(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171403
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ドレントラップおよびドレントラップ用ドレン管
(51)【国際特許分類】
F16T 1/22 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
F16T1/22 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088379
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(72)【発明者】
【氏名】山田 光俊
(72)【発明者】
【氏名】節田 一真
(57)【要約】
【課題】塗装等、従来通りの仕様を満足しつつ、ドレントラップのドレン管の耐浸食性能を向上させる。
【解決手段】ドレントラップ10は、ドレンが流入するドレン入口12、およびドレン入口19と接続するドレン貯留室15を有するケーシング本体13と、ケーシング本体13に設けられてドレン貯留室15と接続する弁孔22と、ドレン貯留室15に配置されて弁孔22を開閉するフロート23と、一端部36がケーシングに接続されて弁孔22と対向し、他端部37がケーシング本体37の外部へ延びるドレン管31とを備える弁装置において、ドレン管31はステンレス鋼の内管32およびステンレス鋼以外の他の金属管である外管33を含む二重管であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレンが流入するドレン入口、および前記ドレン入口に接続されるドレン貯留室を有するケーシングと、
前記ケーシングに設けられて前記ドレン貯留室と接続する弁孔と、
前記ドレン貯留室に配置されて前記弁孔を開閉する弁体と、
一端が前記弁孔と対向するように前記ケーシングに接続され、他端が前記ケーシングの外部へ延びるドレン管とを備えるドレントラップにおいて、
前記ドレン管は、ステンレス鋼管からなる内管およびステンレス鋼以外の金属からなる外管を含む二重管であることを特徴とする、ドレントラップ。
【請求項2】
前記外管は炭素鋼管である、請求項1に記載のドレントラップ。
【請求項3】
前記ドレン管は曲がっている、請求項1に記載のドレントラップ。
【請求項4】
前記弁孔は、前記ドレン入口の軸線に対して斜めに延びる軸線を有し、
前記ドレン管の前記他端が前記ドレン入口の軸線と平行に指向するか、あるいは前記ドレン入口の軸線に対して直角に指向するよう、前記ドレン管は曲がっている、請求項3に記載のドレントラップ。
【請求項5】
前記外管の外周面に形成される亜鉛含有皮膜を備える、請求項1~4のいずれかに記載のドレントラップ。
【請求項6】
ドレン貯留室を有するケーシングと、前記ケーシングに設けられて前記ドレン貯留室と接続する弁孔と、前記ドレン貯留室に配置されて前記弁孔を開閉する弁体とを備えるドレントラップに対し、一端が前記弁孔と対向するように前記ケーシングに接続され、他端が前記ケーシングの外部へ延びるドレン管であって、
ステンレス鋼管からなる内管と、ステンレス鋼以外の金属からなる外管とで二重管を構成する、ドレントラップ用ドレン管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気が流れる流体通路に設けられて、流体通路内に生じる不要な液体(ドレン)を当該流体通路から排出するドレントラップおよびドレントラップ用ドレン管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のドレントラップとして例えば、特開2019-199878号公報(特許文献1)に記載のものが知られている。特許文献1のドレントラップは、弁室を区画するケーシングと、弁室内に配置される球状の弁体と、ケーシングに設けられて弁室に接続する弁孔と、一端がケーシングに接続されて弁孔と同軸に配列される接続管と、接続管の他端に接続される温度応動弁とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで特許文献1記載のドレントラップにおいて、通常の流量よりも多くのドレンをドレントラップから流出させようとすると、高温かつ高圧のドレンが弁孔から多量かつ高頻度に排出されるため、弁孔から流出したドレンが接続管の内周面に衝突し、接続管が徐々に浸食ないし腐食する虞がある。
【0005】
そこで耐浸食性能や耐腐食性能に優れた材料、例えばステンレス鋼管を上述した接続管に採用することが考えられる。一方、接続管は外気に晒されることから、防錆対策として塗装やメッキを施すことが要求されるが、ステンレス鋼は塗装という点において難点がある。例えば亜鉛含有塗装が要求されるプラント設備では、亜鉛成分によってステンレス鋼の腐食がかえって促進されてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上述の実情に鑑み、ドレンによる浸食および腐食を抑制しつつ、防錆加工を施すことができるドレントラップおよびドレントラップ用ドレン管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため本発明によるドレントラップは、ドレンが流入するドレン入口、およびドレン入口に接続されるドレン貯留室を有するケーシングと、ケーシングに設けられてドレン貯留室と接続する弁孔と、ドレン貯留室に配置されて弁孔を開閉する弁体と、一端が弁孔と対向するようにケーシングに接続され、他端がケーシングの外部へ延びるドレン管とを備えるドレントラップにおいて、ドレン管はステンレス鋼管からなる内管およびステンレス鋼以外の金属からなる外管を含む二重管であることを特徴とする。
【0008】
かかる本発明によれば、ドレン管の内周面がステンレス鋼で構成されることから、ドレン管の耐浸食性能および耐腐食性能が向上する。したがって高温かつ高圧のドレンを、多量かつ高頻度でドレン管に流すことができる。またドレン管の外周面がステンレス鋼以外の別な金属で構成されることから、ドレン管の外周面に防錆加工、すなわち塗装やメッキを施すことが可能となり、設備の外部環境に対応することができる。例えば、外管をケーシングの材料と同じにすることにより、ドレントラップ全体の強度および耐久性能を確保することができる。外管およびケーシングは例えば炭素鋼からなる。あるいは外管およびケーシングは、鉄を主成分とし、鉄以外の他の金属を添加物とする合金鋼である。なおドレン管の一端が弁孔と対向するとは、互いに向き合っていれば足り、厳密に整列する必要はない。
【0009】
ドレン管の形状は特に限定されないが、本発明の一局面として、ドレン管は曲がっている。かかる局面によれば、内管と外管の間に隙間がある場合であっても、内管の抜け出しが防止される。他の局面として、ドレン管は直管であってもよい。
【0010】
本発明の一局面として弁孔は、ドレン入口の軸線に対して斜めに延びる軸線を有し、ドレン管の他端がドレン入口の軸線と平行に指向するか、あるいはドレン入口の軸線に対して直角に指向するよう、ドレン管は曲がっている。かかる局面によれば、ドレン管の他端の向きがドレン入口の向きと平行か、あるいは直角になるので、設備の配管レイアウトを整然とさせることができる。
【0011】
本発明の好ましい局面としてドレントラップは、外管の外周面に形成される亜鉛含有皮膜を備える。かかる局面によれば、亜鉛含有皮膜が要求される設備に適合することができる。亜鉛含有皮膜は例えばジンクリッチペイント(亜鉛含有塗装)である。
【0012】
また本発明によるドレントラップ用ドレン管は、ドレン貯留室を有するケーシングと、ケーシングに設けられてドレン貯留室と接続する弁孔と、ドレン貯留室に配置されて弁孔を開閉する弁体とを備えるドレントラップに対し、一端が弁孔と対向するようにケーシングに接続され、他端がケーシングの外部へ延びるドレン管であって、ステンレス鋼管からなる内管と、ステンレス鋼以外の金属からなる外管とで二重管を構成する。かかる本発明によれば、ドレン管の内周面がステンレス鋼で構成されることから、ドレン管の耐浸食性能および耐腐食性能が向上する。したがって高温かつ高圧のドレンを、多量かつ高頻度でドレン管に流すことができる。またドレン管の外周面がステンレス鋼以外の別な金属で構成されることから、ドレン管の外周面に防錆加工、すなわち塗装やメッキを施すことが可能となり、設備の外部環境に対応することができる。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明によれば、ドレンによる浸食および腐食を抑制しつつ、防錆加工を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態になるドレントラップ10を示す縦断面図である。
【0016】
ドレントラップ10は、流入管11と、ケーシング13と、ケーシング蓋体14と、弁機構21と、ドレン管31を備える。ケーシング13はケーシング本体13aおよびケーシング蓋体13bを含む。ドレン貯留室15はケーシング本体13aによって画成され、ケーシング本体13aの上端開口はケーシング蓋体13bによって封止される。またケーシング本体13aの上部には、ドレン貯留室15と接続するドレン入口12が形成される。ケーシング本体13の外側からドレン入口12に流入管11が接続される。流入管11は端部にフランジを有し、かかるフランジを介して相手材のフランジ管(図略)に接続固定される。本実施形態では、ドレン入口12の軸線L1が水平方向に真っ直ぐ延びる。つまりドレン入口12は水平方向に開口する。
【0017】
弁機構21は、概略円筒形状の弁孔部材24と、弁体としてのフロート23を有する。弁孔部材24の一端は、他端側よりも小径とされ、弁孔22を構成する。また弁孔22がドレン貯留室15側になるようにして、弁孔部材24は斜め姿勢でケーシング本体13の下部に取付固定される。弁孔部材24の軸線L2は軸線L1に対して斜めに真っ直ぐ延びる。そして弁孔22は、ドレン入口12の軸線L1に対して斜めに開口している。具体的には弁孔22は、ケーシング本体13aの内側から外側へ、斜め下向きに指向する。フロート23は、ドレン貯留室15に収納される。
【0018】
ドレン貯留室15の上側には、スクリーン26およびフロートカバー27が設けられる。球面状のフロートカバー27は、ドレン貯留室15を上下に区画し、フロート23の上方位置を規制する。スクリーン26は、上方からフロートカバー27を覆い、ドレン入口12から流入するドレン中の異物を捕捉する。流入管11からケーシング本体13の内部に流入するドレンは、スクリーン26およびフロートカバー27を通過してドレン貯留室15へ流下する。
【0019】
ドレントラップ10は、ケーシング本体13aに形成されてドレン貯留室15と隣り合う通路16をさらに備える。通路16の下端部は、弁孔部材24の他端と接続する。通路16の上端部17は、ドレン入口12と同じ高さ位置から直角方向に向きを変えてさらに延びる。軸線L1で示すように上端部17とドレン入口12は同軸と配置される。なお、上端部17はプラグ18で封止される。図示しない変形例として、プラグ18の代わりに他の管路や弁装置を上端部17に接続してもよい。
【0020】
ケーシング本体13には、通路16の下端部と接続するドレン出口19が形成される。ドレン出口19は、通路16の下端部によって弁孔部材24から隔てられているが、軸線L2で示すように弁孔部材24と同軸に整列する。
【0021】
ドレン管31は二重管であって、内管32と、外管33と、フランジ34,35を有する。外管33は、炭素鋼管といった高温配管用炭素鋼鋼管、あるいは鉄を主成分とし鉄以外の金属を添加物として含む合金鋼管といった他の金属管である。本実施形態の外管33は、ケーシング本体13と同じ材質であるが、内管32とは異なる材質である。外管33の外周面には、ジンクリッチペイント等、亜鉛を有効成分として含む亜鉛含有皮膜、あるいは他の防錆膜を設けることができる。
【0022】
これに対し内管32は、外管33に通されるステンレス鋼管であり、耐浸食性能および耐腐食性能に優れる。内管32の材料はオーステナイトステンレス鋼、例えば日本産業規格JISに規定されるSUS304である。内管32と外管33は隙間無く密着してもよいが、両者の間に隙間があってもよい。
【0023】
ここで附言すると、ドレン管31はステンレス鋼の一重管であってはならない。この理由として、ドレントラップ10が装着される設備によっては亜鉛含有塗装や他の塗装が要求されるところ、ステンレス鋼は亜鉛含有塗装に不適なためである。またコスト上の問題もある。
【0024】
フランジ34,35はドレン管31の両端部にそれぞれ設けられる。本実施形態のフランジ34,35は、溶接38等により、外管33の外周面に接合される。ドレン管31の一端部36に関し、溶接38は、内管31および外管32の端面の全周に沿って延び、内管31および外管32の隙間を封止するとともに、フランジ34の内周面と接合して、フランジ34および外管32の隙間も封止する。ドレン管31の他端部37の溶接38に関しても同様であり、フランジ35の内周面と接合する。
【0025】
ドレン管31の一端部36はフランジ34によってケーシング本体13に固定される。そしてドレン管31の一端部36はドレン出口19に接続され、弁孔22と対向する。本実施形態では軸線L2で示すように弁孔22とドレン管31の一端部が同軸に配置される。
【0026】
ドレン管31の他端に設けられるフランジ35は、図示しないフランジ管に接続固定される。図示しない変形例として、フランジ35に代えて、ドレン管31の他端は他の装置あるいは部材と接続してもよい。
【0027】
本実施形態のドレン管31は、曲がっている。具体的には、ドレン管31の中央区間が曲げ加工され、一端部36を含む区間が勾配を伴って斜めに真っ直ぐに延び、他端部37を含む区間が略水平に真っ直ぐ延びる。具体的には、弁孔22の中心と、ドレン出口19の中心と、一端部36の中心と、他端部37の中心が、この順序で低くなるよう配置されて、斜めに延びる軸線L2が水平方向に延びる他端部37の軸線L3に滑らかに接続する。
【0028】
本実施形態では、一端部36の軸線L2と、他端部37の軸線L3とが鈍角を構成する。また他端部37の軸線L3は、ドレン入口12の軸線L1と平行に延びる。あるいは図示しない第1変形例として、他端部37の軸線L3は、軸線L1と直角であってもよい。あるいは図示しない第2変形例としてドレン管31は直管であってもよい。
【0029】
次に、ドレントラップ10の動作を説明する。
図1中、ドレン貯留室15に貯留するドレンは無いかあるいは僅かであり、フロート23はドレン貯留室の底部20に接触し、弁孔22を塞ぐ閉弁位置にある。
【0030】
高温のドレンが流入管11からドレン貯留室15に流入すると、フロート23はドレン貯留室15内で上方移動し、弁孔22から離れる開弁位置にされる。そうすると高温のドレンが弁孔22からドレン管31に向かって噴出し、内管32を流れる。こうして、ドレン貯留室15に流入したドレンがドレン管31から排出される。
【0031】
ここで、本実施形態のドレントラップ10によれば、ドレン管31がステンレス鋼からなる内管32を含むので、耐浸食性能および耐腐食性能に優れる。そのため、高温かつ高圧のドレンが多量かつ頻繁にドレン管31に流れても、ドレンによるドレン管31の浸食および腐食を抑制することができる。また、ドレン管31が炭素鋼からなる外管33を含むので、ドレン管31の外周面に亜鉛含有塗装を施すことができる。そのため、ドレン管31に防錆加工を施すことができる。
【0032】
また本実施形態のドレン管31は、直管を曲げ加工して得られる。これにより内管32と外管33の間に隙間が介在する場合であっても、内管32が外管33から抜け出すことが防止される。そのため、外管32の両端にフランジ34,35を接合する作業が容易となる。
【0033】
また本実施形態の弁孔22は、ドレン入口12の軸線L1に対して斜めに延びる軸線L1を有する。その一方で ドレン管31の他端部37がドレン入口12の軸線L1と平行に指向するよう、ドレン管31は曲がっている。これにより、ドレン管31の他端部37からさらに延びる設備の配管レイアウトを整然とさせることができる。
【0034】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、蒸気配管設備において有利に利用される。
【符号の説明】
【0036】
10 ドレントラップ、 11 流入管、 12 ドレン入口、
13 ケーシング本体(ケーシング)、 15 ドレン貯留室、
19 ドレン出口、 21 弁機構、 22 弁孔、
23 フロート(弁体)、 31 ドレン管、
32 内管(ステンレス鋼管)、 33 外管(他の金属管)、
36 ドレン管の一端部、 37 ドレン管の他端部。