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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171410
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】プラスチック字消し
(51)【国際特許分類】
   B43L 19/00 20060101AFI20241205BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20241205BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20241205BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20241205BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B43L19/00 B
C08L27/06
C08K5/42
C08L67/00
C08L1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088390
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000134589
【氏名又は名称】株式会社トンボ鉛筆
(74)【代理人】
【識別番号】100201318
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 英龍
(72)【発明者】
【氏名】坂本 修規
(72)【発明者】
【氏名】花岡 貴文
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB01Y
4J002BD04W
4J002CD08X
4J002CD16X
4J002CF03X
4J002CF18X
4J002DE238
4J002DE268
4J002DJ018
4J002DJ048
4J002EF036
4J002EH046
4J002EV247
4J002FD018
4J002FD01Y
4J002FD026
4J002FD027
4J002GC00
(57)【要約】
【課題】十分な消字性能を有しつつ、持続可能な材料であるバイオマス由来の材料の割合(バイオマス度)が、より高いプラスチック字消しを提供する。
【解決手段】本発明のプラスチック字消しは、少なくとも基材樹脂としての塩化ビニル系樹脂と、バイオマス由来の可塑剤とを含有する。また、本発明のプラスチック字消しは、さらにバイオマス由来の充填剤を含むことが好ましく、併せて、プラスチック字消し全体のバイオマス度を10%以上とすることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材樹脂としての塩化ビニル系樹脂と、バイオマス由来の可塑剤とを含有するプラスチック字消し。
【請求項2】
前記バイオマス由来の可塑剤が、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、乳酸系可塑剤及びグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のプラスチック字消し。
【請求項3】
さらに可塑剤として、アルキルスルフォン酸フェニルエステルを含有する、請求項2に記載のプラスチック字消し。
【請求項4】
前記バイオマス由来の可塑剤がポリエステル系可塑剤であり、当該バイオマス由来のポリエステル系可塑剤と前記アルキルスルフォン酸フェニルエステルとの割合(質量比)が、1/9~1/0.5である、請求項3に記載のプラスチック字消し。
【請求項5】
さらにバイオマス由来の充填剤を含有する、請求項1~4のいずれかに記載のプラスチック字消し。
【請求項6】
さらに充填剤を含有し、前記充填剤として少なくともバイオマス由来のセルロース粉末を含む、請求項4に記載のプラスチック字消し。
【請求項7】
前記充填剤として、さらにバイオマス由来の貝殻粉末を含有する、請求項6に記載のプラスチック字消し。
【請求項8】
バイオマス度が10%以上である、請求項7に記載のプラスチック字消し。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック字消しに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油・石炭・天然ガス等の化石資源に由来する材料に代わる持続可能な材料として、バイオマス(生物資源)由来の材料が様々な分野で活用され始めている。バイオマス由来の材料を用いた字消し(消しゴム)として、特許文献1には、バイオマスプラスチックからなるマトリックス中に、架橋天然ゴム粒子が島状に分散されているエラストマー組成物からなる字消しが開示されている。また、特許文献2には、貝殻粉砕物を含有したことを特徴とする字消しが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-179742号公報
【特許文献2】特開平10-151897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の字消しは、基材に天然ゴムを含有するものであり、塩化ビニル系樹脂を基材とするプラスチック字消しに比べ、消字性能が十分とは言えない。特許文献2に記載の字消しは、バイオマス由来の材料が充填剤・研磨剤のみであるため、字消し全体のバイオマス度を高くするには限界がある。
【0005】
こうした状況を鑑み、本発明は、十分な消字性能を有しつつ、よりバイオマス度が高い字消しの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、塩化ビニル系樹脂よりなる基材樹脂にバイオマス由来の可塑剤を用いることで、塩化ビニル系樹脂を基材としたプラスチック字消しの十分な消字性能を保ちつつ、バイオマス度を高められることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0008】
(1)少なくとも基材樹脂としての塩化ビニル系樹脂と、バイオマス由来の可塑剤とを含有するプラスチック字消し。
【0009】
(2)前記バイオマス由来の可塑剤が、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、乳酸系可塑剤及びグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種である、前記(1)に記載のプラスチック字消し。
【0010】
(3)さらに可塑剤として、アルキルスルフォン酸フェニルエステルを含有する、前記(1)または(2)に記載のプラスチック字消し。
【0011】
(4)前記バイオマス由来の可塑剤がポリエステル系可塑剤であり、当該バイオマス由来のポリエステル系可塑剤と前記アルキルスルフォン酸フェニルエステルとの割合(質量比)が、1/9~1/0.5である、前記(3)に記載のプラスチック字消し。
【0012】
(5)さらにバイオマス由来の充填剤を含有する、前記(1)~(4)いずれかに記載のプラスチック字消し。
【0013】
(6)さらに充填剤を含有し、前記充填剤として少なくともバイオマス由来のセルロース粉末を含む、前記(1)~(4)いずれかに記載のプラスチック字消し。
【0014】
(7)前記充填剤として、さらにバイオマス由来の貝殻粉末を含有する、前記(6)に記載のプラスチック字消し。
【0015】
(8)バイオマス度が10%以上である、前記(1)~(7)いずれかに記載のプラスチック字消し。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、十分な消字性能を有しつつ、よりバイオマス度の高い字消しを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0018】
本発明のプラスチック字消しは、塩化ビニル系樹脂よりなる基材樹脂と、バイオマス由来の可塑剤とを含有する。ここで「バイオマス」とは、再生可能な生物由来の有機性資源であって化石資源を除いたもの(ただし、生物が直接生産する貝殻等の無機性資源は含む。)をいう。
【0019】
(基材樹脂)
本発明のプラスチック字消しは、基材樹脂として塩化ビニル系樹脂を用いる。塩化ビニル系樹脂としては、従来用いられている塩化ビニル系樹脂を全て用いることができ、例えば、重合度400~4,000程度のポリ塩化ビニルの他、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン、塩化ビニル‐アクリル酸メチル共重合体、塩化ビニル‐メタクリル酸メチル共重合体、及び塩化ビニル‐アクリル酸オクチル共重合体等が挙げられる。これらは単独又は必要に応じて2種類以上組み合わせて用いてもよい。塩化ビニル系樹脂としては、ペーストレジンが可塑剤等との混和及び加工が容易な点で好ましい。
【0020】
基材樹脂である塩化ビニル系樹脂の含有量は、プラスチック字消しを構成する組成物の全量に対して20~50質量%(以下、「%」と略記する)が好ましく、さらに好ましくは25~40%である。
【0021】
(可塑剤)
本発明のプラスチック字消しに用いるバイオマス由来の可塑剤としては、ポリエステル系可塑剤、乳酸系可塑剤、エポキシ系可塑剤(エポキシ化油脂、エポキシ化脂肪酸エステル等)、グリセリン脂肪酸エステルなどの種類が挙げられ、これらを単独又は必要に応じて2種類以上組み合わせて使用できる。中でも、バイオマス度の高いポリエステル系可塑剤及びエポキシ系可塑剤が好ましい。
【0022】
これらのバイオマス由来可塑剤は市販品を用いることができ、具体的な商品名を挙げると、例えば、GLOBINEX W-1810-BIO(ポリエステル系:バイオマス度100%、DIC株式会社)、アデカシクロエイドPNB-205(ポリエステル系:バイオマス度98.9%、株式会社ADEKA)、アデカシクロエイド O-130B (エポキシ系:バイオマス度92.3%、株式会社ADEKA)、サンソサイザー E-2000H(エポキシ化大豆油:バイオマス度90%以上、新日本理化株式会社)、サンソサイザーE-PO(エポキシエステル:バイオマス度70%以上、新日本理化株式会社)、グリーンサイザーBZシリーズ(バイオマス度60%以上又は70%以上、新日本理化株式会社)、BIOCIZER(グリセリン脂肪酸エステル:バイオマス度74.8%、理研ビタミン株式会社)、GS Bio Plasticizer(乳酸系:バイオマス度55~60%、GSアライアンス株式会社)、等がある。
【0023】
使用するバイオマス由来の可塑剤は、字消し全体のバイオマス度を高める観点から、バイオマス度が90%以上のものが好ましく、95%以上のものがより好ましい。バイオマス度とは、使用したバイオマス原料の乾燥重量割合を言い、次の式で算出される。
バイオマス度(%)=(含まれるバイオマスの乾燥重量/総乾燥重量)×100
【0024】
また、バイオマス由来の可塑剤の含有量は、バイオマス由来可塑剤による字消し全体のバイオマス度向上への寄与の観点から、字消し組成物全量に対して5%以上であることが好ましい。より好ましくは、10%以上、さらに好ましくは20%以上である。
【0025】
本発明のプラスチック字消しは、上記バイオマス由来の可塑剤以外の可塑剤を併用してもよい。併用する可塑剤としては、塩化ビニル系樹脂との混和性に優れている可塑剤が好ましく、具体例として、例えば、
ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジ-n-オクチルフタレート(n-DOP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジノニルフタレート(DNP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジトリデシルフタレート(DTDP)、ジウンデシルフタレート(DUP)等のフタル酸系可塑剤;
トリ-2-エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソデシルトリメリテート(TIDTM)、トリイソオクチルトリメリテート(TIOTM)、トリイソノニルトリメリテート等のトリメリット酸系可塑剤;
トリオクチルピロメリット酸(TOPM)等のピロメリット酸系可塑剤;
二塩基酸(例えば、アジピン酸)と、多価アルコール(例えば、炭素数2~18の脂肪族グリコールならびにジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール)の少なくとも1種と、炭素9~18の一価アルコール又は炭素数9~18の一価カルボン酸から選ばれた少なくとも1種と、を縮合して得られるポリエステル等のポリエステル系可塑剤(液状ポリエステル系可塑剤も含まれるが、上記バイオマス由来のものを除く);
エポキシ化油脂、エポキシ化脂肪酸エステル等のエポキシ系可塑剤(上記バイオマス由来のものを除く);
ジ-2-エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソノニルアジペート(DINA)、ジイソデシルアジペート(DIDA)等のアジピン酸系可塑剤;
ジ-2-エチルヘキシルセバケート(DOS)、ジブチルセバケート(DBS)等のセバシン酸系可塑剤;
ジ-2-エチルヘキシルアゼレート(DOZ)等のアゼライン酸系可塑剤;
トリクレジルフォスフェート(TCP)、トリ-2-エチルヘキシルフォスフェート(TOP)等のリン酸系可塑剤;
トリエチルシトレート、アセチルトリ-n-ブチルシトレート、トリ-n-ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ-(2-エチルヘキシル)シトレート等のクエン酸系可塑剤;
PN-6120(商品名、株式会社ADEKA、グリコールジエステル)、Benzoflex9-88(ジプロピレングリコールジベンゾエート)、Benzoflex50(ジエチレングリコールジベンゾエートとジプロピレングリコールジベンゾエートの混合物)、Benzoflex2088(ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエートの混合物)(いずれも商品名、EASTMAN社)、PB-3A、W-83(いずれも商品名、DIC株式会社)等の安息香酸系可塑剤;
メザモール、メザモールII(いずれも商品名、ランクセス社)等のアルキルスルフォン酸フェニルエステル;
DINCH(商品名、BASF社)等のシクロヘキサンジカルボン酸エステル;
等が挙げられる。これらの可塑剤は、単独又は必要に応じて2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0026】
バイオマス由来の可塑剤と併用する可塑剤としては、非フタル酸系可塑剤が好ましい。非フタル酸系可塑剤の中では、消字性に優れていてべたつきが少ない可塑剤である、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸エステルが好ましく、特にアルキルスルフォン酸フェニルエステルが好ましい。
【0027】
可塑剤の含有量は、バイオマス由来の可塑剤及びその他併用する可塑剤を合わせて、字消し組成物全量に対して、30~70%が好ましい。当該範囲であれば、字消しが軟らかすぎたり硬すぎたりすることがなく、また消し感や消し屑あつまり度に悪影響を及ぼすおそれもない。より好ましくは40~65%、特に好ましくは40~55%である。
【0028】
本発明のプラスチック字消しに用いる可塑剤の組み合わせとして、例えば、バイオマス由来のポリエステル系可塑剤とアルキルスルフォン酸フェニルエステルとを併用する場合、バイオマス由来ポリエステル系可塑剤/アルキルスルフォン酸フェニルエステルの比率(質量比)は、バイオマス度と消字性能を高レベルで両立する観点から、1/9~1/0.5が好ましく、より好ましくは、1/4~1/1である。この両者の組み合わせに、更に他の可塑剤を加えてもよい。
【0029】
(充填剤)
本発明の字消しには、硬度や消し感の調整等のために充填剤を配合することが好ましい。充填剤としては、珪石粉(主成分:二酸化珪素)、重質炭酸カルシウム(石灰石粉)、軽質炭酸カルシウム、珪藻土、タルク、シラス粉末、炭酸マグネシウム、貝殻粉末(主成分:炭酸カルシウム)、焼成貝殻粉末(主成分:酸化カルシウム又は水酸化カルシウム)、卵殻紛末(主成分:炭酸カルシウム)、焼成卵殻粉末(主成分:酸化カルシウム又は水酸化カルシウム)等の無機粉末、セルロース粉末、パラミロン粉末等の有機粉末、有機及び無機の中空粒子等を使用することができる。これらは1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。プラスチック字消し全体のバイオマス度を高められる観点から、セルロース粉末、パラミロン粉末、牡蠣や帆立の貝殻粉末、卵殻粉末等のバイオマス由来の粉末が好ましく、中でも、軽い消し感が得られることより、バイオマス由来のセルロース紛末を単独又は他の充填剤と組み合わせて用いることが好ましい。
セルロース粉末と組み合わせる充填剤としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、貝殻粉末、卵殻紛末などの炭酸カルシウムを主成分とするもの(以下、まとめて「炭酸カルシウム粉末」という。)が好ましく、特にバイオマス由来の貝殻粉末や卵殻粉末であれば、さらにバイオマス度を高くすることができるので、好ましい。
【0030】
バイオマス由来のセルロース粉末は市販のものを使用することができ、例えば、KCフロック(商品名、日本製紙株式会社)、セオラス(商品名、旭化成株式会社)等が挙げられる。セルロース粉末の粒径は10~100μmが好ましい。粒径の測定方法は走査電子顕微鏡法である。
セルロース粉末の含有量は、軽い消し感と消字性能の観点から、字消し組成物全量に対して1~15%が好ましく、より好ましくは2~10%である。
【0031】
炭酸カルシウムを主成分とするバイオマス由来の粉末の市販品としては、例えば、ホタテ末(商品名、未焼成帆立貝殻粉末、株式会社エヌ・シー・コーポレーション)、ホタテ末S(商品名、未焼成帆立貝殻粉末、株式会社エヌ・シー・コーポレーション)、卵殻カルシウム(商品名、未焼成卵殻粉末、株式会社エヌ・シー・コーポレーション)、等が挙げられる。炭酸カルシウム粉末の粒径は1~20μmが好ましい。
【0032】
充填剤の含有量は、字消し組成物全量に対して、5~40%が好ましく、さらに好ましくは10~35%、特に好ましくは10~30%である。充填剤の配合量が5%以上あれば、消し感が重くならず消しカスも出やすいため消字性能が低下しにくく、40%以下であれば、紙面と接する基材樹脂の面積が充分確保されるため、消字性能が低下することがない。
【0033】
セルロース粉末を炭酸カルシウム粉末と併用する場合、セルロース粉末/炭酸カルシウム粉末の比率(質量比)は、1/9~1/1が好ましく、1/9~1/2がより好ましい。
【0034】
(添加剤)
本発明のプラスチック字消しには、基材樹脂が成形時に高温劣化するのを防止するために必要に応じて安定剤を用いることができ、光安定性向上のために紫外線吸収剤等の光安定剤を配合することもできる。その他、粘度調整剤、滑剤、溶剤、着色剤、防腐剤、防黴剤、香料等の添加剤を配合することもできる。これらの添加剤は、本発明による効果を阻害しない範囲内であれば、配合量も特に制限されない。
【0035】
<バイオマス度>
また、本発明のプラスチック字消しは、化石資源由来材料の使用を削減してバイオマス由来材料の使用を多くする観点から、字消し組成物全体のバイオマス度が10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。
【0036】
<製造方法>
本発明のプラスチック字消しは、従来公知の方法で製造することができる。例えば、基材樹脂、可塑剤、必要に応じて充填剤、安定剤等の各種配合剤の所定量を常法により混練した後、温度90~150℃でプレス成形し、成形品を所定の寸法に裁断して製品とされる。成形方法は特に限定されるものではなく、プレス成形以外にも、射出成形、押出成形等の成形方法から、所望の形状や性能が得られる成形方法を適宜選択すればよい。
【実施例0037】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
字消しの硬度、消字率、バイオマス度は、以下の方法により測定又は評価した。
【0039】
[硬度(硬さ)]
C型(表面の硬さ);JIS S 6050:2002 6.2に準拠した。硬さ試験機を用い、水平に保持した試験片の表面に、試験機の押針が鉛直になるようにして加圧面を接触させ、直ちに目盛を読み取った。
【0040】
[消字率]
JIS S 6050:2002 6.4に準拠した。
(1)字消しを厚さ5mmの板状に切り、着色紙と接触する先端部分を半径6mmの円弧に仕上げたものを試験片とした。
(2)画線機を用いて、JIS S 6006に規定する鉛筆のHBと、坪量90g/m以上、白色度75%以上の上質紙とを使用して着色紙を作製し、この着色紙に対して、試験片を垂直に、しかも着色線に対して直角になるように接触させ、試験片におもりとホルダの質量の和が0.5kgとなるようにおもりを載せ、150±10cm/minの速さで着色部を4往復摩消させた。
(3)濃度計によって、着色紙の非着色部分の濃度を0として、着色部及び摩消部の濃度をそれぞれ測定した。
(4)消字率は次の式によって算出し、3回の平均値を求めた。
消字率(%)=(1-摩消部の濃度/着色部の濃度)×100
【0041】
[バイオマス度]
次の式によって字消し組成物全体のバイオマス度を算出した。
バイオマス度(%)=(バイオマス由来材料のバイオマス度×バイオマス由来材料の配合質量/全材料の配合質量)×100
【0042】
(実施例1~14,比較例1)
表1に示す基材樹脂、可塑剤、充填剤及び安定剤を、表2及び表3に示す割合(質量部)で、減圧下にて撹拌した後、90~150℃でプレス成形し、プラスチック字消しを得た。
【0043】
(比較例2)
天然ゴムを基材とするラバー字消しとして、株式会社トンボ鉛筆製「モノ砂ラバー消しゴム」(「モノ」は登録商標。品番:ES-510B)のラバー消しゴム部分(砂消しゴムでない方)を試験体とした。
【0044】
得られたプラスチック字消し及び比較例2のラバー字消しの評価結果を表2及び表3に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
表2及び表3の結果より、バイオマス由来の可塑剤を含有する本発明のプラスチック字消しは、天然ゴムを基材とした字消し(比較例2)より消字率が高く、塩化ビニル系樹脂を基材とする従来のプラスチック字消し(比較例1)と遜色ない消字性能を維持しつつバイオマス度を高められることがわかる(実施例1~5、12~14)。実施例5のように、配合する可塑剤の全部をバイオマス由来のものとすることも可能であったが、アルキルスルフォン酸フェニルエステルと併用した実施例1~4が、より高い消字率が得られた。
【0049】
さらに、バイオマス由来の可塑剤に加えてバイオマス由来の充填剤であるセルロース粉末を配合することで、高い消字率を維持しながら、よりバイオマス度を高めることができた(実施例6~11)。セルロース粉末の配合量を多くするとバイオマス度が高まる反面、硬度が高くなり消字率がやや低下したが(実施例9、10)、貝殻粉末を併用することでそうした影響を抑えつつバイオマス度を高めることができた(実施例11)。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のプラスチック字消しは、鉛筆やシャープペンシル等の筆記描線の消去等に好適に利用することができる。