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  • 特開-凸版印刷版原版 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171359
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】凸版印刷版原版
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/00 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B41N1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088311
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】濱本 慶
(72)【発明者】
【氏名】中尾 玲雄
(72)【発明者】
【氏名】原 惣一
【テーマコード(参考)】
2H114
【Fターム(参考)】
2H114AA00
2H114BA02
2H114EA02
(57)【要約】
【課題】表示情報の視認性に優れた凸版印刷版が得られる凸版印刷版原版を提供すること。
【解決手段】支持体上にレリーフ形成層を有する凸版印刷版原版であって、支持体のレリーフ形成層の反対面に2以上の視覚情報の刻印を有する凸版印刷版原版。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にレリーフ形成層を有する凸版印刷版原版であって、支持体のレリーフ形成層の反対面に2以上の視覚情報の刻印を有する凸版印刷版原版。
【請求項2】
前記刻印を一定方向に等間隔で有する請求項1に記載の凸版印刷版原版。
【請求項3】
前記視覚情報として、文字、記号、コード、数字、図形および/または模様を含む請求項1または2に記載の凸版印刷版原版。
【請求項4】
前記視覚情報として、凸版印刷版原版の製造日時情報を含む請求項1または2に記載の凸版印刷版原版。
【請求項5】
前記視覚情報として、凸版印刷版原版の製造方向および/または幅方向の位置情報を含む請求項1または2に記載の凸版印刷版原版。
【請求項6】
刻印の深さが、0.1μm以上4μm以下である請求項1または2に記載の凸版印刷版原版。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凸版印刷版原版に関する。
【背景技術】
【0002】
凸版印刷は、紙、包装用のプラスチックフィルムや容器、ラベル、金属類などの各種印刷に幅広く用いられている。これらの印刷においては、印刷物の大きさに応じて、所望の大きさに断裁された凸版印刷版が用いられている。
【0003】
一方、オフセット印刷に用いられる水なし平版印刷版原版については、印刷版のロット管理などの目的で、支持体裏面に表面処理を施すことが検討されており、例えば、支持体上に少なくとも感光性樹脂層およびシリコーン層を設けた水なし平版印刷版原版において、前記支持体の感光性樹脂層を設けない面にレーザー光照射によって刻印が施されてなることを特徴とする水なし平版印刷版原版(例えば、特許文献1参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-31117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
凸版印刷版においても、工程管理等の観点から、各種情報を直接表示することが求められている。情報表示方法としては、例えば、基板裏面へのインクジェット印刷などの印刷が考えられるが、かかる方法では、取り扱い時の擦れや溶剤などによって表示が消えやすく、視認性に課題があった。そこで本発明においては、表示情報の視認性に優れた凸版印刷版が得られる凸版印刷版原版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は主として下記の構成を有する。
(1)支持体上にレリーフ形成層を有する凸版印刷版原版であって、支持体のレリーフ形成層の反対面に2以上の視覚情報の刻印を有する凸版印刷版原版。
(2)前記刻印を一定方向に等間隔で有する(1)に記載の凸版印刷版原版。
(3)前記視覚情報として、文字、記号、コード、数字、図形および/または模様を含む(1)または(2)に記載の凸版印刷版原版。
(4)前記視覚情報として、凸版印刷版原版の製造日時情報を含む(1)~(3)のいずれかに記載の凸版印刷版原版。
(5)前記視覚情報として、凸版印刷版原版の製造方向および/または幅方向の位置情報を含む(1)~(4)のいずれかに記載の凸版印刷版原版。
(6)刻印の深さが、0.1μm以上4μm以下である(1)~(5)のいずれかに記載の凸版印刷版原版。
【発明の効果】
【0007】
本発明の凸版印刷版原版によれば、表示情報の視認性に優れた凸版印刷版を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1において製造した凸版印刷版原版の刻印の位置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る凸版印刷版原版は、凸版印刷に用いられる凸版印刷版の前駆体であり、支持体上にレリーフ形成層を有する。支持体とレリーフ形成層の間に、接着層などを有してもよいし、レリーフ形成層上に、マスク層や保護フィルムなどを有してもよい。本発明の凸版印刷版原版は支持体のレリーフ形成層の反対面に2以上の視覚情報の刻印を有する。レリーフ形成層の反対面(裏面)に視覚情報を有することにより、レリーフ形成に影響を及ぼすことなく情報を表示することができる。また、視覚情報の刻印を有することにより、インキによる表示と異なり、取り扱い時の擦れや溶剤などによっても消えにくく、視認性に優れる。また、視覚情報を2以上有することにより、使用する印刷機のサイズに合わせて、凸版印刷版原版を断裁して使用する場合でもトレーサビリティに優れる。
【0010】
ここでいう視覚情報とは、視覚に訴える情報を指し、例えば、文字、記号、コード、数字、図形、模様などが挙げられる。これらを2種以上組み合わせてもよい。また、視覚に訴えるとは、意匠性の有無に関わらず、視覚を通じて認識できることを意味する。本発明における刻印は、支持体により反射された光を通じて認識することができるものが好ましい。
【0011】
支持体は、寸法安定性に優れる材料から形成されることが好ましい。具体的には、PETなどのフィルム、スチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属板などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0012】
支持体の厚さは、取扱性および柔軟性の観点から、100~350μmが好ましい。
【0013】
レリーフ形成層は、凸版印刷版においてレリーフとなる層である。レリーフ形成層としては、例えば、紫外線などの電磁波エネルギー線の吸収によって重合が進行し、現像液に不溶になる感光性樹脂層や、レーザー光などの電磁波エネルギー線によって所望の形状に彫刻可能な樹脂層などが挙げられる。感光性樹脂層は、例えば、紫外線を画像様に照射することにより、所望のレリーフを形成することができる。これらの中でも、凸版印刷版の生産性や画像再現性の観点から、感光性樹脂層が好ましい。感光性樹脂層としては、樹脂、光重合開始剤およびエチレン性二重結合を有する化合物を有することが好ましい。
【0014】
レリーフ形成層の厚みは、0.1~3mmが好ましい。
【0015】
本発明においては、刻印を一定方向に等間隔で有することが好ましい。例えば、凸版印刷版原版製造時の製造方向に等間隔で刻印を有してもよく、複数の刻印の方向から、製造方向を特定することができ、トレーサビリティにより優れる。同様に、凸版印刷版原版製造時の製造方向に対する垂直方向、すなわち幅方向に等間隔で刻印を有してもよいし、製造方法、幅方向の両方向に、それぞれ等間隔で刻印を有してもよい。また、前述のとおり、凸版印刷版原版やそれから得られる凸版印刷版を所望の大きさに断裁して使用する場合においては、刻印の間隔を、想定される凸版印刷版原版や凸版印刷版の大きさよりも小さく設定することにより、断裁した状態であっても視覚情報を視認することができるため、トレーサビリティにより優れる。
【0016】
視覚情報としては、例えば、ロット情報、製造日時情報、凸版印刷版原版の製造方向情報や位置情報などが挙げられる。
【0017】
視覚情報として製造日時情報を含むことが好ましく、製造時の製造条件や突発的な不具合の有無などとの照合が容易となり、トレーサビリティに優れる。特に、製造工程における監視カメラ映像などの情報との照合を短時間で行うことができ、製造工程における突発的な不具合の特定の発生時の様子を容易に確認することができ、品質改善に活用することができる。製造日時情報としては、例えば、数字などの文字列や、予め日時と対応させて取り決めた文字、コード、模様、図形などにより表示することができ、これらを組み合わせてもよい。
【0018】
視覚情報として凸版印刷版原版の製造方向および/または幅方向の位置情報を含むことが好ましく、凸版印刷版原版の製造時におけるより詳細な位置を容易に特定することができることから、トレーサビリティにより優れる。位置情報としては、例えば、数字などの文字列や、予め位置と対応させて取り決めた文字、コード、模様、図形などにより表示することができ、これらを組み合わせてもよい。
【0019】
刻印の深さは、0.1μm以上が好ましく、視認性をより向上させることができる。刻印の深さは、0.5μm以上がより好ましい。一方、刻印の深さは、4μm以下が好ましく、凸版印刷版原版やそれから得られる凸版印刷版の取り扱い時に、支持体の折れを抑制することができる。刻印の深さは、2μm以下がより好ましい。
【0020】
本発明の凸版印刷版原版は、例えば、公知の凸版印刷版原版の支持体の裏面に対して、所望の形状に対応する部位を溶融させて刻印を設けることに得ることができる。より具体的には、YAGレーザー、COレーザー、半導体レーザー等のレーザー照射により刻印を形成することが好ましい。この場合、レーザーの出力は、5~50Wが好ましい。
【0021】
前述の凸版印刷版原版から得られる凸版印刷版は、支持体上にレリーフ層を有し、支持体の裏面に、2以上の視覚情報の刻印を有する。
【0022】
次に、本発明に係る凸版印刷版原版を用いた凸版印刷版の製造方法について説明する。凸版印刷版の製造方法は、前述の凸版印刷版原版のレリーフ形成層を部分的に除去してレリーフを形成する工程(レリーフ形成工程)を有することが好ましい。レリーフ形成工程としては、例えば、レーザー光などの電磁波エネルギー線によって、レリーフ形成層を所望の形状に彫刻する方法や、レリーフ形成層が感光性樹脂層である場合には、感光性樹脂層を部分的に光硬化させる露光工程、および、感光性樹脂層の未硬化部分を、現像液により除去する現像工程を有する方法などが挙げられる。これらの中でも、印刷版の生産性や画像再現性の観点から、レリーフ形成層として感光性樹脂層を用いる、露光工程および現像工程を有する方法が好ましい。
【実施例0023】
以下に、本発明およびその効果について具体的な例を用いて説明するが、実施例は本発明の適用範囲を限定するものではない。
【0024】
[実施例1]
650mm×550mmに断裁した感光性樹脂凸版印刷版原版“トレリーフ”(登録商標)WS73HIIの、スチール支持体裏面に対して、3AxisハイブリッドレーザーマーカーMD-X2020A((株)キーエンス製)を用いて、幅方向に150mmの間隔をあけて、刻印1「5/17 10:00 A」、刻印2「5/17 10:00 B」、刻印3「5/17 10:00 C」の3種類の刻印を、それぞれ製造方向に150mmの間隔で形成した。ここで、5/17 10:00は製造日時情報を、A~Cのアルファベットは幅方向の位置情報を示す。図1に、刻印の位置を示す概略図を示す。刻印の各文字は、大きさ12pt、書体Arialとし、刻印の深度は1.1μmとした。得られた凸版印刷版原版を、300mm×200mmに断裁したところ、各原版において、それぞれ視覚情報を視認することができた。また、イソプロピルアルコールを含ませたウエス、エタノールを含ませたウエスで刻印部分を10回擦った後、目視にて観察したところ、いずれも視覚情報を視認することができた。
図1