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特開2024-171451情報処理装置、露光装置、及び物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171451
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】情報処理装置、露光装置、及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088462
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】富山 眞之介
(72)【発明者】
【氏名】河田 和弥
(72)【発明者】
【氏名】日置 真則
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA09
2H197CD12
2H197CD13
2H197CD35
2H197CD43
2H197CD50
2H197DA03
2H197DA09
2H197HA03
2H197HA04
2H197HA05
2H197JA23
(57)【要約】
【課題】露光装置の露光性能の評価値を高精度に取得することができる情報処理装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る情報処理装置は、原版のパターンの像を基板に投影し、基板を露光する露光装置に設けられている部材の物理量のログから抽出された基板上の複数の計測点それぞれの露光期間である計測点露光期間における部材の物理量のログを機械学習によって取得される学習モデルに入力することで露光装置の露光性能の評価値を取得する取得工程を行うことを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原版のパターンの像を基板に投影し、前記基板を露光する露光装置に設けられている部材の物理量のログから抽出された前記基板上の複数の計測点それぞれの露光期間である計測点露光期間における該部材の該物理量のログを機械学習によって取得される学習モデルに入力することで前記露光装置の露光性能の評価値を取得する取得工程を行うことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記部材は、前記原版を保持しながら移動可能な原版ステージと、前記基板を保持しながら移動可能な基板ステージと、前記原版ステージ及び前記基板ステージが載置されるマウントとのうちの少なくとも一つを含み、
前記物理量は、位置、速度及び加速度それぞれの設定値及び計測値のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記露光装置の前記露光性能の前記評価値は、前記露光装置によって前記基板上に形成される前記パターンのオーバーレイ値と、前記露光装置によって前記基板上に形成される前記パターンの線幅の大きさと、前記露光装置の限界寸法と、前記露光装置のフォーカスとのうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記取得工程は、前記部材の前記物理量のログから前記基板上の複数の計測点それぞれの前記計測点露光期間における前記部材の前記物理量のログを抽出する第1の抽出工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第1の抽出工程は、
前記部材の前記物理量のログから前記基板を露光する基板露光期間における前記部材の前記物理量のログを抽出する第2の抽出工程と、
該抽出された基板露光期間における部材の物理量のログから前記基板上の複数の計測点それぞれの前記計測点露光期間における前記部材の前記物理量のログを抽出する第3の抽出工程と、
を含むことを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第1の抽出工程は、前記基板上の複数の計測点それぞれの前記計測点露光期間を算出する第1の算出工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記露光装置は、露光光が通過する開口を有するスリットを含み、前記原版に前記露光光を照射する照明光学系と、前記原版を通過した前記露光光を前記基板に導光する投影光学系と、前記基板を保持しながら前記基板の各露光ショットを露光する際に前記投影光学系の光軸に垂直な走査方向に移動する基板ステージとを備えており、
前記第1の算出工程は、
前記基板ステージの前記走査方向における前記移動において、前記投影光学系の光軸に垂直な第1の平面内に投影した際に前記基板の所定の露光ショットにおける所定の計測点が前記開口を通過し始める第1の時刻と前記開口を通過し終わる第2の時刻とを算出する第2の算出工程と、
該算出された第1の時刻及び第2の時刻から前記所定の計測点の前記計測点露光期間を算出する第3の算出工程とを含むことを特徴とする請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記所定の計測点の前記走査方向における座標をY、前記所定の露光ショットを露光し始める第3の時刻をT、前記第3の時刻における前記基板ステージの前記走査方向における速度及び加速度をv及びa、前記開口の前記走査方向における幅をr、前記第1の時刻をT、前記第2の時刻をTとしたとき、前記第2の算出工程において
【数1】
【数2】
なる関係から前記第1の時刻及び前記第2の時刻を算出することを特徴とする請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記開口は、前記第1の平面内において矩形形状を有していることを特徴とする請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記部材の前記物理量のログから抽出された前記基板上の複数の計測点それぞれの前記計測点露光期間における前記部材の前記物理量のログを取得することで入力データを作成する第1の作成工程と、
前記基板上の露光された複数の計測点それぞれに対応する前記露光装置の前記露光性能の前記評価値を取得することで教師データを作成する第2の作成工程と、
該作成された入力データ及び教師データから前記学習モデルを作成する第3の作成工程とを行うことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記部材は、前記原版を保持しながら移動可能な原版ステージと、前記基板を保持しながら移動可能な基板ステージと、前記原版ステージ及び前記基板ステージが載置されるマウントとのうちの少なくとも一つを含み、
前記物理量は、位置、速度及び加速度それぞれの設定値及び計測値のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記露光装置の前記露光性能の前記評価値は、前記露光装置によって前記基板上に形成される前記パターンのオーバーレイ値と、前記露光装置によって前記基板上に形成される前記パターンの線幅の大きさと、前記露光装置の限界寸法と、前記露光装置のフォーカスとのうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記第1の作成工程は、前記部材の前記物理量のログから前記基板上の複数の計測点それぞれの前記計測点露光期間における前記部材の前記物理量のログを抽出する第1の抽出工程を含むことを特徴とする請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記第1の抽出工程は、
前記部材の前記物理量のログから前記基板を露光した基板露光期間における前記部材の前記物理量のログを抽出する第2の抽出工程と、
該抽出された基板露光期間における部材の物理量のログから前記基板上の複数の計測点それぞれの前記計測点露光期間における前記部材の前記物理量のログを抽出する第3の抽出工程と、
を含むことを特徴とする請求項13に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記第2の抽出工程は、前記露光された基板の基板情報を取得する工程と、該取得された基板情報から前記基板を露光し始めた第4の時刻及び前記基板を露光し終わった第5の時刻を取得する工程と、該取得された第4の時刻及び第5の時刻から前記基板露光期間を決定する工程とを含むことを特徴とする請求項14に記載の情報処理装置。
【請求項16】
前記第1の抽出工程は、前記基板上の複数の計測点それぞれの前記計測点露光期間を算出する第1の算出工程を含むことを特徴とする請求項13に記載の情報処理装置。
【請求項17】
前記露光装置は、露光光が通過する開口を有するスリットを含み、前記原版に前記露光光を照射する照明光学系と、前記原版を通過した前記露光光を前記基板に導光する投影光学系と、前記基板を保持しながら前記基板の各露光ショットを露光する際に前記投影光学系の光軸に垂直な走査方向に移動する基板ステージとを備えており、
前記第1の算出工程は、
前記基板ステージの前記走査方向における前記移動において、前記投影光学系の光軸に垂直な第1の平面内に投影した際に前記基板の所定の露光ショットにおける所定の計測点が前記開口を通過し始める第1の時刻と前記開口を通過し終わる第2の時刻とを算出する第2の算出工程と、
該算出された第1の時刻及び第2の時刻から前記所定の計測点の前記計測点露光期間を算出する第3の算出工程とを含むことを特徴とする請求項16に記載の情報処理装置。
【請求項18】
前記所定の計測点の前記走査方向における座標をY、前記所定の露光ショットを露光し始めた第3の時刻をT、前記第3の時刻における前記基板ステージの前記走査方向における速度及び加速度をv及びa、前記開口の前記走査方向における幅をr、前記第1の時刻をT、前記第2の時刻をTとしたとき、前記第2の算出工程において
【数3】
【数4】
なる関係から前記第1の時刻及び前記第2の時刻を算出することを特徴とする請求項17に記載の情報処理装置。
【請求項19】
前記開口は、前記第1の平面内において矩形形状を有していることを特徴とする請求項17に記載の情報処理装置。
【請求項20】
前記第2の作成工程は、前記基板上の露光された複数の計測点それぞれに対応する前記露光装置の前記露光性能の前記評価値を計測する工程を含むことを特徴とする請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項21】
前記第3の作成工程は、前記基板上の複数の計測点それぞれの前記計測点露光期間のログと、前記基板上の露光された複数の計測点それぞれに対応する前記露光装置の前記露光性能の前記評価値とを互いに対応付ける工程を含むことを特徴とする請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項22】
原版のパターンの像を基板に投影し、前記基板を露光する露光装置であって、
請求項1乃至21のいずれか一項に記載の情報処理装置を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項23】
請求項22に記載の露光装置を用いて前記基板を露光する工程と、
露光された前記基板を現像する工程と、
現像された前記基板から物品を製造する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。
【請求項24】
原版のパターンの像を基板に投影し、前記基板を露光する露光装置に設けられている部材の物理量のログから抽出された前記基板上の複数の計測点それぞれの露光期間である計測点露光期間における該部材の該物理量のログを機械学習によって取得される学習モデルに入力することで前記露光装置の露光性能の評価値を取得する取得工程を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項25】
コンピュータによって、原版のパターンの像を基板に投影し、前記基板を露光する露光装置の露光性能の評価値を取得するプログラムであって、
前記露光装置に設けられている部材の物理量のログから抽出された前記基板上の複数の計測点それぞれの露光期間である計測点露光期間における該部材の該物理量のログを機械学習によって取得される学習モデルに入力することで前記露光装置の前記露光性能の前記評価値を取得する取得工程をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、露光装置においては露光性能を向上させることで露光により基板に形成されるパターンの精度を向上させることが求められている。
特許文献1は、基板を露光した際の露光装置が備える部材の物理量のログと、当該露光された基板において取得された当該露光装置の露光性能の評価値との間の相関を精度良く決定することで、当該露光性能を向上させる当該露光装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-27573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている露光装置では、基板を露光した際の部材の物理量のログと、当該露光された基板において取得された当該露光装置の露光性能の評価値とのそれぞれにおける所定の範囲の間の相関を決定することで当該相関の精度を向上させている。
しかしながら、特許文献1ではそのような所定の範囲の決定方法を確立してはいないため、上記相関の精度を十分に向上させてはおらず、すなわち露光装置の露光性能を向上させるための評価値を当該相関から高精度に取得することは困難である。
【0005】
そこで本発明は、露光装置の露光性能の評価値を高精度に取得することができる情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る情報処理装置は、原版のパターンの像を基板に投影し、基板を露光する露光装置に設けられている部材の物理量のログから抽出された基板上の複数の計測点それぞれの露光期間である計測点露光期間における部材の物理量のログを機械学習によって取得される学習モデルに入力することで露光装置の露光性能の評価値を取得する取得工程を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、露光装置の露光性能の評価値を高精度に取得することができる情報処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一実施形態に係る情報処理装置を備える露光装置の模式的断面図。
図2】第一実施形態に係る情報処理装置のブロック図。
図3】第一実施形態に係る情報処理装置において表示される状態ログの例及びプレート上の各計測点において計測されたオーバーレイ値の例を示した図。
図4】第一実施形態に係る情報処理装置におけるオーバーレイ値の解析用データの収集処理、学習モデルの作成処理及びプレート上の期待されるオーバーレイ値の取得処理を示すフローチャート。
図5】プレート上の所定の露光ショットの上面図。
図6】第二実施形態に係る情報処理装置のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本実施形態に係る情報処理装置を添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお以下に示す図面は、本実施形態を容易に理解できるようにするために、実際とは異なる縮尺で描かれている。
また以下では、投影光学系103の光軸に平行な方向をZ方向とする。また当該Z方向に垂直な断面内において、マスク104及びプレート105それぞれの走査方向をY方向、当該Y方向に直交する非走査方向をX方向と定義する。
【0010】
[第一実施形態]
従来、フォトリソグラフィ技術を用いて液晶パネル等の表示素子や半導体素子を製造する際に露光装置が用いられている。
具体的には、露光装置においてマスクやレチクル等の原板に描画されたパターンの像を投影光学系を介してガラス基板やウエハ等の基板上に投影することによって当該パターンを転写することで、所望の形状の表示素子や半導体素子を製造することができる。
【0011】
そして基板に転写されたパターンは、オーバーレイ値や線幅等の評価指標に基づいて評価することができる。
すなわち検査装置を用いて基板に転写されたパターンのオーバーレイ値や線幅等を計測することで、露光装置の露光性能を評価することができる。
【0012】
また、露光装置は様々な駆動ユニット及び計測ユニットから構成されており、当該駆動ユニット及び当該計測ユニットにおいて取得される多数のデータが露光装置の状態ログとして露光装置に設けられている記憶装置に蓄積される。
そして、そのように蓄積された露光装置の状態ログは、露光装置の市場や開発現場において利用される。
【0013】
例えば、露光装置の露光性能の低下が検出された際に、露光装置の状態ログを参照することで露光装置のどの部材が露光性能に影響を与えているのか解析を行うことができる。
また例えば、以前に取得された露光装置の状態ログと露光性能とを互いに対応付けて解析することで、露光装置の露光性能の向上を図るための開発を行うこともできる。
【0014】
そして従来、露光装置の状態ログと露光性能との間の相関関数を算出し、当該露光性能を向上させるように露光装置の状態を調整することができる露光装置が提案されている。
また、露光装置の状態ログを集中管理することで当該状態ログを効率的に解析することができる露光装置が提案されている。
【0015】
上記のように、露光装置において露光性能の低下が検出された際や当該露光性能の向上を図る際に当該露光性能の解析を行うために当該露光装置の状態ログが収集される。
この際、当該収集された状態ログのうち当該露光性能の解析に必要なログを抽出するために時間を要するという問題が発生する虞がある。
【0016】
また近年、露光装置の機能や露光性能の高度化に伴い、記憶装置に蓄積される当該露光装置の状態ログの量や種類の増大が著しいため、そのような問題が発生し易くなっている。
そこで本実施形態は、記憶装置に蓄積されている状態ログから適切なログを知識や経験にとらわれず効率的に抽出することができる情報処理装置を提供することを目的としている。
また本実施形態は、上記のように効率的に抽出されたログに基づいて露光装置の露光性能の評価値を高精度に取得することができる情報処理装置を提供することを目的としている。
【0017】
図1は、第一実施形態に係る情報処理装置を備える露光装置100の模式的断面図を示している。
【0018】
露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式を用いて基板上に回路パターンを形成するリソグラフィ装置である。
具体的に露光装置100では、光源からの露光光を用いて、マスク104(原版)及びプレート105(基板)をそれぞれ走査しながらマスク104上のパターンの像をプレート105の感光剤が塗布されたプレート面上に投影するように走査露光が行われる。
【0019】
露光装置100は、制御部101、照明光学系102、投影光学系103、アライメントスコープ106、プレートステージ107(部材)、マスクステージ108(部材)、レーザ干渉計109及び高さセンサ113を備えている。
制御部101は、CPUやメモリ等を含んでおり、露光装置100の各部を制御することで例えばマスク104上に形成されているパターンをプレート105の感光剤が塗布されたプレート面上に転写するように走査露光を行う処理を制御する。
【0020】
また制御部101は、露光装置100に設けられている各ユニットの動作状態を監視しログとして保存する機能を有している。
例えば制御部101は、レーザ干渉計109によってリアルタイムに計測されたプレートステージ107のXY平面内における位置やX軸、Y軸及びZ軸それぞれのまわりの角度をログとして保存する。
そして制御部101は、プレートステージ107の当該計測結果に基づいてプレートステージ107の走査速度や位置の制御を行っている。
【0021】
また、マスクステージ108及びプレートステージ107はそれぞれ、マウント112(構造体、部材)上に載置されており、マウント112にはX軸、Y軸及びZ軸それぞれにおける位置、速度及び加速度を計測するセンサが設けられている。
制御部101は、当該センサによって計測されたマウント112のX軸、Y軸及びZ軸それぞれにおける位置、速度及び加速度をログとして保存する。
そして制御部101は、マウント112の当該計測結果に基づいてリニアモータ等の駆動モータを用いてマウント112の動作を制御する。
【0022】
照明光学系102は、光源として複数のランプを有しており、各ランプから射出された照明光を同一の光軸上において合成することで露光光を生成する。
そして、照明光学系102において当該生成された露光光がスリットを通過した後、マスク104へ照射される。
投影光学系103は、マスク104を通過した露光光をプレート105のプレート面上に導光する。
【0023】
アライメントスコープ106は、マスク104に形成されているマークとプレート105に形成されているマークとのそれぞれの画像を取得し、各マークのXY平面内における位置を計測する。
これにより、マスク104とプレート105との間の相対的な位置合わせが行われる。
【0024】
プレートステージ107(基板ステージ)は、プレート105が投影光学系103の像面の位置に配置されるようにプレート105をプレートチャック114によって保持しながら移動可能に構成されている。
マスクステージ108(原版ステージ)は、マスク104がアライメントスコープ106と投影光学系103との間、具体的には投影光学系103の物体面の位置に配置されるようにマスク104を保持しながら移動可能に構成されている。
すなわちプレートステージ107及びマスクステージ108は、プレート105の各露光ショットを露光する際に走査方向に移動する。
【0025】
レーザ干渉計109は、プレートステージ107及びマスクステージ108それぞれのXY面内の位置を計測する。
具体的にレーザ干渉計109は、レーザヘッド、プレートステージ107に取り付けられている第1の反射ミラー110、及びマスクステージ108に取り付けられている第2の反射ミラー111を含んでいる。
そしてレーザ干渉計109は、当該レーザヘッドから出射し、第1の反射ミラー110及び第2の反射ミラー111それぞれによって反射された計測光を受光することで、プレートステージ107及びマスクステージ108それぞれのXY面内の位置を計測できる。
【0026】
高さセンサ113は、プレート105に向けて計測光を射出し、プレート105によって反射された当該計測光を受光することで、プレート105のZ方向における位置を計測する。
そして、制御部101によってプレートステージ107及びマスクステージ108それぞれが適切な位置に制御されることで走査露光が実現される。
【0027】
図2は、本実施形態に係る情報処理装置のブロック図を示している。
本実施形態に係る情報処理装置は、露光装置100に設けられている制御部101及び操作端末208と、検査装置216とによって構成されている。
【0028】
制御部101は、駆動コントローラ202、駆動ログ保存部204、計測コントローラ205及び計測ログ保存部207を備えている。
駆動コントローラ202は、駆動ユニット203を制御すると共に、駆動ログ保存部204によって駆動ユニット203の駆動値のログ(以下、駆動ログと称する。)を保存させる。
なお駆動ユニット203としては、例えばプレートステージ107、マスクステージ108、マウント112及びプレートチャック114が含まれる。
【0029】
計測コントローラ205は、計測ユニット206を制御すると共に、計測ログ保存部207によって計測ユニット206の計測値のログ(以下、計測ログと称する。)を保存させる。
なお計測ユニット206としては、例えばレーザ干渉計109、マウント112及び高さセンサ113が含まれる。
また、駆動ユニット203の駆動ログ及び計測ユニット206の計測ログをまとめて露光装置100の状態ログと称することもできる。
【0030】
操作端末208は、操作部209、データ処理部210、ログ表示部211及び通信部212を備えている。
ログ表示部211は、操作部209からの操作等に応じて駆動ログ保存部204に保存されている駆動ログや計測ログ保存部207に保存されている計測ログを表示する。
【0031】
図3(a)は、ログ表示部211において表示される露光装置100の状態ログの例を示している。
ログ表示部211では、例えば定期的又は所定の計測タイミングに応じて取得されたマウント112の位置の各偏差の計測ログが時系列順に表示される。
またログ表示部211では、例えば定期的又は所定の計測タイミングに応じて取得されたマウント112の各加速度の計測ログが時系列順に表示される。
【0032】
通信部212は、検査装置216に設けられている通信部217から送信された検査装置216において取得されたデータを受信する。
図3(b)は、検査装置216において取得されたデータとしての検査装置216に設けられている計測ユニット218によって計測された所定のプレート105上の各位置におけるオーバーレイ値の例を示している。
具体的に図3(b)では、所定のプレート105上の各座標(X,Y)における1stレイヤの露光結果と2ndレイヤの露光結果との間のズレ量、すなわち重ね焼きによる1stパターンと2ndパターンとの間のズレ量(dX,dY)が示されている。
【0033】
すなわち検査装置216は、プレート105に対して露光及び現像を行った結果に対して検査を行うために、例えば計測ユニット218によってプレート105上の各位置におけるオーバーレイ値を計測することができる。
また検査装置216では、当該計測されたオーバーレイ値に加えて、プレート105のプレートIDや露光開始時間等の露光履歴を含むプレート情報も取得し、互いを関連付けて保存することができる。
【0034】
プレート105上において形成されるパターンから計測される各位置におけるオーバーレイ値は、プレート105に対して露光を行う際の露光装置100の状態が反映される、すなわち露光装置100の状態に応じて変動する。
なお検査装置216は、オーバーレイ値に限らず、プレート105に転写されたパターンの線幅等を計測ユニット218によって計測しても構わない。
【0035】
データ処理部210は、ログ収集部213、演算部214及びデータベース215を備えている。
ログ収集部213は、駆動ログ保存部204に保存されている駆動ログ及び計測ログ保存部207に保存されている計測ログから所定のログを抽出することで収集する。
演算部214は、ログ収集部213によって収集された所定のログと、通信部212を介して取得された検査装置216において計測されたオーバーレイ値との間の関連付けを行う。
データベース215は、演算部214において互いに関連付けられた所定のログとオーバーレイ値とを保存する。
【0036】
図4(a)は、本実施形態に係る情報処理装置に設けられているデータ処理部210におけるオーバーレイ値の解析用データの収集処理を示すフローチャートである。
まず、露光装置100においてプレート105に対して露光が行われた後、検査装置216においてプレート105上の各計測点におけるオーバーレイ値を計測させると共に、プレート105のプレート情報(基板情報)を取得させる(ステップS1)。
ここで、プレート105上においてオーバーレイ値を計測する計測点の数や配置等は、露光装置100の露光性能の求められる精度等、所望に応じて決定することができる。
【0037】
次に、ステップS1において取得されたプレート105上の各計測点の座標及びオーバーレイ値とプレート105のプレート情報とを通信部217及び通信部212を介して受信することで取得する(ステップS2)。
そして、ステップS2において取得されたプレート105のプレート情報からプレート105に対する露光処理の開始時刻(第4の時刻)及び終了時刻(第5の時刻)を取得する。その後、当該取得された時刻の間のプレート105に対する露光処理の期間(基板露光期間)を決定する(ステップS3)。
【0038】
次に、ログ収集部213によって駆動ログ保存部204が保存する駆動ログ及び計測ログ保存部207が保存する計測ログからステップS3で取得されたプレート105に対する露光処理の期間におけるログを抽出する(ステップS4、第2の抽出工程)。
ここで駆動ログには、例えばプレートステージ107、マスクステージ108及びマウント112それぞれの物理量としてのXY平面内における位置、速度及び加速度それぞれの設定値のログが含まれる。
【0039】
また計測ログには、例えばプレートステージ107、マスクステージ108及びマウント112それぞれの物理量としてのXY平面内における位置、速度及び加速度それぞれの計測値のログが含まれる。
なおプレート105では、所定のレイアウトで配置されている複数の露光ショットに対して露光処理が行われており、ステップS4で抽出したログには当該複数の露光ショットに対する露光処理が行われている際のログが含まれている。
【0040】
次に、プレート105に含まれる複数の露光ショットそれぞれにおける複数の計測点において露光が行われている期間(計測点露光期間)を取得する(ステップS5、第1の算出工程)。
ここで、複数の露光ショットそれぞれにおける複数の計測点はそれぞれXY平面内における座標が互いに異なる。
【0041】
また、所定の露光ショットにおける所定の計測点に対して露光が行われる期間は、XY平面内において当該所定の計測点が照明光学系102に含まれているスリットを通過し始める時刻から通過し終わる時刻までの期間として算出することができる。
そこでステップS5では、演算部214によって複数の露光ショットそれぞれにおける各計測点が照明光学系102に含まれているスリットの開口を通過し始める時刻(第1の時刻)及び通過し終わる時刻(第2の時刻)を算出する(第2の算出工程)。
その後、該算出された時刻から各計測点が露光される期間を算出する(第3の算出工程)。
【0042】
図5は、プレート105に含まれる所定の露光ショットSの上面図を示している。
なお図5では、照明光学系102に含まれているスリットの露光光が通過する開口IのXY平面(第1の平面)内における投影も示されている。
【0043】
まず、露光ショットSのY方向におけるマイナス側端部をY=0に設定する。
そして、プレートステージ107及びマスクステージ108がY方向に移動することによってスリットの開口Iが相対的に+Y方向に移動することで、露光ショットSに対して露光処理が行われるとする。
ここで、露光ショットS上において格子状に整列している複数の計測点P(X,Y)を設定する。
【0044】
また、スリットの開口IのY方向におけるプラス側端部がY=0の位置に配置される時刻、すなわち露光ショットSを露光し始める時刻をT(第3の時刻)とする。
また、プレートステージ107及びマスクステージ108の時刻TでのY方向における速度及び加速度をそれぞれv及びa、スリットの開口IのY方向における幅をrとする。
このとき、所定の計測点P(X,Y)がスリットの開口Iを通過し始める時刻T及び通過し終わる時刻Tと、当該所定の計測点P(X,Y)のY方向における座標Yとの間には、以下の式(1)及び(2)に表される関係がある。
【数1】
【数2】
【0045】
従ってステップS5では、式(1)及び(2)に表される関係を用いて、複数の露光ショットそれぞれにおける各計測点P(X,Y)が照明光学系102に含まれているスリットの開口Iを通過し始める時刻T及び通過し終わる時刻Tを算出する。
そして上述したように、このように算出された所定の計測点P(X,Y)がスリットの開口Iを通過し始める時刻Tと通過し終わる時刻Tとの間の期間は、当該所定の計測点P(X,Y)に対して露光処理が行われている期間とみなすことができる。
なお、上記では開口IがXY平面内において矩形形状を有するスリットについての算出方法を示したが、開口IのY方向において互いに対向する二辺がそれぞれ円弧形状を有するスリットについても同様に算出することができる。
【0046】
次に、ステップS4で抽出されたプレート105に対する露光の開始時刻と終了時刻との間の期間のログから各計測点P(X,Y)における露光の開始時刻Tと終了時刻Tとの間の期間のログを更に抽出する(ステップS6、第1の抽出工程、第3の抽出工程)。
そして、ステップS6において取得された各計測点P(X,Y)におけるログとステップS2において取得された各計測点P(X,Y)におけるオーバーレイ値とを互いに対応付ける(ステップS7)。
最後に、ステップS7において互いに対応付けられた各計測点P(X,Y)におけるログ及びオーバーレイ値をデータベース215に保存し(ステップS8)、処理を終了する。
【0047】
本実施形態に係る情報処理装置では、このようにして所定の計測点P(X,Y)におけるオーバーレイ値の解析用データとして当該所定の計測点P(X,Y)を露光する際の露光装置100の状態ログを取得することができる。
すなわち本実施形態に係る情報処理装置では、駆動ログ保存部204に保存されている駆動ログ及び計測ログ保存部207に保存されている計測ログから所定の計測点P(X,Y)におけるオーバーレイ値の解析に必要なログのみを選定することが可能となる。
【0048】
これにより、例えば検査装置216において計測されたプレート105上の所定の位置のオーバーレイ値に異常が検出された際に、当該所定の位置を露光する際の露光装置100の状態ログを迅速に取得することができる。
すなわち本実施形態に係る情報処理装置では、駆動ログ保存部204が保存する駆動ログ及び計測ログ保存部207が保存する計測ログから必要なログを手動で収集していた従来に比べて必要なログを自動で取得することで解析を迅速且つ効率的に行うことができる。
また、本実施形態に係る情報処理装置における上記の収集処理はデータ処理部210によって自動的に行われるため、従来のように収集処理を手動で行う際の露光装置100に対する知識や経験等には依存しない。
【0049】
また本実施形態に係る情報処理装置では、上記の処理によってデータベース215に保存された各計測点P(X,Y)におけるログ及びオーバーレイ値を用いて学習モデルを作成することができる。
図4(b)は、データ処理部210における学習モデルを作成する処理を示すフローチャートである。
【0050】
まず、データベース215に保存されている各データを取得する(ステップS11)。
具体的にステップS11では、プレート105上の複数の露光ショットそれぞれにおける各計測点P(X,Y)が露光された際の露光装置100の状態ログをデータベース215から取得する。
またステップS11では、プレート105上の複数の露光ショットそれぞれにおける各計測点P(X,Y)において計測されたオーバーレイ値をデータベース215から取得する。
【0051】
次に、ステップS11で取得された各データを学習モデルを作成するための入力データと教師データとに分類する(ステップS12)。
【0052】
具体的にステップS12では、ステップS11で取得された各データのうちプレート105上の複数の露光ショットそれぞれにおける各計測点P(X,Y)が露光された際の露光装置100の状態ログを入力データに分類する(第1の作成工程)。
またステップS12では、ステップS11で取得されたプレート105上の複数の露光ショットそれぞれにおける各計測点P(X,Y)において計測されたオーバーレイ値を教師データに分類する(第2の作成工程)。
【0053】
次に、ステップS12で取得された入力データ及び教師データを用いて学習モデルを作成する(ステップS13、第3の作成工程)。
【0054】
具体的にステップS13では、ステップS12で取得された入力データ及び教師データを用いて機械学習、具体的には教師有り学習を行うことで学習モデルを作成する。
このように作成された学習モデルには、例えば露光装置100における駆動ユニット203の駆動ログ及び計測ユニット206の計測ログを入力データとして入力することで当該駆動ログ及び当該計測ログに対応するオーバーレイ値を出力データとして取得できる。
【0055】
図4(c)は、プレート105に対して露光処理を行う際に期待されるプレート105上のオーバーレイ値を取得する処理を示すフローチャートである。
【0056】
まず、露光装置100においてプレート105に対して露光を行わない状態で、駆動ユニット203によってプレート105に対して露光を行う際の駆動を行わせると共に、計測ユニット206によって露光装置100における状態を計測させる(ステップS21)。
換言するとステップS21では、露光装置100においてプレート105に対して露光を行わない状態でテスト駆動をさせることで、露光装置100の状態ログを取得する。
【0057】
次に、露光装置100におけるテスト駆動によって取得された露光装置100の状態ログを入力データとして上記のように作成された学習モデルに入力する(ステップS22)。
そして、当該学習モデルから出力データとして出力される当該テスト駆動に対応する露光処理において期待されるプレート105上のオーバーレイ値を取得する(ステップS23、取得工程)。
これにより、当該取得されたプレート105上のオーバーレイ値に基づいて露光装置100においてプレート105に対して露光処理を行うか、換言すると露光装置100の状態を調整するか迅速且つ効率的に判断することができる。
【0058】
以上のように本実施形態に係る情報処理装置は、プレート105上の各位置を露光し始める時刻と露光し終わる時刻との間の期間を算出することで、露光装置100の状態ログのうちプレート105におけるオーバーレイ値の解析に必要なログのみを抽出している。
これにより、例えば検査装置216において計測されたプレート105上の所定の位置のオーバーレイ値に異常が検出された際に、当該所定の位置を露光する際の露光装置100の状態ログを迅速に取得することができる。
すなわち本実施形態に係る情報処理装置では、露光装置100の状態ログから必要なログを手動で収集していた従来に比べて、当該必要なログを自動で取得することで解析を迅速且つ効率的に行うことができる。
【0059】
また本実施形態に係る情報処理装置は、上記のように取得されたプレート105上の各位置を露光する際の露光装置100の状態ログとプレート105上の各位置におけるオーバーレイ値とを用いて学習モデルを作成している。
そして、作成された学習モデルに対して例えば露光装置100におけるテスト駆動によって取得された露光装置100の状態ログを入力することで、当該テスト駆動に対応する露光処理で期待されるプレート105上のオーバーレイ値が取得される。
これにより、当該取得されたプレート105上の期待されるオーバーレイ値に基づいて露光装置100においてプレート105に対して露光処理を行うか、換言すると露光装置100の状態を調整するか迅速且つ効率的に判断することができる。
【0060】
なお本実施形態に係る情報処理装置では、各計測点P(X,Y)におけるオーバーレイ値を解析するためのログを取得しているが、これに限られない。
すなわち本実施形態に係る情報処理装置では、例えば各計測点P(X,Y)における限界寸法(CD)、フォーカスや線幅等を含む露光装置100の露光性能の評価値を解析するためのログを取得しても構わない。
また本実施形態に係る情報処理装置では、ステップS5において所定の計測点P(X,Y)に対して露光処理が行われている期間を図5に示されているように算出しているが、当該期間を算出する方法は、これに限られない。
【0061】
また本実施形態に係る情報処理装置では、プレート105上の各位置を露光する際の露光装置100の状態ログ及びプレート105上の各位置におけるオーバーレイ値をそれぞれ入力データ及び出力データとする学習モデルを作成しているが、これに限られない。
すなわちプレート105上の各位置を露光する際の露光装置100の状態ログ及びプレート105上の各位置におけるオーバーレイ値を入力データとし、当該オーバーレイ値の向上に対応する露光装置100の状態を出力データとする学習モデルを作成してもよい。
【0062】
そしてこのように作成された学習モデルに対して、例えばプレート105上の所定の位置のオーバーレイ値に異常が検出された際に当該所定の位置を露光する際の露光装置100の状態ログと当該所定の位置のオーバーレイ値とを入力する。
これにより、当該オーバーレイ値を向上させるための露光装置100の状態、すなわち部材の設定値が当該学習モデルから出力されることで、プレート105上の所定の位置のオーバーレイ値に異常が検出された原因を特定することができる。
【0063】
[第二実施形態]
図6は、第二実施形態に係る情報処理装置のブロック図を示している。
なお以下では、本実施形態に係る情報処理装置において第一実施形態に係る情報処理装置に設けられているものと同一の構成要素には同一の符番を付し、説明を省略する。
【0064】
具体的に本実施形態に係る情報処理装置では、データベース215の代わりにデータベース702が露光装置100の外部に設けられていると共に、データ処理部210には当該データベース702と通信する通信部701が設けられている。
データベース702は、駆動ログ保存部204に保存されている駆動ログ及び計測ログ保存部207に保存されている計測ログからログ収集部213によって収集されたログを通信部701から受信することで保存する。
【0065】
またデータベース702は、検査装置216によって取得されたプレート105上の各計測点におけるオーバーレイ値及びプレート105のプレート情報を通信部701から受信することで保存する。
なおデータベース702は、露光装置100を含む複数の露光装置それぞれに設けられている通信部から上記のデータを取得し保存することもできる。
【0066】
また本実施形態に係る情報処理装置では、演算部214及び通信部704を有する演算処理端末703が設けられている。
演算処理端末703は、通信部704を介してデータベース702から上記のデータを取得することができる。
【0067】
本実施形態に係る情報処理装置では、第一実施形態に係る情報処理装置における図5に示されている処理でのステップS1乃至S4が同様にログ収集部213によって行われる。
そして、ログ収集部213によって取得されたプレート105に対する露光処理の期間のログ、プレート105上の各計測点におけるオーバーレイ値及びプレート105のプレート情報が通信部701を介してデータベース702に送信された後に保存される。
【0068】
次に、演算処理端末703が、通信部704を介してデータベース702に保存されているプレート105に対する露光処理の期間のログ、プレート105上の各計測点におけるオーバーレイ値及びプレート105のプレート情報を取得する。
そして、演算処理端末703が図5に示されている処理でのステップS5乃至S7を行った後、ステップS8として各計測点P(X,Y)におけるログ及びオーバーレイ値をデータベース702に送信することで保存させ、処理を終了する。
【0069】
以上のように本実施形態に係る情報処理装置では、プレート105上の各位置を露光し始める時刻と露光し終わる時刻との間の期間を算出することで、露光装置100の状態ログのうちプレート105におけるオーバーレイ値の解析に必要なログのみを抽出している。
これにより、例えば検査装置216において計測されたプレート105上の所定の位置のオーバーレイ値に異常が検出された際に、当該所定の位置を露光する際の露光装置100の状態ログを迅速に取得することができる。
すなわち本実施形態に係る情報処理装置では、露光装置100の状態ログから必要なログを手動で収集していた従来に比べて、当該必要なログを自動で取得することで解析を迅速且つ効率的に行うことができる。
【0070】
また本実施形態に係る情報処理装置では、データベース702が露光装置100を含む複数の露光装置と通信可能である場合には、演算処理端末703は当該複数の露光装置それぞれに対して上記の処理を行うことが可能となる。
従って本実施形態に係る情報処理装置では、当該複数の露光装置から取得されたデータに基づいて露光装置の機差に依らない学習モデルを第一実施形態において示したように作成することが可能となる。
【0071】
なお本実施形態に係る情報処理装置では、データベース702及び演算処理端末703は、露光装置100と同一の場所に設置されていてもよく、露光装置100とは異なる場所に設置されていても構わない。
また本実施形態に係る情報処理装置では、データベース702が露光装置100の外部に設けられている一方で、演算部214がデータ処理部210に設けられていても構わない。
【0072】
以上、好ましい実施形態について説明したが、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
また、上記では本実施形態に係る情報処理装置について説明したが、上記に示した情報処理方法、該情報処理方法を実施(実行)するためのプログラム、及び該プログラムが記録されたコンピュータが読み取り可能な記録媒体も本実施形態の範囲に含まれる。
【0073】
[物品の製造方法]
次に、本実施形態に係る情報処理装置を備える露光装置100を用いた物品の製造方法について説明する。
【0074】
ここで製造される物品としては、半導体デバイス、表示デバイス、カラーフィルタ、光学部品及び微小電気機械システム(MEMS)等が含まれる。
例えば半導体デバイスは、ウエハに回路パターンを作るための前工程と、前工程で作られた回路チップを製品として完成させるための加工工程を含む後工程とを経ることにより製造される。
【0075】
前工程は、露光装置100を使用して感光剤が塗布されたウエハを露光する露光工程と、当該露光工程によって露光された感光剤を現像する現像工程とを含む。
そして、現像された感光剤のパターンをマスクとしてエッチング工程やイオン注入工程等を行うことで、ウエハ上に回路パターンが形成される。
【0076】
これらの露光、現像及びエッチング等の工程を繰り返して、ウエハ上に複数の層からなる回路パターンが形成される。
後工程では、回路パターンが形成されたウエハ上に対してダイシングを行い、チップのマウンティング、ボンディング及び検査工程が行われる。
【0077】
表示デバイスは、透明電極を形成する工程を経ることにより製造される。
透明電極を形成する工程は、透明導電膜が蒸着されたガラスウエハ上に感光剤を塗布する工程と、露光装置100を使用して当該感光剤が塗布されたガラスウエハを露光する工程と、当該露光された感光剤を現像する工程とを含む。
【0078】
本実施形態に係る物品の製造方法によれば、従来よりも高品位且つ高生産性の物品を製造することができる。
【0079】
本実施形態の開示は、以下の構成及び方法を含む。
(構成1)原版のパターンの像を基板に投影し、基板を露光する露光装置に設けられている部材の物理量のログから抽出された基板上の複数の計測点それぞれの露光期間である計測点露光期間における部材の物理量のログを機械学習によって取得される学習モデルに入力することで露光装置の露光性能の評価値を取得する取得工程を行うことを特徴とする情報処理装置。
(構成2)部材は、原版を保持しながら移動可能な原版ステージと、基板を保持しながら移動可能な基板ステージと、原版ステージ及び基板ステージが載置されるマウントとのうちの少なくとも一つを含み、物理量は、位置、速度及び加速度それぞれの設定値及び計測値のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする構成1に記載の情報処理装置。
(構成3)露光装置の露光性能の評価値は、露光装置によって基板上に形成されるパターンのオーバーレイ値と、露光装置によって基板上に形成されるパターンの線幅の大きさと、露光装置の限界寸法と、露光装置のフォーカスとのうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする構成1または2に記載の情報処理装置。
(構成4)取得工程は、部材の物理量のログから基板上の複数の計測点それぞれの計測点露光期間における部材の物理量のログを抽出する第1の抽出工程を含むことを特徴とする構成1乃至3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
(構成5)第1の抽出工程は、部材の物理量のログから基板を露光する基板露光期間における部材の物理量のログを抽出する第2の抽出工程と、抽出された基板露光期間における部材の物理量のログから基板上の複数の計測点それぞれの計測点露光期間における部材の物理量のログを抽出する第3の抽出工程とを含むことを特徴とする構成4に記載の情報処理装置。
(構成6)第1の抽出工程は、基板上の複数の計測点それぞれの計測点露光期間を算出する第1の算出工程を含むことを特徴とする構成4または5に記載の情報処理装置。
(構成7)露光装置は、露光光が通過する開口を有するスリットを含み、原版に露光光を照射する照明光学系と、原版を通過した露光光を基板に導光する投影光学系と、基板を保持しながら基板の各露光ショットを露光する際に投影光学系の光軸に垂直な走査方向に移動する基板ステージとを備えており、第1の算出工程は、基板ステージの走査方向における移動において、投影光学系の光軸に垂直な第1の平面内に投影した際に基板の所定の露光ショットにおける所定の計測点が開口を通過し始める第1の時刻と開口を通過し終わる第2の時刻とを算出する第2の算出工程と、算出された第1の時刻及び第2の時刻から所定の計測点の計測点露光期間を算出する第3の算出工程とを含むことを特徴とする構成6に記載の情報処理装置。
(構成8)所定の計測点の走査方向における座標をY、所定の露光ショットを露光し始める第3の時刻をT、第3の時刻における基板ステージの走査方向における速度及び加速度をv及びa、開口の走査方向における幅をr、第1の時刻をT、第2の時刻をTとしたとき、第2の算出工程において
【数3】
【数4】
なる関係から第1の時刻及び第2の時刻を算出することを特徴とする構成7に記載の情報処理装置。
(構成9)開口は、第1の平面内において矩形形状を有していることを特徴とする構成7または8に記載の情報処理装置。
(構成10)部材の物理量のログから抽出された基板上の複数の計測点それぞれの計測点露光期間における部材の物理量のログを取得することで入力データを作成する第1の作成工程と、基板上の露光された複数の計測点それぞれに対応する露光装置の露光性能の評価値を取得することで教師データを作成する第2の作成工程と、作成された入力データ及び教師データから学習モデルを作成する第3の作成工程とを行うことを特徴とする構成1乃至9のいずれか一項に記載の情報処理装置。
(構成11)部材は、原版を保持しながら移動可能な原版ステージと、基板を保持しながら移動可能な基板ステージと、原版ステージ及び基板ステージが載置されるマウントとのうちの少なくとも一つを含み、物理量は、位置、速度及び加速度それぞれの設定値及び計測値のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする構成10に記載の情報処理装置。
(構成12)露光装置の露光性能の評価値は、露光装置によって基板上に形成されるパターンのオーバーレイ値と、露光装置によって基板上に形成されるパターンの線幅の大きさと、露光装置の限界寸法と、露光装置のフォーカスとのうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする構成10または11に記載の情報処理装置。
(構成13)第1の作成工程は、部材の物理量のログから基板上の複数の計測点それぞれの計測点露光期間における部材の物理量のログを抽出する第1の抽出工程を含むことを特徴とする構成10乃至12のいずれか一項に記載の情報処理装置。
(構成14)第1の抽出工程は、部材の物理量のログから基板を露光した基板露光期間における部材の物理量のログを抽出する第2の抽出工程と、抽出された基板露光期間における部材の物理量のログから基板上の複数の計測点それぞれの計測点露光期間における部材の物理量のログを抽出する第3の抽出工程とを含むことを特徴とする構成13に記載の情報処理装置。
(構成15)第2の抽出工程は、露光された基板の基板情報を取得する工程と、取得された基板情報から基板を露光し始めた第4の時刻及び基板を露光し終わった第5の時刻を取得する工程と、取得された第4の時刻及び第5の時刻から基板露光期間を決定する工程とを含むことを特徴とする構成14に記載の情報処理装置。
(構成16)第1の抽出工程は、基板上の複数の計測点それぞれの計測点露光期間を算出する第1の算出工程を含むことを特徴とする構成13乃至15のいずれか一項に記載の情報処理装置。
(構成17)露光装置は、露光光が通過する開口を有するスリットを含み、原版に露光光を照射する照明光学系と、原版を通過した露光光を基板に導光する投影光学系と、基板を保持しながら基板の各露光ショットを露光する際に投影光学系の光軸に垂直な走査方向に移動する基板ステージとを備えており、第1の算出工程は、基板ステージの走査方向における移動において、投影光学系の光軸に垂直な第1の平面内に投影した際に基板の所定の露光ショットにおける所定の計測点が開口を通過し始める第1の時刻と開口を通過し終わる第2の時刻とを算出する第2の算出工程と、算出された第1の時刻及び第2の時刻から所定の計測点の計測点露光期間を算出する第3の算出工程とを含むことを特徴とする構成16に記載の情報処理装置。
(構成18)所定の計測点の走査方向における座標をY、所定の露光ショットを露光し始めた第3の時刻をT、第3の時刻における基板ステージの走査方向における速度及び加速度をv及びa、開口の走査方向における幅をr、第1の時刻をT、第2の時刻をTとしたとき、第2の算出工程において
【数5】
【数6】
なる関係から第1の時刻及び第2の時刻を算出することを特徴とする構成17に記載の情報処理装置。
(構成19)開口は、第1の平面内において矩形形状を有していることを特徴とする構成17または18に記載の情報処理装置。
(構成20)第2の作成工程は、基板上の露光された複数の計測点それぞれに対応する露光装置の露光性能の評価値を計測する工程を含むことを特徴とする構成10乃至19のいずれか一項に記載の情報処理装置。
(構成21)第3の作成工程は、基板上の複数の計測点それぞれの計測点露光期間のログと、基板上の露光された複数の計測点それぞれに対応する露光装置の露光性能の評価値とを互いに対応付ける工程を含むことを特徴とする構成10乃至20のいずれか一項に記載の情報処理装置。
(構成22)原版のパターンの像を基板に投影し、基板を露光する露光装置であって、構成1乃至21のいずれか一項に記載の情報処理装置を備えることを特徴とする露光装置。
(方法1)構成22に記載の露光装置を用いて基板を露光する工程と、露光された基板を現像する工程と、現像された基板から物品を製造する工程とを含むことを特徴とする物品の製造方法。
(方法2)原版のパターンの像を基板に投影し、基板を露光する露光装置に設けられている部材の物理量のログから抽出された基板上の複数の計測点それぞれの露光期間である計測点露光期間における部材の物理量のログを機械学習によって取得される学習モデルに入力することで露光装置の露光性能の評価値を取得する取得工程を含むことを特徴とする情報処理方法。
(構成23)コンピュータによって、原版のパターンの像を基板に投影し、基板を露光する露光装置の露光性能の評価値を取得するプログラムであって、露光装置に設けられている部材の物理量のログから抽出された基板上の複数の計測点それぞれの露光期間である計測点露光期間における部材の物理量のログを機械学習によって取得される学習モデルに入力することで露光装置の露光性能の評価値を取得する取得工程をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0080】
100 露光装置
101 制御部(情報処理装置)
104 マスク(原版)
105 プレート(基板)
107 プレートステージ(部材)
108 マスクステージ(部材)
112 マウント(部材)
208 操作端末(情報処理装置)
216 検査装置(情報処理装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6