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特開2024-171352駆動回路、インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171352
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】駆動回路、インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241205BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/14 611
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088285
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平岩 賢嗣
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA23
2C056EA24
2C056FA04
2C056FA13
2C057AF34
2C057AF71
2C057AG15
2C057AG44
2C057AK07
2C057AM16
2C057AN05
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】より簡素な構成で適切な電圧の駆動電圧信号を各負荷群に供給することが可能な駆動回路、インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】2以上の所定数のノズルからインクの液滴を吐出させるための所定数の負荷を駆動する駆動電圧信号を出力する駆動回路は、所定数の負荷のうち、2つ以上の負荷から各々構成される複数の負荷群に対して駆動電圧信号を出力する出力部を備える。出力部は、駆動電圧信号に用いられる電圧を生成する電圧生成部と、複数の負荷群に対応して設けられ、電圧生成部が生成した電圧をそれぞれ別個に補正する複数の電圧補正部と、を備える。複数の電圧補正部の各々は、対応する負荷群と電圧生成部との間に設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の所定数のノズルからインクの液滴を吐出させるための前記所定数の負荷を駆動する駆動電圧信号を出力する駆動回路であって、
前記所定数の負荷のうち、2つ以上の前記負荷から各々構成される複数の負荷群に対して前記駆動電圧信号を出力する出力部を備え、
前記出力部は、
前記駆動電圧信号に用いられる電圧を生成する電圧生成部と、
前記複数の負荷群に対応して設けられ、前記電圧生成部が生成した電圧をそれぞれ別個に補正する複数の電圧補正部と、
を備え、
前記複数の電圧補正部の各々は、対応する前記負荷群と前記電圧生成部との間に設けられている、
駆動回路。
【請求項2】
前記複数の電圧補正部の各々は、前記電圧生成部から前記負荷群までの経路に設けられた少なくとも1つのダイオードを有する、
請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
前記複数の電圧補正部の各々は、
前記電圧生成部と前記負荷群との間において並列に設けられ、少なくとも1つのダイオードが各々設けられており通電時の電圧降下の大きさが互いに異なる複数の経路と、
前記複数の経路のうちの1つの経路により前記電圧生成部と前記負荷群とが接続されるように、前記複数の経路の接続状態を切り替える切替部と、
を有する、請求項1に記載の駆動回路。
【請求項4】
前記切替部は、前記複数の経路の各々に、経路の切断及び導通を切り替えるスイッチを有する、請求項3に記載の駆動回路。
【請求項5】
前記切替部は、前記負荷群が有する前記2つ以上の負荷のうち共通のタイミングで駆動される負荷の数に応じて前記複数の経路のうち接続させる1つの経路を選択する、
請求項3に記載の駆動回路。
【請求項6】
前記負荷は容量性負荷であり、
前記複数の電圧補正部の各々は、前記電圧生成部と前記負荷群との間において並列に設けられた往路及び復路を有し、
前記往路には、前記負荷群の前記負荷の充電時に前記電圧生成部から前記負荷群に向かう電流を流す少なくとも1つのダイオードが設けられており、
前記復路には、前記負荷群の前記負荷の放電時に前記負荷群から前記電圧生成部に向かう電流を流す少なくとも1つのダイオードが設けられており、
前記複数の電圧補正部の各々は、前記往路及び前記復路の前記ダイオードがそれぞれ通電時に生じさせる電圧降下により、前記電圧生成部が生成した前記電圧を補正する、
請求項1に記載の駆動回路。
【請求項7】
前記電圧生成部は、当該電圧生成部に入力された駆動波形の信号の電圧を増幅する増幅回路である、請求項1に記載の駆動回路。
【請求項8】
前記電圧生成部は、直流電圧を出力する電源回路であり、
前記出力部は、前記複数の負荷群に対応して設けられた複数の波形生成部を備え、
前記複数の波形生成部の各々は、前記電圧補正部と前記負荷群との間に設けられており、前記電圧補正部による補正後の前記直流電圧の前記負荷群への印加及び非印加を所定の駆動波形パターンに従って切り替えることで前記駆動電圧信号を生成する、
請求項1に記載の駆動回路。
【請求項9】
前記複数の電圧補正部の各々の前記負荷群側に、前記負荷群に対して並列に設けられた抵抗素子又は容量素子を備える、請求項1に記載の駆動回路。
【請求項10】
前記複数の電圧補正部の各々の前記負荷群側に前記抵抗素子を備え、当該抵抗素子の抵抗値は、前記負荷群が有する全ての前記負荷のうち1/20の負荷を前記駆動電圧信号により駆動したときの電流値以上の電流が、前記駆動電圧信号の印加に応じて前記抵抗素子に流れるような大きさに設定されている、
請求項9に記載の駆動回路。
【請求項11】
前記複数の電圧補正部の各々の前記負荷群側に前記容量素子を備え、当該容量素子の容量は、前記負荷群が有する全ての前記負荷のうち1/20の負荷を前記駆動電圧信号により駆動したときの電流値以上の電流が、前記駆動電圧信号の印加に応じて前記容量素子に流れるような大きさに設定されている、
請求項9に記載の駆動回路。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の駆動回路と、
前記所定数のノズルと、
前記所定数の負荷と、
を備えるインクジェットヘッド。
【請求項13】
2以上の所定数のノズルと、
駆動回路から出力された駆動電圧信号により駆動されて前記所定数のノズルからインクの液滴を吐出させる前記所定数の負荷と、
を備えるインクジェットヘッドであって、
前記駆動回路は、
前記所定数の負荷のうち、2つ以上の前記負荷から各々構成される複数の負荷群に対して前記駆動電圧信号を出力する出力部を備え、
前記出力部は、
前記インクジェットヘッドの外部に設けられ、前記駆動電圧信号に用いられる電圧を生成する電圧生成部と、
前記複数の負荷群に対応して設けられ、前記電圧生成部が生成した電圧をそれぞれ別個に補正する複数の電圧補正部と、
を有し、
前記インクジェットヘッドは、前記出力部のうち前記複数の電圧補正部を備え、
前記複数の電圧補正部の各々は、対応する前記負荷群と前記電圧生成部との間に設けられている、
インクジェットヘッド。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項に記載の駆動回路と、
前記所定数のノズルと、
前記所定数の負荷と、
を備えるインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動回路、インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクに圧力変動を付与してノズルからインクの液滴を吐出させ、この液滴を記録媒体に着弾させることで画像などを形成するインクジェット記録装置がある。インクに圧力変動を付与する方法の1つとして、圧電素子などのアクチュエーターに駆動電圧信号を印加することで、インクが充填された圧力室の壁面を変形させる方法がある。駆動電圧信号は、例えば、駆動波形パターンのデジタル信号をアナログ変換した後に、所望の電圧となるように増幅回路によって電力増幅を行うことで生成される。
【0003】
アクチュエーターなどの負荷は、まとまった数の負荷からなる負荷群ごとに(例えば、ノズル列に対応する負荷群ごとに)電圧応答などの特性にばらつきが生じやすい。このため、所望の液滴速度や液滴量でインクの液滴を吐出させるための適正電圧が負荷群ごとに異なる場合がある。これに対し、特許文献1には、ノズル列ごとに増幅回路を設けて、各ノズル列に対応する負荷群に対して適正電圧の駆動電圧信号を別個に供給する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-72063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、適正電圧が異なる負荷群ごとに増幅回路を設けると、回路構成が大型化及び複雑化し、製造コストの上昇を招くという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、より簡素な構成で適切な電圧の駆動電圧信号を各負荷群に供給することが可能な駆動回路、インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の駆動回路の発明は、
2以上の所定数のノズルからインクの液滴を吐出させるための前記所定数の負荷を駆動する駆動電圧信号を出力する駆動回路であって、
前記所定数の負荷のうち、2つ以上の前記負荷から各々構成される複数の負荷群に対して前記駆動電圧信号を出力する出力部を備え、
前記出力部は、
前記駆動電圧信号に用いられる電圧を生成する電圧生成部と、
前記複数の負荷群に対応して設けられ、前記電圧生成部が生成した電圧をそれぞれ別個に補正する複数の電圧補正部と、
を備え、
前記複数の電圧補正部の各々は、対応する前記負荷群と前記電圧生成部との間に設けられている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の駆動回路において、
前記複数の電圧補正部の各々は、前記電圧生成部から前記負荷群までの経路に設けられた少なくとも1つのダイオードを有する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の駆動回路において、
前記複数の電圧補正部の各々は、
前記電圧生成部と前記負荷群との間において並列に設けられ、少なくとも1つのダイオードが各々設けられており通電時の電圧降下の大きさが互いに異なる複数の経路と、
前記複数の経路のうちの1つの経路により前記電圧生成部と前記負荷群とが接続されるように、前記複数の経路の接続状態を切り替える切替部と、
を有する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の駆動回路において、
前記切替部は、前記複数の経路の各々に、経路の切断及び導通を切り替えるスイッチを有する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の駆動回路において、
前記切替部は、前記負荷群が有する前記2つ以上の負荷のうち共通のタイミングで駆動される負荷の数に応じて前記複数の経路のうち接続させる1つの経路を選択する。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の駆動回路において、
前記負荷は容量性負荷であり、
前記複数の電圧補正部の各々は、前記電圧生成部と前記負荷群との間において並列に設けられた往路及び復路を有し、
前記往路には、前記負荷群の前記負荷の充電時に前記電圧生成部から前記負荷群に向かう電流を流す少なくとも1つのダイオードが設けられており、
前記復路には、前記負荷群の前記負荷の放電時に前記負荷群から前記電圧生成部に向かう電流を流す少なくとも1つのダイオードが設けられており、
前記複数の電圧補正部の各々は、前記往路及び前記復路の前記ダイオードがそれぞれ通電時に生じさせる電圧降下により、前記電圧生成部が生成した前記電圧を補正する。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の駆動回路において、
前記電圧生成部は、当該電圧生成部に入力された駆動波形の信号の電圧を増幅する増幅回路である。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の駆動回路において、
前記電圧生成部は、直流電圧を出力する電源回路であり、
前記出力部は、前記複数の負荷群に対応して設けられた複数の波形生成部を備え、
前記複数の波形生成部の各々は、前記電圧補正部と前記負荷群との間に設けられており、前記電圧補正部による補正後の前記直流電圧の前記負荷群への印加及び非印加を所定の駆動波形パターンに従って切り替えることで前記駆動電圧信号を生成する。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1に記載の駆動回路において、
前記複数の電圧補正部の各々の前記負荷群側に、前記負荷群に対して並列に設けられた抵抗素子又は容量素子を備える。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の駆動回路において、
前記複数の電圧補正部の各々の前記負荷群側に前記抵抗素子を備え、当該抵抗素子の抵抗値は、前記負荷群が有する全ての前記負荷のうち1/20の負荷を前記駆動電圧信号により駆動したときの電流値以上の電流が、前記駆動電圧信号の印加に応じて前記抵抗素子に流れるような大きさに設定されている。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項9に記載の駆動回路において、
前記複数の電圧補正部の各々の前記負荷群側に前記容量素子を備え、当該容量素子の容量は、前記負荷群が有する全ての前記負荷のうち1/20の負荷を前記駆動電圧信号により駆動したときの電流値以上の電流が、前記駆動電圧信号の印加に応じて前記容量素子に流れるような大きさに設定されている。
【0018】
また、上記目的を達成するため、請求項12に記載のインクジェットヘッドの発明は、
請求項1~11のいずれか一項に記載の駆動回路と、
前記所定数のノズルと、
前記所定数の負荷と、
を備える。
【0019】
また、上記目的を達成するため、請求項13に記載のインクジェットヘッドの発明は、
2以上の所定数のノズルと、
駆動回路から出力された駆動電圧信号により駆動されて前記所定数のノズルからインクの液滴を吐出させる前記所定数の負荷と、
を備えるインクジェットヘッドであって、
前記駆動回路は、
前記所定数の負荷のうち、2つ以上の前記負荷から各々構成される複数の負荷群に対して前記駆動電圧信号を出力する出力部を備え、
前記出力部は、
前記インクジェットヘッドの外部に設けられ、前記駆動電圧信号に用いられる電圧を生成する電圧生成部と、
前記複数の負荷群に対応して設けられ、前記電圧生成部が生成した電圧をそれぞれ別個に補正する複数の電圧補正部と、
を有し、
前記インクジェットヘッドは、前記出力部のうち前記複数の電圧補正部を備え、
前記複数の電圧補正部の各々は、対応する前記負荷群と前記電圧生成部との間に設けられている。
【0020】
また、上記目的を達成するため、請求項14に記載のインクジェット記録装置の発明は、
請求項1~11のいずれか一項に記載の駆動回路と、
前記所定数のノズルと、
前記所定数の負荷と、
を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、より簡素な構成で適切な電圧の駆動電圧信号を各負荷群に供給することことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】インクジェット記録装置の概略構成を示す図である。
図2】ヘッドユニットの構成を示す模式図である。
図3】インクジェット記録装置の機能構成を示すブロック図である。
図4】駆動回路の構成を示す図である。
図5図4の状態の駆動回路における電流経路を示す図である。
図6】増幅回路の出力電圧、及びアクチュエーター群への印加電圧の経時変化を示す図である。
図7】電圧補正部による電圧補正の具体例を示す図である。
図8】駆動アクチュエーター数を変化させた場合の、第2経路の2つのダイオードにおける電圧降下2Vfの測定値の例を示す図である。
図9】駆動アクチュエーター数を変化させた場合の、第3経路の1つのダイオードにおける電圧降下Vfの測定値の例を示す図である。
図10】変形例1に係る駆動回路の構成を示す図である。
図11】変形例1に係る駆動回路の他の構成を示す図である。
図12】変形例2に係る駆動回路制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
図13】変形例3に係るインクジェット記録装置の機能構成を示すブロック図である。
図14】変形例3に係るインクジェット記録装置の他の機能構成を示すブロック図である。
図15】変形例4に係る駆動回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
(インクジェット記録装置の構成)
図1は、本発明の実施形態であるインクジェット記録装置1の概略構成を示す図である。
インクジェット記録装置1は、搬送部2と、ヘッドユニット3などを備える。
搬送部2は、2本の搬送ローラー2a、2b、及び輪状の搬送ベルト2cを備える。搬送ローラー2a、2bは、図1のX方向に延びる回転軸を中心に回転する。搬送ベルト2cは、2本の搬送ローラー2a、2bにより内側が支持されている。搬送ベルト2cは、搬送ローラー2aが図示略の搬送モーターの動作に応じて回転することで搬送ローラー2a、2bの回りを周回移動する。搬送部2は、搬送ベルト2cの搬送面上に記録媒体Mが載置された状態で搬送ベルト2cが周回移動することで、記録媒体Mを搬送ベルト2cの移動方向に搬送する。よって、搬送ベルト2cの移動方向が、記録媒体Mの搬送方向となる。搬送方向は、図1のY方向に平行である。なお、搬送部2の構成は図1に示したものに限られない。例えば、搬送部2は、回転する円柱状の搬送ドラムを有していてもよい。この場合の搬送部2は、搬送ドラムが回転することで、搬送ドラムの円筒面に載置された記録媒体Mを移動させる。
【0025】
記録媒体Mは、例えば一定の寸法に裁断された枚葉紙である。記録媒体Mは、図示略の給紙装置により搬送ベルト2c上に供給される。この記録媒体Mに対して、ヘッドユニット3からインクが吐出されることで、記録媒体Mに画像が記録される。なお、記録媒体Mとしては、ロール紙が用いられてもよい。また、記録媒体Mの材質は、表面に着弾したインクを定着させることが可能であれば、特に限定されない。例えば、記録媒体Mは、普通紙又は塗工紙等の紙、布帛、又はシート状の樹脂等であってもよい。
【0026】
ヘッドユニット3は、搬送部2により搬送される記録媒体Mに対して、画像データに基づく適切なタイミングでインクを吐出する。これにより、ヘッドユニット3は、記録媒体Mに画像を記録する。本実施形態のインクジェット記録装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのヘッドユニット3を備える。ヘッドユニット3は、インクの吐出方向が鉛直方向下向きとなるように配置される。図1においては、-Z方向が鉛直方向下向きに相当する。
【0027】
図2は、ヘッドユニット3の構成を示す模式図である。詳しくは、図2は、ヘッドユニット3を搬送ベルト2cの搬送面に相対する側から見た平面図である。
ヘッドユニット3は、板状の支持部3aと、複数のインクジェットヘッド10とを有する。複数のインクジェットヘッド10は、支持部3aが有する貫通孔に篏合した状態で支持部3aに固定されている。インクジェットヘッド10は、インク吐出面が支持部3aの貫通孔から搬送ベルト2c側に向けて露出した状態で支持部3aに固定されている。インクジェットヘッド10のインク吐出面は、ノズルNの開口部を有する。
【0028】
インクジェットヘッド10が有する複数のノズルNは、X方向に等間隔に配列されている。本実施形態においては、各インクジェットヘッド10は、4つのノズル列NLa~NLdを有する。ノズル列NLa~NLdの各々は、X方向に等間隔に一次元配列されたノズルNからなる。ノズル列NLa~NLdは、ノズルNのX方向についての位置が重ならないように、X方向の位置が互いにずらされて配置されている。本実施形態では、各ノズル列は256個のノズルNを有する。ただし、ノズル列を構成するノズルNの数はこれに限られない。また、インクジェットヘッド10が有するノズル列の数は4つに限られず、3つ以下又は5つ以上であってもよい。
【0029】
インクジェットヘッド10は、ノズルNごとに、ノズルNからインクの液滴を吐出させるための吐出機構を有する。この吐出機構は、ノズルNに連通してノズルNにインクを供給するチャネル(インク流路)と、チャネル内のインクに圧力変化を付与するアクチュエーター12(図3参照)(負荷)とを有する。アクチュエーター12としては、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)といった圧電素子が用いられる。アクチュエーター12の両側に設けられた電極膜を介してアクチュエーター12に所定の電圧が印加されることで、アクチュエーター12が屈曲変形し、チャネル内のインクに圧力変化が付与される。アクチュエーター12は、その屈曲変形動作時に充放電を伴う容量性負荷である。アクチュエーター12の変形には、せん断モード(シアモード)が用いられてもよく、ベンドモードが用いられてもよい。アクチュエーター12に対して所定の駆動電圧信号を印加することで、当該駆動電圧信号により付与される一連の圧力変化に応じてノズルNからインクの液滴が吐出される。駆動電圧信号は、所定の電圧及び長さを有する1つ以上の台形状のパルス電圧信号からなる。
【0030】
ヘッドユニット3において、複数のインクジェットヘッド10は、ノズルNのX方向についての配置範囲が連続するように千鳥状に配置されている。ヘッドユニット3に含まれるノズルNのX方向についての配置範囲は、記録媒体Mのうち画像が記録可能な領域のX方向の幅をカバーしている。ヘッドユニット3は、画像の形成時には位置が固定されて用いられる。ヘッドユニット3は、記録媒体Mの搬送に応じて搬送方向についての所定間隔の各位置に対してノズルNからインクを吐出することで、シングルパス方式で画像を形成する。
【0031】
図3は、インクジェット記録装置1の機能構成を示すブロック図である。
インクジェット記録装置1は、本体制御部30と、インクジェットヘッド10と、ヘッド駆動制御部20と、搬送制御部41と、通信部42と、操作表示部43などを備える。インクジェット記録装置1の各部は、バス44を介して信号を送受信可能に接続されている。
【0032】
本体制御部30は、インクジェット記録装置1の全体動作を統括制御する。本体制御部30は、CPU31(Central Processing Unit)と、RAM32(Random Access Memory)と、記憶部33などを備える。
【0033】
CPU31は、各種演算処理を行う。CPU31は、記憶部33に記憶されている制御プログラムを読み出して、画像記録やその設定などに係る各種制御処理を行う。
【0034】
RAM32は、CPU31に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。記憶部33は、制御プログラムや設定データなどを記憶する不揮発性メモリーを含む。また、記憶部33は、通信部42を介して外部から取得されたプリントジョブに係る設定や記録対象の画像データなどを一時的に記憶するDRAMなどを備えてもよい。
【0035】
ヘッド駆動制御部20は、記録対象の画像データの各画素データに応じて適切なタイミングで、インクジェットヘッド10のアクチュエーター12を駆動する駆動電圧信号を出力する。ヘッド駆動制御部20は、ヘッド制御部21と、DAC22(デジタルアナログ変換器)と、駆動回路100などを備える。ヘッド駆動制御部20の構成要素は、基板上などにまとめて配置されてもよいし、インクジェット記録装置1の各部に分散して配置されていてもよい。
【0036】
ヘッド制御部21は、記録対象の画像データの有無や画像データの内容に応じてヘッド駆動制御部20の動作を制御する。ヘッド制御部21は、CPU211と、記憶部212などを備える。このヘッド制御部21は、本体制御部30と共通に設けられてもよい。
【0037】
記憶部212には、ノズルNからインクを吐出させたりメニスカスを振動させたりするための駆動波形パターンの情報を含む波形パターンデータ212aが記憶されている。波形パターンデータ212aにおいては、駆動波形パターンがデジタル離散値配列データとして記憶されている。記憶部212としては、ROMや書き換え更新可能なフラッシュメモリーなどの不揮発性メモリーが用いられる。
【0038】
CPU211は、記憶部212又は記憶部33に記憶された記録対象の画像データに基づいて、適切な波形パターンを選択してそのデータを出力する。波形パターンは、各ノズルNからインクを吐出させるか否かなどに従って、ヘッド駆動制御部20により適切な波形パターンの駆動電圧信号が出力されるように選択される。CPU211は、波形パターンデータを、図示略のクロック信号に応じた適切なタイミングで出力する。また、CPU211は、駆動回路100に設けられた第1スイッチ61及び第2スイッチ62(図4参照)のオンオフを制御する。
【0039】
DAC22は、ヘッド制御部21から所定のクロック周波数で出力された駆動波形の信号(波形パターンデータ)をアナログ信号に変換する。DAC22は、得られたアナログ信号を駆動回路100に出力する。
【0040】
駆動回路100は、DAC22から入力されたアナログ信号を駆動電圧信号に変換してインクジェットヘッド10に出力する。駆動回路100は、駆動電圧信号をそれぞれ出力する複数の出力部101を有する。図3では、このうちの1つの出力部101が描かれている。出力部101は、増幅回路102及び電圧補正部103を有する。
【0041】
増幅回路102は、DAC22から入力されたアナログ信号の増幅動作を行う。増幅動作は、例えば、電圧増幅と、当該電圧増幅後の電流増幅とを含む。この増幅動作により、DAC22から出力されたアナログ信号が所定の電圧に増幅される。増幅回路102は、増幅後の電圧値を調整可能に設けられている。増幅回路102は、駆動電圧信号に用いられる電圧を生成する「電圧生成部」に相当する。
電圧補正部103は、増幅回路102が生成(増幅)した電圧を、ダイオード70(図4参照)の電圧降下により補正するダイオード補正回路である。電圧補正部103は、補正後の電圧値の駆動電圧信号をインクジェットヘッド10に出力する。電圧補正部103の構成については後に詳述する。
【0042】
インクジェットヘッド10は、アクチュエーター12を含む上述の吐出機構と、吐出選択スイッチング素子11などを備える。
吐出選択スイッチング素子11は、記録対象の画像データなどに基づいて、各吐出タイミングにおいて、駆動回路100から供給された駆動電圧信号を印加する対象のアクチュエーター12を選択する。言い換えると、吐出選択スイッチング素子11は、インクを吐出させるノズルNを選択する。具体的には、吐出選択スイッチング素子11は、各吐出タイミングにおいてインクを吐出させるノズルNに対応するアクチュエーター12に対して選択的に駆動電圧信号が供給されるように、電圧補正部103と各アクチュエーター12との間の回路の接続状態を切り替える。インクを吐出させないノズルNに対応するアクチュエーター12には、インクのメニスカスを振動させる小振幅の電圧信号が印加されてもよい。ここで、インクのメニスカスは、ノズルNにおけるインクの液面である。
吐出タイミングごとに吐出選択スイッチング素子11により駆動対象のアクチュエーター12が繰り返し選択されることで、画像データに応じた吐出位置にノズルNからインクが吐出されて画像が形成される。
【0043】
搬送制御部41は、搬送ローラー2aを回転させるモーターを動作させて搬送ローラー2aを回転させる。これにより、搬送制御部41は、搬送ベルト2cにより記録媒体Mを適切なタイミング及び速度で移動させる。この搬送制御部41は、本体制御部30と共通の構成であってもよい。
【0044】
通信部42は、所定の通信規格に従って外部機器とのデータの送受信を行う。通信部42は、例えば、利用する通信規格に係る接続端子、及び、通信接続に係るドライバーのハードウェア、例えばネットワークカードを備える。
【0045】
操作表示部43は、画像記録に係るステータス情報やメニューなどを表示する。また、操作表示部43は、ユーザーからの入力操作を受け付ける。操作表示部43は、例えば、液晶パネルによる表示画面、及び当該液晶パネルのドライバーと、液晶画面上に重ねて設けられたタッチパネルなどを備える。操作表示部43は、ユーザーによりタッチ操作がなされた位置と操作の種別に応じた操作検出信号を本体制御部30に出力する。
【0046】
(駆動回路の構成及び動作)
次に、駆動回路100の構成及び動作について説明する。
図4は、駆動回路100の構成を示す図である。
本実施形態の駆動回路100は、インクジェットヘッド10ごとに設けられている。インクジェットヘッド10は、ノズル列NLaの256個のノズルNに対応する256個のアクチュエーター12からなるアクチュエーター群12Ga(負荷群)と、ノズル列NLbの256個のノズルNに対応する256個のアクチュエーター12からなるアクチュエーター群12Gb(負荷群)と、ノズル列NLcの256個のノズルNに対応する256個のアクチュエーター12からなるアクチュエーター群12Gc(負荷群)と、ノズル列NLdの256個のノズルNに対応する256個のアクチュエーター12からなるアクチュエーター群12Gd(負荷群)と、を有する。本実施形態では、ノズル列NLa~NLdの計1024個のノズルNが「所定数のノズル」に対応する。また、アクチュエーター群12Ga~12Gdの計1024個のアクチュエーター12が「所定数の負荷」に相当する。以下では、アクチュエーター群12Ga~12Gdのうち任意の1つを指す場合には「アクチュエーター群12G」と記す。図4では、各アクチュエーター群12Gを代表して、アクチュエーター群12Gに属する1つのアクチュエーター12を表す容量素子が描かれている。インクジェットヘッド10は、4つのアクチュエーター群12Gに対応する4つの吐出選択スイッチング素子11を有する。
【0047】
駆動回路100は、2つの出力部101a、101bを有する。出力部101aは、2つのアクチュエーター群12Ga、12Gbに対して駆動電圧信号を出力する。出力部101bは、2つのアクチュエーター群12Gc、12Gdに対して駆動電圧信号を出力する。なお、1つの出力部101が3つ以上の複数のアクチュエーター群12Gに対して駆動電圧信号を出力する構成としてもよい。
【0048】
出力部101a、101bはそれぞれ、1つの増幅回路102と、2つの電圧補正部103a、103bとを有する。増幅回路102が出力する信号は、2つの電圧補正部103a、103bの各々に入力される。電圧補正部103a、103bはそれぞれ、増幅回路102が生成した信号の電圧をそれぞれ別個に補正し、補正後の信号を出力する。電圧補正部103a、103bが出力する信号が、駆動電圧信号となる。電圧補正部103a、103bの各々が出力する駆動電圧信号は、対応する1つのアクチュエーター群12Gに入力される。出力部101aの電圧補正部103aはアクチュエーター群12Gaに対応し、電圧補正部103bは、アクチュエーター群12Gbに対応している。出力部101bの電圧補正部103aはアクチュエーター群12Gcに対応し、電圧補正部103bは、アクチュエーター群12Gdに対応している。2つの電圧補正部103a、103bの各々は、対応するアクチュエーター群12Gと増幅回路102との間に設けられている。以下では、電圧補正部103a、103bのうち任意の一方を指す場合には「電圧補正部103」と記す。
【0049】
アクチュエーター12は、製造工程における各種条件の相違等に起因して、アクチュエーター群12Gごとに電圧応答などの特性にばらつきが生じやすい。このため、ノズルNから所望の液滴量や液滴速度でインクの液滴を吐出させるための適正電圧が、アクチュエーター群12Gごとに異なる場合がある。
各アクチュエーター群12Gに対して適正電圧の駆動電圧信号を供給する方法として、アクチュエーター群12Gごとに増幅回路102を別個に設ける方法がある。しかしながら、アクチュエーター群12Gごとに増幅回路102を設けると、回路構成が大型化及び複雑化し、製造コストの上昇を招く。
【0050】
そこで、本実施形態では、増幅回路102を2つのアクチュエーター群12Gで共用し、アクチュエーター群12Gごとに電圧補正部103を設けている。そして、増幅回路102が生成した電圧を、アクチュエーター群12Gに対応する電圧補正部103によって補正することで、アクチュエーター群12Gごとに適正電圧の駆動電圧信号を生成している。
【0051】
各電圧補正部103は、増幅回路102からアクチュエーター群12Gまでの経路に設けられた少なくとも1つのダイオード70を有する。詳しくは、各電圧補正部103は、増幅回路102とアクチュエーター群12Gとの間において並列に設けられた第1経路51及び第2経路52(往路)を有する。第1経路51には、第1スイッチ61と、1つのダイオード70とが設けられている。第2経路52には、第2スイッチ62と、直列に繋がれた2つのダイオード70とが設けられている。第1経路51及び第2経路52においては、増幅回路102からアクチュエーター群12Gに向かう電流を流し、逆向きの電流を流さない向きでダイオード70が設けられている。
【0052】
各電圧補正部103は、さらに、第1経路51及び第2経路52に対して並列に設けられた第3経路53(復路)を有する。第3経路53には、1つのダイオード70が設けられている。第3経路53においては、アクチュエーター群12Gから増幅回路102に向かう電流を流し、逆向きの電流を流さない向きでダイオード70が設けられている。
【0053】
各ダイオード70は、通電時の電圧降下の大きさがほぼ等しいものとする。以下では、1つのダイオード70における電圧降下の大きさを「Vf」と記す。ダイオード70としては、通電時の電圧降下が小さく高速にスイッチングが可能なショットキーバリアダイオードが好適に用いられる。ただし、ダイオード70の種類はこれに限られない。
【0054】
第1スイッチ61及び第2スイッチ62は、例えばFET(電界効果トランジスタ)である。第1スイッチ61及び第2スイッチ62により、第1経路51及び第2経路52の接続状態を切り替える切替部60が構成されている。第1スイッチ61及び第2スイッチ62は、CPU211により、第1スイッチ61及び第2スイッチ62のうちの一方がオン(導通状態)となり、他方がオフ(非導通状態)となるように制御される。図4では、電圧補正部103aにおいて、第1スイッチ61がオン、第2スイッチ62がオフとなっており、電圧補正部103bにおいて、第1スイッチ61がオフ、第2スイッチ62がオンとなっている。
【0055】
図5は、図4の状態の駆動回路100における電流経路を示す図である。
図4では、出力部101aが例示されているが、出力部101bの構成も同様である(以降の図10、11、15についても同様)。
図6は、増幅回路102の出力電圧、及びアクチュエーター群12Gへの印加電圧の経時変化を示す図である。
図6の実線Lは、増幅回路102からの出力電圧の台形波を表す。実線Lの波形は、下側電圧が0(V)、上側電圧がVo(V)であるものとする。この台形波の立ち上がりの開始時点から立ち下りの開始時点までを期間T1とし、立ち下がりの開始時点から次の立ち下りの開始時点までを期間T2とする。
図6の鎖線Laは、アクチュエーター群12Gaに印加される駆動電圧信号の台形波を表し、破線Lbは、アクチュエーター群12Gbに印加される駆動電圧信号の台形波を表す。
【0056】
図5においては、電流経路が太線の矢印で描かれている。
電圧補正部103aにおいては、第1スイッチ61がオン、第2スイッチ62がオフとなっている。このため、期間T1の開始後においてアクチュエーター群12Gaが充電される際には、増幅回路102から第1経路51(往路)を経てアクチュエーター群12Gaに至る充電時経路RT1に電流が流れる。このとき、第1経路51においては1つのダイオード70により電圧降下Vfが生じる。よって、図6に示す鎖線Laのように、増幅回路102が電圧Voを出力している期間において、アクチュエーター群12Gaに印加される電圧は(Vo-Vf)となる。
また、期間T2の開始後においてアクチュエーター群12Gaが放電される際には、アクチュエーター群12Gaから第3経路53(復路)を経て増幅回路102に至る放電時経路RT2に電流が流れる。このとき、第3経路53においては1つのダイオード70により電圧降下Vfが生じる。よって、図6に示す鎖線Laのように、増幅回路102が電圧0を出力している期間において、アクチュエーター群12Gaには、電圧降下Vfの分だけ高い電圧Vfが印加される。
よって、アクチュエーター群12Gaに印加される駆動電圧信号の電圧振幅Aは、
A=(Vo-Vf)-Vf=Vo-2Vf ・・・(1)
となる。
【0057】
一方、電圧補正部103bにおいては、第1スイッチ61がオフ、第2スイッチ62がオンとなっている。このため、期間T1においてアクチュエーター群12Gbが充電される際には、増幅回路102から第2経路52(往路)を経てアクチュエーター群12Gaに至る充電時経路RT1に電流が流れる。このとき、第2経路52においては2つのダイオード70により電圧降下2Vfが生じる。よって、図6に示す破線Lbのように、増幅回路102が電圧Voを出力している期間において、アクチュエーター群12Gbに印加される電圧は(Vo-2Vf)となる。
また、期間T2においてアクチュエーター群12Gbが放電される際には、アクチュエーター群12Gbから第3経路53(復路)を経て増幅回路102に至る放電時経路RT2に電流が流れる。このとき、第3経路53においては1つのダイオード70により電圧降下Vfが生じる。よって、図6に示す破線Lbのように、増幅回路102が電圧0を出力している期間において、アクチュエーター群12Gbには、電圧降下Vfの分だけ高い電圧Vfが印加される。
よって、アクチュエーター群12Gbに印加される駆動電圧信号の電圧振幅Bは、
B=(Vo-2Vf)-Vf=Vo-3Vf ・・・(2)
となる。
【0058】
このように、通電時の電圧降下の大きさが互いに異なる第1経路51及び第2経路52のうち1つの経路を選択することで、電圧補正部103ごとに駆動電圧信号の電圧及び電圧振幅を別個に補正することができる。すなわち、電圧補正部103ごとに、対応するアクチュエーター群12Gの適正電圧(詳しくは、適正な電圧振幅)に応じて適切な1つの経路を選択することで、1つの増幅回路102の出力電圧をアクチュエーター群12Gごとに補正して、適正電圧を供給することができる。
【0059】
図7は、電圧補正部103による電圧補正の具体例を示す図である。
図7に示す例においては、アクチュエーター群12Gaの推奨電圧(推奨の電圧振幅)が19.0V、アクチュエーター群12Gaの推奨電圧が18.5Vであるものとする。また、推奨電圧を中心として±0.2Vの範囲内の電圧振幅が適正電圧であるものとする。各ダイオード70の電圧降下Vfは、0.26Vであるものとする。
この場合においては、増幅回路102の出力電圧Voを19.4Vに設定し、図5に示すように、電圧補正部103aにおいて第1スイッチ61をオンに設定し、電圧補正部103bにおいて第2スイッチ62をオンに設定することで、適正電圧が得られる。
詳しくは、このような設定とすることで、電圧補正部103aによる補正後電圧は、上記の式(1)で表される。すなわち、電圧補正部103aの充電時経路RT1及び放電時経路RT2におけるダイオード70による電圧降下は全体で-2Vf=-0.52Vとなり、補正後電圧は、19.4-0.52=18.88Vとなる。よって、推奨電圧の19.0Vとの差が-0.12Vとなり、適正電圧が得られる。
また、電圧補正部103bによる補正後電圧は、上記の式(2)で表される。すなわち、電圧補正部103bの充電時経路RT1及び放電時経路RT2におけるダイオード70による電圧降下は全体で-3Vf=-0.78Vとなり、補正後電圧は、19.4-0.78=18.62Vとなる。よって、推奨電圧の18.5Vとの差が+0.12Vとなり、適正電圧が得られる。
【0060】
(変形例)
続いて上記実施形態の各種変形例について説明する。以下の各変形例では、上記実施形態との相違点について説明し、上記実施形態と共通する構成については共通の符号を付して説明を省略する。
【0061】
<変形例1>
一般に、ダイオード70における電圧降下Vfは、ダイオード70に流れる電流の大きさに応じて変化する。電圧補正部103においてダイオード70に流れる電流は、駆動アクチュエーター数が多いほど大きくなる。ここで、駆動アクチュエーター数は、1つのアクチュエーター群12Gのうち、共通の吐出タイミングにおいて、インクの液滴が吐出されるように駆動されるアクチュエーター12の数である。駆動アクチュエーター数は、或る吐出タイミングにおいて、1つのノズル列のうちインクを吐出させるノズルNの数と言うこともできる。駆動アクチュエーター数は、圧力変化を付与するチャネルの数に等しいので、「駆動チャネル数」と言い換えてもよい。
【0062】
図8は、駆動アクチュエーター数を変化させた場合の、第2経路52の2つのダイオード70における電圧降下2Vfの測定値の例を示す図である。
図9は、駆動アクチュエーター数を変化させた場合の、第3経路53の1つのダイオード70における電圧降下Vfの測定値の例を示す図である。
以下では、アクチュエーター群12Gにおけるアクチュエーター12の数をn(本実施形態では、n=256)とする。図8及び図9に示すように、駆動アクチュエーター数が増加するに従ってダイオード70における電圧降下が増加する傾向がある。駆動アクチュエーター数の増加幅に対する電圧降下の増加幅の割合(以下、「電圧降下増加率」と記す)は、駆動アクチュエーター数が少ない領域ほど大きくなっている。例えば、駆動アクチュエーター数が1以上n/3以下の領域における電圧降下率よりも、駆動アクチュエーター数が1以上n/5以下の領域における電圧降下増加率の方が大きい。同様に、駆動アクチュエーター数が1以上n/5以下の領域における電圧降下率よりも、駆動アクチュエーター数が1以上n/10以下の領域における電圧降下増加率が大きい。また、駆動アクチュエーター数が1以上n/10以下の領域における電圧降下率よりも、駆動アクチュエーター数が1以上n/20以下の領域における電圧降下増加率が大きい。
一方、駆動アクチュエーター数がn/3より多い領域では、駆動アクチュエーター数の増加に対する電圧降下の増加の態様が、インクの液滴の吐出特性にほぼ影響しない程度に緩やかになる。
【0063】
このように、駆動アクチュエーター数が少なく電流が小さい領域ほど、駆動アクチュエーター数の変化に応じてダイオード70の電圧降下Vfが大きく変化する。電圧降下Vfの変化は、アクチュエーター群12Gに印加される駆動電圧信号の電圧の変化に繋がる。駆動電圧信号の電圧が変化すると、その変化量に応じて、吐出されるインクの液滴の液滴速度や液滴量が変化する。よって、駆動アクチュエーター数が少なく電流が小さい領域ほど、インクの液滴の液滴速度や液滴量が変化しやすく、画質が低下しやすい。この現象は、負荷クロストークとも呼ばれる。
そこで、本変形例では、駆動アクチュエーター数によらずに一定以上の電流がダイオード70に流れるように駆動回路100の回路構成が調整されている。
【0064】
図10は、変形例1に係る駆動回路100の構成を示す図である。
図10に示す駆動回路100は、各電圧補正部103のアクチュエーター群12G側に、アクチュエーター群12Gに対して並列に設けられた抵抗素子81を備える。抵抗素子81の抵抗値は、駆動電圧信号(例えば、駆動電圧信号の上側電圧)の印加に応じて、駆動アクチュエーター数によらずに所定の下限値以上の電流が抵抗素子81に流れるような大きさに設定されている。図10では、抵抗素子81がインクジェットヘッド10の外部に設けられているが、抵抗素子81をインクジェットヘッド10の内部に設けてもよい。
【0065】
図11は、変形例1に係る駆動回路100の他の構成を示す図である。
図11に示す駆動回路100は、各電圧補正部103のアクチュエーター群12G側に、アクチュエーター群12Gに対して並列に設けられた容量素子82を備える。容量素子82の容量は、駆動電圧信号(例えば、駆動電圧信号の上側電圧)の印加に応じて、駆動アクチュエーター数によらずに所定の下限値以上の電流が抵抗素子81に流れるような大きさに設定されている。図11では、容量素子82がインクジェットヘッド10の外部に設けられているが、容量素子82をインクジェットヘッド10の内部に設けてもよい。
【0066】
上記の所定の下限値は、アクチュエーター群12Gが有する全てのアクチュエーター12のうち所定の第1の基準数のアクチュエーター12を駆動電圧信号により駆動したときの電流値である。ここで、第1の基準数は、例えばn/20としてもよい。なお、電圧降下Vfの変化をより小さくするために、第1の基準数は、n/10とすることがより好ましく、n/5とすることがさらに好ましく、n/3とすることがさらに好ましい。ただし、第1の基準数が大きいほど、流れる電流が大きくなって増幅回路102の発熱量が増大するので、第1の基準数はn/3以下とすることが好ましい。
【0067】
<変形例2>
変形例2は、変形例1において示したダイオード70の電圧降下Vfの変動に起因する課題を、変形例1とは異なる方法で解決するものである。
本変形例では、アクチュエーター群12Gにおける駆動アクチュエーター数に応じて、第1経路51及び第2経路52のうち接続(導通)させる1つの経路を切り替える。詳しくは、駆動アクチュエーター数が第2の基準数未満である場合における電流経路上のダイオード70の数が、駆動アクチュエーター数が第2の基準数以上である場合における電流経路上のダイオード70の数よりも多くなるように電流経路を切り替える。なお、充電時経路RT1にダイオード70の数が互いに異なる3つ以上の並列の経路を設けて、駆動アクチュエーター数に応じて当該3つ以上の経路を切り替えてもよい。
【0068】
例えば、図5に示す駆動回路100において、駆動アクチュエーター数が所定の第2の基準数未満である場合には、第2スイッチ62をオンにして、電圧降下が-2Vfである第2経路52を導通させる。第2の基準数は、電圧降下増加率が大きいn/3以下の範囲内で適宜定めることができ、例えばn/5、n/10、又はn/20のいずれかとしてもよい。これにより、1つのダイオード70当たりの電圧降下Vfが小さい場合に、充電時経路RT1において2つのダイオード70に電流を流して、充電時経路RT1における電圧降下が小さくなり過ぎないように調整することができる。
一方、駆動アクチュエーター数が所定の第2の基準数以上である場合には、第1スイッチ61をオンにして、電圧降下が-Vfである第1経路51を導通させる。これにより、1つのダイオード70当たりの電圧降下Vfが大きい場合に、充電時経路RT1において1つのダイオード70に電流を流して、充電時経路RT1における電圧降下が大きくなり過ぎないように調整することができる。
【0069】
図12は、変形例2に係る駆動回路制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
駆動回路制御処理は、例えば、画像形成が開始された場合にヘッド制御部21のCPU211(切替制御部)により実行される。
駆動回路制御処理が開始されると、CPU211は、インクの吐出タイミングであるか否かを判別し(ステップS1)、インクの吐出タイミングではないと判別された場合には(ステップS1で“NO”)、再度ステップS1を実行する。インクの吐出タイミングであると判別された場合には(ステップS1で“YES”)、CPU211は、その吐出タイミングにおける駆動アクチュエーター数が第2の基準数以上であるか否かを判別する(ステップS2)。
【0070】
駆動アクチュエーター数が第2の基準数以上であると判別された場合には(ステップS2で“YES”)、CPU211は、切替部60に制御信号を送信して、第1経路51の第1スイッチ61をオンさせ、第2経路52の第2スイッチ62をオフさせる(ステップS3)。一方、駆動アクチュエーター数が第2の基準数未満であると判別された場合には(ステップS2で“NO”)、CPU211は、切替部60に制御信号を送信して、第1経路51の第1スイッチ61をオフさせ、第2経路52の第2スイッチ62をオンさせる(ステップS4)。
【0071】
ステップS3又はS4が終了すると、CPU211は、画像形成が終了したか否かを判別する(ステップS5)。CPU211は、画像形成が終了していないと判別された場合には(ステップS5で“NO”)、処理をステップS1に戻し、画像形成が終了したと判別された場合には(ステップS5で“YES”)、駆動回路制御処理を終了させる。
【0072】
<変形例3>
次に、変形例3について説明する。変形例3は、変形例1又は変形例2と組み合わせてもよい。
上記実施形態では、駆動回路100がインクジェットヘッド10の外部に設けられていたが、駆動回路100の少なくとも一部は、インクジェットヘッド10に設けられていてもよい。
【0073】
図13は、変形例3に係るインクジェット記録装置1の機能構成を示すブロック図である。
図13に示すインクジェット記録装置1では、インクジェットヘッド10に、駆動回路100のうちの電圧補正部103が設けられている。一方、駆動回路100のうちの増幅回路102は、インクジェットヘッド10の外部に設けられている。
【0074】
図14は、変形例3に係るインクジェット記録装置1の他の機能構成を示すブロック図である。
図14に示すインクジェット記録装置1では、インクジェットヘッド10に、駆動回路100の全体、及びDAC22が設けられている。なお、DAC22をインクジェットヘッド10の外部に設けてもよい。また、図14の構成において、さらに、ヘッド制御部21の全体をインクジェットヘッド10に設けてもよい。
【0075】
<変形例4>
次に、変形例4について説明する。変形例4は、変形例1~3のうちの少なくとも1つと組み合わせてもよい。
【0076】
図15は、変形例4に係る駆動回路100の構成を示す図である。
本変形例の駆動回路100は、増幅回路102に代えて、所定の大きさの直流電圧を出力する電源回路104を備える。各電圧補正部103は、電源回路104が出力する直流電圧を補正して出力する。電源回路104は、駆動電圧信号に用いられる電圧を生成する「電圧生成部」に相当する。
【0077】
本変形例の出力部101aは、複数のアクチュエーター群12Gに対応して設けられた複数の出力電圧選択部105(波形生成部)を備える。詳しくは、出力部101aは、電圧補正部103aとアクチュエーター群12Gaとの間に出力電圧選択部105aを備える。また、出力部101aは、電圧補正部103bとアクチュエーター群12Gbとの間に出力電圧選択部105bを備える。出力部101aのうち出力電圧選択部105a、105bは、インクジェットヘッド10に設けられている。出力部101bの構成も、出力部101aの構成と同様である。
【0078】
各出力電圧選択部105は、電圧補正部103による補正後の直流電圧のアクチュエーター群12Gへの印加及び非印加を所定の駆動波形パターンに従って切り替えることで駆動電圧信号を生成する。
具体的には、出力電圧選択部105は、PチャネルFET1051及びNチャネルFET1052の組み合わせからなるCMOSFETである。PチャネルFET1051のソースは電圧補正部103に接続されている。PチャネルFET1051のドレイン及びNチャネルFET1052のドレインは吐出選択スイッチング素子11に接続されている。NチャネルFET1052のソースは接地電位とされている。PチャネルFET1051のゲート及びNチャネルFET1052のゲートには、駆動波形パターンを反転させた信号Sが入力される。信号Sがローレベルの期間は、PチャネルFET1051がオン、NチャネルFET1052がオフとなって、電圧補正部103の出力電圧が吐出選択スイッチング素子11に入力される。信号Sがハイレベルの期間は、PチャネルFET1051がオフ、NチャネルFET1052がオンとなって、接地電圧が吐出選択スイッチング素子11に入力される。これにより、吐出選択スイッチング素子11には、信号Sを反転させた駆動波形パターンの駆動電圧信号が入力される。この構成においては、アクチュエーター12の放電時には、NチャネルFET1052を通って接地点に電流が流れるので、電圧補正部103における第3経路53は省略することができる。
【0079】
このような構成のインクジェットヘッド10は、デジタル駆動ヘッドとも呼ばれる。デジタル駆動ヘッドにおいても、電源回路104を2つのアクチュエーター群12Gで共用することができる。また、アクチュエーター群12Gごとに電源回路104の出力電圧を補正して、各アクチュエーター群12Gに適正電圧の駆動電圧信号を供給することができる。
【0080】
(効果)
以上のように、本実施形態に係る駆動回路100は、2以上の所定数のノズルNからインクの液滴を吐出させるための所定数のアクチュエーター12を駆動する駆動電圧信号を出力する。駆動回路100は、所定数のアクチュエーター12のうち、2つ以上のアクチュエーター12から各々構成される複数のアクチュエーター群12Gに対して駆動電圧信号を出力する出力部101を備える。出力部101は、駆動電圧信号に用いられる電圧を生成する増幅回路102と、複数のアクチュエーター群12Gに対応して設けられ、増幅回路102が生成した電圧をそれぞれ別個に補正する複数の電圧補正部103と、を備える。複数の電圧補正部103の各々は、対応するアクチュエーター群12Gと増幅回路102との間に設けられている。このような構成により、1つの増幅回路102を複数のアクチュエーター群12Gで共用することができる。また、電圧補正部103によって、アクチュエーター群12Gごとに電源回路104の出力電圧を補正して、各アクチュエーター群12Gに適正電圧の駆動電圧信号を供給することができる。よって、より簡素な構成で適切な電圧の駆動電圧信号を各アクチュエーター群12Gに供給することができる。
【0081】
複数の電圧補正部103の各々は、増幅回路102からアクチュエーター群12Gまでの経路に設けられた少なくとも1つのダイオード70を有する。これにより、増幅回路102により生成された電圧を、ダイオード70の通電時の電圧降下Vfにより補正することができる。通電時の抵抗が小さいダイオード70を用いることで、RC回路の時定数を小さく抑えることができる。よって、駆動電圧信号の波形なまりを生じにくくすることができる。この結果、所望の駆動電圧信号により所望の液滴速度及び液滴量でインクの液滴を吐出させることができる。
【0082】
複数の電圧補正部103の各々は、増幅回路102とアクチュエーター群12Gとの間において並列に設けられた第1経路51及び第2経路52を備える。第1経路51及び第2経路52には、それぞれ少なくとも1つのダイオード70が設けられており、通電時の電圧降下の大きさが互いに異なる。複数の電圧補正部103の各々は、第1経路51及び第2経路52のうちの1つの経路により増幅回路102とアクチュエーター群12Gとが接続されるように、第1経路51及び第2経路52の接続状態を切り替える切替部60を有する。これにより、電流経路を切り替える簡易な方法で、増幅回路102により生成された電圧を補正することができる。
【0083】
切替部60は、第1経路51及び第2経路52の各々に、経路の切断及び導通を切り替えるスイッチを有する。これにより、いずれの経路を選択してもスイッチの抵抗成分が変わらないようにすることができる。よって、RC回路の時定数が一定となり、駆動電圧信号の波形なまりが変動しにくいので、液滴速度や液滴量にばらつきが生じにくい。
【0084】
変形例2において、切替部60は、アクチュエーター群12Gが有する2つ以上のアクチュエーター12のうち共通のタイミングで駆動されるアクチュエーター12の数に応じて第1経路51及び第2経路52のうち接続させる1つの経路を選択する。言い換えると、CPU211は、上記共通のタイミングで駆動されるアクチュエーター12の数に応じて、第1経路51及び第2経路52のうち接続させる1つの経路を切り替えるように切替部60を制御する。これにより、1つのダイオード70当たりの電圧降下Vfの大きさに応じて、適切な数のダイオード70を有する電流経路を選択することができる。よって、駆動アクチュエーター数に応じて電圧降下Vfの大きさが変動しても、電流経路全体におけるダイオード70の電圧降下が大きく変動しないようにすることができる。
【0085】
負荷として、容量性負荷であるアクチュエーター12が用いられている。第1経路51には、アクチュエーター群12Gのアクチュエーター12の充電時に増幅回路102からアクチュエーター群12Gに向かう電流を流す少なくとも1つのダイオード70が設けられている。第2経路52には、アクチュエーター群12Gのアクチュエーター12の放電時にアクチュエーター群12Gから増幅回路102に向かう電流を流す少なくとも1つのダイオード70が設けられている。複数の電圧補正部103の各々は、第1経路51又は第2経路52のダイオード70がそれぞれ通電時に生じさせる電圧降下により、増幅回路102が生成した電圧を補正する。このような構成により、充電時経路RT1、及び放電時経路RT2の各々において電圧降下を生じさせて電圧を補正することができる。よって、より柔軟かつ正確に電圧を補正することができる。
【0086】
電圧生成部として、入力された駆動波形の信号の電圧を増幅する増幅回路102が用いられる場合には、駆動回路100における増幅回路102の数を低減して回路構成を簡素化することができる。また、駆動回路100の製造コストを低減することができる。
【0087】
変形例4において、電圧生成部は、直流電圧を出力する電源回路であり、出力部101は、複数のアクチュエーター群12Gに対応して設けられた複数の出力電圧選択部105を備える。複数の出力電圧選択部105の各々は、電圧補正部103とアクチュエーター群12Gとの間に設けられている。複数の出力電圧選択部105の各々は、電圧補正部103による補正後の直流電圧のアクチュエーター群12Gへの印加及び非印加を所定の駆動波形パターンに従って切り替えることで駆動電圧信号を生成する。このような構成によっても、より簡素な構成で適切な電圧の駆動電圧信号を各アクチュエーター群12Gに供給することができる。
【0088】
変形例1の駆動回路100は、複数の電圧補正部103の各々のアクチュエーター群12G側に、アクチュエーター群12Gに対して並列に設けられた抵抗素子81又は容量素子82を備える。これにより、駆動アクチュエーター数が少ない場合であっても、抵抗素子81又は容量素子82に一定以上の電流を流すことができる。よって、図8及び図9に示した電圧降下の特性グラフにおいて、電圧降下増加率の小さい領域でダイオード70を用いることができる。これにより、駆動アクチュエーター数の変動に応じた電圧降下の変動を低減し、より正確かつ安定した電圧補正を行うことができる。
【0089】
変形例1の図10の駆動回路100は、抵抗素子81を備える。抵抗素子81の抵抗値は、駆動電圧信号の印加に応じて所定の下限値以上の電流が抵抗素子81に流れるような大きさに設定されている。ここで、所定の下限値は、アクチュエーター群12Gが有する全てのアクチュエーター12のうち1/20のアクチュエーター12を駆動電圧信号により駆動したときの電流値である。これにより、図8及び図9に示した電圧降下の特性グラフにおいて、電圧降下増加率の特に大きいn/20以下の領域を除いた領域でダイオード70を用いることができる。
【0090】
変形例1の図11の駆動回路100は、容量素子82を備える。容量素子82の容量は、駆動電圧信号の印加に応じて所定の下限値以上の電流が抵抗素子81に流れるような大きさに設定されている。ここで、所定の下限値は、アクチュエーター群12Gが有する全てのアクチュエーター12のうち1/20のアクチュエーター12を駆動電圧信号により駆動したときの電流値である。これにより、図8及び図9に示した電圧降下の特性グラフにおいて、電圧降下増加率の特に大きいn/20以下の領域を除いた領域でダイオード70を用いることができる。
【0091】
変形例1の図14のインクジェットヘッド10は、駆動回路100と、所定数のノズルNと、所定数のアクチュエーター12と、を備える。これにより、インクジェットヘッド10内で電圧補正を行って、適切な電圧の駆動電圧信号を各アクチュエーター群12Gに供給することができる。
【0092】
変形例1の図13のインクジェットヘッド10は、2以上の所定数のノズルNと、出力部101のうち複数の電圧補正部103とを備える。また、出力部101のうち増幅回路102は、インクジェットヘッド10の外部に設けられている。このような構成によっても、より簡素な構成で適切な電圧の駆動電圧信号を各アクチュエーター群12Gに供給することができる。
【0093】
本実施形態に係るインクジェット記録装置1は、駆動回路100と、所定数のノズルNと、所定数のアクチュエーター12と、を備えので、より簡素な構成で適切な電圧の駆動電圧信号を各アクチュエーター群12Gに供給することができる。
【0094】
(その他)
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、各ダイオード70の電圧降下Vfの大きさが互いにほぼ等しい場合を例示したが、これに限られず、電圧降下Vfの大きさが互いに異なる複数のダイオード70を用いてもよい。
【0095】
上記実施形態では、第1経路51及び第2経路52の2つの経路の中から、充電時経路RT1を構成する1つの経路を選択したが、これに限られない。例えば、充電時経路RT1を構成する1つの経路を、3つ以上の経路の中から選択してもよい。
【0096】
電圧補正部103において、第3経路53を並列に複数設けて、複数の第3経路53の中から、放電時経路RT2を構成する1つの経路を選択してもよい。この場合において、複数の第3経路53の各々が有するダイオード70を互いに異ならせることで、各第3経路53における電圧降下を異ならせることができる。
【0097】
上記実施形態では、駆動回路100が2つの出力部101a、101bを有する例を用いて説明したが、これに限られない。駆動回路100は、3つ以上の出力部101を有していてもよいし、単一の出力部101を有していてもよい。
【0098】
上記実施形態では、第1スイッチ61及び第2スイッチ62としてFETを用いたが、これに限られない。例えば、第1スイッチ61及び第2スイッチ62として、メカニカルリレー又はフォトモスリレーといったリレーを用いてもよい。また、第1スイッチ61及び第2スイッチ62として、手動で切り替えるジャンパーピンを用いてもよい。リレー又はジャンパーピンを用いると、抵抗成分が無視できる程度に小さいので、駆動電圧信号の波形なまりをより小さく抑えることができる。
【0099】
上記実施形態では、ノズルからインクの液滴を吐出させるための負荷として、容量性素子であるアクチュエーター12を例示したが、これに限られず、抵抗性素子であってもよい。負荷として抵抗性素子を用いる吐出方式としては、例えば、抵抗性素子への通電に応じた発熱によりインクに発泡を起こして液滴を吐出する方式が挙げられる。抵抗性素子は放電を生じないので、負荷として抵抗性素子を用いる場合には、電圧補正部103の第3経路53は省略してもよい。
【0100】
電圧補正部103において、ダイオード70に代えて、電圧降下を生じさせる他の回路素子、例えば抵抗素子を用いてもよい。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0102】
1 インクジェット記録装置
2 搬送部
3 ヘッドユニット
10 インクジェットヘッド
11 吐出選択スイッチング素子
12 アクチュエーター(負荷、容量性負荷)
12G、12Ga~12Gd アクチュエーター群(負荷群)
20 ヘッド駆動制御部
21 ヘッド制御部
30 本体制御部
51 第1経路(往路)
52 第2経路(往路)
53 第3経路(復路)
60 切替部
61 第1スイッチ
62 第2スイッチ
70 ダイオード
81 抵抗素子
82 容量素子
100 駆動回路
101、101a、101b 出力部
102 増幅回路(電圧生成部)
103、103a、103b 電圧補正部
104 電源回路(電圧生成部)
105、105a、105b 出力電圧選択部(波形生成部)
211 CPU
N ノズル
NLa~NLd ノズル列
RT1 充電時経路
RT2 放電時経路
Vf 電圧降下
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15