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特開2024-171341建築物の設計装置、設計方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171341
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】建築物の設計装置、設計方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/27 20200101AFI20241204BHJP
   G06F 30/13 20200101ALI20241204BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20241204BHJP
   G06F 113/10 20200101ALN20241204BHJP
【FI】
G06F30/27
G06F30/13
G06Q50/08
G06F113:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024087470
(22)【出願日】2024-05-29
(31)【優先権主張番号】P 2023087587
(32)【優先日】2023-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521399777
【氏名又は名称】セレンディクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【弁理士】
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】飯田 國大
【テーマコード(参考)】
5B146
5L050
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146DA00
5B146DC03
5B146DC04
5B146DE16
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】3Dプリンタで生産される建築物のコストの削減を可能にすること。
【解決手段】設計装置は、3Dプリンタ素材技術に関する第1パラメータ、3Dプリンタ出力技術に関する第2パラメータ、3Dプリンタ住宅デジタルデータ技術に関する第3パラメータ、3Dプリンタ住宅耐震技術に関する第4パラメータ、3Dプリンタ住宅輸送技術に関する第5パラメータ、3Dプリンタ住宅施工技術に関する第6パラメータ、及び3Dプリンタ住宅最先端技術に関する第7パラメータついての相互の関係性であって、任意の1のパラメータの値を変動させると残りのパラメータのうち少なくとも1つの値に影響を与えて変動させてしまうという関係に基づいて、当該第1パラメータ乃至当該第7パラメータの夫々の値を設定することで、建築物の設計をする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物のデジタルデータに基づいて、3Dプリンタのヘッダから出力される材料を所定方向に積層させていくことで、建築物の少なくとも一部を生産する建築物を設計する設計装置であって、
3Dプリンタ素材技術に関する第1パラメータ、3Dプリンタ出力技術に関する第2パラメータ、3Dプリンタ住宅デジタルデータ技術に関する第3パラメータ、3Dプリンタ住宅耐震技術に関する第4パラメータ、3Dプリンタ住宅輸送技術に関する第5パラメータ、3Dプリンタ住宅施工技術に関する第6パラメータ、及び3Dプリンタ住宅最先端技術に関する第7パラメータについての相互の関係性であって、任意の1のパラメータの値を変動させると残りのパラメータのうち少なくとも1つの値に影響を与えて変動させてしまうという関係性に基づいて、当該第1パラメータ乃至当該第7パラメータの夫々の値を設定することで、建築物の設計をする設計手段、
を備える建築物の設計装置。
【請求項2】
前記設計手段は、
前記建築物の予算、場所、及び面積を含む条件を取得する条件取得手段と、
前記条件に従って前記第3パラメータの値を仮設定し、その仮設定の結果に基づいて前記建築物の意匠の候補を設計する意匠設計手段と、
前記意匠の候補を前記条件に従って生産する際の前記第1パラメータ乃至第7パラメータの値を設定することで、前記建築物の設計及び見積を生成する設計見積手段と、
を有する、
請求項1に記載の建築物の設計装置。
【請求項3】
これまでの建築物の設計及び生産の実績データとシミュレーションデータのうち少なくとも一方が学習用データとして用いられて、前記第1パラメータ乃至前記第7パラメータの相互の前記関係性について所定の機械学習が実行され、その結果得られるモデルが予め用意されており、
前記設計手段は、前記モデルを用いて、前記建築物の前記設計をする、
請求項1又は2に記載の建築物の設計装置。
【請求項4】
建築物のデジタルデータに基づいて、3Dプリンタのヘッダから出力される材料を所定方向に積層させていくことで、建築物の少なくとも一部を生産する建築物の設計を行う設計装置が実行する建築物の設計方法であって、
3Dプリンタ素材技術に関する第1パラメータ、3Dプリンタ出力技術に関する第2パラメータ、3Dプリンタ住宅デジタルデータ技術に関する第3パラメータ、3Dプリンタ住宅耐震技術に関する第4パラメータ、3Dプリンタ住宅輸送技術に関する第5パラメータ、3Dプリンタ住宅施工技術に関する第6パラメータ、及び3Dプリンタ住宅最先端技術に関する第7パラメータについての相互の関係性であって、任意の1のパラメータの値を変動させると残りのパラメータのうち少なくとも1つの値に影響を与えて変動させてしまうという関係性に基づいて、当該第1パラメータ乃至当該第7パラメータの夫々の値を設定することで、建築物の設計をする設計ステップ、
を含む建築物の設計方法。
【請求項5】
建築物のデジタルデータに基づいて、3Dプリンタのヘッダから出力される材料を所定方向に積層させていくことで、建築物の少なくとも一部を生産する建築物の設計を行うコンピュータに、
3Dプリンタ素材技術に関する第1パラメータ、3Dプリンタ出力技術に関する第2パラメータ、3Dプリンタ住宅デジタルデータ技術に関する第3パラメータ、3Dプリンタ住宅耐震技術に関する第4パラメータ、3Dプリンタ住宅輸送技術に関する第5パラメータ、3Dプリンタ住宅施工技術に関する第6パラメータ、及び3Dプリンタ住宅最先端技術に関する第7パラメータについての相互の関係性であって、任意の1のパラメータの値を変動させると残りのパラメータのうち少なくとも1つの値に影響を与えて変動させてしまうという関係性に基づいて、当該第1パラメータ乃至当該第7パラメータの夫々の値を設定することで、建築物の設計をする設計ステップ、
を含む制御処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の設計装置、設計方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物、特に家については、施工するためのコスト及び時間(施工期間)が非常にかかるという課題があった。
この課題を解決すべく、3Dプリンタ(例えば特許文献1参照)で建築物を生産する技術が想定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-128073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、3Dプリンタで生産される従来の建築物では、コストの削減が十分できていない状況である。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、3Dプリンタで生産される建築物のコストの削減を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の建築物の設計装置は、
建築物のデジタルデータに基づいて、3Dプリンタのヘッダから出力される材料を所定方向に積層させていくことで、建築物の少なくとも一部を生産する建築物を設計する設計装置であって、
3Dプリンタ素材技術に関する第1パラメータ、3Dプリンタ出力技術に関する第2パラメータ、3Dプリンタ住宅デジタルデータ技術に関する第3パラメータ、3Dプリンタ住宅耐震技術に関する第4パラメータ、3Dプリンタ住宅輸送技術に関する第5パラメータ、3Dプリンタ住宅施工技術に関する第6パラメータ、及び3Dプリンタ住宅最先端技術に関する第7パラメータについての相互の関係性であって、任意の1のパラメータの値を変動させると残りのパラメータのうち少なくとも1つの値に影響を与えて変動させてしまうという関係性に基づいて、当該第1パラメータ乃至当該第7パラメータの夫々の値を設定することで、建築物の設計をする設計手段、
を備える。
【0007】
本発明の一態様の建築物の設計方法及びプログラムの夫々は、上述の本発明の一態様の建築物の設計装置に対応する方法及びプログラムの夫々である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、3Dプリンタで生産される建築物のコストの削減を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の建築物の設計装置の一実施形態のサーバにより3Dプリンタ住宅が設計されるときに用いられる、3Dプリンタ住宅生産の基幹技術に関する7つの必須パラメータについて説明する図である。
図2図1の7つの必須パラメータの相関関係の一例を示す図である。
図3】本発明の建築物の設計装置の一実施形態に係るサーバを含む情報処理システムの構成の一例を示す図である。
図4図3に示す情報処理システムのうちサーバ、即ち、本発明の建築物の設計装置の一実施形態に係るサーバのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図5図3の情報処理システムにおける図4のサーバの機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
図6図5の機能的構成を有するサーバにより実行される3Dプリンタ住宅設計見積生成処理の一例の流れを説明するフローチャートである。
図7図5の機能的構成を有するサーバから、図6のステップS5の処理で出力された3Dプリンタ住宅の設計書及び見積書の具体例を示している。
図8図5の機能的構成を有するサーバから、図6のステップS5の処理で出力された3Dプリンタ住宅の設計書及び見積書の具体例であって、図7の例とは異なる例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の建築物の設計装置の一実施形態のサーバにより3Dプリンタ住宅が設計されるときに用いられる、3Dプリンタ住宅生産の基幹技術に関する7つの必須パラメータについて説明する図である。
【0011】
ここで、建築物のデジタルデータに基づいて、3Dプリンタのヘッダから出力されるコンクリート、モルタル又はセラミックの材料を、所定方向に積層させていくことで、建築物の少なくとも一部を生産するという生産方法により生成された住居用建築物を、以下、「3Dプリンタ住宅」と呼ぶ。
【0012】
3Dプリンタ住宅の生産の基幹技術及に関するパラメータのうち、3Dプリンタ住宅のコストを考えるうえで必須なパラメータとしては、次の第1パラメータ乃至第7パラメータが存在する。
【0013】
第1パラメータとは、3Dプリンタ素材技術に関するパラメータである。
3Dプリンタ素材技術とは、3Dプリンタ住宅の外壁に用いられる材料の素材(3Dプリンタのヘッダから出力される材料の素材)に関する技術であって、コスト変動に関わる要素として、コスト、積層性、構造強度、耐火性、耐水性、断熱、及び内外装仕上げ美しいという要素が存在する技術である。
よって、第1パラメータとは、3Dプリンタ住宅の外壁に用いられる材料の素材(3Dプリンタのヘッダから出力される材料の素材)として、コスト、積層性、構造強度、耐火性、耐水性、断熱、及び内外装仕上げ美しいという要素のうち少なくとも1つを用いるものである。ここで、2以上の要素が組み合わされたパラメータが用いられる場合もある。さらに、後述の図7乃至図8に示されるように、第1パラメータとして採用される要素は、特にこれらに限定されず、増加させることも可能である。
【0014】
第2パラメータとは、3Dプリンタ出力技術に関するパラメータである。
3Dプリンタ出力技術とは、3Dプリンタがヘッダから材料を出力することに関する技術であって、コスト変動に関わる要素として、材料の圧送性、出力スピード、及び硬化時間という要素が存在する技術である。
よって、第2パラメータとは、材料の圧送性、出力スピード、及び硬化時間という要素のうち少なくとも1つを用いるものである。ここで、2以上の要素が組み合わされたパラメータが用いられる場合もある。さらに、後述の図7乃至図8に示されるように、第1パラメータとして採用される要素は、特にこれらに限定されず、増加させることも可能である。
【0015】
第3パラメータとは、3Dプリンタ住宅デジタルデータ技術に関するパラメータである。
3Dプリンタ住宅デジタルデータ技術とは、上述の生産方法において用いられる「建築物のデジタルデータ」の設計、生産、又は使用に関する技術であって、コスト変動に関わる要素として、施工の効率化、及び、3Dプリンタの限界値のコントロールという要素が存在する技術である。
よって、第3パラメータとは、施工の効率化、及び、3Dプリンタの限界値のコントロールという要素のうち少なくとも1つを用いるものである。ここで、2以上の要素が組み合わされたパラメータが用いられる場合もある。さらに、後述の図7乃至図8に示されるように、第1パラメータとして採用される要素は、特にこれらに限定されず、増加させることも可能である。
【0016】
第4パラメータとは、3Dプリンタ住宅耐震技術に関するパラメータである。
3Dプリンタ住宅耐震技術とは、3Dプリンタ住宅の設計、生産、又は使用における耐震の観点の技術であって、コスト変動に関わる要素として、安全性、施工性、コスト、及び、建築基準法への準拠という要素が存在する技術である。
よって、第4パラメータとは、安全性、施工性、コスト、及び、建築基準法への準拠という要素のうち少なくとも1つを用いるものである。ここで、2以上の要素が組み合わされたパラメータが用いられる場合もある。さらに、後述の図7乃至図8に示されるように、第1パラメータとして採用される要素は、特にこれらに限定されず、増加させることも可能である。
【0017】
第5パラメータとは、3Dプリンタ住宅輸送技術に関するパラメータである。
3Dプリンタ住宅輸送技術とは、3Dプリンタ住宅の少なくとも一部を輸送する技術であって、コスト変動に関わる要素として、輸送距離(最短距離等)、及び、(輸送コストの変動を伴う)輸送手法という要素が存在する技術である。ここで、「3Dプリンタ住宅の少なくとも一部を輸送」と記載したのは、完成した3Dプリンタ住宅を全体として輸送する場合もあるし、現地で部品を組み合わせて3Dプリンタ住宅を生産する場合等において一部の部品を輸送する場合もあるからである。
よって、第5パラメータとは、輸送距離(最短距離等)、及び、(輸送コストの変動を伴う)輸送手法という要素のうち少なくとも1つを用いるものである。ここで、2以上の要素が組み合わされたパラメータが用いられる場合もある。さらに、後述の図7乃至図8に示されるように、第1パラメータとして採用される要素は、特にこれらに限定されず、増加させることも可能である。
【0018】
第6パラメータとは、3Dプリンタ住宅施工技術に関するパラメータである。
3Dプリンタ住宅施工技術とは、3Dプリンタ住宅の施工に関わる技術であって、コスト変動に関わる要素として、施工時間(48時間以内)、及び、(作業者1人あたりの生産性の変動方法が伴う)施工手法(例えば、手法を汎用化することで生産性が低減する)という要素が存在する技術である。
よって、第6パラメータとは、輸送距離(最短距離等)、及び、(輸送コストの変動を伴う)輸送手法という要素のうち少なくとも1つを用いるものである。ここで、2以上の要素が組み合わされたパラメータが用いられる場合もある。さらに、後述の図7乃至図8に示されるように、第1パラメータとして採用される要素は、特にこれらに限定されず、増加させることも可能である。
【0019】
第7パラメータとは、3Dプリンタ住宅最先端技術に関するパラメータである。
3Dプリンタ住宅最先端技術とは、3Dプリンタ住宅の設計、生産、又は使用に関する技術は日進月歩で進化していることからその時点で最先端となっている技術であり、コスト変動に関わる要素として、顧客(完成後の3Dプリンタ住宅の住人)の未来の体験、利便性の向上、及び付加価値の向上という要素が存在する技術である。
よって、第7パラメータとは、顧客(完成後の3Dプリンタ住宅の住人)の未来の体験、利便性の向上、及び付加価値の向上という要素のうち少なくとも1つを用いるものである。ここで、2以上の要素が組み合わされたパラメータが用いられる場合もある。さらに、後述の図7乃至図8に示されるように、第1パラメータとして採用される要素は、特にこれらに限定されず、増加させることも可能である。
【0020】
ここで、重要な点は、第1パラメータ乃至第7パラメータのうち何れかの1つのパラメータ単体自体で、コスト削減しようとすることは従来から行われていた。
しかしながら、第1パラメータ乃至第7パラメータのうち1のパラメータの値をコスト削減するように変化したとしても、残りのパラメータのうち1以上のパラメータの値がコスト上昇するように変化或いは採用できないことになり、3Dプリンタ住宅全体としては必ずしもコスト削減に繋がらない状況であった。ここで、「1つのパラメータの値をコスト削減するように変化したとき、残りのパラメータが採用できない」とは、例えば残りのパラメータが第4パラメータであって耐震の観点から採用できない値になる(つまり、耐震の観点からその値では3Dプリンタ住宅自体を生産することができない)という意味である。
【0021】
本発明者は、このような状況から、第1パラメータ乃至第7パラメータは何れも、自身の値を変動させると、残りのパラメータのうち少なくとも1つの値に影響を与えて変動させてしまうものであり一体不可分なものであることを見つけ出した。
例えば、図2は、図1の7つの必須パラメータの相関関係の一例を示す図である。図2の例では、第1パラメータと第2パラメータとの間に相関関係があることが示されている。
【0022】
そして、本発明者は、次のような設計手法を考案するに至った。
即ち、第1パラメータ乃至第7パラメータについての相互の関係性であって、任意の1のパラメータの値を変動させると、残りのパラメータのうち少なくとも1つの値に影響を与えて変動させてしまうという関係性に基づいて、当該第1パラメータ乃至当該第7パラメータの夫々の値を設定することで、3Dプリンタ住宅の設計をする、という設計手法が本発明者により考案された。
なお、これらの関係性は、これまでの3Dプリンタ住宅の設計及び生産の実績データやシミュレーションデータを複数用いて得られるものであり、第1パラメータ乃至第7パラメータ間の関係のテーブルが作成されて当該テーブルを上述の設計手法に適用してもよい。
ただし、本実施形態では、これまでの3Dプリンタ住宅の設計及び生産の実績データやシミュレーションデータを学習用データとして用いて相関関係についての所定の機械学習(例えばAI)が実行され、その結果得られるモデル(例えばAIモデル)が予め用意されており、当該モデルが上述の設計手法に採用されているものとする。
【0023】
以下、図3以降の図面を参照して、本発明の建築物の設計装置の一実施形態、即ち、上述の本発明者により考案された設計手法が採用された設計装置の一実施形態について説明する。
【0024】
図3は、本発明の建築物の設計装置の一実施形態に係るサーバを含む情報処理システムの構成の一例を示す図である。
図3に示す情報処理システムは、サーバ1と、ユーザ端末2とを含むように構成される。
サーバ1と、ユーザ端末2とは、インターネット(Internet)等のネットワークを介して相互に接続される。
【0025】
サーバ1は、本発明の建築物の設計装置の一実施形態、即ち、上述の本発明者により考案された設計手法に従って3Dプリンタ住宅の設計を行うサーバである。
ユーザ端末2は、3Dプリンタ住宅の顧客たるユーザにより操作される端末であって、
スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ等で構成される。
【0026】
図4は、図3に示す情報処理システムのうちサーバ、即ち、本発明の建築物の設計装置の一実施形態に係るサーバのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0027】
サーバ1は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、バス14と、入出力インターフェース15と、入力部16と、出力部17と、記憶部18と、通信部19と、ドライブ20とを備えている。
【0028】
CPU11は、ROM12に記録されているプログラム、又は、記憶部18からRAM13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM13には、CPU11が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0029】
CPU11、ROM12及びRAM13は、バス14を介して相互に接続されている。このバス14にはまた、入出力インターフェース15も接続されている。入出力インターフェース15には、入力部16、出力部17、記憶部18、通信部19及びドライブ20が接続されている。
【0030】
入力部16は、例えばキーボード等により構成され、各種情報を入力する。
出力部17は、液晶等のディスプレイやスピーカ等により構成され、各種情報を画像や音声として出力する。
記憶部18は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各種データを記憶する。
通信部19は、インターネットを含むネットワークNを介して他の装置(例えば図3のユーザ端末2)との間で通信を行う。
【0031】
ドライブ20には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア30が適宜装着される。ドライブ20によってリムーバブルメディア30から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部18にインストールされる。
また、リムーバブルメディア30は、記憶部18に記憶されている各種データも、記憶部18と同様に記憶することができる。
【0032】
なお、図示はしないが、図3のユーザ端末2も、図4に示すハードウェア構成と基本的に同様の構成を有することができる。したがって、図3のユーザ端末2のハードウェア構成についての説明は省略する。
【0033】
このような図3のサーバ1を構成する各種ハードウェアと各種ソフトウェアとの協働により、図1で上述した本発明者により考案された設計手法に従った各種処理を実行することができる。
【0034】
図5は、図3の情報処理システムにおける図4のサーバの機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0035】
図5に示すように、サーバ1のCPUにおいては、条件取得部51と、意匠設計部52と、設計見積部53と、設計見積書出力部54とが機能する。
また、サーバ1の記憶部18には、意匠設計AI71と、3Dプリンタ住宅情報DB72とが設けられている。
【0036】
以下、図6の3Dプリンタ住宅設計見積生成処理の説明と共に、図5のサーバ1の機能的構成の説明をする。
図6は、図5の機能的構成を有するサーバにより実行される3Dプリンタ住宅設計見積生成処理の一例の流れを説明するフローチャートである。
【0037】
ユーザ(3Dプリンタ住宅の顧客)が、ユーザ端末2を操作して、設計及び見積を所望する3Dプリンタ住宅についての条件として、予算、3Dプリンタ住宅の建築場所(以下、「場所」と略記する)、及び3Dプリンタ住宅の床面積(或いは土地の面積でもよい)(以下、「面積」と略記する)を入力する。
ユーザにより入力された条件(予算、場所、及び面積)が、ユーザ端末2から送信されてサーバ1において受信されると、図6の3Dプリンタ住宅設計見積生成処理が開始する。
【0038】
ステップS1において、図5の条件取得部51は、ユーザにより入力された条件(予算、場所、及び面積)を取得する。
【0039】
ステップS2において、図5の意匠設計部62は、第3パラメータ、及び条件に基づいて、3Dプリンタ住宅の意匠の候補を生成する。
具体的には例えば、意匠設計部62は、3Dプリンタ住宅情報DB72を参照して、条件(特に予算及び面積)に合致するような第3パラメータ(3Dプリンタ住宅デジタルデータ技術)の値を仮設定する。
ここで、3Dプリンタ住宅情報DB72には、第1パラメータ乃至第7パラメータの夫々が取り得る値と、夫々の各値に関する情報とが格納されている。
意匠設計部62は、第3パラメータの値及び図示せぬ必要情報を意匠設計AIに入力し、意匠設計AIから出力される3Dプリンタ住宅の意匠(デジタルデータを設計可能な図面や写真で表現される意匠)の候補を取得する。
即ち、意匠設計AIは、第3パラメータの値及びその他必要情報を入力すると、第3パラメータの値に適した意匠の候補を出力する機能を有するAIモデルである。
【0040】
ステップS3において、図5の設計見積部53は、第1乃至第7パラメータ、及び条件に基づいて、ステップS2で生成された候補の3Dプリンタ住宅の設計及び見積を生成する。
ここで、ステップS2で生成された候補の3Dプリンタ住宅の設計とは、ステップS2で生成された意匠の候補の3Dプリンタ住宅を条件に合致するように生産可能とする第1乃至第7パラメータの値の設定を意味する。
この設計は、本実施形態では、意匠設計AI71により実現される。即ち、意匠設計AI71は、上述のように意匠の候補を生成(出力)すると、3Dプリンタ住宅情報DB72にアクセスして、意匠の候補の3Dプリンタ住宅を条件に合致するように生産可能とする第1乃至第7パラメータの値を決定して、設計見積部53に出力する機能を有する。即ち、意匠設計AI71とは、これまでの3Dプリンタ住宅の設計及び生産の実績データやシミュレーションデータを学習用データとして用いて、第1パラメータ乃至第7パラメータの相互の関係性について所定の機械学習が実行され、その結果得られるAIモデルの一例である。
さらに、意匠設計AI71は、決定した第1乃至第7の値を採用した際の3Dプリンタ住宅の見積も決定して、設計見積部53に出力する機能を有する。
【0041】
ステップS4において、図5のサーバ1のCPU11は、条件変更があるか否かを判定する。
例えば、多少予算オーバーしてもお奨めの意匠を提案できそうな場合や、面積を縮小すると予算内でお奨めの意匠を提案できそうな場合等において、条件の少なくとも一部が変更されて、ステップS4においてNOであると判定されて、変更後の条件に対して上述のステップS2及びS3の処理が実行される。
さらなる条件変更がない場合、ステップS4においてNOであると判定されて、処理はステップS5に進む。
【0042】
ステップS5において、図5の設計見積書出力部54は、1以上の候補の3Dプリンタ住宅の設計書(意匠含む)及び見積書、例えば図7図8に示すような設計書及び見積書をユーザ端末2に出力する。
【0043】
図7は、図5の機能的構成を有するサーバから、図6のステップS5の処理で出力された3Dプリンタ住宅の設計書及び見積書の具体例を示している。
図8は、図5の機能的構成を有するサーバから、図6のステップS5の処理で出力された3Dプリンタ住宅の設計書及び見積書の具体例であって、図7の例とは異なる例を示している。
図7の例は、図6のステップS2において意匠の候補DK1が生成された際の、ステップS5において出力された3Dプリンタ住宅の設計書及び見積書の具体例であり、ステップS3において設定された第1パラメータ乃至第7パラメータの夫々値も記載されている。
図8の例は、図7の例と比較して条件が制限されているため意匠性が低い候補を出力した例であって、図6のステップS2において意匠の候補DK2が生成された際の、ステップS5において出力された3Dプリンタ住宅の設計書及び見積書の具体例であり、ステップS3において設定された第1パラメータ乃至第7パラメータの夫々値も記載されている。
【0044】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0045】
設計装置(サーバ1等)により設計される物は、上述の実施形態では3Dプリンタ住宅とされたが特にこれに限定されず、建築物であれば足りる。
【0046】
また、図3に示すシステム構成及び図4に示すサーバの各装置のハードウェア構成は、本発明の目的を達成するための例示に過ぎず、特に限定されない。
【0047】
また、図5に示す機能ブロック図は、例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した各種処理(例えば図6の処理)を全体として実行できる機能が図3の情報処理システムに備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロック及びデータベースを用いるのかは、特に図5の例に限定されない。
【0048】
また、機能ブロック、モデル、及びデータベースの存在場所も、図5に限定されず、任意でよい。
例えばサーバ1側に配置された機能ブロック、モデル、又はデータベースの少なくとも一部を、ユーザ端末2又は図示せぬ他の情報処理装置が備える構成としてもよい。
【0049】
また、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0050】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。
また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えばサーバの他汎用のスマートフォンやパーソナルコンピュータであってもよい。
【0051】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布される図示せぬリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。
【0052】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0053】
以上を換言すると、本発明が適用される建築物の設計装置は、次のような構成を有していれば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
建築物(例えば3Dプリンタ住宅)のデジタルデータに基づいて、3Dプリンタのヘッダから出力される材料を所定方向に積層させていくことで、建築物の少なくとも一部(例えば壁面等)を生産する建築物の設計装置(例えば図3乃至図5のサーバ)であって、
3Dプリンタ素材技術に関する第1パラメータ、3Dプリンタ出力技術に関する第2パラメータ、3Dプリンタ住宅デジタルデータ技術に関する第3パラメータ、3Dプリンタ住宅耐震技術に関する第4パラメータ、3Dプリンタ住宅輸送技術に関する第5パラメータ、3Dプリンタ住宅施工技術に関する第6パラメータ、及び3Dプリンタ住宅最先端技術に関する第7パラメータ(例えば図1の7つのパラメータ)についての相互の関係性であって、任意の1のパラメータの値を変動させると残りのパラメータのうち少なくとも1つの値に影響を与えて変動させてしまうという関係性(例えば図2に示す関係)に基づいて、当該第1パラメータ乃至当該第7パラメータの夫々の値を設定することで、建築物の設計をする設計手段(例えば図5の条件取得部51乃至設計見積書出力部54を備えるCPU11)
を備えれば足りる。
【0054】
これにより、3Dプリンタで生産される建築物のコストの削減が可能になる。
【0055】
前記設計手段は、
前記建築物の予算、場所、及び面積を含む条件を取得する条件取得手段(例えば図5の条件取得部51)と、
前記条件に従って前記第3パラメータの値を仮設定し、その仮設定の結果に基づいて前記建築物の意匠の候補を設計する意匠設計手段(例えば図5の意匠設計部53)と、
前記意匠の候補を前記条件に従って生産する際の前記第1パラメータ乃至第7パラメータの値を設定することで、前記建築物の設計及び見積を生成する設計見積手段(例えば図5の設計見積部53)と、
を有するようにすることができる。
【0056】
これまでの建築物の設計及び生産の実績データとシミュレーションデータのうち少なくとも一方が学習用データとして用いられて、前記第1パラメータ乃至前記第7パラメータの相互の前記関係性について所定の機械学習が実行され、その結果得られるモデルが予め用意されており、
前記設計手段は、前記モデルを用いて、前記建築物の前記設計をする、
ようにすることができる。
【符号の説明】
【0057】
1・・・サーバ、2・・・ユーザ端末、11・・・CPU、12・・・ROM、13・・・RAM、14・・・バス、15・・・入出力インターフェース、16・・・入力部、17・・・出力部、18・・・記憶部、19・・・通信部、20・・・ドライブ、30・・・リムーバルメディア、51・・・条件取得部、52・・・意匠設計部、53・・・設計見積部、54・・・設計見積書出力部、71・・・意匠設計AI、72・・・3Dプリンタ住宅情報DB
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8