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特開2024-171358印刷用インキおよびそれを用いた印刷物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171358
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】印刷用インキおよびそれを用いた印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/02 20140101AFI20241205BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C09D11/02
G02B5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088307
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】辻 祐一
(72)【発明者】
【氏名】中村 友彦
(72)【発明者】
【氏名】境野 裕健
(72)【発明者】
【氏名】市橋 泰宜
【テーマコード(参考)】
2H148
4J039
【Fターム(参考)】
2H148AA05
2H148AA18
4J039AC01
4J039AD03
4J039AD09
4J039AE04
4J039AE08
4J039BC49
4J039BC58
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE12
4J039EA27
(57)【要約】
【課題】 印刷後に可視光下では無色透明でありかつ、印刷面の平滑性が高いために光散乱による視認性が低く、さらに紫外光の照射時に発光を呈して検出することができ、耐候性にも優れた印刷用インキを提供する。
【解決手段】 樹脂を主成分とする、発光材料を含有するポリマー微粒子を含む印刷用インキであって、前記樹脂の波長400nm以上800nm以下の範囲で光線透過率が85%以上であり、前記微粒子の真球度が80以上100以下でありかつ、前記発光材料が波長300nm以上400nm以下の範囲の励起光を用いることにより発光材料であることを特徴とする、印刷用インキ。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を主成分とし発光材料を含有するポリマー微粒子、を含む印刷用インキであって、前記樹脂の波長400nm以上800nm以下の範囲での光線透過率が85%以上であり、前記ポリマー微粒子の真球度が80以上100以下であり、前記発光材料が波長300nm以上400nm以下の範囲の励起光を用いることにより発光を呈する発光材料である、印刷用インキ。
【請求項2】
前記ポリマー微粒子の亜麻仁油吸油量が1mL/100g以上200mL/100g以下である、請求項1に記載の印刷用インキ。
【請求項3】
前記ポリマー微粒子のD90粒子径/D10粒子径が1.0以上5.0以下である、請求項1に記載の印刷用インキ。
【請求項4】
前記樹脂のガラス転移温度が100℃以上である、請求項1に記載の印刷用インキ。
【請求項5】
前記発光材料が、ピーク波長420nm以上500nm未満の発光、ピーク波長500nm以上580nm未満の発光、ピーク波長580nm以上800nm未満の発光またはピーク波長800nm以上1100nm未満の発光を呈する、請求項1に記載の印刷用インキ。
【請求項6】
前記発光材料の発光スペクトルの半値幅が50nm以下である、請求項1に記載の印刷用インキ。
【請求項7】
前記発光材料が有機発光材料を含む、請求項1に記載の印刷用インキ。
【請求項8】
前記発光材料が、一般式(3)で表される化合物を含む、請求項1に記載の印刷用インキ。
【化1】
(XはC-RまたはNである。R~Rはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、エステル基、カルバモイル基、アミド基、スルホニル基、スルホン酸エステル基、スルホンアミド基、アミノ基、イミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基、および隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。)
【請求項9】
前記発光材料が、一般式(4)または(5)で表される化合物を含む、請求項1に記載の印刷用インキ。
【化2】
(環Za、環Zbおよび環Zcは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール環、または置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30ヘテロアリール環である。
およびZは、それぞれ独立に、酸素原子、NRa(置換基Raを有する窒素原子)または硫黄原子である。ZがNRaである場合、置換基Raは環Zaもしくは環Zbと結合して環を形成してもよい。ZがNRaである場合、置換基Raは環Zaもしくは環Zcと結合して環を形成してもよい。
Eは、ホウ素原子、リン原子、SiRa(置換基Raを有するケイ素原子)またはP=Oである。EおよびEは、それぞれ独立に、BRa(置換基Raを有するホウ素原子)、PRa(置換基Raを有するリン原子)、SiRa(置換基Raを2個有するケイ素原子)、P(=O)Ra(置換基Raを2個有するホスフィンオキシド)またはP(=S)Ra(置換基Raを2個有するホスフィンスルフィド)、C=O(カルボニル基)、S(=O)またはS(=O)である。EがBRa、PRa、SiRa、P(=O)RaまたはP(=S)Raである場合、置換基Raは環Zaもしくは環Zbと結合して環を形成してもよい。EがBRa、PRa、SiRa、P(=O)RaまたはP(=S)Raである場合、置換基Raは環Zaもしくは環Zcと結合して環を形成してもよい。置換基Raは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシ基、オキシカルボニル基、エステル基、カルバモイル基、アミド基、スルホニル基、スルホン酸エステル基、スルホンアミド基、アミノ基、イミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基、および隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。また、置換基Raは、前記置換基でさらに置換されていてもよく、それらの置換基はさらに前記置換基で置換されてもよい。)
【請求項10】
さらに(メタ)アクリレートを含み、前記(メタ)アクリレートと前記樹脂の、25℃での、ナトリウムD線における屈折率の差が0.04以下である、請求項1に記載の印刷用インキ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の印刷用インキを基材上に塗布した後、乾燥または硬化させる工程を含む、印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用インキおよびそれを用いた印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IDカード、パスポート、紙幣、有価証券、証明書、入場券または各種チケット等の印刷物は、偽造防止の観点から、スキャナーなどによる複製が困難で、かつ特定の条件下のみ識別可能な印刷物とする必要がある。そのため、刺激応答により可視光領域での発光や色が変化するものや、赤外光領域での吸収・発光が見られるものなど、種々の機能性を付与したインキによる印刷物が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
特に、インキが可視光下で無色でありかつ、刺激応答により有色を呈する場合、そのようなインキにより印刷された箇所は可視光下での視認性が低い必要がある。しかしながら、刺激応答により抵触する色材が、顔料のように媒体に溶解しない分散体であると、その形状によっては、印刷物とした際に表面粗さが高くなることで、光散乱により、無色であっても視認性が上がる恐れがある。
【0004】
一方で、色材として媒体に溶解する染料を用いる例が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、基本的には液晶ディスプレイやLED照明に用いられる色変換組成物に用いられるものではあるが、青色光を吸収して緑色や赤色の発光を呈する発光材料をマトリクス樹脂に含有させ粒子化したものをセキュリティ印刷用途のための蛍光インクとして用いることが提案されている(例えば、特許文献2参照。特に段落0153)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Rudie Lion著 「The Future of Global Security Printing to 2022」、Smithers Pira社、2017年、P42-45
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-136800号公報
【特許文献2】国際公開第2020/50144号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されているような染料を用いた技術では、表面粗さの点では優位性があるが、耐候性が低く劣化しやすいとう問題があった。
【0008】
また、特許文献2に開示されている粒子の作製方法はスプレードライ法によるものであり、得られる粒子径も大きく、また粒子形状や粒度分布が不均一になると推定され、この手法で得た粒子を含むインキでは、印刷面に凹凸が多く視認性が高いという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、印刷後に可視光下では無色透明でありかつ視認性が低く、さらに紫外光の照射時に発光を呈して検出することができ、耐候性にも優れた印刷用インキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は以下の構成をとる。
[1]樹脂を主成分とし発光材料を含有するポリマー微粒子、を含む印刷用インキであって、前記樹脂の波長400nm以上800nm以下の範囲での光線透過率が85%以上であり、前記ポリマー微粒子の真球度が80以上100以下であり、前記発光材料が波長300nm以上400nm以下の範囲の励起光を用いることにより発光を呈する発光材料である、印刷用インキ。
[2]前記ポリマー微粒子の亜麻仁油吸油量が1mL/100g以上200mL/100g以下である、[1]に記載の印刷用インキ。
[3]前記ポリマー微粒子のD90粒子径/D10粒子径が1.0以上5.0以下である、[1]または[2]に記載の印刷用インキ。
[4]前記樹脂のガラス転移温度が100℃以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の印刷用インキ。
[5]前記発光材料が、ピーク波長420nm以上500nm未満の発光、ピーク波長500nm以上580nm未満の発光、ピーク波長580nm以上800nm未満の発光またはピーク波長800nm以上1100nm未満の発光を呈する、[1]~[4]のいずれかに記載の印刷用インキ。
[6]前記発光材料の発光スペクトルの半値幅が50nm以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の印刷用インキ。
[7]前記発光材料が有機発光材料を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の印刷用インキ。
[8]前記発光材料が、一般式(3)で表される化合物を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の印刷用インキ。
【0011】
【化1】
【0012】
(XはC-RまたはNである。R~Rはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、エステル基、カルバモイル基、アミド基、スルホニル基、スルホン酸エステル基、スルホンアミド基、アミノ基、イミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基、および隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。)
[9]前記発光材料が、一般式(4)または(5)で表される化合物を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の印刷用インキ。
【0013】
【化2】
【0014】
(環Za、環Zbおよび環Zcは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール環、または置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30ヘテロアリール環である。
およびZは、それぞれ独立に、酸素原子、NRa(置換基Raを有する窒素原子)または硫黄原子である。ZがNRaである場合、置換基Raは環Zaもしくは環Zbと結合して環を形成してもよい。ZがNRaである場合、置換基Raは環Zaもしくは環Zcと結合して環を形成してもよい。
Eは、ホウ素原子、リン原子、SiRa(置換基Raを有するケイ素原子)またはP=Oである。EおよびEは、それぞれ独立に、BRa(置換基Raを有するホウ素原子)、PRa(置換基Raを有するリン原子)、SiRa(置換基Raを2個有するケイ素原子)、P(=O)Ra(置換基Raを2個有するホスフィンオキシド)またはP(=S)Ra(置換基Raを2個有するホスフィンスルフィド)、C=O(カルボニル基)、S(=O)またはS(=O)である。EがBRa、PRa、SiRa、P(=O)RaまたはP(=S)Raである場合、置換基Raは環Zaもしくは環Zbと結合して環を形成してもよい。EがBRa、PRa、SiRa、P(=O)RaまたはP(=S)Raである場合、置換基Raは環Zaもしくは環Zcと結合して環を形成してもよい。置換基Raは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシ基、オキシカルボニル基、エステル基、カルバモイル基、アミド基、スルホニル基、スルホン酸エステル基、スルホンアミド基、アミノ基、イミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基、および隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。また、置換基Raは、前記置換基でさらに置換されていてもよく、それらの置換基はさらに前記置換基で置換されてもよい。)
[10]さらに(メタ)アクリレートを含み、前記(メタ)アクリレートと前記樹脂の、25℃での、ナトリウムD線における屈折率の差が0.04以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の印刷用インキ。
[11][1]~[10]のいずれかに記載の印刷用インキを基材上に塗布した後、乾燥または硬化させる工程を含む、印刷物の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る印刷用インキにより、印刷後に可視光下では無色透明でありかつ、印刷面の平滑性が高いために光散乱による視認性が低く、さらに紫外光の照射時に発光を呈して検出することができ、耐候性にも優れた印刷物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例で作製したポリマー微粒子1の電子顕微鏡写真
図2】実施例で作製したポリマー微粒子4の電子顕微鏡写真
図3】実施例で作製したポリマー微粒子5の電子顕微鏡写真
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。なお、本発明において「以上」とは、そこに示す数値と同じかまたはそれよりも大きいことを意味する。また、「以下」とは、そこに示す数値と同じかまたはそれよりも小さいことを意味する。また、「未満」とは、そこに示す数値よりも小さいことを意味する。
【0018】
(ポリマー微粒子)
本発明の実施の形態に係る印刷用インキは、樹脂を主成分とし発光材料を含有するポリマー微粒子を含み、ポリマー微粒子の真球度は80以上100以下である。真球度が高いことで、微粒子の流動性や充填性、すべり性が向上し、印刷用インキの流動性が高くなる。さらに本発明の印刷用インキが印刷された印刷物において印刷部の平滑性が高くなり、光散乱が抑制され、人の目による視認性が低くなる。真球度は、好ましくは85以上、さらに好ましくは90以上、特に好ましくは95以上である。
【0019】
ポリマー微粒子の真球度は、走査型電子顕微鏡の写真から無作為に30個の粒子を観察し、その短径と長径から下記数式に従い、決定される。
【0020】
【数1】
【0021】
この式において、S:真球度、a:長径、b:短径、n:測定数30である。
【0022】
ポリマー微粒子のD50粒子径の上限は、70μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、20μm以下が特に好ましく、10μm以下が著しく好ましく、5μm以下が最も好ましい。またその下限は、0.2μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1.0μm以上がさらに好ましく、1.5μm以上がいっそう好ましく、2.0μm以上が特に好ましい。
【0023】
ポリマー微粒子のD50粒子径が上限以下であることで、フィルムのザラつきや外観低下を抑制しやすい。ポリマー微粒子のD50粒子径が下限以上であることで、ポリマー微粒子の表面積が小さくなり、スラリーやインキで使用する際の増粘を抑制しやすい。
【0024】
ポリマー微粒子のD50粒子径は、レーザー回折式粒径分布計にて測定される粒径分布の小粒径側からの累積度数が50%となる粒径(D50粒子径)である。
【0025】
ポリマー微粒子の粒度分布は、粒度分布のD90粒子径とD10粒子径の比であるD90粒子径/D10粒子径(以下、D90/D10と表記する)で表され、1.0以上5.0以下であることが好ましい。ポリマー微粒子の粒度分布が狭い方が、粒子サイズの差による光散乱性の差が無くなり、より光学的な均一性が得られるため好ましい。従ってD90/D10の上限は、4.0以下がより好ましく、3.0以下がさらに好ましい。また、その下限値は、粉末状態での充填性に優れる点で、1.5以上がより好ましく、2.0以上がさらに好ましい。
【0026】
ポリマー微粒子のD90/D10は、上記したレーザー回折式粒径分布計により測定した粒径分布の小粒径側からの累積度数が90%となる粒径(D90)を小粒径側からの累積度数が10%となる粒径(D10)で除した値である。
【0027】
ポリマー微粒子の粒子表面の平滑性は、亜麻仁油を吸収する量(亜麻仁油吸油量)で表すことが可能である。即ち、表面が平滑であるほど表面に孔の存在しない微粒子となり、亜麻仁油吸油量が少なくなる。ポリマー微粒子の亜麻仁油吸油量は、1mL/100g以上200mL/100g以下であることが好ましい。ポリマー微粒子の亜麻仁油吸油量が小さい方が粒子の表面が平滑かつ内部が中実となり、粒子表面での望まない光散乱や粒子内部での多重反射による光学的損失を低減することができ、また、多重励起による発光材料の劣化促進を抑制することができる。更には、印刷用インキとした際の流動性が高くなる。亜麻仁油吸油量の上限としては、150mL/100g以下がより好ましく、120mL/100g以下がさらに好ましく、100mL/100g以下がいっそう好ましく、70mL/100g以下が特に好ましい。下限としては特に限定されないが、10mL/100g以上がより好ましく、20mL/100g以上がさらに好ましく、30mL/100g以上が特に好ましい。
【0028】
ポリマー微粒子の亜麻仁油吸油量は、日本工業規格(JIS規格)JIS K 5101(2004)“顔料試験方法 精製あまに油法”に準じて測定される。
【0029】
ポリマー微粒子の表面の平滑性や内部の中実性は、ガス吸着によるBET比表面積によって表すことが可能である。ポリマー微粒子の表面が平滑であり、かつ内部が中実であると、ポリマー微粒子表面及び内部での光散乱による光学的損失を低減することができるため、好ましい。更には、その表面積が小さくなり、流動性が向上し取り扱い性に優れるため、好ましい。ここでは、表面が平滑であるほど、BET比表面積は小さくなることを意味する。具体的には、ポリマー微粒子のBET比表面積が10m/g以下であることが好ましく、より好ましくは5m/g以下であり、さらに好ましくは3m/g以下であり、特に好ましくは1m/g以下である。また、その下限値は、粒子径が100μmであった場合に理論上0.05m/gである。
【0030】
ポリマー微粒子のBET比表面積は、日本工業規格(JIS規格)JIS R 1626(1996)“気体吸着BET法による比表面積の測定方法”に準じて測定される。
【0031】
ポリマー微粒子の中実性は、BET比表面積とD50粒子径から算出される理論表面積の比を示す下記の式によって評価することもできる。下記式の値が1に近いほど、粒子の最表面のみで吸着が起こるため、表面平滑で中実な粒子であることを示す。下記式の値は、5以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下がさらに好ましく、2以下が最も好ましい。また、その下限値は、理論上1である。
【0032】
【数2】
【0033】
この式において、R:表面積の比、D:D50粒子径、α:ポリマー微粒子の密度、A:BET比表面積である。
【0034】
(微粒子中の樹脂)
ポリマー微粒子の主成分である樹脂は、波長400nm以上800nm以下の範囲での光線透過率が85%以上である。光線透過率が高いほど樹脂の透明性が向上し、発光材料からの発光阻害を低減することができ、また可視光領域における着色が小さく、人の目による視認性が低くなる。光線透過率は、87%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは91%以上、特に好ましくは92%以上である。
【0035】
樹脂の波長400nm以上800nm以下の範囲での光線透過率は、膜厚1μm以上100μm以下の樹脂サンプル片を作製し、市販の測定器(例えば日立製作所(株)製の紫可視分光光度計(商品名 U-3010))を用いて測定することができる。
【0036】
また、樹脂は、その固有複屈折が-30×10-4以上+30×10-4以下であることが好ましい。固有複屈折の絶対値が小さいほど、光の拡散を防止することができる。また、ポリマー微粒子に含まれる発光材料の発色を向上することが可能となる。固有複屈折は、下限としては-25×10-4以上であることが好ましく、より好ましくは-20×10-4以上、さらに好ましくは-15×10-4以上である。また上限としては+25×10-4以下であることが好ましく、より好ましくは+20×10-4以下、さらに好ましくは+15×10-4以下である。
【0037】
樹脂の固有複屈折は、AM1法やPM3法等の分子軌道法によって、構成単位それぞれの結合単位における誘電分極差を計算し、その体積平均として下記ローレンツ-ローレンツの式によって固有複屈折値を算出することができる。
【0038】
【数3】
【0039】
この式において、Δn:固有複屈折値、ΔP:分子鎖軸方向の誘電分極率と分子鎖軸に直角方向の誘電分極率との差、n:屈折率、d:密度、N:アボガドロ数、M:分子量である。
【0040】
樹脂の比重は、材料の軽量化が可能となり、ポリマー微粒子の印刷用インキ中での沈降を抑制する観点から、1.20g/cm以下であることが好ましく、1.15g/cm以下であることがより好ましく、1.12g/cm以下であることが特に好ましい。
【0041】
樹脂のガラス転移温度(Tg)は、内包する発光材料の熱拡散や分子運動を抑制する観点から、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることが好ましく、120℃以上であることが特に好ましい。樹脂のTgの上限としては特に限定されないが、180℃以下であることが好ましい。樹脂のガラス転移温度は、市販の測定器(例えば、TAインスツルメント社製の示差走査熱量計(商品名 DSCQ20)によって、昇温速度20℃/分の条件により測定することができる。なお、サンプルの形態は測定用の容器に入れば特に限定されないが、粉末、細かく裁断したペレット、フィルム、あるいは樹脂溶液をキャストした後に十分乾燥して溶剤を除去した状態で測定することが好ましい。
【0042】
樹脂の種類としては、透明性、耐熱性等に優れる材料が好適に用いられる。樹脂の種類の例としては、例えば、アクリル酸系、メタクリル酸系、ポリケイ皮酸ビニル系、環ゴム系等の反応性ビニル基を有する光硬化型レジスト材料、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂(シリコーンゴム、シリコーンゲル等のオルガノポリシロキサン硬化物(架橋物)を含む)、ウレア樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、脂肪族エステル樹脂、芳香族エステル樹脂、脂肪族ポリオレフィン樹脂、芳香族ポリオレフィン樹脂等の公知のものが挙げられる。また、これらの樹脂の混合物や共重合体を用いても構わない。これらの樹脂を適宜設計することで、本発明の実施の形態に係るポリマー微粒子に有用な樹脂が得られる。
【0043】
これらの樹脂の中でも、透明性や発光材料の分散性の観点から、アクリル樹脂、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル部位を含む共重合樹脂、ポリエステル樹脂、シクロオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂のいずれかであることが好ましい。より好ましくは、アクリル樹脂、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル部位を含む共重合樹脂、ポリエステル樹脂であり、特に好ましくはアクリル樹脂、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル部位を含む共重合樹脂である。また、耐熱性の観点からは、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂を好適に用いることができる。
【0044】
樹脂は、分子構造中に、脂肪族炭化水素環、脂肪族複素環およびSP3炭素を含む環からなる群より選ばれる少なくとも1種の環構造を有する樹脂を主成分とすることが好ましい。樹脂が分子構造中に環構造を有する場合、樹脂の分子運動が抑制され、発光材料の分散状態の変化を抑制し、これらの材料同士の近接を抑制することができる。さらに、環構造が脂肪族炭化水素環、脂肪族複素環およびSP3炭素を含む環からなる群より選ばれる少なくとも1種の環構造であることで、樹脂中のπ共役構造が少なくなり、光吸収による活性種の生成が低減する。これらにより、発光材料の劣化を抑制し、ポリマー微粒子の耐久性の悪化を防ぐことができる。ここで、SP3炭素とは、SP3混成軌道で4つの原子と結合している炭素原子を示す。
【0045】
脂肪族炭化水素環、脂肪族複素環およびSP3炭素を含む環を構成する原子数は、特に限定されないが、通常3~30個、好ましくは4~20個、より好ましくは5~15個の範囲である。
【0046】
脂肪族炭化水素環、脂肪族複素環およびSP3炭素を含む環構造の具体例としては、例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルネン、アダマンタン、ピロリジン、ピペリジン、エチレンオキシド、オキセタン、フラン、テトラヒドロピラン、モルホリン、ジオキサン、インダン、フルオレン、環状エステル、環状アミド、およびそれらの誘導体が挙げられる。中でも、シクロヘキサン、ノルボルネン、アダマンタン、エチレンオキシド、オキセタン、フルオレン、環状エステル、環状アミド、およびそれらの誘導体が好ましく、シクロヘキサン、ノルボルネン、アダマンタン、フルオレン、環状エステル、およびそれらの誘導体がより好ましく、シクロヘキサン、ノルボルネン、フルオレン、環状エステル、およびそれらの誘導体がいっそう好ましく、シクロヘキサン、ノルボルネン、およびそれらの誘導体が特に好ましい。
【0047】
樹脂は、脂肪族炭化水素環、脂肪族複素環およびSP3炭素を含む環からなる群より選ばれる少なくとも1種の環構造をポリマー主鎖に有する樹脂、および、ポリマー主鎖に脂肪族炭化水素環、脂肪族複素環およびSP3炭素を含む環からなる群より選ばれる少なくとも1種の環構造がポリマー主鎖に直接連結している樹脂のうち少なくとも一方の樹脂を主成分とすることが好ましい。環構造がポリマー主鎖中に含まれる、あるいは環構造が主鎖に直接結合している場合、環構造をポリマー側鎖に導入する場合よりも効率的に樹脂の分子運動が抑制でき、発光材料の分散状態の変化を抑制することができる。
【0048】
また、発光材料を樹脂中に良好に分散させるためには、樹脂が、発光材料との相溶性の高い部分構造と、相溶性の低い部分構造とを併せ持つことが好ましい。樹脂のさらに好ましい形態として、発光材料との相溶性の高い部分構造と相溶性の低い部分構造をランダムに含む共重合体であることが好ましい。
【0049】
発光材料との相溶性が高い部分構造としては、特に限定されるものではないが、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルに由来する部位や、エステル結合やアミド結合で連結された部位が挙げられる。一方、発光材料との相溶性が低い部分構造としては、特に限定されるものではないが、炭素原子のみからなるビニル化合物や脂肪族炭化水素環を有するビニル化合物由来の部位が挙げられる。よって、樹脂として、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルに由来する部位、およびエステル結合もしくはアミド結合で連結された部位のうち少なくとも一方と、炭素原子のみからなるビニル化合物由来の部位および脂肪族炭化水素環を有するビニル化合物由来の部位のうち少なくとも一方と、を有することが好ましい。
【0050】
発光材料との相溶性を確保し、良好に分散させる観点から、上記共重合体における発光材料との相溶性が高い部分構造の含有量は、樹脂の総量のうち、30重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、70重量%以上がさらに好ましい。一方、上記共重合体における発光材料との相溶性が低い部分構造の含有量は、樹脂の総量のうち、70重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましい。
【0051】
樹脂の好適な例として、特に限定されるものではないが、分子構造中に一般式(1)で表される部分構造と一般式(2)で表される部分構造とを有する樹脂が挙げられる。
【0052】
【化3】
【0053】
一般式(1)中、YおよびYは同じでも異なっていてもよく、水素原子または炭素数1以上20以下の有機基である。
【0054】
一般式(2)中、Y~Yは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子または炭素数1以上20以下の有機基であり、かつ、Y~Yのうち少なくとも一つは、脂肪族環状炭化水素構造を含む基である。
【0055】
共重合の反応性が良好である観点からYは水素原子またはメチル基であることが好ましく、ラジカルの生成を低減する観点からメチル基であることがより好ましい。
【0056】
樹脂の耐熱性を高める観点から、Yは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基またはヘテロアリール基が好ましい。また、これらの基は、さらに上述の置換基により置換されていてもよい。これらの中でも、Yがメチル基またはシクロアルキル基であることがより好ましい。発光材料との相溶性の観点から、メチル基であることがさらに好ましい。
【0057】
樹脂の耐熱性を高める観点から、Y~Yは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基またはヘテロアリール基が好ましい。また、これらの基は、さらに上述の置換基により置換されていてもよい。
【0058】
~Yのうち少なくとも一つは、脂肪族環状炭化水素構造を含む基であり、特に制限はないが、入手の容易性やコストの観点から、Y~Yのうち少なくとも一つが置換もしくは無置換のシクロヘキシル基であることが好ましい。また、Y~Yのうち一つが置換もしくは無置換のシクロヘキシル基であり、その他三つが水素原子であることがより好ましい。
【0059】
一般式(1)で表される部分構造の繰り返し単位の含有量は、特に限定されないが、樹脂の総量のうち、30重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、60重量%以上がさらに好ましく、70重量%以上が特に好ましい。一般式(1)で表される部分構造の繰り返し単位の割合が上記範囲であることにより、発光材料との相溶性を確保でき、良好に分散させることができる。
【0060】
一般式(1)で表される部分構造の繰り返し単位の含有量は、樹脂の総量のうち、95重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましく、85重量%以下がさらに好ましい。一般式(1)で表される部分構造の繰り返し単位の割合が上記範囲であることにより、発光材料との相溶性を確保でき、良好に分散させることができる。
【0061】
一般式(2)で表される部分構造の繰り返し単位の含有量は、樹脂の総量のうち、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、15重量%以上が特に好ましい。一般式(2)で表される部分構造の繰り返し単位の含有量が上記範囲であることで、発光材料との相溶性を確保でき、良好に分散させることができる。
【0062】
一般式(2)で表される部分構造の繰り返し単位の含有量は、樹脂の総量のうち、70重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましい。一般式(2)で表される部分構造の繰り返し単位の割合が上記範囲であることにより、発光材料との相溶性を確保でき、良好に分散させることができる。
【0063】
樹脂は、例えば、各原料モノマーを重合開始剤や触媒の存在下で共重合させるなどの方法により得ることができる。また、市販品を用いることもできる。市販の樹脂としては、例えば、三菱瓦斯化学(株)製のOptimas(登録商標)6500やOptimas(登録商標)7500)やユピゼータ(登録商標)EP-5000、大阪ガスケミカル株式会社製OKP(登録商標)4やOKP(登録商標)-A1等が挙げられるが、これらに限るものではない。他には、特開2021-162621や特開2022-116643、特開2022-179996、特開2022-72382、特開2020-180184、特開2018-53044等で開示されている樹脂も好適に用いることができる。
【0064】
(発光材料)
ポリマー微粒子は、主成分である樹脂に発光材料を内包する。ここでいう発光材料は、波長300nm以上400nm以下の範囲の励起光を用いることにより発光を呈する発光材料である。発光波長としては、400nm以上800nm以下の可視光領域にあることが好ましく、それにより人の目による視認性が得られる。また、発光波長が800nm以上の近赤外光領域であっても、人の目による視認性はないものの、検出器を用いることで、判別することが可能である。ここで、発光は市販の測定器(例えば堀場製作所(株)製の蛍光リン光分光光度計(商品名 FluoroMax-4P))によって測定することができる。
【0065】
また発光材料が樹脂成分に内包・被覆されるポリマー微粒子となることで、発光材料の熱運動や、酸素、水など外界成分が発光材料に接近することを抑制できる。これにより発光材料単体での分散または媒体への溶解の場合と比べて、一般的に耐候性が向上する。
【0066】
発光材料は、ピーク波長420nm以上500nm未満の発光を呈することが、人の目で視認性が得られるため好ましい。以後、ピーク波長が420nm以上500nm未満の領域に観測される発光を「青色の発光」という。
【0067】
発光材料は、ピーク波長500nm以上580nm未満の発光を呈することが、人の目で視認性が得られるため好ましい。以後、ピーク波長が500nm以上580nm未満の領域に観測される発光を「緑色の発光」という。
【0068】
発光材料は、ピーク波長580nm以上800nm未満の発光を呈することが、人の目で視認性が得られるため好ましい。以後、ピーク波長が580nm以上800nm未満の領域に観測される発光を「赤色の発光」という。
【0069】
発光材料は、ピーク波長800nm以上1100nm未満の発光を呈することが、人の目による視認性はないものの検出器を用いることで判別することが可能となるため、好ましい。以後、ピーク波長が800nm以上1100nm以下の領域に観測される発光を「近赤外発光」という。
【0070】
発光材料としては、その発光スペクトルの半値幅が50nm以下であることが、色純度の高い発光となるため好ましい。色純度の高い発光が得られる場合、特定の波長域をカットするフィルターを入れることで、半値幅の広い発光と区別ができ、偽造防止性がより高まるため好ましい。発光スペクトルの半値幅は50nm以下であることが好ましく、より好ましくは40nm以下、さらに好ましくは30nm以下である。
【0071】
紫外線での励起効率が高い方がより強度の大きい発光が得られるため好ましく、発光材料の吸収極大におけるモル吸光係数εが10000以上であることが好ましい。より好ましくは20000以上であり、さらに好ましくは30000以上であり、特に好ましくは40000以上である。ここで、モル吸光係数εは市販の測定器(例えば日立製作所(株)製の紫可視分光光度計(商品名 U-3010))によって測定することができる。
【0072】
発光材料としては、例えば、無機蛍光体、蛍光顔料、蛍光染料、量子ドット等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。中でも量子収率の高い発光特性を示す材料が好ましく、量子ドット、有機発光材料を用いることが好ましい。さらに、使用量の低減、環境負荷の低減の観点から、有機発光材料を用いることがより好ましい。
【0073】
このような発光材料として、例えば、縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、ヘテロアリール環を有する化合物やその誘導体、ボラン系化合物、スチルベン系化合物、芳香族アセチレン系化合物、テトラフェニルブタジエン系化合物、アルダジン系化合物、ピロメテン系化合物、ジケトピロロ[3,4-c]ピロール系化合物、クマリン系化合物、アゾール系化合物およびその金属錯体、シアニン系化合物、キサンテン系化合物、チオキサンテン系化合物、ポリフェニレン系化合物、ナフタルイミド系化合物、フタロシアニン系化合物およびその金属錯体、ポルフィリン系化合物およびその金属錯体、オキサジン系化合物、ヘリセン系化合物、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、オスミウム(Os)、及びレニウム(Re)等の有機金属錯体化合物等が好適なものとして挙げられる。
【0074】
これらの中で、波長300nm以上400nm以下の範囲の励起光で、青色の発光を呈する材料としては、9,10-ジフェニルアントラセンやその誘導体、ピレン誘導体などの縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、クマリン系化合物、スチルベン系化合物、アクリジン、ビマン等が挙げられる。
【0075】
また、波長300nm以上400nm以下の範囲の励起光で、緑色の発光を呈する材料としては、例えば、クマリン6、クマリン7、クマリン153等のクマリン系化合物、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、カルボキシフルオレセインジアセテート等のフルオレセイン系化合物、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系化合物、ジイソブチル-4,10-ジシアノペリレン-3,9-ジカルボキシレート等のペリレン系化合物、ピロメテン系化合物、スチルベン系化合物、オキサジン系化合物、ナフタルイミド系化合物、ピラジン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、イミダゾピリジン系化合物、アゾール系化合物、アントラセン等の縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、有機金属錯体化合物等が挙げられる。
【0076】
また、波長300nm以上400nm以下の範囲の励起光で、赤色の発光を呈する材料としては、4-ジシアノメチレン-2-メチル-6-(p-ジメチルアミノスチルリル)-4H-ピラン等のシアニン誘導体、ローダミンB・ローダミン6G・ローダミン101・スルホローダミン101などのローダミン系化合物、1-エチル-2-(4-(p-ジメチルアミノフェニル)-1,3-ブタジエニル)-ピリジニウム-パークロレートなどのピリジン系化合物、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1,6,7,12-テトラフェノキシペリレン-3,4:9,10-ビスジカルボイミド等のペリレン系化合物、他にポルフィリン系化合物、ピロメテン系化合物、オキサジン系化合物、ピラジン系化合物、ナフタセンやジベンゾジインデノペリレン等の縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、有機金属錯体化合物等が挙げられる。
【0077】
また、波長300nm以上400nm以下の範囲の励起光で、近赤外発光を呈する材料としては、インドシアニングリーン系化合物、ピロメテン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリメチン系化合物、アゾ-ホウ素系化合物、スクアリウム系化合物、ペリレンイミド系化合物等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0078】
これら発光材料の中でも、特に高い色純度の発光を示すことから、一般式(3)、(4)または(5)で表される化合物であることが好ましい。
【0079】
【化4】
【0080】
XはC-RまたはNである。R~Rはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、エステル基、カルバモイル基、アミド基、スルホニル基、スルホン酸エステル基、スルホンアミド基、アミノ基、イミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基、および隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。
【0081】
【化5】
【0082】
環Za、環Zbおよび環Zcは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール環、または置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30ヘテロアリール環である。
およびZは、それぞれ独立に、酸素原子、NRa(置換基Raを有する窒素原子)または硫黄原子である。ZがNRaである場合、置換基Raは環Zaもしくは環Zbと結合して環を形成してもよい。ZがNRaである場合、置換基Raは環Zaもしくは環Zcと結合して環を形成してもよい。
Eは、ホウ素原子、リン原子、SiRa(置換基Raを有するケイ素原子)またはP=Oである。EおよびEは、それぞれ独立に、BRa(置換基Raを有するホウ素原子)、PRa(置換基Raを有するリン原子)、SiRa(置換基Raを2個有するケイ素原子)、P(=O)Ra(置換基Raを2個有するホスフィンオキシド)またはP(=S)Ra(置換基Raを2個有するホスフィンスルフィド)、C=O(カルボニル基)、S(=O)またはS(=O)である。EがBRa、PRa、SiRa、P(=O)RaまたはP(=S)Raである場合、置換基Raは環Zaもしくは環Zbと結合して環を形成してもよい。EがBRa、PRa、SiRa、P(=O)RaまたはP(=S)Raである場合、置換基Raは環Zaもしくは環Zcと結合して環を形成してもよい。置換基Raは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシ基、オキシカルボニル基、エステル基、カルバモイル基、アミド基、スルホニル基、スルホン酸エステル基、スルホンアミド基、アミノ基、イミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基、および隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。また、置換基Raは、前記置換基でさらに置換されていてもよく、それらの置換基はさらに前記置換基で置換されてもよい。
【0083】
上記の全ての基において、水素は重水素であってもよい。以下に説明する化合物またはその部分構造においても同様である。
【0084】
また、以下の説明において、例えば、炭素数6~40の置換もしくは無置換のアリール基とは、アリール基に置換した置換基に含まれる炭素数も含めて6~40であり、炭素数を規定している他の置換基もこれと同様である。
【0085】
「置換もしくは無置換の」という場合における「無置換」とは、水素原子または重水素原子が置換したことを意味する。以下に説明する化合物またはその部分構造において、「置換もしくは無置換の」という場合についても、上記と同様である。
【0086】
上記の全ての基において、置換される場合の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシ基、オキシカルボニル基、エステル基、カルバモイル基、アミド基、スルホニル基、スルホン酸エステル基、スルホンアミド基、イミノ基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、またはホスフィンオキシド基である。また、これらの置換基は、さらに上述の置換基により置換されていてもよい。
【0087】
アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。置換されている場合の追加の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル基、ハロゲン、アリール基、ヘテロアリール基等を挙げることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、好ましくは1以上20以下、より好ましくは1以上8以下の範囲である。
【0088】
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルキル基部分の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、3以上20以下の範囲である。
【0089】
複素環基とは、例えば、ピラン環、ピペリジン環、環状アミドなどの炭素以外の原子を環内に有する脂肪族環を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。複素環基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
【0090】
アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基などの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルケニル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
【0091】
シクロアルケニル基とは、例えば、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基などの二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。シクロアルケニル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、3以上20以下の範囲である。
【0092】
アルキニル基とは、例えば、エチニル基などの三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルキニル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
【0093】
アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのエーテル結合を介して脂肪族炭化水素基が結合した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、1以上20以下の範囲である。
【0094】
アルキルチオ基とは、アルコキシ基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アルキルチオ基の炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルキルチオ基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、1以上20以下の範囲である。
【0095】
アリールエーテル基とは、例えば、フェノキシ基など、エーテル結合を介した芳香族炭化水素基が結合した官能基を示し、芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
【0096】
アリールチオエーテル基とは、アリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アリールエーテル基における芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
【0097】
アリール基とは、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ベンゾフェナントリル基、ベンゾアントラセニル基、クリセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ベンゾフルオランテニル基、ジベンゾアントラセニル基、ペリレニル基、ヘリセニル基などの芳香族炭化水素基を示す。中でも、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基が好ましい。アリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは6以上40以下、より好ましくは6以上30以下の範囲である。
【0098】
アリール基としてはフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基がより好ましい。さらに好ましくは、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基であり、フェニル基が特に好ましい。
【0099】
それぞれの置換基がさらにアリール基で置換される場合、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基がより好ましい。特に好ましくは、フェニル基である。
【0100】
ヘテロアリール基とは、例えば、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、ナフチリジニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、カルボリニル基、インドロカルバゾリル基、ベンゾフロカルバゾリル基、ベンゾチエノカルバゾリル基、ジヒドロインデノカルバゾリル基、ベンゾキノリニル基、アクリジニル基、ジベンゾアクリジニル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェナントロリニル基などの、炭素以外の原子を一個または複数個環内に有する環状芳香族基を示す。ただし、ナフチリジニル基とは、1,5-ナフチリジニル基、1,6-ナフチリジニル基、1,7-ナフチリジニル基、1,8-ナフチリジニル基、2,6-ナフチリジニル基、2,7-ナフチリジニル基のいずれかを示す。ヘテロアリール基は置換基を有していても有していなくてもよい。ヘテロアリール基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上40以下、より好ましくは2以上30以下の範囲である。
【0101】
ヘテロアリール基としてはピリジル基、フラニル基、チオフェニル基、キノリニル基、ピリミジル基、トリアジニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェナントロリニル基が好ましく、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基、キノリニル基がより好ましい。特に好ましくは、ピリジル基である。
【0102】
それぞれの置換基がさらにヘテロアリール基で置換される場合、ヘテロアリール基としては、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基、キノリニル基、ピリミジル基、トリアジニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェナントロリニル基が好ましく、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基、キノリニル基がより好ましい。特に好ましくは、ピリジル基である。
【0103】
ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選ばれる原子を示す。
【0104】
カルボニル基、カルボキシ基、オキシカルボニル基、エステル基、カルバモイル基、アミド基、イミノ基は、置換基を有していても有していなくてもよい。ここで、置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などが挙げられ、これら置換基はさらに置換されてもよい。
【0105】
スルホニル基、スルホン酸エステル基、スルホンアミド基とは、それぞれ、-S(=O)10、-S(=O)OR10、-S(=O)NR1011で表される基であり、R10、R11は水素あるいは上述の置換される場合の置換基と同様の群から選ばれる。
【0106】
アミノ基とは、置換もしくは無置換のアミノ基である。置換する場合の置換基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基、直鎖アルキル基、分岐アルキル基が挙げられる。アリール基、ヘテロアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、キノリニル基が好ましい。これら置換基はさらに置換されてもよい。炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上50以下、より好ましくは6以上40以下、特に好ましくは6以上30以下の範囲である。
【0107】
シリル基とは、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基などのアルキルシリル基や、フェニルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、トリナフチルシリル基などのアリールシリル基を示す。ケイ素上の置換基はさらに置換されてもよい。シリル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、1以上30以下の範囲である。
【0108】
シロキサニル基とは、例えばトリメチルシロキサニル基などのエーテル結合を介したケイ素化合物基を示す。ケイ素上の置換基はさらに置換されてもよい。
【0109】
ボリル基とは、置換もしくは無置換のボリル基である。置換する場合の置換基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、アリールエーテル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基が挙げられ、中でもアリール基、アリールエーテル基が好ましい。
【0110】
ホスフィンオキシド基とは、-P(=O)R1011で表される基である。R10およびR11は、水素原子あるいは上述の置換される場合の置換基と同様の群から選ばれる。
【0111】
また、任意の隣接する2置換基(例えば一般式(4)のRとR)が互いに結合して、共役または非共役の縮合環を形成していてもよい。縮合環の構成元素としては、炭素以外にも窒素、酸素、硫黄、リンおよびケイ素から選ばれる元素を含んでいてもよい。また、縮合環がさらに別の環と縮合してもよい。
【0112】
一般式(3)において、RおよびRは、フッ素、含フッ素アルキル基、含フッ素ヘテロアリール基または含フッ素アリール基、含フッ素アルコキシ基、含フッ素アリールオキシ基、含フッ素ヘテロアリールオキシ基、シアノ基が好ましい。特に、励起光に対して安定でより高い蛍光量子収率が得られることから、RおよびRは、フッ素またはシアノ基であることがより好ましい。
【0113】
また、一般式(3)において、Xは、C-Rであることが、光安定性の観点から好ましい。また、より高い蛍光量子収率を与え、より熱分解しづらい点、また光安定性の観点から、XがC-Rであり、Rが置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のヘテロアリール基であることが好ましい。中でも、炭素-炭素結合のねじれが過度に大きくなることによる光安定性の低下を抑えることができるため、置換もしくは無置換のフェニル基であることが好ましい。
【0114】
一般式(3)で表される化合物の別の態様として、RとR、RとR、RとR、およびRとRの4組のうち少なくとも1組は、下記一般式(6A)~(6D)のいずれかの環構造であることが好ましい。一般式(6A)~(6D)で表される環構造は二重結合を有しており、導入することで、共役を拡張させ、発光を長波長化させることができる。さらに、環構造により二重結合部位を中心骨格に化学結合で固定できるため、励起状態での過度な構造緩和を抑制することができ、色純度の良い発光を得ることができる。
【0115】
【化6】
【0116】
一般式(6A)~(6D)中、R101、R102およびR201~R204は一般式(3)におけるR~Rと同義である。Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環、または置換もしくは無置換の芳香族複素環である。また、R101とR102とが環を形成していても良い。*はピロメテン骨格との連結部を示す。
【0117】
一般式(6D)の環構造において、Arが置換もしくは無置換のベンゼン環、置換もしくは無置換のナフタレン環、置換もしくは無置換のフェナントレン環、置換もしくは無置換のピリジン環、置換もしくは無置換のピリミジン環、置換もしくは無置換のピラジン環であることが好ましい。さらに、Arが置換もしくは無置換のベンゼン環であると、熱的および光化学的安定性が向上するため好ましい。
【0118】
また、R101とR102とが環を形成していても良い。R101とR102とが環を形成することで、構造緩和が抑制され、シャープな発光を得られる。また、分子全体の熱的な振動が抑制されるため、熱的安定性が向上する。R101とR102とが環を形成している場合の好ましい例としては、これらがスピロフルオレン環を形成している場合が挙げられる。具体的には、R101とR102がともにベンゼン環であって、それらが環を形成している構造である。
【0119】
一般式(3)で表される化合物の好ましい例の1つとして、R、R、RおよびRが全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のフェニル基であり、さらに、XがC-Rであり、Rが置換もしくは無置換のフェニル基である場合が挙げられる。この場合、R、R、R、R、Rの少なくともいずれか1つが、メトキシ基で置換されたフェニル基であることがより好ましい。
【0120】
一般式(3)で表される化合物の好ましい例の別の1つとして、R、R、RおよびRが全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基であり、さらに、XがC-Rであり、Rが置換もしくは無置換のフェニル基である場合が挙げられる。この場合、RおよびRがそれぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のエステル基であることがより好ましく、置換もしくは無置換のアリールエステル基であることがさらに好ましい。
【0121】
一般式(3)で表される化合物の好ましい例の別の1つとして、RとRが一般式(6D)の環構造であり、Arが置換もしくは無置換のベンゼン環であり、R101とR102が、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のフェニル基であり、Rが置換もしくは無置換のフェニル基である場合が挙げられる。この場合、RとRがそれぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のフェニル基であることがより好ましい。また、一般式(6D)中のR101とR102とが環を形成することも好ましい。
【0122】
一般式(4)および一般式(5)において、環Za、環Zbおよび環Zcにおける置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、クリセン環、アントラセン、ピレン環といった芳香族炭化水素環が挙げられるが、これらの中でも溶解性を確保する観点でベンゼン環が好ましい。また環形成炭素数5~30のヘテロアリール環としてはピリジン環、キノリン環、フェナントロリン環といった芳香族ヘテロアリール環構造が挙げられるが、原料入手のしやすさや合成の難易度の観点ではピリジン環が好ましい。
【0123】
一般式(4)および一般式(5)において、置換基Raは、置換基も含めて炭素数6~40の基であることが好ましい。置換基Raは、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、または置換もしくは無置換のアルキル基であることが好ましく、置換もしくは無置換のアリール基であることがより好ましい。置換もしくは無置換のアリール基としては、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のフルオレニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくはフェナントレニル基等が挙げられるが、置換もしくは無置換のフェニル基がより好ましい。
【0124】
一般式(4)および一般式(5)において、ZおよびZは酸素原子またはNRaであることが、π共役系が効率よく拡張し、光励起効率が高まるため、好ましい。
【0125】
同様に、Eはホウ素原子であることが好ましく、EおよびEはBRaであることが、π共役系が効率よく拡張するため、好ましい。
【0126】
また、環Za、環Zbおよび環Zcはベンゼン環であることが、π共役系が効率よく拡張するため、好ましい。
【0127】
一般式(4)および一般式(5)で表される化合物は、例えば文献Adv.Mater.,2016,28,2777-2781 に記載されているように、電子ドナー性のアミン窒素原子と電子アクセプター性のホウ素原子を最適に配置することで、多重共鳴効果によりHOMO軌道とLUMO軌道を分離させることが可能である。HOMO軌道とLUMO軌道を明瞭に分離し、一重項励起状態と三重項励起状態をより近接させ遅延蛍光を放出しやすくするという観点では、Eが電子アクセプター性の強いホウ素原子であり、かつZとZがどちらも電子ドナー性の強い基であるNRaであることが好ましい。
【0128】
さらに、一般式(4)および一般式(5)の置換基Raが、環Za、環Zb、および環Zcの少なくとも1つの環と結合した構造がより好ましい。これは、置換基Raが環Za、環Zb、および環Zcの少なくとも1つの環と結合することにより、一般式(4)中のEや一般式(5)中のEおよびEの立体保護効果がより高まり、蛍光量子収率の低下を抑える効果がより向上することが期待できるためである。
【0129】
一般式(3)、(4)および(5)で表される化合物の一例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0130】
【化7】
【0131】
【化8】
【0132】
【化9】
【0133】
【化10】
【0134】
【化11】
【0135】
【化12】
【0136】
発光材料は、上記で例示した化合物以外に、必要に応じてその他の化合物を適宜含有することができる。例えば、励起光から発光材料へのエネルギー移動効率を高めるために、アシストドーパントを含有してもよい。また、発光色を加味したい場合は、前述の有機発光材料や、無機蛍光体、蛍光顔料、蛍光染料、量子ドットなどの公知の発光材料をさらに含有してもよい。
【0137】
(ポリマー微粒子の製造方法)
本発明の実施の形態に係るポリマー微粒子の製造方法は、下記(a)および(b)の工程を順次行う方法である。
【0138】
(a)波長400nm以上800nm以下の範囲で光線透過率が85%以上である樹脂と、有機溶媒と、を含むポリマー相(相1)と、水溶性高分子と、水および/またはアルコールと、を含む貧溶媒相(相2)と、の2相を含む乳化液を形成させる工程。
【0139】
(b)該乳化液を、撹拌下で加熱および/または減圧を行い、該乳化液中に含有する有機溶媒の一部または全部を揮散除去して、ポリマー微粒子を析出させる工程。
【0140】
本方法では、相1と相2とからなる均質なエマルションを介し、有機溶媒を除去してポリマー微粒子を取り出す方法のため、所望の真球度、亜麻仁油吸油量のポリマー微粒子を製造することができる。更に、分散相と連続相の粘度比や、界面張力、与える撹拌動力を調整することで、所望の粒子径、粒度分布を有するポリマー微粒子を製造することができる。
【0141】
有機溶媒は、波長400nm以上800nm以下の範囲で光線透過率が85%以上である樹脂を溶解してポリマー相を形成することができ、かつ水溶性高分子と、水および/またはアルコールを含む貧溶媒相と分離するものであれば、特に限定されない。このような溶媒としては、適宜選択できるが、非プロトン性の溶媒が好ましく用いられる。具体的には、ヘキサン、シクロヘキサン、ジオキサン、トルエン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ピリジン、エチレングリコール、アセトニトリル、クロロホルム、ジクロロメタンなどが挙げられる。この中でも、沸点が低く、(b)工程で有機溶媒のみを選択的に除去できる点で、ヘキサン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、クロロホルム、ジクロロメタンがより好ましく、(a)工程で貧溶媒相との相溶しにくく安定なエマルションを形成できる点で、ヘキサン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタンがさらに好ましく、樹脂の溶解性に優れる点でシクロヘキサン、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタンが特に好ましい。
【0142】
ポリマー微粒子の製造方法において好ましくも用いられる水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルアルコール-エチレン)共重合体、ポリエチレングリコール、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン類である。
【0143】
本発明の実施の形態に係るポリマー微粒子の製造方法において好ましく用いられる水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルアルコール-エチレン)共重合体、ポリエチレングリコール、セルロース誘導体およびポリビニルピロリドン類の中から選ばれる少なくとも1種以上である。この中でも分散相と連続相の界面安定化効果に優れ、均質なエマルションを形成できる点で、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルアルコール-エチレン)共重合体、ポリエチレングリコールがより好ましく、水への溶解性が高く、洗浄で除去しやすい点でポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールがさらに好ましい。
【0144】
本発明の実施の形態に係るポリマー微粒子の製造方法において貧溶媒相を形成する溶媒は、波長400nm以上800nm以下の範囲で光線透過率が85%以上である樹脂を溶解させず、水溶性高分子を溶解するものであれば、特に限定されない。このような溶媒としては適宜選択できるが、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類や水が挙げられ、有機溶媒を起因に造形物にボイドなどを発生させることを防ぐ観点から水が好ましい。
【0145】
得られた乳化液は、撹拌下で加熱および/または減圧を行い、該乳化液中に含有する有機溶媒の一部または全部を除去することで、ポリマー微粒子を析出させる。有機溶媒のみを選択的に除去する方法としては、特に制限されない。具体的には、任意の減圧度で留出してくる液の温度を観測して蒸気温度をモニタリングする方法、減圧度と反応槽の温度を観測して溶媒の蒸気圧曲線から判断する方法、留出した液を採取してGC、NMRなどで分析する方法などが挙げられる。各溶媒の、温度と蒸気圧の関係はAntoineの式より算出できる(改訂3版 化学便覧 基礎編II p111-132 日本化学会編 丸善株式会社参照)。溶媒の揮発挙動について観測できる観点から、蒸気温度を観測する方法が好ましい。
【0146】
このようにして得られたポリマー微粒子溶液は、ろ過法などの通常の固液分離法によりろ別し、得られた湿潤固体を必要に応じて、水などの溶媒にて洗浄し、乾燥工程を経て目的の乾燥粉体を得ることができる。
【0147】
(印刷用インキ)
本発明の実施の形態に係る印刷用インキは、乾燥により定着する乾燥型インキ、酸化重合によりインキ被膜を形成する酸化重合型インキ、活性エネルギー線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化型インキのいずれも用いることができる。
【0148】
本発明の実施の形態に係る印刷用インキは、インキに粘弾性を付与するとともに、乾燥または硬化後にインキ被膜となるためのバインダー樹脂を含むことが好ましい。バインダー樹脂は、ポリマー微粒子の主成分である樹脂との屈折率差が小さいものであることが好ましい。バインダー樹脂と、ポリマー微粒子の主成分である樹脂との屈折率差が小さいと、両樹脂の界面での光反射が抑制され、励起光の取り込み、および発光の取り出しにおける光損失が低減される。
【0149】
バインダー樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂等の公知のものが挙げられる。
【0150】
本発明の実施の形態に係る印刷用インキは、さらに(メタ)アクリレートを含み、(メタ)アクリレートと樹脂の、25℃での、ナトリウムD線における屈折率の差が0.04以下であることが好ましい。ここでいう「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを含む総称、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基を含む総称である。(メタ)アクリレートを含有するインキは、活性エネルギー線によりラジカル重合により架橋、硬化し、インキ被膜となる活性エネルギー線硬化型インキにあたる。アクリレート架橋体はポリマー微粒子を分散した状態でインキ被膜となるため、ポリマー微粒子の主成分である樹脂との屈折率差が小さいと、両樹脂の界面での光反射が抑制され、励起光の取り込み、および発光の取り出しにおける光損失が低減される。芳香環を含まない(メタ)アクリレート類は、25℃、ナトリウムD線における屈折率がおよそ1.43~1.48の範囲であり、芳香環を含む(メタ)アクリレート類は、25℃、ナトリウムD線における屈折率がおよそ1.49~1.55の範囲にある。構造にもよるが、概して、バインダー樹脂として芳香環を含まないものを用いる場合は、芳香環を含まない(メタ)アクリレート類を用いることで屈折率差を小さくしやすく、バインダー樹脂として芳香環を含むものを用いる場合は、芳香環を含む(メタ)アクリレート類を用いることで屈折率差を小さくしやすい。
【0151】
(メタ)アクリレートとしては、硬化性の観点から、反応性の高いものが好ましい。また安全・環境の観点から、揮発性が低いことが好ましい。揮発性が低いとは、アメリカ環境保護庁(EPA)のMethod24で定義される、110℃で1時間加熱した際の重量減少率が1重量%以下であることを指す。
【0152】
(メタ)アクリレートの具体例として、単官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、炭素数数が1~18の(メタ)アクリレート、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートや、これらのエチレンオキシド付加物、プロピレンオキシド付加物等があり、さらにベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルナン-2-メタノール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノメチロール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0153】
2官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートや、これらのエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体、テトラエチレンオキシド付加体等が挙げられる。
【0154】
3官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートや、これらのエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体、テトラエチレンオキシド付加体等が挙げられる。
【0155】
4官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートや、これらのエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体等が挙げられる。
【0156】
5官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートや、これらのエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体等が挙げられる。
【0157】
本発明の実施の形態に係る印刷用インキは、媒体や、粘度調整のための希釈剤として溶剤を含んでも良い。印刷用インキが乾燥型インキの場合は、20~80℃の風乾で乾燥が可能な、1気圧での沸点が120℃以下の溶剤が好ましく、具体的には酢酸エチル、酢酸プロピル、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ダイアセトンアルコール、トルエン等が挙げられる。
【0158】
また印刷用インキが酸化重合型の場合は、植物油及び植物油由来の脂肪酸エステル化合物を溶剤として用いることができ、具体的には、大豆油、綿実油、亜麻仁油、サフラワー油、桐油、トール油、脱水ヒマシ油、カノーラ油等の植物油や、植物油由来の脂肪酸エステルとして、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等の、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、2-エチルヘキシル等の炭素数1~10程度のアルキルエステルが例示できる。
【0159】
また鉱物油類を利用することもでき、水と相溶しない沸点160℃以上でのもの、具体的には、n-パラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、ナフテン系溶剤、α-オレフィン系溶剤、軽油、スピンドル油、マシン油、シリンダー油、テレピン油、ミネラルスピリット、流動パラフィン等が挙げられる。またこれらの溶剤はポリマー微粒子の樹脂に対する溶解性が低いものを用いることが好ましい。
【0160】
本発明の実施の形態に係る印刷用インキは、活性エネルギー線硬化型の場合、活性エネルギー線源に応じて、光重合開始剤や増感剤を含んでも良い。光重合開始剤としては例えば、α-アミノアルキルフェノン類、チオキサントン類、ベンジルケタール類、アシルホスフィンオキシド類を用いることができる。
【0161】
また本発明の実施の形態に係る印刷用インキは、その他の成分として、ワックス、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤等の添加剤を含有することが可能である。
【0162】
次に、本発明の実施の形態に係る印刷用インキを製造する方法を述べる。ポリマー微粒子と、インキの形態に応じて適宜選択される、バインダー樹脂、(メタ)アクリレート、溶媒、その他の成分を、室温~80℃で混合し、粘度に応じて、アトライター、ボールミル、サンドミル、三本ロールミル等で分散、混練することにより得ることができる。混合後、もしくは混合の過程において、真空もしくは減圧条件下で脱泡することも好ましく行われる。
【0163】
次に、本発明の実施の形態に係る印刷用インキを用いて、印刷物を製造する方法を述べる。本発明の実施の形態に係る印刷用インキを基材に塗布した後に、乾燥または硬化させることで、印刷物とする。乾燥または硬化の方法は例えば以下の通りである。溶剤乾燥型のインキであれば、熱風乾燥により、酸化重合型のインキであれば、印刷後一定時間の静置により、活性エネルギー線硬化型であれば、活性エネルギー線を照射する。
【0164】
基材としては、上質紙、アート紙、コート紙、模造紙、薄紙、厚紙、合成紙、新聞用紙、アルミ蒸着紙、金属、フィルムなどを挙げることができる。
【0165】
フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリαメチルスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデンなどが挙げられる。
【0166】
またこれらのフィルムは、表面処理、例えばプライマ樹脂のコーティング、コロナ放電処理、プラズマ処理あるいは、アルミナなどの金属または金属化合物からなる蒸着薄膜層を有するものも用いることができる。
【0167】
フィルムの形状としては、枚葉、ロールフィルムのいずれも用いることが可能である。
【0168】
印刷用インキの基材への塗布方法としては、インクジェット印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、バーコーター等の周知の方法を用いることができる。特にパターンを形成して偽造防止性を高める印刷方式が好ましく、精細度の高いオフセット印刷や厚膜が可能なインクジェットやスクリーン印刷、またこれら印刷方法を組み合わせることで、一層偽造防止性を高めることができる。
【0169】
印刷物上のインキ塗膜の厚みは0.1~50μmであることが好ましい。インキ塗膜の厚みが上記範囲であることにより、良好な印刷品質を保ちつつ、インキコストを低減させることが出来る。
【0170】
熱風乾燥としては、20~80℃の風乾によりインキを乾燥させることができる。
【0171】
活性エネルギー線源としては、活性エネルギー線源として、紫外線、放射線、電子線、ガンマ線などを用いることができ、紫外線であれば、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオード(LED)等の紫外線照射装置が好ましく用いられる。放射線であれば、利用時の特別な資格が不要で取り扱いが容易なことから、低加速電圧による電子線が好ましい。加速電圧としては、十分な透過性と基材へのダメージの観点から、50kV以上300kV以下が、照射線量は、対象物質中でラジカル種の発生量が増える一方で、フィルムのダメージも抑制できる、10kGy以上100kGy以下が好ましい。
【実施例0172】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0173】
下記の実施例および比較例において、化合物D-1~D-6は以下に示す化合物である。
【0174】
【化13】
【0175】
また、下記の実施例および比較例において、樹脂P-1~P-5は以下に示す樹脂である。
P-1:ポリメチルメタクリレート-水添スチレン共重合樹脂“Optimas”(登録商標)7500(三菱瓦斯化学(株)製、Tg=120℃、一般式(1)で表される部分構造と一般式(2)で表される部分構造とを有する樹脂)、屈折率1.496。
P-2:ポリメチルメタクリレート-イソボルニルメタクリレート共重合樹脂(Tg=111℃)、屈折率1.500。
P-3:ポリメチルメタクリレート-シクロヘキシルメタクリレート共重合樹脂(Tg=94℃)、屈折率1.499。
P-4:ポリスチレン樹脂(“SIGMA-ALDRICH”(登録商標)、製品番号331651、Tg=100℃)、屈折率1.592。
P-5:ポリメチルメタクリレート樹脂BR-85(三菱ケミカル(株)製、Tg=105℃)、屈折率1.493。
P-2およびP-3は、それぞれ、メチルメタクリレートとイソボルニルメタクリレートを85:15およびメチルメタクリレートとシクロヘキシルメタクリレートを80:20のモル比で混合して、公知の方法に従い、アゾビスイソブチロニトリルを用いたラジカル重合により合成した。重合後の樹脂は、メタノール中への沈殿精製を行い、十分に乾燥した上で使用した。
【0176】
[測定・評価方法]
(1)樹脂の光線透過率
膜厚20μm以下のサンプル片を作製し、市販の測定器(例えば日立製作所(株)製の紫可視分光光度計(商品名 U-3010))を用いて測定した。
【0177】
(2)ポリマー微粒子のD50粒子径、およびD90粒子径/D10粒子径
日機装株式会社製レーザー回折式粒径分布計測定装置(マイクロトラックMT3300EX II)に、予め100mg程度のポリマー微粒子を5mL程度の脱イオン水で分散させた分散液を測定可能濃度になるまで添加し、測定装置内で30Wにて60秒間の超音波分散を行った後、測定時間10秒で測定される粒径分布の小粒径側からの累積度数が50%となる粒径をD50粒子径とした。また、小粒径側からの累積度数が10%、90%となる粒径をD10粒子径、D90粒子径とし、その比率からD90粒子径/D10粒子径を算出した。なお測定時の屈折率は1.52、媒体(脱イオン水)の屈折率は1.333を用いた。
【0178】
(3)ポリマー微粒子の真球度
ポリマー微粒子の真球度は、日本電子(株)製走査型電子顕微鏡(JSM-6301NF)写真から無作為に30個の粒子を観察し、その短径と長径から下記数式に従い算出した。
【0179】
【数4】
【0180】
なお、上式において、S:真球度、a:長径、b:短径、n:測定数30とする。
【0181】
(4)ポリマー微粒子の亜麻仁油吸油量
日本工業規格(JIS規格)JIS K 5101(2004)“顔料試験方法 精製あまに油法”に準じ、ポリマー微粒子約300mgを時計皿の上に精秤し、精製あまに油(関東化学株式会社製)をビュレットで1滴ずつ徐々に加え、パレットナイフで練りこんだ後に、試料の塊ができるまで滴下-練りこみを繰り返し、ペーストが滑らかな硬さになった点を終点とし、滴下に使用した精製あまに油の量から吸油量(mL/100g)を算出した。
【0182】
(5)ガラス転移温度
TAインスツルメント社製示差走査熱量計(DSCQ20)を用いて、窒素雰囲気下、30℃から樹脂の融点を示す吸熱ピークから30℃高い温度まで20℃/分の速度で昇温したDSC曲線において、低温側および高温側のベースラインを延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度をガラス転移温度とした。なお、融点ピークを示さない非晶ポリマーの場合、30℃から300℃まで昇温することでDSC曲線を得た。測定に要したサンプルは、約8mgであった。
【0183】
(6)印刷物の表面粗さ
後述の方法により作成したベタ印刷物のインキ被膜に対して、レーザーテック社製白色コンフォーカル顕微鏡Hybrid+を用いて、対物レンズの倍率20倍(高NAレンズLT)、0.75mm角視野における表面形状を、分解能0.02μmでn=3箇所で測定し、表面粗さRaの平均値を算出した。
Raが0.5μm以上であると表面粗度が高く不良であり、0.2μm以上0.5μm未満であると表面粗度が良好であり、0.2μm未満であると表面粗度が極めて良好である。
【0184】
(7)印刷物の視認性
後述の方法により作成したベタ印刷物を目視した際に、着色有無や散乱光による視認性を定性評価した。
A:無色透明で、見る角度を多少変えてもインキ被膜が視認できない。
B:無色透明だが、見る角度を変えることで、光の散乱によりインキ被膜が視認できる。
C:部分的に塊状着色が見られ、また見る角度によっては光散乱によりインキ被膜が視認できる。
D:インキ膜全体に着色が見られて、インキ被膜が視認できる。
【0185】
(8)印刷物の発光ピーク波長
後述の方法により作成したベタ印刷物を、蛍光リン光分光光度計(堀場製作所製、FluoroMax-4P)を用いて、385nmの励起光、励起光スリット2nm、発光スリット2nmで測定した。
【0186】
(9)フィルターを通した印刷物の発光観察
後述の方法により作成したベタ印刷物に、ブラックライト(コンテック(株)製UV-SVGNC385、ピーク波長385nm)を照射し、対応する色に応じたカラーフィルター(ブルーフィルターはB-440、グリーンフィルターはG-545、赤はシャープカットフィルターのR-62)を通した際の視認性を定性評価した。ただし、近赤外の発光を示すベタ印刷物については評価を行っていない。
A:フィルターを通すことで、発光が見えなくなる。
B:フィルターを通しても、目視で発光が確認できる。
【0187】
(10)印刷物の耐候性
後述の方法により作成したベタ印刷物に対して、キセノン耐候性試験機(Q-Lab社製、Q-SU)で60W/mで2週間試験を行った。その後、(8)と同様の手順で蛍光スペクトルの測定を行い、(8)時に測定した発光強度の比率を算出した。
比率が0.7未満であると耐候性が不十分であり、0.7以上0.8未満であると耐候性が良好であり、0.8以上0.9未満であると耐候性がより良好であり、0.9以上であると耐候性が極めて良好である。
【0188】
[ポリマー微粒子]
ポリマー微粒子-1:樹脂としてP-1を45gと、発光材料として化合物D-1を21mgと、溶媒として酢酸エチル255gとを混合し、15質量%のポリマー溶液を調製した。また、水258gにポリビニルアルコールGL-05(日本合成化学(株)製)42gを溶解させ、14質量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。1Lの槽に、該ポリマー溶液と該ポリビニルアルコール水溶液を添加し、40℃で、300rpmの回転数で撹拌することで、乳化液を得た。次にダイヤフラムポンプを用いて該1L槽を200hPaまで段階的に減圧した。200hPa到達後、さらに1時間減圧することで、該乳化液中の有機溶媒を除去し、ポリマー微粒子スラリーを得た。
【0189】
該ポリマー微粒子スラリーは、遠心分離および上澄みのデカンテーションにより溶媒とポリビニルアルコール水溶液を除去した。その後、水でリスラリーし、80℃下1時間温水洗浄を行った後、濾別することで粒子中の不純物を除去し、ポリマー微粒子ケークを得た。該ポリマー微粒子ケークは減圧乾燥を行い、ポリマー微粒子を得た。得られたポリマー微粒子の特性および材料特性について表1に示した。得られたポリマー微粒子を導電テープに乗せて白金蒸着を行い、日本電子(株)製走査型電子顕微鏡(JSM-6301NF)にて倍率5000倍で撮影した写真を図1に示した。
【0190】
ポリマー微粒子-2:樹脂としてP-2を用いた以外は、実施例1と同様の方法でポリマー微粒子を作製した。得られたポリマー微粒子の特性および材料特性について表1に示した。
【0191】
ポリマー微粒子-3:樹脂としてP-3を用いた以外は、実施例1と同様の方法でポリマー微粒子を作製した。得られたポリマー微粒子の特性および材料特性について表1に示した。
【0192】
ポリマー微粒子-4:樹脂P-1を15gと、化合物D-1を7.0mgとを、微量混練押出機A300((株)井元製作所製)を用いて270℃で溶融混錬し、ペレット状に成形した後、フリーザーミルにて凍結粉砕し、ポリマー微粒子を作製した。得られたポリマー微粒子の特性および材料特性について表1に示した。実施例1と同様に、日本電子(株)製走査型電子顕微鏡(JSM-6301NF)にて倍率200倍で撮影した写真を図2に示した。
【0193】
ポリマー微粒子-5:樹脂P-1を15gと、化合物D-1を7.0mgと、用い、溶媒としてトルエンを60g混合した。これらの混合溶液を、遊星式撹拌・脱泡装置“マゼルスターKK-400”(クラボウ製)を用いて300rpmで30分間撹拌・脱泡した。この混合溶液をスプレードライ法で乾燥させることにより、ポリマー微粒子を作製した。得られたポリマー微粒子の特性および材料特性について表1に示した。実施例1と同様に、日本電子(株)製走査型電子顕微鏡(JSM-6301NF)にて倍率5000倍で撮影した写真を図3に示した。
【0194】
ポリマー微粒子-6:発光材料としてD-1の代わりに化合物D-2を用いた以外は、実施例1と同様の方法でポリマー微粒子を作製した。ただし、物質量が同じになるように混合量を調整した。得られたポリマー微粒子の特性および材料特性について表1に示した。
【0195】
ポリマー微粒子-7:発光材料としてD-1の代わりに化合物D-3を用いた以外は、実施例1と同様の方法でポリマー微粒子を作製した。ただし、物質量が同じになるように混合量を調整した。得られたポリマー微粒子の特性および材料特性について表1に示した。
【0196】
ポリマー微粒子-8:発光材料としてD-1の代わりに化合物D-4を用いた以外は、実施例1と同様の方法でポリマー微粒子を作製した。ただし、物質量が同じになるように混合量を調整した。得られたポリマー微粒子の特性および材料特性について表1に示した。
【0197】
ポリマー微粒子-9:発光材料としてD-1の代わりに化合物D-5を用いた以外は、実施例1と同様の方法でポリマー微粒子を作製した。ただし、物質量が同じになるように混合量を調整した。得られたポリマー微粒子の特性および材料特性について表1に示した。
【0198】
ポリマー微粒子-10:発光材料としてD-1の代わりに化合物D-6を用いた以外は、実施例1と同様の方法でポリマー微粒子を作製した。ただし、物質量が同じになるように混合量を調整した。得られたポリマー微粒子の特性および材料特性について表1に示した。
【0199】
【表1】
【0200】
[印刷用インキの原材料]
バインダー樹脂1:ジアリルフタレート樹脂((株)大阪ソーダ製“ダイソーダップ”(登録商標)A)
バインダー樹脂2:ポリアミド樹脂(ハリマ化成(株)製“ニューマイド”(登録商標)841)
バインダー樹脂3:アクリルウレタンエマルジョン(大成ファインケミカル(株)製WEM-3000)
(メタ)アクリレート1:トリメチロールプロパントリアクリレートのエチレンオキシド付加体(MIWON社製“Miramer”(登録商標)M3130)、屈折率1.470。
(メタ)アクリレート2:ビスフェノールAジアクリレートのエチレンオキシド付加体(MIWON社製“Miramer”(登録商標)M244)、屈折率1.545。
(メタ)アクリレート3:ネオペンチルグリコールジアクリレートのプロピレンオキシド付加体(MIWON社製“Miramer”(登録商標)M216)、屈折率1.447。
溶剤:2-プロパノール(和研薬(株)製)。
光重合開始剤:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキシド(BASF社製“イルガキュア”(登録商標)819)。
【0201】
[実施例1]
表2に示す組成で、ポリマー微粒子1、(メタ)アクリレート1を秤量し、バッチ式サンドミル((株)林商店製)を用いて分散することで、活性エネルギー線硬化型インキを得た。RIテスターを用いて、得られたインキをPETフィルム(パナック(株)製“パナクレア”(登録商標)ACM188)に展色した後、発光ダイオード紫外線照射装置(パナソニックデバイスSUNX(株)製UD90)を用いて、照射強度8W/cm、照射波長385nmの条件でLED-UVを照射し、ベタ印刷物を得た。前述の方法により評価した結果を表2に示す。
【0202】
[実施例2]
表2に示す組成で、ポリマー微粒子1、バインダー樹脂1、(メタ)アクリレート1を秤量し、三本ロールミル(EXAKT社製“EXAKT”(登録商標)M-80S)を用いて混練、分散することで、活性エネルギー線硬化型インキを得た。RIテスターを用いて、得られたインキをPETフィルム(パナック(株)製“パナクレア”(登録商標)ACM188)に展色した後、電子線照射装置(岩崎電気(株)製EC250/30/90LS)を用いて、加速電圧110kV、照射線量30kGyの条件で電子線を照射し、ベタ印刷物を得た。前述の方法により評価した結果を表2に示す。
【0203】
[実施例3,4]
用いる(メタ)アクリレートを変える以外は、実施例2と同様にして活性エネルギー線硬化型インキ、およびベタ印刷物を作製した。前述の方法により評価した結果を表2に示す。
【0204】
[実施例5]
表2に示す組成で、ポリマー微粒子1、バインダー樹脂2、溶剤1を秤量し、バッチ式サンドミル((株)林商店製)を用いて分散することで、乾燥型インキを得た。バーコーターの8番を用いて、得られたインキをPETフィルム(パナック(株)製“パナクレア”(登録商標)ACM188)に展色した後、80℃の熱風乾燥機で1分間乾燥し、ベタ印刷物を得た。前述の方法により評価した結果を表2に示す。
【0205】
[実施例6]
表2に示す組成で、ポリマー微粒子1、バインダー樹脂3、溶剤2、および純水を秤量し、バッチ式サンドミル((株)林商店製)を用いて分散することで、乾燥型インキを得た。バーコーターの8番を用いて、得られたインキをPETフィルム(パナック(株)製“パナクレア”(登録商標)ACM188)に展色した後、80℃の熱風乾燥機で1分間乾燥し、ベタ印刷物を得た。前述の方法により評価した結果を表2に示す。
【0206】
[実施例7~13]
用いるポリマー微粒子を変える以外は、実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化型インキ、およびベタ印刷物を作製した。前述の方法により評価した結果を表2に示す。
【0207】
[比較例1、2]
用いるポリマー微粒子を変える以外は、実施例2と同様にして活性エネルギー線硬化型インキ、およびベタ印刷物を作製した。前述の方法により評価した結果を表2に示す。
【0208】
[比較例3]
実施例1のインキに含まれる化合物D-1の含有量と等量になるように、ポリマー微粒子1の代わりに化合物D-1を用いた。それ以外は、表2に示す組成で、実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化型インキ、およびベタ印刷物を作製した。前述の方法により評価した結果を表2に示す。
【0209】
【表2】
図1
図2
図3