持部1003aは、前述の蝶番構造による開閉により、一対の挟持部(1002a、1003a)の間に位置された電車線路用架線CAを挟持する。
【0107】
図33に示すように、第一挟持部1002aは、第二挟持部1003aに向けて開口する略半円形状を有し、第二挟持部1003aは、第一挟持部1002aに向けて開口する略半円形状を有する。
また
図34(B)に示すように、第一挟持体1002及び第二挟持体1003は、蝶番構造が閉じた状態において、第一挟持部1002a及び第二挟持部1003aの内周面により、略円環状を形成する。
【0108】
より詳細には、第一挟持部1002aは、第一挟持体1002の基端側から、第二挟持体1003の略中央部に向けて内面側が略半円状になるように形成される。第一挟持部1002aの先端側では、断面略舌形状である一つの当接部材1002eとして第二挟持体1003に当接する。
第二挟持部1003aは、第二挟持体1003の基端側から、第一挟持体1002の略中央部に向けて内面側が略半円状になるように形成される。第二挟持部1003aの先端側では、略断面舌形状である、二つの当接部材1003eとして第一挟持体1002に当接する。
【0109】
この当接部材(1002e、1003e)を設けることにより、当該当接部材と電車線路用架線CAとの接地面積を大きくし、一対の挟持部(1002a、1003a)内に電車線路用架線CAを保持し易くなり、結果作業性や施工性を高めることが可能となる。
尚、本実施形態においては、当接部材による当接を前提として説明したが、必ずしも当接は必要でなく、電車線路用架線CAを一対の挟持部内に保持し易くなる構成とすることで、作業性や施工性を高めることが可能となる。
【0110】
本体部(1002b、1003b)について説明する。
本体部1002bは、
図33に示すように、電車線路用架線金具1000の上側(+Z軸)に延びて形成され、略中央(YZ平面)に挿入孔1002cが形成される。本体部1002bの上側(+Z軸)は、この挿入孔1002cの曲率よりも小さな曲率の略半円状に形成されている。
図33に示すように、この挿入孔1002cには、第一挟持体1002の後方(-X軸)から雄ねじ体1010が挿入される。挿入孔1002cの孔径は、雄ねじ体1010の頭部1020の外径より小さく且つ雄ねじ部1030b(若しくは軸部1030)の径より大きく形成されている。
【0111】
本体部1003bは、
図33に示すように、電車線路用架線金具1000の上側(+Z軸)に延びて形成され、略中央(YZ平面)に挿入孔1003cが形成される。本体部1003bの上側(+Z軸)は、この挿入孔1003cの曲率よりも小さな曲率の略半円状に形成されている。また、本体部1003bは、雌ねじ体1050を着脱可能とする案内部1007が形成されている。また、本体部1003bは、案内部1007に案内された雌ねじ体1050と係合する係合部1007dが形成されている。
【0112】
挿入孔1003cについて説明する。
図33に示すように、この挿入孔1003cには、第一挟持体1002側(-X軸)から雄ねじ体1010が挿入される。
挿入孔1003cの内周壁部には、第一雌ねじ部1011を構成する第一螺旋条1012が形成される(
図33参照)。第一螺旋条1012は、雄ねじ体1010の雄ねじ部1030bにおける第一螺旋溝1033aと螺合する。尚、本実施形態では、第一雌ねじ部1011は、右ねじである第一螺旋条1012が形成されるが、第一雌ねじ部1011は、右ねじに限定されるものではない。
【0113】
案内部1007について説明する。
案内部1007は、
図33及び
図34(A)に示すように、下側(-Z軸)に開放口1007bを有する略U字形状であり、挿入孔1003cに対峙するように形成されている。案内部1007は、後述する雌ねじ体1050を挟み込めるように断面略U字状の凹溝1007aを有する。
図34(A)の仮想線(破線)は、凹溝1007aが形成された位置を示す。この凹溝1007aは、挿入孔1003cに対峙しながら、上側(+Z軸)に向かって略半円状に形成されている。雌ねじ体1050は、開放口1007bから凹溝1007aに沿って、所定の位置に配されることとなる。
【0114】
ここで電車線路用架線金具1000の設置向きによって、案内部1007の開放口1007bが下側(-Z軸)に位置することがある。この場合、電車線路用架線金具1000から雄ねじ体1010を外すような作業においては、雌ねじ体1050が落下する虞がある。この落下を防止する為に、雌ねじ体1050の落下防止機構を設けてもよい。
本実施形態における電車線路用架線金具1000は、挿入孔1003cの下側(-Z軸)に、案内部1007に装着された雌ねじ体1050と係合する半球状の突起形状の係合部1007dが形成されている。係合部1007dは、雌ねじ体1050と係合することで、雌ねじ体1050が案内部1007から落下することを防止することとなる。
【0115】
係合部1007dを設ける位置は、案内部1007に装着された状態の雌ねじ体1050と係合する関係であればよく、例えば雌ねじ体1050の端部に設けられた取っ手部55aの下側(-Z軸)に、雄ねじ体1050と係合する位置に設けたり、雌ねじ体1050と重畳する本体部1002bの位置に設けたりしてもよい。
【0116】
尚、本実施形態においては、一つの半球状の突起形状の係合部を設けたが、突起形状は半球状に限定されるものでなはい。また突起形状の数も一つに限定されず、複数の形状を設けてもよい。
【0117】
また雌ねじ体1050側に突起形状に対応する凹み部を形成してもよい。
尚、本体部1003bに突起形状を設けずに、雌ねじ体1050に突起形状を設けてもよい。この場合、本体部1003bに突起形状に対応する凹み部を形成してもよい。
【0118】
雌ねじ体1050について説明する。
雌ねじ体1050は、
図33に示すように、略U字形状の板状部材から成り、上側(+Z軸)の一端部に略半円形状の半円部1050cが形成され、他端部に取っ手部55aが形成されている。その他の構成は、雌ねじ体50と同様の構成であり、説明を省略する。
【0119】
尚、応力の観点から、矩形形状である雌ねじ体50よりも、半円部1050cを有する雌ねじ体1050の方が好ましい。これは雄ねじ体が挿入された部分周辺で応力集中が発生し、材料の破壊等を引き起こす可能性がある。半円部1050cを有する雌ねじ体1050では、半円部1050cにおいて応力集中が円周上に均等に分散することができる。一方、矩形形状である雌ねじ体50は、角に応力が集中し易くなるためである。従って、雌ねじ体1050の形状は、応力の観点からは、可能な限り円形形状が好ましい。
【0120】
[第4実施形態]
図20は、第4実施形態に係る電車線路用架線金具400を示す斜視図である。
【0121】
本発明の第4実施形態である電車線路用架線金具400について説明する。
第4実施形態は、電車線路用架線金具400を、
図32(A)に示すトロリ線Tを挟持する曲線引金具900に適用した電車線路用架線金具400として説明するが、これに限定するものではない。例えば、曲線引金具900に限らず、不図示の振止金具にも適用ができる。
又、電車線路用架線CAをトロリ線Tとして説明するが、電車線路用架線CAはトロリ線Tに限定するものでもない。又、カテナリ吊架式として説明するが、直吊式や剛体式等にも適用できる。以下、詳細を説明する。
【0122】
ここで、曲線引金具900は、曲線区間にカテナリ吊架式の架線を張ったときに、トロリ線Tが曲線の内側に外れないように、外側に引っ張る金具であり、アーム部材910の一端に設けられた支持部材920は、電車線路の側部に設けられた支持構造物に連結され、アーム部材910の他端に設けられたイヤー取付金具950は、
図32(B)に示す環状部材951によりイヤー901と接続される。イヤー901は、トロリ線Tを挟持する。
尚、アーム部材910は、金属製のパイプ材であり、支持部材920が設けられた一端側から略中間部までの間を、緩やかに屈曲し、略弓形の湾曲形状に形成され、略中間部からイヤー取付金具950が設けられ他端に向けて略直線状に形成されている。
【0123】
本実施形態において、電車線路用架線金具400は、曲線引金具900のイヤー901として用いることができる。尚、第4実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成要素には第1実施形態及び第2実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0124】
本実施形態である電車線路用架線金具400について説明する。
【0125】
電車線路用架線金具400は、
図20に示すように、雄ねじ体110を締め付けることで、第一挟持体402と第二挟持体403の間に位置するトロリ線Tなどの電車線路用架線CAを挟持する。
第一挟持体402の収容部405は、第二挟持体403の挿嵌部406を収容可能であり、雄ねじ体110の雄ねじ部130bと、第二挟持体403の第一雌ねじ部411とを相対螺転することで、挿嵌部406を収容部405内において進退させ得るように構成されている。更に雌ねじ体50を用いることにより、雄ねじ体110が緩むことを規制する。
【0126】
第2実施形態との違いは、第一挟持体402は、第一部材421と第二部材425とで構成されている点である。
【0127】
電車線路用架線金具400は、
図20及び
図26に示すように、第一挟持体402と第二挟持体403と雄ねじ体110と雌ねじ体50を備える。
【0128】
第一挟持体402は、
図20(A)に示すように、第一部材421と第二部材425で構成される。
【0129】
第一部材421は、正面視(X軸方向視)において全体が略T字形状であり(
図21参照)、下側(―Z側)から、第一挟持部402aと、その上方に連続する本体部402bと、接続部404を有する。
【0130】
第一挟持部402aは、第二挟持体403の第二挟持部403aと対向してトロリ線Tを挟持するように、突き合わせて配置される。第一挟持部402aは、本体部402bの下端縁に沿って、第二挟持体403側へ突出するように形成されている。この第一挟持部402aは、トロリ線Tの周面の長さ方向に沿う溝部Mに対し、側方から嵌まり込む。
【0131】
本体部402bは、正面視(X軸方向視)において矩形形状であり、その略中央に挿入孔402cが形成されている。この挿入孔402cには、
図20に示すように、第一挟持体402の後方(-X側)から、第二部材425を介して、雄ねじ体110が挿入される。
図20及び
図22に示すように、挿入孔402cの孔径は、雌ねじ体110を挿入する入口側において、雄ねじ体110の頭部120の径より小さく、且つ軸部130の径より大きく形成されている。
一方、挿入孔402cの孔径は、挿入孔402cに挿入された雄ねじ体110の出口側において、孔径は拡径し、中空円筒状の収容部405が形成されている。
【0132】
収容部405は、
図22に示すように、X軸方向において、底面405aから、接続部404の軸心Cまで延設される内周壁部405bを有する。即ち、内周壁部405bの先端縁405cは、接続部4の軸心Cとほぼ同じ位置に形成されている。
収容部405は、第二挟持体403の挿嵌部406を収容する。尚、収容部405は、挿嵌部406の全体を収容する必要はなく、挿嵌部406の少なくとも一部を収容可能に形成し、且つ挿嵌部406を収容部405内において、相対的に進退可能に構成されていればよい。
【0133】
尚、収容部405の先端縁405cは、必ずしもX軸方向において、接続部4の軸心Cとほぼ同じ位置に形成する必要はない。例えば、収容部405の先端縁405cの位置は、軸心Cの位置を超えた位置としてもよく、軸心Cの手前の位置でもよい。
【0134】
本体部402bは、収容部405が形成された面とは反対側の面に、第二部材425と嵌まる受部422が形成されている(
図21(B)及び
図22参照)。
【0135】
接続部404は、曲線引金具900(
図32参照)等との接続に用いられる。
接続部404は、曲線引金具900を構成するアーム部材910の一端に設けられたイヤー取付金具950と接続される。接続部404とイヤー取付金具950間は、気温変化等に伴うトロリ線の伸縮に追従できるように、回転機構が用いられる。例えば、回転機構として、
図32(B)に示す円環形状の環状部材951と接続する場合は、接続部404の軸心Cを中心に環状部材951は回動し得ることとなる。
【0136】
尚、必ずしも他の部材との接続に回転機構を設ける必要はなく、接続部404を他の部材と圧着接続等により固着してもよい。
【0137】
尚、接続部404とイヤー取付金具950間には、循環電流による電気的摩耗対策として均圧金具(図示せず)が接続されている。接続部400を構成する大径部404bの上端面の中心には、ボルト穴430が形成されている。均圧金具の一端部は、このボルト穴430においてボルトで固定され、他端部はイヤー取付金具950のボルト穴930(
図32(B)参照)においてボルトで固定される。
【0138】
接続部404は、
図20及び
図21に示すように、円柱形状であり、一端側が小径部404aであり、他端側が小径部404aより径の大きい大径部404bである。
小径部404aの軸方向の長さは、大径部404bの軸方向の長さよりも長い。小径部404aや大径部404bの長さ寸法は、接続部404に接続する部材の仕様等により適宜設定される。
また、本実施形態においては、接続部404は、第一挟持体402に設けたが、これに限らない。例えば、第二挟持体403に接続部404に設けてもよい。
【0139】
また、本実施形態においては、接続部404は、電車線路用架線金具400の上側(+Z軸)に延びて形成されているが、X軸方向及び又はY軸方向に延びて形成されていてもよい。
【0140】
また、電車線路用架線金具400の軽量化を図るべく、接続部404の内部に空洞部を形成してもよい。
図35は、電車線路用架線金具1400を示す斜視図である。
図36は、電車線路用架線金具を示す(A)は上面図、(B)は(A)のA-A矢視断面図である。
【0141】
図35及び
図36に示すように、第一挟持体1402を構成する第一部材1421は、接続部1404を有する。接続部1404は、電車線路用架線金具400における接続部404と同様に、円柱形状であり、一端側が小径部1404aであり、他端側が小径部404aより径の大きい大径部1404bである。
図36(B)に示すように、電車線路用架線金具1400は、接続部1404の内部に空洞部1436が形成される。
空洞部1436は、
図36(A)及び(B)に示すように、接続部1404の大径部1404bの上端面の略中心部において環状の開口部1435を有し、開口部1435から下側方向(-Z軸)に環状の内周壁部1440aを成す空洞が延び、小径部1404a内に斜面状の底面部1440bを有する。
尚、空洞部1436内に雨水等が侵入した場合、電車線路用架線金具1400の外に雨水等を排出し易くすべく、空洞部1436の底面部1440bに、水抜き穴を形成してもよい。水抜き穴1450は、開口部1435より小さな環状の開口であり、斜面状の底面部1440bの最も下側(-Z軸)に形成され、小径部1404aの下端から空洞部1436内の雨水等を外部に排出する。
【0142】
尚、空洞部1436を形成する場合、均圧金具を固定する位置(ボルト穴)は、開口部1435が形成されていない大径部1404bの上端面に設けることができる。この場合、均圧金具を固定する位置として、ボルト穴1430は、
図35に示す仮想線(破線)上に形成することが好ましい。この仮想線は、イヤー取付金具950(
図32(B)参照)と接続されたアーム部材910(
図32(A)参照)の軸線を示す。この仮想線上にボルト穴1430を形成することで、気温変化等に伴うトロリ線の伸縮に対する追従時において、接続部1404の軸心を中心に環状部材951は左右の回動がし易くなる。
【0143】
図20及び
図23に戻り、第二部材425は、正面視(X軸方向視)において、略長方形状であり、その略中央に、挿入孔425bが形成されている。また第二部材425は、上面視(Z軸方向視)において、略C字形状である。
【0144】
第二部材425の雄ねじ体110が挿入される側(―X方向)の外周側面は、円弧状に形成されている。一方、内面側は、上面視(Z軸方向視)において略C字形状の凹部425aが形成されている。凹部425aは、第一部材421の受部422に嵌まり合う形状となっている。
凹部425aと受部422とが嵌まった状態において、第二部材425の挿入孔425bと第一部材421の挿入孔402cの位置が合う。雄ねじ体110は、第二部材425の挿入孔425bから第一部材421の挿入孔402cへ挿入されることとなる。
【0145】
第二挟持体403は、
図20及び
図25に示すように、下側(―Z側)から、第二挟持部403aと、その上方に連続する本体部403bとで構成される。
【0146】
第二挟持部403aは、第一挟持体402の第一挟持部402aと対向してトロリ線Tを挟持するように、突き合わせて配置される。第二挟持部403aは、本体部403bの下端縁に沿って、第一挟持体402側へ突出するように形成されている。この第二挟持部403aは、トロリ線Tの周面の長さ方向に沿う溝部Mに対し、側方から嵌まり込む。
【0147】
ここで、
図26に示すように、第一挟持部402aと第二挟持部403aとでトロリ線Tを挟持した状態において、溝部Mの位置に対応する第一挟持部402aと第二挟持部403a間の距離をDとする。この距離Dの最小距離が、トロリ線Tの溝部Mの弾性域における最大圧縮時幅と同等以上になるように、収容部405の底面405aと挿嵌部406の先端縁406cが当接し、及び/又は収容部405の先端縁405cと第二挟持体403の本体部403bが当接するように構成することが好ましい。
尚、当接する箇所は、これらの箇所に限らない。即ち、第一挟持体402(421、425)の何れかの箇所と第二挟持体403の何れかの箇所とが、当接することで、距離Dの最小距離がそれ以上縮まらないように構成されていればよい。
また、上述において、トロリ線Tにおける溝部Mの位置を例にして、第一挟持部402aと第二挟持部403a間との距離をDとした。しかしながら、溝部Mの位置に対応する第一挟持部402aと第二挟持部403aの距離に限定されない。即ち、第一挟持部402aと第二挟持部403bとにより挟持されるトロリ線Tの特定の位置における、第一挟持部402aと第二挟持部403aの最小距離が、トロリ線Tの材料の弾性域における最大圧縮時幅と同等以上になるように構成されていればよい。
これにより、トロリ線Tは、降伏強度以下の応力により挟持される為、本構成を有しない
電車線路用架線金具と比較して、トロリ線Tの耐久性を高めることが可能となる。
例えば、作業者が、電車線路用架線金具400を設置する際に、雄ねじ体110を締め付け過ぎた場合であっても、第一挟持部402aと第二挟持部403aの間に位置するトロリ線Tに対しては、降伏強度以下の応力を作用させながら挟持力を印加することとなる。
【0148】
本体部403bは、
図24に示すように、その略中央に、雄ねじ体110の雄ねじ部130bを挿入し得る挿入孔403cを有する。
本体部403bの一方側に、第一挟持体402の収容部405に収容され得る挿嵌部406が形成されている。また、本体部403bの他方側に、雌ねじ体50を着脱可能とする案内部407が形成されている。
【0149】
挿嵌部406は、挿入孔403cに連接しており、第一挟持体402へ向けて延びる中空円筒状に形成されている。この挿嵌部406の少なくとも一部は、第一挟持体402の収容部405に収容され得る(
図26参照)。
挿入孔403cには、
図25に示すように、第一雌ねじ部411を構成する第一螺旋条412が形成される。第一螺旋条412は、雄ねじ体110の雄ねじ部130bにおける第一螺旋溝133aと螺合する。
尚、本実施形態では、第一雌ねじ部411は、右ねじである第一螺旋条412が形成されるが、第一雌ねじ部411は、右ねじに限定されるものではない。
【0150】
挿嵌部406の先端縁406cは、第一挟持体402へ向けて、X軸方向に接続部404の軸心Cを超える位置に形成されている。
挿嵌部406は、
図25及び
図26に示すように、第一挟持体402へ向けて、X軸方向に接続部4の軸心Cを超えて延設される内周壁部406bを有する。即ち、内周壁部406bの先端縁406cは、X軸方向において、接続部404の軸心Cを超える位置に形成されている。
【0151】
尚、挿嵌部406は、挿嵌部406の少なくとも一部が、収容部405に収容可能に形成し、且つ挿嵌部406は収容部405内において、相対的に進退可能に構成されていればよい。必ずしも挿嵌部406の先端縁406cは、第一挟持体402へ向けて、X軸方向に接続部404の軸心Cを超える位置に形成される必要はない。挿嵌部406の先端縁406cの位置は、軸心Cの位置まででもよいし、軸心Cの位置まで達していなくてもよい。
【0152】
案内部407は、
図24(A)に示すように、第二挟持体403の本体部403bに形成された挿入孔403cの両側に対峙するように形成されている。
案内部407は、
図24(C)に示すように、板状の雌ねじ体50を挟み込めるように断面略U字状の凹溝407aを有する。
凹溝407aは、その上側(Z軸方向上側)に開放口407bが形成され、凹溝407aの下側(Z軸方向下側)に、ストッパ407cが形成されている。これにより、雌ねじ体50は、開放口407bから凹溝407aに沿って所定の位置に配されることとなる。
【0153】
尚、案内部407の開放口407bは、好ましくは本体部403bの上側(Z軸方向上側)に設けた方がよいが、これに限定されない。例えば、本体部403bの側方(Y軸方向)に案内部407の開放口407bを設けてもよい。接続部404にイヤー取付金具950(
図32参照)が接続されている場合、案内部407の開放口407bが上側(Z軸方向上側)に位置していると、例えば雌ねじ体50を案内部407bから外す際に、イヤー取付金具950が邪魔となる。
一方、
図35に示すように、案内部1407の開放口を、トロリ線Tの延びる方向(Y軸方向)と同様に、本体部403bの側方(Y軸方向)に設けることで、雌ねじ体1050を外す際に、イヤー取付金具950が邪魔になることがない。
【0154】
尚、案内部407は、雨水等の溜めを防ぐために、案内部下側(Z軸方向下側)に水抜きを設けても良い。例えば、ストッパ407cに水抜き穴や溝を設けることで、雨水等の溜めを防ぐことが可能となる。
【0155】
尚、本実施形態においては、案内部407を用いることで、雌ねじ体50を着脱可能とした。しかしながら、案内部407を用いずに、雌ねじ体50を第二挟持体403に設けてもよい。例えば、雌ねじ体50を第二挟持体403に溶接により固定してもよいし、雌ねじ体50と第二挟持体403とを一体物として加工してもよい。
【0156】
雄ねじ体110は、第2実施形態で説明した通りであり、説明は省略する。尚、必ずしも二種類の雄ねじ螺旋溝を有する雄ねじ体110を用いる必要はない。
例えば、第二雌ねじ部53を有する雌ねじ体50を用いない場合には、第1実施形態で説明した雄ねじ体10を用いてもよい。
【0157】
尚、第1実施形態と同様に、雄ねじ体110と第一挟持体402を構成する第二部材425の間に、付勢部として機能する弾性部材9を介在させてもよい。
【0158】
雌ねじ体50は、第2実施形態で説明した通りであり、説明は省略する。
【0159】
ここで特許文献2(
図5乃至
図7参照)に開示されている曲線引金具においては、曲線引金具を構成する部品数が多く、且つ構造の複雑さからトロリ線等の張替え作業等において、施工工数が多い。詳細は後述するが、2回以上のボルト締結作業や、作業時に両手を使う煩雑な作業をする必要があった。
第4実施形態に係る電車線路用架線金具によれば、トロリ線の張替え作業等において、ボルト締結作業等の回数を低減し、従来よりも施工性を高めることを可能とする。以下、詳細を説明する。
【0160】
電車線路用架線金具400とトロリ線T及び曲線引金具900のイヤー取付金具(
図32参照)を取付ける手順を、
図27及び
図37(A)を用いて説明する。例えば、本取付手順は、トロリ線Tの張り替え作業等で実施され得る。
曲線引金具900は、略円環形状であるイヤー取付金具950を備える。電車線路用架線金具400の接続部404は、イヤー取付金具950と接続される。
【0161】
先ず、
図27(A)に示すように、第一挟持体402における第一部材421の接続部404を、イヤー取付金具950における環状部材951(
図32(B)参照)に挿入する(
図37(A)(st1))。
【0162】
尚、イヤー取付金具950は、接続部404の軸心Cを中心に回動し得る。そのため、
図27(B)に示す、イヤー取付金具950における環状部材951の下端面951aと、この下端面951aに対向する第一挟持体402を構成する第二部材425の上端面425d及び第二挟持体403の上端面403dに摺動が発生し、この摺動面が摩耗する。そのため、これらの両端面の間に、ワッシャ960を介在させてもよい。これにより、摺動面における摩耗を抑制することが可能となる。
尚、ワッシャ960を用いない場合は、
図28に示すように、第二部材425の上端面425d及び第二挟持体403の上端面403dであって、第二部材425と第二挟持体403の対向する側のそれぞれの角部に対し、丸みを持たせたアール部Rを形成してもよい。勿論、ワッシャ960も併せて用いることも可能である。
【0163】
次に、
図27(B)に示すように、イヤー取付金具950における環状部材951が接続部404に挿入された状態で、第一部材421の一方側(+X側)から、第二挟持体403を第一部材421に嵌める。これにより、第一部材421の収容部405に、第二挟持体403の挿嵌部406が収容された状態となる。
尚、第二挟持体403を第一部材421に嵌める際には、トロリ線T(図示せず)を第一挟持部402aと第二挟持部403aの間に位置しておく。
【0164】
次に、第二挟持体403と対向する側(-X側)から、第二部材425を第一部材421に嵌める。これにより、第一部材421の受部422と第二部材425の凹部425aが嵌まり合った状態となる(
図37(A)(st2))。
【0165】
尚、第二挟持体403と第二部材425を第一部材に嵌める順番は問わない。第二挟持体403よりも先に、第二部材425を第一部材421に嵌めてもよい。
【0166】
ここで、接続部404の小径部404aにおける外径Rは、大径部404bの外径r1より小さい(
図27(A)参照)。
また、接続部404の小径部404aにおける外径Rは、第一部材421と第二部材425で構成される第一挟持体402と、第二挟持体403とが組み立てられた状態における外径r2より小さい(
図27(C)参照)。
一方、イヤー取付金具950における環状部材951の内径rは、小径部404aの外径Rより若干大きく、且つ大径部の外径r1及び第一挟持体402と第二挟持体403とが組み合わされた状態における外径r2に比べて小さい。
また、イヤー取付金具950における環状部材951の下端面951a(Z軸方向下側)は、第二挟持体403の上端面(Z軸方向上側)において、受けられる構成となっている。
従って、イヤー取付金具950が、電車線路用架線金具400に挿入された状態では、イヤー取付金具950は、接続部404において回動し得るが、電車線路用架線金具400から外れることはない。
【0167】
尚、環状部材951が、接続部404の小径部404aに存する場合において、第一部材421と第二部材425とが嵌合した状態であれば、第二部材425の上端面425dと環状部材951の下端面951aとが当接し、環状部材951の小径部404aからの抜けを防止することとなる。
同様に、第一部材421と第二挟持体403とが組み合わされた状態であれば、第二挟持体403の上端面403dと環状部材951の下端面951aとが当接し、環状部材951の小径部404aからの抜けを防止することとなる。
尚、環状部材951の下端面951aと第二部材425及び第二挟持体403の間にワッシャ960を介在させる場合は、当該ワッシャ960を介して双方が当接することとなる。
【0168】
これにより、電車線路用架線金具400と環状部材951との接続する作業や、電車線用架線の張替え作業において、環状部材951が抜け難くなり、施工性を高めることができる。
【0169】
最後に、
図27(C)に示すように、雄ねじ体110を締め付けて、第一挟持部402aと第二挟持部403a間のトロリ線Tを挟持する(
図37(A)(st3)(st4))。
【0170】
尚、雄ねじ体は、右ねじ部と左ねじ部の両方を有しない雄ねじ体10であっても、右ねじ部と左ねじ部のとを有する雄ねじ体110であっても、前述の電車線路用架線金具を用いた取付手順を適用することが可能である。
【0171】
尚、右ねじ部と左ねじ部とを有する雄ねじ体110を用いる場合は、更に雌ねじ体50を用いることにより、雄ねじ体110が緩むことを規制することができる。この場合、例えば、予め工場出荷時点で第二挟持体403の案内部407に雌ねじ体50を装着してもよいし、又は電車線線路用金具の設置現場において、雌ねじ体50を第二挟持体403の案内部407に装着してもよい。
【0172】
ここで、
図37(B)に従来の曲線引金具におけるトロリ線Tの挟持手順を示す。
【0173】
従来の曲線引金具900において、イヤー2400は、イヤー片(2402、2403)、ボルト(2410、2440)及びリング(2430)で構成されている。特許文献2(
図5乃至
図7参照)に開示されているように、イヤー取付金具950をイヤー2400に接続するには、イヤー2402及び2403のボルト2410による締結によりトロリ線Tを挟持し(
図37(B)(st1)(st2))、その後に、イヤー取付金具950とイヤー(2402、2403)とを、更にリング2430とボルト2440を用いて締結していた(
図37(B)(st3)乃至(st6))。そのため少なくとも2回以上のボルト締結作業が必要であった。
更に、イヤー2400の本体部(2402及び2403)は、環状部材951の下方から上向きに挿設しなければならず、作業的には、一方の手で下側から挿設した本体部(2402及び2403)を保持しながら他方の手で環状部材951の上方から突出した本体部上部にリング(2430)を螺合しなければならず、作業が煩雑で、両手を使わなければならなかった。
一方、本実施形態における電車線路用架線金具400によれば、前述のようにボルト締結作業はトロリ線Tを挟持する為の1回のみであり、且つ第一挟持体402の第一部材421を環状部材951の上から通すだけでよく、一方の手で第一部材421を保持し続ける必要もない。そのため、従来品の両手を使った煩雑な作業を減らすことができ、施工性を高めることが可能となる。
【0174】
次に電車線路用架線金具400と曲線引金具900のイヤー取付金具950(
図32参照)を取付ける手順を、
図38(A)を用いて説明する。例えば、本取付手順は、電車線路用架線金具400を曲線引金具900のイヤー取付金具950に取付けた状態で工場出荷する場合において、工場で実施され得る。
【0175】
図37(A)で示す、電車線路用架線金具400とトロリ線T及び曲線引金具900のイヤー取付金具を取付ける場合の取付手順との違いは、
図37(A)(st2)では、トロリ線Tを挟持するが、
図38(A)(st2)では、トロリ線Tを挟持しない点で異なる。他の取付手順は
図37(A)と同様である。
図38(B)は、従来の電車線路用架線金具2400と曲線引金具900のイヤー取付金具950を取付ける手順を示す。
図38(B)との違いは、
図37(B)(st1)では、トロリ線Tを挟持するが、
図38(B)では、トロリ線Tを挟持しない点で異なる。他の取付手順は
図37(B)と同様である。
【0176】
従って、電車線路用架線金具400と曲線引金具900のイヤー取付金具950を取付ける手順においては、ボルト締結作業はトロリ線Tを挟持する為の1回のみであり、従来の電車線路用架線金具2400よりも施工性を高めることが可能となる。
更に第一挟持体402の第一部材421を環状部材951の上から通すだけでよく、一方の手で第一部材421を保持し続ける必要もない。そのため、従来品の両手を使った煩雑な作業を減らすことが可能となる。
【0177】
次に電車線路用架線金具400におけるトロリ線Tの張替え等の手順を、
図39(A)を用いて説明する。例えば、電車線路用架線金具400が接続された曲線引金具900を用いて、トロリ線の張替えや新規設置する場合における張替え等の手順を示す。基本的には
図37(A)(st2)乃至(st4)の取付手順と同様であり、ボルト締結作業はトロリ線Tを挟持する為の1回のみである(
図39(A)(st2))。
【0178】
一方、従来の電車線路用架線金具2400においては、イヤー片2402及び2403によりトロリ線Tを挟持するには、イヤー2402及び2403のボルト2410による締結によりトロリ線Tを挟持し(
図39(B)(st1)(st2))、その後に、イヤー取付金具950とイヤー(2402、2403)とを、リング2430とボルト2440を用いて締結する(
図39(B)(st3)乃至(st6))。その為、少なくとも二回以上のボルト締結作業が必要となる。
【0179】
従って、電車線路用架線金具400におけるトロリ線Tの張替え等の手順においては、ボルト締結作業はトロリ線Tを挟持する為の1回のみであり、従来の電車線路用架線金具2400よりも施工性を高めることが可能となる。
更に第一挟持体402の第一部材421を環状部材951の上から通すだけでよく、一方の手で第一部材421を保持し続ける必要もない。そのため、従来品の両手を使った煩雑な作業を減らすことが可能となる。
【0180】
[第5実施形態]
図29(A)は、第5実施形態に係る電車線路用架線金具400を示す図である。
【0181】
本実施形態においては、第4実施形態で説明した電車線路用金具400を用いて説明する。
図29(A)に示すように、トロリ線Tを挟持する第一挟持部402aと第二挟持部403aにおける、相互の挟持方向が、カント角に合わせてトロリ線Tの軸回りに所定角度傾斜する構成を具備する点で、第1実施形態乃至第4実施形態における電車線路用金具と異なる。尚、本実施形態において、電車線路用金具400として曲線引金具900を例にして説明するが、これに限定されない。例えば、トロリ線Tを挟持するハンガイヤー、コネクタ等を含む電車線路用架線金具に本構成を適用することができる。
尚、本実施形態では、第1実施形態乃至第4実施形態と同様の構成要素には第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0182】
図29(B)は、トロリ線Tの摩耗の進行を検知するために、内部に検知線dlが埋め込まれたトロリ線Tを示す。トロリ線Tの摩耗の進行は、金属線で形成された検知線dlに、夜間の点検時等に電流を流し、その状況により検知されることとなる。
【0183】
より詳細には、トロリ線Tは、電車のパンタグラフPとの摩擦により、トロリ線Tの鉛直下方における下面部bsにおいて摩耗が発生する。やがて、トロリ線の下方部から摩耗が進行すると、トロリ線Tから検知線dlが露出したり、検知線が断線等し、電流値を検知できなくなったり、電流値が不安定になる。その状況により摩耗の進行が検知される。尚、検知線dlには、金属線に限らず、光ファイバ等を用いてもよい。光ファイバの場合は、光ファイバに光パルス信号を照射し、その状況により摩耗の進行が検知されることとなる。
【0184】
ここで、鉄道線路の曲線区間においては、外側のレールを内側のレールより高くし、2つのレールの頭部上面の高低差により、カントが設けられている。このカントが設けられた曲線区間では、
図29(C)に示すように、電車のパンタグラフPは、水平に対して傾いてトロリ線Tにおける下面部bsより上側部分で接触することになる。一方、トロリ線Tの下面部bsは、曲線区間においてもカントに関係なく鉛直下方に向けて設置される。従って、パンタグラフPは、検知線dlとの距離が近いトロリ線Tの表面部(トロリ線Tの鉛直下方から上側の表面部)と摺動することとなる。そのため、カントが設けられた区間においては、検知線dlの露出や断線等が早まり、早期にトロリ線Tの交換が必要となる場合がある。
【0185】
上述の課題を解決するために、電車線路用架線金具400は、
図29(A)に示すように、トロリ線Tを挟持する第一挟持部402aと第二挟持部403aとを、相互の挟持方向が、カント角に合わせてトロリ線Tの軸回りに所定角度傾斜する構成を具備する。
【0186】
より詳細には、第一挟持部402aと第二挟持部403aは、相互の挟持方向、即ち、電車線路用架線金具400の軸線Cに対し、カント角に合わせてトロリ線の軸周りに水平に対して所定角度θ傾斜するように構成されている。
これにより、トロリ線Tの下面部bsをパンタグラフPに平行に近づけて配置することができ、本構成を有しない電車線路用架線金具と比較して、トロリ線Tの長寿命化を図ることが可能となる。
【0187】
以上、第1実施形態乃至第5実施形態において、電車線路用架線金具(1、100、300、350、400)に、挿嵌部(6、16、406)を収容可能な収容部(5、15、405)を設けることで、電車線路用架線金具を構成する第一挟持体と第二挟持体間で生じ得る剪断力に対する剛性を高めることを可能とした。しかしながら、これらの構成を有しない電車線路用架線金具(1、100、300、350、400)としてもよい。
例えば、電車線路用架線CAを挟持する電車線路用架線金具(1、100、300、350、400)は、適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一螺旋溝(133a)が形成されると共に、該第一螺旋溝(133a)とは相異なるリード角及び/リード方向に設定された第二螺旋溝(133b)とが、軸部の外周面における同一領域内に重複して、形成されて成る雄ねじ部(130b)を有する雄ねじ体(110)と、第一挟持部(2a、402a)と雄ねじ体(110)を挿入し得る挿入孔(2c、402c)を有する第一挟持体(302、352、402)と、第二挟持部(3a、403a)と雄ねじ体(110)の第一螺旋溝(133a)又は第二螺旋溝(133b)の一方に螺合し得る第一螺旋条(12,412)が形成されて成る第一雌ねじ部(11、411)を有する第二挟持体(3、303、353、403)と、雄ねじ体(110)の第一螺旋溝(133a)又は第二螺旋溝(133b)の他方に螺合し得る第二螺旋条(54)が形成されて成る第二雌ねじ部(53)を有する雌ねじ体(50)を備える。そして、第一雌ねじ部(11,411)及び第二雌ねじ部(53)が、それぞれ雄ねじ体(110)の雄ねじ部(130b)に螺合される。本構成の電車線路用架線金具によれば、ねじ体の緩みを防止することができる。
【0188】
以上、上記に説明した第1実施形態乃至第5実施形態の構成要素は、矛盾の無い限り相互に組み合わせて実施することができる。また、各実施形態における電車線路用架線金具を構成する第一挟持体、第二挟持体、雄ねじ体、雌ねじ体の材料として、鉄系材料、非鉄系材料等の金属材料や、樹脂材料、強化樹脂材料等或いはこれらを組み合わせた材料等をいることができる。
【符号の説明】
【0189】
1、100、300、350、400、1000、1400・・・電車線路用架線金具、2、302、352、402、1002、1402・・・第一挟持体、2a、402a、1002a・・・第一挟持部、2b、402b、1002b・・・本体部、2c、402c、1002c・・・挿入孔、2d・・・溝部、2e・・・壁部、3、303、353、403、1003・・・第二挟持体、3a、403a、1003a・・・第二挟持部、3b、403b、1003b・・・本体部、3c、403c、1003c・・・挿入孔、3d・・・位置決め部、4、404・・・接続部、5、15、405・・・収容部、5a、405a・・・底面、5b、405b・・・内周壁部、5c、405c・・・先端縁、6、16、406・・・挿嵌部、6b、406b・・・内周壁部、6c、406c・・先端縁、7、70、407、1007、1407・・・案内部、7a、70a、407a、1007a・・・凹溝、7b、70b、407b、1007b・・・開放口、7c・・・ストッパ、9・・・弾性部材、10、110、1010・・・雄ねじ体、11、411、1011・・・第一雌ねじ部、12、412、1012・・・第一螺旋条、20、120、1020・・・頭部、30、130、1030・・・軸部、30a・・・円筒部、30b・・・雄ねじ部、31・・・第一螺旋溝、50、1050・・・雌ねじ体、50a・・・短辺部分、50b・・・長辺部分、51・・・貫通孔、52・・・板片、52a・・・先端部、53・・・第二雌ねじ部、54・・・第二螺旋条、55・・・板状部材、55a・・・取っ手部、130b、1030b・・・雄ねじ部、131a、1031a・・・右ねじ、131b、1031b・・・左ねじ、133a、1033a・・・第一螺旋溝、133b、1033b・・・第二螺旋溝、401、421、1421・・・第一部材、404a、1404a・・・小径部、404b、1404b・・・大径部、422・・・受部、425・・・第二部材、425a・・・凹部、425b・・・挿入孔、430、930、1430・・・ボルト穴、700・・・ハンガイヤー、701・・・イヤー,710・・・ハンガバー、720・・・フック部、800・・・コネクタ金具、801・・・イヤー、810・・・リード線、820・・・ループ部、900・・・曲線引金具、901・・・イヤー、910・・・アーム部材、920・・・支持部材、950・・・イヤー取付金具、951・・・環状部材、951a・・・下端面、960・・・ワッシャ、1002d、1003d・・・連結部、1002e、1003e・・・当接部材、1007d・・・係合部、1020a・・・六角穴、1050c・・・半円部、1060・・・軸体、1435・・・開口部、1436・・・空洞部、1440a・・・内周壁部、1440b・・・底面部、1450・・・水抜き穴