(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171453
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/06 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G01B11/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088464
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】野中 雄之
(72)【発明者】
【氏名】井川 貴雄
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA30
2F065BB28
2F065CC11
2F065GG06
2F065GG07
2F065HH03
2F065QQ31
2F065RR06
2F065SS13
(57)【要約】
【課題】車両にキャリパブレーキ及び車輪が取り付けられた状態のままでブレーキパッドの厚さを測定できるようにすること。
【解決手段】測定装置は、板状をなす立体である本体32と、測定者100に把持される把持部70Aと、本体32と把持部70Aとを接続する接続部70Bとを備えている。本体32は、本体32よりも板厚方向Y1に位置する物体を含む画像を撮像する撮像部41を有している。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられている状態のキャリパブレーキが備えるブレーキパッドの画像に基づいて、当該ブレーキパッドの厚さを測定する測定装置であって、
板状をなす立体である本体と、
測定者に把持される把持部と、
前記本体と前記把持部とを接続する接続部と、を備え、
前記本体は、当該本体よりも板厚方向に位置する物体を含む画像を撮像する撮像部を有している、測定装置。
【請求項2】
前記接続部は、屈曲可能であるとともに、屈曲した状態を維持可能に構成されている、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記本体は、当該本体よりも前記板厚方向を照明する照明部を有し、
前記撮像部は、前記キャリパブレーキの点検口を介して前記ブレーキパッドが前記照明部によって照明されている状態で当該ブレーキパッドを撮像できる位置に配置されている、請求項1又は請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記本体は、当該本体よりも前記板厚方向に位置する物体に光を照射することによって当該物体に光の像であるマーカーを表示させる光マーカー表示部を有し、
前記撮像部は、前記キャリパブレーキの点検口を介して前記ブレーキパッド及び当該ブレーキパッドに隣接する周辺物の少なくとも一方に前記マーカーが前記光マーカー表示部によって表示された状態で、前記マーカーと前記ブレーキパッドとを含む画像を撮像できる位置に配置されており、
前記照明部は、当該照明部から前記撮像部までの直線距離が、前記撮像部から前記光マーカー表示部までの直線距離よりも長くなる位置に配置されている、請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記本体のうち、前記板厚方向と直交する所定方向における第1端部に前記接続部が接続されており、
前記撮像部及び前記照明部は、前記本体のうちの前記所定方向における第2端部と前記照明部との間に前記撮像部が位置するようにそれぞれ配置されている、請求項3に記載の測定装置。
【請求項6】
前記本体は、当該本体よりも前記板厚方向に位置する物体に光を照射することによって当該物体に光りの像であるマーカーを表示させる光マーカー表示部を有し、
前記撮像部は、前記キャリパブレーキの点検口を介して前記ブレーキパッド及び当該ブレーキパッドに隣接する周辺物の少なくとも一方に前記マーカーが前記光マーカー表示部によって表示された状態で、前記マーカーと前記ブレーキパッドとを含む画像を撮像できる位置に配置されている、請求項1又は請求項2に記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のキャリパブレーキが備えるブレーキパッドの厚さを測定する測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エレベータ用の電磁ブレーキが備えるブレーキライニングの厚さを測定する測定装置が開示されている。具体的には、当該測定装置は、撮像部によって撮像されたブレーキライニングを含む画像に基づいて、ブレーキライニングの厚さを測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記測定装置は、エレベータ用のブレーキライニングを測定対象とした装置であって、車両用のキャリパブレーキが備えるブレーキパッドを測定対象とする装置ではない。そのため、上記測定装置では、車両にキャリパブレーキ及び車輪が取り付けられた状態のままで当該キャリパブレーキのブレーキパッドを撮像部によって撮像することが困難である。本発明の課題は、車両のキャリパブレーキが備えるブレーキパッドの厚さの測定に適した測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための測定装置は、車両に取り付けられている状態のキャリパブレーキが備えるブレーキパッドの画像に基づいて、当該ブレーキパッドの厚さを測定する装置である。当該測定装置は、板状をなす立体である本体と、測定者に把持される把持部と、前記本体と前記把持部とを接続する接続部と、を備えている。前記本体は、当該本体よりも板厚方向に位置する物体を含む画像を撮像する撮像部を有している。
【発明の効果】
【0006】
上記構成によれば、車両にキャリパブレーキ及び車輪が取り付けられた状態のままでブレーキパッドの厚さを測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、車両の車体に取り付けられた状態の車輪の断面とキャリパブレーキの側面とを示す模式図である。
【
図2】
図2は、キャリパブレーキの一部分を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態の測定装置の概略構成を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3の測定装置が備える撮像モジュールを示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図4の撮像モジュールが備えるレーザ装置の構成を示す模式図である。
【
図6】
図6は、
図3の撮像モジュールの機能と表示モジュールの機能とを示すブロック図である。
【
図7】
図7は、
図3の測定装置が備える接続部を測定者が把持している様子を示す側面図である。
【
図9】
図9は、
図6の表示モジュールの実行部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、
図6の表示モジュールの表示部に撮像画像が表示されている状態の表示モジュールの平面図である。
【
図11】
図11は、
図6の表示モジュールの表示部に撮像画像及び測定結果が表示されている状態の表示モジュールの平面図である。
【
図12】
図12は、
図3の測定装置が備える計算装置の実行部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、
図3の測定装置を用いてブレーキパッドの厚さを測定する測定方法を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、
図6の撮像モジュールと表示モジュールとを用いて測定者が作業を行っている様子を示す模式図である。
【
図15】
図15は、タイヤホイールとキャリパブレーキとの間の隙間に
図4の撮像モジュールが差し込まれた様子を示す作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態を
図1から
図15に従って説明する。
<車輪>
図1には、車両の車軸12に取り付けられた車輪13の一部分の断面が模式的に図示されている。車輪13は、車軸12に支持されているタイヤホイール14とタイヤ15とを備えている。タイヤホイール14は、車軸12にボルト締結されているディスク部141と、ディスク部141の周縁から車幅方向内側Xa1に延伸するリム部142とを有している。タイヤ15は、リム部142の外周面を覆うようにタイヤホイール14に装着されている。
【0009】
<キャリパブレーキ>
図1には、車両の車体11(
図14参照)に取り付けられた状態のキャリパブレーキ20が模式的に図示されている。
図2は、
図1に示した白抜きの矢印A1で示す方向からキャリパブレーキ20を見た場合のキャリパブレーキ20の一部を模式的に示す平面図である。
【0010】
図1に示すように、キャリパブレーキ20は、キャリパ21と、2つのブレーキパッド22と、車軸12と一体に回転するディスクロータ26とを備えている。キャリパブレーキ20は、タイヤホイール14のリム部142とキャリパ21との間には隙間SPが介在するように車体11に取り付けられている。
図2に示すように、ブレーキパッド22は、裏板23と、裏板23に支持されている摩擦材24とを含んでいる。2つのブレーキパッド22の間にディスクロータ26が介在している。2つの摩擦材24でディスクロータ26を挟み込むことにより、車輪13に制動力が付与される。
【0011】
図2に示すように、キャリパ21には点検口21aが設けられている。上記隙間SPから点検口21aを介してキャリパ21内を覗き込んだ場合、
図2に示すようにブレーキパッド22の摩擦材24及び裏板23と、ディスクロータ26とを視認できる。
【0012】
<測定装置>
図3は測定装置30の概略を示す構成図である。測定装置30は、車体11に取り付けられているキャリパブレーキ20のブレーキパッド22の厚さを、車軸12に車輪13及びキャリパブレーキ20が取り付けられた状態のままでも計測できるように構成された装置である。
【0013】
測定装置30は、撮像モジュール31と表示モジュール60と接続部70と計算装置80とを備えている。
<撮像モジュール>
撮像モジュール31の構成について説明する。
図4は、撮像モジュール31の平面図である。
【0014】
図3及び
図4に示すように、撮像モジュール31は、板状をなす立体の本体32を備えている。本体32の板厚方向Y1における寸法は、
図1に示したタイヤホイール14のリム部142とキャリパ21との間の間隔の寸法よりも十分に小さい。すなわち、本体32は、タイヤホイール14とキャリパ21との間の隙間SPに差し込むことができるように構成されている。本実施形態では本体32は直方体状をなしている。しかし、本体32は、上記隙間SPに差し込むことができるのであれば、直方体状をなしていなくてもよい。
【0015】
本体32は、本体ケース33と撮像部41と照明部45とレーザ装置50とを備えている。撮像部41と照明部45とレーザ装置50とが、本体ケース33に収容されている。本実施形態において、本体ケース33は直方体状をなしている。
【0016】
ここで、板厚方向Y1と直交する2つの方向Y2、Y3のうち、第1方向Y2における本体32の長さは第2方向Y3における本体32の長さよりも長い。本体32の第1方向Y2における一方側Y2aの端部(
図4における右端部)を「本体32の第1端部321」というとともに、本体32の第1方向Y2における他方側Y2bの端部(
図4における左端部)を「本体32の第2端部322」という。本実施形態では、第1方向Y2が「所定方向」に対応している。
【0017】
本体ケース33は、板厚方向Y1と直交する2つの主面331、332を有している。2つの主面331、332のうち、第1主面331には、本体ケース33の内部と外部とを連通させる開口33aが形成されている。具体的には、第1主面331のうち、第1方向Y2における中央と第2端部322との間の位置に、開口33aが形成されている。
【0018】
図4を参照し、撮像部41及び照明部45について説明する。
撮像部41は、本体32よりも板厚方向Y1に位置する物体を撮像する。照明部45の一例はLEDである。照明部45は本体32よりも板厚方向Y1を照明する。具体的には、照明部45は、撮像部41によって撮像される領域を照明する。言い換えると、撮像部41は、本体32よりも板厚方向Y1に位置する物体のうち、照明部45によって照明されている領域を撮像できる。
【0019】
図4に示すように、撮像部41及び照明部45は、開口33aを介して本体ケース33の外部から露出する位置にそれぞれ配置されている。具体的には、撮像部41及び照明部45は、第2方向Y3における中央よりも一方側Y3aにそれぞれ配置されている。さらに、撮像部41は、第1方向Y2において、照明部45と第2端部322との間に配置されている。本実施形態では、撮像部41の先端は開口33aを介して本体ケース33の外に突出している。しかし、撮像部41は本体32よりも板厚方向Y1に位置する物体を撮像できるのであれば、撮像部41の先端が本体ケース33の外に突出していなくてもよい。
【0020】
図4及び
図5を参照し、レーザ装置50について説明する。
図5は、
図4に一点鎖線で示す切断線F1でレーザ装置50を切断した場合におけるレーザ装置50の断面構造を模式的に図示している。切断線F1は第1方向Y2に延びる仮想直線である。
【0021】
レーザ装置50は、撮像部41及び照明部45よりも第2方向Y3における他方側Y3bに配置されている。
図5に示すように、レーザ装置50は、発光部51とプリズム53と集光レンズ55とを備えている。発光部51の一例はレーザダイオードである。発光部51は、プリズム53及び集光レンズ55よりも第1方向Y2における一方側Y2aに配置されている。
図5では、発光部51から出力されたレーザ光の光軸LGが一点鎖線の矢印で示されている。発光部51は、レーザ光を第1方向Y2における他方側Y2bに出力する。
【0022】
プリズム53は、発光部51から出力されたレーザ光を反射することによって、レーザ光の光軸LGの向きを変更する。具体的には、プリズム53は、光軸LGを第1方向Y2から板厚方向Y1に変更する。
【0023】
集光レンズ55は、プリズム53よりも板厚方向Y1に配置されている。具体的には、集光レンズ55は、プリズム53によって変更されたレーザ光の光軸LG上に配置されている。そして、集光レンズ55は板厚方向Y1にレーザ光を出力できる。集光レンズ55から出力されるレーザ光は平行光である。
【0024】
レーザ装置50は、本体32よりも板厚方向Y1に位置する物体にレーザ光を照射することによって当該物体に光の像であるマーカーを表示させることができる。具体的には、レーザ装置50の集光レンズ55は、
図4に示すように、開口33aを介して本体ケース33の外部から露出する位置に配置されている。そのため、レーザ装置50は、本体32から板厚方向Y1にレーザ光を出力できる。すなわち、集光レンズ55は、レーザ装置50におけるレーザ光(光)の出力部である。集光レンズ55から出力されたレーザ光が、本体32よりも板厚方向Y1に位置する物体にレーザ光を照射する。この点で、レーザ装置50が「光マーカー表示部」に対応している。
【0025】
集光レンズ55は、照明部45よりも第1方向Y2における他方側Y2bに配置されている。詳しくは、集光レンズ55は、板厚方向Y1に直交する仮想平面上において、集光レンズ55から撮像部41までの直線距離が集光レンズ55から照明部45までの直線距離よりも短くなるように配置されている。
【0026】
<表示モジュール>
図3及び
図6を参照し、表示モジュール60の構成について説明する。
図6は、撮像モジュール31及び表示モジュール60の機能構成を示すブロック図である。
【0027】
図3に示すように、表示モジュール60は、測定者100(
図7参照)が手で持つことのできるサイズの情報機器である。表示モジュール60は、撮像モジュール31と通信が可能であるとともに、計算装置80と通信が可能に構成されている。表示モジュール60の一例はスマートフォンである。
【0028】
図3及び
図6に示すように、表示モジュール60は、ユーザインターフェース61と処理回路65と通信部69とを備えている。ユーザインターフェース61は、表示画面で構成される表示部62と、作業者が操作する操作部63とを有している。操作部63は、物理ボタンと、表示部62に表示されるボタンとのうち少なくとも一方を含む。表示部62には、例えば、撮像モジュール31の撮像部41が撮像した画像である撮像画像や、撮像部41により撮像された撮像画像に基づいて測定されたブレーキパッド22の厚さDPが表示される。ここでいうブレーキパッド22の厚さDPは、「ブレーキパッド22の摩擦材24の厚さ」である。表示部62には、ブレーキパッド22の交換の必要性(例えば、「安全」、「交換推奨」及び「危険」の何れか一つ)を表示するようにしてもよい。
【0029】
処理回路65の一例は電子制御装置である。この場合、処理回路65は、実行部66と記憶部67とを有している。実行部66の一例はCPUである。記憶部67には、実行部66によって実行される制御プログラムが記憶されている。実行部66は、当該制御プログラムを実行することにより、撮像モジュール31に各種の指令を送信したり、ブレーキパッド22の厚さDPを計算する要求を計算装置80に送信したりする。なお、実行部66が実行する一連の処理については後述する。
【0030】
通信部69は、計算装置80と各種の情報の送受信を行うための表示モジュール60のインターフェースである。通信部69は、処理回路65が出力した情報を通信ネットワーク90を介して計算装置80に送信する。また、通信部69は、計算装置80が送信した情報を通信ネットワーク90を介して受信すると、当該情報を処理回路65に出力する。
【0031】
<接続部>
図3、
図7及び
図8を参照し、接続部70の構成について説明する。
図7は、測定者100が接続部70を把持している様子を示す模式図である。測定者100は、ブレーキパッド22の厚さを測定する際に、本体32を把持してもよいし、表示部62を把持してもよい。
図8は、
図7の8-8線で接続部70を切断した場合の接続部70の横断面を示す模式図である。
【0032】
図3に示すように、接続部70は、表示モジュール60と撮像モジュール31とを物理的及び電気的に接続する。例えば、接続部70はケーブルである。接続部70の第1端部には、撮像モジュール31の装着端子と着脱可能な接続端子が設けられていてもよい。接続部70の第2端部には、表示モジュール60に設けられている装着端子と着脱可能な接続端子が設けられていてもよい。
【0033】
図8に示すように、接続部70は、通信ケーブル71と被覆部73とを備えている。通信ケーブル71の一例はUSBケーブルである。この場合、通信ケーブル71は、電力供給ラインとデータ電送ラインとを含んでいる。電力供給ラインは、表示モジュール60のバッテリ(図示略)から撮像モジュール31の撮像部41、照明部45及びレーザ装置50に電力を供給する。データ電送ラインは、撮像部41により撮像された画像のデータを表示モジュール60に電送する。
【0034】
被覆部73は通信ケーブル71を外側から被覆している。被覆部73は、中空の管状で、その中に通信ケーブル71が収容されるものでもよい。また被覆部73は、帯状で、通信ケーブル71の外側に巻かれているものでもよい。つまり、被覆部73の内部に、上述した各種のラインが挿通されている。
【0035】
被覆部73は、屈曲可能であるとともに、屈曲した状態を維持可能に構成されている。つまり、被覆部73に外部から力が加えられると、被覆部73に入力された力の向き及び大きさに応じて被覆部73が変形する。その一方で、被覆部73に外部から力が加えられていない場合においては、被覆部73の形状が保持される。
【0036】
詳しくは後述するが、測定者100は、タイヤホイール14のリム部142とキャリパブレーキ20との間の隙間SPに撮像モジュール31を差し込んだ状態で、撮像部41に撮像画像を撮像させる。この際、
図7に示すように、測定者100は、自身の手で接続部70の一部分を把持して撮像モジュール31を上記隙間SPに差し込んだ上で、撮像モジュール31の位置を調整する。
【0037】
この場合において、接続部70のうち、測定者100に把持される部分が「把持部70A」に対応する。また、接続部70のうち、把持部70Aと撮像モジュール31との間に位置する部分が、本体32と把持部70Aとを接続する「接続部70B」に対応する。このように、接続部70のうち把持部70Aとして機能する部分、及び、接続部70のうち接続部70Bとして機能する部分は、その時々によって変わりうる。この場合、接続部70の一部が把持部として機能するが、接続部70に接続される表示モジュール60が把持部として機能してもよい。
【0038】
<計算装置>
図3を参照し、計算装置80について説明する。
計算装置80は、表示モジュール60から受信した撮像画像、すなわちブレーキパッド22が写っている撮像画像に基づいて、ブレーキパッド22の厚さDPを計算する。計算装置80は、撮像画像に基づいてブレーキパッド22の厚さDPを推定する推定装置であるともいえる。計算装置80は、処理回路81と学習器85と通信部87とを備えている。
【0039】
処理回路81の一例は電子制御装置である。この場合、処理回路81は、実行部82と記憶部83とを有している。実行部82の一例はCPUである。記憶部83には、実行部82によって実行される制御プログラムが記憶されている。実行部82は、当該制御プログラムを実行することにより、ブレーキパッドの厚さDPを計算するための一連の処理を実行する。なお、実行部82が実行する一連の処理については後述する。
【0040】
学習器85は、ブレーキパッド22の厚さDPを推定する機械学習を行った学習済モデルLMにより構築されている。学習済モデルLMは、撮像画像が入力されると、当該画像に応じた指標Zを出力する。この指標Zは、ブレーキパッド22の厚さと相関する値である。学習済モデルLMは、例えば、順伝搬型のニューラルネットワークである。学習済モデルLMの学習方法については後述する。
【0041】
処理回路81の実行部82は、学習器85の学習済モデルLMに撮像画像を入力した際に学習済モデルLMから出力された指標Zに基づいて、ブレーキパッドの厚さDPを算出する。
【0042】
通信部87は、表示モジュール60と通信するための計算装置80のインターフェースである。通信部87は、表示モジュール60から撮像画像のデータを受信すると、当該撮像画像のデータを処理回路81に出力する。通信部87は、実行部82の計算結果に関する情報を処理回路81から受信すると、当該情報を表示モジュール60に送信する。
【0043】
<学習済モデルの学習方法>
学習済モデルLMの学習方法について簡単に説明する。ここでは、学習モデルがニューラルネットワークである場合について説明するが、学習モデルはニューラルネットワークに限定されるものではない。
【0044】
学習済モデルLMを生成する学習システムは、撮像モジュール31の撮像部41によって撮像された撮像画像であるサンプリング画像と、サンプリング画像に写っているブレーキパッド22の厚さDPの実値とを含む複数の学習データを取得する。そして、学習システムでは、学習データを構成するサンプリング画像を学習モデルに入力することにより、当該学習モデルから出力された指標Z1が取得される。指標Z1に基づいて、ブレーキパッド22の厚さの推定値である厚さ推定値DP1が導出される。そして、厚さ推定値DP1が学習データにおける厚さの実値(正解値)に近づくように学習モデルのパラメータが更新される。こうした一連の処理が繰り返されることにより、学習済モデルLMが生成できる。
【0045】
<表示モジュールで実行される一連の処理>
図9から
図11を参照し、ブレーキパッド22の厚さDPを測定する際に表示モジュール60の実行部66が実行する一連の処理を説明する。
図9は当該一連の処理を示すフローチャートである。
図10及び
図11の各々には、当該一連の処理を実行部66が実行している際の表示部62の表示画面の一例が模式的に図示されている。以降、
図9に示す一連の処理を「測定用処理」という。測定用処理に対応する制御プログラムは、接続部70を介して表示モジュール60と撮像モジュール31とが電気的に接続されたことを契機に、実行部66により実行される。なお、測定用処理に対応する制御プログラムを「測定補助プログラム」という。
【0046】
ステップS11において、実行部66は、撮像モジュール31の撮像部41及び照明部45をオンとする。具体的には、実行部66は、撮像部41による撮像と照明部45による照明との開始を撮像モジュール31に指示する。
【0047】
次のステップS13において、実行部66は、撮像部41により撮像された撮像画像IMGの受信及び表示を開始する。具体的には、実行部66は、撮像画像IMGのデータを通信ケーブル71を介して撮像モジュール31から受信する。実行部66は、受信したデータが示す撮像画像IMGをユーザインターフェース61の表示部62に表示させる(
図10参照)。本実施形態では、ステップS13の処理を、撮像部41が撮像した撮像画像IMGを表示部62に表示させる「画像表示処理」ともいう。
【0048】
図10には、表示部62に撮像画像IMGが表示された様子が図示されている。
図10に示すように、撮像画像IMGが表示部62に表示されている場合、実行部66は、操作部63として、「レーザON」と表記したボタン63aを表示部62に表示させる。以降、当該ボタン63aを「マーカー表示ボタン63a」という。
【0049】
図9に戻り、実行部66は、表示部62への撮像画像IMGの表示を開始させると、処理をステップS15に移行する。ステップS15において、実行部66は、マーカー表示の要求があるか否かを判定する。マーカー表示とは、撮像部41の撮像領域にマーカーMKを表示させることである。上述したようにレーザ装置50からレーザ光を出力させることにより、撮像部41の撮像領域にマーカーMKを表示させることができる。したがって、実行部66は、表示部62に表示されているマーカー表示ボタン63aが測定者によって操作されている場合、マーカー表示の要求があると判定できる。一方、実行部66は、マーカー表示ボタン63aが測定者によって操作されていない場合、マーカー表示の要求がないと判定できる。実行部66は、マーカー表示の要求があると判定した場合(S15:YES)、処理をステップS17に移行する。一方、実行部66は、マーカー表示の要求がないと判定した場合(S15:NO)、処理をステップS19に移行する。
【0050】
ステップS17において、実行部66は、レーザ装置50からレーザ光を発光させることにより、撮像部41の撮像領域にマーカーMKを表示させる。そして、実行部66は処理をステップS21に移行する。
【0051】
ステップS19において、実行部66は、レーザ装置50からのレーザ光の発光を停止させることにより、撮像部41の撮像領域からマーカーMKを消す。そして、実行部66は処理をステップS15に移行する。すなわち、実行部66は、測定者100がマーカー表示ボタン63aを操作している場合に限り、撮像部41の撮像領域にマーカーMKを表示させる。
【0052】
ステップS21において、実行部66は、撮像部41の撮像領域にマーカーMKが表示されている状態の継続時間が所定時間TMに達したか否かを判定する。例えば、所定時間TMは数秒である。実行部66は、当該継続時間が所定時間TMに達した場合(S21:YES)、処理をステップS23に移行する。一方、実行部66は、当該継続時間が所定時間TMに達していない場合(S21:NO)、処理をステップS15に移行する。
【0053】
ステップS23において、実行部66は、撮像画像IMGのデータと、ブレーキパッド22の厚さDPの計算の要求とを、通信部69から計算装置80に送信させる。本実施形態では、ステップS23の処理を、撮像画像IMGが表示部62に表示されている状態で、測定者100により操作部63(マーカー表示ボタン63a)が操作された場合に、撮像画像IMGに基づいてブレーキパッド22の厚さDPを計算することを計算装置80に要求する「要求処理」ともいう。
【0054】
そしてステップS25において、実行部66は、計算結果に関する情報を計算装置80から受信したか否かを判定する。実行部66は、計算結果に関する情報を受信していない場合(S25:NO)、当該情報を受信するまでステップS25の判定を繰り返し実行する。一方、実行部66は、計算結果に関する情報を受信した場合(S25:YES)、処理をステップS27に移行する。
【0055】
ステップS27において、実行部66は、計算装置80に送信したデータの撮像画像IMGでブレーキパッド22の厚さDPを計算できたか否かを判定する。詳しくは後述するが、計算装置80が厚さDPを計測できた場合、実行部66は厚さDPに関する情報を受信する。一方、計算装置80が厚さDPを計算できなかった場合、実行部66は、厚さDPを計算できなかった旨の情報を受信する。実行部66は、計算装置80に送信したデータの撮像画像IMGに基づくことによってブレーキパッド22の厚さDPを計算できた場合(S27:YES)、処理をステップS29に移行する。一方、実行部66は、計算装置80に送信したデータの撮像画像IMGでは厚さDPを計算できなかった場合(S27:NO)、処理をステップS15に移行する。
【0056】
ステップS29において、実行部66は、計算装置80によって計算されたブレーキパッド22の厚さDPをユーザインターフェース61の表示部62に表示させる(
図11参照)。本実施形態では、ステップS29の処理を、計算装置80により計算されたブレーキパッド22の厚さDPを表示部62に表示させる「厚さ表示処理」という。
【0057】
図11には、表示部62に厚さDPが表示された様子が図示されている。
図11に示すように、厚さDPが表示部62に表示されている場合、実行部66は、撮像画像IMGに加え、撮像画像IMGに加工を加えた加工画像IMGaを表示部62に表示させる。加工画像IMGaには、ブレーキパッド22の摩擦材24と裏板23との境界を示す境界線BRと、摩擦材24とディスクロータ26との境界を示す境界線BRとが写っている。なお、これらの境界線BRは、計算装置80による撮像画像IMGの解析によって推測された境界である。
【0058】
図9に戻り、実行部66は、ブレーキパッド22の厚さDPを測定者100に報知すると、処理をステップS31に移行する。ステップS31において、実行部66は、レーザ装置50からのレーザ光の発光を停止させることにより、撮像部41の撮像領域からマーカーMKを消す。その後、実行部66は測定用処理を終了する。
【0059】
<計算処理>
図12を参照し、撮像画像IMGに基づいてブレーキパッド22の厚さDPを計算するために計算装置80の実行部82が実行する一連の処理を説明する。
図12は当該一連の処理を示すフローチャートである。以降、
図12に示す一連の処理を「計算処理」という。計算処理に対応する制御プログラムは、実行部82により所定周期毎に実行される。
【0060】
ステップS51において、実行部82は、表示モジュール60から撮像画像IMGのデータを受信したか否かを判定する。実行部82は、撮像画像IMGのデータを受信した場合(S51:YES)、処理をステップS53に移行する。一方、実行部82は、撮像画像IMGのデータを受信していない場合(S51:NO)、今回の計算処理を終了する。
【0061】
ステップS53において、実行部82は、受信したデータの撮像画像IMGを解析する画像解析処理を実行する。具体的には、実行部82は、撮像画像IMGの中から、ブレーキパッド22の摩擦材24と裏板23との境界、及び、摩擦材24とディスクロータ26との境界を探す。
【0062】
続くステップS55において、実行部82は、ステップS53での処理の結果、摩擦材24の範囲を抽出できたか否かを判定する。実行部82は、上記の2つの境界の何れをも探すことができた場合、摩擦材24の範囲を抽出できたと判定する。一方、実行部82は、上記の2つの境界の少なくとも一方を探し出せなかった場合、摩擦材24の範囲を抽出できなかったと判定する。そして、実行部82は、摩擦材24の範囲を抽出できたと判定した場合(S55:YES)、処理をステップS57に移行する。一方、実行部82は、摩擦材24の範囲を抽出できなかったと判定した場合(S55:NO)、処理をステップS61に移行する。
【0063】
ステップS57において、実行部82は、撮像画像IMGに基づいて、摩擦材24の厚さをブレーキパッド22の厚さDPとして計算する。具体的には、実行部82は、撮像画像IMGを学習済モデルLMに入力した場合に学習済モデルLMから出力された指標Zを取得する。そして実行部82は、指標Zに応じた値をブレーキパッド22の厚さDPとして計算する。
【0064】
続くステップS59において、実行部82は、ステップS57で計算した厚さDPに関する情報を通信部87から表示モジュール60に送信させる。そして、実行部82は今回の計算処理を終了する。
【0065】
ステップS61において、実行部82は、ブレーキパッド22の厚さDPを計算できない旨を通信部87から表示モジュール60に送信させる。そして、実行部82は今回の計算処理を終了する。
【0066】
<測定方法>
図13から
図15を参照し、測定装置30を用いたブレーキパッド22の厚さDPの測定方法について説明する。
図12は、測定方法の処理の流れを示すフローチャートである。
図14は、ディーラーや修理工場などで車両10がリフトアップされた状態を示す模式図である。
図15は、撮像モジュール31が、タイヤホイール14のリム部142とキャリパブレーキ20との間の隙間SPに挿入された状態を示す模式図である。
【0067】
測定装置30を用いた厚さDPの測定は、例えば
図14に示したように車両10が持ち上げられた状態で行われる。
図13に示すように、ステップS101において、タイヤホイール14のリム部142とキャリパブレーキ20との間の隙間SPに、撮像モジュール31が差し込まれる。この際、測定者100は、
図7に示したように接続部70の一部分、すなわち把持部70Aを把持した状態で、撮像モジュール31を上記隙間SPに差し込む。この際、
図15に示すように、撮像モジュール31は第2端部322から上記隙間SPに差し込まれる。この際の撮像モジュール31の向きは、本体32よりも板厚方向Y1にキャリパブレーキ20が位置するような向きである。これにより、撮像部41はキャリパブレーキ20を撮像できる。本実施形態では、ステップS101の処理を、本体32よりも板厚方向Y1にキャリパブレーキ20が位置するように、車軸12に取り付けられているタイヤホイール14とキャリパブレーキ20との間の隙間SPに本体32を差し込む「挿入工程」という。
【0068】
次のステップS103において、測定者100により、撮像モジュール31の位置が調整される。この際、測定者100は、表示モジュール60の表示部62に表示される撮像画像IMGを見ながら撮像モジュール31の位置を調整する。これにより、測定者100は、撮像部41によりキャリパブレーキ20の点検口21aを介してブレーキパッド22を撮像できるようになる。本実施形態では、ステップS103の処理を、撮像部41により点検口21aを介してブレーキパッド22が撮像可能な位置に、撮像モジュール31の本体32の位置を調整する「調整工程」という。
【0069】
続くステップS105において、撮像部41にブレーキパッド22を撮像させる。本実施形態では、ステップS105の処理を、撮像部41によりブレーキパッド22を撮像する「撮像工程」という。ここで撮像された撮像画像IMGのデータは、上述したように表示モジュール60を介して計算装置80に送信される。そして、計算装置80で撮像画像IMGに基づいてブレーキパッド22の厚さDPが計算されると、厚さDPに関する情報が計算装置80から表示モジュール60に送信される。
【0070】
そしてステップS107において、ブレーキパッド22の厚さDPが測定者100に報知される。本実施形態では、ステップS107の処理を、厚さDPを測定者100に報知する「報知処理」という。
【0071】
<本実施形態の作用及び効果>
(1)撮像モジュール31の本体32は板状の立体であるとともに、撮像部41は本体32よりも板厚方向Y1に位置する物体を撮像できる。そのため、タイヤホイール14のリム部142とキャリパブレーキ20との間の隙間SPに本体32が挿入されると、そのままの姿勢で撮像部41はブレーキパッド22を撮像できる。すなわち、測定装置30によれば、車両10から車輪13及びキャリパブレーキ20を取り外すことなく、撮像部41がブレーキパッド22を撮像できる。したがって、車両10から車輪13及びキャリパブレーキ20を取り外すことなく、ブレーキパッド22の写った撮像画像IMGに基づいて、ブレーキパッド22の厚さDPを測定できる。
【0072】
(2)接続部70は、屈曲可能であるとともに、屈曲した状態を維持可能に構成されている。つまり、接続部70の接続部70Bは、屈曲可能であるとともに、屈曲した状態を維持可能に構成されている。これにより、接続部70Bの形状を変えることにより、タイヤホイール14のリム部142とキャリパブレーキ20との間の隙間SP内で本体32の姿勢や位置を調整できる。そのため、タイヤホイール14とキャリパブレーキ20との間の隙間SPに本体32を差し込むことができるのであれば、どのような車種やキャリパブレーキ20であっても、本体32の撮像部41にブレーキパッド22を撮像させることができる。
【0073】
(3)本体32において、撮像部41は、キャリパブレーキ20の点検口21aを介してブレーキパッド22が照明部45によって照明されている状態でブレーキパッド22を撮像できる位置に配置されている。そのため、ブレーキパッド22を照明部45で照明しながら、撮像部41でブレーキパッド22を撮像できる。したがって、ブレーキパッド22を照明する照明装置を撮像モジュール31とは別に用意しなくても、撮像部41は鮮明にブレーキパッド22を撮像できる。
【0074】
(4)本件発明者は、撮像部41と照明部45との位置関係の適正化を図るべく様々な調査を行った。例えば、第2端部322と撮像部41との間に照明部45が位置するように、撮像部41及び照明部45を配置した。この場合、照明部45によりブレーキパッド22を照明しても、撮像部41により撮像された撮像画像IMGには、影が映り込んでしまうことがあった。撮像画像IMGに影が映り込んでいると、撮像画像IMGに基づいてブレーキパッド22の厚さDPを測定した際の精度が低くなりやすい。その一方で、第2端部322と照明部45との間に撮像部41が位置するように撮像部41及び照明部45を配置した場合、照明部45によりブレーキパッド22を照明した際に撮像部41により撮像された撮像画像IMGに影が写り込むことがなくなった。
【0075】
そこで、本実施形態では、本体32のうち、第2端部322と照明部45との間に撮像部41が位置するように、撮像部41及び照明部45が配置されている。このような位置関係にした場合、照明部45によりブレーキパッド22を照明した際に、撮像部41により撮像された撮像画像IMGに影が写り込んでしまうことが抑制できる。したがって、本実施形態では、撮像部41と照明部45とを一体化しても、撮像部41は鮮明にブレーキパッド22を撮像できる。
【0076】
(5)撮像部41は、点検口21aを介してブレーキパッド22及びブレーキパッド22に隣接する周辺物の少なくとも一方にマーカーMKが表示された状態で、マーカーMKとブレーキパッド22とを含む撮像画像IMGを撮像できる位置に配置されている。これにより、計算装置80では、撮像画像IMGにおけるマーカーMKの大きさとブレーキパッド22の大きさとを比較することにより、ブレーキパッド22の厚さDPを測定することができる。
【0077】
(6)例えば、本件発明者は、レーザ装置50の集光レンズ55(光マーカー表示部)の近くに照明部45を配置させた場合、集光レンズ55から出力されたレーザ光と照明部45の光とが干渉してしまい、撮像画像IMGにおいてマーカーMKが視認しにくくなるという知見を得た。
【0078】
そこで、撮像モジュール31において、照明部45は、照明部45から集光レンズ55までの直線距離が、撮像部41から集光レンズ55までの直線距離よりも長くなる位置に配置されている。このように集光レンズ55から照明部45を遠ざけて配置することにより、集光レンズ55から出力されたレーザ光と照明部45の光とが干渉しにくくなったため、撮像画像IMGにおいてマーカーMKが視認しやすくなる。こうした撮像画像IMGを用いてブレーキパッド22の厚さDPを計算することにより、その計算精度を高くできる。
【0079】
(7)本実施形態では、通信ケーブル71(すなわち、電力供給ライン及びデータ電送ライン)は、測定者100が把持する被覆部73の内部を挿通している。つまり、撮像モジュール31に接続される複数の配線が1つにまとめられている。複数の配線がばらばらである場合と比較し、タイヤホイール14のリム部142とキャリパブレーキ20との間の隙間SPに撮像モジュール31を挿入して各種の作業を測定者100が行う際の作業性を向上させることができる。
【0080】
(8)本実施形態では、接続部70を測定者100が把持した状態で撮像モジュール31の位置を調整できる。つまり、撮像モジュール31と表示モジュール60とを繋ぐ通信ケーブル71と、測定者100が把持する把持部とが別々に設けられている場合と比較し、撮像モジュール31の構成の複雑化を抑制できる。
【0081】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0082】
・計算装置は、撮像画像IMGに基づいてブレーキパッド22の厚さDPを計算できるのであれば、学習済モデルLMを用いなくてもよい。撮像画像IMGにはマーカーMKが写っている。マーカーMKの大きさ(直径)は測定装置で予め把握することができる。そこで、計算装置は、撮像画像IMGにおける、マーカーMKの大きさと摩擦材24の大きさとの比較によって、ブレーキパッド22の厚さDPを算出するようにしてもよい。
【0083】
・上記実施形態では、スマートフォンやタブレット端末などの携帯端末に測定補助プログラムをインストールすることにより表示モジュール60を構築していたが、これに限らない。例えば、測定補助プログラムが予めインストールされている専用の端末装置を用意し、当該端末装置を表示モジュール60として機能させるようにしてもよい。
【0084】
・本体32において、照明部45から撮像部41までの直線距離が撮像部41から集光レンズ55までの直線距離よりも長くなるように、撮像部41と照明部45と集光レンズ55とが配置されているのであれば、
図4に示した位置とは異なる位置に配置してもよい。例えば、撮像部41を挟んで集光レンズ55の反対側の位置に照明部45を配置してもよい。
【0085】
・本体32に光マーカー表示部を設けることは必須ではない。
・本体32に照明部45を設けることは必須ではない。
・本体32は、板状の立体であればよく、直方体状でなくてもよい。
【0086】
・表示モジュール60の処理回路65は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェアなどの1つ以上の専用のハードウェア回路又はこれらの組み合わせを含む回路として構成し得る。専用のハードウェアとしては、例えば、特定用途向け集積回路であるASICを挙げることができる。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROMなどのメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわち記憶媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0087】
・測定装置30を用いたブレーキパッド22の厚さDPの測定は、車両10がリフトアップされていない状態でも可能である。この状態では、撮像モジュール31を、タイヤホイール14のディスク部141に設けられている連通孔143(
図15参照)を介して、車両10の外側から内側に挿入し、タイヤホイール14のリム部142とキャリパブレーキ20との間の隙間SPに差し込む。そして、
図13のステップS103からステップS107と同様にして、ブレーキパッド22の厚さDPを測定する。
【0088】
<他の技術的思想>
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
[付記1]
前記撮像部に電力を供給する電力供給ラインが、前記接続部内を挿通していることが好ましい。
【0089】
[付記2]
前記撮像部により撮像された画像のデータを電送するデータ電送ラインが、前記接続部内を挿通していることが好ましい。
【0090】
[付記3]
車両に取り付けられている状態のキャリパブレーキが備えるブレーキパッドの画像に基づいて、当該ブレーキパッドの厚さを測定する測定装置であって、
板状をなす立体である本体と、
前記本体に接続されている接続部と、を備え、
前記本体は、当該本体よりも板厚方向に位置する物体を撮像する撮像部を有し、
前記接続部は、屈曲可能であるとともに、屈曲した状態を維持可能に構成されている、測定装置。
【0091】
[付記4]
車両用のキャリパブレーキが備えるブレーキパッドが写っている画像に基づいて当該ブレーキパッドの厚さを推定する推定装置に提供する前記画像を撮像する撮像モジュールであって、
車両のタイヤホイールと前記キャリパブレーキとの間の隙間に挿入可能であって、板状をなす立体の本体と、
前記本体に設けられ、前記本体よりも当該本体の板厚方向に位置する物体を撮像する撮像部と、
前記本体に設けられ、当該本体よりも前記板厚方向に位置する物体に光を照射することによって当該物体に光の像であるマーカーを表示させる光マーカー表示部と、を備え、
前記撮像部は、前記キャリパブレーキの点検口を介して前記ブレーキパッド及び当該ブレーキパッドに隣接する周辺物の少なくとも一方に前記マーカーが前記光マーカー表示部によって表示された状態で、前記マーカーと前記ブレーキパッドとを含む画像を撮像できる位置に配置されている、撮像モジュール。
【0092】
[付記5]
上記測定装置を利用して、前記ブレーキパッドの厚さを測定する測定方法であって、
前記本体よりも前記板厚方向に前記キャリパブレーキが位置するように、前記車両の車軸に取り付けられているタイヤホイールと前記キャリパブレーキとの間の隙間に前記本体を差し込む挿入工程と、
前記撮像部により前記キャリパブレーキの点検口を介して前記ブレーキパッドが撮像可能な位置に、前記本体の位置を調整する調整工程と、
前記撮像部により前記ブレーキパッドを撮像する撮像工程と、を含む測定方法。
【0093】
[付記6]
上記測定装置の前記撮像部によって撮像された画像のデータを受信する携帯端末の実行部が実行する測定補助プログラムであって、
前記携帯端末は、前記撮像部が撮像した画像を表示可能な表示部と、前記測定者が操作する操作部と、を有するとともに、前記画像に基づいて前記ブレーキパッドの厚さを計算する計算装置と通信可能であり、
前記実行部に、
前記撮像部が撮像した画像を前記表示部に表示させる画像表示処理と、
前記画像が前記表示部に表示されている状態で、前記測定者により前記操作部が操作された場合に、前記画像に基づいて前記ブレーキパッドの厚さを計算することを前記計算装置に要求する要求処理と、
前記計算装置により計算された前記ブレーキパッドの厚さを前記表示部に表示させる厚さ表示処理と、を実行させる測定補助プログラム。
【0094】
なお、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」又は「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」又は「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0095】
10…車両
20…キャリパブレーキ
21…キャリパ
21a…点検口
22…ブレーキパッド
23…裏板
24…摩擦材
26…ディスクロータ
30…測定装置
31…撮像モジュール
32…本体
321…第1端部
322…第2端部
41…撮像部
45…照明部
50…レーザ装置(光マーカー表示部の一例)
55…集光レンズ(出力部)
60…表示モジュール(携帯端末の一例)
61…ユーザインターフェース
62…表示部
63…操作部
63a…マーカー表示ボタン
65…処理回路
66…実行部
67…記憶部
70…接続部
70A…把持部
70B…接続部
71…通信ケーブル
73…被覆部
80…計算装置(推定装置の一例)
100…測定者
SP…隙間