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特開2024-171427画像形成装置および画像形成装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171427
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】画像形成装置および画像形成装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/14 20060101AFI20241205BHJP
   G03G 15/02 20060101ALI20241205BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20241205BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G03G21/14
G03G15/02 102
G03G15/00 303
G03G15/16 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088413
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168217
【弁理士】
【氏名又は名称】大村 和史
(72)【発明者】
【氏名】川西 智之
【テーマコード(参考)】
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H200FA02
2H200GA44
2H200GB12
2H200HA02
2H200HB12
2H200HB22
2H200HB48
2H200JA28
2H200JA29
2H200LB39
2H200NA02
2H200NA06
2H200PA02
2H200PA10
2H270KA09
2H270KA12
2H270KA18
2H270KA28
2H270LA04
2H270LA07
2H270LA12
2H270LA70
2H270MA02
2H270MA04
2H270MA25
2H270MA28
2H270MC15
2H270MC29
2H270MC39
2H270MC48
2H270MD02
2H270MD22
2H270ME05
2H270MH02
2H270ZC05
2H270ZC06
(57)【要約】
【課題】 電子写真方式の画像形成手段を備える画像形成装置において、クリーニングブレードに掛かる機械的負荷を十分かつ確実に軽減する。
【解決手段】 本開示に係る画像形成装置(10)によれば、現像装置34へのトナー補給時やウォームアップ時などに、帯電ローラ46に帯電バイアスBcとして重畳電圧Vcが印加されるとともに、露光装置(32)による露光が行われない状態で、感光体ドラム28が回転される、空転処理が実行される。この空転処理の実行中に、まず、転写ローラ用電源64から転写ローラ62へ転写ローラ用バイアスBtとして画像形成処理時と同極性の転写電流Itが印加される、順バイアス印加処理が行われる。そして、順バイアス印加処理の後に、転写ローラ用バイアスBtとして画像形成処理時と逆極性の直流電圧Vtが印加される、クリーニング処理が行われる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に感光層を有し、駆動源によって所定方向に回転する像担持体、
前記像担持体の表面と当接し、直流に交流が重畳された電流または電圧である重畳バイアスの供給を受けて当該像担持体の表面を帯電させる帯電手段、
帯電された前記像担持体の表面を露光して静電潜像を形成する露光手段、
前記静電潜像を現像しトナー像を形成する現像手段、
前記像担持体の表面と直接または転写媒体を介して当接し、回転した状態で前記トナー像を当該転写媒体に転写する転写部材を有する転写手段、
前記トナー像を前記転写媒体に転写させる転写バイアスを含む複数のバイアスを選択的に前記転写部材に供給可能なバイアス電源、
前記像担持体の表面と当接し、前記転写媒体に前記トナー像が転写された後の当該像担持体の表面を清掃するクリーニングブレード、および、
前記帯電手段に前記重畳バイアスを印加させ、前記像担持体の表面を露光せずに前記像担持体を回転させた状態で画像形成に必要な準備を行う空転処理を実行可能であり、当該空転処理実行中に、前記バイアス電源から前記転写部材に前記転写バイアスと同極性の第1バイアスを印加させる第1制御処理を行う制御手段を備える、画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記空転処理が実行されているときに、前記第1制御処理の後に、前記バイアス電源から前記転写部材へ前記転写バイアスと逆極性の第2バイアスを印加させる第2制御処理を行う、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記空転処理が実行される期間である空転期間の長さが予め定められており、
前記制御手段は、前記空転期間を超過しないように前記第2制御処理を行う、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記空転処理が実行されているときに、前記第1制御処理と、前記バイアス電源から前記転写部材へ前記転写バイアスと逆極性の第2バイアスを印加させる第2制御処理とを、交互に行う、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1制御処理が行われる期間である第1制御期間の長さは、前記第2制御処理が行われる期間である第2制御期間の長さ以上であり、
前記第2制御期間の長さは、前記転写部材が1回転するのに要する期間の長さ以上であり、かつ、所定の期間の長さ未満である、請求項2から4までのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記空転処理中に行う画像形成に必要な準備には、前記現像手段へのトナー補給、当該現像手段におけるトナー撹拌、前記像担持体の清掃、および、前記転写部材の清掃が含まれる、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
画像形成装置の制御方法であって、
前記画像形成装置は、
表面に感光層を有し、駆動源によって所定方向に回転する像担持体、
前記像担持体の表面と当接し、直流に交流が重畳された電流または電圧である重畳バイアスの供給を受けて当該像担持体の表面を帯電させる帯電手段、
帯電された前記像担持体の表面を露光して静電潜像を形成する露光手段、
前記静電潜像を現像しトナー像を形成する現像手段、
前記像担持体の表面と直接または転写媒体を介して当接し、回転した状態で前記トナー像を当該転写媒体に転写する転写部材を有する転写手段、
前記トナー像を前記転写媒体に転写させる転写バイアスを含む複数のバイアスを選択的に前記転写部材に供給可能なバイアス電源、および、
前記像担持体の表面と当接し、前記転写媒体に前記トナー像が転写された後の当該像担持体の表面を清掃するクリーニングブレードを備え、その上で、
前記帯電手段に前記重畳バイアスを印加させ、前記像担持体の表面を露光せずに前記像担持体を回転させた状態で画像形成に必要な準備を行う空転ステップ、および、
前記空転ステップの実施中に前記バイアス電源から前記転写部材に前記転写バイアスと同極性の第1バイアスを印加させる第1制御処理を行う空転制御ステップを含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置および画像形成装置の制御方法に関し、特に、電子写真方式の画像形成手段を備える、画像形成装置および画像形成装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置においては、画像形成手段を構成する像担持体が回転駆動された状態で、当該像担持体の表面が帯電される。その帯電方式の1つとして、帯電ローラによる接触帯電方式がある。特に、帯電ローラに印加される帯電バイアスとして、直流電圧と交流電圧との重畳電圧が採用されることで、像担持体の表面が均一的かつ安定的に帯電されることが、知られている。ただし、このような重畳電圧が帯電バイアスとして採用されると、帯電ローラの表面と像担持体の表面との接触部分の近傍で放電が繰り返され、これに起因して、窒化酸化物などの放電生成物が発生し、この放電生成物が像担持体の表面に付着することで、当該像担持体の表面が粗面化する。すると、像担持体の表面と、当該像担持体の表面に当接して当該像担持体の表面をクリーニング(清掃)するクリーニングブレードと、の間の摩擦係数が上昇して、クリーニングブレードに掛かる機械的負荷が増大し、ひいてはクリーニングブレードが損傷(反転や欠損など)する虞がある。
【0003】
この不都合を回避するために、たとえば特許文献1に記載された技術によれば、像担持体を回転駆動させる駆動装置への出力電流値が検知され、その検知結果から駆動装置の回転軸に掛かるトルクが推定される。そして、トルクの増大が検知されると、帯電バイアスの交流電圧(ピーク間電圧値)が低減される。これにより、放電生成物の発生量が抑制され、クリーニングブレードに掛かる機械的負荷が軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-192568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、特許文献1に開示された技術によれば、帯電バイアスの交流電圧が低減されることで、放電生成物の発生量が抑制されるが、当該放電生成物の発生量が完全に抑制される(ゼロとなる)訳ではない。このため、特許文献1に開示された技術では、クリーニングブレードに掛かる機械的負荷を十分かつ確実に軽減することができない。
【0006】
そこで、本開示は、クリーニングブレードに掛かる機械的負荷を十分かつ確実に軽減することができる、新規な画像形成装置および画像形成装置の制御方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本開示は、画像形成装置に係る第1の開示、および、画像形成装置の制御方法に係る第2の開示を含む。
【0008】
このうちの画像形成装置に係る第1の開示は、像担持体、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、バイアス電源、クリーニングブレードおよび制御手段を備える。像担持体は、その表面に感光層を有し、駆動源によって所定方向に回転する。帯電手段は、像担持体の表面と当接し、重畳バイアスの供給を受けて当該前記像担持体の表面を帯電させる。ここで言う重畳バイアスは、直流に交流が重畳された電流または電圧である。露光手段は、帯電された像担持体の表面を露光して、静電潜像を形成する。現像手段は、像担持体の表面の静電潜像を現像し、トナー像を形成する。転写手段は、転写部材を有する。この転写部材は、像担持体の表面と直接または転写媒体を介して当接し、回転した状態で当該像担持体の表面のトナー像を当該転写媒体に転写する。バイアス電源は、複数のバイアスを選択的に転写部材へ印加することが可能である。ここで言う複数のバイアスには、像担持体の表面のトナー像を転写媒体に転写させる転写バイアスが含まれる。クリーニングブレードは、像担持体の表面と当接し、転写部材にトナー像が転写された後の当該像担持体の表面をクリーニングする。そして、制御手段は、空転処理を実行可能である。空転処理とは、帯電手段に重畳バイアスを印加させ、像担持体の表面を露光せずに当該像担持体を回転させた状態で、画像形成に必要な準備を行う処理である。そして、制御手段は、空転処理の実行中に、バイアス電源から転写部材に転写バイアスと同極性の第1バイアスを印加させる第1制御処理を行う。
【0009】
なお、制御手段は、空転処理が実行されているときに、第1制御処理の後に、第2制御処理を行ってもよい。この第2制御処理においては、バイアス電源から転写部材へ転写バイアスとは逆極性の第2バイアスが印加される。
【0010】
この場合、とりわけ空転処理が実行される期間である空転期間の長さが予め定められている場合は、制御手段は、当該空転期間を超過しないように第2制御処理を行うのが、望ましい。
【0011】
また、制御手段は、空転処理が実行されているときに、第1制御処理と第2制御処理とを交互に行ってもよい。
【0012】
さらに、第1制御処理が行われる期間である第1制御期間の長さは、第2制御処理が行われる期間である第2制御期間の長さ以上であることが、肝要である。そして、第2制御期間の長さは、転写部材が1回転するのに要する期間の長さ以上であり、かつ、所定の期間の長さ未満であることが、肝要である。ここで言う所定の期間は、たとえば実験により定められる。具体的には、第2制御処理が行われることで、クリーニングブレードに掛かる機械的負荷が徐々に増大して、やがて飽和するが、このクリーニングブレードに掛かる機械的負荷が飽和するまでの時間に基づいて、所定の期間が定められる。
【0013】
空転処理中に行う画像形成に必要な準備には、たとえば現像手段へのトナー補給、当該現像手段におけるトナー撹拌、像担持体の清掃、転写部材の清掃が含まれる。
【0014】
本開示のうちの画像形成装置の制御方法に係る第2の開示は、空転ステップおよび空転制御ステップを含む。ここで、画像形成装置は、像担持体、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、バイアス電源およびクリーニングブレードを備える。像担持体は、その表面に感光層を有し、駆動源によって所定方向に回転する。帯電手段は、像担持体の表面と当接し、重畳バイアスの供給を受けて当該前記像担持体の表面を帯電させる。ここで言う重畳バイアスは、直流に交流が重畳された電流または電圧である。露光手段は、帯電された像担持体の表面を露光して、静電潜像を形成する。現像手段は、像担持体の表面の静電潜像を現像し、トナー像を形成する。転写手段は、転写部材を有する。この転写部材は、像担持体の表面と直接または転写媒体を介して当接し、回転した状態で当該像担持体の表面のトナー像を当該転写媒体に転写する。バイアス電源は、複数のバイアスを選択的に転写部材へ印加することが可能である。ここで言う複数のバイアスには、像担持体の表面のトナー像を転写媒体に転写させる転写バイアスが含まれる。クリーニングブレードは、像担持体の表面と当接し、転写部材にトナー像が転写された後の当該像担持体の表面をクリーニングする。その上で、空転ステップでは、帯電手段に重畳バイアスを印加させ、像担持体の表面を露光せずに当該像担持体を回転させた状態で、画像形成に必要な準備を行う。そして、空転制御ステップでは、空転ステップの実施中に、バイアス電源から転写部材に転写バイアスと同極性の第1バイアスを印加させる第1制御処理を行う。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、クリーニングブレードに掛かる機械的負荷を十分かつ確実に軽減することができる。これは、クリーニングブレードの反転や欠損などの損傷を防止するのに、極めて有益である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本開示の第1実施例に係る画像形成装置の内部の構成を概略的に示す図である。
図2図2は、第1実施例に係る画像形成装置の画像形成部の一部分を拡大して示すとともに、当該画像形成部を構成するスイッチ回路の一状態を示す図である。
図3図3は、第1実施例に係る画像形成装置の画像形成部の一部分を拡大して示すとともに、当該画像形成部を構成するスイッチ回路の別の状態を示す図である。
図4図4は、第1実施例に係る画像形成装置の電気的な構成を示すブロック図である。
図5図5は、第1実施例の比較対象としての従来技術における画像形成部の要部の制御要領を説明するための図である。
図6図6は、第1実施例における転写ローラに印加されるバイアスの極性の違いに対する駆動モータの回転軸に掛かるトルクの推移を示す図である。
図7図7は、第1実施例における画像形成部の要部の制御要領を説明するための図である。
図8図8は、本開示の第2実施例における画像形成部の要部の制御要領を説明するための図である。
図9図9は、本開示の第3実施例における画像形成部の要部の制御要領を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施例]
本開示の第1実施例について、図1に示されるモノクロの画像形成装置10を例に挙げて説明する。
【0018】
本第1実施例に係る画像形成装置10は、コピー機能、プリンタ機能、イメージスキャナ機能、ファクス機能などの複数の機能を有する、いわゆる複合機(MFP)である。なお、図1は、使用可能な状態に設置された画像形成装置10の内部の構成を当該画像形成装置10の前方側から見た図である。すなわち、図1における上下方向は、画像形成装置10の上下方向に対応する。そして、図1における左右方向は、画像形成装置10の左右方向に対応する。また、図1の紙面の手前側は、画像形成装置10の前方に対応し、図1の紙面の奥側は、画像形成装置10の後方に対応する。
【0019】
この画像形成装置10の上部には、画像読取手段としての画像読取部12が設けられる。画像読取部12は、不図示の原稿の画像を読み取って、当該原稿の画像に応じた2次元の読取画像データを出力する、画像読取処理を担う。このため、画像読取部12は、原稿が載置される原稿台14を有する。原稿台14は、概略矩形平板状のガラスなどの透明部材により形成され、その両主面を水平方向に沿わせるように設けられる。そして、原稿台14の下方に、画像読取ユニット16が設けられる。詳しい説明は省略するが、画像読取ユニット16は、光源、ミラー、レンズ、ラインセンサなどを有し、原稿台14の上面に画像形成装置10の前後方向に沿って延伸する直線状の画像読取位置Prを形成する。さらに、原稿台14の下方には、画像読取ユニット16の画像読取位置Prを画像形成装置10の左右方向に沿って移動(走査)させるための不図示の駆動機構が設けられる。すなわち、原稿台14に原稿が載置された状態で、画像読取ユニット16の画像読取位置Prが駆動機構により移動されることで、当該原稿の画像が読み取られ、いわゆる固定読み方式により読み取られる。なお、画像形成装置10の前後方向は、主走査方向と呼ばれる。そして、画像形成装置10の左右方向は、副走査方向と呼ばれる。
【0020】
また、原稿台14の上方には、当該原稿台14に載置された原稿を押さえるための原稿押さえカバーを兼ねる自動原稿送り装置(ADF)18が設けられる。自動原稿送り装置18は、原稿台14の上面を外部に露出させる状態と、当該原稿台14の上面を覆う状態と、に遷移可能に設けられる。このため、自動原稿送り装置18は、不図示のヒンジなどの適当な可動支持部材を介して画像形成装置10の本体(筐体)に結合される。なお、図1は、自動原稿送り装置18が原稿台14の上面を覆った状態を示す。また、自動原稿送り装置18は、図1に示される如く原稿台14の上面を覆った状態にあるときに、次に説明する如くそれ本来の機能を発揮する。
【0021】
動原稿送り装置18は、原稿載置トレイ20を有する。この原稿載置トレイ20には、原稿が、厳密にはシート状の原稿が、載置可能であり、とりわけ複数枚の原稿が積層状に載置可能である。詳しい説明は省略するが、自動原稿送り装置18は、原稿載置トレイ20に載置された原稿を1枚単位で(1枚ずつ)取り込み、当該自動原稿送り装置18内の原稿搬送路22に沿って搬送させる。その途中で、原稿は、画像読取位置Prを通過し、厳密には固定された状態にある画像読取位置Prを通過する。これにより、原稿の画像が読み取られ、いわゆる流し読み方式で読み取られる。その後、原稿は、原稿排出トレイ24に排出される。
【0022】
画像読取部12の下方には、画像形成手段としての画像形成部26が設けられる。この画像形成部26は、転写媒体の一例であるシート状の画像記録媒体、たとえば用紙に、前述の読取画像データなどの適宜の画像データに基づく画像を形成する画像形成処理を行い、つまり印刷を行う。この画像形成処理(印刷)は、公知の電子写真方式により行われる。
【0023】
具体的には、図2を併せて参照して、画像形成部26は、像担持体としての感光体ドラム28、帯電手段としての帯電装置30、露光手段としての露光装置32、現像手段としての現像装置34、転写手段としての転写装置36、定着手段としての定着装置38、クリーニング手段としてのクリーニング装置40、除電手段としての不図示の除電装置、内部に収容したトナーを現像装置34に補給するトナー補給装置42などを有する。
【0024】
感光体ドラム28は、アルミニウムなどの導電性材料により形成された円筒状の導電性部材である基体を有する。この基体は、画像形成装置10の不図示のフレームに接続され、つまり接地される。また、基体の表面(外周面)には、感光層が形成される。感光層は、光が照射された部分については、導電性を示し、光が照射されていない部分については、絶縁性を示す。この感光体ドラム28は、駆動源としての駆動モータ44(図4参照)からの駆動力を受けて回転し、たとえば図2(および図1)において、反時計回りに回転する。
【0025】
帯電装置30は、感光体ドラム28の表面を一定の電位に帯電させる帯電ローラ46を有する。帯電ローラ46は、導電性の芯金と導電性の芯金の外側に形成された導電性の弾性層を有し、導電性の弾性層の表面を感光体ドラム28(基体)の表面に当接させた状態で回転できるように軸支されている。そして、感光体ドラム28が駆動モータ44からの回転力を受けて回転すると従動回転する。ここで、帯電ローラ46の回転方向は、図2において時計回り方向である。帯電ローラ46の導電性の芯金には帯電用電源48が接続されており、帯電用電源48から帯電バイアスBcが供給(印加)されると、帯電ローラ46の感光体ドラム28との接触部分の近傍で放電が発生し、この放電によって感光体ドラム28の表面が一定の電位に帯電される。
【0026】
帯電用電源48は、接地電位を基準とするマイナスの直流電圧Vdc(たとえば-600V)を生成する定電圧電源である直流電源50と、所定の周波数(たとえば2kHz)で変動し、当該直流電圧Vdcの電圧値の絶対値よりも大きなピーク間電圧値(たとえば2kV)を持つ交流電圧Vacを生成する交流電源52と、を有する。そして、帯電用電源48は、直流電源50により生成される直流電圧Vdcと、交流電源52により生成される交流電圧Vacと、が重畳された重畳電圧Vcを、帯電バイアスBcとして帯電ローラ46へ印加する。これにより、感光体ドラム28の表面は、所定の表面電位(接地電位を基準とするマイナスの一定の電位、たとえば-600V)に、帯電される。殊に、帯電バイアスBcとして重畳電圧Vcを採用することで、帯電ローラ46表面と感光体ドラム28表面との電位差が所定の周波数で変動することによって、帯電ローラ46と感光体ドラム28との接触部分(当接ニップ部)の近傍で発生する放電が、複数回発生するようになる。そのため、感光体ドラム28の表面が接触部分を通過する前後で放電が複数回発生するため、帯電ローラ46の導電性の弾性層の抵抗値に場所的なばらつきがあっても、感光体ドラム28の表面電位をばらつきなく均一にすることができる。一方、重畳電圧Vcを供給することにより、接触部分の近傍での放電が複数回発生するため、放電生成物の発生量が多く、生成された放電生成物によって感光体ドラム28の摩擦係数が増加し、後述するクリーニングブレード72が損傷する虞があることは、前述した通りである。
【0027】
帯電装置30は、帯電ローラ46の表面をクリーニングするためのクリーニングローラ54を有する。このクリーニングローラ54は、いわゆるスポンジローラであり、自身の表面を帯電ローラ46の表面に当接させた状態で回転し、ここでは、当該帯電ローラ46の回転駆動力を受けて従動回転し、つまり図2において反時計回りに回転する。これにより、帯電ローラ46の表面がクリーニングされ、とりわけ当該帯電ローラ46の表面に吸着した後述するトナーを含む塵埃が除去される。
【0028】
この帯電装置30により(所定の表面電位に)帯電された感光体ドラム28の表面に対して、露光装置32による露光が行われる。露光装置32は、たとえばレーザスキャニングユニットであり、画像形成処理に供される画像データに応じた態様のレーザ光を感光体ドラム28の表面に照射する。レーザ光が照射された感光体ドラム28の表面(感光層)領域は、絶縁性から導電性へと変化して感光体ドラム28の基体である接地された導電性部材と導通し、表面電位がたとえば-100Vに低下して静電潜像が形成される(露光時間が短いので完全に0Vにならない)。なお、露光装置32は、レーザスキャニングユニットではなく、たとえば光源としてLEDが並べられたLEDアレイを有するLEDユニットであってもよい。
【0029】
そして、静電潜像が形成された感光体ドラム28の表面に対して、現像装置34による現像が行われる。すなわち、現像装置34は、感光体ドラム28の表面電位と同極性に帯電された、つまり接地電位を基準とするマイナスの電位に帯電された、不図示のトナーを、感光体ドラム28の表面に形成された静電潜像(露光されて表面電位が接地電位に近づいた感光体ドラム28の表面領域)に付着させることで、当該静電潜像をトナー像に顕像化する。このため、現像装置34は、帯電されたトナーを含む現像剤を感光体ドラム28の表面近傍に搬送する現像ローラ58と、当該現像装置34内の現像剤を撹拌することでトナーを摩擦帯電させて現像ローラ58へと搬送する撹拌搬送部材(オーガスクリュー)56と、を有する。
【0030】
現像ローラ58と撹拌搬送部材56とは、不図示の駆動力伝達手段としてのギア機構を介して前述の駆動モータ44からの駆動力を受けて回転し、たとえば現像ローラ58は、感光体ドラム28の回転方向とは逆方向へ回転し、つまり図2において時計回りに回転する。そして、撹拌搬送部材56は、たとえば現像ローラ58とは逆方向へ回転し、つまり図1において反時計回りに回転する。さらに、現像ローラ58には、直流の定電圧源である現像用電源60から、接地電位を基準とするマイナスの直流電圧Vdが現像バイアスBdとして印加される。この現像ローラ58に印加される現像バイアスBdとしての直流電圧Vdは、たとえば-400Vである。なお、現像装置34による現像は、感光体ドラム28の回転方向における露光装置32による露光位置よりも下流側の位置において行われる。また、トナーは、たとえば2成分系のものであるが、1成分系のものであってもよい。
【0031】
以上のように現像装置34で現像されて感光体ドラム28の表面に形成されたトナー像は、現像装置34よりも感光体ドラム28の回転方向の下流側の位置において、転写装置36によって用紙へ転写される。このため、転写装置36は、転写部材としての転写ローラ62を有する。転写ローラ62は、感光体ドラム20と接触した状態で回転し、ここでは、当該感光体ドラム28が回転すると従動回転し、つまり図2において時計回りに回転する。
【0032】
転写ローラ62には、転写ローラ用電源64から転写ローラ用バイアスBtが印加される。より詳しく説明すると、転写ローラ用電源64が備える直流の定電流電源である転写用電源66から接地電位を基準とするプラスの転写電流Itが、転写ローラ用バイアスBtとして転写ローラ62へ印加される。この転写電流Itは、転写ローラ62から感光体ドラム28に向かって流れる。これにより、感光体ドラム28の表面と転写ローラ62の表面との当接部分である転写ニップ部Ntに、当該感光体ドラム28の表面のトナー像を転写ローラ62側へ引き寄せるための転写電界が形成される。そして、図2に破線の矢印100で示されるように、この転写ニップ部Ntを用紙が通過することで、詳しくは当該転写ニップ部Ntにより用紙が挟持搬送されることで、感光体ドラム28の表面のトナー像が当該用紙に転写される。
【0033】
なお、転写ローラ用電源64は、転写用電源66の他に、クリーニング用電源68を備えるが、このクリーニング用電源68については、後で詳しく説明する。また、転写ローラ用電源64は、転写用電源66およびクリーニング用電源68のいずれか一方を転写ローラ用バイアスBtの供給源として選択するためのスイッチ回路70を有する。このスイッチ回路70は、感光体ドラム28の表面のトナー画像を用紙へ転写させる転写時には、図2に示されるように、転写用電源66を転写ローラ用バイアスBtの供給源として選択する状態となる。この転写時の転写ローラ用バイアスBtとしての転写電流Itは、たとえば30μAである。
【0034】
転写装置36によって用紙にトナー像が転写された後の感光体ドラム28の表面には、用紙に転写しきれなかったトナー像が残留トナーとして存在する。この残留トナーは、感光体ドラム28の回転方向における転写装置36による転写位置よりも下流側において、クリーニング装置40により除去される。すなわち、トナー像が転写された後の感光体ドラム28の表面は、クリーニング装置40によりクリーニングされる。このクリーニング装置40は、クリーニングブレード72と搬送部材(オーガスクリュー)74とを有する。
【0035】
クリーニングブレード72は、適度な弾性と適度な剛性とを併せ持つ素材、たとえばウレタンゴム、により形成された細長い板状体である。このクリーニングブレード72は、その長手方向を感光体ドラム28の回転軸方向(画像形成装置10の前後方向、つまり主走査方向)に沿わせるとともに、当該長手方向に沿う一方側縁(図2における右側の端部)を感光体ドラム28の回転方向に対向する方向へ向けた状態で、当該一方側縁を感光体ドラム28に表面に(斜めに)当接(密着)させるように設けられ、詳しくはそのような姿勢で保持部材76により保持される。このクリーニングブレード72(の一方側縁)によって、感光体ドラム28の表面の残留トナーが言わばこそぎ取られるような形で除去される。除去されたトナーは、搬送部材74によって、不図示の廃トナーボックスへ搬送される。なお、搬送部材74は、不図示の廃トナー搬送用駆動手段としてのモータからの駆動力を受けて駆動される。
【0036】
このクリーニング装置40によるクリーニング後の感光体ドラム28の表面は、感光体ドラム28の回転方向における当該クリーニング装置40によるクリーニング位置よりも下流側の位置において、不図示の除電装置により除電される。除電装置は、感光体ドラム28の表面に光を照射することで、当該感光体ドラム28の表面を除電し、つまり当該感光体ドラム28の表面の潜像電位を消去する。
【0037】
これ以降、前述と同じ要領で、帯電装置30による帯電、露光装置32による露光、現像装置34による現像、転写装置36による転写、クリーニング装置40によるクリーニング、および、除電装置による除電、という各工程が繰り返される。なお、定着装置38については、後で説明する。
【0038】
また、現像装置34による現像が行われることによって、当該現像装置34内のトナーが消費される。このトナーの消費分を補うために、トナー補給装置42により現像装置34へトナーが補給される。トナー補給装置42は、現像装置34内に設けられた図示しないセンサがトナーの不足を検出した際に、駆動モータ44からの回転力を受けて内部に収容したトナーを現像装置34に供給する。なお、トナー補給を行う場合は、供給されたトナーを帯電させるために撹拌搬送部材56と現像ローラ58を回転させる必要がある。特に、画像形成中にトナー補給が追いつかない状態になると、画像形成を一旦中断し、中断中に強制トナー補給を行うが、強制トナー補給中は、トナー補給終了後に速やかに画像形成を再開できるように、帯電ローラ46と現像ローラ58に、それぞれ帯電バイアスBcと現像バイアスBdとを印加した状態で、帯電ローラ46、現像ローラ58、撹拌搬送部材56、感光体ドラム20を回転させる空転処理が行われる。
【0039】
さらに、画像形成装置10内には、後述する給紙部78から転写ニップ部Ntを介して後述する排紙トレイ80への排紙口82に至る用紙搬送路84が設けられる。そして、用紙搬送路84の適宜の位置には、給紙部78から排紙口82へ向けて用紙を搬送させるための複数の搬送ローラ(厳密にはローラ対)86,86,…が設けられる。なお、各搬送ローラ86,86,…のうち、用紙搬送路84における用紙の搬送方向の転写ニップ部Ntよりも上流側であって、当該転写ニップ部Ntに最も近い位置に設けられた搬送ローラ86は、用紙が転写ニップ部Ntを通過するタイミングを計るためのレジストローラ86aである。また、各搬送ローラ86,86,…のうち、用紙搬送路84における用紙の搬送方向の最下流側に設けられた、つまり排紙口82の近傍に設けられた、搬送ローラ86は、当該排紙口82を介して排紙トレイ80に用紙を排出するための排紙ローラ86bである。
【0040】
そして、用紙搬送路84における転写ニップ部Ntと排紙口82との間の位置に、換言すれば当該用紙搬送路84における用紙の搬送方向の転写ニップ部Ntよりも下流側の位置に、定着装置38が設けられる。定着装置38は、ヒートローラ88と加圧ローラ90とを有する。これらヒートローラ88と加圧ローラ90とは、互いの表面を当接させた状態で設けられる。そして、ヒートローラ88は、所定の温度(定着温度)に加熱される。併せて、ヒートローラ88は、不図示の定着ローラ駆動手段としてのモータからの駆動力を受けて回転し、たとえば図1において反時計回りに回転する。これに伴い、加圧ローラ90もまた回転し、つまり図1において時計回りに従動回転する。そして、転写ニップ部Ntを通過した用紙は、ヒートローラ88の表面と加圧ローラ90の表面との当接部分である定着ニップ部Nfを通過し、詳しくは当該定着ニップ部Nfにより挟持搬送される。これにより、用紙上のトナー像が当該用紙上に定着(熱定着)される。これをもって、画像形成部26による一連の画像形成処理が終了する。
【0041】
この画像形成処理が施された後の用紙(印刷物)は、排紙トレイ80に排出される。なお、排紙トレイ80は、画像形成部26と画像読取部12との間に設けられ、いわゆる画像形成装置10の胴内空間に設けられる。なお、排紙トレイ80は、画像形成装置10の外側に設けられてもよい。
【0042】
さらに、画像形成装置10内の下部に、給紙手段としての給紙部78が設けられる。給紙部78は、給紙カセット92を有し、当該給紙カセット92には、複数枚の用紙が積層状に収容可能である。併せて、給紙部78は、ピックアップローラ94を有する。そして、給紙部78は、給紙カセット92に収容された用紙をピックアップローラ94により1枚単位で取り出し、用紙搬送路84へ供給する。
【0043】
加えて、画像形成装置10内には、両面印刷用の搬送路96が設けられる。この両面印刷用の搬送路96は、一旦、定着ニップ部Nfを通過した用紙を、つまり画像形成処理が施された後の用紙を、取り込んで、改めて当該用紙を画像形成処理に供するための搬送路である。すなわち、両面印刷用の搬送路96に取り込まれた用紙は、改めて用紙搬送路84に供給され、詳しくはレジストローラ86aの上流側に供給される。その際、用紙の表裏が反転される。これにより、用紙の裏面に画像形成処理が施され、いわゆる両面印刷が実現される。なお、両面印刷用の搬送路96の適宜の位置にも搬送ローラ(厳密にはローラ対)98,98,…が設けられる。
【0044】
本第1実施例に係る画像形成装置10は以上のように構成されるが、このような画像形成装置10においてトナー像を形成する際に、感光体ドラム28の表面のうちの静電潜像が形成されていない領域にトナーが付着する、かぶり現象が生ずることがある。このかぶり現象は、現像装置34内のトナーが所定の電荷量にまで帯電されない場合などに生じ易い。このかぶり現象が生ずると、感光体ドラム28の表面に付着したトナー(かぶりトナー)が転写ローラ62の表面に付着して、この転写ローラ62の表面に付着したトナーが用紙の裏面を汚してしまうことがある。
【0045】
そのため、前述したようにトナー補給などで空転処理をしている時、つまり画像形成処理が行われない非画像形成処理時においては、図3に示されるように、スイッチ回路70が転写ローラ用バイアスBtの供給源としてクリーニング用電源68を選択し、転写ローラ64にクリーニング用電源68が接続された状態とすることで、回転中にトナーが転写ローラ62の表面に付着することを防止できる。ここで、クリーニング用電源68は、直流の定電圧電源であり、接地電位を基準とするマイナスの直流電圧Vtを転写ローラ用バイアスBtとして転写ローラ62へ印加する。すなわち、画像形成処理時とは逆極性の転写ローラ用バイアスBtが転写ローラ62へ印加される。ここで印加される直流電圧Vtは、たとえば-700Vである。これにより、感光体ドラム28上にかぶりトナーが存在していても、転写ニップ部Ntにおいて、転写ローラ62に移動させない転写電界が形成される。その結果、感光体ドラム28の表面のかぶりトナーが、転写ローラ62の表面に付着することを効果的に防止できる。そして、転写ローラ62に付着せずに転写ニップ部Ntを通過したかぶりトナーは、クリーニング装置40(クリーニングブレード72)により除去(クリーニング)される。
【0046】
前述したように空転処理時においては、準備が整った時点で速やかに画像形成できるように帯電ローラ46に対して帯電用電源48から適当な帯電バイアスBcが印加される。この空転処理時の帯電バイアスBcとしては、たとえば作像処理を含む画像形成処理時の帯電バイアスBcと同じ重畳電圧Vcが帯電ローラ46へ印加される。
【0047】
また、空転処理時においては、現像装置34の撹拌搬送部材56および現像ローラ58も、前述の駆動力伝達手段としてのギア機構を介して駆動モータ44からの駆動力を受けて回転し、現像ローラ58には現像用電源60から適当な現像バイアスBdが印加される。この空転処理時の現像バイアスBdとしては、たとえば作像処理を含む画像形成時の現像バイアスBdと同じ直流電圧Vdが、現像ローラ58へ印加される。これにより、準備が整った時点で速やかに画像形成できる。
【0048】
なお、空転処理時においては、画像を形成しないので露光装置32による露光は行われないが、前述したようにクリーニング装置40によるクリーニングと、除電装置による除電は行われる。
【0049】
ここで、画像形成装置10の電気的な構成について、図4を参照して説明する。この図4に示されるように、画像形成装置10は、制御部200を有する。そして、制御部200に、バス202を介して、画像読取部12、自動原稿送り装置18、画像形成部26および給紙部78が接続される。併せて、制御部200には、バス202を介して、操作ユニット204、補助記憶部206、通信部208などが接続される。なお、画像形成装置10は、これら以外にも、種々の要素を備えるが、ここでは、本開示の本旨に直接的に関係しない要素についての図示および説明を省略する。また、画像読取部12、自動原稿送り装置18、画像形成部26および給紙部78については、前述した通りある。特に、画像形成部26は、駆動モータ44を有する。この駆動モータ44は、たとえばステッピングモータであるが、これに限らない。
【0050】
制御部200は、画像形成装置10全体の制御を司る、制御手段である。このため、制御部200は、制御実行手段としてのコンピュータ、たとえばCPU200a、を有する。併せて、制御部200は、CPU200aが直接的にアクセス可能な主記憶手段としての主記憶部200bを有する。主記憶部200bは、たとえば不図示のROMおよびRAMを含む。このうちのROMには、CPU200aの動作を制御するための制御プログラム(ファームウェア)が記憶される。そして、RAMは、CPU200aが制御プログラムに従う処理を実行する際の作業領域およびバッファ領域を構成する。
【0051】
操作ユニット204は、不図示のタッチパネル付きのディスプレイを有する。タッチパネル付きのディスプレイは、不図示のユーザによる操作を受付可能な操作受付手段としてのタッチパネルと、各種の情報を表示する表示手段としてのディスプレイと、が一体的に組み合わされた構成品である。また、操作ユニット204は、タッチパネル付きのディスプレイの他に、不図示のLEDなどの適宜の発光手段、および、不図示の押しボタンなどの適宜のハードウェアスイッチを有する。
【0052】
補助記憶部206は、種々のデータが適宜に記憶される補助記憶手段である。この補助記憶部206に記憶される種々のデータには、前述の読取画像データなどが含まれる。この補助記憶部206は、たとえば不図示のハードディスクドライブを有する。併せて、補助記憶部206は、フラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性メモリを有する場合がある。
【0053】
通信部208は、不図示のパーソナルコンピュータやサーバなどの外部装置との間で双方向通信を行う通信手段である。このため、通信部208は、不図示のLAN回線に接続される。この通信部208とLAN回線とは、有線により接続されてもよいし、無線により接続されてもよい。また、通信部208は、不図示の公衆交換電話網を介しての双方向通信をも担う。
【0054】
ところで、前述したように空転処理とは、画像形成に必要な準備を整える際に行われる処理のことであり、たとえばトナー補給装置42による現像装置34へのトナー補給時や、放置された状態からの復帰動作であるウォームアップ時などに実行される。そしてたとえば、従来は、空転処理が実行されているときに、転写装置36に対してはクリーニング用電源68から接地電位を基準とするマイナスの直流電圧Vtが転写ローラ用バイアスBtとして転写ローラ62へ印加され、換言すれば画像形成処理時とは逆極性の転写ローラ用バイアスBtが転写ローラ62へ印加される。
【0055】
図5を用いて従来の空転処理について説明する。図5では、或る時点t0において、空転処理が開始される、つまり駆動モータ44の駆動が開始される。これにより、感光体ドラム28の回転が開始されるとともに、帯電ローラ46の回転が開始され、さらに、撹拌搬送部材56および現像ローラ58それぞれの回転も開始され、併せて、転写ローラ62の回転も開始される。なお、図5においては、駆動モータ44が駆動されていない状態(OFF状態)をローレベルとし、駆動モータ44が駆動されている状態(ON状態)をハイレベルとして、当該駆動モータ44の状態を表現している。
【0056】
加えて、時点t0において、帯電ローラ46への帯電バイアスBcの印加が開始される。なお前述したように、空転処理時の帯電バイアスBcとしては、画像形成処理時の帯電バイアスBcと同じ重畳電圧Vcが帯電ローラ46へ印加される。これによって感光体ドラム28の表面が所定電位に帯電され、静電潜像を形成する準備がなされる。また、図5においては、帯電ローラ46へ帯電バイアスBcが印加されていない状態(OFF状態)をハイレベルとし、帯電ローラ46へ帯電バイアスBcが印加されている状態(ON状態)をローレベルとすることで、当該帯電バイアスBc(重畳電圧Vc)の全体的(平均的)な極性がマイナスであることを表現している。
【0057】
そして、時点t0の後の時点t1において、現像ローラ58への現像バイアスBdとしての直流電圧Vd(前述した-400V)の印加が開始される。これによって、感光体ドラム28の表面が露光されると直ちに現像できる状態(レディ状態)となる。また、図5においては、現像ローラ58へ現像バイアスBdが印加されていない状態(OFF状態)をハイレベルとし、現像ローラ58へ現像バイアスBdが印加されている状態(ON状態)をローレベルとすることで、当該現像バイアスBd(直流電圧Vd)の極性がマイナスであることを表現している。そして、時点t0から時点t1までの時間Taは、感光体ドラム28の回転方向における帯電装置30(帯電ローラ46)による帯電位置から現像装置34(現像ローラ58)による現像位置までの距離に対応する。
【0058】
さらに、時点t1の後の時点t2において、転写ローラ62への転写ローラ用バイアスBtの印加が開始される。このとき、転写ローラ用バイアスBtとしてクリーニング用電源68から接地電位を基準とするマイナスの直流電圧Vtが転写ローラ62へ印加され、つまり画像形成処理時とは逆極性の転写ローラ用バイアスBtが転写ローラ62へ印加される。これにより、感光体ドラム28の表面に意図しないかぶりトナーが現像されていても、これが転写ローラ62に引き寄せられて汚れることが防止される。なお、図5においては、転写ローラ62へ転写ローラ用バイアスBtが印加されていない状態(OFF状態)をハイレベルとし、転写ローラ62へ転写ローラ用バイアスBtが印加されている状態(ON状態)をローレベルとすることで、当該転写ローラ用バイアスBt(直流電圧Vt)の極性がマイナスであることを表現している。また、時点t1から時点t2までの時間Tbは、感光体ドラム28の回転方向における現像装置34による現像位置から転写ニップ部Ntまでの距離に対応する。本実施例の構成では、感光体ドラム28を回転駆動する。
【0059】
そしてたとえば、トナー補給装置42による現像装置34へのトナー補給が終わり、あるいは、放置状態からの画像形成装置10のウォームアップが終わると、通常は、引き続いて画像形成が開始されるが、図5では、空転処理後に画像形成がされない場合を例示している。そのため、空転処理後に回転停止するシーケンスについて続いて説明する。空転処理を停止するにあたり、時点t3において、帯電ローラ46への帯電バイアスBcの印加が停止(終了)される。
【0060】
次に、時点t4において、現像ローラ58への現像バイアスBdの印加が停止される。ここで、時点t3から時点t4までの時間Tcは、前述の時点t0から時点t1までの時間Taと等価である。
【0061】
そして、時点t5において、転写ローラ62への転写ローラ用バイアスBt(直流電圧Vt)の印加が停止されてから、駆動モータ44の駆動が停止される。これにより、感光体ドラム28、帯電ローラ46、撹拌搬送部材56、現像ローラ58および転写ローラ62の回転が停止され、これをもって、空転処理が終了される。なお、時点t4から時点t5までの時間Tdは、前述の時点t1から時点t2までの時間Tbと等価である。
【0062】
このように従来は、空転処理が実行されているときに、つまり時点t0から時点t5までの空転時間Teにわたって、厳密には時点t2から時点t5までの言わば転写ローラ用バイアス印加時間Tfにわたって、画像形成処理時とは逆極性の転写ローラ用バイアスBt(直流電圧Vt)が転写ローラ62へ印加される。これにより、転写ローラ62へのトナー付着を防止できる。なお、空転時間Teの長さは、当該空転時間Te中に行われるトナー補給やウォームアップなどの処理の内容(種類)によって異なるが、通常十数秒間~数十秒間程度で、トナー補給装置42内のトナー残量が空に近くなると1~2分程度まで増加する。すなわち、空転処理は、十数秒間~2分という空転時間Teにわたって実施される。
【0063】
ここで、空転処理が継続されると、感光体ドラム28の表面に付着した放電生成物によってクリーニングブレード72との間の摩擦係数が上昇して、当該クリーニングブレード72に掛かる機械的負荷が増大し、ひいてはクリーニングブレード72が損傷する虞がある。特に、帯電ローラ46に印加される帯電バイアスBcとして重畳電圧Vcが採用されると、前述した放電生成物が感光体ドラム28に表面に付着して、当該感光体ドラム28の表面が粗面化する。これにより、クリーニングブレード72に掛かる機械的負荷が増大する、という現象がより顕著になり、当該クリーニングブレード72が損傷し易くなる。
【0064】
そこで、空転処理において、転写ローラ62に印加する転写ローラ用バイアスBtがクリーニングブレード72に係る機械的負荷に与える影響を確認する実験を行った。その結果を、図6Aおよび図6Bに示す。なお、クリーニングブレード72に掛かる機械的負荷を直接的に測定することは極めて困難であることから、駆動モータ44用の不図示の電源に流れる電流から当該駆動モータ44の回転軸に掛かるトルクを測定し、このトルクからクリーニングブレード72に係る機械的負荷を推測した。また、この実験においては、感光体ドラム28の表面とクリーニングブレードとの間の摩擦係数が十分に小さい状態を基点として、駆動モータ44の駆動を開始した。
【0065】
図6Aは、転写ローラ用バイアスBtとして画像形成処理時と逆極性の直流電圧Vtを転写ローラ62に印加した時の結果で、駆動モータ44の回転軸に掛かるトルクは、(基点直後の最大静止摩擦力によるオーバシュート状の変化を除いて)時間の経過とともに徐々に増大する。そして、基点からおおよそ10秒間が経過した時点前後で、駆動モータ44の回転軸に掛かるトルクがおおむね飽和する。このことから、転写ローラ用バイアスBtとして画像形成処理時と逆極性の直流電圧Vtが転写ローラ62へ印加される場合に、クリーニングブレードに掛かる機械的負荷は、時間の経過とともに徐々に増大し、基点からおおよそ10秒間が経過した時点前後で飽和するものと、推測される。
【0066】
図6Bは、転写ローラ用バイアスBtとして画像形成処理時と同極性の転写電流Itを転写ローラ62に印加した時の結果で、駆動モータ44の回転軸に掛かるトルクは、(基点直後において最大静止摩擦力によるオーバシュートした後)時間が経過すると一端増加するが、2秒程度で増加は止まり、その後は徐々に減少する。そして、基点からおおよそ10秒間が経過した時点前後で、駆動モータ44の回転軸に掛かるトルクがおおむね安定する。このことから、転写ローラ用バイアスBtとして画像形成処理時と同極性の転写電流Itが転写ローラ62へ印加される場合に、クリーニングブレードに掛かる機械的負荷は、時間の経過とともに徐々に減少し、基点からおおよそ10秒間が経過した時点前後で安定するものと、推測される。
【0067】
このように、転写ローラ用バイアスBtとして画像形成処理時と同極性の転写電流Itが転写ローラ62へ印加される場合に、クリーニングブレード72に掛かる機械的負荷が軽減されるのは、次のような理由によるものと、想像される。すなわち、画像形成処理時と同極性の転写ローラ用バイアスBtが転写ローラ62へ印加されることで、当該転写ローラ62から感光体ドラム28へ電流が流れ込む。これにより、感光体ドラム28の表面に付着した放電生成物と感光体ドラム28との付着力が弱まりクリーニングブレード72で除去され易くなって、摩擦係数が下がり、当該クリーニングブレード72に掛かる機械的負荷が軽減されるのものと、想像される。
【0068】
これに対して、転写ローラ用バイアスBtとして画像形成処理時と逆極性の直流電圧Vtが転写ローラ62へ印加される場合は、当該転写ローラ62の表面から感光体ドラム28の表面への電流の流れ込みがほとんどない。したがって、感光体ドラム28の表面に付着した放電生成物と感光体ドラム28との付着力が弱まることはない。そのため、クリーニングブレード72に掛かる機械的負荷は軽減されない。なお、転写ローラ62へ転写ローラ用バイアスBtが印加されない場合も、画像形成処理時と逆極性の転写ローラ用バイアスBtが転写ローラ62へ印加される場合と同様の結果となることが、つまり図6Aに示されるような結果となることが、実験により確認された。
【0069】
このような実験結果に着目して、本第1実施例においては、空転処理が実行されるときに、まず、転写ローラ用バイアスBtとして画像形成処理時と同極性の転写電流Itが転写ローラ62へ印加され、詳しくは画像形成処理時と等価な転写電流Itが転写ローラ62へ印加される。そして、空転処理が終了する直前に、転写電流Itに代えて、画像形成処理時と逆極性の直流電圧Vtが、転写ローラ用バイアスBtとして転写ローラ62へ印加され、転写ローラ用バイアスBtとして転写電流Itが印加されているときに転写ローラ62に引き寄せされたトナーが感光体ドラム28に移動するクリーニング処理が行われる。
【0070】
具体的には、図7に示されるような要領で制御が行われる。なお、駆動モータ44、帯電バイアスBc(重畳電圧Vc)および現像バイアスBd(直流電圧Vd)については、図5に示されるのと同様の要領で制御される。そして、転写ローラ用バイアスBtについてのみ、図5に示されるのとは異なる要領で制御される。
【0071】
この図7に示されるように、時点t2において、転写ローラ62への転写ローラ用バイアスBtの印加が開始される。このとき、転写ローラ用バイアスBtとして転写用電源66から接地電位を基準とするプラスの転写電流Itが転写ローラ62へ印加され、つまり画像形成処理時と同極性の転写ローラ用バイアスBtが転写ローラ62へ印加される。なお、図7においては、転写ローラ62へ転写ローラ用バイアスBtが印加されていない状態(OFF状態)を中間レベルとし、転写ローラ62へ画像形成処理時と同極性の転写ローラ用バイアスBt(転写電流It)が印加されている状態(ON状態)をハイレベルとすることで、当該転写ローラ用バイアスBt(転写電流It)の極性がプラスであることを表現している。
【0072】
そして、空転処理が終了される時点t5よりも前の時点t10において、転写電流Itに代えて、画像形成処理時と逆極性の直流電圧Vtが、転写ローラ用バイアスBtとして転写ローラ62へ印加される。これにより、クリーニング処理が行われる。このクリーニング処理は、時点t5まで行われ、つまり時点t5において、転写ローラ62への転写ローラ用バイアスBt(直流電圧Vt)の印加が停止される。
【0073】
なお、クリーニング処理が行われる時点t10から時点t5までの時間、言わばクリーニング時間Thの長さは、転写ローラ62が1回転するのに要する時間の長さ以上であり、かつ、図6Aに示される実験結果から推測されるクリーニングブレード72に掛かる機械的負荷が飽和するのに要する時間よりも短く、たとえば10秒間よりも短い。また、空転時間Teの長さは、基本的には予め定められている(判明している)が、この予め定められた空転時間Teを超過しないように、クリーニング処理が行われ、とりわけクリーニング時間Thの始期である時点t10が定められる。
【0074】
そして、時点t2から時点t10までの時間、つまり転写ローラ用バイアスBtとして画像形成処理時と同極性の転写電流Itが印加される言わば順バイアス印加時間Tiの長さは、クリーニング時間Thの長さ以上とされる。言い換えれば、このことも考慮して、クリーニング時間Thの始期である時点t10が定められる。
【0075】
このように、本第1実施例によれば、空転時間Te(厳密には転写ローラ用バイアス印加時間Tf)において、まず、画像形成処理時と同極性の転写ローラ用バイアスBtが転写ローラ62へ印加され、言わば順バイアス印加処理が行われる。この順バイアス印加処理が行われているときは、つまり順バイアス印加時間Tiにおいては、クリーニングブレード72に掛かる機械的負荷の増大が抑制される。このことは、図6Bに示される実験結果からも分かる。そして、順バイアス印加時間Tiの後に、クリーニング処理が行われ、つまり画像形成処理時とは逆極性の転写ローラ用バイアスBtが転写ローラ62へ印加される。このクリーニング処理が行われるクリーニング時間Thの長さは、転写ローラ62が1回転するのに要する時間の長さ以上であり、かつ、クリーニングブレード72に掛かる機械的負荷が飽和するのに要する時間よりも短い。したがって、クリーニングブレードに掛かる機械的負荷の増大が抑制されつつ、クリーニング処理が適切に行われる。そして、実際の耐久(エージング)試験において、たとえば10000万回にわたって画像形成処理が連続的に行われた場合でも、クリーニングブレード72が損傷しないことが確認された。すなわち、本第1実施例によれば、クリーニングブレード72に掛かる機械的負荷が十分かつ確実に軽減されるとともに、クリーニング処理が適切に行われる。
【0076】
また、本第1実施例によれば、また、予め定められた空転時間Teを超過しないように、クリーニング処理が行われる。したがって、クリーニング処理が行われることによって、空転時間Teが延長されることはなく、換言すれば画像形成装置10の処理能力が低下することはない。
【0077】
なお、本第1実施例における転写ローラ用電源は、本開示に係るバイアス電源の一例である。そして、本第1実施例における順バイアス印加処理は、本開示に係る第1制御処理の一例であり、当該順バイアス印加処理時に転写ローラ62へ印加される転写ローラ用バイアスBtとしての転写電流Itは、本開示に係る第1バイアスの一例である。さらに、本第1実施例における順バイアス印加時間Tiは、本開示に係る第1制御期間の一例である。また、本第1実施例におけるクリーニング処理は、本開示に係る第2制御処理の一例であり、当該クリーニング処理時に転写ローラ62へ印加される転写ローラ用バイアスBtとしての直流電圧Vtは、本開示に係る第2バイアスの一例である。そして、本第1実施例におけるクリーニング時間Thは、本開示に係る第2制御期間の一例である。さらに、本第1実施例における順バイアス印加処理およびクリーニング処理は、CPU200aを含む制御部200によって制御されるが、これら順バイアス印加処理およびクリーニング処理の制御を担う制御部200は、本開示に係る制御手段の一例である。
【0078】
また、本第1実施例においては、トナー補給時やウォームアップ時に空転処理が実行されるが、当該トナー補給やウォームアップは、本開示に係る画像形成条件の一例である。この画像形成条件には、感光体ドラム28の表面のクリーニングも含まれる。さらに、本第1実施例においては、特段には説明しなかったが、転写ローラ62の表面のクリーニング時にも、空転処理が行われるが、当該転写ローラ62の表面のクリーニングもまた、画像形成条件の一例に含まれる。さらに、定着装置38においてヒートローラ88を所定温度にする動作も、ウォームアップ動作に含まれる。
【0079】
[第2実施例]
次に、本開示の第2実施例について、説明する。
【0080】
本第2実施例においては、図8に示されるように、クリーニング処理が間欠的に複数回、たとえば2回、行われる。具体的には、時点t2において、まず、順バイアス印加処理が行われ、つまり画像形成処理時と同極性の転写ローラ用バイアスBtが転写ローラ62へ印加される。この順バイアス印加処理は、適当な時間Tkにわたって行われる。
【0081】
そして、時点t2から時間Tkが経過した時点t20において、順バイアス印加処理に代えて、クリーニング処理が行われ、つまり画像形成処理時と逆極性の転写ローラ用バイアスBtが転写ローラ62へ印加される。このクリーニング処理は、適当な時間Tmにわたって行われ、その後、改めて順バイアス印加処理が行われ、さらにその後、改めてクリーニング処理が行われる。なお、2回目の順バイアス印加処理は、たとえば最初の順バイアス印加処理よりも短い時間Tnにわたって行われる。そして、2回目のクリーニング処理は、たとえば最初のクリーニング処理と同じ時間Tmにわたって行われる。また、2回目のクリーニング処理が空転時間Te(転写ローラ用バイアス印加時間Tf)の周期である時点t5で終了するように、時点t20が定められ、換言すれば当該時点t20から時点t5までの時間Tpが定められる。
【0082】
それぞれのクリーニング処理が行われるクリーニング時間Tmの長さは、転写ローラ62が1回転するのに要する時間の長さ以上であり、かつ、図6Aに示される実験結果から推測されるクリーニングブレード72に掛かる機械的負荷が飽和するのに要する時間よりも短く、たとえば10秒間よりも短い。そして、最初の順バイアス印加処理が行われる順バイアス印加時間Tkの長さは、第1実施例における順バイアス印加時間Tiの長さと同様、クリーニング時間Tmの長さ以上とされる。また、2回目の順バイアス印加処理が行われる順バイアス印加時間Tnも同様に、クリーニング時間Tmの長さ以上とされる。
【0083】
このような本第2実施例によっても、第1実施例と同様、クリーニングブレードに掛かる機械的負荷が十分かつ確実に軽減されるとともに、クリーニング処理が適切に行われる。そして、実際の耐久試験において、10000万回にわたって画像形成処理が連続的に行われた場合でも、クリーニングブレード72が損傷しないことが確認された。
【0084】
なお、本第2実施例においては、クリーニング処理が間欠的に2回行われる場合を例に挙げたが、当該クリーニング処理が間欠的に3回以上行われてもよい。いずれの場合も、最後のクリーニング処理が空転時間Te(転写ローラ用バイアス印加時間Tf)の周期である時点t5で終了するよう構成されるのが、望ましい。
【0085】
また、本第2実施例においては、2回目(最後)のクリーニング処理が空転時間Teの周期である時点t5で終了するよう、つまり空転時間Teの最後にクリーニング処理が行われるよう、構成されたが、これに限らない。すなわち、空転時間Teの最後に順バイアス処理が行われてもよい。ただし、前述したかぶり現象による不都合(つまり転写ローラ62に付着したトナーによって用紙が汚れるという不都合)を回避する観点からは、空転時間Teの最後にクリーニング処理が行われるのが、望ましい。
【0086】
[第3実施例]
次に、本開示の第3実施例について、説明する。
【0087】
本第3実施例においては、図9に示されるように、順バイアス印加処理とクリーニング処理とが交互に行われる。具体的には、時点t2において、まず、順バイアス印加処理が適当な時間Trにわたって行われ、その後、クリーニング処理が適当な時間Tsにわたって行われ、これ以降、当該順バイアス印加処理とクリーニング処理とが交互に行われる。そして、空転時間Teの最後にクリーニング処理が行われる。
【0088】
なお、それぞれのクリーニング処理が行われるクリーニング時間Tsの長さは、第1実施例におけるクリーニング時間Thの長さと同様、転写ローラ62が1回転するのに要する時間の長さ以上であり、かつ、クリーニングブレード72に掛かる機械的負荷が飽和するのに要する時間よりも短い。そして、それぞれの順バイアス印加処理が行われる順バイアス印加時間Trの長さは、第1実施例における順バイアス印加時間Tiの長さと同様、クリーニング時間Tsの長さ以上とされる。さらに、予め定められた空転時間Teを超過しないように、順バイアス印加処理およびクリーニング処理それぞれの回数が定められるとともに、順バイアス印加時間Trおよびクリーニング時間Tsそれぞれの長さが定められる。
【0089】
このような本第3実施例によっても、第1実施例と同様、クリーニングブレードに掛かる機械的負荷が十分かつ確実に軽減されるとともに、クリーニング処理が適切に行われる。そして、実際の耐久試験において、10000万回にわたって画像形成処理が連続的に行われた場合でも、クリーニングブレード72が損傷しないことが確認された。
【0090】
なお、本第3実施例においては、空転時間Teの最後にクリーニング処理が行われるよう構成されたが、空転時間Teの最後に順バイアス処理が行われてもよい。ただし、前述したかぶり現象による不都合(つまり転写ローラ62に付着したトナーによって用紙が汚れるという不都合)を回避する観点からは、空転時間Teの最後にクリーニング処理が行われるのが、望ましい。
【0091】
また、本第3実施例においては、空転時間Teの最初に順バイアス処理が行われるよう構成されたが、空転時間Teの最初にクリーニング処理が行われてもよい。
【0092】
さらに、それぞれの順バイアス印加時間Trは、均等であってもよいし、不均等であってもよい。それぞれのクリーニング時間Tsも同様に、均等であってもよいし、不均等であってもよい。いずれにしても、クリーニング時間Tsの長さは、転写ローラ62が1回転するのに要する時間の長さ以上であり、かつ、クリーニングブレード72に掛かる機械的負荷が飽和するのに要する時間よりも短いことが、肝要である。そして、順バイアス印加時間Trの長さは、クリーニング時間Tsの長さ以上であることが、肝要である。
【0093】
[その他の適用例]
以上の各実施例は、本開示の具体例であり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。これら各実施例以外の局面にも、本開示を適用することができる。
【0094】
たとえば、帯電バイアスBcとして、直流電圧Vdcと交流電圧Vacとが重畳された重畳電圧Vcが採用されたが、これに代えて、直流電流と交流電流とが重畳された重畳電流が採用されてもよい。
【0095】
また、転写用電源66は、直流の定電流源ではなく、直流の定電圧源であってもよい。ただし、転写用電源66として直流の定電圧電源を採用しても、転写用電源66から転写ローラ62へ所定の転写電流Itが印加されるようにすることが必要で、当該転写ローラ62の表面から感光体ドラム28の表面へ確実に電流が流れ込むことで、感光体ドラム28の表面に付着した放電生成物と感光体ドラム28との付着力を弱めてクリーニングブレード72で除去され易くなり、当該感光体ドラム28の表面とクリーニングブレード72との間の摩擦係数を下げ、クリーニングブレード72に掛かる機械的負荷を軽減させることができる。ただし定電圧電源の場合は、環境等によって転写電流値Itが変化するため、定電流電源を採用することが望ましい。
【0096】
さらに、クリーニング用電源68については、直流の定電圧源ではなく、直流の定電流源であってもよい。このクリーニング用電源68については、転写ローラ62上のトナーを感光体ドラム28側へ戻すための転写電界を形成することができるものであれば足りる。したがって、直流の定電流源に比べて構成が簡素である直流の定電圧源がクリーニング用電源68として採用されるのが、当該クリーニング用電源68の構成の簡素化を図る上で、有益である。
【0097】
そして、各実施例においては、モノクロの画像形成装置10に本開示が適用される場合について、説明したが、これに限らない。すなわち、カラーの画像形成装置にも、本開示を適用することができる。特に、タンデム式のカラーの画像形成装置に本開示が適用される場合には、中間転写ベルトが本開示に係る転写媒体に相当する。
【0098】
また、各実施例に係る画像形成装置10は、複合機であるが、これに限らず、コピー機やプリンタ、ファクス装置などの当該複合機以外の画像形成装置にも、本開示を適用することができる。
【0099】
加えて、本開示は、画像形成装置という装置の形態に限らず、画像形成装置の制御方法という方法の形態によっても、提供することができる。
【符号の説明】
【0100】
10 … 画像形成装置
26 … 画像形成部
28 … 感光体ドラム
36 … 転写装置
40 … クリーニング装置
62 … 転写ローラ
64 … 転写ローラ用電源
66 … 転写用電源
68 … クリーニング用電源
72 … クリーニングブレード
Bt … 転写ローラ用バイアス
It … 直流電流
Vt … 直流電圧
200 … 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
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図9