(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171355
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】計画作成支援装置及び計画作成支援方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20241205BHJP
【FI】
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088295
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠原 孝保
(72)【発明者】
【氏名】関 洋
(72)【発明者】
【氏名】長井 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】平野 克彦
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA06
5L049AA06
(57)【要約】
【課題】制約条件や計画のための基礎データの不備の発見を容易にする計画作成支援装置を提供する。
【解決手段】計画作成支援装置は、別解・別案を生成する個数および条件を設定する別解別案探索設定部と、計画モデル生成部210と、生成した数理モデルと、カテゴリ属性付きリソースデータDBに格納された必要なリソースの種類別、日程別の数量をもとに、初期計画案を作成する初期計画案生成部220と、初期計画案からクリティカルパスの工程を抽出するクリティカルパス抽出部230と、初期計画案と過去計画・実績データからキーリソースを列挙したキーリソースリストを生成するキーリソースリスト生成部240と、初期計画案、クリティカルパス、キーリソースと、別解別案探索設定部で設定した条件をもとに、別解・別案を生成する別解・別案生成部250と、生成した別解・別案を含む計画案の表示情報を生成する結果表示情報生成部260と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計画の対象となる工程のリストに列挙された各工程に必要なリソースと特定のカテゴリに属するリソースとを前記各工程に割り当てたときに前記各工程を完了するのに必要な処理時間と、工程間の順序関係とを、計画作成に必要な計画条件としてユーザが設定する計画条件設定部と
初期計画案に対し別解・別案を生成する個数および該別解・別案を生成するための条件をユーザが設定する別解別案探索設定部と、
前記計画条件設定部によって設定されたデータと、これまでの工程の実績を格納した過去計画・実績データをもとに計画作成のための数理モデルを生成する計画モデル生成部と、
前記生成した数理モデルと、カテゴリ属性付きリソースデータDBに格納された必要なリソースの種類別、日程別の数量をもとに、前記初期計画案を作成する初期計画案生成部と、
前記初期計画案からクリティカルパスの工程を抽出するクリティカルパス抽出部と、
前記初期計画案と前記過去計画・実績データからキーリソースを列挙したキーリソースリストを生成するキーリソースリスト生成部と、
前記初期計画案、前記クリティカルパス、前記キーリソースと、前記別解別案探索設定部で設定した条件をもとに、前記別解・別案を生成する別解別案生成部と、
前記生成した別解・別案を含む計画案の表示情報を生成する結果表示情報生成部と、を有する
ことを特徴とする計画作成支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の計画作成支援装置において、
前記別解別案生成部は、前記キーリソースに関して前記初期計画案に対するクリティカルパスに属する工程の前記キーリソースリスト中の少なくとも一つのリソースの工程への割当を変える前記初期計画案とは違った計画案である別案を生成する、または、前記初期計画案に対するクリティカルパスに属する工程以外の工程の前記キーリソースリスト中の少なくとも一つのリソースの割当を変える類似の計画案である別解を生成する
ことを特徴とする計画作成支援装置。
【請求項3】
請求項1に記載の計画作成支援装置において、
前記別解別案生成部は、前記キーリソースに関して前記初期計画案に対するクリティカルパスに属する工程の実行順序を変える前記初期計画案とは違った計画案である別案を生成する、または、前記初期計画案に対するクリティカルパスに属する工程以外の工程の実行順序変える類似の別計画案である別解を生成する
ことを特徴とする計画作成支援装置。
【請求項4】
請求項1に記載の計画作成支援装置において、
前記別解別案生成部は、前記キーリソースに関して前記初期計画案に対するクリティカル工程のリソースの割当の一部を変更する前記初期計画案とは違った計画案である別案を生成する、または、前記初期計画案に対するクリティカルパスに属する工程以外の工程に対するキーリソースの割当の一部を変更する類似の別計画案である別解を生成する
ことを特徴とする計画作成支援装置。
【請求項5】
請求項1に記載の計画作成支援装置において、
前記キーリソースリスト生成部は、前記初期計画案におけるリソースの割り当てをもとに、工程が計画よりも遅延することが全体の工程を遅延することになるクリティカル工程のリストを生成し、前記クリティカル工程のリストに含まれる工程の計画の際に、前記初期計画案において割り当てられたリソースリストをキーリソースリストとする
【請求項6】
請求項1に記載の計画作成支援装置において、
前記キーリソースリスト生成部は、安全にかかわるリソースリストをキーリソースリストとして設定する
ことを特徴とする計画作成支援装置。
【請求項7】
請求項1に記載の計画作成支援装置において、
前記キーリソースリスト生成部は、前記過去計画・実績データをもとに、処理時間が計画と実績の間で設定した閾値より大きな工程に用いられていたリソースリストをキーリソースリストとして設定する
ことを特徴とする計画作成支援装置。
【請求項8】
請求項1に記載の計画作成支援装置において、
前記キーリソースリスト生成部は、前記過去計画・実績データをもとに、トラブルの発生した装置のリソースリストをキーリソースリストとして設定する
ことを特徴とする計画作成支援装置。
【請求項9】
請求項1に記載の計画作成支援装置において、
前記キーリソースリスト生成部は、前記初期計画案において、積算線量が設定した値より大きなリソースリストをキーリソースリストとして設定する
ことを特徴とする計画作成支援装置。
【請求項10】
計画案の作成を支援する計画作成支援方法であって、
コンピュータが、
計画の対象となる工程のリストに列挙された各工程に必要なリソースと特定のカテゴリに属するリソースとを前記各工程に割り当てたときに各工程を完了するのに必要な処理時間と、工程間の順序関係とを、計画作成に必要な計画条件としてユーザが設定する計画条件設定処理と、
初期計画案に対し別解・別案を生成する個数および該別解・別案を生成するための条件をユーザが設定する別解別案探索設定処理と、
前記計画条件設定処理で設定されたデータと、これまでの工程の実績を格納した過去計画・実績データをもとに計画作成のための数理モデルを生成する計画モデル生成処理と、
前記生成した数理モデルと、カテゴリ属性付きリソースデータDBに格納された必要なリソースの種類別、日程別の数量をもとに、前記初期計画案を作成する初期計画案生成処理と、
前記初期計画案からクリティカルパスの工程を抽出するクリティカルパス抽出処理と、
前記初期計画案と前記過去計画・実績データからキーリソースを列挙したキーリソースリストを生成するキーリソースリスト生成処理と、
前記初期計画案、前記クリティカルパス、前記キーリソースと、前記別解別案探索設定処理で設定した条件をもとに、前記別解・別案を生成する別解別案生成処理と、
前記生成した別解・別案を含む計画案の表示情報を生成する結果表示情報生成処理と、を実行する
ことを特徴とする計画作成支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計画作成支援装置及び計画作成支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
計画管理手法において、プロジェクトを構成する工程ごとにリスク情報を設定し、工程の遅延を想定して作業時間の余裕を考慮して作業計画を作成する手法としては、特許文献1、特許文献2がある。
【0003】
特許文献1には、「顧客からの要求量と製造ラインからの供給量をもとに需給調整をする生産計画エンジン部と生産計画エンジン部から出力された生産計画をもとに製造ラインの製造計画を作成する製造計画作成エンジン部と、生産計画エンジン部と製造計画作成エンジン部に用いるマスタデータを一元的に管理する生産・製造計画マスタ部と製造ラインの実績データを収集する製造ライン実績データ収集部とその実績データから生産・製造計画マスタ部のデータを更新するマスタデータ更新機能を有するシステムであって、製造ラインから収集される要素作業単位の実績データと設定パラメータを構成する要素作業毎の値が異なっている場合に、実績データから算出されているパラメータに基づき生産計画や製造計画を立案し、設定パラメータに基づき立案された生産計画や製造計画と比較し、あらかじめ設定してある生産量の許容範囲からはずれていると判断されている場合に、設定値を実績データに補正し、さらにそれに基づく精度の高い予測マスタデータを設定することを特徴とする生産製造計画立案システム」が記載されている。
【0004】
特許文献2には、「コンピュータを用いて、ロボットが作業エリア内で作業を行うための工程を計画するための工程計画作成支援方法であって、コンピュータは、ロボットによる作業進行に伴い、現場状態が変わる前記作業エリアの3D計測点群、現場線量の情報からなる仮想空間内で、かつ設定した時間範囲内で計算可能な探索範囲内で、作業エリアごとの工期期限、線量制限、作業安全規制を満たす、ロボットの移動経路、姿勢、手順順序を確率的最適化により作業動作要素を求めることにより、工程情報を生成可視化することを特徴とする工程計画作成支援方法」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-157819号公報
【特許文献2】特開2022-55632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の計算機能力の向上、最適化技術の進展により、特許文献1にみられるように、工程に用いるリソースの組合せに対応する工程の処理時間や作業間の順序関係や制約条件などの計画の基礎となるデータを設定すれば、工程を実行するためのリソースの最適な組合せを探索し、設定した目的関数を最適化することができるようになった。また、特許文献2にみられるように、未経験の作業環境に対しても環境を仮想空間上で模擬し、工程に用いるロボットなどの動きをシミュレーション実行することにより処理時間の推定をできるようになっている。
【0007】
しかしながら、経験のない工程を多く含み、作業環境が継続的に変化する長期にわたるプロジェクトの計画管理においては、あらかじめどのような計画が最も良いかを定義する目的関数を完璧に設定することは困難である。また、工程における制約条件や計画実行に用いる装置をどのようなタイミングでメンテナンスするべきか、などの計画作成のための基礎データをもれなく完全にリストアップすることが困難な場合もある。
【0008】
そのため、近年の計算機能力の向上、最適化技術の進展にもかかわらず、プロジェクト工程の立案の計算機支援においては、設定した制約条件、工程期間最短や労務コスト最小などの仮の目的関数を設定して計画案のたたき台をつくるものの、自動作成された計画のたたき台を見て、制約条件の抜けを見つけて再計算したり、作業員や装置の工程への割り当て方について、もっとよい計画案があると、さまざまな計画のブラッシュアップを手動で施すことになったりするなど、多くの手間がかかる。
【0009】
本発明の目的は、多様な計画を生成することにより、暗黙知として計画担当者が持っているよりよい解への気づきを与えるとともに、制約条件や計画のための基礎データの不備の発見を容易にする計画作成支援装置及び計画作成支援方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明の計画作成支援装置は、計画の対象となる工程のリストに列挙された各工程に必要なリソースと特定のカテゴリに属するリソースとを前記各工程に割り当てたときに前記各工程を完了するのに必要な処理時間と、工程間の順序関係とを、計画作成に必要な計画条件としてユーザが設定する計画条件設定部と、初期計画案に対し別解・別案を生成する個数および該別解・別案を生成するための条件をユーザが設定する別解別案探索設定部と、前記計画条件設定部によって設定されたデータと、これまでの工程の実績を格納した過去計画・実績データをもとに計画作成のための数理モデルを生成する計画モデル作成部と、前記生成した数理モデルと、カテゴリ属性付きリソースデータDBに格納された必要なリソースの種類別、日程別の数量をもとに、前記初期計画案を作成する初期計画案生成部と、前記初期計画案からクリティカルパスの工程を抽出するクリティカルパス抽出部と、前記初期計画案と前記過去計画・実績データからキーリソースを列挙したキーリソースリストを生成するキーリソースリスト生成部と、前記初期計画案、前記クリティカルパス、前記キーリソースと、前記別解別案探索設定部で設定した条件をもとに、前記別解・別案を生成する別解別案生成部と、前記生成した別解・別案を含む計画案の表示情報を生成する結果表示情報生成部と、を有することを特徴とする。本発明のその他の態様については、後記する実施形態において説明する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、多様な計画を生成することにより、暗黙知として計画担当者が持っているよりよい解への気づきを与えるとともに、制約条件や計画のための基礎データの不備の発見を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る計画作成支援装置の構成例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る計画条件データの例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る過去計画・実績データの例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る別解・別案探索設定GUIの例を示す図である。
【
図5A】実施形態に係る別解・別案生成処理の例を示すフローチャートである。
【
図5B】実施形態に係る別解・別案生成処理の例を示すフローチャートである。
【
図6A】実施形態に係る別解・別案生成処理の第2の例を示すフローチャートである。
【
図6B】実施形態に係る別解・別案生成処理の第2の例を示すフローチャートである。
【
図7A】実施形態に係る原案工程からクリティカルパス工程を抽出する処理の例を示す図である。
【
図7B】
図7Aの原案工程からクリティカルパス工程を抽出する処理の具体例を示す図である。
【
図8A】実施形態に係る処理結果である計画案データの例を示す図である。
【
図8B】実施形態に係る処理結果である計画案データの例を示す図である。
【
図9】実施形態に係る原案解、別解、別案のガントチャートの例を示す図である。
【
図10】実施形態に係る原案解、別解、別案の特定作業チームの積算線量の例を示す図である。
【
図11】実施形態に係る原案解、別解、別案の全体の積算線量の例を示す図である。
【
図12】実施形態に係る各工程の作業場所での空間線量率の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
実施形態では、1日4シフトのチーム作業員を工程遂行のためのリソースとして割り当てることによって遂行する工事計画の例を用いて説明する。
【0014】
図1は、実施形態に係る計画作成支援装置1000の構成例を示す図である。
図1では、工事計画に適用した場合について示す。計画作成支援装置1000は、計画条件設定GUI(101:計画条件設定部)、別解・別案探索設定GUI(102:別解別案探索設定部)、結果表示GUI(110:結果表示処理部)の3つのGUI(Graphical User Interface)と、処理部200と、記憶部700とを含んで構成される。処理部200は、計画モデル生成部210、初期計画案生成部220、クリティカルパス抽出部230、キーリソースリスト生成部240、別解・別案生成部250(別解別案生成部)、結果表示情報生成部260などを有する。記憶部700は、当該計画データDB300、過去計画・実績データDB400、カテゴリ属性付きリソースデータDB500、計画案データDB600などを有する。なお、当該計画データDB300、過去計画・実績データDB400には、WBS(Work Breakdown Structure)を含む。
【0015】
計画条件設定GUI(101)は、計画対象となる工程のリストに列挙された各工程に必要なリソースと特定のカテゴリに属するリソースを各工程にわりあてたときに各工程を完了するのに必要な処理時間、工程間の順序関係などを計画作成に必要な計画条件としてユーザが設定する(計画作成に必要な計画条件としてユーザが処理時間や順序関係などを設定)。
【0016】
別解・別案探索設定GUI(102)は、初期計画案に対し別解・別案を生成する個数や、別解・別案とみなす条件を設定する(ユーザが設定する)。なお、初期計画案(原案解)とちょっと違った解を別解(類似の別計画案)とし、原案解とかなり違った解を別案と称する。別解と別案の詳細は後記する。
【0017】
計画モデル生成部210は、計画条件設定GUI(101)から入力されたデータと、これまでの工程の実績を格納した過去計画・実績データDB400からのデータをもとに計画作成のための数理モデルを生成する。
【0018】
初期計画案生成部220は、計画モデル生成部210が生成した数理モデルと、カテゴリ属性付きリソースデータDB500に格納された必要なリソースの種類別、日程別の数量をもとに、初期計画案を作成する。
【0019】
クリティカルパス抽出部230は、初期計画案からクリティカルパス工程を抽出する。キーリソースリスト生成部240は、初期計画案と過去の計画・実績データからキーリソースリストを生成する。
【0020】
別解・別案生成部250は、初期計画案、クリティカルパス、キーリソースリストと、別解・別案探索設定GUI(102)に設定した別解設定条件をもとに別解・別案を生成する。別解・別案生成部250は、作成した計画を計画案データDB600に格納する。
【0021】
結果表示情報生成部260は、初期計画案、生成した別解・別案を含む計画案の表示情報を生成する。結果表示GUI(110)は、生成された計画案の表示情報を結果表示GUI(110)に表示する。
【0022】
図2は、実施形態に係る計画条件データの例を示す図である。
図2は、計画条件設定GUI(101)から設定される計画データ(
図1の当該計画データDB300参照)と、カテゴリ属性付きリソースデータ(
図1のカテゴリ属性付きリソースデータDB500参照)のデータ構成の例を示す。図中(1)Activity、(2)Activity-Activity、および(5)Goal Functionが計画データにあたり、(3)ShiftTeam-Categoryと(4)Shift-Category Attributesがカテゴリ属性付きリソースデータにあたる。
【0023】
図2中(1)のActivity(2010)は、左端が工程名で、この例ではG1,G3,G4,G5,G6,G0の6つの工程が計画対象となっている。第2列のGoal_Throuputと記載されているものは各工程の目標処理量を表す。第3列のPLACEは、作業場所の名称を、第4列のWorkers Placeは作業者の作業場所を設定している。実際の作業場所と作業者の作業場所が異なるのは、この例では遠隔操作による作業を想定しているからである。
【0024】
(2)Activity-Activity(2020)は、工程の順序関係に関わる制約条件を記載したもので、第1列の工程と第2列の工程の順序制約が、”RelCode”と記載された第3列に順序制約記号で設定された制約条件に従うことが記載されている。この例では、順序制約記号“SW”,“LAST”,“FS”,“SSp”が用いられている。
【0025】
順序制約記号“SW”は、第1列の工程と第2列の工程が同一日時に開始されることを示し、順序制約記号“LAST”は、第1列に記載された工程が、他のどの工程よりも先に終了することがないことを示し、順序制約記号“FS”は、第1列の工程が終了してから第2列の工程が開始することを示す。順序制約記号“SSp”は、第1列の工程が開始してから、第4列”P1”に記載された日時だけ経過した後に開始されることを示し、この例では、日時の単位を1日単位としているとすると、工程”G4”が開始後、10日たってから、工程”G6”が開始されるという順序制約を設定している。
【0026】
このような制約は、コンクリートが十分固まる日時を経過してから次の工程を開始するなどの場合に工事では良くある制約条件であると考えられる。実際の工程では、このほかにも様々な制約条件があると考えられるがこの例では、(2)に示した6つの順序制約が初期に設定されているとする。
【0027】
(3)のShiftTeam-Category(2030)は、第1列に記載されたシフトチームについて、“Dose_Cat”(積算線量,第2列)、“Tp_Cat”(作業能力,第3列)、”Safe_Cat”(安全遂行能力,第4列)の3つの観点からの属性カテゴリを記載したものである。この中で、作業能力は、リソースが割り当てられた工程に対して作業日時に作業能力を掛けた値に比例しただけ作業が進捗し、これがGoal_Throuputの値に達した時、その工程は完了するとしている。また、この例では、積算線量は、作業チームの計画時点でのこれまでの他のプロジェクトに従事したことによる年間積算線量とする。過去の作業履歴による法律上の制約に関わる属性の1例で、他にも、作業履歴による法律上の制約として、月間、年間の就業時間などがあり、実際の問題では、計画に反映する必要があるが、この例では簡単のため省略する。
【0028】
(4)のShift-Category Attributes(2040)は、(3)のShiftTeam-Category(2030)で記載された観点、すなわち、“Dose_Cat”(積算線量,第2列)、“Tp_Cat”(作業能力,第3列)、”Safe_Cat”(安全遂行能力,第4列)の3つの観点からの属性カテゴリの値を、Shift-Category Attributes(2040)の第3列に記載されている。
【0029】
例えば、“Dose_Cat”(積算線量)の属性カテゴリ“Da”に対する値は“0.01”、“Db”に対する値は“0.008”、“Dc”に対する値は“0.006”、“Dd”に対する値は“0.004”となる。同様に、“Tp_Cat”(作業能力)の属性カテゴリ“Ta”に対する値は“1.2”、属性カテゴリ“Tb”に対する値は“1.0”、属性カテゴリ“Tc”に対する値は“0.8”、属性カテゴリ“Td”に対する値は”0.5”となり、“Tp_Safe”(安全遂行能力)の属性カテゴリ“Sa”に対する値は“1.2”、属性カテゴリ“Sb”に対する値は”1.0”、属性カテゴリ“Sc”に対する値は“0.8”、属性カテゴリ“Sd”に対する値は“0.6”となる。
【0030】
(3)と(4)を合わせてみると、Shift_Aの積算線量の値は0.008、作業能力の値は1.2、安全遂行能力の値は0.6となる。Shift_Bの積算線量の値は0.008、作業能力の値は1.0、安全遂行能力の値は1.2となる。
【0031】
(5)Goal Function(2050)は、最適化計算のための、目的関数を定義するもので、この例では、工程G0の終了日時を最小にすると、定義している。
【0032】
図3は、実施形態に係る過去計画・実績データの例を示す図である。
(1)Activity Progress(3010)は、第1列(Activity_Name)に記載した各工程の開始・終了時刻の実績値を第2列(START_DATE)、第3列(END_DATE)に記載するともに、第4列(Progress_Date)に記載された日付における工程の進捗率を第5列(Progress_Rate)に記載するものとする。計画開始前には、どの工程の進捗率も0%となる。
【0033】
(2)Resource History(3020)は第1列(Date)に記載した日付において、第2列(ActivityCode)に記載した工程の第3列(Role)と記載した各工程の遂行に必要な役割に対して、どのリソースを用いたかを第4列(Resource)に実績として記載するデータ形式で、第5列(Status)には、その実行がどの程度うまくいったかを例えば1から5までの整数値で設定するものである。
【0034】
本実施形態では、役割としては、一日の4つのシフト“Shift1”,“Shift2”,“Shift3”,“Shift4”があり、それを
図2の(3)に記載されたシフトチーム“Shift_A”,“Shif_B”,…,“Shift_L”のどれかを割り当てて実行することになり、その実績として用いられたシフトチームを“Resource”列に記載する。工程実行前には、どちらにもデータは入っていない条件で計画案を生成するが、工程が進捗して、工程進捗を反映して再計画案を作成する場合には、これらのデータ項目に設定されたデータを用いてもとの最適化問題を解いた単一の解(以後これを原案解とよぶ)と、原案解とちょっと違った解(以後これを別解とよぶ)および、かなり原案解と違った解(以後、これを別案と呼ぶ)を生成する。
【0035】
別解と別案の違いは原案解からの違いの程度であり、原案解がだいたい妥当な案と考えられた場合に、少し違ったバリエーションを検討したい場合には別解が検討対象となり、より広い選択肢のなかから検討した場合には別案が検討対象になる。違いの程度は、計画者が計画案のどこに着目しているかによると考えられる。工程の計画では、工程に対してその工程を実施するために用いる作業員や装置などのリソースを割当て、割り当てられたリソースによって工程を実施する時に必要な処理時間がきまる。作業員などのリソースは同じ時間帯に複数の工程を一般的に割り当てることができないため、それぞれのリソースをどの工程にわりあてるかが重要となる。
【0036】
そこで本実施形態では、各工程に割り当てられるリソースに関して計画者が重要なリソースと考えるリソースをキーリソースとして設定し、このキーリソースの割り当て方が異なる計画案を別案(かなり違った計画案)、キーリソースについての割当が同じだが、他が異なる計画案を別解(ちょっとちがった計画案、類似の別計画案)としている。
【0037】
図4は、実施形態に係る別解・別案探索設定GUI(102)の例を示す図である。本実施形態では、原案解をもとに別解および別案を生成するための基準として、工程に対するシフトチームの割当の違いに着目し、(a)積算線量の異なるシフトチームに割り当てる(積算線量の大きなシフトチームをキーリソースとする)、(b)作業能力の異なるシフトチームに工程を割り当てる(作業能力の高いシフトチームをキーリソースとする)、(c)安全遂行能力の異なるシフトチームに工程を割り当てる(安全遂行能力の高いシフトチームをキーリソースとする)、(d)工程順序を制約条件の範囲内で変更する、の4通りから選択することとしているが、これらの設定のうちの複数を選択することも可能である。また、別解の生成個数と別案の生成個数を設定する。
【0038】
これらの設定入力を用いて、原案解、別解、および別案を生成するフローチャートの例を
図5A、
図5B、
図6A、
図6Bに示す。
図5A、
図5Bは、
図4の別解・別案設定において工程順序の違う解を生成すると設定した場合の処理フローチャート例であり、
図6A、
図6Bは、積算線量、作業能力、または安全遂行能力を設定した場合の処理フローチャート例である。
【0039】
別解と別案の処理概要について説明すると、
図5Bのフローチャートでは、初期工程において、クリティカルパス工程となる工程に対して割り当てられるリソースをキーリソースとみなしている。別解生成では(
図5Bの処理S5050~S5090)、クリティカル工程以外の工程に割り当てられるリソースの割当の変更の総和が最大となるように目的関数を更新し(処理S5060)、加えて、制約条件として、クリティカルパス工程以外の工程で、後続工程のない工程の組み合わせに対して、原案工程における実行順序を変更する制約条件を追加する(処理S5070)。これによって、原案工程とクリティカルパス工程以外の工程の順序の一部が変更された工程が作成される。
【0040】
一方、別案生成(
図5Bの処理S5150~S5190)では、クリティカル工程の工程に割り当てられるリソースの割当の変更の総和が最大となるように目的関数を更新し(処理S5160)、加えて、制約条件として、クリティカルパス工程以外の工程で、後続工程のない工程の組み合わせに対して、原案工程における実行順序を変更する制約条件を追加する(処理S5170)。これによって、原案工程とクリティカルパス工程のリソースの割当およびのクリティカルパス工程以外の工程の順序の一部が変更された工程案が作成される。
【0041】
図5A、
図5Bの処理についてさらに説明する。
処理部200は、計画条件設定GUI(101)(
図1参照)で設定された計画データを数理計画法の変数と制約条件に変換し(処理S5010)、別解・別案探索設定GUI(102)(
図1、
図4参照)で設定した多様解生成基準を読み込み、別解生成数、別案生成数を読み込み、別解生成方法を設定する(処理S5020)。そして、処理部200は、最適化実行処理をして単一の原案解を生成する(処理S5030)。なお、設定された計画データを数理計画法の変数と制約条件に変換する処理(処理S5010)、およびそれらから単一の最適解(原案解)を生成する処理(処理S5030)は、公知技術で容易に実現できる。
【0042】
処理部200は、制約充足解があるか否かを判定し(処理S5035)、ここで制約充足解がない場合には(処理S5035,No)、制約充足解なしとして処理は終了する。
【0043】
一方、制約充足解がある場合には(処理S5035,Yes)、処理S5040に進む。処理S5040で、処理部200は、クリティカルパス工程CPを抽出する。本実施形態では、この原案解に近いが異なる解である別解は、原案解のクリティカルパスに含まれる工程を変更せず、それ以外の工程のみが変更される場合と定義する。なお、NCP=As/Cpは、集合AsとCpの差集合である。NCPは、集合Asの要素からCpに属するものを除いた集合となる。
【0044】
図7Aは、実施形態に係る原案工程からクリティカルパス工程を抽出する処理の例を示す図である。
図7Bは、
図7Aの原案工程からクリティカルパス工程を抽出する処理の具体例を示す図である。本処理は、処理部200内のクリティカルパス抽出部230(
図1参照)が実行する。
【0045】
Step1(処理S7000)で原案解の工程を、実行順序制約を有向リンクとし、工程をノードとする有向グラフとみなして、工程終了日がもっとも遅い工程の集合LKから参考作業のない工程までの全パスLを生成する。
【0046】
Step2(処理S7100)では、Lの要素のパスPの最初の工程をS(P),最終工程をE(P)とし、S(P)の計画開始日時をI(P),E(P)の計画終了日時をF(P)とする。
【0047】
図7Bの7200に説明のための工程を示す。矩形内の名称が工程名である。7200には、工程a、工程b、工程c、工程d、工程e、工程f、工程gがあり、矩形の上の数字が工程を実行するのに要する時間である。また、[0,1]のように、工程を表す矩形の近傍に2つの数字を[ ]で囲んで示しているのは、各工程の原案工程における開始・終了日時である。
【0048】
つまり、工程aは、処理時間が1で、開始日時が0、終了日時が1である。工程bは、処理時間が0.5、開始日時が1、終了日時が1.5である。工程cは、処理時間が0.3、開始日時が1.5、終了日時が1.8である。工程dは、処理時間が0.6、開始日時が0.0、終了日時が0.6である。工程eは、処理時間が1.4、開始日時が0.6、終了日時が2.0である。工程fは、処理時間が0.4、開始日時が2.0、終了日時が2.4である。工程gは、処理時間が0.2、開始日時が2.4、終了日時が2.6である。ここでは、日時は、簡単のため数値で表していて、大きな数字ほど、先の日時を表す。工程の終了日時と工程の開始日時の差は、工程に要する時間と一致する。また、矩形の間の矢印は、矩形が表す矢印の始点となる工程が終了した日時と同じまたは、それより後の日時に矩形が表す矢印の終点の工程の開始日時となることを示している。例えば、工程bは、工程aの終了日時と同じ日時またはそれ以降の日時に開始することを示し、工程fの開始日時は、工程cおよび工程eの終了日時または、それ以降の日時となることを表す。
【0049】
この例においては、Stpe1において、原案解において工程終了日時がもっとも遅い工程は、工程gの工程のみであるため、原案解において工程終了日時がもっとも遅い工程の集合LKは、{g}となる。よって、実行順序制約を有向リンクとし、工程をノードとする有向グラフとみなしたパスの評価は、工程gと工程順序の矢印でつながったパスを探索すればよく、工程fで分岐しているため2つのパスがあり、L={(a,b,c,f,g),(d,e,f,g)}となる。この計算は従来技術により容易に実行することができる。
【0050】
次にStep2においてLの要素である、パス(a,b,c,f,g)、および、パス(d,e,f,g)についてそれぞれ、余裕日時R(P)を計算する。その計算は、
図7AのStep2(処理S7100)に記載してように。以下のように行う。
【0051】
パスPに含まれる工程iの処理時間をDU(P,i))とし、パス上の先後実行順序制約のある工程P(i)とP(i+1)の日時間隔の制約時間(ある工程の終了後、間を空けなければならない日時)をG(P,i)とする。このとき、パスPにかかる最短時間は、以下となる。
ST(P)=ΣDU(P,i)+ΣG(P,i)
【0052】
このとき、実際の計画でパスPにかかる日時と、ST(P)との差を余裕日時R(P)とすると、以下となる。
R(P)=F(P)-E(P)-ST(P)
【0053】
このR(P)の値が小さいパスほど、パスに含まれる工程の遅延が全体工程の遅延につながり安いことになる。そこで、Lの要素のパスPのうち、R(P)が、もっとも小さいパスをクリティカルパスとし、パスPに含まれる工程をクリティカルパス工程と呼ぶ。
【0054】
図7の7200の例では、パス(a,b,c,f,g)に対しては、順序制約のある工程fと工程g、工程aと工程bの計画終了日時と開始日時との差はないが、工程cと工程fとの間には0.2の差があるため、
ΣG((a,b,c,f,g),i)=0.2 なお、i∈{a,b,c,f,g}
となる。
【0055】
そして、ΣDU((a,b,c,f,g),i) (i∈{a,b,c,f,g})は、各工程にかかる日時の総和なので、
ΣDU((a,b,c,f,g),i)
=1+0.5+0.3+0.4+0.2=2.4となる。
また、パス(a,b,c,f,g)の開始日時S((a,b,c,f,g))=0(工程aの開始日時)、終了日時は、E((a,b,c,f,g))=2.6(工程gの終了日時)
なので(この例ではすべてのパスにいてG(P,i)=0としているから)、
ST((a,b,c,f,g))
=ΣDU((a,b,c,f,g),i)-ΣG((a,b,c,f,g),i)
=2.4-0=2.4
R((a,b,c,f,g))
=F((a,b,c,f,g))-E((a,b,c,f,g))-ST(P)
=2.6-0.0-2.4=0.2
となる。
同様の計算で、
ST((d,e,f,g))=2.6
R((d,e,f,g))
=F((d,e,f,g))-E((d,e,f,g))-ST(P)
=2.6-0.0-2.6=0
となり、Rの評価値の小さい(d,e,f,g)クリティカルパスとなる。
【0056】
一般にクリティカルパス工程の抽出は、工程にリソースが割り付けられていない段階では困難であるが、本実施形態は、原案解において割り付けられたリソースを前提として処理するので、容易に計算することができる。
【0057】
図5Aに戻り、処理S5040において、このクリティカルパス工程抽出処理を実行しこのように抽出されたクリティカルパス工程の実行順序を変えないものを、別解(原案解と似た解)として、
図5Bの左側の処理S5050以下で生成し、クリティカルパス工程の実行順序を変えるものを別案(原案解とかなり違った解)として、
図5B右側の処理5150以下で生成する。
【0058】
処理S5050において、処理部200は、似た別解生成数Naを設定し、変数n=0に設定する。そして、処理部200は、変数nをインクリメントし(処理S5052)、変数nが似た別解生成数Na以下であるか判定する(処理S5054)。変数nが似た別解生成数Na以下の場合(処理S5054,Yes)、処理S5060に進み、変数nが似た別解生成数Na以下でない場合(処理S5054,No)、処理S5090に進む。
【0059】
処理部200は、処理S5060において、目的関数を更新し、制約条件を追加し(処理S5070)、最適化処理を実行する(処理S5080)。処理部200は、解がないか否かを判定し(処理S5085)、解がある場合(処理S5085,No)、処理S5052に戻り、解がない場合(処理S5085,Yes)、処理S5090に進む。
【0060】
他方、処理S5150において、処理部200は、別案生成数Nbを設定し、変数n=0に設定する。そして、処理部200は、変数nをインクリメントし(処理S5152)、変数nが似た別解生成数Nb以下であるか判定する(処理S5154)。変数nが似た別解生成数Nb以下の場合(処理S5154,Yes)、処理S5160に進み、変数nが似た別解生成数Nb以下でない場合(処理S5154,No)、処理S5190に進む。
【0061】
処理部200は、処理S5160において、目的関数を更新し、制約条件を追加し(処理S5170)、最適化処理を実行する(処理S5180)。処理部200は、解がないか否かを判定し(処理S5185)、解がある場合(処理S5185,No)、処理S5152に戻り、解がない場合(処理S5185,Yes)、処理S5190に進む。
【0062】
さらに説明すると、工程の実行順序の変更は、変更対象となる工程(別解では、クリティカルパス工程以外の工程、別案作成では、クリティカルパスに含まれる工程)の中で、後続工程のない工程の集合の組合せの中で、原案工程と異なる順序制約を追加することにより(処理S5070,S5170)実現する。
【0063】
また、原案解とできるだけ大きな差がでるように、処理S5060においては、目的関数として、(1)式の項をマイナスにする。
【数1】
【0064】
マイナスにするのは、目的関数を最小化する最適化のためである。
ここでNCpは、クリティカルパスに属さない工程の集合、xa,r
(0)は、原案解において工程aにシフトチームrが割り当てられていれば1、そうでなければ0となる変数、xa,r
(n)は、別解nにおける同様の変数で、クリティカルパスに属さない工程のシフトチームへの割当の仕方が原案解と別解で最大にするように設定する。
【0065】
同様に、処理S5160では、目的関数に(2)式の項をマイナスにし、クリティカルパスに属する工程のシフトチームへの割当の仕方が原案解と別解で最大にするように設定する。
【数2】
【0066】
ここで、Dpは、クリティカルパスに属する集合である。ya,r
(k)は、別解nにおける同様の変数で、クリティカルパスに属する工程のシフトチームへの割当の仕方が原案解と別解で最大にするように設定する。
【0067】
こうして制約条件を追加した上で、単一の最適解を原案解生成時と同様の最適化手法で求解することで別解と別案を生成する。この制約条件の追加を設定された別解個数、別案個数に達するまで(処理S5054,S5154)または、制約充足解が求められなくなるまで(処理S5085,S5185)繰り返すことにより、工程順序の異なる別案と別解を生成することができる。このとき、n個目の解を求めるときには、n-1個目の全ての解と原案解と比較して、別解生成の際には、非クリティカル工程の工程順序がすべて一致しないこと、別案生成のときにはクリティカル工程の実行順序がすべては一致しないことを制約条件として加える。
【0068】
本実施形態は、原子力における保守・点検、および廃炉などの作業における工程計画作成の支援も対象としている。このような工程計画の作成においては、作業能力や、安全に工程を遂行する能力の他に、作業員の一定期間ごとの積算線量が労務管理上重要となる。
【0069】
そこで、
図6に示す別解、および別案を生成する場合の処理手順では、積算線量カテゴリ、作業能力カテゴリ、安全遂行能力の観点から別解を生成する手順を例として示した。
【0070】
図6A、
図6Bのフローチャートの処理符号は、
図5A、
図5Bのフローチャートの処理符号と同様に付している。すなわち、
図6Aの処理S6010~S6040は、
図5Aの処理S5010~S5040に対応する。
図6Bの処理S6050~S6090は、
図5Bの処理S5050~S5090に対応する。
図6Bの処理S6150~S6190は、
図5Bの処理S5150~S5190に対応する。
図6A、
図6Bの主要な処理について説明する。
【0071】
図6A、
図6Bの例では、
図4に設定された多様解生成基準に従って、キーリソースリストRkを処理S6020において、キーリソースリスト生成部240(
図1参照)により生成する。例えば、積算線量が設定された場合には、積算線量の大きなシフトチーム(
図2でDose_Catの属性値がDaのシフトチーム、具体的には、(Shift_G,Shift_H,Shift_I)がキーリソースリストとなる。作業能力が設定された場合には、作業能力が高いシフトチーム(Shift_A,Shift_E,Shift_I)がキーリソースリストとなる。安全遂行能力が設定された場合には、安全遂行能力の高いシフトチーム(Shift_B,Shift_F,Shift_J)となる。
【0072】
もし、
図4に示した多様解生成基準で、積算線量、作業能力、安全遂行能力のうちの2つ以上が選択されていれば、それぞれ単独で選択された時のキーリソースの和集合が、キーリソースとなる。例えば、作業能力、安全遂行能力を指定した場合には、キーリソースリストは、(Shift_A,Shift_E,Shift_I,Shift_B,Shift_F,Shift_J)となる。
【0073】
これらのキーリソースの割り付け数がクリティカルパス工程以外の工程に対して異なるという制約条件を加えて(処理S6070)、最適化処理(処理S6080)をして作るのが、別解である。一方、クリティカルパス工程に対して異なるという制約条件を加えて(処理S6170)、最適化処理(処理S6180)をして生成するのが別案となる。
【0074】
こうして、生成された原案解、別解、別案は、計画案データDB600(
図1参照)に格納される。
【0075】
図8A、
図8Bは、実施形態に係る処理結果である計画案データの例を示す図である。計画案データの例で、
図8Aの(1)は工程の開始終了時刻、
図8Bの(2)はシフトチームの各工程への割り付けを示す。ここでは、各工程に4つのシフトチームを割り付けるとしている。(1)工程開始終了時刻の表8000の第1列は、計画案の識別名で、0は原案解、b1は1番目の別解、B1は1つめの別案である。
【0076】
ここでは、キーリソースとして、作業能力が高いシフトチーム(Shift_A,Shift_E,Shift_I)を設定しており、各工程に割り付けられる4つのシフトチームのうち作業能力が高いシフトチームであるキーリソースに割り当てられる数を原案工程と変えることによって、別案を生成している。さらに、別解では、工程順序に自由度のある工程である工程5と工程6の実行順序を変更することによって別案を生成している。
【0077】
図8Aの表8000の2列目は工程名、3列目、4列目は1列目に記載された計画案における工程の開始、終了日時を、計算上の整数値で記載したもので、日時と対応する。例えば、初期計画案ではG5工程は、日時が159から172の間実施され、別解b1では、日時、日時が221から239の間実施され、別案B1では、日時249から266に実施されることを示している。
【0078】
表8000の原案解0の開始日時、終了日時をみると、工程G1のあと、工程G2、工程G3、工程G5、工程G4と計画されている。原案工程におけるクリティカルパスは、どの工程が遅延しても、全体工程が伸びることから、全部の工程であることがわかる。
【0079】
図8Bの(2)は、原案解、別解、別案におけるシフトチームの割当を記載したもので、表8010,8020,8030の第1列は、計画案の識別名、2列目は、工程名、3列目は割り当てられるシフトチーム名が記載されている。この例では、各工程に4シフトチームが割り当てられるとしており、たとえば、原案解0では、表8010に示すG5工程には、Shit_B,Shift_E,Shift_I,Shift_Jが割り当てられている。わかりやすくするためキーリソースである(Shift_A,Shift_E,Shift_I)は、暗い背景色で協調している。表8010の原案解0と表8020の別解b1とを比べてみると、各工程に割当てられるキーリソースの数が異なっていることが分かる。
【0080】
図9は、実施形態に係る原案解、別解、別案のガントチャートの例を示す図である。
図10は、実施形態に係る原案解、別解、別案の特定作業チームの積算線量の例を示す図である。
図11は、実施形態に係る原案解、別解、別案の全体の積算線量の例を示す図である。
図12は、実施形態に係る各工程の作業場所での空間線量率の例を示す図である。
【0081】
結果表示情報生成部260(
図1参照)は、表示のためのデータ編集、設定をして、結果表示GUI(110)(
図1参照)に表示する。
図9、
図10、
図11は表示例で、
図9ガントチャートで、
図10はキーリソースであるシフトチームの積算線量を、
図11は、全作業チームの積算線量を時系列で表示したものである。
【0082】
図9を見ると、別案B1の工程だけ、工程G4とG5の実行順序が、
図8Aの表8000に従って入れ替わっていることが分かる。すなわち、表8000の別案B1の開始日時、終了日時をみると、工程G1のあと、工程G2、工程G3、工程G4、工程G5と計画されている。全体の工程長は、原案解0<別案B1<別解b1の順であることが分かる。
【0083】
図10は、キーリソースである(Shift_A,Shift_E,Shift_I)の積算線量の推移を表している。これをみると、原案解0では、3つのチームとも比較的小さい。これは、原案解0では、他の工程より10倍被曝線量の高い作業である工程G0に対してキーリソースのシフトチームが割り当てられていないためである(
図8Bの表8010参照)。参考のため、各作業における単位時間当たりの被曝線量率の相対値を
図12に示す。
【0084】
一方、別解b1では、Shift_Iだけが、原案より12倍ほど高い値となり、Shift_Aには工程が割り当てられていない。また、別案B1では、Shift_AとShift_Iが10倍ほど高い値となり、Shift_Eは原案より少し高い値となっている。積算線量は法的に制約があり、工期の短縮だけを考慮して多くの工程を割り当てるとトラブルがあったときに、能力の高いチームを投入できないリスクがある。その一方で、能力の高いチームといえども、特定の工程をずっと実行しないでいると、特定の工程に対する能力が低下するリスクもある。
【0085】
一方、
図11の全作業員の積算線量をみると、全体工程長が最も長くなる別解b1が最も高くなり、原案解0がもっとも低くなる。計画者は、これらの結果を多角的に比較検討して実行計画を決定することができる。なお、
図11に示す積算工程は、
図10で示した工程とは出力の単位を変更している。
【0086】
このように、複数案を自動生成することにより、計画担当者が計画を比較、検討することにより、よりよい解への気づきを与えるとともに、設定し忘れていた制約条件などの計画データの不備に気づくよりおおきな機会を与えることができる。
【0087】
さらに、工程が進捗して、実績データが集まったときには、過去計画・実績データDB400(
図1参照)に格納された実績と計画案データDB600(
図1参照)の計画案との差異の大きな工程に対して割り当てられている工程に用いられているリソースを、キーリソースリスト生成部240(
図1参照)においてキーリソースとして設定して、本実施形態により、別解や別案を生成することができる。また、過去計画・実績データDB400に格納された
図3のResource History(3020)のリソースの実績のStatusから、うまくいかなかった場合が多いリソースを、キーリソースリスト生成部240において、キーリソースとして設定して多様な解を生成したりすることができる。また、あらかじめ特定のリソースがキーリソースとわかっている場合には、キーリソースリスト生成部240においてあらかじめキーリソースを設定して、多様な解を生成することもできる。
【0088】
本実施形態の計画作成支援装置1000よび計画作成支援方法は、次の特徴を有する。
(1)計画作成支援装置1000は、計画の対象となる工程のリストに列挙された各工程に必要なリソースと特定のカテゴリに属するリソースとを各工程に割り当てたときに各工程を完了するのに必要な処理時間と、工程間の順序関係とを、計画作成に必要な計画条件としてユーザが設定する計画条件設定部(計画条件設定GUI101)と、初期計画案に対し別解・別案を生成する個数および該別解・別案を生成するための条件を設定する別解別案探索設定部(別解・別案探索設定GUI)と、計画条件設定部から入力されたデータと、これまでの工程の実績を格納した過去計画・実績データをもとに計画作成のための数理モデルを生成する計画モデル生成部210と、生成した数理モデルと、カテゴリ属性付きリソースデータDBに格納された必要なリソースの種類別、日程別の数量をもとに、初期計画案を作成する初期計画案生成部220と、初期計画案からクリティカルパスの工程を抽出するクリティカルパス抽出部230と、初期計画案と過去計画・実績データからキーリソースを列挙したキーリソースリストを生成するキーリソースリスト生成部240と、初期計画案、クリティカルパス、キーリソースと、別解別案探索設定部で設定した条件をもとに、別解・別案を生成する別解別案生成部(別解・別案生成部250)と、生成した別解・別案を含む計画案の表示情報を生成する結果表示情報生成部260と、を有する。これによれば、多様な計画を生成することにより、暗黙知として計画担当者が持っているよりよい解への気づきを与えるとともに、制約条件や計画のための基礎データの不備の発見を容易にすることができる。
【0089】
(2)前記(1)の計画作成支援装置1000において、別解別案生成部は、キーリソースに関して初期計画案に対するクリティカルパスに属する工程のキーリソースリスト中の少なくとも一つのリソースの工程への割当を変える初期計画案とは違った計画案である別案を生成する、または、初期計画案に対するクリティカルパスに属する工程以外の工程のキーリソースリスト中の少なくとも一つのリソースの割当を変える類似の計画案である別案を生成することができる(
図5A、
図5B参照)。
【0090】
(3)前記(1)の計画作成支援装置1000において、別解別案生成部は、キーリソースに関して初期計画案に対するクリティカルパスに属する工程の実行順序を変える初期計画案とは違った計画案である別案を生成する、または、初期計画案に対するクリティカルパスに属する工程以外の工程の実行順序変える類似の別計画案である別案を生成する(
図8A、
図8B、
図9参照)。
【0091】
(4)前記(1)の計画作成支援装置1000において、別解別案生成部は、キーリソースに関して初期計画案に対するクリティカル工程のリソースの割当の一部を変更する初期計画案とは違った計画案である別案を生成する、または、初期計画案に対するクリティカルパスに属する工程以外の工程に対するキーリソースの割当の一部を変更する類似の別計画案である別案を生成する(
図5A、
図5B参照)。
【0092】
(5)前記(1)の計画作成支援装置1000において、キーリソースリスト生成部240は、初期計画案におけるリソースの割り当てをもとに、工程が計画よりも遅延することが全体の工程を遅延することになるクリティカル工程のリストを生成し、クリティカル工程のリストに含まれる工程の計画の際に、初期計画案において割り当てられたリソースリストをキーリソースリストとする(
図7A、
図7B参照)。
【0093】
(6)前記(1)の計画作成支援装置1000において、キーリソースリスト生成部240は、安全にかかわるリソースリストをキーリソースリストとして設定する(
図4、
図6A、
図6B、
図7A、
図7B参照)。
【0094】
(7)前記(1)の計画作成支援装置において、キーリソースリスト生成部240は、過去計画・実績データをもとに、処理時間が計画と実績の間で設定した閾値より大きな工程に用いられていたリソースリストをキーリソースリストとして設定する(
図4、
図6A、
図6B、
図7A、
図7B参照)。
【0095】
(8)前記(1)の計画作成支援装置1000において、キーリソースリスト生成部240は、過去計画・実績データをもとに、トラブルの発生した装置のリソースリストをキーリソースリストとして設定する。
【0096】
(9)前記(1)の計画作成支援装置1000において、キーリソースリスト生成部240は、初期計画案において、積算線量が設定した値より大きなリソースリストをキーリソースリストとして設定する(
図4、
図6A、
図6B、
図7A、
図7B参照)。
【0097】
(10)計画案の作成を支援する計画作成支援方法であって、コンピュータが、計画の対象となる工程のリストに列挙された各工程に必要なリソースと特定のカテゴリに属するリソースとを各工程に割り当てたときに各工程を完了するのに必要な処理時間と、工程間の順序関係とを、計画作成に必要な計画条件としてユーザが設定する計画条件設定処理と、初期計画案に対し別解・別案を生成する個数および該別解・別案を生成するための条件をユーザが設定する別解別案探索設定処理と、計画条件設定処理で設定されたデータと、これまでの工程の実績を格納した過去計画・実績データをもとに計画作成のための数理モデルを生成する計画モデル生成処理と、生成した数理モデルと、カテゴリ属性付きリソースデータDBに格納された必要なリソースの種類別、日程別の数量をもとに、初期計画案を作成する初期計画案生成処理と、初期計画案からクリティカルパスの工程を抽出するクリティカルパス抽出処理と、初期計画案と過去計画・実績データからキーリソースを列挙したキーリソースリストを生成するキーリソースリスト生成処理と、初期計画案、クリティカルパス、キーリソースと、別解別案探索設定処理で設定した条件をもとに、別解・別案を生成する別解別案生成処理と、生成した別解・別案を含む計画案の表示情報を生成する結果表示情報生成処理と、を実行する。これによれば、多様な計画を生成することにより、暗黙知として計画担当者が持っているよりよい解への気づきを与えるとともに、制約条件や計画のための基礎データの不備の発見を容易にすることができる。
【符号の説明】
【0098】
101 計画条件設定GUI(計画条件設定部)
102 別解・別案探索設定GUI(別解別案探索設定部)
110 結果表示GUI(結果表示処理部)
200 処理部
210 計画モデル生成部
220 初期計画案生成部
230 クリティカルパス抽出部
240 キーリソースリスト生成部
250 別解・別案生成部(別解別案生成部)
260 結果表示情報生成部
300 当該計画データDB
400 過去計画・実績データDB(過去計画・実績データ)
500 カテゴリ属性付きリソースデータDB
600 計画案データDB
700 記憶部
1000 計画作成支援装置