(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171366
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】エレベータ及びその改修方法
(51)【国際特許分類】
B66B 7/00 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B66B7/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088328
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003568
【氏名又は名称】弁理士法人加藤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 弘太
【テーマコード(参考)】
3F305
【Fターム(参考)】
3F305BA02
3F305DA15
(57)【要約】
【課題】巻上機の更新作業を容易に行うことができるエレベータ及びその改修方法を得ることを目的とする。
【解決手段】駆動装置40は、第2巻上機41と伝達機構42とを有している。第2巻上機41は、第2巻上機本体44と入力側回転体43とを有している。第2巻上機本体44は、入力側回転体43を回転させる。伝達機構42は、入力側回転体43の回転を駆動シーブ26に機械的に伝達する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1巻上機本体と、前記第1巻上機本体に対して回転自在な駆動シーブとを有している第1巻上機、
前記駆動シーブに巻き掛けられている懸架体、
前記駆動シーブに対して一側において前記懸架体によって昇降路内に吊り下げられているかご、
前記駆動シーブに対して他側において前記懸架体によって前記昇降路内に吊り下げられている釣合おもり、及び
前記駆動シーブを回転させることにより、前記かご及び前記釣合おもりを昇降させる駆動装置
を備え、
前記駆動装置は、第2巻上機と伝達機構とを有しており、
前記第2巻上機は、入力側回転体と、前記入力側回転体を回転させる第2巻上機本体とを有しており、
前記伝達機構は、前記入力側回転体の回転を前記駆動シーブに機械的に伝達するエレベータ。
【請求項2】
前記第1巻上機及び前記駆動装置は、前記昇降路内に設置されており、
前記第2巻上機は、前記昇降路を鉛直方向に沿って見たとき、前記第1巻上機と重なっている請求項1記載のエレベータ。
【請求項3】
前記第1巻上機は、前記昇降路の底部に設置れており、
前記第2巻上機は、前記第1巻上機の真上に配置されている請求項2記載のエレベータ。
【請求項4】
前記懸架体との干渉を避けて前記昇降路の壁に固定されている追加梁
をさらに備え、
前記第2巻上機は、前記追加梁により支持されている請求項3記載のエレベータ。
【請求項5】
前記かご及び前記釣合おもりの昇降を案内する複数本のガイドレール、
前記昇降路の底部に立てられている一対の縦柱、
前記懸架体との干渉を避けて、前記複数本のガイドレールのうちの2本のガイドレールと前記一対の縦柱との間に固定されている一対の横梁、及び
前記懸架体との干渉を避けて、前記一対の横梁の間に固定されている支持梁
をさらに備え、
前記第2巻上機は、前記支持梁により支持されている請求項3記載のエレベータ。
【請求項6】
前記伝達機構は、前記入力側回転体の回転を減速して前記駆動シーブに伝達する請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のエレベータ。
【請求項7】
前記伝達機構は、
前記駆動シーブに取り付けられており、前記駆動シーブとともに回転するシーブ側回転体
を有している請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のエレベータ。
【請求項8】
前記駆動シーブは、
前記懸架体が巻き掛けられる円環状の巻き掛け部と、
前記巻き掛け部の中心に位置しているボス部と、
前記巻き掛け部と前記ボス部との間に設けられている繋ぎ部と
を有しており、
前記シーブ側回転体は、前記繋ぎ部を把持する把持具を介して、前記駆動シーブに取り付けられている請求項7記載のエレベータ。
【請求項9】
かごを吊り下げている懸架体が、既設の巻上機の駆動シーブに巻き掛けられた状態のまま、シーブ側回転体が前記駆動シーブとともに回転するように、前記シーブ側回転体を前記既設の巻上機に取り付ける工程、及び
入力側回転体が取り付けられている新たな巻上機を、前記既設の巻上機が設置されている設置空間内に設置するとともに、前記入力側回転体の回転が前記シーブ側回転体に伝達されるように前記入力側回転体と前記シーブ側回転体とを機械的に連結する工程
を含むエレベータの改修方法。
【請求項10】
前記設置空間は、昇降路内の空間であり、
前記昇降路を鉛直方向に沿って見て、前記新たな巻上機が前記既設の巻上機と重なるように、前記新たな巻上機を前記昇降路内に設置する請求項9記載のエレベータの改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータ及びその改修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の上部機械室式のエレベータ装置では、機械室に機械台が設けられている。機械台には、2台の巻上機が互いに間隔をおいて設置されている。2台の巻上機には、巻上ロープが巻き掛けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のエレベータ装置では、2台の巻上機をそれぞれ新たな巻上機に交換する場合、2台の巻上機を機械台から撤去するために、巻上ロープに張力がかからない状態にする必要がある。このため、釣合おもりを昇降路ピットの緩衝器によって支持させ、かごをチェーンブロックによって吊る必要があり、作業に手間がかかる。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、巻上機の更新作業を容易に行うことができるエレベータ及びその改修方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る機械室レスエレベータは、第1巻上機本体と、第1巻上機本体に対して回転自在な駆動シーブとを有している第1巻上機、駆動シーブに巻き掛けられている懸架体、駆動シーブに対して一側において懸架体によって昇降路内に吊り下げられているかご、駆動シーブに対して他側において懸架体によって昇降路内に吊り下げられている釣合おもり、及び駆動シーブを回転させることにより、かご及び釣合おもりを昇降させる駆動装置を備え、駆動装置は、第2巻上機と伝達機構とを有しており、第2巻上機は、入力側回転体と、入力側回転体を回転させる第2巻上機本体とを有しており、伝達機構は、入力側回転体の回転を駆動シーブに機械的に伝達する。
本開示に係るエレベータの改修方法は、かごを吊り下げている懸架体が、既設の巻上機の駆動シーブに巻き掛けられた状態のまま、シーブ側回転体が駆動シーブとともに回転するように、シーブ側回転体を既設の巻上機に取り付ける工程、及び入力側回転体が取り付けられている新たな巻上機を、既設の巻上機が設置されている設置空間内に設置するとともに、入力側回転体の回転がシーブ側回転体に伝達されるように入力側回転体とシーブ側回転体とを機械的に連結する工程を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、巻上機の更新作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1による改修前のエレベータを示す斜視図である。
【
図2】実施の形態1による改修後のエレベータを示す斜視図である。
【
図3】
図2の第1巻上機及び駆動装置を示す側面図である。
【
図4】
図3の入力側回転体及びシーブ側回転体を示す正面図である。
【
図5】
図3の駆動シーブと伝達機構とを示す分解斜視図である。
【
図6】実施の形態1の伝達機構の変形例を示す側面図である。
【
図7】
図6の入力側回転体、シーブ側回転体、及びチェーンを示す正面図である。
【
図8】
図2の駆動装置の支持構造の第1例を示す平面図である。
【
図9】
図2の駆動装置の支持構造の第2例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による改修前のエレベータを示す斜視図である。実施の形態1のエレベータは、2:1ローピング方式の機械室レスエレベータである。
【0010】
図において、昇降路11の底部11aには、かご緩衝器台12と、釣合おもり緩衝器台13とが固定されている。かご緩衝器台12上には、かご緩衝器14が設置されている。釣合おもり緩衝器台13上には、釣合おもり緩衝器15が設置されている。
【0011】
昇降路11内には、複数本のガイドレールが設置されている。複数本のガイドレールには、第1かごガイドレール16、第2かごガイドレール17、第1釣合おもりガイドレール18、及び第2釣合おもりガイドレール19が含まれている。
【0012】
第1かごガイドレール16の下端部と、第2かごガイドレール17の下端部とは、かご緩衝器台12上に載せられている。第1釣合おもりガイドレール18の下端部と、第2釣合おもりガイドレール19の下端部とは、釣合おもり緩衝器台13上に載せられている。
【0013】
かご21は、第1かごガイドレール16と第2かごガイドレール17との間に設けられている。また、かご21は、第1かごガイドレール16及び第2かごガイドレール17に案内されて、昇降路11内を昇降する。
【0014】
釣合おもり22は、第1釣合おもりガイドレール18と第2釣合おもりガイドレール19との間に設けられている。また、釣合おもり22は、第1釣合おもりガイドレール18及び第2釣合おもりガイドレール19に案内されて、昇降路11内を昇降する。
【0015】
釣合おもり22の昇降領域は、乗場から見て、かご21の昇降領域の後方に位置している。
【0016】
かご緩衝器台12と釣合おもり緩衝器台13との間には、機械台23が固定されている。機械台23上には、既設の巻上機である第1巻上機24が設置されている。即ち、第1巻上機24は、昇降路11の底部11aに設置されている。実施の形態1における設置空間は、昇降路11内の空間である。
【0017】
第1巻上機24は、胴長円筒形巻上機である。胴長円筒形巻上機は、軸方向寸法が軸方向に直角の方向の寸法よりも大きい巻上機である。
【0018】
第1巻上機24は、第1巻上機本体25と、駆動シーブ26とを有している。第1巻上機本体25は、図示しない第1巻上機モータと、図示しない第1巻上機ブレーキとを有している。
【0019】
第1巻上機モータは、駆動シーブ26を回転させる。第1巻上機ブレーキは、駆動シーブ26の静止状態を保持する。また、第1巻上機ブレーキ、駆動シーブ26の回転を制動する。
【0020】
駆動シーブ26には、懸架体27が巻き掛けられている。懸架体27としては、複数本のロープ又は複数本のベルトが用いられている。
【0021】
かご21及び釣合おもり22は、懸架体27によって昇降路11内に吊り下げられている。また、かご21及び釣合おもり22は、駆動シーブ26が回転することによって昇降路11内を昇降する。
【0022】
かご21の下部には、第1かご吊り車28と、第2かご吊り車29とが設けられている。釣合おもり22の上部には、釣合おもり吊り車30が設けられている。
【0023】
第1かごガイドレール16の上端部には、第1綱止め具31が取り付けられている。昇降路11の頂部には、第1上部梁32と第2上部梁33とが配置されている。第1上部梁32は、第1釣合おもりガイドレール18の上端部と、第2釣合おもりガイドレール19の上端部とに固定されている。第2上部梁33は、第1上部梁32と第2かごガイドレール17の上端部とに固定されている。
【0024】
第2上部梁33には、かご返し車34が支持されている。第1上部梁32には、釣合おもり返し車35と、第2綱止め具36とが支持されている。
【0025】
懸架体27は、第1端部27aと、第2端部27bとを有している。第1端部27aは、第1綱止め具31に接続されている。第2端部27bは、第2綱止め具36に接続されている。
【0026】
また、懸架体27は、第1端部27a側から順に、第1かご吊り車28、第2かご吊り車29、かご返し車34、駆動シーブ26、釣合おもり返し車35、釣合おもり吊り車30に巻き掛けられて、第2端部27bに至っている。
【0027】
図2は、実施の形態1による改修後のエレベータを示す斜視図である。改修後のエレベータにおいては、昇降路11内に駆動装置40が新たに設置されている。駆動装置40は、昇降路11を鉛直方向に沿って見たとき、第1巻上機24と重なっている。
【0028】
また、駆動装置40は、駆動シーブ26を回転させることにより、かご21及び釣合おもり22を昇降させる
【0029】
機械台23上には、既設の第1巻上機24が設置されたままである。駆動シーブ26には、既設の懸架体27が巻き掛けられたままである。このため、駆動シーブ26が懸架体27から受ける上向きに引き抜く荷重を第1巻上機24が受けている状態は、改修後も維持されている。
【0030】
改修後のエレベータにおいては、駆動装置40が駆動シーブ26を回転させるため、第1巻上機モータは第1巻上機本体25から取り外されてもよい。
【0031】
駆動シーブ26の静止状態の保持、及び駆動シーブ26の回転の制動は、既設の第1巻上機ブレーキによって行われてもよい。また、第1巻上機ブレーキが第1巻上機本体25から取り外され、新たな巻上機ブレーキが駆動装置40に設けられてもよい。
【0032】
その他の機器については、既設の機器がそのまま使用されている。
【0033】
図3は、
図2の第1巻上機24及び駆動装置40を一部断面で示す側面図である。駆動装置40の具体的な支持構造については、後述する。
【0034】
駆動装置40は、新たな巻上機である第2巻上機41と、伝達機構42とを有している。第2巻上機41は、胴長円筒形巻上機である。また、第2巻上機41は、昇降路11を鉛直方向に沿って見たとき、第1巻上機24と重なっている。この例では、第2巻上機41は、第1巻上機24の真上に配置されている。
【0035】
また、第2巻上機41は、入力側回転体43と、第2巻上機本体44とを有している。第2巻上機本体44は、図示しない第2巻上機モータを有している。第2巻上機モータは、入力側回転体43を回転させる。
【0036】
入力側回転体43の回転軸は、駆動シーブ26の回転軸に平行、かつ水平である。また、入力側回転体43の回転軸は、駆動シーブ26の回転軸の真上に位置している。
【0037】
伝達機構42は、入力側回転体43の回転を駆動シーブ26に機械的に伝達する。また、伝達機構42は、シーブ側回転体45と、複数の把持具46とを有している。
【0038】
シーブ側回転体45は、複数の把持具46を介して、駆動シーブ26に取り付けられている。これにより、シーブ側回転体45は、駆動シーブ26の回転軸を中心として、駆動シーブ26とともに回転する。また、シーブ側回転体45は、駆動シーブ26に対して第1巻上機本体25とは反対側に配置されている。
【0039】
図4は、
図3の入力側回転体43及びシーブ側回転体45を示す正面図である。この例では、入力側回転体43及びシーブ側回転体45として、それぞれ歯車が用いられている。そして、入力側回転体43は、シーブ側回転体45と直接噛み合っている。
【0040】
また、シーブ側回転体45の径は、入力側回転体43の径よりも大きい。即ち、伝達機構42は、入力側回転体43の回転を減速して駆動シーブ26に伝達する。
【0041】
図5は、
図3の駆動シーブ26と伝達機構42とを示す分解斜視図である。駆動シーブ26は、円環状の巻き掛け部26aと、ボス部26bと、複数の繋ぎ部26cとを有している。
【0042】
懸架体27は、巻き掛け部26aの外周に巻き掛けられる。ボス部26bは、巻き掛け部26aの中心に位置している。
【0043】
複数の繋ぎ部26cは、巻き掛け部26aとボス部26bとの間に設けられており、巻き掛け部26aとボス部26bとを繋いでいる。各繋ぎ部26cは、駆動シーブ26の径方向に沿って設けられている。駆動シーブ26の径方向は、駆動シーブ26の回転軸の軸心に直交する方向である。
【0044】
また、各繋ぎ部26cは、駆動シーブ26の周方向に互いに等間隔をおいて配置されている。駆動シーブ26の周方向は、駆動シーブ26の回転軸の軸心を中心とした円周に沿う方向である。駆動シーブ26には、複数の開口26dが設けられている。各開口26dは、隣り合う2つの繋ぎ部26cの間に設けられている。
【0045】
シーブ側回転体45には、複数の第1キリ穴45aが設けられている。複数の第1キリ穴45aは、シーブ側回転体45の回転中心を中心とする同一円周上に設けられている。
【0046】
この例では、5組の把持具46が用いられている。各把持具46は、複数の繋ぎ部26cのうちの1つを把持する。
【0047】
各把持具46は、スペーサ板47と、固定板48と、複数本のボルト49とを有している。この例では、各把持具46に2本のボルト49が用いられている。このため、伝達機構42全体では、10本のボルト49が用いられている。但し、
図5では、10本のボルト49のうちの1本のみが示されており、残りの9本は省略されている。
【0048】
各スペーサ板47は、繋ぎ部26cとシーブ側回転体45との間に挟み込まれる。各固定板48は、繋ぎ部26cにおけるスペーサ板47とは反対側の面に当てられる。
【0049】
各スペーサ板47には、一対の第2キリ穴47aが設けられている。各固定板48には、一対のねじ穴48aが設けられている。
【0050】
各把持具46において、2本のボルト49は、対応する2つの第1キリ穴45a、対応するスペーサ板47の一対の第2キリ穴47a、及び2つの開口26dに通され、対応する固定板48の一対のねじ穴48aにねじ込まれる。
【0051】
図6は、実施の形態1の伝達機構42の変形例を一部断面で示す側面図である。この変形例では、入力側回転体43及びシーブ側回転体45として、それぞれスプロケットが用いられている。そして、入力側回転体43及びシーブ側回転体45には、環状のチェーン50が巻かれている。
【0052】
入力側回転体43の回転は、チェーン50を介して、シーブ側回転体45に伝達される。変形例における伝達機構42は、シーブ側回転体45と、複数の把持具46と、チェーン50とを有している。
【0053】
図7は、
図6の入力側回転体43、シーブ側回転体45、及びチェーン50を示す正面図である。
図7では、シーブ側回転体45の径は、入力側回転体43の実施の形態と同じである。しかし、シーブ側回転体45の径は、入力側回転体43の径よりも大きくてもよい。
【0054】
図8は、
図2の駆動装置40の支持構造の第1例を示す平面図である。昇降路11内には、一対の追加梁51が設けられている。第2巻上機41は、一対の追加梁51により支持される。この例では、第2巻上機41は、一対の追加梁51上に設置される。
【0055】
各追加梁51の両端は、複数本のアンカーボルト52を介して、昇降路11の壁11bに固定されている。一対の追加梁51は、互いに平行、かつ水平に配置されている。また、各追加梁51は、懸架体27における駆動シーブ26から上方へ向かう部分との干渉を避けて昇降路11内に配置されている。
【0056】
図9は、
図2の駆動装置40の支持構造の第2例を示す平面図である。
図10は、
図9の要部を示す左側面図である。昇降路11の底部11aには、一対の縦柱61が立てられている。各縦柱61の下端部は、複数本のアンカーボルト62を介して、底部11aに固定されている。
【0057】
昇降路11内には、一対の横梁63が設けられている。一対の横梁63は、複数本のガイドレールのうちの2本のガイドレールと一対の縦柱61との間に固定されている。この例では、2本のガイドレールは、第1釣合おもりガイドレール18及び第2釣合おもりガイドレール19である。
【0058】
また、一対の横梁63は、互いに平行、かつ水平に配置されている。各横梁63の第1端部は、複数のレールクリップ64により、第1釣合おもりガイドレール18又は第2釣合おもりガイドレール19に固定されている。各横梁63の第2端部は、ボルト締め又は溶接により、縦柱61に固定されている。
【0059】
また、一対の横梁63は、懸架体27における駆動シーブ26から上方へ向かう部分との干渉を避けて昇降路11内に配置されている。
【0060】
一対の横梁63の間には、一対の支持梁65が固定されている。第2巻上機41は、一対の支持梁65により支持される。この例では、第2巻上機41は、一対の支持梁65上に設置される。
【0061】
一対の支持梁65は、溶接により、一対の横梁63に固定されている。また、一対の支持梁65は、互いに平行、かつ水平に配置れている。また、各支持梁65は、懸架体27における駆動シーブ26から上方へ向かう部分との干渉を避けて昇降路11内に配置されている。
【0062】
実施の形態1によるエレベータの改修方法は、第1工程と、第2工程とを含んでいる。第1工程では、懸架体27が駆動シーブ26に巻き掛けられた状態のまま、シーブ側回転体45が駆動シーブ26とともに回転するように、シーブ側回転体45が第1巻上機24に取り付けられる。
【0063】
第2工程では、入力側回転体43が取り付けられている第2巻上機41が、第1巻上機24が設置されている設置空間内に設置される。また、第2工程では、入力側回転体43の回転がシーブ側回転体45に伝達されるように、入力側回転体43とシーブ側回転体とが機械的に連結される。
【0064】
また、実施の形態1における設置空間は、昇降路11内の空間である。そして、第2工程では、昇降路11を鉛直方向に沿って見て、第2巻上機41が第1巻上機24と重なるように、第2巻上機41が昇降路11内に設置される。
【0065】
このようなエレベータでは、駆動装置40は、第2巻上機41と伝達機構42とを有している。第2巻上機41は、第2巻上機本体44と入力側回転体43とを有している。第2巻上機本体44は、入力側回転体43を回転させる。伝達機構42は、入力側回転体43の回転を駆動シーブ26に機械的に伝達する。
【0066】
このため、駆動シーブ26に懸架体27が巻き掛けられた状態のまま、駆動装置40を追加することにより、かご21の昇降のために使用される巻上機を、第1巻上機24から第2巻上機41に容易に切り替えることができる。また、釣合おもり22を釣合おもり緩衝器15によって支持させたり、かご21をチェーンブロックによって吊ったりする必要がない。従って、巻上機の更新作業を容易に行うことができ、更新作業の工期を短縮することができる。
【0067】
また、取付寸法及び外形寸法が改修前後で異なる場合においても、既設の機器を流用しつつ、巻上機の更新作業を容易に行うことができる。
【0068】
また、第1巻上機24及び駆動装置40は、昇降路11内に設置されている。そして、第2巻上機41は、昇降路11を鉛直方向に沿って見たとき第1巻上機24と重なっている。このため、寸法上の制約が厳しい昇降路11内においても、巻上機の更新作業を容易に行うことができる。
【0069】
また、第1巻上機24は、昇降路11の底部11aに設置れている。そして、第2巻上機41は、第1巻上機の上に配置されている。これにより、駆動シーブ26が懸架体27から受ける上向きに引き抜く荷重を第1巻上機24が受けた状態が、改修後も維持される。
【0070】
このため、第2巻上機41の強度を第1巻上機24よりも低くすることができ、第2巻上機41の小型化を図ることができる。これにより、巻上機の更新に伴うコストを削減し、最新の巻上機への更新を促進することができる。また、最新の巻上機を導入することにより、最新の制御システム及び保守システムの導入を容易にすることができる。
【0071】
また、
図8の支持構造では、一対の追加梁51が昇降路11の壁11bに固定されている。そして、一対の追加梁51により第2巻上機41が支持されている。このため、簡単な構成により、第1巻上機24の真上において、第2巻上機41を強固に支持することができる。
【0072】
また、
図9及び
図10の支持構造によれば、第1釣合おもりガイドレール18及び第2釣合おもりガイドレール19を利用して、コンパクトな構成により、第1巻上機24の真上において、第2巻上機41を強固に支持することができる。
【0073】
また、伝達機構42は、入力側回転体43の回転を減速して駆動シーブ26に伝達する。第2巻上機41に必要なトルクを小さくすることができ、第2巻上機41の小型化を図ることができる。
【0074】
また、伝達機構42は、シーブ側回転体45を有している。そして、シーブ側回転体45は、駆動シーブ26に取り付けられている。このため、入力側回転体43の回転を、より確実に駆動シーブ26に伝達することができる。
【0075】
また、シーブ側回転体45は、複数の把持具46を介して駆動シーブ26に取り付けられている。また、各把持具46は、繋ぎ部26cを把持している。このため、既設の駆動シーブ26をそのまま使用して、シーブ側回転体45を駆動シーブ26に取り付けることができる。これにより、巻上機の更新作業の工期をさらに短縮することができる。
【0076】
また、
図4に示すように、入力側回転体43及びシーブ側回転体45として歯車を用いることにより、入力側回転体43の回転をより確実に駆動シーブ26に伝達することができる。
【0077】
また、
図7に示すように、入力側回転体43とシーブ側回転体45との間にチェーン50を設けることにより、第1巻上機24と第2巻上機41との距離を変更することができ、第2巻上機41の設置位置の自由度を向上させることができる。
【0078】
また、実施の形態1のエレベータの改修方法では、懸架体27が駆動シーブ26に巻き掛けられた状態のまま、シーブ側回転体45が駆動シーブ26とともに回転するように、シーブ側回転体45が第1巻上機24に取り付けられる。また、第1巻上機24が設置されている設置空間内に、第2巻上機41が設置される。また、入力側回転体43の回転がシーブ側回転体45に伝達されるように、入力側回転体43とシーブ側回転体とが機械的に連結される。
【0079】
このため、かご21の昇降のために使用される巻上機を、第1巻上機24から第2巻上機41に容易に切り替えることができる。また、釣合おもり22を釣合おもり緩衝器15によって支持させたり、かご21をチェーンブロックによって吊る必要がない。従って、巻上機の更新作業を容易に行うことができ、更新作業の工期を短縮することができる。
【0080】
また、昇降路11を鉛直方向に沿って見て、第2巻上機41が第1巻上機24と重なるように、第2巻上機41が昇降路11内に設置される。このため、寸法上の制約が厳しい昇降路11内においても、巻上機の更新作業を容易に行うことができる。
【0081】
なお、追加梁51の数は、1つ又は3つ以上であってもよい。
【0082】
また、第2巻上機41は、追加梁51下で追加梁51に支持されてもよい。
【0083】
また、支持梁65の数は、1つ又は3つ以上であってもよい。
【0084】
また、第2巻上機41は、支持梁65の下で支持梁65に支持されてもよい。
【0085】
また、第1巻上機24は、昇降路11の頂部に設置されていてもよい。この場合、第2巻上機41は、第1巻上機24の真上又は真下に配置される。
【0086】
また、第1巻上機24は、機械室に設置されてもよい。即ち、第1巻上機24の設置空間は、機械室であってもよい。機械室有りのエレベータにおいて、機械室は、昇降路11の上に設けられている。
【0087】
また、釣合おもり22の昇降領域は、乗場から見て、かご21の昇降領域の側方に位置していてもよい。
【0088】
また、第1巻上機24及び第2巻上機41は、それぞれ薄型巻上機であっもよい。薄型巻上機は、軸方向寸法が軸方向に直角の方向の寸法よりも小さい巻上機である。
【0089】
また、エレベータのタイプは、
図1のタイプに限定されるものではなく、例えば1:1ローピング方式であってもよい。
【0090】
また、エレベータは、ダブルデッキエレベータ、ワンシャフトマルチカー方式のエレベータ等であってもよい。ワンシャ
フトマルチカー方式は、上かごと、上かごの真下に配置された下かごとが、それぞれ独立して共通の昇降路を昇降する方式である。
【0091】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0092】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0093】
(付記1)
第1巻上機本体と、前記第1巻上機本体に対して回転自在な駆動シーブとを有している第1巻上機、
前記駆動シーブに巻き掛けられている懸架体、
前記駆動シーブに対して一側において前記懸架体によって昇降路内に吊り下げられているかご、
前記駆動シーブに対して他側において前記懸架体によって前記昇降路内に吊り下げられている釣合おもり、及び
前記駆動シーブを回転させることにより、前記かご及び前記釣合おもりを昇降させる駆動装置
を備え、
前記駆動装置は、第2巻上機と伝達機構とを有しており、
前記第2巻上機は、入力側回転体と、前記入力側回転体を回転させる第2巻上機本体とを有しており、
前記伝達機構は、前記入力側回転体の回転を前記駆動シーブに機械的に伝達するエレベータ。
(付記2)
前記第1巻上機及び前記駆動装置は、前記昇降路内に設置されており、
前記第2巻上機は、前記昇降路を鉛直方向に沿って見たとき、前記第1巻上機と重なっている付記1記載のエレベータ。
(付記3)
前記第1巻上機は、前記昇降路の底部に設置れており、
前記第2巻上機は、前記第1巻上機の真上に配置されている付記2記載のエレベータ。
(付記4)
前記懸架体との干渉を避けて前記昇降路の壁に固定されている追加梁
をさらに備え、
前記第2巻上機は、前記追加梁により支持されている付記3記載のエレベータ。
(付記5)
前記かご及び前記釣合おもりの昇降を案内する複数本のガイドレール、
前記昇降路の底部に立てられている一対の縦柱、
前記懸架体との干渉を避けて、前記複数本のガイドレールのうちの2本のガイドレールと前記一対の縦柱との間に固定されている一対の横梁、及び
前記懸架体との干渉を避けて、前記一対の横梁の間に固定されている支持梁
をさらに備え、
前記第2巻上機は、前記支持梁により支持されている付記3記載のエレベータ。
(付記6)
前記伝達機構は、前記入力側回転体の回転を減速して前記駆動シーブに伝達する付記1から付記5までのいずれか1項に記載のエレベータ。
(付記7)
前記伝達機構は、
前記駆動シーブに取り付けられており、前記駆動シーブとともに回転するシーブ側回転体
を有している付記1から付記6までのいずれか1項に記載のエレベータ。
(付記8)
前記駆動シーブは、
前記懸架体が巻き掛けられる円環状の巻き掛け部と、
前記巻き掛け部の中心に位置しているボス部と、
前記巻き掛け部と前記ボス部との間に設けられている繋ぎ部と
を有しており、
前記シーブ側回転体は、前記繋ぎ部を把持する把持具を介して、前記駆動シーブに取り付けられている付記7記載のエレベータ。
(付記9)
かごを吊り下げている懸架体が、既設の巻上機の駆動シーブに巻き掛けられた状態のまま、シーブ側回転体が前記駆動シーブとともに回転するように、前記シーブ側回転体を前記既設の巻上機に取り付ける工程、及び
入力側回転体が取り付けられている新たな巻上機を、前記既設の巻上機が設置されている設置空間内に設置するとともに、前記入力側回転体の回転が前記シーブ側回転体に伝達されるように前記入力側回転体と前記シーブ側回転体とを機械的に連結する工程
を含むエレベータの改修方法。
(付記10)
前記設置空間は、昇降路内の空間であり、
前記昇降路を鉛直方向に沿って見て、前記新たな巻上機が前記既設の巻上機と重なるように、前記新たな巻上機を前記昇降路内に設置する付記9記載のエレベータの改修方法。
【符号の説明】
【0094】
11 昇降路、11a 底部、11b 壁、16 第1かごガイドレール、17 第2かごガイドレール、18 第1釣合おもりガイドレール、19 第2釣合おもりガイドレール、21 かご、22 釣合おもり、24 第1巻上機(既設の巻上機)、25 第1巻上機本体、26 駆動シーブ、26a 巻き掛け部、26b ボス部、26c 繋ぎ部、27 懸架体、40 駆動装置、41 第2巻上機(新たな巻上機)、42 伝達機構、43 入力側回転体、44 第2巻上機本体、45 シーブ側回転体、46 把持具、51 追加梁、61 縦柱、63 横梁、65 支持梁。