(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001714
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】保護素子、及び保護素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01H 37/76 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
H01H37/76 F
H01H37/76 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100560
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100185845
【弁理士】
【氏名又は名称】穂谷野 聡
(72)【発明者】
【氏名】小森 千智
【テーマコード(参考)】
5G502
【Fターム(参考)】
5G502AA01
5G502AA02
5G502AA20
5G502BA08
5G502BB08
5G502BB13
5G502BB16
5G502BB17
5G502BC07
5G502BC08
5G502BC20
5G502BD02
5G502BD10
5G502CC04
5G502CC28
5G502CC32
5G502EE06
5G502FF08
5G502JJ01
(57)【要約】
【課題】電極形成材料の使用量の削減を図りつつ、導通性、接続性を維持し、大電流化にも対応可能な保護素子を提供する。
【解決手段】絶縁基板2と、絶縁基板2に設けられた発熱体3と、絶縁基板2に設けられた第1の電極4及び第2の電極5と、第1の電極4と第2の電極5との間に配置されると共に、発熱体3の一端側と電気的に接続された発熱体引出電極6と、第1の電極4、第2の電極5及び発熱体引出電極6の面上に配置されて、第1の電極4と発熱体引出電極6との間及び第2の電極5と発熱体引出電極6との間を電気的に接続する可溶導体7とを備え、第1の電極4、第2の電極5及び発熱体引出電極6の可溶導体7と接続される接続部8の厚さが、それ以外の部分の厚さよりも厚く形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
前記絶縁基板に設けられた発熱体と、
前記絶縁基板に設けられた第1の電極及び第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置されると共に、前記発熱体の一端側と電気的に接続された発熱体引出電極と、
前記第1の電極、前記第2の電極及び前記発熱体引出電極の面上に配置されて、前記第1の電極と前記発熱体引出電極との間及び前記第2の電極と前記発熱体引出電極との間を電気的に接続する可溶導体とを備え、
前記第1の電極、前記第2の電極及び前記発熱体引出電極の前記可溶導体と接続される接続部の厚さが、それ以外の部分の厚さよりも厚く形成されていることを特徴とする保護素子。
【請求項2】
前記接続部は、前記第1の電極、前記第2の電極及び前記発熱体引出電極の各前記可溶導体が搭載される部位と、当該部位にそれぞれ積層された接続電極からなる請求項1に記載の保護素子。
【請求項3】
前記接続電極の成分は、各々積層される前記第1の電極、前記第2の電極又は前記発熱体引出電極の成分と同じである請求項2に記載の保護素子。
【請求項4】
前記接続部の厚さは、20μm以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項5】
前記第1の電極、前記第2の電極及び前記発熱体引出電極は10μm以上の厚さを有する請求項4に記載の保護素子。
【請求項6】
前記接続部の厚さは、各々積層される前記第1の電極、前記第2の電極又は前記発熱体引出電極の前記接続部以外の部位の厚さの2倍以上である請求項1又は2に記載の保護素子。
【請求項7】
前記発熱体は、前記絶縁基板の前記可溶導体が設けられた表面と反対側の裏面に形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項8】
前記発熱体は、前記絶縁基板の前記可溶導体が設けられた表面に形成され、
前記発熱体を被覆する絶縁保護層を有し、
前記発熱体引出電極は、前記絶縁保護層上に設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項9】
前記絶縁基板は、セラミックス基板である、請求項1~3のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項10】
絶縁基板と、
前記絶縁基板の裏面に配置された発熱体と、
前記絶縁基板に配置された第1の電極及び第2の電極と、
前記第1の電極及び前記第2の電極の面上に配置されて、前記第1の電極と前記第2の電極との間を電気的に接続する可溶導体とを備え、
前記第1の電極及び前記第2の電極の前記可溶導体と接続される接続部の厚さが、それ以外の部分の厚さよりも厚く形成されていることを特徴とする保護素子。
【請求項11】
前記接続部は、前記第1の電極及び前記第2の電極の各前記可溶導体が搭載される部位と、当該部位にそれぞれ積層された接続電極からなる請求項11に記載の保護素子。
【請求項12】
絶縁基板上に導電ペーストを印刷し、焼成することにより、第1の電極及び第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された発熱体引出電極を形成する工程と、
前記第1の電極、前記第2の電極及び前記発熱体引出電極に導電ペーストを印刷し、焼成することにより、前記第1の電極及び前記発熱体引出電極、並びに前記第2の電極及び前記発熱体引出電極を接続する可溶導体が接続される接続電極を形成する工程を有し、
前記第1の電極、前記第2の電極及び前記発熱体引出電極の前記可溶導体と接続される接続部の厚さが、それ以外の部分の厚さよりも厚く形成されている、保護素子の製造方法。
【請求項13】
絶縁基板上に導電ペーストを印刷し、焼成することにより、第1の電極及び第2の電極を形成する工程と、
前記第1の電極及び前記第2の電極に導電ペーストを印刷し、焼成することにより、前記第1の電極及び前記第2の電極を接続する可溶導体が接続される接続電極を形成する工程を有し、
前記第1の電極及び前記第2の電極の前記可溶導体と接続される接続部の厚さが、それ以外の部分の厚さよりも厚く形成されている、保護素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電流経路上に実装され、定格を超える電流が流れた時に発熱体による加熱で可溶導体を溶断し当該電流経路を遮断する保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン2次電池(LiB)は高出力・高エネルギー密度を有する電池であり、電池の性能向上と共に、様々なアプリケーションへ適用されている。しかしながら、LiBは、何らかの影響で充放電を制御するICやFET等が故障することで、過充電状態になった場合に、発煙発火のリスクを有する電池であり、その2次的な保護対策として、発熱体付き保護素子が採用されている。LiB搭載アプリケーションの拡大と共に、LiBの生産数量も増加し、LiBを保護する保護素子の需要も高まっている。
【0003】
図12に示すように、一般に発熱体付き保護素子100は、絶縁基板101と、絶縁基板101の表面101aに形成され保護回路と接続される第1、第2の電極102,103と、絶縁基板101の裏面101bに形成され、外部信号に基づき通電し発熱する発熱体105と、発熱体105と電気的に接続された発熱体引出電極106と、第1、第2の電極102,103間にわたって接続される可溶導体107とを備える。
【0004】
第1、第2の電極102,103や発熱体引出電極106は、絶縁基板101の表面101a上に銀ペーストを塗布、焼成することにより形成されている。このため、それぞれの電極102,103,106は、全体的に同じ厚さになっている。可溶導体107は、接続ハンダ等の接続材料によって第1、第2の電極102,103や発熱体引出電極106上に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年のLiB搭載アプリケーションの拡大に伴い、保護素子には、さらなる大電流化及び低価格化の要求が高まっている。第1、第2の電極や発熱体引出電極を構成する銀ペーストは高価であり、その使用量の削減も検討されるが、電極厚みを薄くすると(例えば10μm未満)、焼結及び固定用の成分として含有するガラス成分が焼成に伴い電極表面に析出し、可溶導体との導通性や絶縁基板及び可溶導体との接続性を損なう恐れが生じる。また、電極厚みを薄くすることにより、導体抵抗も上昇し、大電流化の障害ともなり得る。さらに、銀ペーストの使用量を削減するために電極面積を小さくした場合には、可溶導体も小型化する必要が生じ、大電流化に対応することが困難となる。
【0007】
本技術は、電極形成材料の使用量の削減を図りつつ、導通性、接続性を維持し、大電流化にも対応可能な保護素子、及び保護素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本技術に係る保護素子は、絶縁基板と、前記絶縁基板に設けられた発熱体と、前記絶縁基板に設けられた第1の電極及び第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置されると共に、前記発熱体の一端側と電気的に接続された発熱体引出電極と、前記第1の電極、前記第2の電極及び前記発熱体引出電極の面上に配置されて、前記第1の電極と前記発熱体引出電極との間及び前記第2の電極と前記発熱体引出電極との間を電気的に接続する可溶導体とを備え、前記第1の電極、前記第2の電極及び前記発熱体引出電極の前記可溶導体と接続される接続部の厚さが、それ以外の部分の厚さよりも厚く形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
上述した課題を解決するために、本技術に係る保護素子は、絶縁基板と、前記絶縁基板の裏面に配置された発熱体と、前記絶縁基板に配置された第1の電極及び第2の電極と、前記第1の電極及び前記第2の電極の面上に配置されて、前記第1の電極と前記第2の電極との間を電気的に接続する可溶導体とを備え、前記第1の電極及び前記第2の電極の前記可溶導体と接続される接続部の厚さが、それ以外の部分の厚さよりも厚く形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
また、本技術に係る保護素子の製造方法は、絶縁基板上に導電ペーストを印刷し、焼成することにより、第1の電極及び第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された発熱体引出電極を形成する工程と、前記第1の電極、前記第2の電極及び前記発熱体引出電極に導電ペーストを印刷し、焼成することにより、前記第1の電極及び前記発熱体引出電極、並びに前記第2の電極及び前記発熱体引出電極を接続する可溶導体が接続される接続電極を形成する工程を有し、前記第1の電極、前記第2の電極及び前記発熱体引出電極の前記可溶導体と接続される接続部の厚さが、それ以外の部分の厚さよりも厚く形成されているものである。
【0011】
また、本技術に係る保護素子の製造方法は、絶縁基板上に導電ペーストを印刷し、焼成することにより、第1の電極及び第2の電極を形成する工程と、前記第1の電極及び前記第2の電極に導電ペーストを印刷し、焼成することにより、前記第1の電極及び前記第2の電極を接続する可溶導体が接続される接続電極を形成する工程を有し、前記第1の電極及び前記第2の電極の前記可溶導体と接続される接続部の厚さが、それ以外の部分の厚さよりも厚く形成されているものである。
【発明の効果】
【0012】
本技術によれば、電極形成材料の使用量の削減を図りつつ、導通性、接続性を維持し、大電流化にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本技術が適用された保護素子を示す図であり、(A)はケースを省略して示す平面図、(B)は底面図、(C)は断面図である。
【
図2】
図2は、可溶導体が溶断した状を示す平面図である。
【
図3】
図3は、第1の電極の接続部を示す断面図である。
【
図4】
図4は、接続部を、第1の電極及び第2の電極の内側縁からやや内側に形成した構成を示す平面図である。
【
図6】
図6は、バッテリパックの構成例を示す回路図である。
【
図7】
図7は、本技術が適用された保護素子の回路図である。
【
図8】
図8は、変形例に係る保護素子を示す図であり、(A)はケースを省略して示す平面図、(B)は底面図、(C)は断面図である。
【
図9】
図9は、変形例に係る保護素子において、ケース、発熱体引出電極、及び可溶導体を省略して示す平面図である。
【
図10】
図10は、他の変形例に係る保護素子を示す図であり、(A)はケースを省略して示す平面図、(B)は底面図、(C)は断面図である。
【
図11】
図11は、他の変形例に係る保護素子の回廊構成を示す図である。
【
図12】
図12は、発熱体付き保護素子を示す図であり、(A)はケースを省略して示す平面図、(B)は底面図、(C)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本技術が適用された保護素子及び保護素子の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0015】
本技術が適用された保護素子1は、
図1(A)~(C)に示すように、絶縁基板2と、絶縁基板2に設けられた発熱体3と、絶縁基板2に設けられた第1の電極4及び第2の電極5と、第1の電極4と第2の電極5との間に配置されると共に、発熱体3の一端側と電気的に接続された発熱体引出電極6と、第1の電極4、第2の電極5及び発熱体引出電極6の面上に配置されて、第1の電極4と発熱体引出電極6との間及び第2の電極5と発熱体引出電極6との間を電気的に接続する可溶導体7とを備える。そして、保護素子1は、第1の電極4、第2の電極5及び発熱体引出電極6の可溶導体7と接続される接続部8の厚さが、それ以外の部分の厚さよりも厚く形成されている。
【0016】
第1の電極4、第2の電極5及び発熱体引出電極6は、可溶導体7と接続される接続部8が、それ以外の部分の厚さより厚く形成されている、すなわち、接続部8以外の部分の厚みを薄く形成できるため、全面が均一の厚さで形成する場合に比して、第1の電極4、第2の電極5及び発熱体引出電極6を形成する電極形成材料の使用量の削減を図ることができる。
【0017】
また、電極形成材料には、焼結及び絶縁基板2との固定用の成分としてガラス成分が含有されており、電極厚みを極端に薄くするとガラス成分が電極表面に析出し可溶導体7との導通性や接続性を損なう恐れが生じるが、保護素子1は、可溶導体7と接続される接続部8においては、十分な厚みを有するため、ガラス成分の析出もなく可溶導体7との導通性及び接続性を維持することができる。さらに、接続部8が十分な厚みを有することで、導通抵抗の上昇を招くこともない。したがって、電極形成材料の使用量の削減を図りつつ、導通性、接続性を維持し、大電流化にも対応することができる。
【0018】
このような保護素子1は、外部回路に組み込まれることにより、可溶導体7が当該外部回路の電流経路の一部を構成し、発熱体3の発熱、あるいは定格を超える過電流によって溶断することにより電流経路を遮断する(
図2参照)。以下、保護素子1の各構成について詳細に説明する。
【0019】
[絶縁基板]
絶縁基板2は、例えばアルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって形成される。その他、絶縁基板2は、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよい。なお、本明細書では、絶縁基板2の可溶導体7が搭載される面を表面2aとし、可溶導体7が搭載される面と反対側の面を裏面2bとする。
【0020】
[第1、第2の電極]
絶縁基板2の表面2aの相対向する両端部には、第1の電極4及び第2の電極5が形成されている。第1の電極4及び第2の電極5は、それぞれ、Ag、Cu又はこれらの合金等の導電パターンによって形成されている。第1の電極4及び第2の電極5は、例えばAgペーストをスクリーン印刷により所定のパターンで印刷した後、所定の温度で焼成することにより形成することができる。
【0021】
第1の電極4は、絶縁基板2の表面2aより、キャスタレーションを介して裏面2bに形成された第1の外部接続電極11と連続されている。また、第2の電極5は、絶縁基板2の表面2aより、キャスタレーションを介して裏面2bに形成された第2の外部接続電極12と連続されている。保護素子1が外部回路基板に実装されると、第1、第2の外部接続電極11,12が、当該外部回路基板に設けられた接続電極に接続されることにより、可溶導体7が当該外部回路基板上に形成された電流経路の一部に組み込まれる。
【0022】
第1、第2の電極4,5は、接続ハンダ等の導電接続材料を介して接続部8に可溶導体7が搭載されることにより、可溶導体7を介して電気的に接続されている。また、
図2に示すように、第1、第2の電極4,5は、発熱体3が通電に伴って発熱し可溶導体7が溶断することにより、あるいは保護素子1に定格を超える大電流が流れ可溶導体7が自己発熱(ジュール熱)によって溶断し、接続遮断される。
【0023】
[発熱体引出電極]
発熱体引出電極6は、第1の電極4と第2の電極5の間の領域に設けられ、一端が後述する中間電極14と接続されている。また、発熱体引出電極6は、接続ハンダ等の接合材料を介して、第1、第2の電極4,5間において、可溶導体7が接続されている。
【0024】
[接続部]
これら、第1の電極4、第2の電極5、及び発熱体引出電極6は、可溶導体7が接続される接続部8が形成されている。
図3は、第1の電極4の接続部8を示す断面図である。
図1、
図3に示すように、接続部8は、第1の電極4及び第2の電極5の可溶導体7が接続される部位、例えば第1、第2の電極4,5の各内側縁に沿って、また発熱体引出電極6の中央部に、接続電極10が積層されることにより形成されている。可溶導体7は、接続電極10と接続用ハンダなどの接続材料を介して接続される。
【0025】
接続電極10は、第1、第2の電極4,5や発熱体引出電極6と同じ成分で形成されていることが好ましい。例えば、接続電極10は、Agペーストをスクリーン印刷により所定のパターンで印刷した後、所定の温度で焼成して形成することにより、Agペーストに含まれる溶融したガラス成分によって、先に形成した第1、第2の電極4,5や発熱体引出電極6と積層一体化する。これにより、接続部8は、十分な厚みを有するため、ガラス成分の析出もなく可溶導体7との導通性及び接続性を維持することができる。
【0026】
また、接続部8はそれ以外の部分の厚さよりも厚く形成され、接続電極10が第1、第2の電極4,5上や発熱体引出電極6上に突出する。これにより、外部からの熱や圧力を可溶導体7との接続部位となる接続電極10に効率的に伝達することができる。したがって、例えばはんだごて等で可溶導体7を接続電極10上に実装する場合にも、熱と圧力が第1、第2の電極4,5の全体に拡散することなく、効率よく接続電極10に供給することができる。
【0027】
また、接続部8はそれ以外の部分の厚さよりも厚く形成されているため、可溶導体7の実装時に可溶導体7を接続する接続ハンダ等の溶融体が接続部8に凝集し、第1、第2の電極4,5の外縁側に流出することを防止することができる。したがって、接続ハンダ等の溶融体が第1、第2の外部接続電極11,12まで濡れ広がることを防止でき、可溶導体7の接続や保護素子1と外部回路基板との接続を維持することができる。
【0028】
図1に示すように、接続部8は、第1、第2の電極4,5上において、可溶導体7と略同等の面積を有することが好ましい。接続部8が可溶導体7よりも小さすぎると、導通抵抗の上昇を招くおそれがある。また、接続部8の面積が可溶導体7よりも大きすぎても、電極材料の使用量の削減効果が低下する。このため、接続部8の大きさは可溶導体7を配置した際に、第1、第2の電極4,5上における可溶導体7の接続部8に対する重畳面積割合が90%~110%となるように接続部8を形成することが好ましい。
【0029】
接続部8の厚さ、すなわち第1の電極4及び接続電極10の合計厚み、第2の電極5及び接続電極10の合計厚み、並びに発熱体引出電極6及び接続電極10の合計厚みは、各々20μm以上とすることが好ましい。これにより、接続電極10の形成過程や可溶導体7の実装工程において、接続電極10の表面にガラス成分が析出することを抑制でき、可溶導体7の導通性、及び機械的な接続信頼性を確保することができる。
【0030】
また、第1、第2の電極4,5及び発熱体引出電極6は、10μm以上の厚さを有することが好ましい。これにより、接続部8以外の領域においてもガラス成分の析出を抑制でき、絶縁基板2との機械的な接続信頼性を確保することができる。
【0031】
接続部8の厚さは、第1、第2の電極4,5や発熱体引出電極6の接続部8以外の部位の厚さの2倍以上とすることが好ましい。接続部8における印刷回数を増やし、接続部8の厚さがそれ以外の部分の厚さより厚くなることで、可溶導体5を接続するための接続ハンダ等の接合材料の濡れ性を向上させることができる。なお、第1、第2の電極4,5、発熱体引出電極6及び接続電極10を形成する導電ペーストの印刷及び焼成は、複数回繰り返すことにより、所望の厚みで形成することができる。
【0032】
また、
図4に示すように、接続部8は、第1の電極4及び第2の電極5の内側縁からやや内側に形成してもよい。接続部8はそれ以外の部分の厚さよりも厚く形成されることにより突出しているため、可溶導体7の溶断時において、溶融導体7aが接続部8上に凝集するように、第1、第2の電極4,5側に積極的に張力が作用し、より速やかに第1の電極4と発熱体引出電極6との間、及び第2の電極5と発熱体引出電極6との間を溶断することができる。このとき、接続部8が第1の電極4及び第2の電極5の内側縁からやや内側に形成されることで、溶断後に各接続部8に凝集した溶融導体7aの接触を防ぎ、絶縁信頼性を向上させることができる。
【0033】
なお、第1、第2の電極4,5及び接続部8の表面上には、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の被膜が、メッキ処理等の公知の手法によりコーティングされていることが好ましい。これにより、保護素子1は、第1、第2の電極4,5及び接続部8の酸化を防止し、導通抵抗の上昇に伴う定格の変動を防止することができる。また、保護素子1をリフロー実装する場合に、可溶導体7を接続する接続用ハンダが溶融することにより接続部8を溶食(ハンダ食われ)するのを防ぐことができる。
【0034】
なお、第1、第2の電極4,5は、第1、第2の外部接続電極11,12と接続される外部回路基板の電極に設けられた接続用ハンダがリフロー実装等において溶融し、キャスタレーションを介して第1、第2の電極4,5上に這い上がり、濡れ拡がることを防止する規制壁を設けてもよい。規制壁は、例えばガラスやソルダーレジスト、絶縁性接着剤等ハンダに対する濡れ性を有しない絶縁材料を用いて形成することができ、第1、第2の電極4,5上に印刷等により形成することができる。規制壁を設けることにより、溶融した接続用ハンダが第1、第2の電極4,5まで濡れ広がることを防止し、保護素子1と外部回路基板との接続性を維持することができる。
【0035】
[発熱体]
図1(B)に示すように、絶縁基板2の裏面2bには発熱体3が形成されている。発熱体3は、比較的抵抗値が高く通電すると発熱する導電性を有する部材であって、例えばニクロム、W、Mo、Ru等又はこれらを含む材料からなる。発熱体3は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板2上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。一例として、発熱体3は、酸化ルテニウム系ペーストと銀とガラスペーストの混合ペーストを所定の電圧に応じて調整し、絶縁基板2の裏面2bの所定の位置に所定の面積で製膜し、その後、適正条件にて焼成処理を行うことにより形成することができる。また、発熱体3の形状は適宜設計できるが、
図1(B)に示すように、絶縁基板2の形状に応じて略矩形状とすることが発熱面積を最大化するうえで好ましい。
【0036】
また、発熱体3は、一端部3aが第1の引出電極15と接続され、他端部3bが第2の引出電極16と接続されている。第1の引出電極15は、発熱体電極17から発熱体3の一端部3aに沿って引き出し形成され、
図1に示す保護素子1では、略矩形状に形成された発熱体3の一側縁に沿って延在されるとともに、当該発熱体3の一側縁が重畳されている。同様に、第2の引出電極16は、中間電極14から発熱体3の他端部3bに沿って引き出し形成され、
図1に示す保護素子1では、略矩形状に形成された発熱体3の他側縁に沿って延在されるとともに、当該発熱体3の他側縁が重畳されている。
【0037】
発熱体電極17及び中間電極14は、絶縁基板2の第1、第2の電極4,5が設けられた側縁と異なる相対向する側縁に形成されている。発熱体電極17は、発熱体3への給電電極であり、第1の引出電極15を介して発熱体3の一端部3aと接続されるとともに、保護素子1が外部回路に接続する際の外部接続電極として機能する。
【0038】
発熱体電極17、第1、第2の引出電極15,16、及び中間電極14は、第1、第2の電極4,5と同様に、AgやCu又はこれらの合金等の導電ペーストを印刷、焼成することによって形成することができる。また、絶縁基板2の裏面2b上に形成されるこれら各電極を同一の材料により構成することで、一度の印刷及び焼成工程で形成することができる。
【0039】
中間電極14は、発熱体3と絶縁基板2の表面2aに設けられた発熱体引出電極6との間に設けられる電極であり、発熱体3の他端部3bと接続されるとともに、キャスタレーションを介して絶縁基板2の表面2aに形成された発熱体引出電極6と接続されている。発熱体引出電極6は、絶縁基板2を介して発熱体3と重畳するとともに可溶導体7と接続される。
【0040】
[絶縁保護層]
また、発熱体3、第1の引出電極15及び第2の引出電極16は、絶縁保護層9で被覆されていてもよい。絶縁保護層9は、発熱体3の保護及び絶縁を図るために設けられ、発熱体3の発熱温度に対する耐熱性を有するガラス等の絶縁材料により構成される。絶縁材料9を構成するガラス原料としては、例えばシリカ系ガラスのオーバーコート用ガラスペーストや絶縁用ガラスペーストがある。
【0041】
絶縁保護層9は、これらガラス系のペーストをスクリーン印刷等により塗布、焼成することにより形成することができる。
図1に示す保護素子1では、絶縁保護層9は、絶縁基板2の裏面2bに形成された発熱体3、第1の引出電極15及び第2の引出電極16を覆うように形成されている。
【0042】
絶縁保護層9の厚さは、ガラスペースト等の塗布性や可溶導体7の遮断時間の観点から設定される。すなわち、絶縁保護層9の厚さは、ガラスペースト等の材料の塗布性や、求められる可溶導体7の遮断時間に応じて適宜設定され、例えば10μm以上40μm以下とされ、好ましくは20μm以上40μm以下とされる。
【0043】
[可溶導体]
次いで、可溶導体7について説明する。可溶導体7は、第1及び第2の電極4,5間にわたって実装され、発熱体3の通電による発熱、又は定格を超える電流が通電することによって自己発熱(ジュール熱)により溶断し、第1の電極4と第2の電極5との間の電流経路を遮断するものである。可溶導体7は、第1、第2の電極4,5及び発熱体引出電極6上に接続ハンダ等の接合材料を介して接続される。
【0044】
可溶導体7は、発熱体3の通電による発熱、又は過電流状態によって溶融する導電性の材料であればよく、例えば、SnAgCu系のPbフリーハンダや、BiPbSn合金、BiPb合金、BiSn合金、SnPb合金、PbIn合金、ZnAl合金、InSn合金、PbAgSn合金等を用いることができる。
【0045】
また、可溶導体7は、高融点金属と、低融点金属とを含有する構造体であってもよい。例えば、
図5に示すように、可溶導体7は、内層と外層とからなる積層構造体であり、内層として低融点金属層18、低融点金属層18に積層された外層として高融点金属層19を有する。
【0046】
低融点金属層18は、好ましくは、ハンダ又はSnを主成分とする金属であり、Pbフリーハンダと一般的に呼ばれる材料である。低融点金属層18の融点は、必ずしもリフロー温度よりも高い必要はなく、200℃程度で溶融してもよい。高融点金属層19は、低融点金属層18の表面に積層された金属層であり、例えば、Ag若しくはCu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする金属であり、第1、第2の電極4,5及び発熱体引出電極6と可溶導体7との接続や保護素子1の外部回路基板上への実装をリフローによって行う場合においても溶融しない高い融点を有する。
【0047】
このような可溶導体7は、低融点金属箔に、高融点金属層をメッキ技術を用いて成膜することによって形成することができ、あるいは、他の周知の積層技術、膜形成技術を用いて形成することもできる。また、可溶導体7は、低融点金属層18の全面が高融点金属層19によって被覆された構造としてもよく、相対向する一対の側面を除き被覆された構造であってもよい。なお、可溶導体7は、高融点金属層19を内層とし、低融点金属層18を外層として構成してもよく、また低融点金属層18と高融点金属層19とが交互に積層された3層以上の多層構造とする、外層の一部に開口部を設けて内層の一部を露出させるなど、様々な構成によって形成することができる。
【0048】
可溶導体7は、内層となる低融点金属層18に、外層として高融点金属層19を積層することによって、リフロー温度が低融点金属層18の溶融温度を超えた場合であっても、可溶導体7として形状を維持することができ、溶断するに至らない。したがって、第1、第2の電極4,5及び発熱体引出電極6と可溶導体7との接続や保護素子1の外部回路基板上への実装を、リフローによって効率よく行うことができ、また、リフローによっても可溶導体7の変形に伴って局所的に抵抗値が高く又は低くなる等により所定の温度で溶断しない、あるいは所定の温度未満で溶断する等の溶断特性の変動を防止することができる。
【0049】
また、可溶導体7は、所定の定格電流が流れている間は、自己発熱によっても溶断することがない。そして、定格よりも高い値の電流が流れると、自己発熱によって溶融し、第1、第2の電極4,5間の電流経路を遮断する。また、発熱体3が通電され発熱することにより溶融し、第1、第2の電極4,5間の電流経路を遮断する。
【0050】
このとき、可溶導体7は、溶融した低融点金属層18が高融点金属層19を溶食(ハンダ食われ)することにより、高融点金属層19が溶融温度よりも低い温度で溶解する。したがって、可溶導体7は、低融点金属層18による高融点金属層19の浸食作用を利用して短時間で溶断することができる。また、可溶導体7の溶融導体7aは、発熱体引出電極6及び第1、第2の電極4,5に設けた接続部8の物理的な引き込み作用により分断されることから、速やかに、かつ確実に、第1、第2の電極4,5間の電流経路を遮断することができる(
図2)。
【0051】
また、可溶導体7は、低融点金属層18の体積を、高融点金属層19の体積よりも多く形成することが好ましい。可溶導体7は、過電流による自己発熱又は発熱体3の発熱によって加熱され、低融点金属が溶融することにより高融点金属を溶食し、これにより速やかに溶融、溶断することができる。したがって、可溶導体7は、低融点金属層18の体積を高融点金属層19の体積よりも多く形成することにより、この溶食作用を促進し、速やかに第1、第2の電極4,5間を遮断することができる。
【0052】
また、可溶導体7は、内層となる低融点金属層18に高融点金属層19が積層されて構成されているため、溶断温度を従来の高融点金属からなるチップヒューズ等よりも大幅に低減することができる。したがって、可溶導体7は、同一サイズのチップヒューズ等に比して、断面積を大きくでき電流定格を大幅に向上させることができる。また、同じ電流定格をもつ従来のチップヒューズよりも小型化、薄型化を図ることができ、速溶断性に優れる。
【0053】
また、可溶導体7は、保護素子1が組み込まれた電気系統に異常に高い電圧が瞬間的に印加されるサージへの耐性(耐パルス性)を向上することができる。すなわち、可溶導体7は、例えば100Aの電流が数msec流れたような場合にまで溶断してはならない。この点、極短時間に流れる大電流は導体の表層を流れることから(表皮効果)、可溶導体7は、外層として抵抗値の低いAgメッキ等の高融点金属層19が設けられているため、サージによって印加された電流を流しやすく、自己発熱による溶断を防止することができる。したがって、可溶導体7は、従来のハンダ合金からなるヒューズに比して、大幅にサージに対する耐性を向上させることができる。
【0054】
なお、可溶導体7は、酸化防止、及び溶断時の濡れ性の向上等のため、フラックス(図示せず)を塗布してもよい。また、保護素子1は、絶縁基板2がケース30に覆われることによりその内部が保護されている。ケース30は、例えば、各種エンジニアリングプラスチック、熱可塑性プラスチック、セラミックス、ガラスエポキシ基板等の絶縁性を有する部材を用いて形成することができる。また、ケース30は、絶縁基板2の表面2a上に、可溶導体7が溶融時に球状に膨張し、溶融導体7aが発熱体引出電極6や第1、第2の電極4,5上に凝集するのに十分な内部空間を有する。
【0055】
[回路構成例]
このような保護素子1は、例えばリチウムイオン二次電池のバッテリパック20内の回路に組み込まれて用いられる。バッテリパック20は、複数の、例えば
図6に示すように、合計4個のリチウムイオン二次電池のバッテリセル21a~21dからなるバッテリスタック25を有する。
【0056】
バッテリパック20は、バッテリスタック25と、バッテリスタック25の充放電を制御する充放電制御回路26と、バッテリスタック25の異常時に充放電経路を遮断する本発明が適用された保護素子1と、各バッテリセル21a~21dの電圧を検出する検出回路27と、検出回路27の検出結果に応じて保護素子1の動作を制御するスイッチ素子となる電流制御素子28とを備える。
【0057】
バッテリスタック25は、過充電及び過放電状態から保護するための制御を要するバッテリセル21a~21dが直列接続されたものであり、バッテリパック20の正極端子20a、負極端子20bを介して、着脱可能に充電装置22に接続され、充電装置22からの充電電圧が印加される。充電装置22により充電されたバッテリパック20は、正極端子20a、負極端子20bをバッテリで動作する電子機器に接続することによって、この電子機器を動作させることができる。
【0058】
充放電制御回路26は、バッテリスタック25と充電装置22との間の電流経路に直列接続された2つの電流制御素子23a、23bと、これらの電流制御素子23a、23bの動作を制御する制御部24とを備える。電流制御素子23a、23bは、たとえば電界効果トランジスタ(以下、FETという。)により構成され、制御部24によりゲート電圧を制御することによって、バッテリスタック25の電流経路の充電方向及び/又は放電方向への導通と遮断とを制御する。制御部24は、充電装置22から電力供給を受けて動作し、検出回路27による検出結果に応じて、バッテリスタック25が過放電又は過充電であるとき、電流経路を遮断するように、電流制御素子23a、23bの動作を制御する。
【0059】
保護素子1は、例えば、バッテリスタック25と充放電制御回路26との間の充放電電流経路上に接続され、その動作が電流制御素子28によって制御される。
【0060】
検出回路27は、各バッテリセル21a~21dと接続され、各バッテリセル21a~21dの電圧値を検出して、各電圧値を充放電制御回路26の制御部24に供給する。また、検出回路27は、バッテリセル21a~21dのいずれか1つが過充電電圧又は過放電電圧になったときに電流制御素子28を制御する制御信号を出力する。
【0061】
電流制御素子28は、たとえばFETにより構成され、検出回路27から出力される検出信号によって、バッテリセル21a~21dの電圧値が所定の過放電又は過充電状態を超える電圧になったとき、保護素子1を動作させて、バッテリスタック25の充放電電流経路を電流制御素子23a、23bのスイッチ動作によらず遮断するように制御する。
【0062】
以上のような構成からなるバッテリパック20に用いられる、本発明が適用された保護素子1は、
図7に示すような回路構成を有する。すなわち、保護素子1は、第1の外部接続電極11がバッテリスタック25側と接続され、第2の外部接続電極12が正極端子20a側と接続され、これにより可溶導体7がバッテリスタック25の充放電経路上に直列に接続される。また、保護素子1は、発熱体3が発熱体電極17を介して電流制御素子28と接続されるとともに、発熱体3がバッテリスタック25と接続される。このように、発熱体3は、一端を発熱体引出電極6を介して可溶導体7及びバッテリスタック25の一端と接続され、他端を発熱体電極17を介して電流制御素子28及びバッテリスタック25の他端と接続される。これにより電流制御素子28によって通電が制御可能な発熱体3への給電経路が形成される。
【0063】
[保護素子の動作]
検出回路27がバッテリセル21a~21dのいずれかの異常電圧を検出すると、電流制御素子28へ遮断信号を出力する。すると、電流制御素子28は、発熱体3に通電するよう電流を制御する。保護素子1は、バッテリスタック25から、発熱体3に電流が流れ、これにより発熱体3が発熱を開始する。保護素子1は、発熱体3の発熱により可溶導体7が溶断し、バッテリスタック25の充放電経路を遮断する。また、保護素子1は、可溶導体7を高融点金属と低融点金属とを含有させて形成することにより、高融点金属の溶断前に低融点金属が溶融し、溶融した低融点金属による高融点金属の溶食作用を利用して短時間で可溶導体7を溶解させることができる。
【0064】
可溶導体7の溶融導体7aは、第1の電極4、第2の電極5、及び発熱体引出電極6に形成された接続部8に凝集し、各電極間が遮断される。接続部8は、接続電極10がそれ以外の部分から突出しているため、溶融導体7aが接続部8上に凝集するように、第1、第2の電極4,5側に積極的に張力が作用し、より速やかに第1の電極4と発熱体引出電極6との間、及び第2の電極5と発熱体引出電極6との間を溶断することができる。また、可溶導体7の速やかな溶断が可能となることで、発熱体3が可溶導体7の溶断よりも先に損傷することも防止することができ、安全かつ速やかに電流経路を遮断できる。
【0065】
保護素子1は、可溶導体7が溶断することにより、発熱体3への給電経路も遮断されるため、発熱体3の発熱が停止される。
【0066】
なお、保護素子1は、バッテリパック20に定格を超える過電流が通電された場合にも、可溶導体7が自己発熱により溶融し、バッテリパック20の充放電経路を遮断することができる。
【0067】
このように、保護素子1は、発熱体3の通電による発熱、あるいは過電流による可溶導体7の自己発熱によって可溶導体7が溶断する。上述したように、保護素子1は、回路基板へのリフロー実装時や、保護素子1が実装された回路基板が更にリフロー加熱等の高温環境下に曝された場合にも、低融点金属が高融点金属によって被覆された構造を有することにより、可溶導体7の変形が抑制されている。したがって、可溶導体7の変形による抵抗値の変動等に起因する溶断特性の変動が防止され、所定の過電流や発熱体3の発熱によって速やかに溶断することができる。
【0068】
本発明に係る保護素子1は、リチウムイオン二次電池のバッテリパックに用いる場合に限らず、電気信号による電流経路の遮断を必要とする様々な用途にももちろん応用可能である。
【0069】
[変形例1]
本技術が適用された保護素子の変形例について説明する。なお、以下の説明において上述した保護素子1と同じ部材については同一の符号を付してその詳細を省略することがある。
図8に示す保護素子40は、絶縁基板2の表面2aに発熱体3、第1の引出電極15、第2の引出電極16、発熱体電極17、及び絶縁保護層9を形成したものであり、その他の構成は上述した保護素子1と同様である。
【0070】
図9は、保護素子40において、ケース30、発熱体引出電極6、及び可溶導体7を省略して示す平面図である。発熱体電極17及び中間電極14は、絶縁基板2の表面2aの第1、第2の電極4,5が設けられた側縁と異なる相対向する側縁に形成されている。発熱体電極17は、キャスタレーションを介して絶縁基板2の裏面2bに形成された第3の外部接続電極13と連続されている。第3の外部接続電極13は、保護素子40が外部回路に実装されることにより、電流制御素子28と接続される。
【0071】
なお、発熱体電極17は、第1、第2の電極4,5と同様に、第3の外部接続電極13と接続される外部回路基板の電極に設けられた接続用ハンダがリフロー実装等において溶融し、キャスタレーションを介して発熱体電極17上に這い上がり、発熱体電極17上に濡れ拡がることを防止する規制壁を設けてもよい。
【0072】
発熱体3、第1の引出電極15及び第2の引出電極16は、第1の電極4と第2の電極5の間の領域に形成され、絶縁保護層9で被覆される。また、発熱体引出電極6は、一端を中間電極14と接続されるとともに、絶縁保護層9上に形成され、これにより絶縁保護層9を介して発熱体3と重畳されている。
【0073】
保護素子40は、発熱体3が可溶導体7と同じ絶縁基板2の表面2aに形成されているため、発熱体3の熱が可溶導体7に伝達しやすくなる。
【0074】
[変形例2]
次いで、本技術が適用された保護素子の他の変形例について説明する。なお、以下の説明において上述した保護素子1,40と同じ部材については同一の符号を付してその詳細を省略することがある。
図10に示すように、本技術が適用された保護素子50は、発熱体引出電極6を省略し、可溶導体7の通電経路と、発熱体3の通電経路を分けている。絶縁基板2の裏面2bに設けられた発熱体3は、一端を第1の引出電極15を介して発熱体電極17と接続され、他端を第2の引出電極16を介して中間電極14と接続されている。
【0075】
図11は、保護素子50の回路構成を示す図である。保護素子50は、保護素子50が外部回路に実装されることにより、第1の外部接続電極11がバッテリスタック25側と接続され、第2の外部接続電極12が正極端子20a側と接続され、これにより可溶導体7がバッテリスタック25の充放電経路上に直列に接続される。発熱体3は、発熱体電極17を介して電流制御素子28と接続されるとともに、バッテリスタック25と接続される。また、発熱体3は、中間電極14を介して図示しないアースと接続される。これにより電流制御素子28によって通電が制御可能な発熱体3への給電経路が形成される。保護素子50は、可溶導体7が溶断すると、これを検知した検出回路27及び電流制御素子28によって発熱体3への通電が停止される。
【符号の説明】
【0076】
1 保護素子、2 絶縁基板、3 発熱体、4 第1の電極、5 第2の電極、6 発熱体引出電極、7 可溶導体、8 接続部、9 絶縁保護層、10 接続電極、11 第1の外部接続電極、12 第2の外部接続電極、13 第3の外部接続電極、14 中間電極、15 第1の引出電極、16 第2の引出電極、17 発熱体電極、18 低融点金属層、19 高融点金属層、20 バッテリパック、21 バッテリセル、22 充電装置、23 電流制御素子、24 制御部、25 バッテリスタック、26 充放電制御回路、27 検出回路、28 電流制御素子、30 ケース、40 保護素子、50 保護素子