(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171404
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】建設作業用ロボット
(51)【国際特許分類】
E04F 21/18 20060101AFI20241205BHJP
E04G 21/16 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
E04F21/18 A
E04G21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088381
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】八條 貴誉
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 俊介
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA03
2E174BA01
2E174DA17
2E174DA52
(57)【要約】
【課題】ボードを隙間なく位置決めすることが可能な建設作業用ロボットを提供する。
【解決手段】基台と、基台に設けられるとともに敷設ボードを着脱自在に把持するボード把持部を具備し、ボード把持部の移動が自在なボード吸着ユニットと、基台に設けられるとともに距離センサを具備し、距離センサの移動が自在な計測ユニットと、天井下地に既設された既設ボードの周囲に距離センサが配置されるように計測ユニットを制御し、距離センサの検出値に基づいてボード把持部が把持している敷設ボードを既設ボードに押し付けるようにボード吸着ユニットを制御する制御装置とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台に設けられるとともに敷設ボードを着脱自在に把持するボード把持部を具備し、前記ボード把持部の移動が自在なボード吸着ユニットと、
前記基台に設けられとともに距離センサを具備し、前記距離センサの移動が自在な計測ユニットと、
下地に既設された既設ボードの周囲に前記距離センサが配置されるように前記計測ユニットを制御し、前記距離センサの検出値に基づいて前記ボード把持部が把持している前記敷設ボードを前記既設ボードに押し付けるように前記ボード吸着ユニットを制御する制御装置と
を備えることを特徴とする建設作業用ロボット。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記既設ボードから所定距離を空けた位置に前記敷設ボードを移動させるように前記ボード吸着ユニットを先行制御し、
前記敷設ボードを前記所定距離だけ追加移動させるように前記ボード吸着ユニットを追加制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の建設作業用ロボット。
【請求項3】
前記既設ボード及び前記敷設ボードが矩形状であった場合、
前記制御装置は、前記敷設ボードにおいて直交する2辺について前記既設ボードに押し付けるように前記ボード吸着ユニットを制御する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の建設作業用ロボット。
【請求項4】
前記距離センサは、前記既設ボードの周囲における前記下地までの距離を検出する一次元センサであることを特徴とする請求項1又は2に記載の建設作業用ロボット。
【請求項5】
前記ボード把持部は、吸着パッドによって前記敷設ボードを把持するとともに前記吸着パッドの根元にゴムブッシュを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の建設作業用ロボット。
【請求項6】
前記制御装置は、前記ボード吸着ユニット及び前記計測ユニットとの信号の授受が自在な産業用コンピュータであることを特徴とする請求項1又は2に記載の建設作業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設作業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、部材の取付け作業を代替又はアシストすることのできる建設作業用ロボットが開示されている。この建設作業用ロボットは、部材を母体に取付けるために用いられる建設作業用ロボットであって、基台と、基台に設けられたマニピュレータと、マニピュレータの先端に着脱自在に設けられたエンドエフェクタと、マニピュレータの先端に設けられ、部材及び母体の種別並びに位置を認識する認識手段と、エンドエフェクタと母体の位置関係を計測する計測手段とを備え、マニピュレータは、予め設定した母体の位置へマニピュレータの先端を接近移動させる移動制御手段を有し、エンドエフェクタは、部材保持手段と取付け操作手段と監視手段とを有する。
【0003】
このような建設作業用ロボットによれば、従来、作業員が手作業で行っていた部材の取付け作業を、この建設作業用ロボットで代替又はアシストすることができる。特に、取付け箇所が多数あり、取付け作業を多数回繰り返す必要がある場合には、作業員の負担を大幅に軽減することができるので、作業の省力化ないし省人化を図ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、内装工事の一つであるボード工事では、石膏ボードを下地にビスで固定する施工工事が行われている。このボード工事では、作業員が石膏ボードを決められた割付で隙間なく、決められたピッチで下地材にビスで固定していく。天井に石膏ボード等のボードを貼る際は上向けかつ高所での作業となるが、ボード間の隙間は施工不良に繋がる大きな問題となるため信頼度が求められる。
【0006】
しかしながら、このようなボード工事に上記建設作業用ロボットを適用しようとした場合、ボード間の隙間が施工要求を満足するようにボードを位置決めすることが困難である。ボード工事では、作業効率も要求されるので、できるだけ迅速にボードの位置決めを行って天井に貼り付けることが要求される。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ボードを隙間なく位置決めすることが可能な建設作業用ロボットの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、建設作業用ロボットに係る第1の解決手段として、基台と、前記基台に設けられるとともに敷設ボードを着脱自在に把持するボード把持部を具備し、前記ボード把持部の移動が自在なボード吸着ユニットと、前記基台に設けられとともに距離センサを具備し、前記距離センサの移動が自在な計測ユニットと、下地に既設された既設ボードの周囲に前記距離センサが配置されるように前記計測ユニットを制御し、前記距離センサの検出値に基づいて前記ボード把持部が把持している前記敷設ボードを前記既設ボードに押し付けるように前記ボード吸着ユニットを制御する制御装置とを備える、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、建設作業用ロボットに係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記制御装置は、前記既設ボードから所定隙間を空けた位置に前記敷設ボードを移動させるように前記ボード吸着ユニットを先行制御し、前記敷設ボードを前記所定距離だけ追加移動させるように前記ボード吸着ユニットを追加制御する、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、建設作業用ロボットに係る第3の解決手段として、上記第1又は第2の解決手段において、前記既設ボード及び前記敷設ボードが矩形状であった場合、前記制御装置は、前記敷設ボードにおいて直交する2辺について前記既設ボードに押し付けるように前記ボード吸着ユニットを制御する、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、建設作業用ロボットに係る第4の解決手段として、上記第1~第3のいずれかの解決手段において、前記距離センサは、前記既設ボードの周囲における前記下地までの距離を検出する一次元センサである、という手段を採用する。
【0012】
本発明では、建設作業用ロボットに係る第5の解決手段として、上記第1~第4のいずれかの解決手段において、前記ボード把持部は、吸着パッドによって前記敷設ボードを把持するとともに前記吸着パッドの根元にゴムブッシュを備える、という手段を採用する。
【0013】
本発明では、建設作業用ロボットに係る第6の解決手段として、上記第1~第5のいずれかの解決手段において、前記制御装置は、前記ボード吸着ユニット及び前記計測ユニットとの信号の授受が自在な産業用コンピュータである、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ボードを隙間なく位置決めすることが可能な建設作業用ロボットを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る建設作業用ロボットの全体構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る建設作業用ロボットの制御構成の動作を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る建設作業用ロボットの動作を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る建設作業用ロボットの動作を示す第1の模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る建設作業用ロボットの動作を示す第2の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る建設作業用ロボットAは、
図1に示すような全体構成を備えている。すなわち、この建設作業用ロボットAは、基台1、第1、第2のマニピュレータ2a、2b、ボード把持部3及び距離センサ4を備える。
【0017】
ここで、基台1、第1、第2のマニピュレータ2a、2b、ボード把持部3及び距離センサ4のうち、基台1、第1のマニピュレータ2a及びボード把持部3は、ボード吸着ユニットKを構成している。また、基台1、第1、第2のマニピュレータ2a、2b、ボード把持部3及び距離センサ4のうち、基台1、第2のマニピュレータ2b及び距離センサ4は、計測ユニットHを構成している。
【0018】
このような建設作業用ロボットAは、
図4や
図5に示すように、敷設ボードBを天井下地Cに敷設する際に用いられる産業用ロボットである。すなわち、建設作業用ロボットAは、全体として平板な天井下地Cの表面(下面)に対して平板かつ矩形状の敷設ボードBを順次貼り付けるボード工事をサポートする。
【0019】
ここで、敷設ボードBは、建設作業用ロボットAを用いることにより天井下地Cの下面にこれから敷設される平板状のボードであり、例えば建築資材として周知な石膏ボードである。また、
図4において、符号Baは、建設作業用ロボットAを用いることにより、天井下地Cの下面に先に敷設された既設ボードである。
【0020】
基台1は、走行台車として機能するものであり、タブレット端末を通した自動制御により自律走行可能な台車である。すなわち、基台1の下部にはホイール式の走行部が設けられており、また基台1の上部には第1、第2のマニピュレータ2a、2bが支持されている。
【0021】
第1のマニピュレータ2aは、図示するように多関節ロボットアームであり、基端部が基台1の上部に固定されている。また、この第1のマニピュレータ2aは、先端部にボード把持部3が装着されている。すなわち、第1のマニピュレータ2aは、ボード把持部3を三次元空間内で移動自在に支持する第1の移動手段である。
【0022】
第2のマニピュレータ2bは、第1のマニピュレータ2aと同様に多関節ロボットアームである。この第2のマニピュレータ2bは、基端部が基台1の上部に固定され、先端部に距離センサ4が装着されている。すなわち、第2のマニピュレータ2bは、距離センサ4を三次元空間内で移動自在に支持する第2の移動手段である。
【0023】
ボード把持部3は、ボードBを着脱自在に把持する把持機構であり、第1のマニピュレータ2aの先端部に装着されている。すなわち、ボード把持部3は、
図4に示すように、全体として平板状かつ矩形状の把持フレーム3aと、把持フレーム3aに離散的に設けられた複数の吸着パッド3b、3b、……とを備えている。また、ボード把持部3は、図示されていないが各吸着パッド3b、3b、……の根元にゴムブッシュ3cを備えている。
【0024】
このようなボード把持部3は、複数の吸着パッド3b、3b、……を敷設ボードBの片面(平面)に押し当てて真空吸着することによって当該敷設ボードBを把持する。また、このボード把持部3は、複数の吸着パッド3b、3b、……による敷設ボードBの片面(平面)への真空吸着を解消することにより敷設ボードBを解離させる。
【0025】
ここで、各吸着パッド3b、3b、……の根元にはゴムブッシュが各々設けられているので、各吸着パッド3b、3b、……を敷設ボードBの片面(平面)に押し当てた際の反力を効果的に吸収することができる。すなわち、複数のゴムブッシュ3cは、ボード把持部3を移動自在に支持する第1のマニピュレータ2aの過負荷を軽減するものである。
【0026】
距離センサ4は、一次元のレーザセンサであり、第2のマニピュレータ2bの先端部に装着されている。すなわち、距離センサ4は、一方向にレーザ光を照射することにより当該レーザ光を反射する物体までの距離を検出する。この距離センサ4は、
図4に示すように、既設ボードBの周囲のうち、既設ボードBの長辺に沿った1点を第1計測点Paとし、また既設ボードBの短辺に沿った1点を第2計測点Pbとする。
【0027】
すなわち、距離センサ4は、第1計測点Pa及び第2計測点Pbにおける天井下地Cの下方において、
図5に示すように天井下地Cに向けてレーザ光を照射することにより天井下地Cまでの距離を検出する。距離センサ4は、第1計測点Paにおいて第1検出値Laを取得し、また第2計測点Pbにおいて第2検出値Lbを取得する。
【0028】
ここで、上記第1計測点Paは、既設ボードBaの長辺から当該長辺に直交する方向に所定距離(例えば2mm)だけ離れた位置である。また、上記第2計測点Pbは、既設ボードBaの短辺から当該短辺に直交する方向に所定距離(例えば2mm)だけ離れた位置である。
【0029】
また、この建設作業用ロボットAは、
図2に示すような制御構成を備えている。すなわち、建設作業用ロボットAは、ボード吸着ユニットK及び計測ユニットHとの信号の授受が自在な産業用PC5(産業用コンピュータ)を備える。この産業用PC5は、予め搭載された制御プログラム(アプリケーション)に基づいてボード吸着ユニットK及び計測ユニットHを制御する制御装置である。
【0030】
次に、本実施形態に係る建設作業用ロボットAの動作について、
図3に示すフローチャートに沿って詳しく説明する。
【0031】
建設作業用ロボットAは、稼働を開始すると、最初に敷設ボードBを押付け待機位置に移動させる(ステップS1)。すなわち、産業用PC5は、ボード吸着ユニットKに対して敷設ボードBを押付け待機位置に移動させる制御信号を出力する。そして、ボード吸着ユニットKが上記制御信号に従って作動することにより、敷設ボードBが予め設定された押付け待機位置に移動する。
【0032】
ボード吸着ユニットKは、敷設ボードBを押付け待機位置に移動させると、産業用PC5に対して敷設ボードBの移動完了信号を出力する(ステップS2)。産業用PC5は、この移動完了信号がボード吸着ユニットKから入力されると、計測ユニットHに対して距離センサ4を第1計測点Paに移動させる移動開始指示を出力する(ステップS3)。
【0033】
計測ユニットHは、上記移動開始指示に従って作動することにより、距離センサ4を第1計測点Paに移動させる(ステップS4)。そして、計測ユニットHは、距離センサ4を第1計測点Paに移動させると、産業用PC5に対して距離センサ4の移動完了信号を出力する(ステップS5)。
【0034】
産業用PC5は、この移動完了信号が計測ユニットHから入力されると、計測ユニットHに対して測定開始指示を出力する(ステップS6)。そして、産業用PC5は、ボード吸着ユニットKに対して、敷設ボードBを第1計測点Paの方向(-x方向)つまり既設ボードBaの長辺側への移動(押付け)を開始させる移動開始指示を出力する(ステップS7)。
【0035】
このようにして距離センサ4による距離検出及び敷設ボードBの既設ボードBaの長辺側への移動が開始すると、産業用PC5は、第1計測点Paにおける距離センサ4の第1検出値Laが予め設定された閾値を下回るか否かを判断する(ステップS8)。そして、産業用PC5は、第1検出値Laが閾値を下回らない場合つまりステップS8の判断が「F」の場合、既設ボードBaの長辺側への押付けを継続させる(ステップS9)。
【0036】
一方、産業用PC5は、第1検出値Laが閾値を下回った場合つまりステップS8の判断が「T」の場合、敷設ボードBの既設ボードBaの長辺側への押付けを停止させる停止指示をボード吸着ユニットKに出力する(ステップS10)。ボード吸着ユニットKは、上記停止指示が産業用PC5から入力されると、敷設ボードBの既設ボードBaの長辺側への押付けを停止させる(ステップS11)。
【0037】
ここで、第1検出値Laが閾値を下回る状態つまりステップS8の判断が「T」になる状態は、
図5(a)に示すように距離センサ4が天井下地Cまでの距離を検出している状態から
図5(b)に示すように距離センサ4が天井下地Cに代わって敷設ボードBの表面までの距離を検出する状態に変化する状態である。
【0038】
すなわち、ステップS8の判断が「T」になるタイミングは、既設ボードBaの長辺側(-x方向)に徐々に移動する敷設ボードBが既設ボードBaの長辺から所定距離(例えば2mm)だけ離れた位置に差し掛かったタイミングである。このタイミングにおいて既設ボードBaの長辺側への押付けが停止されるので、敷設ボードBの長辺と既設ボードBaの長辺との間には所定距離(例えば2mm)に相当する隙間が形成されている。
【0039】
ボード吸着ユニットKは、ステップS11において敷設ボードBの既設ボードBaの長辺側(-x方向)への押付けを停止させると、引き続いて敷設ボードBを-x方向へ所定距離(例えば2mm)だけ移動させる(ステップS12)。そして、ボード吸着ユニットKは、この所定距離(例えば2mm)の移動が完了すると、業用PC5に対して押付け完了信号を出力する(ステップS13)。
【0040】
産業用PC5は、上記押付け完了信号がボード吸着ユニットKから入力されると、計測ユニットHに対して距離センサ4を第2計測点Pbに移動させる移動指示を出力する(ステップS14)。計測ユニットHは、上記移動指示に従って作動することにより、距離センサ4を第2計測点Pbに移動させる(ステップS15)。そして、計測ユニットHは、距離センサ4を第2計測点Pbに移動させると、産業用PC5に対して距離センサ4の移動完了信号を出力する(ステップS16)。
【0041】
産業用PC5は、この移動完了信号が計測ユニットHから入力されると、計測ユニットHに対して測定開始指示を出力する(ステップS17)。そして、産業用PC5は、ボード吸着ユニットKに対して、敷設ボードBを第2計測点Pbの方向(-y方向)つまり既設ボードBaの短辺側への移動(押付け)を開始させる移動開始指示を出力する(ステップS18)。
【0042】
このようにして距離センサ4による距離検出及び敷設ボードBの既設ボードBaの短辺側(-y方向)への移動が開始すると、産業用PC5は、第2計測点Pbにおける距離センサ4の第2検出値Lbが予め設定された閾値を下回るか否かを判断する(ステップS19)。そして、産業用PC5は、第2検出値Lbが閾値を下回らない場合つまりステップS19の判断が「F」の場合、既設ボードBaの短辺側への押付けを継続させる(ステップS20)。
【0043】
一方、産業用PC5は、第2検出値Lbが閾値を下回った場合つまりステップS19の判断が「T」の場合、敷設ボードBの既設ボードBaの短辺側への押付けを停止させる停止指示をボード吸着ユニットKに出力する(ステップS21)。ボード吸着ユニットKは、上記停止指示が産業用PC5から入力されると、敷設ボードBの既設ボードBaの短辺側への押付けを停止させる(ステップS22)。
【0044】
ここで、第2検出値Lbが閾値を下回る状態つまりステップS19の判断が「T」になる状態は、
図5(a)に示すように距離センサ4が天井下地Cまでの距離を検出している状態から
図5(b)に示すように距離センサ4が天井下地Cに代わって敷設ボードBの表面までの距離を検出する状態に変化する状態である。
【0045】
すなわち、ステップS19の判断が「T」になるタイミングは、既設ボードBaの短辺側(-y方向)に徐々に移動する敷設ボードBが既設ボードBaの短辺から所定距離(例えば2mm)だけ離れた位置に差し掛かったタイミングである。このタイミングにおいて既設ボードBaの短辺側への押付けが停止されるので、敷設ボードBの短辺と既設ボードBaの短辺との間には所定距離(例えば2mm)に相当する隙間が形成されている。
【0046】
ボード吸着ユニットKは、ステップS22において敷設ボードBの既設ボードBaの短辺側(-y方向)への押付けを停止させると、引き続いて敷設ボードBを-y方向へ所定距離(例えば2mm)だけ移動させる(ステップS23)。そして、ボード吸着ユニットKは、この所定距離(例えば2mm)の移動が完了すると、産業用PC5に対して押付け完了信号を出力する(ステップS24)。
【0047】
ボード吸着ユニットKから押付け完了信号が産業用PC5に入力されることによって、敷設ボードBの既設ボードBaの長辺側(-x方向)及び短辺側(-y方向)への押付けが完了したことになる。すなわち、建設作業用ロボットAによる敷設ボードBの既設ボードBaへの押し付け動作が終了する(ステップS25)。
【0048】
このような本実施形態によれば、建設作業用ロボットAが基台1と、基台1に設けられるとともに敷設ボードBを着脱自在に把持するボード把持部3を具備し、ボード把持部3の移動が自在なボード吸着ユニットKと、基台1に設けられとともに距離センサ4を具備し、距離センサ4の移動が自在な計測ユニットHと、天井下地Cに既設された既設ボードBaの周囲に距離センサ4が配置されるように計測ユニットHを制御し、距離センサ4の検出値に基づいてボード把持部3が把持している敷設ボードBを既設ボードBaに押し付けるようにボード吸着ユニットKを制御する産業用PC5(制御装置)とを備えるので、敷設ボードBを隙間なく位置決めすることが可能である。
【0049】
また、本実施形態によれば、産業用PC5(制御装置)は、既設ボードBaから所定距離を空けた位置に敷設ボードBを移動させるようにボード吸着ユニットKを先行制御し、敷設ボードを所定距離だけ追加移動させるようにボード吸着ユニットKを追加制御するので、既設ボードBaと敷設ボードBとの隙間をなくすことが可能である。
【0050】
また、本実施形態によれば、既設ボード及び敷設ボードが矩形状であった場合、制御装置は、敷設ボードにおいて直交する2辺について既設ボードに押し付けるようにボード吸着ユニットを制御するので、既設ボードBaと敷設ボードBとの各辺の隙間をなくすことが可能である。
【0051】
また、本実施形態によれば、距離センサ4は、既設ボードBaの周囲における天井下地Cまでの距離を検出する一次元センサなので、多次元センサに比べて産業用PC5(制御装置)の負荷を軽減することが可能である。
【0052】
また、本実施形態によれば、ボード把持部3は、吸着パッド3bによって敷設ボードBを把持するとともに吸着パッド3bの根元にゴムブッシュ3cを備えるので、すなわちゴムブッシュ3cが機械的なダンパとして機能するので、ボード把持部3を移動自在に支持する第1のマニピュレータ2aの過負荷を軽減することが可能である。
【0053】
さらに、本実施形態によれば、産業用PC5(制御装置)は、ボード吸着ユニットK及び計測ユニットHとの信号の授受が自在な産業用コンピュータなので、制御プログラム(アプリケーション)を修正することによって建設作業用ロボットAの動作を変更することが容易である。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、敷設ボードBを既設ボードBaの長辺側(-x方向)及び短辺側(-y方向)に押付けたが、本発明はこれに限定されない。例えば、既設ボードBaの長辺側(-x方向)又は短辺側(-y方向)のいずれか一方方向だけに敷設ボードBを押し付けてもよい。
【0055】
(2)上記実施形態では、長辺と短辺とを有する矩形状の敷設ボードBを同じく長辺と短辺とを有する矩形状の既設ボードBaに押し付ける場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、敷設ボードB及び既設ボードBaの形状は、長辺と短辺とを有する矩形状に限定されない。
【0056】
(3)上記実施形態では、天井下地Cに敷設ボードBを敷設する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、敷設ボードBの敷設箇所は、天井下地Cに限定されない。本願発明は、例えば建屋の側壁を形成する下地に敷設ボードBを敷設する場合にも適用可能である。
【0057】
(4)上記実施形態では、第2のマニピュレータ2bに距離センサ4を設けたが、本発明はこれに限定されない。第2のマニピュレータ2bの先端に距離センサ4に加えて他の機能装置を装着してもよい。例えば、他の機能装置としてビス打ち機構を設けてもよい。
【符号の説明】
【0058】
A 建設作業用ロボット
B 敷設ボード
Ba 既設ボード
H 計測ユニット
K ボード吸着ユニット
1 基台
2a 第1のマニピュレータ
2b 第2のマニピュレータ
3 ボード把持部
4 距離センサ
5 産業用PC(制御装置)