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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171454
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ミシン
(51)【国際特許分類】
   D05B 19/12 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
D05B19/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088465
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100213687
【弁理士】
【氏名又は名称】平松 大輝
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 勝久
(72)【発明者】
【氏名】上田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】長村 崇平
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA03
3B150AA15
3B150CA02
3B150CB04
3B150LA24
3B150LB02
3B150NA30
(57)【要約】
【課題】ユーザによる入力部への操作性が損なわれることを抑制することに貢献するミシンを提供する。
【解決手段】ミシン1は、上下方向に延びる脚柱部4と、脚柱部4の下端部よりも上方の位置から、前方に延びるシリンダベッド部5と、シリンダベッド部5から上方に離れる位置で、脚柱部4から前方に延びるアーム部6と、アーム部6の前端部に位置する板である正面板63に配置され、ミシン1を操作するための入力ボタン30とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる脚柱部と、
前記脚柱部の下方の端部よりも上方の位置から、前記上下方向に直交する第一方向の一方である第一特定方向に延びるベッド部と、
前記ベッド部から上方に離れる位置で、前記脚柱部から前記第一特定方向に延びるアーム部と、
前記アーム部の前記第一特定方向の端部に位置する板である正面板に配置され、ミシンを操作するための入力部と
を備えたことを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記入力部は、少なくとも1つのモータを操作するための第一入力部を含み、
前記第一入力部は、前記正面板において、前記上下方向と前記第一方向とに直交する第二方向の第一中心よりも、前記第二方向の一方である第二特定方向に配置されることを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記入力部は、複数の前記第一入力部を含み、
前記複数の第一入力部の全部は、前記正面板において、前記第二方向の前記第一中心よりも前記第二特定方向に配置されることを特徴とする請求項2に記載のミシン。
【請求項4】
前記入力部は、前記モータの操作とは異なる操作を行うための第二入力部をさらに含み、
前記第二入力部は、前記正面板において、前記第二方向の前記第一中心よりも前記第二特定方向に配置されることを特徴とする請求項2に記載のミシン。
【請求項5】
前記入力部は、複数の前記第二入力部を含み、
前記複数の第二入力部の全部は、前記正面板において、前記第二方向の前記第一中心よりも前記第二特定方向に配置されることを特徴とする請求項4に記載のミシン。
【請求項6】
前記アーム部において前記第二特定方向とは反対方向の端部に位置する板である第一側面板には、第一開口が設けられ、
前記ミシンは、前記第一開口に配置される天秤を備えたことを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載のミシン。
【請求項7】
前記アーム部の前記第二特定方向の端部に位置する板である第二側面板には、第二開口が設けられ、
前記ミシンは、
縫針に設けられた目孔に糸を通す糸通し機構と、
前記第二開口を介して配置されるレバーであって、操作された場合に前記糸通し機構が動作されて、前記糸を前記目孔に通す前記レバーとを備えたことを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載のミシン。
【請求項8】
押え足を備え、
前記レバーは、操作された場合に、前記押え足を所定の位置に昇降させ、前記糸通し機構が動作されて前記糸を前記目孔に通すことを特徴とする請求項7に記載のミシン。
【請求項9】
前記ベッド部の中に配置される水平釜を備え、
前記ベッド部の上方の端部に位置する板である上面板に、前記水平釜にボビンを収容するための第三開口が設けられることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のミシン。
【請求項10】
前記アーム部の下方の端部に位置する板である下面板には、上方に凹む凹部が設けられることを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項11】
前記下面板には、前記下面板において前記上下方向と前記第一方向とに直交する第二方向の第二中心よりも前記第二方向の一方である第二特定方向に位置する第四開口が設けられ、
前記ミシンは、
前記アーム部の中に配置され、前記第一方向に延びる支持部と、
前記支持部によって支持され且つ前記アーム部の中から前記第四開口を介して前記アーム部の外まで延びる延出部と、縫製対象物を保持する刺しゅう枠が装着され且つ前記延出部に接続する装着部とを含み、前記支持部に沿って前記第一方向に移動可能なキャリッジとを備え、
前記凹部は、前記下面板において、前記第二方向の前記第二中心よりも、前記第二特定方向とは反対方向に位置することを特徴とする請求項10に記載のミシン。
【請求項12】
縫製対象物を保持する刺しゅう枠が装着され且つ前記上下方向において前記ベッド部と前記アーム部との間に位置する装着部を含み、前記第一方向に移動可能なキャリッジを備え、
前記装着部は、前記第一特定方向から前記刺しゅう枠が挿入されることで、前記刺しゅう枠が装着されるように構成されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のミシン。
【請求項13】
前記ベッド部から下方に離れた位置に配置される土台部であって、第一端部から第二端部まで前記第一方向のうち前記第一特定方向とは反対方向に開口するU字状に延び、且つ前記第一端部と前記第二端部とが前記脚柱部に接続する前記土台部を備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のミシン。
【請求項14】
上下方向に延びる脚柱部と、
前記上下方向に直交する第一方向の一方である第一特定方向に延びるベッド部と、
前記ベッド部から上方に離れる位置で、前記脚柱部から前記第一特定方向に延びるアーム部と、
ミシンを操作するための入力部と、
縫製対象物を保持する刺しゅう枠が装着され且つ前記上下方向において、前記ベッド部と前記アーム部との間に位置する装着部を含み、前記第一方向に移動可能なキャリッジとを備え、
前記装着部は、前記第一特定方向から前記刺しゅう枠が挿入されることで、前記刺しゅう枠が装着されるように構成され、
前記入力部は、前記アーム部の前記第一特定方向の端部に位置する板である正面板に配置される
ことを特徴とするミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のミシンは、アーム立上部とベッド部とアーム部と入力部とを備える。アーム立上部は上下方向に延びる。ベッド部は、上下方向に直交する方向をX方向とし、アーム立上部からX方向の一方に延びる。アーム部はベッド部よりも上方に離れた位置で、アーム立上部からX方向の一方に延びる。入力部は、上下方向とX方向とに直交する方向をY方向とし、アーム部のY方向の一方の端部に位置する板に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-259719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、ユーザがX方向の一方から扱うようなミシンを考えた場合に、特許文献1のような構成では、入力部がアーム部のY方向の一方の端部に位置する板に配置されるので、ユーザによる入力部への操作性が損なわれる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、ユーザによる入力部への操作性が損なわれることを抑制することに貢献するミシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、例えば以下の態様を開示する。
【0007】
第一態様に係るミシンは、上下方向に延びる脚柱部と、前記脚柱部の下方の端部よりも上方の位置から、前記上下方向に直交する第一方向の一方である第一特定方向に延びるベッド部と、前記ベッド部から上方に離れる位置で、前記脚柱部から前記第一特定方向に延びるアーム部と、前記アーム部の前記第一特定方向の端部に位置する板である正面板に配置され、ミシンを操作するための入力部とを備える。
【0008】
第二態様に係るミシンは、上下方向に延びる脚柱部と、前記上下方向に直交する第一方向の一方である第一特定方向に延びるベッド部と、前記ベッド部から上方に離れる位置で、前記脚柱部から前記第一特定方向に延びるアーム部と、ミシンを操作するための入力部と、縫製対象物を保持する刺しゅう枠が装着され且つ前記上下方向において、前記ベッド部と前記アーム部との間に位置する装着部を含み、前記第一方向に移動可能なキャリッジとを備え、前記装着部は、前記第一特定方向から前記刺しゅう枠が挿入されることで、前記刺しゅう枠が装着されるように構成され、前記入力部は、前記アーム部の前記第一特定方向の端部に位置する板である正面板に配置される。
【0009】
第一態様または第二態様によれば、ミシンは、ユーザによる入力部への操作性が損なわれることを抑制することに貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ミシン1を左前上方から見た斜視図である。
図2】ミシン1を右前上方から見た斜視図である。
図3】ミシン1を左前下方から見た斜視図である。
図4】蓋523が外されたミシン1を前上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用し得る技術的特徴を説明するために用いられるものである。図面に記載された装置の構成は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0012】
図1図4を参照し、ミシン1を説明する。以下では、図1の上方、下方、右下方、左上方、左下方、および右上方を、それぞれ、ミシン1の上方、下方、前方、後方、左方、および右方とする。本実施形態では、ミシン1の前方がミシン1の正面である。
【0013】
図1に示すように、ミシン1は、外部機器9から受信した縫製データに基づいて、刺しゅう枠100に保持される縫製対象物Cへの縫製を行うための刺しゅうミシンである。縫製対象物Cは可撓性を有するシート状であり、例えば布である。外部機器9はスマートフォン、パーソナルコンピュータ、タブレット端末等の通信端末である。図1は、刺しゅう枠100がキャリッジ8に装着される前の状態を示し、図2は、刺しゅう枠100がキャリッジ8に装着された状態を示す。図3および図4は、それぞれ、刺しゅう枠100の図示を省略する。
【0014】
図1図3に示すように、ミシン1はミシンフレーム(図示略)とミシンカバー3とにより構成され、脚柱部4、シリンダベッド部5、アーム部6、および頭部7を備える。ミシンフレームは側面視で前方に開口するU字状に構成される。ミシンカバー3はミシンフレームに対応する形状で構成され、複数の板によってミシンフレームを覆う。
【0015】
脚柱部4はミシン1の後端部に位置し、上下方向に延びる。脚柱部4は設置部41と延出部42とを含む。設置部41は直方体状であり、下面板411を含む。下面板411は脚柱部4の下端部に位置し、前後左右方向に広がる。ミシン1は、下面板411がテーブル、ミシン台等の設置台(図示略)に接触するように設置される。延出部42は直方体状であり、設置部41から上方に延びる。
【0016】
シリンダベッド部5は下面板411よりも上方に設けられ、脚柱部4から前方に延びる。シリンダベッド部5が下面板411よりも上方に位置するので、シリンダベッド部5の下方には空間Sが形成される。シリンダベッド部5は正面視で丸みを帯びた矩形状であり、下面板51と上面板52と側面板53とを含む。下面板51はシリンダベッド部5の下端部に位置し、前後左右方向に広がる。上面板52はシリンダベッド部5の上端部に位置し、下面板411と平行に広がる。側面板53は下面板51の周縁から上面板52の周縁まで延び、シリンダベッド部5の側面を構成する。
【0017】
本実施形態では、シリンダベッド部5の前後方向の長さは、シリンダベッド部5の左右方向および上下方向のそれぞれの長さよりも大きい。シリンダベッド部5の左右方向の長さは、設置部41および延出部42のそれぞれの左右方向の長さよりも小さい。
【0018】
図1および図4に示すように、上面板52には針穴521と開口522(図4参照)とが設けられる。針穴521は上面板52の前後方向の中心よりも前方、且つ上面板52の左右方向の中心に位置する。針穴521は上面板52を上下方向に貫通する。縫製時、針穴521には縫針12が上下方向に挿通される。
【0019】
図4に示すように、開口522は針穴521よりも前方に位置し、上面板52を上下方向に貫通する。開口522の外形は平面視で前方に丸みを帯びたD字状であり、後述の収容部193の外形よりも大きい。開口522には図1に示す蓋523が設けられる。蓋523は開口522に取り付けられると、開口522を覆う(図1参照)。蓋523は開口522から外されると、開口522を開放する(図4参照)。
【0020】
図1図3に示すように、アーム部6は脚柱部4の上端部から前方に延び、シリンダベッド部5から上方に離れた位置に配置される。アーム部6は直方体状であり、上面板61、下面板62、正面板63、左面板64、および右面板65を含む。上面板61はアーム部6の上端部に位置し、前後左右方向に広がる。下面板62はアーム部6の下端部に位置し、上面板61と平行に広がる。下面板62は上面板52から上方に離れた位置で、互いに向かい合うように配置される。
【0021】
正面板63は上面板61の前端部から下面板62の前端部まで延びる。正面板63はアーム部6の前端部に位置し、上下左右方向に広がる。左面板64は上面板61の左端部から下面板62の左端部まで延びる。左面板64はアーム部6の左端部に位置し、上下前後方向に広がる。右面板65は上面板61の右端部から下面板62の右端部まで延びる。右面板65はアーム部6の右端部に位置し、左面板64と平行に広がる。
【0022】
図1に示すように、上面板61の後端部近傍には保持軸611が設けられる。保持軸611は上面板61の左右方向の中心よりも左方に位置する。保持軸611は前後方向に延び、上糸が巻かれた糸駒(図示略)を保持する。
【0023】
左面板64の前端部近傍には開口641が設けられる。開口641は左面板64を左右方向に貫通し、上下方向にスリット状に延びる。開口641にはレバー17が配置される。レバー17はアーム部6の中から開口641を介して左面板64よりも左方に突出する。レバー17は開口641に沿って上下方向に移動可能に、ミシンフレームによって支持される。レバー17の機能は後述する。
【0024】
図2に示すように、右面板65の前端部近傍には開口651および開口652が設けられる。開口652は開口651よりも前方に位置し、前後方向において開口651と並ぶ。開口651および開口652は、それぞれ、右面板65を左右方向に貫通し、上下方向にスリット状に延びる。開口651は糸駒(図示略)から延びる上糸を上方から下方に案内する。開口651によって案内された上糸は、開口652を通る。開口652には後述の天秤18が配置される。
【0025】
図3に示すように、下面板62の左端部近傍には開口621が設けられる。開口621は下面板62の左右方向の中心C1よりも左方に位置する。開口621は下面板62を上下方向に貫通し、前後方向にスリット状に延びる。開口621には後述の延出部81が配置される。
【0026】
下面板62の右端部近傍には凹部622が設けられる。凹部622は、下面板62の左右方向の中心C1よりも右方に位置する。すなわち、凹部622は中心C1に対して、左右方向において開口621とは反対に位置する。凹部622は底面視で左右方向よりも前後方向に長い長方形状であり、下面板62から上方に凹む。凹部622の後端部から脚柱部4までの距離は、凹部622の前端部からアーム部6の前端部までの距離よりも小さい。
【0027】
凹部622は、ユーザが指を掛けることができる程度の大きさである。例えば、凹部622の前後方向の長さは特定の長さに限定されないが、本実施形態では5cm以上である。凹部622の左右方向の長さは特定の長さに限定されないが、本実施形態では1cm以上である。凹部622の上下方向の深さは特定の深さに限定されないが、本実施形態では4cm以上である。凹部622の内面には滑り止め加工が施される。本実施形態では、複数の凹凸623が凹部622の内面に形成される。例えば、ユーザはアーム部6の右方から凹部622に指を入れ、複数の凹凸623に指を掛けるようにして、ミシン1を持ち上げる。
【0028】
正面板63には複数の入力ボタン30および複数のランプ90が配置される。複数のランプ90は、それぞれ、LEDによって構成される。複数の入力ボタン30と複数のランプ90の詳細は後述する。
【0029】
頭部7はアーム部6の前端部近傍から下方に延びる。頭部7の下端部は上面板52よりも上方の位置で、上面板52の前端部近傍と向かい合うように配置される。頭部7の下端部は開口する。
【0030】
図2に示すように、ミシン1は天秤18、針棒11、押え足15、糸通し機構16、図4に示す水平釜19、および糸切り機構(図示略)を備える。天秤18はアーム部6の中に配置され、ミシンフレームによって支持される。天秤18はフック状であり、開口652から右方に露出する。開口651によって案内された上糸が、開口652内で天秤18に掛けられる。天秤18はミシンモータ(図示略)の駆動によって開口652に沿って上下動する。天秤18は、下糸が絡められた上糸を引き上げ、上糸と下糸との結び目の位置を調整する。
【0031】
針棒11はミシンフレームによって支持され、頭部7の下端部から下方に延びる。針棒11の下端部には縫針12が装着される。縫針12は針棒11から下方に延びる。針棒11はミシンモータの駆動によって、天秤18の上下動に連動して上下動する。針棒11の上下動によって縫針12が上下動する。縫針12の移動範囲は、後述の糸通し機構16による糸通しが行われるための所定の糸通し位置(図示略)を含む。
【0032】
縫針12の下端部には目孔13が設けられる。目孔13は、縫針12が針棒11に装着された状態で前後方向に開口する。ミシン1の正面は例えば目孔13が開口する向きによって規定される。目孔13が開口する方向(前後方向)のうち、縫針12に対して脚柱部4とは反対方向(前方)が、ミシン1の正面となる。
【0033】
押え足15は複数回曲げられた板状であり、針棒11の後方に配置される。押え足15はミシンフレームによって支持され、頭部7の下端部から下方および前方に延びる。押え足15の下端部には、縫針12が通る穴が設けられる。押え足15は押えモータ(図示略)の駆動によって昇降する。押え足15は、下降することで縫製対象物Cを上方から押える。押え足15は、上昇することで縫製対象物Cから上方に離れる。押え足15は針棒11の上下動と連動し、縫製対象物Cを間欠的に押える。
【0034】
押え足15の移動範囲は、後述の糸通し機構16による糸通しの動作を押え足15が妨げないための所定の退避位置(図示略)を含む。押え足15が退避位置に位置する場合、例えば、押え足15の下端部が縫針12の目孔13よりも下方に位置する。
【0035】
糸通し機構16は針棒11の左方に設けられ、頭部7から下方に延びる。糸通し機構16はフックを含む。フックには上糸が掛けられる。糸通し機構16は糸通しモータ(図示略)の駆動によってカム機構(図示略)を介して動作し、上糸を目孔13に通す。詳細には、糸通し機構16は、フックに上糸が掛けられた状態で所定の作動位置(図示略)まで下降する。縫針12が糸通し位置に位置し、且つ糸通し機構16が作動位置に位置する場合、糸通し機構16のフックの高さが目孔13の高さと同じ高さになる。この状態で、糸通し機構16はフックが目孔13に向かうように回転し、フックに掛けれた上糸が目孔13の中を通る。このようにして、糸通し機構16は糸通しの動作を行う。
【0036】
図4に示すように、水平釜19はシリンダベッド部5の中に配置され、平面視で針穴521と重なる位置に位置する。水平釜19は外釜191と内釜192とを含む。外釜191は上端部が開口する円筒状であり、ミシンフレームによって回転可能に支持される。外釜191の軸線AXは外釜191の中心を通り、上下方向に延びる。内釜192は上端部が開口する円筒状であり、外釜191の内側に配置される。内釜192はミシンフレームに回転不能に固定される。
【0037】
内釜192の内側には収容部193が形成される。収容部193は内釜192の内面によって囲まれる空間であり、平面視で開口522と重なる。収容部193には下糸(図示略)が巻かれたボビン10が収容される。ユーザは図1に示す蓋523を開け、開口522を介してボビン10を収容部193に収容する。
【0038】
水平釜19では、ミシンモータ(図示略)の駆動によって、天秤18および針棒11の上下動と連動し、外釜191が軸線AXを中心として回転する。水平釜19は内釜192に対して外釜191が回転することで、針穴521を通った上糸を、ボビン10から引き出された下糸に絡ませる。
【0039】
糸切り機構(図示略)は切断刃を含み、水平釜19の近傍に配置される。糸切り機構は、糸切りモータ(図示略)の駆動によって、水平釜19によって互いに絡まった下糸および上糸のそれぞれを切断刃によって切断する。
【0040】
図1に示すように、ミシン1は土台部2とキャリッジ8と制御部(図示略)とをさらに備える。土台部2は空間Sを挟んで、シリンダベッド部5から下方に離れた位置に配置される。土台部2は棒状であり、延伸部21、22と接続部23とを含む。延伸部21は前後方向に延びる。延伸部21の後端部211は脚柱部4の下端部に接続し、下面板411の左端部近傍に固定される。延伸部22は延伸部21よりも右方に位置し、前後方向に延びる。延伸部22の後端部221は脚柱部4の下端部に接続し、下面板411の右端部近傍に固定される。
【0041】
接続部23は左右方向に延び、延伸部21の前端部と延伸部22の前端部とを接続する。土台部2は延伸部21の後端部211から延伸部22の後端部221まで平面視で後方に開口するU字状に延びる。土台部2は、ミシン1が前方または左右方向に倒れないようにミシン1を支持する。
【0042】
キャリッジ8は正面視で右斜め上方に開口するL字状であり、キャリッジフレームとキャリッジカバーとで構成される。キャリッジ8は延出部81と装着部82とを含む。延出部81は上下方向に延び、アーム部6の中から開口621を介して下面板62よりも下方まで延びる。延出部81の下端部は上面板52よりも上方に位置する。アーム部6の中には前後軸80が設けられる。前後軸80は前後方向に延び、ミシンフレームに固定される。延出部81は前後軸80によって支持され、前後モータ(図示略)の駆動によって前後軸80に沿って前後方向に移動する。これにより、キャリッジ8は前後軸80に沿って前後方向に移動する。
【0043】
装着部82は延出部81の下端部に接続し、延出部81の下端部から右方に延びる。このため、装着部82は上下方向においてシリンダベッド部5とアーム部6との間に位置する。装着部82は左右軸84と取付部83とを含む。左右軸84は装着部82の中で左右方向に延び、キャリッジフレームに固定される。取付部83は左右軸84に支持され、左右軸84から前方に延びる。取付部83は左右モータ(図示略)の駆動によって左右軸84に沿って左右方向に移動する。
【0044】
取付部83の前端部には一対の係合溝831、832が設けられる。一対の係合溝831、832は、左右方向に並び、それぞれ、前方に開口するU字状である。装着部82には取付部83を介して刺しゅう枠100が装着される。
【0045】
刺しゅう枠100は外枠101と内枠102とを含み、外枠101と内枠102との間で縫製対象物Cを挟んで保持する。刺しゅう枠100は特定の形状に限定されないが、本実施形態では矩形状である。刺しゅう枠100には取付板110が設けられる。取付板110は刺しゅう枠100の後端部から後方に突出し、平面視で後方に開口するU字状である。
【0046】
取付板110には一対の突起111、112が設けられる。突起111は取付板110の左斜め後方の端部から上方に突出する。突起112は取付板110の右斜め後方の端部から上方に突出する。一対の突起111、112は、それぞれ、一対の係合溝831、832に前方から嵌る(図1に示す矢印A1、図2参照)。これにより、刺しゅう枠100が装着部82に装着される。刺しゅう枠100は装着部82に装着された状態で、取付部83に設けられたロック機構(図示略)によって、固定される。
【0047】
制御部はミシンカバー3の中に配置される。制御部はCPU、ROM、RAM等を含み、ミシン1の制御を行う。以下では、ミシン1が備える複数のモータを総称して単に「複数のモータ」という。本実施形態では、複数のモータは、ミシンモータ、糸通しモータ、押えモータ、糸切りモータ、前後モータ、および左右モータである。複数のモータは、ミシンカバー3の中に配置され、ミシンフレームに固定される。制御部は、複数のモータ、複数の入力ボタン30、複数のランプ90、およびレバー17と電気的に接続する。
【0048】
複数の入力ボタン30およびレバー17は、それぞれ、操作に応じた指示を制御部に送る。例えばレバー17は操作された場合、押え足15を退避位置まで昇降させ、糸通し機構16を動作させて糸通しを行うための指示を制御部に送る。複数のランプ90は、それぞれ、制御部からの指示に応じて発光する。複数のモータは、複数の入力ボタン30またはレバー17が操作された場合に、制御部による制御に基づいて駆動する。
【0049】
図4を参照し、複数の入力ボタン30および複数のランプ90の詳細を説明する。複数の入力ボタン30は、それぞれ、ミシン1を操作するためにユーザによって操作される。複数の入力ボタン30は、第一接続ボタン31、第二接続ボタン32、リセットボタン33、上下ボタン34、糸切りボタン35、およびスタート/ストップボタン36を含む。第一接続ボタン31は複数の入力ボタン30のうち最も上方に位置する。第一接続ボタン31は、操作された場合に、ミシン1を外部機器9と、第一無線通信方式で通信接続可能な状態にするための指示を制御部に送る。第一無線通信方式は、特定の通信方式に限定されないが、例えばWi-Fi(登録商標)による通信方式である。
【0050】
第二接続ボタン32は第一接続ボタン31の下方に位置する。第二接続ボタン32は、操作された場合に、ミシン1を外部機器9と、第二無線通信方式で通信接続可能な状態にするための指示を制御部に送る。第二無線通信方式は第一無線通信方式とは異なる通信方式であり、例えばBlueTooth(登録商標)による通信方式である。
【0051】
リセットボタン33は第二接続ボタン32の下方に位置する。リセットボタン33は、操作された場合に、ミシン1の可動部を初期位置に移動させるための指示、またはエラー状態を解除するための指示を制御部に送る。ミシン1の可動部は、複数のモータのそれぞれが駆動されることにより動作される針棒11、延出部81、取付部83等である。本実施形態では、ミシン1がエラー状態になった場合、複数の入力ボタン30の操作のうちリセットボタン33以外のボタンの操作が無効になる。
【0052】
上下ボタン34および糸切りボタン35は、それぞれ、リセットボタン33の下方に位置し、左右方向に並ぶ。糸切りボタン35は上下ボタン34の右方に位置する。上下ボタン34は、操作された場合に、針棒11を上下動するための指示を制御部に送る。糸切りボタン35は、操作された場合に、糸切り機構による糸切りの動作を行うための指示を制御部に送る。スタート/ストップボタン36は上下ボタン34および糸切りボタン35の下方に位置する。スタート/ストップボタン36は、操作された場合に、縫製を開始するための指示、または縫製を停止するための指示を制御部に送る。
【0053】
複数の入力ボタン30のそれぞれは第一入力ボタンおよび第二入力ボタンのいずれかに分類される。第一入力ボタンは、複数のモータの少なくとも1つを操作するためのボタンである。本実施形態では、リセットボタン33、上下ボタン34、糸切りボタン35、およびスタート/ストップボタン36のそれぞれが第一入力ボタンに該当する。複数の第一入力ボタンの全部は、正面板63のうち左右方向の中心C2よりも左方に配置される。
【0054】
第二入力ボタンは、複数のモータの操作とは異なる操作を行うためのボタンである。本実施形態では、第一接続ボタン31および第二接続ボタン32のそれぞれが第二入力ボタンに該当する。ユーザが第一接続ボタン31または第二接続ボタン32を操作しても、複数のモータはいずれも駆動しない。複数の第二入力ボタンの全部は、正面板63のうち中心C2よりも左方に配置される。したがって、本実施形態では、複数の入力ボタン30の全部は、正面板63のうち中心C2よりも左方に配置される。正面板63のうち中心C2よりも右方には入力部は配置されない。
【0055】
複数のランプ90は、それぞれ、ミシン1の状態をユーザに報知する。複数のランプ90は第一接続ランプ91と第二接続ランプ92とエラーランプ93と運転ランプ94とを含む。第一接続ランプ91は第一接続ボタン31の左方に位置する。第一接続ランプ91は、ミシン1が外部機器9と第一無線通信方式で通信接続可能な状態になった場合に発光する。第二接続ランプ92は第二接続ボタン32の左方に位置する。第二接続ランプ92は、ミシン1が外部機器9と第二無線通信方式で通信接続可能な状態になった場合に発光する。
【0056】
エラーランプ93はリセットボタン33上に設けられる。エラーランプ93はミシン1がエラー状態になった場合に発光する。運転ランプ94はスタート/ストップボタン36上に設けられる。運転ランプ94はミシン1が縫製可能な状態になった場合に発光する。
【0057】
ユーザによるミシン1の使用方法およびミシン1による縫製動作の一例を説明する。ユーザは、使用する無線通信方式に応じて第一接続ボタン31または第二接続ボタン32を操作する。この場合、制御部はミシン1を外部機器9と第一無線通信方式または第二無線通信方式で通信接続可能な状態にする。ユーザは外部機器9を操作し、外部機器9をミシン1と通信接続させる。ユーザは外部機器9を操作し、ミシン1に縫製データを送信する。この場合、制御部は外部機器9から縫製データを受信する。
【0058】
ユーザはリセットボタン33を操作する。この場合、制御部は、複数のモータを制御し、ミシン1の可動部を初期位置に移動させる。ユーザは上下ボタン34を操作する。この場合、制御部はミシンモータを制御し、縫針12を糸通し位置まで上下動させる。この状態でユーザはレバー17を操作する。この場合、制御部は糸通し機構16によって縫針12の目孔13に上糸を通す。本実施形態では、制御部は押えモータを制御し、押え足15を退避位置に昇降させる。この状態で、制御部は糸通しモータを制御し、糸通し機構16を動作させ、上糸を目孔13に通す。
【0059】
ユーザは縫製対象物Cを保持する刺しゅう枠100をキャリッジ8に装着する。詳細には、ユーザは、シリンダベッド部5とアーム部6との間において、刺しゅう枠100を前方から後方に向かって挿入する(図1に示す矢印A1参照)。これにより、一対の突起111、112が、それぞれ、一対の係合溝831、832に前方から嵌り、刺しゅう枠100が取付部83を介して装着部82に装着される。この場合、縫製対象物Cが例えば筒状であれば、シリンダベッド部5が筒状の縫製対象物Cの中に入るように、刺しゅう枠100が装着部82に装着される。
【0060】
ユーザはスタート/ストップボタン36を操作する。この場合、制御部は、ミシンモータ、前後モータ、および左右モータを制御し、外部機器9から受信した縫製データに基づいて縫製対象物Cへの縫製を行う。本実施形態では、制御部はミシンモータを制御し、押え足15によって縫製対象物を押えながら、針棒11を上下動させ且つ天秤18を回転させる。これにより、縫針12が縫製対象物Cを貫通し、上糸が下糸と絡み合い、縫製対象物Cに縫目が形成される。
【0061】
制御部は、縫製対象物Cに縫目を形成しながら前後モータおよび左右モータを制御し、刺しゅう枠100を前後方向または左右方向に搬送する。これにより、縫製データに基づく形状の縫目が縫製対象物Cに形成される。縫製を終了する場合、ユーザはスタート/ストップボタン36を操作する。この場合、制御部はミシンモータ、前後モータ、および左右モータの駆動を停止する。ユーザは糸切りボタン35を操作する。この場合、制御部は糸切りモータを制御し、糸切り機構(図示略)によって糸を切る。ユーザは刺しゅう枠100をキャリッジ8から取り外す(図2に示す矢印A2参照)。
【0062】
例えば、縫製中に糸切れ等のエラーが生じる場合がある。制御部は、エラー検出センサ(図示略)によってエラーが検出されると、ミシン1をエラー状態にし、縫製を停止する。エラー検出センサは、例えば上糸の張力を検出するセンサである。ユーザはエラー状態を解消するための操作を行う。例えば糸切れが生じた場合には、ユーザは目孔13に上糸を再度通した後、リセットボタン33を操作する。この場合、制御部はエラー状態を解除し、複数の入力ボタン30の操作を有効にする。
【0063】
以上説明したように、上記実施形態では、ミシン1がシリンダベッド部5を備えるので、筒状の縫製対象物Cに縫製することが想定される。したがって、ユーザはミシン1を前方から扱う。ミシン1では、複数の入力ボタン30が正面板63に配置されるので、複数の入力ボタン30が右面板65等に配置される場合に比べて、ユーザが複数の入力ボタン30を操作しやすい。よって、複数の入力ボタン30の配置位置は、ユーザによる複数の入力ボタン30への操作性が損なわれることを抑制することに貢献する。さらに、複数の入力ボタン30の配置位置は、例えば正面板63から左右方向に離れた位置に操作パネル等が別途設けられる場合に比べて、ミシン1の大型化を抑制することに貢献する。
【0064】
仮に、複数の第一入力ボタンが、それぞれ、左右方向に散らばって配置される場合、ユーザによる複数の第一入力ボタンの操作範囲が左右方向に大きくなる可能性がある。この場合、ユーザは複数のモータの少なくとも1つを操作する場合に、複数の第一入力ボタンの片手での操作が難しい可能性がある。上記実施形態では、複数の第一入力ボタンの全部が、正面板63のうち中心C2よりも左方に配置される。このため、ユーザによる複数の第一入力ボタンの操作範囲が大きくなることが抑制される。よって、ユーザは、複数のモータの少なくとも1つを操作する場合に、複数の第一入力ボタンを片手で操作しやすい。よって、複数の第一入力ボタンの配置位置は、ユーザによる複数の第一入力ボタンの操作性の向上にすることに貢献する。
【0065】
上記実施形態では、複数の第二入力ボタンの全部が、正面板63のうち中心C2よりも左方に配置される。このため、ユーザによる複数の第二入力ボタンの操作範囲が大きくなることが抑制される。よって、ユーザは複数のモータの操作とは異なる操作する場合に、複数の第二入力ボタンを片手で操作しやすい。よって、複数の第二入力ボタンの配置位置は、ユーザによる複数の第二入力ボタンの操作性の向上に貢献する。
【0066】
仮に、複数の入力ボタン30が、左右方向において正面板63のうち中心C2に対して、天秤18と同じ方向に位置する場合、天秤18がユーザによる複数の入力ボタン30の操作の妨げになる可能性がある。上記実施形態では、右面板65に開口651が設けられ、開口651に天秤18が配置される。この場合、複数の入力ボタン30は正面板63において、中心C2に対して天秤18とは左右方向の反対に位置する。このため、天秤18がユーザによる複数の入力ボタン30の操作の妨げになることが抑制される。よって、天秤18に対する複数の入力ボタン30の配置位置の関係は、ユーザによる複数の入力ボタン30の操作性の向上に貢献する。
【0067】
仮に、複数の入力ボタン30が、正面板63において、中心C2に対してレバー17とは左右方向の反対に位置する場合、ユーザは片方の手でレバー17を操作し、もう片方の手で複数の入力ボタン30を操作することが想定される。上記実施形態では、左面板64に開口641が設けられ、開口641を介してレバー17が配置される。この場合、複数の入力ボタン30は正面板63において、中心C2に対してレバー17と左右方向の同じ方向に位置する。このため、ユーザは、例えばレバー17を操作して目孔13に糸を通した後、レバー17を操作した手と同じ手で複数の入力ボタン30を操作しやすい。よって、レバー17に対する複数の入力ボタン30の配置位置の関係は、ユーザによる複数の入力ボタン30の操作性の向上に貢献する。
【0068】
上記実施形態では、レバー17は、糸通し機構16を動作させる機能に加えて、押え足15を昇降させる機能も有する。このため、ユーザはレバー17を操作し、目孔13に糸を容易に通すことができる。よって、レバー17は、ユーザが目孔13に糸を通すための操作を容易に行うことに貢献する。
【0069】
上記実施形態では、水平釜19にボビン10を収容するための開口522が上面板52に設けられる。この場合、ユーザは前方からミシン1を操作するので、ユーザは開口522を介して水平釜19にボビン10を収容しやすい。よって、開口522の配置位置は、ユーザが水平釜19にボビン10を容易に収容することに貢献する。
【0070】
上記実施形態では、凹部622が下面板62に設けられる。このため、ユーザは凹部622に指をかけてミシン1を持ち上げることができる。よって、凹部622は、ユーザがミシン1を容易に持ち運ぶことに貢献する。
【0071】
上記実施形態では、延出部81がアーム部6の中から開口621を介してアーム部6の外まで延びる。仮に、左右方向において、下面板62の中心C1に対して開口621と凹部622とが同じ方向に位置する場合を考える。この場合、ユーザが下面板62の中心C1に対して開口621が設けられる方向からアーム部6に腕をまわして凹部622に指をかけると、延出部81が、ユーザによる凹部622の把持の妨げになる可能性がある。上記実施形態では、開口621が下面板62の中心C1よりも左方に位置し、且つ凹部622が下面板62の中心C1よりも右方に位置する。すなわち、開口621および凹部622が、左右方向において下面板62の中心C1に対して反対に位置する。このため、延出部81がユーザによる凹部622の把持の妨げになることが抑制される。よって、開口621に対する凹部622の配置位置の関係は、ユーザが凹部622を容易に把持することに貢献する。
【0072】
上記実施形態では、装着部82が、前方から刺しゅう枠100が挿入されることで、刺しゅう枠100が装着されるように構成される。このため、ユーザによる装着部82への刺しゅう枠100の装着方向(前方から後方に向かう方向)は、ユーザによる複数の入力ボタン30の操作方向(前方から後方に向かう方向)と同じである。よって、ユーザは、例えば刺しゅう枠100を前方から後方に向かって装着部82に装着した後、複数の入力ボタン30を操作しやすい。よって、装着部82への刺しゅう枠100の装着方向に対する複数の入力ボタン30の配置位置の関係は、ユーザによる複数の入力ボタン30の操作性の向上に貢献する。
【0073】
上記実施形態では、土台部2が後端部211から後端部221まで後方に開口するU字状に延び、後端部211、221がそれぞれ脚柱部4に接続する。この場合、土台部2は、例えば開口が存在しないD字状の板の場合に比べて、軽量である。さらに、縫製対象物Cのうちシリンダベッド部5よりも下方に垂れ下がった部分が、平面視で土台部2によって囲まれる開口領域に配置される。このため、土台部2は、例えば開口が存在しないD字状の板の場合に比べて、縫製の妨げになりにくい。よって、土台部2の形状は、ミシン1の軽量化、および円滑な縫製に貢献する。
【0074】
上記実施形態では、装着部82が、前方から刺しゅう枠100が挿入されることで、刺しゅう枠100が装着されるように構成される。このため、ユーザはミシン1を前方から扱う。複数の入力ボタン30が正面板63に配置されるので、複数の入力ボタン30が右面板65等に配置される場合に比べて、ユーザは複数の入力ボタン30を操作しやすい。よって、複数の入力ボタン30の配置位置は、ユーザによる複数の入力ボタン30への操作性が損なわれることを抑制することに貢献する。さらに、複数の入力ボタン30の配置位置は、例えば正面板63から左右方向に離れた位置に操作パネル等が別途設けられる場合に比べて、ミシン1の大型化を抑制することに貢献する。
【0075】
上記実施形態において、脚柱部4が本発明の「脚柱部」に相当する。ミシン1の前後方向が本発明の「第一方向」に相当する。ミシン1の前方が本発明の「第一特定方向」に相当する。シリンダベッド部5が本発明の「ベッド部」に相当する。アーム部6が本発明の「アーム部」に相当する。正面板63が本発明の「正面板」に相当する。複数の入力ボタン30のそれぞれが本発明の「入力部」に相当する。
【0076】
複数のモータが本発明の「少なくとも1つのモータ」に相当する。第一入力ボタンが本発明の「第一入力部」に相当する。ミシン1の左右方向が本発明の「第二方向」に相当する。中心C2が本発明の「第一中心」に相当する。ミシン1の左方が本発明の「第二特定方向」に相当する。第二入力ボタンが本発明の「第二入力部」に相当する。右面板65が本発明の「第一側面板」に相当する。開口652が本発明の「第一開口」に相当する。
天秤18が本発明の「天秤」に相当する。左面板64が本発明の「第二側面板」に相当する。開口641が本発明の「第二開口」に相当する。糸通し機構16が本発明の「糸通し機構」に相当する。レバー17が本発明の「レバー」に相当する。押え足15が本発明の「押え足」に相当する。退避位置が本発明の「所定の位置」に相当する。
【0077】
水平釜19が本発明の「水平釜」に相当する。上面板52が本発明の「上面板」に相当する。開口522が本発明の「第三開口」に相当する。下面板62が本発明の「下面板」に相当する。凹部622が本発明の「凹部」に相当する。中心C1が本発明の「第二中心」に相当する。開口621が本発明の「第四開口」に相当する。前後軸80が本発明の「支持部」に相当する。延出部81が本発明の「延出部」に相当する。装着部82が本発明の「装着部」に相当する。キャリッジ8が本発明の「キャリッジ」に相当する。土台部2が本発明の「土台部」に相当する。
【0078】
本発明は、上記実施形態から種々変更されてもよい。以下説明する各種変形例は、矛盾が生じない限り、互いに組み合わされてもよい。土台部2の形状は、U字状でなくてもよく、例えばT字状であってもよいし、前後方向に延びる複数(例えば一対)の棒状であってもよいし、矩形板状であってもよい。
【0079】
上記実施形態において、装着部82は、上記実施形態の構成に限定されないが、前方から後方に向かって刺しゅう枠100が装着される構成を有するとよい。例えば、取付部83は、一対の係合溝831、832に代えて前方または上方に突出する突起を含んでもよい。この場合、刺しゅう枠100において、係合部が取付板110に設けられ、装着部82の突起が取付板110の係合部に嵌まるように刺しゅう枠100が前方から装着部82に装着されるとよい。取付板110の係合部は溝、カプラ等である。装着部82は、前方以外(例えば左方、上方)から刺しゅう枠100が装着される構成を有してもよい。
【0080】
上記実施形態において、開口621および凹部622は、下面板62において、中心C1に対して左右方向の同じ方向(例えば左方)に配置されてもよい。下面板62には凹部622が設けられなくてもよい。下面板62には開口621が設けられなくてもよい。下面板62に開口621が設けられない場合、キャリッジ8は上記実施形態とは異なる構造で前後方向に移動してもよい。例えば、前後軸80はシリンダベッド部5の中に配置されてもよい。凹部622の大きさおよび形状は、それぞれ、上記実施形態に限定されない。例えば、凹部622は前後方向よりも左右方向に長く、中心C1をまたいで延びてもよい。
【0081】
上記実施形態において、ミシン1は水平釜19に代えて垂直釜を備えてもよい。この場合、垂直釜にボビン10を収容するための開口522は、上面板52に代えて側面板53に設けられてもよい。
【0082】
上記実施形態において、レバー17は、押え足15を昇降する機能を有しなくてもよい。この場合、ミシン1は押え足15を昇降するためのレバーを、レバー17とは別に備えてもよい。
【0083】
上記実施形態において、複数の入力ボタン30およびレバー17は、左右方向において中心C2に対して互いに反対に配置されてもよい。例えば、レバー17が配置される開口641が、左面板64に代えて右面板65に設けられてもよい。レバーの操作方向は、上記実施形態に限定されない。糸通し機構16は目孔13に上糸を通すことができれば、上記実施形態の構成に限定されない。
【0084】
上記実施形態において、複数の入力ボタン30および天秤18は、左右方向において中心C2に対して同じ方向(例えば左方)に配置されてもよい。例えば、天秤18が配置される開口652が、右面板65に代えて左面板64に設けられてもよい。
【0085】
上記実施形態では、第二入力ボタンの個数は複数である。これに対し、第二入力ボタンの個数は1つであってもよい。さらに、複数の入力ボタン30は、第二入力ボタンとして、第一接続ボタン31および第二接続ボタン32の一方または両方に代えて、または加えて、他の機能を有するボタンを含んでもよい。他の機能は、例えば縫製データの受信を開始する機能、ミシン1と外部機器9との通信接続を切断する機能である。
【0086】
上記実施形態において、複数の第二入力ボタンの全部が中心C2よりも右方に配置されてもよい。複数の第二入力ボタンの一部が中心C2よりも左方に配置され、複数の第二入力ボタンの他の一部が中心C2よりも右方に配置されてもよい。
【0087】
上記実施形態では、第一入力ボタンの個数は複数である。これに対し、第一入力ボタンの個数は1つであってもよい。さらに、複数の入力ボタン30は、第一入力ボタンとして、リセットボタン33、上下ボタン34、糸切りボタン35、およびスタート/ストップボタン36の一部または全部に代えて、または加えて、他の機能を有するボタンを含んでもよい。他の機能は、例えばボビン10に下糸を巻き付けるための機能である。
【0088】
上記実施形態において、複数の第一入力ボタンの全部が中心C2よりも右方に配置されてもよい。複数の第一入力ボタンの一部が中心C2よりも左方に配置され、複数の第一入力ボタンの他の一部が中心C2よりも右方に配置されてもよい。
【0089】
上記実施形態では、入力ボタン30の個数は複数である。これに対し、入力ボタン30の個数は1つであってもよい。この場合、入力ボタン30は、第一入力ボタンおよび第二入力ボタンのいずれであってもよい。入力ボタン30は正面板63に設けられれば、中心C2よりも左方および右方のいずれに設けられてもよいし、中心C2に設けられてもよい。ランプ90の個数および配置位置も、それぞれ、入力ボタン30と同様に変更されてもよい。
【0090】
上記実施形態において、ミシン1は複数の入力ボタン30に代えて、または加えて、タッチパネル等の入力部を備えてもよい。本発明は、正面板63に少なくとも1つの入力部が設けられていればよく、正面板63以外の位置(例えば右面板65)に他の入力部が設けられることを排除しない。
【0091】
上記実施形態では、シリンダベッド部5が脚柱部4の下端部よりも上方の位置から前方に延びる。これに対し、ミシン1は、シリンダベッド部5に代えて、脚柱部4の下端部から前方に延びるベッド部を備えてもよく、ベッド部の下方には空間Sが形成されなくてもよい。この場合、ミシン1は土台部2を省略してもよい。ベッド部は、ベッド部の一部がベッド部の他の一部から着脱可能な構成であってもよい。この場合、ベッド部は、着脱可能な部分がベッド部の他の一部から取り外されることで、ベッド部の他の一部の下方に空間Sが形成される構成(いわゆるフリーアーム)を有してもよい。
【0092】
上記実施形態では、第一入力ボタンまたはレバー17が操作されると、制御部が複数のモータの少なくとも1つを制御する。これに対し、第一入力ボタンまたはレバー17が操作された場合に、制御部を介さずに、複数のモータの少なくとも1つがONまたはOFFされてもよい。さらに、例えば糸通し機構16および糸切り機構は、それぞれ、糸通しモータおよび糸切りモータによらず、非電動的に動作する機構であってもよいし、ソレノイド等の他のアクチュエータによって動作する機構であってもよい。例えば糸切り機構がソレノイドによって、または非電動的に動作する場合、糸切りボタン35は第二入力ボタンに該当する。
【符号の説明】
【0093】
1:ミシン、2:土台部、4:脚柱部、5:シリンダベッド部、6:アーム部、8:キャリッジ、15:押え足、16:糸通し機構、17:レバー、18:天秤、19:水平釜、30:入力ボタン、52:上面板、62:下面板、63:正面板、64:左面板、65:右面板、80:軸、81:延出部、82:装着部、522:開口、621:開口、622:凹部、641:開口、652:開口
図1
図2
図3
図4