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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171385
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】金型設計システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20241205BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20241205BHJP
   B29C 33/00 20060101ALI20241205BHJP
   B30B 13/00 20060101ALI20241205BHJP
   B21D 22/00 20060101ALI20241205BHJP
   B21D 37/20 20060101ALI20241205BHJP
   G06F 113/22 20200101ALN20241205BHJP
【FI】
G06F30/10 100
B29C45/26
B29C33/00
B30B13/00 F
B21D22/00
B21D37/20 Z
G06F113:22
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088352
(22)【出願日】2023-05-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】591214527
【氏名又は名称】株式会社ジーテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 富男
(72)【発明者】
【氏名】柿崎 明
(72)【発明者】
【氏名】糸井 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】青木 理恵
【テーマコード(参考)】
4E050
4E090
4E137
4F202
5B146
【Fターム(参考)】
4E050JA01
4E050JC05
4E050JD03
4E090EA01
4E090EB04
4E090HA01
4E137AA17
4E137BB01
4E137CA09
4E137CA24
4E137CA26
4E137EA01
4E137EA06
4F202AM23
4F202AR12
4F202CA11
4F202CA30
4F202CB01
4F202CD28
4F202CK12
5B146AA06
5B146EA07
5B146EA15
(57)【要約】
【課題】 金型設計のコストダウンが可能な金型設計システムを提供することを課題とする。
【解決手段】 金型設計システム11は、コンピュータ13を備え、複数の形状データを有する金型データを記憶部13aに記憶し、100%を超える又は100%未満である所望の倍率で金型データを使用者に拡大又は縮小させるために、所定の基準点(Bo)を基準として所望の倍率で拡大又は縮小する第1形状データ(30B)を使用者にディスプレイ装置16、入力装置15等を介して設定させる。また金型設計システム11は、複数の形状データのうち、所定の基準点(Bo)又は第1形状データ(30B)を基準として100%の倍率で移動する第2形状データ(36,39)を使用者に設定させる。金型設計システム11は、必要に応じて、第2形状データのうち、移動後の位置を調整するU溝36、リフティングバー39等の付属部の形状データ使用者に設定させる。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準の金型の倍率を100%とする時に、この倍率と異なる倍率を有する新しい金型を設計するための金型設計システムであって、
複数の形状データを有する基準の金型データを記憶し、100%を超える又は100%未満である所望の倍率で前記金型データを使用者に拡大又は縮小させるために、前記複数の形状データのうち、所定の基準点を基準として前記所望の倍率で拡大又は縮小する第1形状データを新しい金型データが有するように前記使用者に設定させるとともに、
前記複数の形状データのうち、前記所定の基準点又は前記第1形状データを基準として100%の倍率で移動する第2形状データを前記新しい金型データが有するように前記使用者に設定させ、
前記所定の基準点は、位置を移動することが制限されることを特徴とする金型設計システム。
【請求項2】
請求項1記載の金型設計システムであって、
前記第1形状データは、前記基準の金型を構成するワーク受け部、インサート及び型構造部の少なくとも1つの形状データを含み、
前記第2形状データは、前記基準の金型を構成する付属部の形状データを含み、前記付属部は、カム、スクラップカッタ、スプリング、U溝、リフティングバー、ロケーション及びピアスパンチの少なくとも1つを有することを特徴とする金型設計システム。
【請求項3】
請求項1記載の金型設計システムであって、
前記第2形状データは、複数の第2形状データであり、
前記複数の第2形状データのうち少なくとも1つは、前記所定の基準点を基準として移動した後の位置を調整する位置調整形状データとして前記使用者に設定させることを特徴とする金型設計システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の金型設計システムであって、
前記基準の金型データは、トランスファープレス金型を製造するための金型データであり、
前記所定の基準点は、前記トランスファープレス金型の中心に対応することを特徴とする金型設計システム。
【請求項5】
請求項1至3のいずれか1項に記載の金型設計システムであって、
前記所望の倍率は、拡大時に100%を超え且つ120%以下の範囲内とし、及び/又は、縮小時に80%以上且つ100%未満の範囲内とすることを特徴とする金型設計システム。
【請求項6】
請求項3に記載の金型設計システムであって、
前記位置調整形状データは、前記所定の基準点を基準として前記所望の倍率に基づく移動量で移動した位置からの移動制限を解除され、その後、調整された位置まで移動させ、その後、前記所定の基準点を基準として位置を移動するように設定されることを特徴とする金型設計システム。
【請求項7】
請求項1乃至3に記載の金型設計システムであって、
前記第1形状データと前記第2形状データを表示させ、前記第1形状データを前記所望の倍率で拡大又は縮小することで前記第2形状データを移動することを特徴とする金型設計システム。
【請求項8】
請求項7に記載の金型設計システムであって、
マウスの操作に応じて、リアルタイムに基準の金型データの外形寸法枠を拡大又は縮小し、前記外形寸法枠並びに前記第1及び前記第2の形状データを表示させることを特徴とする金型設計システム。
【請求項9】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の金型設計システムであって、
前記基準の金型と前記基準の金型の隣の金型とは、トラスファープレスに一緒に用いられ、前記所望の倍率の最大値である前記基準の金型の最大寸法は、前記隣の金型の配置位置によって制限されることを特徴とする金型設計システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CAD(コンピュータ支援設計:Computer Aided Design)を用いた金型設計システムに関する。
【背景技術】
【0002】
CADを用いた金型設計システムは、各種のシステムが実用に供されている。(例えば、特許文献1(図5及び図10)参照)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図8(a)、(b)は従来の金型設計システムを説明する図である。
図8(a)に示すように、金型101は、製品の形状に倣った形態の製品形状成形部102と、この製品形状成形部102を支える型構造部103とからなる。
【0004】
型構造部103には、下型に上型を係合させるガイドポスト104、ワーク(成形などの加工が施される鋼薄板。以下同様。)を折り曲げる役割を果たすカム105、ワークの不要部分を切断するスクラップカッタ106、ワークに加わる力を均一化するスプリング107などの付属部が付属される。
【0005】
そして、製品形状成形部102の中心部が、中心O1と定義され(特許文献1、段落0044)、製品形状成形部102に、時計回りにP1~P6~P11で示す特徴点が付けられる。
【0006】
これらの特徴点P1~P11を基準にして、製品形状成形部102、型構造部103及び付属部の座標が二次元(又は三次元)的に移動される。
【0007】
結果、例えば、図8(b)に示す新しい金型201が得られる。新しい金型201は、新しい製品形状成形部202と、新しい型構造部203とからなる。
型構造部203には、新しいガイドポスト204、新しいカム205、新しいスクラップカッタ206、新しいスプリング207などの付属部が付属される。
【0008】
すなわち、特許文献1は、製品形状成形部に複数の特徴点を付し、これらの特徴点を基準とした新たな型構造部データを自動的に作ることを特徴とする金型設計システムである。この金型設計システムにより、製品形状成形部の全てをCADにより作成することができるという利点がある。
【0009】
反面、特許文献1の技術には、次に述べるような欠点がある。
図8(a)と図8(b)から明らかなように、特許文献1の技術によると、新しいカム205は、新しい製品形状成形部202の伸縮率と同じ比率で、縮小されている。
新しいスクラップカッタ206、新しいスプリング207などの付属部も同様に、新しい製品形状成形部202の伸縮率と同じ比率で、縮小されている。
【0010】
カムを例にとると、新しいカム205はカム105に対して1mm単位又は0.1mm単位で、各寸法が変化する。
新しいカム205を製造するために、1mm単位又は0.1mm単位で、各寸法を修正した新しい図面を用意する必要がある。
すなわち、カム105の図面の他に、新しいカム205の図面を用意する必要があり、図面の作成コストが嵩む。新しいスクラップカッタ206、新しいスプリング207などの付属部についても同様である。
【0011】
すなわち、特許文献1の技術では、金型設計のコストが嵩む。
金型の製造コストの低減が望まれる中、金型設計のコストダウンが可能な金型設計システムが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平8-287115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、金型設計のコストダウンが可能な金型設計システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、基準の金型の倍率を100%とする時に、この倍率と異なる倍率を有する新しい金型を設計するための金型設計システムであって、
複数の形状データを有する基準の金型データを記憶し、100%を超える又は100%未満である所望の倍率で前記金型データを使用者に拡大又は縮小させるために、前記複数の形状データのうち、所定の基準点を基準として前記所望の倍率で拡大又は縮小する第1形状データを新しい金型データが有するように前記使用者に設定させるとともに、
前記複数の形状データのうち、前記所定の基準点又は前記第1形状データを基準として100%の倍率で移動する第2形状データを前記新しい金型データが有するように前記使用者に設定させ、
前記所定の基準点は、位置を移動することが制限されることを特徴とする金型設計システムを提供する。
【0015】
好ましくは、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、
前記第1形状データは、前記基準の金型を構成するワーク受け部、インサート及び型構造部の少なくとも1つの形状データを含み、
前記第2形状データは、前記基準の金型を構成する付属部の形状データを含み、前記付属部は、カム、スクラップカッタ、スプリング、U溝、リフティングバー、ロケーション及びピアスパンチの少なくとも1つを有する。
【0016】
好ましくは、請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において、
前記第2形状データは、複数の第2形状データであり、
前記複数の第2形状データのうち少なくとも1つは、前記所定の基準点を基準として移動した後の位置を調整する位置調整形状データとして前記使用者に設定させる。
【0017】
好ましくは、請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に係る発明において、
前記基準の金型データは、トランスファープレス金型を製造するための金型データであり、
前記所定の基準点は、前記トランスファープレス金型の中心に対応する。
【0018】
好ましくは、請求項5に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に係る発明において、
前記所望の倍率は、拡大時に100%を超え且つ120%以下の範囲内とし、及び/又は、縮小時に80%以上且つ100%未満の範囲内とする。
【0019】
好ましくは、請求項6に係る発明は、請求項3に係る発明において、
前記位置調整形状データは、前記所定の基準点を基準として前記所望の倍率に基づく移動量で移動した位置からの移動制限を解除され、その後、調整された位置まで移動させ、その後、前記所定の基準点を基準として位置を移動するように設定される。
【0020】
好ましくは、請求項7に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に係る発明において、
前記第1形状データと前記第2形状データを表示させ、前記第1形状データを前記所望の倍率で拡大又は縮小することで前記第2形状データを移動する。
【0021】
好ましくは、請求項8に係る発明は、請求項7に係る発明において、
マウスの操作に応じて、リアルタイムに基準の金型データの外形寸法枠を拡大又は縮小し、前記外形寸法枠並びに前記第1及び前記第2の形状データを表示させる。
【0022】
好ましくは、請求項9に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に係る発明において、
前記基準の金型と前記基準の金型の隣の金型とは、トラスファープレスに一緒に用いられ、前記所望の倍率の最大値である前記基準の金型の最大寸法は、前記隣の金型の配置位置によって制限される。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る発明では、基準の金型データを構成する複数の形状データのうち、第1形状データは、倍率α倍だけ拡大又は縮小される。
一方、複数の形状データのうち、第2形状データは、倍率αに拘わらず、拡大も縮小もしない。すなわち、複数の形状データのうち、第2形状データは、位置を移動させるだけでよく、第2形状データを拡大又は縮小するときに必要な、1mm単位又は0.1mm単位で、各寸法を修正する設計を要しない。
結果、基準の金型の倍率と異なる倍率を有する新しい金型が単純な操作で容易に設定され、金型設計のコストダウンが図られる。
なお、基準の金型データには、例えば3次元の設計データ(CADデータ)が1例として含まれてもよく、また、基準の金型データには、例えばディスプレイ装置で立体的に基準の金型の形状を表示可能する基準のモデルデータが1例として含まれてもよい。
【0024】
請求項2に係る発明では、カム、スクラップカッタ、スプリング、U溝、リフティングバー、ロケーション及びピアスパンチ等の付属部は、倍率αに拘わらず、拡大も縮小もせず、基準の金型を構成するワーク受け部、インサート及び型構造部等の拡大又は縮小に伴って、所定の基準点を基準として100%の倍率で移動する。
すなわち、付属部の移動において、面倒なデータ入力や修正を削減できる。
また、カム、スクラップカッタ、スプリング、U溝、リフティングバー、ロケーション及びピアスパンチ等の付属部は、形状が同じであるので、新規に、付属品を製造する必要がない。付属品を規格部品とする場合に、付属品を安価に購入することができる。
【0025】
請求項3に係る発明では、第2形状データ(典型的には、付属部)の移動において、ワーク受け部、インサート及び型構造部等の拡大又は縮小に伴って、所定の基準点を基準として移動するだけでは不十分である場合、例えばU溝、リフティングバー等の第2形状データ(位置調整形状データ)は、移動後の位置を調整することができる。
【0026】
請求項4に係る発明では、トランスファープレス金型を製造するための金型データ設計時にコストダウンが図られる。
【0027】
請求項5に係る発明では、第1形状データの拡大時の倍率αの上限は120%までとし、第1形状データの縮小時の倍率αの下限は80%までとすることで、倍率αに拘わらず、拡大も縮小もしない第2形状データに対する新しい金型の強度低下を防止することができる。
【0028】
請求項6に係る発明では、位置調整形状データ(所定の基準点を基準として移動する第2形状データ)は、所定の基準点を基準とする拘束を解除して、その位置を調整し、調整の終了後、所定の基準点を基準とする拘束を再び設定する。これにより、一度設定された倍率αが変更する時に、その倍率αの変更に伴って、所定の基準点を基準として第2形状データを移動させることができる。
【0029】
請求項7に係る発明では、第1形状データの伸縮と第2形状データの移動を使用者が視覚的に確認しながら、倍率αを設定することができる。
【0030】
請求項8に係る発明では、基準の金型データの外形寸法の拡大又は縮小を使用者がマウスの操作に応じてリアルタイムに視覚的にその操作を容易に確認しながら、倍率αを設定することができる。
【0031】
請求項9に係る発明では、拡大時の倍率αの上限である最大寸法は、隣の金型との関係で、制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】トリム用下型の斜視図である。
図2】トランスファープレス金型を説明する図である。
図3】(a)はモデル型を説明する図であり、(b)は新しい型を説明する図である。
図4】(a)はCADシステムを説明する図であり、(b)はCADシステムを構成するコンピュータを説明する図である。
図5】自由伸縮機能を説明する図である。
図6】部品移動機能を説明する図である。
図7】(a)~(c)は移動調整機能を説明する図である。
図8】(a)、(b)は従来の金型設計システムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例0034】
図1に示すように、金型10は、例えば、トリム用下型30である。
トリム用下型30は、ワークを受ける(又は支える)ワーク受け部31と、横長の略矩形を呈しワーク受け部31を支える型構造部32とからなる。
【0035】
型構造部32には、例えば、次に述べるような付属部34が付属される。
付属部34は、水平方向の位置決めに用いるロケーション35及びU溝36、上下動作を水平動作へ変換するカム37、ワークの不要部分を切断するスクラップカッタ38、四隅に配置されるリフティングバー39、その他である。
【0036】
図2に示すように、トランスファープレスにおいては、ワークの進行方向に沿って、ドロー用下型20と、トリム用下型30と、ピアス用下型40と、ベンド用下型50とがこの順に配置される。なお、図2では見やすいように隣同士の金型は、離して描いたが、正しくは接近した状態で密に配置される。密に配置することにより、1基のプレス機内に全ての金型20、30、40、50を収納することができる。
【0037】
ドロー用下型20は、ブランク材と呼ばれるワークを製品形状に絞る絞り加工に用いられる。絞り加工により、平板が三次元的に絞られた形態に成形される。
ドロー用下型20は、製品の形状に倣った形態の製品形状成形部21と、この製品形状成形部21を支える型構造部22とを要部とする型である。
【0038】
型構造部22には、付属部が備えられる。そして型構造部22は、製品形状成形部21より縦横寸法が大きな矩形形状を呈する。
以下、製品形状成形部21の外郭線(外径輪郭線)をプロファイル(profile、プロフィール)23と呼ぶ。このプロファイル23は製品の外郭線に酷似している。
【0039】
絞り加工が終わると、トランスファープレス機に付帯する搬送設備でワークが隣のトリム用下型30へ移される。並行して空いたドロー用下型20へ平板状のワークが投入される。
【0040】
トリム用下型30は、絞られたワークの縁を切断する縁切り加工に用いられる。
トリム用下型30は、ワーク受け部31と、このワーク受け部31を支える型構造部32とを要部とする型である。
【0041】
型構造部32には、付属部(ロケーション35、U溝36、カム37、スクラップカッタ38、リフティングバー39)が備えられる。型構造部32は、ワーク受け部31より縦横寸法が大きな矩形形状を呈する。
ワーク受け部31の外郭線であるプロファイル33は、製品の外郭線に酷似している。
【0042】
トリム加工でワークから分離された縁(縁材)は、スクラップカッタ38で所定の長さに切断され、機外へ排出される。
【0043】
トリム加工が終わると、搬送設備でワークが隣のピアス用下型40へ移される。並行して空いたトリム用下型30へ絞られたワークが投入される。
【0044】
ピアス用下型40は、縁切りされたワークを受けるワーク受け部41と、このワーク受け部41を支える型構造部42とからなる。
型構造部42には、付属部が備えられる。型構造部42は、ワーク受け部41より縦横寸法が大きな矩形形状を呈する。
【0045】
ピアス用下型40は、ワークの所定箇所にピアスパンチで穴を開ける穴開け加工に用いられる。
ピアスパンチの数と位置により、ワーク受け部41のプロファイル43が決まるため、ピアス用下型40におけるプロファイル43は、ドロー用下型20におけるプロファイル23とかなり異なる。
【0046】
穴開け加工が終わると、搬送設備でワークが隣のベンド用下型50へ移される。並行して空いたピアス用下型40へ縁切りされたワークが投入される。
【0047】
ベンド用下型50は、ピアス加工が施されたワークを受けるワーク受け部51と、このワーク受け部51を支える型構造部52とからなる。
型構造部52には、付属部が備えられる。型構造部52は、ワーク受け部51より縦横寸法が大きな矩形形状を呈する。
【0048】
ベンド用下型50は、最終製品形状にするためワークの所定箇所(主に縁)を曲げる曲げ加工に用いられる。
曲げを施す位置や曲げの程度により、ワーク受け部51のプロファイル53が決まるため、ベンド用下型50におけるプロファイル53は、ドロー用下型20におけるプロファイル23と大きく異なる。
【0049】
以上の説明において、種々の用語が列挙された。
これらの用語を、従来技術で掲げた特許文献1における用語と対比したものを表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
従来技術の製品形状成形部に、本発明の製品形状成形部とワーク受け部とが対応する。
なお、製品形状成形部又はワーク受け部には、切刃や曲刃などのインサート(インサート金具やインサート鋼材とも呼ばれる。)が含まれる。
【0052】
従来技術の付属部は、カム、スクラップカッタ及びスプリングであったが、本発明の付属部は、カム、スクラップカッタ及びスプリングに加えて、U溝、リフティングバー、ロケーション、ピアスパンチ、その他からなる。
【0053】
図3(a)は図1に示すトリム用下型30の底面図である。横長矩形の型構造部32は、複数本のリブ32aで区画されている。これらの区画された部位が肉抜き部となるため、型構造部32は軽量化が計られる。四隅にリフティングバー39が見え、左辺及び右辺にU溝36が見える。
【0054】
図3(a)に示すトリム用下型30を、ベース型30Bと読み替える。
ベース型30Bの横寸法をBLh、縦寸法をBLv、リブ32aの厚さをBt、中心をBo、リフティングバー39の径をBy、U溝36の溝幅をBuとする。
ここで中心Boは、BLhの1/2で且つBLvの1/2の位置に定める。
従来は製品形状成形部の中心を中心としていたが、本発明では型構造部32の中心を中心と定める。型構造部32の中心を中心と定めると、XY平面上での伸縮や移動が型構造部32の中心を基準に対称に行える。結果、金型の構造のバランスが良好になり、金型に付属する付属部の管理が容易になる。
【0055】
以上に述べたベース型30Bを、ベースとして所定の伸縮率で伸縮した新しい型を設計することが、本発明に係る金型設計システムにより可能となる。
伸縮率は、倍率αと読み替える。倍率αが100%を超えると拡大され、倍率αが100%未満であると、縮小される。
【0056】
本発明に係る金型設計システムは後述するが、この金型設計システムにより、図3(b)に示す新しい型30Nが設計される。
図3(b)において、新しい型30Nの横寸法をNLh、縦寸法をNLv、リブ32aの厚さをNt、中心をNo、リフティングバー39の径をNy、U溝36の溝幅をNuとする。
【0057】
本発明では、NLhは、BLh×αの算式により定める。同様に、NLvは、BLv×αの算式により定める。Ntは、Bt×αの算式により定める。同様に、製品形状成形部(図2、符号31)は、α倍する。本発明に係る金型設計システムは、製品形状成形部をα倍し新しい金型データを作成する金型設計システムである。
【0058】
対して、中心Noは、NLhの1/2で且つNLvの1/2の位置に定める。すなわち、中心の位置は、新しい型30Nの中心に定めることに、変わりはない。
【0059】
また、リフティングバー39の径Nyは、Byと同一とし、U溝36の溝幅Nuは、Buと同一とする。
【0060】
倍率αが80%を下回ると、第1形状データは縮小されるが、第2形状データが縮小されないので干渉するおそれがある。また、リブ厚が薄くなりすぎ変形のおそれがあり、金型の強度を再検討する必要が生じる。また、倍率αが120%を超えると、拡大された第1形状データと拡大しない第2形状データとの位置バランスが悪くなるため、第2形状データの修正が必要になる。また、リブピッチも広くなりすぎ撓みのおそれがあり、金型の強度を再検討する必要が生じる。そのため、倍率αは80%以上120%以下が好ましい。
プレス機の加圧力が高い場合、金型のリブ厚をある程度保持する必要性や、リブピッチを考慮すると倍率αは90%以上110%以下がさらに好ましい。これは拡大または縮小させたデータをそのまま修正せずに金型データとして使用するためである。
【0061】
すなわち、本発明の金型設計システムでは、先に述べた表1において、製品形状成形部(又はワーク受け部)及び型構造部は、倍率αだけ拡大又は縮小される。
一方、表1において、付属部は、倍率αに拘わらず、拡大も縮小もしない。
結果、図3(b)に示す新しい型30Nが容易に設定される。
【0062】
以下に、本発明の金型設計システムを詳しく述べる。
図4(a)は例えば図1に示すトリム用下型30等の金型10を設計するためのCADシステム11(金型設計システム)の構成例の説明図であり、CADシステム11の構成は、周知のCADシステムと同様の構成を採用することができる。
CADシステム11は、例えば、イーサネット(登録商標)等のネットワーク12に接続されているコンピュータ13と、コンピュータ13に接続されているディスプレイ装置16と、キーボード、マウス等の入力装置15とを含む。
【0063】
図4(a)に示すように、コンピュータ13は、例えばトランスファープレスの完成した複数の金型を構成する金型データを記憶し、複数の金型データのうち所望の金型データを呼び出すためのするための外部記憶装置14又はデータベース(金型データベース)を有することができる。
またコンピュータ13は、例えば、金型データから金型10を製造するために必要な出図を出力可能な図形出力装置17を有することができる。
なお、コンピュータ13には周知のCAM(コンピュータ援用生産:Computer Aided Manufacturing)システムが接続されてもよい。
【0064】
図4(b)は図4(a)のCADシステム11を構成するコンピュータ13の構成例の説明図(機能ブロック図)であり、周知のコンピュータと同様の構成を含むことができる。
図4(b)に示すように、コンピュータ13は、例えば、ROM、RAM、HDD、SSD等で構成される記憶部13aと、CPU、MPU等で構成される処理部13bと、USBポート、ディスプレイポート、イーサネット(登録商標)ポート等の種々のデータを入出力し、種々の周辺機器を接続するためのインターフェース部13cとを含む。
【0065】
ROMはCPU又はMPUに所定の動作を実行させるプログラムを記憶し、RAMはCPU又はMPUのワーク領域を形成することができる。また、HDD又はSSDはコンピュータ13又は処理部13bにインストール又は設定されたCADアプリケーションを実行するために必要なデータを記憶することができる。
【0066】
CADアプリケーションは周知のCADアプリケーションと同様の機能を含むことができ、例えば図1に示すトリム用下型30を構成するワーク受け部31、型構造部32、付属部34(ロケーション35、U溝36、カム37、スクラップカッタ38、リフティングバー39)の形状を表す形状データをCADシステム11又はコンピュータ13の使用者(オペレータ)に設計させることができる。
【0067】
すなわち、処理部13bは金型設計機能18(CAD機能)を含む。具体的には、金型設計機能18は、典型的には、例えば、金型設計機能18は金型データを構成する複数の形状データを特徴点、線分、曲線等でワイヤフレームモデルを生成したり、直方体、円錐、円柱、球、円環体等の3次元形状によるソリッドモデルを生成したり、ワイヤフレームに基づくサーフェスモデルを生成したり、3次元形状、サーフェス、ソリッド等によるメッシュモデルを生成したりすることが可能である。これらは一例であり、金型10に含まれる形状データを設計、保存、読出するために必要な、周知のCAD基本機能が金型設計機能18に設けられる。
【0068】
図4(b)に示すように、処理部13b又は金型設計機能18は、例えば、自由伸縮機能19a、部品移動機能19b、移動調整機能19c等の本発明の金型設計システムに特有の追加機能19を有することができる。追加機能19は、周知のCAD基本機能又は金型設計機能18を補完するものである。
【0069】
コンピュータ13又は金型設計機能18(CAD機能)は、例えば図1のトリム用下型30等の金型10(基準の金型)に対応する金型データ(基準の金型データ)を外部記憶装置14から読み出して記憶部13aに保存又は記憶し、記憶部13aに記憶される金型データを用いてディスプレイ装置16に表示することができる(図5参照)。
【0070】
図5に示すように、コンピュータ13又は自由伸縮機能19aは、例えば図1のトリム用下型30の形状データを周知の手法で使用者に例えばマウス15で選択(クリック)させて、ディスプレイ装置16にその選択状態を表す外形寸法枠24を表示させる。
その後、使用者は、マウス15の操作(ドラッグ)又は移動を介して、周知の手法でトリム用下型30の形状データを拡大又は縮小することができる。この時、自由伸縮機能19aは、マウス15の操作に応じて、リアルタイムに外形寸法枠24(好ましくは、及びトリム用下型30の形状データ)を拡大又は縮小し、ディスプレイ装置16に表示させる。
ここで、外形寸法枠24は、金型10(トリム用下型30)の金型データに内接する例えば直方体であり、外形寸法枠24の初期値は、基準の金型又は基準の金型データの体積を表す枠である。
【0071】
使用者は、ディスプレイ装置16を見ながらマウス15の操作(ドロップ)を介して、周知の手法でトリム用下型30の形状データの拡大又は縮小を終了させて、所望の倍率を決定することができる。この時、自由伸縮機能19aは、決定された所望の倍率を記憶部13aに記憶する。
なお、使用者は、周知の手法で例えばキーボード15を介して所望の倍率を入力してもよい。
【0072】
前述の通り、図2に示すように、トランスファープレスにおいては、ワークの進行方向に沿って、ドロー用下型20と、トリム用下型30と、ピアス用下型40と、ベンド用下型50とがこの順に配置される。すなわち、図1のトリム用下型30は、隣の金型を並べられて隣接するので、最大寸法が事前に決定され、例えば外部記憶装置14に記憶されている。
【0073】
自由伸縮機能19aは、金型データに付随する最大寸法データを外部記憶装置14から読み出して記憶部13aに保存又は記憶し、記憶部13aに記憶される最大寸法データ(トリム用下型30の最大寸法25)を金型データと一緒にディスプレイ装置16に表示することができる(図5参照)。使用者は、表示される最大寸法25を認識することで、最大の倍率を容易に理解することができる。
【0074】
好ましくは、自由伸縮機能19aは、最大寸法データから最大の倍率を算出し、使用者によって選択又は入力される倍率が最大の倍率を超えないように、所望の倍率に上限を設けることができる。すわなち、使用者が必要以上にマウス15を移動させても、外形寸法枠24が最大寸法25と一致するところまで、リアルタイムに外形寸法枠24及びトリム用下型30の形状データを算出することができる。
【0075】
さらに好ましくは、自由伸縮機能19aは、算出した最大の倍率が120%を超える場合において、所望の倍率αの上限として、算出した最大の倍率よりも小さい120%を採用することができる。ここで、算出した最大の倍率よりも小さい所望の倍率αの上限として、120%の代わりに、110%を採用してもよい。同様に、好ましくは、自由伸縮機能19aは、所望の倍率αの下限として、80%を採用することができる。ここで、所望の倍率αの下限として、80%の代わりに、90%を採用してもよい。その他、上限または下限を超えた場合は、不作動にしたり、警告表示やアラームを発してもよい。
【0076】
ところで、金型データ又は形状データは、3次元位置座標データで表すことができるが、トランスファープレスにおいては、Z軸位置座標データ(図3中、紙面と直交する方向の座標データ)は、一定とすることができる。金型データ又は形状データは、基準点である中心Boからの寸法を表す2次元位置座標データ(図3中、紙面と平行な面内を互いに直交する2つ方向(縦方向及び横方向)の座標データ)で表すことができる。
【0077】
前述の通り、図3に示すように、本発明では、新しい型30Nの横寸法NLhは、ベース型30Bの横寸法BLh×所望の倍率αの算式により定める。同様に、新しい型30Nの縦寸法NLvは、ベース型30Bの縦寸法BLv×所望の倍率αの算式により定める。リブ32aの厚さNtは、リブ32aの厚さBt×所望の倍率αの算式により定める。同様に、製品形状成形部(図2、符号31)は、所望の倍率α倍する。
【0078】
対して、中心No(所定の基準点)は、NLhの1/2(X軸位置座標データ)で且つNLvの1/2(Y軸位置座標データ)の位置に定める。すなわち、中心の位置(所定の基準点)は、新しい型30Nの中心(所定の基準点)に定めることに、変わりはない。
【0079】
また、リフティングバー39の径Nyは、Byと同一とし、U溝36の溝幅Nuは、Buと同一とする。
【0080】
したがって、自由伸縮機能19aは、複数の形状データのうちの例えば型構造部32(第1形状データ)を所定の基準点(中心Bo,No)を基準として所望の倍率αで拡大(又は縮小)させるとともに、部品移動機能19bは、複数の形状データのうちの例えばリフティングバー39及びU溝36(第2形状データ)を第1形状データ(所定の点、あるいは、所定の形状)又は所定の基準点(中心Bo,No)を基準として100%の倍率(拡大なし及び縮小なし)で移動させることができる(図6図7参照)。
【0081】
ここで、自由伸縮機能19aは、トリム用下型30を構成する複数の形状データの選択状態を表す外形寸法枠24を表示する前に、事前に、形状データが第1形状データに属するものであるかを使用者に設定させてもよく、あるいは、外形寸法枠24を表示した後に、追加的に、形状データが第1形状データに属するものであるかを使用者に設定させてもよい。
【0082】
同様に、部品移動機能19bは、自由伸縮機能19aによって外形寸法枠24が表示される前に、事前に、形状データが第2形状データに属するものであるかを使用者に設定させてもよく、あるいは、外形寸法枠24が表示された後に、追加的に、形状データが第2形状データに属するものであるかを使用者に設定させてもよい。
【0083】
なお、図6において、部品移動機能19bは、例えばリフティングバー39及びU溝36(第2形状データ)が例えば型構造部32(第1形状データ)の特徴点、特定点等の所定の点、あるいは、所定の形状を基準として、整列するように、リフティングバー39及びU溝36(第2形状データ)の移動量を第1形状データの移動量に基づき算出してもよい。
【0084】
代替的に、図6において、部品移動機能19bは、例えばリフティングバー39及びU溝36(第2形状データ)の代表点の座標(X軸位置座標データ,Y軸位置座標データ)を所定の基準点(中心Bo,No)を基準として所望の倍率αで拡大(又は縮小)させて、拡大(又は縮小)された代表点の座標(X軸位置座標データ×α/2,Y軸位置座標データ×α/2)を基準として、100%の倍率(拡大なし及び縮小なし)で例えばリフティングバー39及びU溝36(第2形状データ)を復元させてもよい。
ここで、部品によっては、型構造部32等の拡大又は縮小に伴って、移動するだけでは不十分である。この場合においては、移動後の第2形状データ(の代表点)の位置を調整することができる。特にトランスファープレスにおいては複数の金型がプレス機に設置され、金型部品の点数も多いため、部品の配置領域が金型内全域を占めやすい。そのため他の部品、設備などと干渉する場合がある。
【0085】
図7(a)に示すように、コンピュータ13又は部品移動機能19bは、例えばリフティングバー39及びU溝36(第2形状データ)又は第2形状データの代表点(あるいは、第2形状データの任意の点)の座標(X軸位置座標データ=A,Y軸位置座標データ=B)に関して、所定の基準点(中心Bo,No)を基準とする移動量を所望の倍率αに基づき算出し、第2形状データを移動させることができる。
【0086】
コンピュータ13又は移動調整機能19cは、必要に応じて、移動後の位置を使用者に調整させることができる。移動調整機能19cは、所定の基準点(中心Bo,No)を基準とする例えばリフティングバー39及びU溝36(第2形状データ)又は第2形状データの例えば代表点の座標(X軸位置座標データ=A,Y軸位置座標データ=B)の拘束(位置移動制限)を解除するために、複数の第2形状データの中から位置調整形状データを使用者に設定又は選択させることできる。なお、所定の基準点(中心Bo,No)は、常に拘束され、その位置を移動することが制限されている。また、所定の基準点は、中心Bo,No以外の点であってもよい。
【0087】
その後、図7(b),図7(c)に示すように、移動調整機能19cは、使用者によるマウス15の操作(ドラッグ)又は移動を介して、周知の手法で位置調整形状データ(第2形状データ)又は位置調整形状データの例えば代表点の座標(X軸位置座標データ=A,Y軸位置座標データ=B)を調整し、又は調整後の座標(X軸位置座標データ=A’,Y軸位置座標データ=B’)まで移動することができる。この時、移動調整機能19cは、マウス15の操作に応じて、リアルタイムに位置調整形状データ(第2形状データ)の全体、又は、位置調整形状データの例えば代表点の座標を移動させ、ディスプレイ装置16に表示させる。よって、部品間の干渉やバランス状態を容易に認識できる。
【0088】
位置調整形状データ又はその代表点の位置又は座標を調整した後、移動調整機能19cは、使用者によるマウス15の操作(クリック)を介して、周知の手法で位置調整形状データ又はその代表点の座標(X軸位置座標データ=A’,Y軸位置座標データ=B’)を拘束(リフティングバー39及びU溝36(第2形状データのうちの位置調整形状データ)の位置移動制限)することができる。再度拘束すれば、次の自由伸縮時も点が同じ手法で機能できる。
【0089】
なお、本発明の金型設計システムは、図2に示すトリム用下型30に適用が限定されるのではなく、ドロー用下型20、ピアス用下型40、ベンド用下型50を含むトランスファープレス金型に適用可能である。
【0090】
さらには、本発明の金型設計システムは、トランスファープレス金型の他、タンデムプレス金型、プログレシブ金型、樹脂成形品を得る射出成形金型に広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、トランスファープレス金型の設計に好適である。
【符号の説明】
【0092】
10…金型、11…CADシステム、12…ネットワーク、13…コンピュータ、13a…記憶部、13b…処理部、13c…インターフェース部、14…記憶装置(外部記憶装置、金型データベース)、15…入力装置(キーボード、マウス)、16…ディスプレイ装置、17…図形出力装置、18…金型設計機能(CAD機能)、19…追加機能、19a…自由伸縮機能、19b…部品移動機能、19c…移動調整機能、20…ドロー用下型、21…製品形状成形部、22…型構造部、23…プロファイル(profile、プロフィール)、24…外形寸法枠、25…最大寸法、30…トリム用下型、30B…ベース型、30N…新しい型、31…ワーク受け部、32…型構造部、32a…リブ、34…付属部、35…ロケーション、36…U溝、37…カム、38…スクラップカッタ、39…リフティングバー、40…ピアス用下型、41…ワーク受け部、42…型構造部、43…プロファイル(profile、プロフィール)、50…ベンド用下型、51…ワーク受け部、52…型構造部、53…プロファイル(profile、プロフィール)、101…金型、102…製品形状成形部、103…型構造部、104…ガイドポスト、105…カム、106…スクラップカッタ、107…スプリング、201…金型 、202…製品形状成形部、203…型構造部、204…ガイドポスト、205…カム、206…スクラップカッタ、207…スプリング、Bo…中心、No…中心、O1…中心、P1~P11…特徴点、α…倍率(伸縮率)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準の金型の倍率を100%とする時に、この倍率と異なる倍率を有する新しい金型を設計するための金型設計システムであって、
複数の形状データを有する基準の金型データを記憶し、100%を超える又は100%未満である所望の倍率で前記金型データを使用者に拡大又は縮小させるために、前記複数の形状データのうち、所定の基準点を基準として前記所望の倍率で拡大又は縮小する第1形状データを新しい金型データが有するように前記使用者に設定させるとともに、
前記複数の形状データのうち、前記所定の基準点又は前記第1形状データを基準として100%の倍率で移動する第2形状データを前記新しい金型データが有するように前記使用者に設定させ、
前記所定の基準点は、位置を移動することが制限され
前記第2形状データは、複数の第2形状データであり、
前記複数の第2形状データのうち少なくとも1つは、前記所定の基準点を基準として移動した後の位置を調整する位置調整形状データとして前記使用者に設定させ、
前記位置調整形状データは、前記所定の基準点を基準として前記所望の倍率に基づく移動量で移動した位置からの移動制限を解除され、その後、調整された位置まで移動させ、その後、前記所定の基準点を基準として位置を移動するように設定されることを特徴とする金型設計システム。
【請求項2】
請求項1記載の金型設計システムであって、
前記第1形状データは、前記基準の金型を構成するワーク受け部、インサート及び型構造部の少なくとも1つの形状データを含み、
前記第2形状データは、前記基準の金型を構成する付属部の形状データを含み、前記付属部は、カム、スクラップカッタ、スプリング、U溝、リフティングバー、ロケーション及びピアスパンチの少なくとも1つを有することを特徴とする金型設計システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金型設計システムであって、
前記基準の金型データは、トランスファープレス金型を製造するための金型データであり、
前記所定の基準点は、前記トランスファープレス金型の中心に対応することを特徴とする金型設計システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の金型設計システムであって、
前記所望の倍率は、拡大時に100%を超え且つ120%以下の範囲内とし、及び/又は、縮小時に80%以上且つ100%未満の範囲内とすることを特徴とする金型設計システム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の金型設計システムであって、
前記第1形状データと前記第2形状データを表示させ、前記第1形状データを前記所望の倍率で拡大又は縮小することで前記第2形状データを移動することを特徴とする金型設計システム。
【請求項6】
請求項に記載の金型設計システムであって、
マウスの操作に応じて、リアルタイムに基準の金型データの外形寸法枠を拡大又は縮小し、前記外形寸法枠並びに前記第1及び前記第2の形状データを表示させることを特徴とする金型設計システム。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の金型設計システムであって、
前記基準の金型と前記基準の金型の隣の金型とは、トラスファープレスに一緒に用いられ、前記所望の倍率の最大値である前記基準の金型の最大寸法は、前記隣の金型の配置位置によって制限されることを特徴とする金型設計システム。