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特開2024-171380合成燃料製造装置及び合成燃料製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171380
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】合成燃料製造装置及び合成燃料製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 2/00 20060101AFI20241205BHJP
   C10G 35/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C10G2/00
C10G35/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088344
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179453
【弁理士】
【氏名又は名称】會田 悠介
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】山本 修身
(72)【発明者】
【氏名】海田 千晴
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA01
4H129BA12
4H129BB07
4H129BC43
4H129BC46
4H129CA20
4H129DA12
4H129GA01
4H129KA15
4H129KB02
4H129KB03
4H129KC07Y
4H129KC16Y
4H129KD10Y
4H129KD19Y
4H129KD32Y
4H129LA11
4H129NA22
4H129NA23
4H129NA42
4H129NA43
(57)【要約】      (修正有)
【課題】FT合成反応による炭化水素の生成状態に応じて製造する合成燃料の種別を決定し、それに用いられる炭化水素の分留に適した分留温度で効率よく分留器を稼働させることができる合成燃料製造装置及び合成燃料製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の合成燃料製造装置は、フィッシャー・トロプシュ反応に活性を示す触媒を有し、原料ガスから炭化水素を含有するFT粗油を生成する反応器と、反応器の下流側に設けられ、FT粗油を分留し、所定範囲の炭素数の炭化水素を分離する分留器と、分留器の下流側に設けられ、分留器によって分離された炭化水素から燃料製品を生成する改質器と、を備える合成燃料製造装置であって、反応器と分留器の間に設けられ、FT粗油に含まれる芳香族炭化水素の濃度CAを検出する芳香族検出手段を更に備え、検出された芳香族炭化水素の濃度CAに応じて、分留器の分留温度Tfraを変化させることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィッシャー・トロプシュ合成反応(FT合成反応)に活性を示すFT反応触媒を有し、原料ガスから炭化水素を含有するFT粗油を生成する反応器と、
前記反応器の下流側に設けられ、前記FT粗油を分留し、所定範囲の炭素数の炭化水素を分離する分留器と、
前記分留器の下流側に設けられ、前記分留器によって分離された炭化水素から燃料製品を生成する改質器と、を備える合成燃料製造装置であって、
前記反応器と前記分留器の間に設けられ、前記FT粗油に含まれる芳香族炭化水素の濃度を検出する芳香族検出手段を更に備え、
検出された前記芳香族炭化水素の前記濃度に応じて、前記分留器の分留温度を変化させることを特徴とする合成燃料製造装置。
【請求項2】
前記分留器は、分留温度を切り替え可能な温度可変式の分留器であることを特徴とする、請求項1に記載の合成燃料製造装置。
【請求項3】
前記分留器は、それぞれが異なる分留温度に設定された複数の分留器であり、
前記複数の分留器には、前記反応器の下流側から分岐する分岐部を有する分岐配管がそれぞれ接続されており、
前記分岐部は、検出された前記芳香族炭化水素の前記濃度に基づき、前記分岐配管のうち、前記反応器と連通させる配管を切り替える切替弁を有することを特徴とする請求項1に記載の合成燃料製造装置。
【請求項4】
前記反応器と前記芳香族検出手段の間に設けられた熱交換式気液分離装置を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の合成燃料製造装置。
【請求項5】
検出された前記芳香族炭化水素の前記濃度が所定のしきい値を下回った場合に、前記FT反応触媒の再生処理又は交換が必要であることを報知する報知手段を更に備えることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の合成燃料製造装置。
【請求項6】
フィッシャー・トロプシュ合成反応(FT合成反応)に活性を示すFT反応触媒を有する反応器により、原料ガスから炭化水素を含有するFT粗油を生成するFT粗油生成工程と、
前記反応器の下流側に設けられた分留器により、前記FT粗油を分留し、所定範囲の炭素数の炭化水素を分離する分留工程と、
前記分留器の下流側に設けられた改質器により、前記分離された炭化水素から燃料製品を生成する改質工程と、を有する合成燃料製造方法であって、
前記反応器と前記分留器の間に設けられた芳香族検出手段により、前記FT粗油に含まれる芳香族炭化水素の濃度を検出する芳香族検出工程を更に有し、
検出された前記芳香族炭化水素の前記濃度に応じて、前記分留工程における分留温度を変化させることを特徴とする合成燃料製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料ガスからフィッシャー・トロプシュ反応により得られた粗油を改質し合成燃料を生成する合成燃料製造装置及び合成燃料製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気候変動の緩和または影響軽減を目的として自動車の排気ガス規制が一段と進んでおり、その一環として、二酸化炭素(CO)の有効利用に関する研究開発が行われている。例えば、二酸化炭素と水素(H)を反応させて一酸化炭素(CO)と水(HO)を生成する逆シフト反応と、一酸化炭素と水素の合成ガスから触媒反応を用いて炭化水素(HC)を合成するフィッシャー・トロプシュ合成反応(以下、「FT合成反応」という。)を組み合わせることで、二酸化炭素を原料として燃料として使用可能な炭化水素を合成する技術が開発されている。また、近年では、逆シフト反応とFT合成反応を1つの反応器で実施することにより、二酸化炭素と水素を直接反応させて炭化水素を得るダイレクトFT合成反応の研究も進められている。
【0003】
FT合成反応では、ガソリンの原料となる炭素数5~10程度の炭化水素や、ジェット燃料(航空タービン油)の原料となる炭素数8~16程度の炭化水素の他、より炭素数の多い重質の炭化水素や、メタン(CH)を含む軽質の炭化水素が生成される。そのため、FT合成反応により生成された幅広い炭化水素分布を有する粗油(以下、「FT粗油」という。)を、例えば蒸留塔などの分留装置を用いて分留した後、水素化精製反応器を通すことで、炭素数に応じた合成燃料製品を得ることができる。
【0004】
例えば特許文献1では、FT合成ユニットの反応器において生成された多様な液体炭化水素化合物を精留塔において各留分に分留し、アップグレーディングユニットにおいて、各留分ごとに設けられた水素化精製反応器による改質を行うことで、ナフサ、灯油、軽油等の液体燃料を製造する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-189603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
FT合成反応により生成される炭化水素の炭素数の分布は、用いられる触媒の組成により異なる。また、同じ触媒を用いた場合でも、触媒が使用された回数や経過した反応時間の長さによって反応特性に変化が生じることにより、生成される炭化水素の構成割合も変化し、それにより最終製品となる合成燃料の生産量も、種別ごとに大きく変動し得る。
【0007】
特許文献1に記載された技術では、触媒の劣化等により得られる炭化水素成分に変動が生じた場合であっても、FT合成反応後の工程における燃料種別ごとの分留・改質工程が常に定常稼働されるため、特定種別の燃料の生産量が低い場合であっても、それを製造するための分留器や改質器を稼働するためのエネルギーが消費され続けることとなり、生産コストと効率化の面で改善の余地がある。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、FT合成反応による炭化水素の生成状態に応じて製造に適した合成燃料の種別を決定し、その合成燃料の製造に用いられる炭化水素の分留に適した分留温度で効率よく分留器を稼働させることができる合成燃料製造装置及び合成燃料製造方法を提供することを目的とする。そして、延いては気候変動の緩和または影響軽減に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、フィッシャー・トロプシュ合成反応(FT合成反応)に活性を示すFT反応触媒を有し、原料ガスから炭化水素を含有するFT粗油を生成する反応器6と、反応器6の下流側に設けられ、FT粗油を分留し、所定範囲の炭素数の炭化水素を分離する分留器(実施形態における(以下、本項において同じ)分留器9、第1分留器91、第2分留器92)と、分留器の下流側に設けられ、分留器によって分離された炭化水素から燃料製品を生成する改質器(第1改質器10、第2改質器11)と、を備える合成燃料製造装置であって、反応器6と分留器の間に設けられ、FT粗油に含まれる芳香族炭化水素の濃度CAを検出する芳香族検出手段(芳香族検出器8)を更に備え、検出された芳香族炭化水素の濃度CAに応じて、分留器の分留温度Tfraを変化させることを特徴とする。
【0010】
本発明者らは、鋭意研究の結果、所定のFT合成反応によって生成された炭化水素の炭素数の分布が、生成された炭化水素中の芳香族炭化水素の濃度と相関関係を有することを見出した。すなわち、生成された炭化水素における芳香族炭化水素の割合が高いほど、炭素数の小さい炭化水素が多く生成されており、反対に、芳香族炭化水素の割合が低いほど、炭素数の大きい炭化水素が多く生成されている傾向がある。更に、ある種の触媒においては、反応初期の触媒活性が高い状態においては芳香族炭化水素を比較的多く生成し、反応後期、又は触媒の劣化が進み活性が低下した状態においては、芳香族炭化水素の生成量が比較的少なくなることを確認した。換言すれば、触媒活性が高いときには、炭素数の小さな炭化水素が多く生成され、触媒活性が低下すると、炭素数の大きな炭化水素が多く生成される傾向が認められた。
【0011】
こうした知見に基づき、本発明の合成燃料製造装置においては、FT合成反応によって生成されたFT粗油に含まれる芳香族炭化水素の濃度を検出し、それに応じて分留器の分留温度を変化させる。上述のとおり、生成された炭化水素中の芳香族炭化水素の濃度により、生成された炭化水素における炭素数の分布を推定することができるので、それに基づき製造に適した合成燃料の種別を決定し、分留温度をその合成燃料の製造に用いられる炭化水素の分留に適した温度に変化させることで、効率よく分留器を稼働させることができるとともに、効率よく合成燃料を製造することができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の合成燃料製造装置において、分留器は、分留温度を切り替え可能な温度可変式の分留器9であることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、分留器は、分留温度を切り替え可能な温度可変式の分留器であるので、検出された芳香族炭化水素の濃度に応じて、分留温度を効率よく合成燃料を製造可能な温度へと変化させることができる。したがって、無駄なエネルギー消費を抑えながら効率よく分留器を稼働させることができ、効率よく合成燃料を製造することができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の合成燃料製造装置において、分留器は、それぞれが異なる分留温度に設定された複数の分留器(第1分留器91、第2分留器92)であり、複数の分留器には、反応器6の下流側から分岐する分岐部を有する分岐配管がそれぞれ接続されており、分岐部は、検出された芳香族炭化水素の濃度CAに基づき、分岐配管のうち、反応器と連通させる配管を切り替える切替弁101を有することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、分留器として、異なる分留温度に設定された複数の分留器が用いられ、検出された芳香族炭化水素の濃度に応じて、切替弁により反応器と連通させる配管を切り替えることにより、用いられる分留器が変わり、分留が行われる温度が変化する。これにより、効率よく合成燃料を製造可能な分留温度で分留を行うことができる。したがって、無駄なエネルギー消費を抑えながら効率よく分留器を稼働させることができ、効率よく合成燃料を製造することができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の合成燃料製造装置であって、反応器6と芳香族検出手段8の間に設けられた熱交換式気液分離装置(気液分離器7)を更に備えることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、反応器と芳香族検出手段の間に熱交換式気液分離装置を設けたので、FT合成反応によりFT粗油とともに主に気体で発生する軽質の炭化水素や未反応ガスを回収し、合成燃料の原料となる炭化水素と分離することができる。また、回収した軽質炭化水素や未反応ガスは、反応器の上流に戻してリサイクルすることにより、合成燃料として使用可能な炭化水素の収率を向上させることができる。
【0018】
請求項5に係る発明は、請求項1~4のいずれか1項に記載の合成燃料製造装置であって、検出された芳香族炭化水素の濃度CAが所定のしきい値CAref2を下回った場合に、FT反応触媒の再生処理又は交換が必要であることを報知する報知手段(報知部13)を更に備えることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、検出された芳香族炭化水素の濃度をFT反応触媒の劣化の進行度を示す指標として捉え、芳香族炭化水素の濃度が所定のしきい値を下回った場合に、FT反応触媒の再生処理又は交換を行う時期であることを報知するので、芳香族検知手段を利用してFT反応触媒の再生/交換時期を知ることができる。
【0020】
請求項6に係る発明は、フィッシャー・トロプシュ合成反応(FT合成反応)に活性を示すFT反応触媒を有する反応器6により、原料ガスから炭化水素を含有するFT粗油を生成するFT粗油生成工程と、反応器6の下流側に設けられた分留器(分留器9、第1分留器91、第2分留器92)により、FT粗油を分留し、所定範囲の炭素数の炭化水素を分離する分留工程と、分留器の下流側に設けられた改質器(第1改質器10、第2改質器11)により、分離された炭化水素から燃料製品を生成する改質工程と、を有する合成燃料製造方法であって、反応器6と分留器の間に設けられた芳香族検出手段(芳香族検出器8)により、FT粗油に含まれる芳香族炭化水素の濃度CAを検出する芳香族検出工程を更に有し、検出された芳香族炭化水素の濃度CAに応じて、分留工程における分留温度Tfraを変化させることを特徴とする。
【0021】
本発明の合成燃料製造方法においては、FT合成によって生成されたFT粗油に含まれる芳香族炭化水素の濃度を検出し、それに応じて分留器の分留温度を変化させる。上述のとおり、生成された炭化水素中の芳香族炭化水素の濃度により、生成された炭化水素における炭素数の分布を推定することができるので、それに基づき製造に適した合成燃料の種別を決定し、分留温度をその合成燃料の製造に用いられる炭化水素の分留に適した温度に変化させることで、効率よく分留器を稼働させることができるとともに、効率よく合成燃料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る合成燃料製造装置の全体構造を示す図である。
図2】FT反応触媒の構成の違いによる、生成された炭化水素の炭素数と炭化水素化合物の選択率の関係を示すグラフである。
図3】FT合成反応により生成された炭化水素の液体成分(炭素数5以上の炭化水素)中の芳香族の割合と、炭素数5~7の炭化水素の割合及び炭素数8~16の炭化水素の割合の関係を示すグラフである。
図4】FT合成反応により生成された炭化水素のうち、炭素数5以上の炭化水素中の芳香族の割合と、炭素数8~16の炭化水素中の芳香族の割合の関係を示すグラフである。
図5】分留温度切替処理を示すフローチャートである。
図6】別の実施形態に係る合成燃料製造装置の全体構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の合成燃料製造装置の好ましい実施形態を詳細に説明する。以下に説明する構成は本発明の一例であり、本発明はこれに限定されない。なお、以下の説明において、上流側や下流側という用語は、説明対象となる各部における流体が流れる方向における上流側と下流側を表す。
【0024】
図1は、本実施形態に係る合成燃料製造装置1の全体構造の構成例を示す。合成燃料製造装置1は、上流側から順に、水素供給部2、二酸化炭素供給部3、圧縮器4、加熱器5、反応器6、気液分離器7、芳香族検出器8、分留器9、第1改質器10、第2改質器11を有する。合成燃料製造装置1の各部は、制御部12によって制御される。このような構成により、合成燃料製造装置1は、二酸化炭素ガス及び水素ガスを原料ガスとして、FT合成反応によりFT粗油を生成し、生成したFT粗油に含まれる炭化水素の炭素数に応じ、ガソリンとジェット燃料のどちらを製造するかを決定し、それに適した分留温度で分留を行った後、改質器による水素化精製工程を経てガソリン又はジェット燃料を製造する。
【0025】
水素供給部2及び二酸化炭素供給部3は、それぞれ水素ガス、二酸化炭素ガスを、圧縮器4に接続された配管に供給する。水素ガス及び二酸化炭素ガスの供給量は、不図示の流量センサ等により検出され、その検出値が制御部12に送信される。制御部12は、水素及び二酸化炭素がFT合成反応に適した所定の比率となるように供給量の制御を行う。本実施形態では、例えばモル比H/CO=3となるような供給量に制御される。また、図示を省略したが、FT合成反応終了時のパージ処理用として、窒素やアルゴン、ヘリウム等の不活性ガス供給部が別途、合成燃料製造装置1の上流側の配管に接続されており、適宜、FT反応用の原料ガスと入れ替え可能に構成されている。
【0026】
圧縮器4、加熱器5は、後述するように、本実施形態におけるFT合成反応を実施するのに適した高圧・高温状態を作り出すためのものである。圧縮器4は、供給された水素ガス及び二酸化炭素ガスが混合した原料ガスを圧縮して下流側の加熱器5に送出可能なものであれば、特に形式は限定されず、例えば電動モータにより駆動される遠心式のターボ圧縮器や電動ポンプ等を用いることができる。圧縮器4の下流側には不図示の圧力センサが設けられ、その検出値が制御部12へと送信される。本実施形態の圧縮器4は、原料ガスを3MPaG程度まで昇圧するように制御部12により制御される。また、加熱器5は、圧縮された原料ガスを昇温して下流側の反応器6に送出可能なものであればどのようなものであってもよい。加熱器の下流側には不図示の温度センサが設けられ、その検出値が制御部12へと送信される。本実施形態の加熱器5は、原料ガスを380℃程度まで昇温させるように制御部12により制御される。
【0027】
反応器6は、内部にFT合成反応に活性を示す触媒(以下、「FT反応触媒」という。)を収容し、FT合成反応により、反応器6を通過する原料ガスから炭化水素を含むFT粗油を生成する。本実施形態の反応器6内で行われる反応は、次式(1)で示される、二酸化炭素と水素を直接反応させて炭化水素と水を生成するダイレクトFT合成反応である。
nCO+mH→HC+HO …(1)
【0028】
本実施形態のFT反応触媒としては、触媒金属である鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、ジルコニウム(Zr)に助触媒としてナトリウム(Na)を加えたペレット状のナトリウム鉄触媒と、アルミノシリケートゼオライト(ZSM-5)を用いたゼオライト触媒を所定の割合で組み合わせたものを用いる。
【0029】
上記FT反応触媒を用いたダイレクトFT合成反応により生成されるFT粗油は、ガソリンの原料となる炭素数5~10程度の炭化水素や、ジェット燃料(航空タービン油)の原料となる炭素数8~16程度の炭化水素の他、より炭素数の多い重質の炭化水素を含む。また、メタン(CH)を含む炭素数2~4の軽質の炭化水素(C2-4)が気体で生成される。
【0030】
気液分離器7は、熱交換式の気液分離装置であり、反応器6を出て気液分離器7に流れ込むFT粗油、軽質炭化水素及び未反応ガスなどからなる気液二相の生成物を、液相のFT粗油と、気相のメタンを含む軽質炭化水素(C2-4)及び未反応ガス(CO,H)とに分離する。分離された液相のFT粗油は、下流側の分留器9へと送られる。一方、気相の軽質炭化水素及び未反応ガスは、上流側の圧縮器4へと戻され、原料ガスと混流されることによりリサイクルされる。
【0031】
芳香族検出器8は、気液分離器7から分留器9へと送られるFT粗油中の炭化水素における芳香族炭化水素の濃度CAを検出可能な装置であり、例えば市販のガスクロマトグラフ装置を用いることが可能である。芳香族炭化水素濃度CAの検出値は、制御部12へと送信され、後述する分留温度切替処理に用いられる。
【0032】
分留器9は、沸点の違いを利用して、炭素数5以上の炭化水素を含むFT粗油から所定範囲の炭素数の炭化水素を分離する。特に、本実施形態における分留器9は、分留温度Tfraを切り替えて設定することが可能な温度可変式の分留器である。分留器9には、不図示の熱電対等の温度センサが設けられており、その検出値が制御部12に送信される。制御部12は、温度センサの検出値が設定された分留温度Tfraに近づくように、不図示の熱源部の出力を制御する。なお、制御部12とは異なる分留器9用の制御部を別途設け、それにより分留温度Tfraを制御するように構成してもよい。
【0033】
本実施形態の分留器9では、分留温度Tfraとして、ガソリンを製造可能な炭素数5~10の炭化水素を分離するための第1分留温度Tfra1と、ジェット燃料を製造可能な炭素数8~16の炭化水素を分離するための第2分留温度Tfra2と、を切り替え可能に構成されている。
【0034】
第1分留温度Tfra1は、例えば炭素数10以下の炭化水素が気化する温度(例えば180℃前後)に設定される。分留器9の分留温度Tfraが第1分留温度Tfra1に設定されているときは、分留器9により分離された気体成分が、不図示の冷却器等により冷却された後、液体状で下流側の第1改質器10に送られ、残りの液体成分は廃棄又はクラック後にリサイクルされる。
【0035】
また、第2分留温度Tfra2は、例えば炭素数7以下の炭化水素が気化する温度(例えば100℃前後)に設定される。分留器9の分留温度Tfraが第2分留温度Tfra2に設定されているときは、分留器9により分離された気体成分は廃棄又は熱源として再利用され、残りの液体成分が下流側の第2改質器11に送られる。
【0036】
第1改質器10は、分留器9から供給された主に炭素数5~10の液体炭化水素に対し、水素供給部2から供給される水素ガスを用いて水素化処理を行った後、蒸留による精製を経て、合成燃料製品としてのガソリンを取り出す。
【0037】
第2改質器11は、分留器9から供給された主に炭素数8~16の液体炭化水素に対し、水素供給部2から供給される水素ガスを用いて水素化処理を行った後、蒸留による精製を経て、合成燃料製品としてのジェット燃料を取り出す。
【0038】
制御部12は、合成燃料製造装置1の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)であり、CPU、RAM、ROM及びI/Oインターフェース(いずれも図示せず)などから成るマイクロコンピュータで構成されている。本実施形態における制御部12は、少なくとも、水素供給部2、二酸化炭素供給部3、圧縮器4、加熱器5、芳香族検出器8、分留器9の動作を制御する。また、特に後述する分留温度切替処理を実行することにより、分留器9における分留温度を制御する。
【0039】
報知部13は、後述するように、芳香族検出器8が検出する芳香族炭化水素の濃度CAが所定のしきい値CAref2を下回った場合に、触媒の再生処理又は交換を行うべきであることを報知する。報知はどのような形式のものであってもよく、例えば、合成燃料製造装置1の不図示のコントロールパネル上でアイコンを表示する、インジケータを点灯させる、音声案内を行うなど、任意の形式を選択可能である。
【0040】
続いて、本実施形態における分留温度切替処理について説明する。上述のとおり、本実施形態では、ナトリウム鉄触媒とゼオライト触媒を混合させた触媒を用いてダイレクトFT合成反応を行う。このような触媒を用いた場合、FT合成反応により生成された炭素がゼオライトの細孔をコーキングさせてしまうこと、また、FT合成反応で生成した水(HO)がゼオライトの脱アルミニウム(Al)を促進することで構造破壊を引き起こすこと、などの要因から、ナトリウム鉄触媒と比較してゼオライト触媒の劣化が生じやすい。そして、ゼオライト触媒の劣化の程度に応じて、ダイレクトFT合成反応により生成される炭化水素の炭素数の分布が変化することが確認されている。
【0041】
図2は、本実施形態におけるFT反応触媒の構成の違いによる、生成された炭化水素の炭素数と炭化水素化合物の選択率の関係を示したグラフである。同図の(1)から(6)では、FT反応触媒中のゼオライト触媒の徐々に進む劣化状態を模擬するために、ナトリウム鉄触媒と混合するゼオライト触媒の量、品質及び配置を変化させてFT合成反応を実施した。同図の(1)はゼオライト触媒の活性が最も高い状態を模擬しており、(2)から(6)にかけて、ゼオライト触媒の劣化が徐々に進んだ状態を模擬している。なお、ここでは、FT反応触媒として、前段部と後段部に分かれた二段式の触媒を採用した。
【0042】
図2(1)では、前後段ともにナトリウム鉄触媒とゼオライト触媒を混合させたものを用い、ゼオライト触媒として、モル濃度0.2mol/Lの水酸化ナトリウムで表面処理したゼオライト用いた。
図2(2)では、前段部でのみナトリウム鉄触媒とゼオライト触媒を混合させたものを用い、ゼオライト触媒として、モル濃度0.2mol/Lの水酸化ナトリウムで表面処理したゼオライト用いた。後段部には、ナトリウム鉄触媒のみを用いた。
図2(3)では、前段部でのみナトリウム鉄触媒とゼオライト触媒を混合させたものを用い、図2(2)よりもゼオライト触媒の混合量を減少させた。ゼオライト触媒として、モル濃度0.2mol/Lの水酸化ナトリウムで表面処理したゼオライト用いた。後段部には、ナトリウム鉄触媒のみを用いた。
図2(4)では、前段部でのみナトリウム鉄触媒とゼオライト触媒を混合させたものを用い、図2(2)よりもゼオライト触媒の混合量を減少させた。ゼオライト触媒として、モル濃度0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで表面処理したゼオライト用いた。後段部には、ナトリウム鉄触媒のみを用いた。
図2(5)では、後段部でのみナトリウム鉄触媒とゼオライト触媒を混合させたものを用い、ゼオライト触媒として、モル濃度0.2mol/Lの水酸化ナトリウムで表面処理したゼオライト用いた。前段部には、ナトリウム鉄触媒のみを用いた。
図2(6)では、後段部でのみナトリウム鉄触媒とゼオライト触媒を混合させたものを用い、ゼオライト触媒として、モル濃度0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで表面処理したゼオライト用いた。前段部には、ナトリウム鉄触媒のみを用いた。
【0043】
図2に示すように、(1)から(6)にかけて、ゼオライト触媒の活性が小さくなるにつれて、FT合成反応により生成される炭化水素の炭素数の分布が変化しており、活性が高いほど、炭素数の小さな炭化水素が多く生成され、活性が下がるにつれて、炭素数の大きな炭化水素が多く生成されていることがわかる。
【0044】
また、生成された炭化水素における炭化水素化合物の選択率を見ると、ゼオライト触媒の活性が最も高い(1)では、芳香族炭化水素(アロマ)の生成割合が32wt%と最も高く、ゼオライト触媒の活性が最も低い(6)では、芳香族炭化水素(アロマ)の生成割合が3wt%と最も低くなっている。なお、芳香族炭化水素の割合は、炭素数5以上の成分から算出した。ゼオライト触媒の活性が高いほど、芳香族炭化水素の生成割合が高くなる理由は、ゼオライトによる高級炭化水素のクラッキング及び脱水素反応と、低級炭化水素のオリゴマー化及び脱水素反応と、による環状化反応が進むためであると考えられる。
【0045】
図3は、図2の(1)~(6)に基づき算出した、FT合成反応により生成された炭化水素の液体成分(すなわち、炭素数5以上の炭化水素を含むFT粗油)中の芳香族の割合と、炭素数5~7の炭化水素の割合及び炭素数8~16の炭化水素の割合の関係を示すグラフである。同図に示すように、FT粗油中の芳香族炭化水素の割合が小さくなるほど(すなわち、ゼオライト触媒の劣化が進行するほど)、ジェット燃料の製造に適した炭素数8~16の炭化水素の生成割合が高くなることが読み取れる。
【0046】
したがって、FT粗油中の芳香族濃度が高いとき(すなわち、ゼオライト触媒の活性が高いとき)は、ガソリンの製造に適した炭素数(炭素数5~10程度)の炭化水素を分離してガソリンを製造し、FT粗油中の芳香族濃度が小さいとき(すなわち、ゼオライト触媒の活性が低いとき)は、ジェット燃料の製造に適した炭素数(炭素数8~16程度)の炭化水素を分離してジェット燃料を製造するのが効率的であると考えられる。
【0047】
図4は、図2の(1)~(6)に基づき算出した、FT粗油中の芳香族炭化水素の割合と、炭素数8~16の炭化水素中の芳香族炭化水素の割合の関係を示すグラフである。回帰直線の傾きは2.1804であり、決定係数Rは0.9991と非常に高い数値を示した。したがって、FT粗油中の芳香族炭化水素濃度CAを測定することで、ジェット燃料の製造に用いられる炭素数8~16の炭化水素における芳香族炭化水素の濃度を高精度で推定することが可能である。
【0048】
現在、バイオジェット燃料の成分は国際規格であるASTM D7566に準拠することが求められている。同規格によれば、ジェット燃料に用いる炭素数8~16の炭化水素中、芳香族成分が8wt%以上、25wt%以下含まれることが必要とされている。これらの数値を図4のグラフを用いてFT粗油中の芳香族割合に換算すると、同グラフに示したとおり、3.7wt%以上、11.5wt%以下という数値となる。
【0049】
なお、現在、市場に流通しているジェット燃料の芳香族成分は、20wt%ほどとなっている。これを図4のグラフを用いてFT粗油中の芳香族割合に換算すると、9.2wt%という数値となる。したがって、FT粗油中の芳香族割合が9.2±1wt%ほどの範囲内となるのが、ジェット燃料の製造のためには最も好ましいということができる。
【0050】
これらの実験データに基づけば、FT合成反応により生成されるFT粗油中の芳香族炭化水素の濃度CAが11.5wt%を上回っている間は、ガソリンの製造に適した炭素数の炭化水素を取得し、FT粗油中の芳香族炭化水素の濃度CAが11.5wt%以下となった時点から、ジェット燃料の製造に適した炭素数の炭化水素を取得するのが効率的であるとわかる。また、FT粗油中の芳香族炭化水素の濃度CAが3.7wt%未満となった場合、ASTM D7566に準拠したジェット燃料を製造することができないため、ゼオライト触媒の再生処理又は交換が必要であると判断できる。
【0051】
本実施形態の合成燃料製造装置1では、こうした知見に基づき、分留器9における分留温度Tfraを切り替える分留温度切替処理を実行する。図5は、本実施形態における分留温度切替処理を示すフローチャートである。当該フローチャートに示す処理は、制御部12が有するプロセッサがROM等の記憶装置に格納されるプログラムをRAM等のメモリに開放することで実行される。本処理は、合成燃料製造装置1の通常運転中、例えば所定の時間間隔で、繰り返し実行される。
【0052】
まず、ステップ501(「S501」と図示。以下同じ)において、芳香族検出器8により、FT合成反応により生成されたFT粗油中の芳香族炭化水素の濃度CAが検出される。次いで、ステップ502において、検出された芳香族濃度CAが所定の第1しきい値濃度CAref1を上回っているか否かを判別する。
【0053】
第1しきい値濃度CAref1は、FT粗油中の芳香族炭化水素が当該濃度である場合の炭化水素分布と、ASTM D7566により求められるジェット燃料中の芳香族成分濃度とに基づき、製造する合成燃料種別をガソリンからジェット燃料に切り替えるのに適した芳香族濃度として設定される。本実施形態においては、上述の実験データに基づき、第1しきい値濃度CAref1を11.5±1wt%の範囲内で設定する。なお、第1しきい値濃度CAref1=11.5wt%とするのが最も好ましい。
【0054】
ステップ502の判別結果がYESで、FT粗油から検出された芳香族濃度CAが第1しきい値濃度CAref1を上回っている場合、FT粗油中の炭化水素分布及び芳香族濃度CAが、ガソリンの製造に適していると判定し、ステップ503に進む。ステップ503では、分留器9の分留温度Tfraを、ガソリンを製造可能な炭素数5~10の炭化水素を分離するための第1分留温度Tfra1に設定し、本処理を終了する。
【0055】
一方、ステップ502の判別結果がNOで、FT粗油から検出された芳香族濃度CAが第1しきい値濃度CAref1以下である場合、FT粗油中の炭化水素分布及び芳香族濃度CAが、ジェット燃料の製造に適していると判定し、ステップ504に進む。ステップ504では、分留器9の分留温度Tfraを、ジェット燃料を製造可能な炭素数8~16の炭化水素を分離するための第2分留温度Tfra2に設定し、ステップ505に進む。
【0056】
ステップ505では、検出された芳香族濃度CAが所定の第2しきい値濃度CAref2を下回っているか否かを判別する。第2しきい値濃度CAref2は、FT粗油中の芳香族炭化水素が当該濃度を下回った場合、製造されるジェット燃料中の芳香族成分がASTM D7566により求められるジェット燃料中の最小限の芳香族成分濃度を下回ってしまう芳香族濃度として設定される。本実施形態においては、上述の実験データに基づき、第2しきい値濃度CAref2を3.7±1wt%の範囲で設定する。なお、第2しきい値濃度CAref2=3.7wt%とするのが最も好ましい。
【0057】
ステップ505の判別結果がNOで、FT粗油から検出された芳香族濃度CAが第2しきい値濃度CAref2以上である場合、製造されるジェット燃料中の芳香族濃度はASTM D7566により要求される範囲内であると判定し、そのまま本処理を終了する。
【0058】
一方、ステップ505の判別結果がYESで、FT粗油から検出された芳香族濃度CAが第2しきい値濃度CAref2を下回っている場合、製造されるジェット燃料中の芳香族濃度はASTM D7566の要求を満たさないと判定し、報知部13によりゼオライト触媒の再生処理又は交換が必要であることを報知し、本処理を終了する。
【0059】
このように、本実施形態の合成燃料製造装置1によれば、FT合成反応によって生成されたFT粗油に含まれる芳香族炭化水素の濃度CAを検出し、それに応じて分留器9の分留温度Tfraを変化させる。こうした構成により、芳香族炭化水素の濃度CAに基づき製造に適した合成燃料の種別を決定し、分留温度Tfraをその合成燃料の製造に用いられる炭化水素の分留に適した温度に変化させることで、効率よく分留器を稼働させることができるとともに、効率よく合成燃料を製造することができる。
【0060】
特に、分留器9が、分留温度を切り替え可能な温度可変式の分留器であるので、検出された芳香族炭化水素の濃度CAに応じて、分留温度Tfraを効率よく合成燃料を製造可能な温度へと変化させることができる。これにより、無駄なエネルギー消費を抑えながら効率よく分留器を稼働させることができ、効率よく合成燃料を製造することができる。
【0061】
また、反応器6と芳香族検出器8の間に気液分離器7を設けたので、FT合成反応によりFT粗油とともに主に気体で発生する軽質の炭化水素や未反応ガスを回収し、FT粗油と分離することができる。また、回収した軽質炭化水素や未反応ガスは、反応器6の上流に戻してリサイクルすることにより、合成燃料として使用可能な炭化水素の収率を向上させることができる。
【0062】
さらに、検出された芳香族炭化水素の濃度CAをゼオライト触媒の劣化の進行度を示す指標として捉え、濃度CAが第2しきい値濃度CAref2を下回った場合に、FT反応触媒の再生処理又は交換が必要であることを報知するので、芳香族検知器7を利用してゼオライト触媒の再生/交換時期を知ることができる。
【0063】
続いて、図6を参照して、本発明の第2実施形態に係る合成燃料製造装置100について説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上述の実施形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0064】
上述した実施形態に係る合成燃料製造装置1では、検出した芳香族炭化水素の濃度CAに応じて分留器による分留温度Tfraを変化させるための構成として、複数の分留温度Tfra1、Tfra2を切り替えて設定することが可能な温度可変式の分留器9を採用したが、第2実施形態に係る合成燃料製造装置100では、分留器9の代わりに、それぞれが異なる分留温度Tfra1、Tfra2に設定された複数の分留器91、92を採用したことを特徴としている。
【0065】
第1分留器91は、分留温度Tfraがガソリンの製造に適した上述の第1分留温度Tfra1に設定されており、第1分留器91により分離された主に炭素数5~10の炭化水素からなる気体成分が、不図示の冷却器等により冷却された後、液体状で下流側の第1改質器10に送られ、残りの液体成分は廃棄又はクラック後にリサイクルされる。
【0066】
一方、第2分留器92は、分留温度Tfraがジェット燃料の製造に適した上述の第2分留温度Tfra2に設定されており、第2分留器92により分離された主に炭素数5~7の炭化水素からなる気体成分は廃棄又は熱源として再利用され、残りの液体成分が下流側の第2改質器11に送られる。
【0067】
これら複数の分留器91、92は気液分離器7の下流側から分岐する分岐部を有する分岐配管にそれぞれ接続されており、分岐部には切替弁101が設けられている。切替弁101は、第1分留器91に接続する分岐配管又は第2分留器92に接続する分岐配管のいずれか一方のみを選択的に気液分離器7と連通させるように切り替え可能に構成されている。
【0068】
切替弁101の流路切替の動作は、制御部12により制御される。合成燃料製造装置100における分留温度切替処理は、図5で説明した制御とほぼ同様であるが、ステップ503及びステップ504における処理のみが異なる。すなわち、ステップ502の判別結果がYESで、FT粗油から検出された芳香族濃度CAが第1しきい値濃度CAref1を上回っている場合、続くステップにおいて、切替弁101を第1分留器91側に切り替える処理を行う。一方、ステップ502の判別結果がNOで、FT粗油から検出された芳香族濃度CAが第1しきい値濃度CAref1以下である場合、続くステップにおいて、切替弁101を第2分留器92側に切り替える処理を行う。
【0069】
このように、合成燃料製造装置100によれば、互いに異なる分留温度Tfra1、Tfra2に設定された複数の分留器91、92が用いられ、検出された芳香族炭化水素の濃度CAに応じて、切替弁101により上流側の気液分離器7や反応器6と連通させる配管を切り替えることにより、用いられる分留器が変わり、分留温度が変化する。これにより、効率よく合成燃料を製造可能な分留温度で分留を行うことができる。したがって、無駄なエネルギー消費を抑えながら効率よく分留器を稼働させることができ、効率よく合成燃料を製造することができる。
【0070】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。また、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…合成燃料製造装置
6…反応器
7…気液分離器(熱交換式気液分離装置)
8…芳香族検出器(芳香族検出手段)
9…分留器
10…第1改質器(改質器)
11…第2改質器(改質器)
13…報知部
91…第1分留器(分留器)
92…第2分留器(分留器)
101…切替弁
CA…芳香族炭化水素の濃度
Tfra…分留温度
Tfra1…第1分留温度
Tfra2…第2分留温度

図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-08-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正の内容】
図4