(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171369
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】サンプリングアダプタ、サンプリングアダプタの接続構造、および呼吸用保護具セット
(51)【国際特許分類】
A62B 27/00 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
A62B27/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088332
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000145507
【氏名又は名称】株式会社重松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】重松 宣雄
(72)【発明者】
【氏名】小野 研一
(72)【発明者】
【氏名】井出 弘之
(72)【発明者】
【氏名】横田 拓也
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185CC76
2E185DA05
(57)【要約】
【課題】容易に、かつ精度よく面体内の測定粒子濃度を計測することが可能なサンプリングアダプタ、サンプリングアダプタの接続構造、および呼吸用保護具セットを提供する。
【解決手段】
呼吸用保護具101のフィットテストにおいて、呼吸用保護具101における呼吸室内のガス中の対象粒子の濃度を測定するために使用されるサンプリングアダプタ1であって、呼吸用保護具101の排気口112に対して着脱可能に取付けられ、排気口112との間に内部空間を画成する筒状のアダプタ本体10と、当該内部空間を開閉するアダプタ側排気弁11と、アダプタ本体10に設けられて上記呼吸室または上記内部空間に連通し、呼吸室内のガスを取り出すガス取出口12と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を取り込む吸込口、使用者の少なくとも口元を覆うとともに該吸込口に連通する呼吸室を形成する面体、および該呼吸室に連通して前記使用者からの呼気を排気する排気口を含む呼吸用保護具のフィットテストにおいて、前記呼吸室内のガス中の対象粒子の濃度を測定するために使用されるサンプリングアダプタであって、
前記排気口に対して着脱可能に取付けられ、該排気口との間に内部空間を画成する筒状のアダプタ本体と、
前記内部空間を開閉するアダプタ側排気弁と、
前記アダプタ本体に設けられて前記呼吸室または前記内部空間に連通し、該呼吸室内のガスを取り出すガス取出口と、
を備えるサンプリングアダプタ。
【請求項2】
一端が前記ガス取出口に接続され、他端が前記排気口を通じて前記呼吸室内に配置されるサンプリングチューブをさらに備え、
前記ガス取出口は、前記サンプリングチューブを介して前記呼吸室に連通している請求項1に記載のサンプリングアダプタ。
【請求項3】
前記ガス取出口は、前記アダプタ本体における前記内部空間に開口することで、前記内部空間に連通している請求項1に記載のサンプリングアダプタ。
【請求項4】
外気を取り込む吸込口、使用者の少なくとも口元を覆うとともに該吸込口に連通する呼吸室を形成する面体、および該呼吸室に連通して前記使用者からの呼気を排気する排気口を含む呼吸用保護具のフィットテストにおいて、前記呼吸室内のガス中の対象粒子の濃度を測定するために前記呼吸用保護具に接続されるサンプリングアダプタの接続構造であって、
請求項1から3のいずれか一項に記載のサンプリングアダプタと、
前記排気口に設けられて、該排気口を開閉可能な保護具側排気弁、および該保護具側排気弁を支持する弁座と、
を備え、
前記サンプリングアダプタにおける前記アダプタ本体は、前記弁座に取り付け可能となっているサンプリングアダプタの接続構造。
【請求項5】
前記弁座は筒状をなして自身の内側に前記保護具側排気弁を支持し、
前記弁座の外周面には弁座側係合部が設けられ、
前記アダプタ本体には、前記弁座側係合部に係合し、前記アダプタ本体が前記排気口から離れる離間方向への移動を規制するアダプタ側係合部が設けられている請求項4に記載のサンプリングアダプタの接続構造。
【請求項6】
前記弁座側係合部は、前記呼吸室の側を向く弁座側規制面を有し、
前記アダプタ側係合部は、該アダプタ本体を前記弁座に対して所定方向に回転させることで前記弁座側規制面に対向し、該アダプタ本体の前記離間方向への移動を規制するアダプタ側規制面が形成されている請求項5に記載のサンプリングアダプタの接続構造。
【請求項7】
通気性を有し、かつ、前記保護具側排気弁を外側から覆う保護カバーと、
前記保護カバーと前記弁座の間に設けられ、前記保護カバーを開閉させて前記保護具側排気弁を覆う保護姿勢と前記保護具側排気弁を開放する開放姿勢とを切り替えるヒンジ部と、
をさらに備え、
前記アダプタ本体には、前記保護カバーが前記開放姿勢となる状態で前記弁座に取り付けられる際に、前記ヒンジ部との干渉を回避する逃げ部が設けられている請求項4に記載のサンプリングアダプタの接続構造。
【請求項8】
外気を取り込む吸込口、使用者の少なくとも口元を覆うとともに該吸込口に連通する呼吸室を形成する面体、および該呼吸室に連通して前記使用者からの呼気を排気する排気口を含む呼吸用保護具と、
前記呼吸用保護具に接続される請求項1から3のいずれか一項に記載のサンプリングアダプタと、
を備え、
前記呼吸用保護具は、前記吸込口から前記呼吸室に至る外気が流通する吸気経路上に設けられた電動ファンをさらに有する呼吸用保護具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸用保護具に使用されるサンプリングアダプタ、サンプリングアダプタの接続構造、およびサンプリングアダプタを備える呼吸用保護具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気中を浮遊する粉じん等の粒子状物質をフィルタで除去し、清浄空気を電動ファンによって面体内へ送気するろ過式の呼吸用保護具として、電動ファン付き呼吸用保護具(Powered Air Purifying Respirators:PAPR)が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
この種の呼吸用保護具では、空気清浄効果を確保するため、フィットテストと呼ばれる使用前点検が定期的に実施されるようになっている。このフィットテストでは、JIST8150に定める方法、またはこれと同等以上の方法によって呼吸用保護具(面体)の内外の測定対象の粒子(以下、測定粒子)の濃度を計測し、以下の式(1)によって求めたフィットファクタを確認するようになっている。
フィットファクタ=呼吸用保護具の外側の測定粒子の濃度/呼吸用保護具の内側の測定粒子の濃度・・・(1)
【0004】
ところでフィットテストを行う際には、「サンプリングアダプタ」と呼ばれる器具を取り付け、呼吸用保護具の吸気経路内にサンプリングチューブを挿入し、サンプリングチューブを通じて呼吸用保護具の内側のガスを取り出して当該ガス中の測定粒子濃度を計測することが一般的に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のサンプリングアダプタを使用する場合、サンプリングチューブを吸気経路上に設けられた電動ファンの内部を通過させて面体内の呼吸室に導く必要があり、この作業が非常に難しく、吸気経路や電動ファンの構造によってはサンプリングチューブの設置が不可能なこともある。この場合、「模擬面体」と呼ばれるフィットテスト専用の呼吸用保護具を別途準備しなければならなくなり、余分なコストが発生してしまうといった問題が生じてしまう。
【0007】
そこで本発明は、容易に、かつ精度よく面体内の測定粒子濃度を計測することが可能な呼吸用保護具用のサンプリングアダプタ、サンプリングアダプタの接続構造、およびサンプリングアダプタを備える呼吸用保護具セットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るサンプリングアダプタは、外気を取り込む吸込口、使用者の少なくとも口元を覆うとともに該吸込口に連通する呼吸室を形成する面体、および該呼吸室に連通して前記使用者からの呼気を排気する排気口を含む呼吸用保護具のフィットテストにおいて、前記呼吸室内のガス中の対象粒子の濃度を測定するために使用されるサンプリングアダプタであって、前記排気口に対して着脱可能に取付けられ、該排気口との間に内部空間を画成する筒状のアダプタ本体と、前記内部空間を開閉するアダプタ側排気弁と、前記アダプタ本体に設けられて前記呼吸室または前記内部空間に連通し、該呼吸室内のガスを取り出すガス取出口と、を備える。
【0009】
上記サンプリングアダプタでは、一端が前記ガス取出口に接続され、他端が前記排気口を通じて前記呼吸室内に配置されるサンプリングチューブをさらに備え、前記ガス取出口は、前記サンプリングチューブを介して前記呼吸室に連通していてもよい。
【0010】
上記サンプリングアダプタでは、前記ガス取出口は、前記アダプタ本体における前記内部空間に開口することで、前記内部空間に連通していてもよい。
【0011】
本発明の一態様に係るサンプリングアダプタの接続構造は、外気を取り込む吸込口、使用者の少なくとも口元を覆うとともに該吸込口に連通する呼吸室を形成する面体、および該呼吸室に連通して前記使用者からの呼気を排気する排気口を含む呼吸用保護具のフィットテストにおいて、前記呼吸室内のガス中の対象粒子の濃度を測定するために前記呼吸用保護具に接続されるサンプリングアダプタの接続構造であって、上記のサンプリングアダプタと、前記排気口に設けられて、該排気口を開閉可能な保護具側排気弁、および該保護具側排気弁を支持する弁座と、を備え、前記サンプリングアダプタにおける前記アダプタ本体は、前記弁座に取り付け可能となっている。
【0012】
上記サンプリングアダプタの接続構造では、前記弁座は筒状をなして自身の内側に前記保護具側排気弁を支持し、前記弁座の外周面には弁座側係合部が設けられ、前記アダプタ本体には、前記弁座側係合部に係合し、前記アダプタ本体が前記排気口から離れる離間方向への移動を規制するアダプタ側係合部が設けられていてもよい。
【0013】
上記サンプリングアダプタの接続構造では、前記弁座側係合部は、前記呼吸室の側を向く弁座側規制面を有し、前記アダプタ側係合部は、該アダプタ本体を前記弁座に対して所定方向に回転させることで前記弁座側規制面に対向し、該アダプタ本体の前記離間方向への移動を規制するアダプタ側規制面が形成されていてもよい。
【0014】
上記サンプリングアダプタの接続構造は、通気性を有し、かつ、前記保護具側排気弁を外側から覆う保護カバーと、前記保護カバーと前記弁座の間に設けられ、前記保護カバーを開閉させて前記保護具側排気弁を覆う保護姿勢と前記保護具側排気弁を開放する開放姿勢とを切り替えるヒンジ部と、をさらに備え、前記アダプタ本体には、前記保護カバーが前記開放姿勢となる状態で前記弁座に取り付けられる際に、前記ヒンジ部との干渉を回避する逃げ部が設けられていてもよい。
【0015】
本発明の一態様に係る呼吸用保護具セットは、外気を取り込む吸込口、使用者の少なくとも口元を覆うとともに該吸込口に連通する呼吸室を形成する面体、および該呼吸室に連通して前記使用者からの呼気を排気する排気口を含む呼吸用保護具と、前記呼吸用保護具に接続される上記のサンプリングアダプタと、を備え、前記呼吸用保護具は、前記吸込口から前記呼吸室に至る外気が流通する吸気経路上に設けられた電動ファンをさらに有する。
【発明の効果】
【0016】
上記のサンプリングアダプタ等によれば、容易に、かつ精度よく面体内の測定粒子濃度を計測することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る呼吸用保護具セットを示す全体正面図を示す。
【
図2】上記呼吸用保護具セットを簡略化して示す上面図であって、吸気経路を示す図である。
【
図3】上記呼吸用保護具セットにおけるサンプリングアダプタの接続構造を示す斜視図である。
【
図4】上記サンプリングアダプタをアダプタ本体の内側から見た斜視図である。
【
図5】上記サンプリングアダプタの接続構造を示す断面図であって、
図1のX-X断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る呼吸用保護具セット100について説明する。
【0019】
呼吸用保護具セット100は、保護具本体(呼吸用保護具)101と、保護具本体101のフィットテストにおいて保護具本体101に取り付けられ、保護具本体101内のガスの測定対象粒子(以下、測定粒子)の濃度を測定するための器具であるサンプリングアダプタ1とを備えている。
【0020】
(保護具本体)
図1に示すように保護具本体101は、外気を取り込む吸込口110と、吸込口110が設けられ、かつ使用者の顔に装着される面体111と、面体111に設けられて使用者からの呼気を排気する排気口112と、吸込口110から取り込まれた外気を送気する電動ファン113とを有している。よって本実施形態の保護具本体101は、PAPRと呼ばれる電動ファン付呼吸用保護具となっている。
【0021】
なお以下では、保護具本体101の上下左右前後は、保護具本体101が使用者に装着された状態(使用状態)を基準とした上下左右前後を示す。すなわち保護具本体101の上下左右前後は、使用者の上下左右前後に略一致する。
【0022】
(吸込口)
吸込口110は、保護具本体101を正面視した際に左右に互いに間隔をあけて一対が設けられている。各々の吸込口110には吸気フィルタ110aが設けられている。
【0023】
(面体)
面体111は、不図示の固定ベルトによって使用者の顔に固定される。
図2に示すように面体111は使用者の顔との間に呼吸室Sを形成する。本実施形態の面体111は使用者の口元のみを覆うものとなっているが、面体111の形状や構造は特に限定されるものではなく、面体111は例えば使用者の少なくとも口元を覆うものであればよく、使用者の顔全体を覆うものであってもよい。
【0024】
(電動ファン)
電動ファン113は例えば遠心ファンであり、面体111の前方に設けられ、かつ吸込口110から呼吸室Sに至る吸気経路K(
図2参照)上に配置されている。そして電動ファン113は一対の吸込口110の各々から外気を取り込んで呼吸室Sに流入させる。この電動ファン113の上方には、使用者による会話を可能とする伝声器114が設けられている(
図1参照)。電動ファン113および伝声器114は、一つのファンユニット115を構成している。
【0025】
よって保護具本体101における左右両側の吸込口110から面体111内の呼吸室Sに至る吸気経路Kは、吸込口110から保護具本体101の左右中央付近に向かった後、電動ファン113を経由し、電動ファン113における左右両側から面体111に向かって後方へ延びている。
【0026】
(排気口)
図1に戻って排気口112は、本実施形態では面体111の下部に設けられ、面体111に形成された不図示の呼気流出孔を介して面体111内の呼吸室S(
図2参照)に連通している。よって排気口112は呼吸室Sから下方へ呼気を排気する。
【0027】
そして
図3に示すように排気口112には、排気口112を開閉可能な保護具側排気弁120、保護具側排気弁120を支持する弁座121、保護具側排気弁120を外側から覆う保護具側保護カバー122、および保護具側保護カバー122を開閉させるヒンジ部123が設けられている。そしてこれら保護具側排気弁120、弁座121、保護具側保護カバー122、およびヒンジ部123と、詳しく後述するサンプリングアダプタ1とが、サンプリングアダプタ1の接続構造を構成している。
【0028】
(保護具側排気弁)
保護具側排気弁120は、使用者の呼気の圧力によって排気口112を開放する。
【0029】
(弁座)
弁座121は、円筒状をなして自身の内側に保護具側排気弁120を支持している。また弁座121の外周面には弁座側係合部130が設けられている。弁座側係合部130は、弁座121の周方向に互いに間隔をあけて複数配置されている。各々の弁座側係合部130は、弁座121の外周面から径方向外側に突出するとともに弁座121の周方向に延びる突起になっている。弁座側係合部130は、詳しく後述するサンプリングアダプタ1のアダプタ側係合部30に係合可能となっている。各々の弁座側係合部130は、呼吸室Sの側となる上方を向く弁座側規制面130aと、弁座側規制面130aに接続されて弁座121の周方向の一方(後述する取り付け回転方向Rとは反対方向)を向く弁座側周方向規制面130bとを有している。
【0030】
(保護具側保護カバー)
保護具側保護カバー122は保護具側排気弁120を保護するように有底筒状をなし、例えば天面を開口させることによって通気性を有している。
【0031】
(ヒンジ部)
ヒンジ部123は、保護具側保護カバー122と弁座121との間にわたって設けられ、保護具側保護カバー122によって保護具側排気弁120を下方および側方から覆う保護姿勢と、保護具側排気弁120を開放するように保護具側保護カバー122を弁座121の径方向外側に配置する開放姿勢とを切り替えるように、弁座121に対して保護具側保護カバー122を揺動させることで、この保護カバー122を開閉させる。
【0032】
(サンプリングアダプタ)
次にサンプリングアダプタ1について詳細に説明する。
サンプリングアダプタ1は、保護具本体101の排気口112に対して着脱可能に取付けられるアダプタ本体10と、アダプタ本体10に支持されたアダプタ側排気弁11と、アダプタ本体10に設けられて呼吸室S(
図2参照)内のガスを取り出すガス取出口12と、ガス取出口12に接続されたサンプリングチューブ13と、を備えている。
【0033】
(アダプタ本体)
図4に示すようにアダプタ本体10は筒状をなし、保護具本体101の排気口112との間に内部空間SAを画成する。またアダプタ本体10の内周面にはアダプタ側係合部30が設けられている。アダプタ側係合部30は、アダプタ本体10の周方向に互いに間隔をあけて複数配置されている。各々のアダプタ側係合部30は、アダプタ本体10の内周面に配置されてアダプタ本体10の周方向に延びる溝となっている。そして各々のアダプタ側係合部30は、呼吸室Sとは反対側となる下方を向くアダプタ側規制面30aと、アダプタ本体10の周方向を向くアダプタ側周方向規制面30bとを有している。
【0034】
アダプタ側規制面30aは、アダプタ本体10を弁座121(
図3参照)に対して所定方向(以下、取り付け回転方向R)に回転させることで弁座側規制面130aに上下に対向し、アダプタ本体10が排気口112から離れる方向となる離間方向、すなわちアダプタ本体10の軸方向下方への移動を規制するようになっている。すなわちアダプタ本体10は、弁座121にねじ込むようにして固定される。そしてアダプタ側規制面30aは、取り付け回転方向Rに向かうにしたがって、上方(呼吸室Sへの近接方向)に漸次傾斜するテーパ面となっており、アダプタ本体10を弁座121に対して取り付け回転方向Rに向かって回転させるにつれて、弁座側規制面130aに対してアダプタ側規制面30aが押圧されるようになっている。
【0035】
図5に示すようにアダプタ側周方向規制面30bは、アダプタ側規制面30aに接続されるとともに取り付け回転方向Rを向く面であって、弁座側周方向規制面130bに対し、アダプタ本体10における周方向に対向することでアダプタ本体10の回転を規制するストッパとして機能する。
【0036】
ここで
図4に戻って、アダプタ本体10の内側にはシール部材31としてのゴム部品が設けられ、弁座121の外周面に密着して排気口112を密閉するようになっている。
【0037】
また保護具側保護カバー122が開放姿勢となる状態(
図3参照)で保護具本体101の弁座121にアダプタ本体10を取り付け可能となるように、アダプタ本体10には、ヒンジ部123との干渉を回避する逃げ部35が設けられている。逃げ部35は、アダプタ本体10の底端面(アダプタ本体10が排気口112に取り付けられた状態における上端面)10aから上記離間方向に凹むとともに、アダプタ本体10の周方向に延びる切欠き状をなしている。
【0038】
(アダプタ側排気弁)
アダプタ側排気弁11は、アダプタ本体10によって画成された内部空間SAを開閉する。すなわちアダプタ側排気弁11は、排気口112から排出されて内部空間SAに流入した呼吸室S内のガスの圧力によって内部空間SAを開放するようになっている。
【0039】
ここで
図3に戻って、アダプタ側排気弁11は、アダプタ本体10の下側に設けられた円筒状をなす弁座20の内側に支持されている。弁座20の外周面には、ヒンジ部21を介してアダプタ側保護カバー22が支持されている。アダプタ側保護カバー22は、保護具側保護カバー122と同様にアダプタ側排気弁11を保護する有底筒状をなし、例えば天面を開口させることによって通気性を有している。そしてアダプタ側保護カバー22は、ヒンジ部21によってアダプタ側排気弁11を下方および側方から覆う保護姿勢と、アダプタ側排気弁11を開放するようにアダプタ側保護カバー22を弁座20の径方向外側に配置する開放姿勢とを切り替えるように、弁座20に対して揺動することで、アダプタ側保護カバー22が開閉可能となっている。
【0040】
(ガス取出口)
図4に示すようにガス取出口12は、アダプタ本体10の側部を径方向に貫通するようにしてアダプタ本体10に設けられ、内部空間SAに開口している。
【0041】
(サンプリングチューブ)
サンプリングチューブ13については、自身の一端がアダプタ本体10の内側の内部空間SAにおいてガス取出口12に接続され、自身の他端が排気口112を通じて呼吸室S(
図2参照)に配置されるようになっている。よってガス取出口12はサンプリングチューブ13を介して呼吸室Sに連通している。
【0042】
(作用効果)
以上説明した本実施形態の呼吸用保護具セット100によれば、サンプリングアダプタ1を保護具本体101における排気口112に設けるようになっているため、面体111内の呼吸室Sに非常に近い位置にサンプリングアダプタ1を設けることになる。このため、呼吸室Sのガスを取り出し易くなり、精度よく面体111内の測定粒子濃度を計測することが可能となる。
【0043】
特に本実施形態では、サンプリングアダプタ1のアダプタ本体10にサンプリングチューブ13が設けられているが、サンプリングアダプタ1を排気口112に設けることで、このサンプリングチューブ13の先を排気口112を通じて呼吸室Sに容易に配置できる。すなわち、呼吸室Sと排気口112との間の排気経路上には、吸込口110から呼吸室Sに至る吸気経路Kのように電動ファン113が設けられているわけではなく、排気経路を通じて排気口112から呼吸室Sまで非常に容易にサンプリングチューブ13を挿入していくことができる。したがって、サンプリングアダプタ1を保護具本体101に容易に設けることができる。
【0044】
特に保護具側排気弁120を排気口112から取り外した状態でサンプリングアダプタ1を排気口112に取り付ければ、サンプリングチューブ13を排気口112から呼吸室Sへさらに容易に挿入することができる。この際、アダプタ本体10にはアダプタ側排気弁11が設けられているため、仮に保護具側排気弁120を保護具本体101から取り外した状態でサンプリングアダプタ1を設置する場合であっても、アダプタ側排気弁11によって排気口112の開閉が可能となり、呼吸室Sに外部から空気等が混入してしまうことを回避でき、面体111内の測定粒子濃度の測定精度を向上できる。
【0045】
またサンプリングアダプタ1は保護具側排気弁120を支持する弁座121に取り付け可能となっているため、保護具側排気弁120を排気口112に取り付けた状態のままでもサンプリングアダプタ1を保護具本体101に接続することができる。なお、保護具側排気弁120を排気口112に取り付けたままでサンプリングチューブ13を排気口112から呼吸室Sへ挿入する際には、保護具側排気弁120と排気口112との隙間を通じてサンプリングチューブ13を挿入していくことになる。
【0046】
そして本実施形態では、サンプリングアダプタ1のアダプタ本体10に設けられたアダプタ側係合部30と、弁座121に設けられた弁座側係合部130とが係合することで、サンプリングアダプタ1を弁座121に対して上下に移動不能となるように固定することができ、サンプリングアダプタ1の脱落の可能性を低減できる。特にサンプリングアダプタ1を弁座121に対してねじ込むようにして取り付け、または取り外すようになっているため、取り付けおよび取り外しが容易である。
【0047】
さらには、弁座側係合部130が弁座121の外周面に設けられ、アダプタ側係合部30がアダプタ本体10の内周面に設けられている。よってサンプリングアダプタ1を、弁座121の外周側から弁座121を覆うように取り付けることができ、サンプリングアダプタ1によって排気口112を密閉することができる。
【0048】
またサンプリングアダプタ1が逃げ部35を有することで、保護具側排気弁120を覆う保護具側保護カバー122を開放姿勢とした状態においてサンプリングアダプタ1を排気口112に取り付けても、ヒンジ部123にサンプリングアダプタ1が干渉することがない。
【0049】
ここで本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、サンプリングチューブ13は必ずしも設けなくともよい。この場合、アダプタ本体10と排気口112との間の内部空間SAにガス取出口12が連通することになり、呼吸室Sから排気口112を介して内部空間SAに流入するガスをガス取出口12によって取り出すことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のサンプリングアダプタ等によれば、容易に、かつ精度よく面体内の測定粒子濃度を計測することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1…サンプリングアダプタ
10…アダプタ本体
11…アダプタ側排気弁
12…ガス取出口
13…サンプリングチューブ
20…弁座
21…ヒンジ部
22…アダプタ側保護カバー
30…アダプタ側係合部
30a…アダプタ側規制面
35…逃げ部
100…呼吸用保護具セット
101…保護具本体(呼吸用保護具)
110…吸込口
111…面体
112…排気口
113…電動ファン
120…保護具側排気弁
121…弁座
122…保護具側保護カバー
123…ヒンジ部
130…弁座側係合部
130a…弁座側規制面
K…吸気経路
S…呼吸室
SA…内部空間